○羽生三七君
只今議題となりました
耕土培養法案につきまして、農林委員会における審査の経過及び結果を御
報告いたします。
報告に先立ちまして、本法案が提出せられるに至りました経緯について簡單に申述べておきたいと存じます。
我が国の農耕地の土壌の生産力は、自然的並びに人為的諸條件によ
つて減耗が甚だしく、特に戰時戰後を通じ、久しきに亘
つて略奪的な農業が営まれました結果、その衰退は著しいものがありまして、これをこのまま放任するにおいては、やがては荒廃を招くこととなり、
我が国農業上看過することのできない重大問題であるとの見解を以て、参議院農林委員会におきましては、夙にここに関心を拂い、過ぐる昨年五月末、農耕地土壌生産力増進対策の
確立に関し政府に申入れ、その実現を推進して参りましたところ、甚だ不十分ではありますが、本年度予算に必要な経費が計上せらるるに至つたのであります。ところが、この事業を強力且つ計画的に実施するため、併せて立法措置をも講ずべきであるとし、かねて研究が進められておりましたところ、漸く成案が得られ、その取扱について話合いの結果、衆議院に提出することとなり、衆議院を全会一致を以て通過して、本院に送付せられたのであります。
本
法律案の内容は大要次のようであります。第一は、耕土培養地域の指定でありまして、都道府県知事は、農林大臣の指示に従
つて、管内の農地について調査を行い、耕土培養を実施するに必要があると認められた地域について、都道府県農業委員会の意見を聞き、農林大臣の承認を受けて、耕土培養地域として指定し、これを公示して、耕土培養事業を集中的且つ効果的に遂行しようとするものであります。第二は、対策調査、即ち耕土培養の具体的な方法等を明らかにするために行う細密な調査のことでありまして、耕土培養区域をその区域内に含む市町村の長は、市町村農業委員会の意見を聞いて、都道府県に対策調査の実施を請求するのであります。第三は耕土培養事業計画の樹立でありまして、市町村長は、対策調査の結果に基く勧告に従い、市町村農業委員会の意見を聞き、且つ関係者の同意を得て、その市町村の耕土培養事業の総合的計画を定めて、都道府県知事の承認を受けるのであります。而して耕土培養事業はこの計画に準拠して行われることとなり、事業の施行者は、市町村、耕土培養地を耕作する農業者又は農業団体となるのであります。第四は、国の補助奨励措置及び指導監督でありまして、国は、耕土培養地域指定のための調査、対策調査及び耕土培養事業の指導に要する経費並びに事業施行者が耕土培養のため施用する資材の購入費に対して補助金を交付すると共に、耕土培養事業の施行者及び耕土培養において施用する資材又は肥料の供給を行う者に対し、資金の融通等の奨励措置を講じ、併せて事業施行に関し必要な指導を行うのであります。第五は、開拓地に対する特例でありまして、開拓地の特殊性に鑑みまして、開拓地に対しては政令によ
つて特例を設けることができることといたしてあるのであります。
委員会におきましては、国内における不良耕土の分布並びにこれが消長、政府における耕土培養事業計画及びその計費予算並びにこれが拡大、本
法律案がその狙いとする不良耕土の改良と共に堆肥の増産及び施肥の合理化等による地力の増進、耕土培養のため供用する肥料その他の資材の供給の確保、すでに成立した各種特殊地帯振興に関する法律と本
法律案との関係並びにこれが調整、耕土培養事業の施行主体及び実施方法、その他の問題に関して、提案者及び政府当局との間に質疑が行われたのでありますが、これが詳細については会議録に讓ることをお許し願いたいと存じます。
かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、小林亦治委員から、立法と行政並びに立法と財政の観点において、国政全般から見て基本的な法律の実現を期待して
賛成があり、岡村委員から、今日に至
つてかかる立法を必要とするような農業政策の貧困を遺憾とし、本法に甘んずることなく、進んで地方培養の根本対策の
確立を要望し、更に農業委員会の経費を増額し、これが活動の促進を希望して
賛成があり、続いて採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に
開拓者資金融通法の一部を
改正する
法律案について御
報告申上げます。
昭和二十一年度に成立いたしました
開拓者資金融通法に基き、政府は、毎年度開拓者又はその組織する法人に対して、営農資金、住宅資金及び共同施設資金を貸付けて来ているのでありますが、
昭和二十三年度以前の入植者については、当時は物価の変動が激しく、従
つて予算に基いて貸付けた資金では当初予想した営農資材を取得することができなかつたため、当時の入植者のうちには未だ営農安定を得ていない者がある現状でありますので、この際これらの入植者の営農の安定を促進するため、これらの入植者に対しては特別に重ねて営農資金を貸付ける機会を與えることとなさんとするのが、本
法律案が提出されるに至りました理由であります。而して開拓者営農資金は、一般には、据置期間五カ年を含めて償還期間が二十年以内、年利三分六厘五毛の均等年賦償還方法によるものと規定せられでおるのでありますが、今回の
改正規定による特別資金は、二度目のことでありますので、据置期間二カ年を含めて償還期間五年以内、年利五分五厘の均等年賦償還の方法によることとなさんとするのであります。
委員会におきましては、農林当局との間に、開拓者の入植、離脱及び営農等の状況並びに入植者の指導及び助成、開拓農業協同組合の指導及び検査、今回計画せられた特別資金の融資計画、特別資金の償還期間及び金利について、特に従来行われて来ている一般資金との比較において、その適否並びに償還の能否、並びに一般資金及び特別資金のコスト及びこれが貸付方法、開拓審議会の在り方、増反開墾の助成等の問題について、質疑が交わされたのでありまして、特に今回計画せられた特別資金の貸付計画、金利及び償還期間に関心が拂われ、これに関する質問に対し、政府当局からは、「本資金は一般資金に追加して融通せられるものであ
つて、
昭和二十三年度以前の入植者の大家畜の購入資金に充当し、資金の他に転用を防ぐため原則として現物融資の取扱をしたい。金利はできるだけ低きを望むのであるが、併し中期資金制度を
確立する意味合から年五分五厘とした。これは別途本年度から実施せられることになつた家畜導入資金の最終金利七分五厘に比べては高くない。資金の回転率を高めて資金能率の向上を図るため、償還期間は二カ年据置き三カ年均等年賦とした。家畜の増殖を前提として考えるとき、資金の償還は可能と認められる」等の
趣旨の答弁があり、これに対して更に、資金の枠の拡大、金利の引下げ、及び農林中央金庫によ
つて一般貸付を行い、これに対する利子補給制度に関する検討等に関して、要望或いは意見の開陳が行われたのでありますが、これら審議の内容の詳細は会議録で御承知を願いたいと存じます。
かくして質疑を終り、討論に入りましたどころ、片柳委員から、「政府において今後金利の引下げに努力し、若し金利の引下げが困難であれば、中期資金確保のため、政府資金よりむしろ農林中央金庫の機構を活用して一般融資を行い、これに対し利子の補給を研究することを要望」して
賛成があり、小林亦治委員から、「開拓事業は国の責任と国の負担において断行すべきであ
つて、引揚者、農家の次三男及び貧農の犠牲において政府がふところ手をしているような措置は排除せらるべきであり、従
つて、従来の枠を超えて必要な資金を長期且つ無利子で融通すべきであ
つて、今後政府の努力を信頼する」として
賛成があり、岡村委員から「開拓者に対しては国において必要な條件を整備して入植せしめるべきであ
つて、資金は無利子で融資すべきであり、且つ開拓民の指導に万全を期すべきである」と要望せられて
賛成があり、続いて採決の結果、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
右御
報告申上げます。(
拍手)