○西郷吉之助君
只今議題となりました
地方税法の一部を
改正する
法律案について、地方
行政委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告いたします。
今回、内閣が現行
地方税法に
改正を加えようとする事項は、おおむね事務的又は技術的なものでありまして、
改正の第一点は、附加価値税の
実施を更に一年間延期することであります。御承知の通り附加価値税は本年一月一日から
実施されることにな
つているのでありますが、未だ経済界が十分安定しないときに
負担の激変を来たすことは適当でなく、又事業税をそのまま
実施した場合に比較して相当の減収を来たすことにもなるので、更に一年間その
実施を延期しようとするのであります。
改正の第二は、附加価値税の
実施延期に伴い、その間存続することになる事業税及び特別所得税に関し三つの
改正を加えようとするのでありまして、その一は、個人事業税及び特別所得税について従来の二万五千円の免税点制度を改め、新たに三万八千円の基礎控除を認めようとするのであります。その二は、青色申告法人に限り繰越損金の控除を二年間行うことができるものとするのであります。
現行法は一年間でありまするが、法人税の税率の引上げ等をも考慮し、
負担の合理化を図るため、二年間に改めようとするものであります。その三は、二以上の道府県において事業を行う法人の
昭和二十五年度分以前の事業税及び同附加税について仮徴収を行うことができるものとするのであります。
改正の第二は市町村民税に関するものでありまして、その一は、法人税割の税率の調整を図ろうとするのであります。即ち、先に法人税の税率が法人所得の三五%から四二%に引上げられましたが、法人税割の標準税率は法人所得の五・二五%に据置くこととするために、現行の百分の十五を百分の十二・五に引下げ、制限税率も百分の十六から百分の十五に引下げようとするのであります。その二は、老年者で、その前年における所得が十万円以下の者であ
つても、これらの者がいわゆる家事専従者として壮年者を有している場合には、その老年者等に対しても市町村民税を課することができる途を開こうとするのであります。
改正の第四は固定資産税に関するものでありまして、その一は、都市計画法又は特別都市計画法による土地区画整理の
施行に係る土地については、課税台帳面において所有者の変更が行われるまでの間は、換地予定地又は換地に対応する従前の土地の土地台帳上の所有者を、当該換地予定地又は換地に係る土地台帳上の所有者とみなして、固定資産税を課することができるものとするのであります。その二は、固定資産、課税台帳の縦覧期間が従来十日間でありましたのを二十日間に延長いたし、これに伴い、
審査委員会の
審査のための
会議の開会の期間、
審査法定期間等をそれぞれ延長することであります。
改正の第五は木材引取税に関するものでありまして、この税は、素材の引取に対し価格を課税標準として素材生産地の市町村において引取者に課するものでありますが、その価格は時期によ
つて極めて変動しやすく、且つその算定が必ずしも容易でありませんので、価格に併せ容積をも課税標準とすることができるようにするのであります。
改正の第六点は
国民健康保険税に関するものでありまして、その一は、現行の
国民健康保険税はみずからこの保険を行う市町村が課することができるのでありまするが、一部事務組合を設けて
国民健康保険を行う場合にも、これに加入している市町村は
国民健康保険に要する費用の組合分賦金に充てるため、この税を課することができるようにするのであります。その二は、納税義務者一人当り最高賦課制限額一万五千円を三万円に引上げることであります。
改正の第七は雑税の廃止等に関するものであります。その一は、漁業権税、広告税及び接客人税は、その税額も少く、且つ普遍的な税源でもないので、法定普通税としてはこれを廃止しようとするのであります。その二は、市町村民税の法人税割及び法人事業税について徴収猶予が行われる場合に、猶予を受けた税額について徴収される延滞金の額を法人税法の
改正に準じ従来の日歩四銭を二銭に減額することであります。
なお、この
法案に対しては衆議院の修正議決がありますので、次にその
内容の概略を申げます。即ち、修正の第一は入場税に関するものでありまして、その一は、現行の税率を一齊に二分の一に引下げることであります。その二は、専ら純舞踊、純オペラ、文楽及び能楽を
研究発表する会場に入場する者、いわゆるプロ野球等の職業的運動競技を観覧するために競技場に入場する者並びにアイス・スケート場を利用する学生生徒について、純音楽又はアマチユアの運動競技と同様、軽減税率百分の二十を適用することであります。その三は、現在、学生の団体、PTA、学校、社会事業団体、児童福祉
施設等が主催する催し物については、素人が出演する場合に限り入場税を免除し得ることとな
つていますが、今回、主催者に一定の制限を加えた上で、職業的専門家による催し物を免税し得るように改めることであります。その四は、入場税の徴税確保のために入場税の予納又は追徴等の
規定を追加することであります。その五は、麻雀場、玉突場等に対する入場税については、これらの外形標準によることができる途を開くことであります。
修正の第二は遊興飲食税に関するものでありまして、その一は、芸者等の花代を百分の七十に、料理店、貸席、バー等における遊興又は飲食の
料金を百分の二十に、
料金、地域等の特殊な旅館の宿泊
料金も百分の二十に改め、一般の宿泊又は飲食の
料金は百分の十に改めることであります。その二は、純粋に茶菓又は軽飲食を提供する店で飲食する場合、一人一回百円未満を非課税とすることであります。その三は、従来、会社等の寮、クラブで無税で行われていた遊興飲食並びに客の持込み等をも課税
対象となし得ることであります。その四は、知事に対して税額を再更正する義務を課すること等によ
つて徴収確保の
措置を講ずることであります。修正の第三は電気ガス税について非課税品目を追加することでありまして、工業製品については、おおむね製品原価中電力
料金の占める割合が五%以上のものを標準として選定し、又農業用電力をも加えることであります。
修正の第四は事業税並びに特別所得税に関するものでありまして、その二は、湯屋業を事業税より特別所得税の
対象とし、理容美容業を第二種業務より第一種業務に改めることであります。その三は、
民間放送事業及び新聞広告取次業を非課税とすることであります。
修正の第五は固定資産税その他に関するものでありまして、その一は、国鉄、専売公社、
日本放送協会等、現在国又は
公共団体に準じて非課税の扱いを受けているものに対しても、直接本来の事業の用に供しない発電
施設、鉱業
施設、自動車、自転車、荷車等に、固定資産税、自動車税、自転車税及び荷車税を課することとするのであります。その二は、農業協同組合の所有する倉庫に対する固定資産税を非課税とすることであります。
以上が衆議院修正案の要旨でありますが、これによ
つて生ずる地方税収入は、平年度において約百三十二億の減少となり、本年度、入場税、遊興飲食税及び電気ガス税の
改正を十月から、その他を公布の日から
実施するものとして、約五十億の減少となる見込でありますが、これが補填は、補正予算の際に実現を期するとの考えから、この修正案の
実施期は、入場税、遊興飲食税及び電気ガス税は、「
昭和二十八年四月一日までの間において政令で定める日より」と定め、その他の年税は公布の日から
実施すつることとしているのであります。
委員会においては、岡野国務大臣並びに
政府委員より
提案理由並びに
法案内容の説明を聞き、更に衆議院の野村議員並びに
政府委員より修正案の説明並びにこれに対する
意見を聞いた後、
質疑を行いましたが、先ず堀
委員より、附加価値税の
施行を延期する
理由並びに将来これを
実施する決意の有無を尋ねたのに対し、岡野国務大臣より、「この税は理論上適当であるが、経済界の変動、
実施準備の
不足、
行政簡素化の
実施等に鑑み、これを延期することとしたが、来年四月よりこれを実行する決意である」旨の
答弁がありました。又岡本、岩木、中田、高橋、石村の各
委員より、衆議院修正案の
実施による減収を補填する
財源措置、地方
財源の確保対策、地方税制の再検討等について
質疑があつたのに対し、
政府委員より「
財源措置については未だ大蔵省との間に折衝が行われていないこと、地方税制、地方
財源等については地方制度
調査会において
研究する」旨の
答弁がありました。なお、地方税の各種目に対する
政府の
改正案並びに衆議院の修正案について、多数の
委員と
政府委員との間に具体的詳細なる
質疑応答が行われましたが、これらは
速記録によ
つて御覧を願います。
委員会においては更に
慎重審議を盡すために小
委員会を設け、小
委員会はしばしば
会議を開いて各党会派の
意見を調整した結果、主として衆議院の修正部分に対して更に次のような修正を加えることに
なつたのであります。
即ち、修正の第一は入場税に関するものでありまして、その一は、軽減税率百分の二十を適用するものに「雅楽の
研究発表」並びに「文化財保護法の
規定による無形文化財の鑑賞」を加え、「アイス・スケート場」とあるのを「地財委規則の定める競技場」と改め、同率を適用するものの中から「競馬、競輪等射倖的行為を伴う催しが行われる場所に入場する者」を除くことであります。その二は入場税の課税免除を
規定した
現行法第七十八條中に「公民館」を加え、但しその催し物が公民館の目的に合すること及び公民館が主催するものであることの
二條件を付けることであります。
修正の第二は遊興飲食税に関するものでありまして、その一は、芸者その他これに類する者の花代を百分の百に据え置き、旅館については一律に百分の十とするほか、主として外客のホテル及び旅館における宿泊飲食で地財委規則の定めるものを非課税とすることであります。その二は、一人一回百円未満の飲食を非課税とする修正案を「一品五十円以下、一人一回につき百円以下」に改め、更に麺類と大衆食堂を加えることであります。その三は、衆議院修正案第百二十四條第三項末尾に「更正し、又は
決定しなければならない」とあるのを、「更正し、又は
決定することができる」と改めることであります。その四は会社等の寮やクラブで行われる遊興飲食等をも課税
対象とすることについては、
現行法第百十三條に掲げる場所に類するものにおいて行われる場合に限る旨を明らかにすることであります。
修正の第三は電気ガス税に関するものでありまして、その一は、非課税品目に更に「ニツケル地金」と「碎木パルプ」を加えることであり、その二は、「学校、学術
研究所で、直接、教育又は学術
研究の用に供するもの」を非課税とすることであります。
修正の第四は事業税並びに特別所得税に関するものでありまして、その一は、事業税の非課税範囲に「旬刊以上の新聞、学校教育、社会教育又は学術
研究等の出版業で政令の定あるもの」を加えることであります。その二は、医療法人を
現行法第七百四十六條の特別法人に加えて税率を軽減すると共に、医業及び歯科医業については健康保険医としたの保険収入を課税標準から除外することであります。
修正の第五は固定資産税その他に関するものでありまして、その一は、国鉄、専売公社、
日本放送協会、電信電話公社に対する固定資産税を非課税とし、森林組合を含む各種協同組合の倉庫及び事務所をも非課税とすることであります。その三は狩猟税の額を二千四百円に引下げることであります。
委員会においては、小
委員会の
報告を了承し、更にこの修正案を衆議院議決の期日において
実施する場合の税収入減額見込を検討しましたところ、
政府委員より、今年度において三十一億円、平年度において三十一億円の減収となる見込であるとの
答弁がありました。
以上を以て
質疑は終了したので、
討論に入りましたところ、岡本
委員より、岡本、西郷、石村、岩木、林屋、原、中田の七
委員共同の
提出にかかる修正案の
発議がありました。その案は前に述べました小
委員会報告の
内容を法文化したものでありまして、その全文はお手許に配付した通りであります。なお、岡本
委員は右修正案を説明した後、今回の修正による入場税及び遊興飲食税の大幅減税が一般大衆の利益となるように、
当局は業者に対して、
料金の軽減、脱税の取締等に適当の
措置をとることを要望する旨の
発言がありました。
以上を以て
討論は終結したので、直ちに
採決に入りましたところ、七
委員共同
提出にかかる修正案は
全会一致を以て可決せられ、右修正部分を除く
政府原案及び衆議院修正案も又
全会一致を以て可決されました。よ
つて、
内閣提出、
衆議院送付にかかる
地方税法の一部を
改正する
法律案は
全会一致を以て修正議決すべきものと
決定した次第であります。
右御
報告いたします。(
拍手)