○羽生三七君 只今議題となりました
農業災害補償法の一部を改正する
法律案、
農業災害補償法臨時特例法案、
農業共済基金法案の三法案について農業委員会における審査の経過並びに結果を御
報告いたします
これらの三法案は、いずれも農業災害補償制度に関する
法律案でありまして、相関連いたしておりますので、委員会におきましては、これら三法案は一括審議を行うことを適当と認め、一括審査を行いましたので、従
つて審査
報告もこれを取りまとめて行うことにいたしたいと存じます。
先ず只今の
法律案の内容についてその概略を御
説明いたします。
最初は
農業災害補償法の一部を改正する
法律案についてでありまして、本
法律案は
政府原案に対して衆議院で修正が加えられて本院に送付せられたのでありますが、
政府原案は現行法に対して大要次のような改正を行わんとするものであります。即ち第一は、現行法は、その第十二條において、農業共済組合が支拂うべき水稻、陸稻及び麦等の食糧農作物を共済目的とする農作物共済に係る共済掛金の一部を食糧管理特別会計が負担することとなし、而してその負担金を食糧の消費者がこれを負担するように食糧の売渡価格を定めなければならないことに
規定いたしておるのでありますが、併しこの
規定は、農業災害補償制度創設以来、毎年臨時的立法
措置によ
つてこれが適用が除外せられ、食糧の消費者負担を取りやめて一般会計において国庫が負担して来たのでありますが、かような経緯に鑑み、これを恒久化して、今後は一定の率によ
つて国庫が負担することとなし、なお蚕繭を共済目的とする蚕繭共済並びに牛又は馬の死亡廃用共済にあ
つても、その共済掛金について、これが一定率を
昭和二十四年から
昭和二十六年までの期間を限
つて国庫が負担することに
規定せられているのを、これ又今後恒久的に国庫が負担することになさんとするものであり、第二は、農業共済団体の役員は総会においてこれを選挙することにな
つているのでありますが、農業共済組合の役員については、農村の
実情に即応して、定款の定めるところによ
つて、総会外、即ち町村内の適当な所に投票所を設けて選挙することができることとなさんとするものであり、第三は、農業共済団体の役員の任期は一ヵ年を原則とし、定款で定めたときは二年以内とすることができることにな
つているのでありますが、役員の能率の発揮に資するため、三年以内において定款で定めることとなし、その任期を延長することとなさんとするものであり、その第四は、農業共済団体の業務又は会計に対する行政庁の検査は、従来は
所定の條件によ
つて、組合員から請求があつた場合、又は農業共済団体の業務又は会計が法令等に違反している疑いがあると認められるときに限
つてこれを行うことができることとな
つているのでありますが、業務の健全な運営を期するため、随時これを行うことができることとなさんとするものであります。かかる
政府の原案に対して、衆議院において、農業共済団体に対する行政庁の検査は、
政府原案による随時検査ばかりでなく、毎年一回常例検査を行わなければならないこととなし、又農業共済団体において組合員に対して行う国庫が負担する事務費以外の事務費の賦課についてこれを規正せんとする修正を加えたのであります。
次は
農業災害補償法臨時特例法案についてでありますが、本
法律案の提出の
理由については、現行
農業災害補償法においては、水稻及び麦の農作物共済は、耕地の名筆ごとに引受けて、各筆ごとに三割以上の被害があつた場合に補償が行われる建前にな
つておるのでありまして、この
やり方においては、農家全体としては平年作であ
つても、一部の耕地が三割以上の被害があれば補償が受けられるのでありますが、併しその半面、病害虫等によ
つて全体として相当な被害を受けた場合でも、各筆の被害がそれぞれ三割以内であるときは共済金の支拂を受けることができないような不合理がありますので、将来は農家単位に引受け、農家單位に補償する共済方法にすることが制度の
趣旨に鑑みて必要ではないかと
考えるわけでありまして、かような事情に鑑み、水稻又は麦にかかる農作物共済を行う全国の農業共済組合の中から一定の基準の下に約五%の組合を選定し、この組合について、従来行われている耕地一筆單位の共済と異なる、いわゆる農家単位の共済を一定期間試験的に実施し、この実施成績を検討の上、農業災害補償制度の根本的な改正を図ろうとするものであると述べられておるのであります。
而してその実施方法を
規定せんとするのが本
法律案の
趣旨でありましてこれが内容とするところは大要次のいうであります。即ち第一は、共済金額と共済金についてでありまして、これは水稻及び麦につきそれぞれ収穫物の石当り価格の八〇%を標準として石当り共済金額を定めて、この石当り共済金額に平年作における収量の八〇%を乗じた金額を各農家の共済金額とし、各農家の共済事故による耕地ごとの減収量を合計したものがその農家の平年における収量の二〇%以上と
なつた場合に、石当り共済金額にその二割を超えた数量を乗じた金額を共済金として補償することとなし、第二は、共済掛金でありまして、農家單位の共済を
行なつた場合には共済金が減り、又共済掛金の支拂も減少するものと予想されますが、併しこの点の資料がありませんので、組合単位では、一応現行
通りの掛金額を積み、現行
通りの保険料を連合会に納めることとなし、而してこの間における農家負担の調整と、試験の実施を奨励する
意味合いにおいて農家負担掛金の二分の一に相当する額の補助金を国庫から当該農家に対して交付することとなし、又会計を区分して、実験期間中に農家単位共済から生じた剰余金は実験終了後に当該農家に拂い戻すことにな
つているのであります。
次は
農業共済基金法案についてでありまして、農業災害補償制度は長期均衡の観念を基礎として
成立している制度でありますから、短期間について見、れば、保険金の支拂
責任額が当該年度の手持保険料の額以上に上り、不足金を生ずる事態が発生するわけでありまして、この不足金に対して資金を融通することは本補償制度運営上欠くことのできない
措置でありまして、而してかかる融資については、災害発生の都度応急対策を講ずるにとどまらず、恒久的対策として制度化せらるべき問題と
考えられ、国の再保険金支拂については、過般農業共済再保険特別会計法の改正によ
つて基金勘定が設置せられたのでありますが、農業共済組合連合会については、受信能力においても、又金利負担能力においても極めて乏しいにもかかわらず、従来これら資金供給のための制度を欠いておりまして、罹災農民に対する共済金の支拂が遅延し、本補償制度の円滑な運営に支障とな
つていた経過に鑑み、連合会に保険金支拂のための準備基金を設け、共済金の迅速且つ円滑な支拂を制度として保証せんとするのが本
法律案を提案するに至つた
理由とされております。
而してその内容は大要次のようであります。即ち先ず本基金の出資金でありまして、基金の出資金はこの際当面必要限度の三十億円にとどめ爾後必要の場合には財政資金の導入等によ
つて基金の運用に遺憾なきを期したいと述べられております。而してこの基金の出資は、木補償制度の性格から見て補償体系の一環として国がその
責任のすべてを負担すべきものとも
考えられますが、併し他面、国の財政の
現状並びに連合会が基金制度の受益者たる地位にあるとの
理由によ
つて、
政府と連合会の半額ずつの共同出資とし、なお連合会の出資の支拂は五カ年以内において分割拂込によることとなしてあるのであります。その他、基金の設立、会員、運営及び監督等について
規定し、会員は農業共済組合連合会を以て強制加入とし、役員は理事長一人、理事三人、監事二人であ
つて、いずれも総会において選任して農林大臣の認可を受けることとなし、理事長の諮問機関として、会員代表八人、学識経験者五人からなる運営委員会を置くこと等が明文化されているのであります。
委員会におきましては、農業災害補償制度を現行のように強制的な制度とするか、或いは任意的な制度とするか、その適否、農作物共済にかかる共済掛金の国庫負担額算定方法の当否、新規導入家畜に対する死亡廃用共済掛金の軽減、建物共済の
現状、建物共済のあり方及び建物共済をめぐる農業協同組合と農業共済組合との競合の調整、臨時特例法案による農家單位共済の施行は、農家単位共済を実施することを前提として、これがため必要な資料を得ることを目的とするものであるか、或いは一筆單位共済と農家單位共済との得失を比較検討するためのものであるか、その真意。本試験はこの程度の規模及び年限を以て果して信をおくに足る成果を収めることができるか、
農業共済基金法案について、基金なる特殊な機関を新たに設けることの要否、資金の必要額、資本金額の適否及びその不足対策、並びに今後における増資方針、資本金の半額を農業共済組合連合会の出資とすることの可否及びこれが拂込の能否、農業共済組合連合会の出資金の各連合会に対する配分方法の適否、資金の貸付方法、出資金に対する配当、農業共済組合連合会における事業不足金の現況及び今後の
措置、その他の問題について真摯な質疑が交わされたのでありまして、これが詳細については
会議録に譲ることをお許し願いたいのであります。
而してその中でも、関心は、特に、基金なる特殊な機関を新たに設けることの要否、資本金の必要額、資本金の半額を農業共済組合連合会の出資、延いては農家の負担とすることの可否に注がれたのでありまして、「連合会の保険金の支拂いに必要な資金の供給を潤沢且つ円滑にすることは、農業災害補償事業の運営の健全を期するため極めて肝要なことであるが、併しかような資金は、農業災害補償制度の性格に鑑みて、その必要額の全額を国の
責任において融通すべきものであ
つて、本法案に見るように、その半額を農家から出資せしめることは、その
趣旨において妥当を欠くものであり、更に農家経済の現況において、かような資金を農村から吸い上げることとなさんとするがごときは無謀の
措置であ
つて、
我が国農業に対する
政府の認識を疑わざるを得ない。而も基金というような特殊な機関を新たに設けることは、出資を増大して資金コストを引上げる結果となり、適正な
措置とは認められない。なお三十億円程度の資本金では所期の目的が達せられるか疑わしい。よろしく
政府は全額国庫の負担で十分な資金を用意し、農業共済再保険特別会計或いは既設金融機関を利用してコストの低い資金を融通することとすべきではないか」との
趣旨の質問に対して、
政府当局からは、「十五億円の出資は、農家にと
つては容易ならざる負担と思われるのであるが、基金は農業共済組合連合会の事業不足金の融資が目的であ
つて、現行農業災害補償制度は、いわば国と農家との共同事業とな
つており、その制度の一環として連台会段階の基金を
考える場合、基金の出資も国と農家が共同で分担するということも
考え得るのではないかと思われる。尤も農家経済に及ぼす
影響並びに農家の負担を勘案して、
政府の出資は設立と同時に一度に十五億円を拂込み、農家の出資十五億円は五カ年以内に分割して拂うことといたしてある。更に又、今回水稲の料率改訂に当
つて、従来行われて来た安全割増が廃止された事情をも
考え合せたのである。資本金三十億円は少額であると言わざるを得ない。近い将来において数十億円の資金が必要となる事態も起り得ると
考えられる。併しこれは将来における災害如何によることであ
つて、断定しかねるが、今後漸次国の負担を増して基金の内容を充実したい。而して農家の出資を期待する
関係上、資金の取扱は特別会計等によることは適当でないと認められ、今回計画した基金制度という新たな機関を設けることとしたい」という
趣旨の答弁がなされたのであります。
かくて質疑を打切り、続いて討論採決の運びとなりました。
先ず
農業災害補償法の一部を改正する
法律案について
衆議院送付案を議題に供し、討論に入りましたところ、島村委員から、「現行農業災害補償制度に関する各
方面からの批判に鑑み、徹底的検討を加え、抜本的対策を講ずること、及び建物共済に関して農業共済組合及び農業協同組合両団体の
関係を調整すること」等の希望を付して
賛成があり、続いて採決の結果、多数を以て
衆議院送付案の
通り可決すべきものと
決定し、
次に
農業災害補償法臨時特例法案を議題に供しましたところ、別に
発言もなく、採決の結果、全会一致を以て原案
通り可決すべきものと
決定し、
続いて
農業共済基金法案を議題に供しましたところ、討論に先立ち、島村委員から、本法の運用について次のように
政府に対し申入れることについての動議が提出せられ、全会一致を以てこの動議は
成立、直ちに
政府に申入れを
行なつたのでありますが、その申入れの要旨は次の過りであります。
農業共済基金法の運用に関する申入
農業共済基金法が
成立し、これが実施せられる場合において、その運用に当
つて特に次の事項について遺憾なきを期せられたく、右申入れする。
(一) 今後農業共済基金の資金の増加に努め、しかして増資は
政府の出資の増加を以てこれに充て、全員の出資の増加はこれを避けること。
なお、資本金の増額に至る過程における連合会の事業不足金に対しては、
政府において遺憾なく融資の
措置を講ずること。
(二) 会員出資金の拂込並びに農業共済組合及び組合員のきよ出金の徴収については、農家の経済及び災害の状況等を勘案して、拂込又はきよ出の時期及び金額を斟酌し、農家経済に困難を強いる結果を招来しないよう適当な
措置を講ずること。
これに対して、出席の廣川農林大臣から、「
努力以て御期待に副うようにいたしたい」旨の言明が行われたのであります。
次いで討論に入りましたところ、修正
発議者を代表して島村委員から、「本基金法案が
規定するように連合会が出資金の一部を負担することは忍びがたいことであるが、又止むを得ないことかとも
考えられる。併し拂込期間や第一回の拂込総額の最低額を法律で
規定することを取止めて定款に委ね、基金自身が自主的な判断の下に適正な処置を講ずるようにすることが適当である」との
趣旨による修正案が提出され、小林亦治委員から、先の申入れの
実現に対して
政府の
努力を求められて
賛成があり、岡村委員から、本
法律案において見られるように、かかる資金を農村から吸い上げるという
考え方に対しては
反対であるが、併し今後農業の保護に対して
政府における万全の対策を期待し、且つ本
法律案作成に対する各委員の
努力を多として
賛成があり、池田委員から、
政府における農業
政策の確立と、先の申入れに対する
努力を要望して
賛成があり、飯島委員から、建物共済をめぐる農業協同組合及び農業共済組合両団体の
関係の速かなる解決を望んで
賛成があり、かくして討論を終り、採決の結果、全会一致を以て、
政府原案に対して、島村委員が代表して提案せられた修正を加えて、可決すべきものと
決定した次第であります。
右御
報告申上げます。(
拍手)