○有馬英二君
只今議題となりました外国の
領事官に交付する
認可状の認証に関する
法律案につき、外務
委員会における
審議の
経過と結果を御
報告申上げます。
日本国との平和條約の効力発生に伴い、現在までに我が国と二十四カ国との間に外交
関係が回復いたしましたが、相互に大公使等の外交使節を交換いたすのみならず、これらの国から在外国民の保護や通商航海上の利益の保護増進に従事する
領事官が我が国に派遣されて来ることも当然のことであります。この
領事官の派遣につきましては、各
領事官が本国の元首や
政府から委任状を持
つて参り、これを我が国の
政府に提出し、我が国の
政府からこの
領事官に
認可状又は認証状を交付することによ
つて、正式に我が国における
領事官としての地位を獲得するというのが国際慣例とな
つているのでありますが、相手国元首の委任状を提出した
領事官に交付する
認可状に対しては元首の認証を必要とすることが慣例とな
つているのであります。
日本国憲法第七條第八号によれば、かくのごとく国際慣例によ
つて認証を必要とする外交文書に対する天皇の認証については、
法律によ
つてこれを定めることを予想しております。先に本院において可決いたし、施行されました外務
公務員法は、第九條において我が国から派遣される大使及び公使の信任状等及び
領事官の委任状には天皇の認証を要する旨を定めておりますが、外国の
領事官の
認可状については定めておりません。そこで外国の
領事官に交付する
認可状の認証について立法
措置が要求されるわけであります。
本
法律案は一カ條から成り、外国の
領事官に交付する
認可状は天皇が認証するということを定めております。
外務
委員会は、五月十六日、予備審査において
政府側より
説明を聽取いたし、六月三日に
質疑、同五日に討論を経て採決を行いましたところ、
全会一致を以て
原案通り可決いたした次第であります。
右御
報告申上げます。
次に外務
委員会に付託せられました
国際植物防疫條約の
締結について
国会の
承認を求めるの件につき、外務
委員会における
審議の
経過と結果を御
報告いたします。
この條約は、一九五一年十一月に開かれた国際連合食糧農業機関の第六回総会に上程され、同年十二月六日
関係各国の署名を得て成立いたし、当時我が国代表もこれに署名済のものであります。
この條約の
趣旨とするところは、近年植物に対する病害虫が世界的に蔓延するので、一国の孤立的国策だけではこれを防除することができませんので、国際協力により目的を達せんとするものであります。そのために、国際取引に関連する植物及び植物生産物に対する防疫事業の強化、植物検疫証明書様式の統一、植物の病害虫の発生状況に関する情報の交換等を
規定したものがこの條約の
内容であります。
これに
加入いたしますれば、我が国は外国における病害虫の発生状況等が早急に通報され、輸入検疫上又は国内における防除対策上、
種々便益を受けることになるのでありますし、又締約国の植物防疫
関係法令や検疫の
実施状況等も明らかになり、安んじて農産物の捻出を行い得るのであるとの
政府の
説明でありました。
外務
委員会は、五月十六日、六月三日及び六月五日の三回に亘り、
本件を
審議いたしましたが、別段の問題もなく、
全会一致を以て
本件は
承認すべきものと決定いたした次第であります。
次に、
只今議題となりました千九百二十三年十一月三日にジユネーヴで署名された
税関手続の
簡易化に関する
国際條約及び
署名議定書の
締結について
承認を求めるの件につき、外務
委員会における
審議の
経過と結果を御
報告申上げます。
政府側の
説明によりますと、この條約及び
署名議定書は、
税関手続の
簡易化を図ることが通商の衡平な待遇を実現する重要な手段であることに鑑み、
税関手続の
簡易化及び衡平な
適用並びに関税率及び関税規則の公表について、国際的に協力することを目的として作成されたものでありまして、一九二三年十一月三日にジユネーヴで署名され、その加盟国は三十六国に上
つております。我が国は一九二四年三月十七日にこの條約に署名いたし、その後歴代の内閣はしばしば條約の批准方を奏請したのでありますが、その都度、内閣更迭等の事情により、その奏請は返戻され、続いて満州事変を契機として我が国と連盟との
関係悪化等あり、遂に今日まで批准されるに至らなか
つたのであります。我が国は昨年九月八日にサンフランシスコにおいて、この條約及び
署名議定書に
加入することを宣言しておりますから、これに一日も早く
加入することは我が国の国際信用を高めるゆえんであるというのであります。この條約は、前文、本文三十カ條及び議定書から成
つており、前文において先に申上げました目的を謳い、本文は、
税関手続の衡平
簡易化及び公開の三原則に関する
規定、税関
制度の専門的事項に関する
規定を骨子といたしております。
外務
委員会は、五月十六日予備審査において、
政府側より
説明を聽取した後、同二十九日及び六月四日の両日に
亘つて大蔵
委員会との連合審査を行いましたが、
質疑応答の詳細は議事録に譲りまして、一、二の点を申述べますると、次の
通りであります。即ち、この條約の第三條は、締約国が輸出入の禁止及び制限を事情の許す限り速かに最低限とする
措置をとることを約束しておりますが、我が国の批准が遅れたのは、單なる内閣更迭等の事情のみならず、この條項を我が国にと
つて不利と考えたためではなかつたかとの疑点に対し、その
ような
理由に基いて批准が遅れた
関係はない旨の
答弁があり、
〔副
議長退席、
議長着席〕
又同じく第三條の
規定する約束に他の締約国が違反したときは、我が国として十分抗議が行える旨の
答弁がありました。更に我が国が現に中共に対してと
つておる通商政策は、第三條とは正反対ではないかとの
趣旨の問いに対しては、それは侵略に対する防止
措置であ
つて、第三條とは別問題である旨の
答弁がなされました。又米国がこの條約に
加入していないのは、同国が国際連盟に加盟していなかつたためである旨が明らかとなりました。なお米国は
税関手続の
簡易化に反する傾向をと
つているから、これが是正に
努力すべきである
趣旨の
要望が
政府に対してなされました。
かくして六月五日
質疑を終り、討論を経て採決を行いましたところ、
全会一致を以て
原案通り承認すべきものと決定いたしました。
更に、
只今議題となりました
国際通貨基金協定及び
国際復興開発銀行協定への
加入について
承認を求めるの件につきまして、外務
委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告申上げます。
政府当局の
説明によりますと、第二次世界戰争中から、戰後の国際経済の秩序ある発展を図るためのいろいろの案が研究されていましたが、一九四四年七月に、米国
政府の招請によ
つて、米国ニユーハンプシヤー州ブレトン・ウツヅに四十四万国の代表が参加する連合国通貨金融会議が開かれました。この会議において
国際通貨基金協定及び
国際復興開発銀行協定が採択され、一九四五年十二月二十七日に、基金は二十九カ国、銀行は二十八カ国によ
つて署名され、同日に効力を発生いたしました。
基金が主として経常的な国際決済に関する比較的短期の国際金融操作を目的とするのに対して、銀行は比較的長期に亘る国際投資を促進し
ようとするものであ
つて、特に戰争によ
つて破壊せられた世界経済の復興及び戰時経済から平和経済への円滑な移行をその主たる目的としているのであります。我が国といたしましては、国際通貨基金への加盟によ
つて、我が国の必要とする特定の外資を一定限度内で基金から買入れることによ
つて、対外収支の一時的不
均衡を調節し、我が国の対外信用を高め、他の国際機関、特に国際復興開発銀行への加盟を容易にすることを期待できるのであります。なお、我が国は国際復興開発銀行への加盟によ
つて、復興開発のため必要な外貨資金を直接同銀行から借入れ、又同銀行の保証を受けて民間の外貨の導入を容易とすることを期待することができるのであります。
この
内容について今暫らく
説明いたしますと、基金は、我が国の加盟條件をきめるため、オランダ、英国、濠洲、ブラジル、米国、中国の六カ国の代表から成る
委員会を設け、我が国の過去の貿易額、国民所得、金、ドルの保有額を参考とし、加盟條件として割当額二億五千万ドル、拂込額六千二百五十万ドルと定められました。なお、銀行に対する株式応募額は基金の割当額と等しい額であり、その二%を金で拂込むことにな
つています。銀行の場合には、銀行の融資額と株式応募額とは
関係なく、銀行融資の総現在高に一定の制限あるほか、各国別の制限はありません。右の金による拂込以外の拂込は円でするわけでありますが、これは公債で差支えないので、これについては別途立法
措置をなす必要があるとのことでありました。
政府は昨年八月九日に加盟を申請いたしておりましたところ、最近その
加入の
見通しが付きましたので、両協定への
加入について
承認を求めるということであります。
本案件は、去る五月三十一日、本
委員会に付託されましたので、本
委員会は五月十五日予備審査、六月五日と、二回に亘り
審議いたしたのでありますが、
質疑応答の詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて
質疑を終了の後、討論を経て採決をいたしましたところ、
全会一致を以て
政府提案
通り承認すべきものと決定いたした次第であります。
以上御
報告申上げます。(
拍手)