○森崎隆君 私は社会党の第四控室を代表いたしまして、この
法案に反対の意を表したいと思います。
第一の理由は、
審議につきまして原則的な理由を私たちはどうしても忘れることができないのであります。この
法律案は、つい四、五日前に突如として出されまして、
人事委員会の私たちの合同
審査の申入れに応じましてまあ三回開いて頂きました。恐らく
外務委員会で
愼重に何回
審議をされましたか、私は存じませんが、それは五回以上の
審議はなされなかつたろうと私は想像をいたします。こういうような重要な
法案が突如として出されまして、
国会で大事な
法案を待ち受けている案外閑な段階におきまして、月末までに上げなければならないといつた理由で、十分
審議を盡さないような、そういう
一つの予定を考えた上で出されて、これが本日の
会議に上程されますこと自体に、非常に私は不満がある。果してこれが民主的な参議院の
審議のやり方であるかということに深い疑いを持つのであります。従いまして、この
法案の十分な
審議が第一にできません。
第二には、この
法案についてはどうしてもしなければならない
修正の個所がたくさんある。あなた方は帰
つて今日でも明日でもいいのですが、自然休会の間、これは二時間だけ時間を取
つてこれを読んで頂けばわかる。
国家公務員法がありますから、両方を一度勉強して頂きたい。両方を比べまして逐條
審議を家でや
つて頂きます。そうしましたら矛盾だらけです。どうしても直さなければ、参議院の議員として本当にこれは良識に恥じなければならないようなものがたくさんある。これを私は指摘いたしたい。そこを何とか
修正いたしたいということを、つくずく私は口をすつぱくしていろいろ申上げたのでありますが、とうとう
外務委員会では押切
つて、今この通り上程されております。これは非常に私は遺憾だと思います。今後我々は
法律案の
審議につきまして、
政府が如何なる政略的な意図を以て、丁度今出せば通るだろうというので、時機を狙
つて突如として出して参りましても、参議院は、おつと待つた、もう少し考えさせろと言
つて、十分に
審議をして頂いて、参議院本来の使命を達成して頂かなければ……。これは具体的な事例なのです。これは特に皆様方に訴えたいと思う。非常に、私はここで、こういうような單なる簡單な過程、
審議も盡さずにやりまして、
委員長の
報告が済んで、三人の反対
討論の者が出まして直ぐ
採決で満場一致とか何とかい
つてやられてしま
つては、これはあとから困る。
政府自体が困ります。
外務職員自体が困ります。
日本の
法律がこれによ
つて非常に冒涜されます。これをあなた方は考えて、この責任をどうしてとりますか。この原則論を特に私たちは
一つ皆さんに御認識を頂きたい。これが私たちの第一点であります。
いま
一つは、
人事院の
権限が実質的にこれが非常に制約されて来ております。同時に
国家公務員法に関しまする違反
事項がこの中にたくさん出て参
つております。言い換えましたならば、これには二つの面がございます。第一は、
外務職員自体はそう考えていないかも知れませんが、
外務職員の幹部連中はとんだ考えを持
つているのじやないかと思うのです。
国家公務員の中で、
外務省に勤めている俺たちは、少し毛色の変つた、優秀な、埓外な人種か、
公務員種か何かわかりませんが、そういう
一つの潜在的な優越感というものを持
つているのじやないかと私は思う。ところが、この優越感でこういう
法律ができ上
つて通りますと、その結果、
外務職員全体が、これによ
つて非常に自己の
国家公務員としての
身分の保障その他の問題でやがて困る時期が必らず来ると、私は今から断言申上げたい。幹部連中は来ないかも知れませんけれども、
外務関係の
職員というものはたくさんあります。運転手の人もありますし、小使さんもおりますし、いろいろあります。大多数の人が、これによ
つていろいろな不利益な面をこうむる。自己が正当な理由によ
つて主張する機会を得ようといたしましても、これは葬られる場合がたくさん出て来る。非常にこれは
危險な
法案である。それ自体にいわゆる隆盛であらゆる権力を掌握した
政府が我が世の春を謳
つておるそのときに、これに追随した一部の幹部連中がそういう気持で作つたとするなら、後においてとんでもない問題が必ずこれは起
つて参ります。具体的な事例につきましては、今前者の二人のかたがたからお話がありましたので、特に私は細かいことは申上げたくないと思いまするが、ただ
一つ二つだけ申上げたいのは、第一は、今申しましたまうに、
国家公務員法の蹂躪の
一つの
法案であるということが第一、この中にはいろいろな面がございまするが、私は
格付の問題、昇任、又勤務成績の評定等が全部
人事院から離れまして、
外務大臣並びにその出す
政令によ
つていろいろ決定されるということ、これもございましようが、一番大事なのは、前二者のかたがたも申されましたように、この第十九條から二十一條までの、この問題でございます。これは繰返すようで恐れ入りますが、特に申上げておかなければならないと思いまするが、これは
外務大臣がいわゆる
任命権者でございまして、
任命権者である
外務大臣が、お前はどうも悪いとい
つてこれを首を切る。国家の重大な機密を漏洩したというような理由で以て首を切る。首を切
つて、切られたところの人が、私は秘密の漏洩をしたことはございませんとい
つて、いわゆるこれに対しまして
審査の
請求をいたしました場合、これは
公務員法に八十六條という
規定があるにもかかわりませず、それを採用しないで、
外務大臣にこの
審査の要求をしなければならない。首を切つた人に、私は毛頭無実でございますから考え直してくれとい
つて持
つて行く。首を切つた人がそれに対して再び審理を受理し、
審査請求を受理いたしまして、そこで、その結果ですね、受理した
事項につきまして、それを判定して、判定に基いてこの職務は正しいと言つたり、或いは
修正が必要、或いは取消をするということは、全部これは首を切つた
外務大臣自体がしなければならない。これは恐らく文化国家のどんな国の
法律におきましても、こういうようなことは、封建時代が持
つておる悪風ならいざ知らず、こういうことは絶対にあり得ない。現段階において、こういうようなことが許されていいかどうか。非常に私は重大な
一つの錯誤であると私は考えるわけでございます。そこで、それにつきまして機密漏洩の科を以て首を切られた場合にどうなるか。皆さん方常識的に考えて頂いてもいいんです。大使とか、
公使とか、領事、又これに直属するところの重要な任務を帶びて一緒にこういう外交
方面の職務を遂行している人々ならいざ知らず、運転手とか、コツクさんとか、給仕さんとか、掃除夫、宿直員といつたような人が、果して国と国との間の重大な機密そのものを漏洩するような、そういうことが果してできるかできないかお考え頂きたい。(「あり得るよ」と呼ぶ者あり)若しこれがあり得るとしましたならば、その
任命権者自身に責任があると思う、これは……。そういうスパイを知らずして採用すること自体に
外務大臣が……、(「よく知らないんだ」と呼ぶ者あり)よく知らないんならその
外務大臣にならなければいいんだ。以てのほか。そういう場合に
外務大臣自体が責任をとるということをここへ書けばいいんです。(「その通り」と呼ぶ者あり)それを書かないで、小さな小物に、若しそういうことがあつた場合、恐らく今はそういうプロパピリテイは実に微小なものだと思う。(「それは
日本自身の考えだけだ」と呼ぶ者あり)これは常識です。普通の常識で考えたら当然これは言えることなんです。それを小さな、そういうところだけを首にするという、こういうような馬鹿なことは、一体、私は
法律で
制定されていいのかどうか考えたい。同時に、この
審査請求者に対しまして、さつき申しましたように、第三項でしたか、第一には弁護人が付けられてない。口頭審理につきましては、これは非公開。これは皆さん方が非常に日頃毒ずいておるところの、あなた方が非常にお嫌いな或る国の中にそういうような非公開の審理があるとか、闇のうちに鉄砲で殺されるとかいうことを非常に宣伝して書き立てておりますが、これと同じです。変らないんです。自分が悪日言
つておるような、そういう
政府の、や
つておるか、や
つておらないか、わからないが、や
つておるとおつしや
つて宣伝していらつしやる、そういう宣伝者自身が同じことをやろうとしておる。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)非公開ですからね。秘密裡にこれは
審査して、銃殺と言うても仕方がない。秘密ですからね。或いは漏洩したということで、それで済むんです。こういう馬鹿な
法律で、
国家公務員のうちの
外務公務員、これの全体の
権限がこれで非常に危機に直面するということは以てのほか。絶対に私は許しがたい。こういう線をどうしても
修正しなければ困るんです。今までお前の独断だ何だと言
つていろいろデマを飛ばしておりまするが、これを
実施して御覧なさい。
実施したら必らず一年、二年のうちにこれの
修正をしなければいけない個所が出て来ます。そのときにおきまして現議員であつた場合は、私は一発くらわしますよ。今
賛成してお
つて、あとにな
つて何だ。はつきり今から私はあなた方にはつきり申上げておきます。これだけは腹をきめてこれにかか
つてもらいたい。(「わかつたわかつた」と呼ぶ者あり)わかつたらわかつたで責任を持
つてもらいたい。
それからもう
一つ、私は全体的な面からここで申上げたいが、
法律案というものが
政府提案されまして、
委員会にかけられて、これをいわゆる我々審理をして行きまするが、
法律案の中で例えば一條から百條まである中で、三條と五條は目下製作中だから、これはちよつと分けちま
つて、ほかのだけ全部かけて、これを早く何とか通してくれと言
つてあなた方通せますか。大事なものが抜けているのですね、この
法案の中に……。何條でしたか、第四章ですかね。第四章の
給與、第十三條にこう書いてあります。「在外公館に勤務する
外務公務員の
給與は、在外公館に勤務する
外務公務員の
給與に関する
法律に基いて支給するものとする。」こう書いてあるだけなんです。(「いいじやないか、支給するんだから」と呼ぶ者あり)
内容はわからない。
内容がわからずして、すぐその前の所に勤務地手当の八割を支給するとか何とか書いて、いろいろなことが
給與に関して出て来ておる。
審議のしようがないのです。不完全な、大事なものだけ抜いてしま
つて不完全な
法律案を出して……不完全なことはわか
つているのですよ。そうしてこれを出して、これを早く通してくれ、こういうような提案の仕方が果して民主的であるか、良心的であるか、これを又得々として
委員会でこれを
審議したような形で、これを通過さして行くようなことが、参議院の議員としてできるかできないか。(「できないぞ、できない」と呼ぶ者あり)これは皆様方に特に御判断願いたいと思う。而も
公務員全体につきましては、
給與の問題というのは非常に大事な問題ですよ。
給與の問題は大事だ。この第四章の十三條、
給與に関しては例えば
国家公務員の中のいわゆる
一般職の
給與のいわゆるそのべースをそのまま
適用すると、ここに書いてある。これは問題はない。これはいろいろ勤務地が変
つていろいろの問題が含まれているのです。それを全然出さないで、それだけ除けて、ほかの問題だけ
審議しろ、はあ、かしこまりましたと言
つてあなた方はや
つているんでしよう。あとから又出すという、こんな馬鹿なことがありますか。これに関連したところのものがたくさんこの中に入
つている。これでは私どもはまじめに
審議できない。もう
一つは原則的な問題でございますが、これはさつきも千葉議員が申されましたように、前の第十一臨時
国会でございましたあの議院運営
委員会において、我々が口角泡を飛ばして議論したのは、全権
委員の例の
一般職と
特別職で、無理矢理あのときは
一般職だと押切
つてしま
つたのです。これは、今度はこれは良心的に
特別職だと思いましたので、入れました。……とうとうこれは
特別職に入れてある。その問題は繰返して申しませんが、この中には
外務職員の中でいわゆる
一般職に入るべきものがやはり
外務職員特例法という形の中に入
つている。これは皆さん方は
給與に対する
法律、
国家公務員法等につきましてはお素人のようでございまして、何でもないように考えているようでございますが、これは私は将来に悪例を残すと……(「自惚れるな」と呼ぶ者あり)例えば加藤君も知
つてるはずです。
一般職に現業
職員がおりますよ。
特別職にも現業
職員がおりますよ。
一般職と
特別職の両方に現業
職員がいるから、
一般職と
特別職から除けて現業職というものの
法律を作
つてくれといつた場合は成り立つでしよう。こういうように
法律を複雑化し、こういうものにでつち上げて、
特例というものに名をかりて、
国家公務員の枠外に掲げて優越感を感じようと、
従つて、その背後に
危險を感ずべきことを知らずしてこういう
法律を出して、その中に今言つたような
給與体係、又
公務員に対する
給與の
規定というものをだんだん複雑化して行くような出し方、こういう
法律案というものは、私たちはもつと時間を頂きまして、まじめに考えて、果してこれでいいか、止むを得なければこれをどういうように
国家公務員法との間に関連性を持たして行くかということについて、もつと考えなければならん。少くとも
国家公務員法違反の事件が六
事項はこの中にあります。もう時間がないからあえて一々申しませんが、六
事項だけは
国家公務員法違反。一方の大切な
法律を犯してまで無理やりにこの
法律を作ろうという、とんでもない。
特例じやない。
特例とい
つては許されまい。それ以上に
法律を踏みにじるようなそういう
事項がこの中にあるということを申上げる。今日私たちは或いは
採決の結果負けましようけれども、あなた方は勝
つても、参議院議員の良識におきましてお帰りにな
つてこれを研究して頂きたい。笑い事ではありません。後にな
つて後悔したりすることのないように、この問題は政党政派にかかる問題でない。良心的に
法律を
審議する責任者として申しておる。責任者の一人々々に申上げたい。こういうことがまじめに
審議されてこれが
採決されるなんということは……、私は実際皆さん方が参議院の本来の使命とかえらそうにおつしや
つておられますが、それは口先ばかりのことであろうと考える。
いろいろ申したいことが多々ございますが、私は抽象的に以上の数点だけを特にお訴え申上げまして、特に今後とも
法律につきまして提出されますときには、提出の仕方、
審議の時期、良心的な
修正につきましては、まじめにお互いこれは考えなければならない。特に私たちは皆さん方にこの点を御忠告申上げて、私は反対論といたしたいと思います。(
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