○和田博雄君
只今議題となりました
昭和二十七年度
一般会計予算、
昭和二十七年度
特別会計予算及び
昭和二十七年度
政府関係機関予算の
予算委員会における
審査の
経過並びに結果を御
報告いたします。
申すまでもなく
昭和二十七年度
予算は
平和條約並びに日米安全保障條約の
発効に備えて編成されたものでありまして、この意味において画期的な
予算であるばかりでなく、同時に又それと関連するいろいろの点で未だ曾
つてない重大な問題を含んだ
予算であるということが、
予算委員会における
審議の
経過を通じていよいよ明白と
なつたのでありますが、先ず
順序といたしましてこの
予算の主なる
内容を申上げます。
先ず
一般会計歳出総額は八千五百二十七億円でありまして、これを前年度と比較いたしますと五百九十億円の増加とな
つておりますが、この歳出総額の約四分の一は平和回復に伴う
経費の占むるところとな
つております。即ち防衛支出金六百五十億円、警察予備隊
経費五百四十億円、海上保安庁警備救難関係費七十三億円、安全保障諸費五百六十億円、
連合国財産補償費百億円、平和回復善後
処理費百十億円、以上総計二千三十三億円でありますが、その大部分は防衛関係費でありまして、合計千八百二十三億円に上り、歳出総額の二一%を占めているのであります。
防衛支出金は日米安全保障條約に基いて駐留する米軍の必要とする
経費の一部を我がほうにおいて
負担するための
経費でありまして、行政協定第二十五條によりまして、日本は
米国が使用する施設及び区域を
米国に
負担をかけないで提供することと、
米国が輸送その他の必要な役務及び需品を日本で調達することに充てるため、年額一億五千五百万ドルに相当する額の円貨を提供することの二つの義務を負うこととな
つておりますので、前者の不動産賃借料等に必要な
経費九十二億円と、後者の米ドルに相当する円貨五百五十八億円とで合計六百五十億円となるのであります。而してこの五百五十八億円は日本
政府によ
つて四半期ごとに
米国特別勘定に繰入れられ、米軍の使用に供せられることにな
つているのであります。
警察予備隊につきましては、現在の人員七万五千人を十一万人に増員し、装備の強化、施設の充実を図ると共に、十月よりこれを保安隊に切替える予定でありますが、
経費総額五百四十億円のうち、現在の七万五千人に対する分は三百五億円、新期増員の三万五千人に対する分は二百三十五億円とな
つております。
海上保安庁につきましても、警備関係業務に従事する現在の人員七千六百人のほか更に六千人を増員し、これに必要な
船舶武器等はアメリカから貸與を受けまして、新たに海上警備隊を創設する予定とな
つております。
安全保障諸費は、防衛支出金並びに警察予備険及び海上保安庁に計上された
経費のほかに設けられた特段の防衛関係費でありまして、その使途として予想されておりますものは、例えば、一、
平和條約の
発効後米軍が大都市の中心部から周辺地区に駐留場所を移動する場合、これに伴う営舎、住宅等の建設に必要な
経費、二、右の移動に伴う有線、無線通信施設、その他営舎関係諸施設乃至附属工場、各種荷役設備等の建設に必要な
経費、三、巡視船等の装備の強化、監視施設の充実に必要な
経費、四、治安に関する機構の整備、学校その他教育訓練
機関の
設置に必要な
経費等が挙げられるのであります。この
経費の内訳は今後米軍の移駐等が更に具体化するのを待
つて初めて確定する性質のものでありますが、一応の目安として予定されておりますのは、営舎等の建設に三百七億円、通信施設、工場施設、荷役設備等の建設に百十七億円、道路の建設補修、港湾の整備等に百二十三億円、巡視船等海上保安庁関係に十億円、治安機構等警察予備隊関係に三億円、合計五百六十億円ということにな
つております。
連合国財産補償費は、
連合国財産について戰争の結果生じた
損害に対し補償を行うために必要な
経費でありまして、補償金の総額は約二百七十億円に上るものと見られておりますが、
連合国財産補償法第十九條において一会計年度における支拂
限度を百億円と定めておりますので、二十七年度には百億円の計上にとどめたものでございます。平和回復善後
処理費は、
連合国に対する賠償、対日援助費の返済、外貨債の償還その他対外債務の支拂及び占領によ
つて損失をこうむつた我が国民に対する補償等に充てることを予定いたしておるのでありますが、その金額が僅かに百十億円という少額にとどまつたのは、対外的な
経費については交渉等の関係上年度の当初においては支拂を必要としないこと、及び二十六年度補正
予算に計上した百億円が二十七年度に繰越されること等によるのであります。
以上が平和回復に伴う
経費二千三十三億円の内訳でありますが、この
経費を二十六年度
予算に比較いたしますと四百五十七億円の増加とな
つております。
平和回復に伴う
経費を除きましたその他の
経費、いわゆる内政費は総額六千四百九十四億円でありまして、二十六年度
予算に比して百三十五億円を増加いたしております。以下内政費の主なるものについて申上げます。先ず食糧増産対策費として四百三億円を計上しておりますが、これは前年度に比較いたしまして約九十四億円の増加とな
つております。公共事業費は千二百三十七億円でありますが、これは前年度に比し二百四十二億円の増加であります。出資及び投資につきましては六百九十七億円を計上いたしており、前年度に比較いたしまして六百五十五億円の減少とな
つておりますが、これは主としてインベントリー・フアイナンス、の著しい減少によるものでありまして、インベントリー・フアイナンスは二十六年度の九百三十七億円に対して二十七年度は三百五十億円と六百億円近くの減少とな
つておるのであります。なお、この
一般会計のほか、資金
運用部資金及び見返資金を合せまして、財政投資による産業資金の供給は千百八十五億円を予定いたしておりますが、前年度に比し二百五十億円の減少とな
つております。民生安定のための主なる
経費といたしましては生活保護費、社会
保険費、結核対策費、失業対策費等でありますが、これら
経費の合計は五百二十七億円で、前年度に比し約六十七億円の増加とな
つております。戰歿者遺族及び戰傷病者に対する援護費につきましては、戦歿者遺族に対する遺族年金、遺族一時金に充てられる交付公債の利子、旧軍人軍属に対する傷害年金、その他
厚生援護諸施設等に要する
経費として総額二百五十七億円を計上いたしておるのでありますが、この
制度に伴いまして、未復員者給與費、生活保護費等二十六億円が減少となりますので、戰歿者遺族等の援護に伴う純増加額は二百三十一億円ということになるわけであります。なお、遺族に與えられる交付公債は約八百八十三億円と予定されておるのであります。地方財政につきまして、平衡
交付金を前年度の千二百億円から千二百五十億円に増額いたしますと共に、別途資金
運用部資金による地方債引受の枠を前年度の五百億円から六百五十億円に拡張いたしておるのであります。
以上は歳出に関するものでありますが、次に歳入につきましては、租税及び印紙収入六千三百八十一億円、専売益金千二百五億円、雑収入等六百七十二億円、前年度剰余金受入、二百六十八億円、合計八千五百二十七億円とな
つております。歳入総額の七五%を占める租税及び印紙収入につきましては、過般の第十二回国会を通過した税制
改正を平年度化しまするほか、更に今回も税制
改正を行いまする結果、税法上七百五十八億円の減税と相成るにもかかわらず、国民所得の増加を見込みまして、前年度に比べて約七百七十四億円の増収を見込んでおるのであります。以上が
一般会計予算の主なる
内容でありますが、
特別会計予算及び
政府関係機関予算につきましては
説明を省略いたしたいと思います。
以上述べました
一般会計、特別会計及び
政府関係
機関を通じまして、総合的に収支の均衡を図り、いわゆる総合
予算の均衡を保持することに努めておるのであります。即ち対日援助の打切りによ
つて見返資金は四百六十五億円の支拂超過となるのでありますが、他方、資金
運用部における収入の増加と金融債三百億円の引受中止等の
運用計画の調整とによ
つてこれを相殺するごとといたしておるのであります。なお、
昭和二十七年度
予算は、財政法、会計法等の財政関係
法律の一部を
改正する等の
法律案の
趣旨に
従つて編成せられましたため、
予算科目等の
改正が行われているほか、新たに継続費が設けられておりますことは特に注目を要する点であります。
さて、
本案は一月二十三日予備
審査のため
委員会に付託されたのでありますが、当時、財政法、会計法等の財政関係
法律の一部を
改正する等の
法律案はまだ本院において継続
審査中でありましたのみならず、特に継続費等につきましては
予算審議の立場から極めて重大な問題でありまするので、
予算内容の
審議に入るに先だち、
委員会におきまして検討の結果、二月九日、本
委員長より、
委員会を代表いたしまして、大蔵
委員長に対し、継続費の設定については、止むを得ないと認めらるる場合にも、戰前における継続費
運用上の弊害に鑑み、その対象、期限又は金額につき適当の節度を保持し、いやしくも
予算の
審議権を阻害する等悪用せらるることのなきように処置方を特に申入れました。この財政法等
改正法律案は、その後、本申入れの
趣旨を取入れて修正議決せられたのであります。二月十八日池田大蔵大臣より
提案理由の
説明を聞いた後、あらかじめ周到に考慮された計画に基いて重要事項別に殆んど連日予備
審査を行い、次いだ二月二十七日衆議院よりの送付を待
つて本
審査の段階に入つたのであります。そこで、先ず三月四日、五日の両日に亘
つて公聽会を開きまして、各界、各方面の学識経験者等十二名の公述人からこの
予算に関する
意見を聞いたのでありますが、今回の公聴会の顯著な特色は、
予算に対する専門的な批判と関連しつつ、この
予算の性格を再軍備
予算
であるとしてその重大性を指摘した公述人が少くなかつたということであります。
予算委員会におきましても、この再軍備の問題並びに行政協定の問題とも関連いたしまして、この
予算に違憲の疑いがあるとし、先ずこの
予算と憲法との関係を明らかにすべきであり、憲法違反の有無を明らかにしてから初めて本
審査に入るべきであるとの主張もあつたのでありますが、すでにこの
予算は衆議院を通過して本院に送付されておることでもあり、又
予算審議の過程においてこの問題もおのずから明らかにな
つて来るであろうとの見地から、先ず総理大臣に対する総括
質疑を行い、その終了後において今の問題をどのように取扱うかを改めて協議するということで、三月六日からいよいよ本
審査に入つたのであります。然るに当日の
委員会におきまして、自衛力を漸増すれば戦力となるが、そうなれば憲法違反ではないかとの
質疑に対しまして、吉田
内閣総理大臣より、自衛のための戦力は違憲でないとの
答弁を繰返し行われましたので、
委員会は極めてこれを重大視いたしまして速記録をも調べて慎重に検討を加えたのでありますが、同時に
政府側より本件について特に総理大臣の
発言を求めて参りました。
かくて次の三月十日の
委員会におきまして、吉田
内閣総理大臣は前回の
答弁を訂正されまして、たとえ自衛のためでも戦力を持つことはいわゆる再軍備であ
つて、この場合には憲法の
改正を要するとの
発言がありました。当日の
委員会の
質疑は專らこの訂正
発言についての
質疑に終始したのでありますが、これらの
質疑応答を通じて明らかと
なつた
政府側の見解は大体次の三点に帰着するのであります。即ち先ず第一に、警察予備隊は、国内治安確保のためのものであり、近代戰を有効且つ適切に遂行し得る装備と編成とを持つたものではないから、憲法第九條の戰力に該当しないということであります。第二に、
政府は飽くまで現行憲法の許す範囲内で自衛力の漸増を図るつもりであるが、併し自衛力の限界がどこにあるかは具体的には答えられないということであります。第三に、日本が戦力を持つか持たないかということは、全く国民の自由
意見によるべきものであ
つて、日本の経済力がこれを許し、又外部の
情勢もこれを必要とするに至つたような場合には、憲法に
従つて国民投票なり憲法
改正なりをするが、差当
つてのところはまだその時期に至らないということであります。以上は戰力或いは再軍備に対する
政府の見解でありますが、同じく憲法に関連いたしまして、日米安全保障條約第三條に基く行政協定につきましても、
委員会における
質疑に答えまして、行政協定は、若し安全保障條約がなければ、憲法第七十三條による條約として国会の承認を経べきものと考えるが、
政府としては当初から安全保障條約第三條によ
つて行政協定は国会の承認を求めないことを言明した上で安全保障條約の承認を得たのであるから、行政協定は事前に包括的承認を受けたものと解するとの、
政府の最終的、確定的な見解を明らかにしました。三月十七日、
委員会は、三名の憲法又は
国際法学者に参考人として出席を求め、戦力及び行政協定について
意見を聞いたのでありますが、これら参考人の
意見は、いずれも
政府の見解とは全く趣きを異にして、警察予備隊又は保安隊は戦力に該当するものであり、又行政協定は国会の承認を求めるべきであるという結論でありました。翌十八日を以て、去る六日以来五回に亘る総理大臣に対する総括
質疑を一応終了いたしましたので、改めて協議の結果、引続き
予算内容の
審議を進めつつ、この
予算と憲法との関係を明らかにするため小
委員会を設けまして戦力及び行政協定の問題を再検討することといたしました。
さて、次に
予算内容の
審議についてでありますが、前後二十六回に及ぶ
委員会の論議は極めて広汎多岐に亘つたのでありますが、ここではそのうち特に基本的な問題を重点的に取上げて御
報告いたすにとどめ、残余の問題につきましての
質疑応答は速記録に譲りたいと思います。
先ず第一には、この
予算の基盤であるところの日本経済の自立に関する問題でございます。「吉田
内閣総理大臣はその施政方針演説において外資導入の必要を力説したのであるが、三月十一日マーケツト経済科学局長の声明は外資導入が頗る困難であるということを明らかにしている。施政方針演説で、一に外資導入に待つにあらざれば急速の進展は期しがたいと言
つている我が国自立経済はこの外資導入に失敗したことによ
つて、その達成が不可能と
なつたのではないか」との
質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「マーカツト局長の声明は外資導入の
條件を示したものであ
つて、その可能性を否定したものではない。又外資導入が必要だというのは、外資が導入されれば急速に自立経済の達成ができるが、これがなければ時間を要するというに過ぎないとの
答弁がございました。又この問題に関連して「講和後防衛や電源開発に必要な莫大な資材を国内で調達するため輸出が少くなり、
従つて食糧原料等の輸入力が減るのを外資導入で補うのでなければ、貿易及び生産の縮小と国民生活の低下は不可避であるが、
政府はどのようにしてこれを防止するつもりであるか」との
質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「まさにそのために外資導入に努力する必要があるのであるが、併しながら当面の問題としては、国民の
労働力或いは国内の生産物によ
つて外資はどんどん殖えており、十億ドル以上も溜つた外貨をどのように有効に使うかが差当りの問題にな
つている。
従つて手持外貨の活用を図ることが先決問題であり、外資導入はむしろそのあとの問題である」との
答弁がありました。併しながらポンド過剰問題に対してどういう根本的な対策を持
つているかとの
質疑に対しましては、高橋通産大臣より「ポンド過剩対策は非常にむずかしい問題で、輸出の抑制であるとか金融
措置であるとかいうことも対策の一つではあるが、率直に言
つて根本的な対策というのはなかなか見当らない」との
答弁でありました。
第二には、この
予算の基本的性格に関する問題であります。即ち「この
予算は表面的には総合
予算の均衡を保持し、一見健全財政のように見えるが、併し実際には、千八百二十三億円の不生産的な防衛費、それ以外の間接的な防衛支出、インベントリー・フアイナンスの大幅な削減、八百八十三億円の交付公債等、夥しいインフレ要因を含んでいるばかりでなく、一種の赤字財政ではないか」との
質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「
予算執行上物費面に不当な影響を及ぼさないよう、十分留意する必要はあるが、均衡
予算であるからインフレにはならない。二十六年度
予算補正に際しても、インフレ
予算であるとの一部の非難もあつたが、当面はむしろデフレ傾向に悩んでいる実情である」との
答弁があり、又この最近における経済界の沈滞傾向に対する打開策はどうかとの
質疑に対しまして、同大臣より「最近経済界は整理過程にある上、財政の引揚超過が甚だしく、景気が沈滞しようとしているので、積極的な景気振興策を講じなければならないと思う。その金融対策として差当り三月中に国庫余裕金から百五十億円の
指定預金を行い、そのうち五十億円を中小企業方面に振り向け、百億円は現在
予算上の計画から除外している金融債の引受に充てる方針である」との
答弁がありました。次に、「
政府は防衛費その他平和回復に伴う諸
経費の
負担にもかかわらず、内政費は圧迫されていないかのように
説明しているが、物価騰貴を考慮すれば、内政費は実質的には減少とな
つているではないか」との
質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「内政費全体を物価騰貴の割合で殖やすことはできないから、重点的に考えるほかはない。而して公共事業費、食糧増産対策着筆の重要な内政費は、いずれも相当増加している」との
答弁がありました。更に「
政府は二十七年度国民所得を前年に比し八%増の五兆三百四十億円と見込み、租税収入において七百七十四億円の自然増収を見積
つているが、経済
情勢の変化に伴い、安本でも二十七年度の経済見通しを修正する必要を認めている現在、三乃至四%を普通の増加率とする国民所得が八%も増加するというのは過大ではないか。又インフレによることなしに予定の自然増収を確保できるか」との
質疑に対しまして、周東経済安定本部長官及び池田大蔵大臣より、「
昭和二十七年度国民所得は、
昭和二十五年度の国民所得
実績推計を基礎として、これに
雇用、賃金、物価、生産の推移を見込んで算出したもので、過大な見積りではない。なお安本としては絶えず経済
情勢の検討を続けているが、まだこの
予算の基礎と
なつた計画を修正するような段階には至
つていない。又二十七年度租税収入は、成る
程度の経済的変動があつたとしても十分確保し得る見込である」との
答弁がありました。
第三には防衛力漸増と防衛費についての問題であります。「日米安全保障條約によ
つて防衛力の漸増ということは国際的に約束されたのであるが、その具体的計画は一体どのようなものであるか。二十七年度
予算に計上されている防衛費は、いわば氷山の一角に過ぎないものであるから、防衛力漸増計画の全貌がわからなくては、国民が安心ができないのではないか」との
質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「二十七年度は防衛力漸増の第一年度であるが、併しながら同年度においては防衛費は一千八百二十三億円を最大
限度とし、これ以上に殖やす考えはない。而して二十八年度以降においてどうなるかはそのときの
情勢によることで、まだ具体的な計画はないが、要するに国民生活の維持向上を図りつつ且つ増税をしないで防衛力を漸増して行くのであるから、具体的な防衛漸増計画が示されなければ国民は安心ができないというわけのものではない」との
答弁がありましだ。又「防衛費一千八百二十三億円のうち安全保障諸費五百六十億円は主として米軍の移駐費等に充てられる臨時的なものであるから、二十八年度以降は当然不要となるべき性質のものである。そうすると、二十八年度以降は防衛費は減少すると解してよいか。又三月二十一日のリツジウエイ最高司令官の言明によると、米軍移駐に伴う諸費用は一切
米国側で
負担し、日本側からの支出は鐚一文も求めていないとのことであり、従来の池田大蔵大臣の
説明は全くこれと食い違
つているが、その点はどうか」との
質疑に対しまして、同大臣より、「安全保障諸費は臨時的
経費ではあるが、必ずしも二十七年度限りで全部なくなるとは限らない。それに自衛力の漸増ということもあるので、将来一千八百二十三億円の防衛費が減るという約束はできない。又リ最高司令官の言明は個人的希望を表明したものと思う」との
答弁がありました。
第四には、この
予算の国民生活に及ぼす影響に関するものであります。「
政府は国民生活の維持向上を図りつつ、賠償その他の対外債務を支拂い、防衛力を漸増すると言
つているが、このような不生産的な支出をしながら、どうして国民生活の維持向上ができるか。現に
政府みずから二十七年度の国民生活水準を自立経済計画の八六%から二%下廻つた八四%と予定しているが、国民生活を更にこれ以上低下させないという保障ができるか」との
質疑に対しまして、周東経済安定本部長官より、国民生活水準は長い眼で見れば徐々に向上している。国民生活の低下を防ぐ基本的な対策としては、何と言
つても生活必需物資の生産増加、殊に食糧、衣料の量的確保と価格の安定を図ることが肝要であるが、これらの点については
政府として十分努力している」との
答弁でありました。次に、「今回
政府が
決定した戰歿者遺族援護対策は、その金額において、又
方法において、甚だしく不十分不満足であるが、これは暫定
措置であるか、又国会が修正を
要望した場合受入れる用意があるか」との
質疑に対しまして、吉武
厚生大臣より、「二十七年度限りの暫定処置ではないが、本格的な
制度が確定されるまでの暫定
措置である。修正については
予算に
限度があるので、実行不可能なものは受入れるわけには行かない」との
答弁がありました。
第五に、中央財政と地方財政との関連についての問題であります。「
政府は二十七年度の財政規模は、その国民所得に対する割合が同じく一七%であるから、前年度と同様の大きさであると言
つているが、総合
予算として中央地方を合せた場合には、その割合は二十六年度二三%から二十七年度二五%へと増大している。このような財政規模の拡大は国民経済或いは国民生活に対する圧迫となるのではないか」との
質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「中央財政については極力財政規模の圧縮に努めているが、地方財政に対しては
制度上大蔵大臣の権限外にある。併しながら地方財政の現状に対しては、
政府も地方公共団体も一緒にな
つて根本的な検討を加え、歳入の確保を図ると共に、
経費の節減及びその効率的使用に努力することが必要である」との
答弁がありました。又「
昭和二十七年度地方財政計画によると、財政規模は七千億円であるが、そのうち地方税は四二%を占めているに過ぎない、国税を増税しない方針であるとすれば、そのしわ寄せが結局地方税の増税となるのではないか、又二十六年度地方財政の赤字二百二十一億円を補填するために地方債の枠を八十億円拡大し、そのうち三十億円は資金
運用部引受でなく公募によるとのことであるが、今後は公募債を認める方針か」との
質疑に対しまして、岡野国務大臣より、「地方の税源を確立するため、国税地方税を通じて税制の調整を図る必要を認めているが、このような地方行財政の根本的改革については近く地方
制度調査会を設けて諮問することになろう。又地方債は従来国家資金だけで賄
つて来たが、独立を控え漸次常道に復帰する意味で、一定の
限度内で公募債を認めることとした」との
答弁がありましだ。以上のような
質疑応答の間におきまして、
委員長は、
委員会における
審議の
経過に徴し、特に緊要と認めて一つの事項について
政府に対し要求をいたしました。即ち、
政府が現在持
つている自衛力漸増計画を明らかにすることは
予算審議上是非とも必要であるから、若し具体的な計画がないとしても、大綱なり構想なりを
審議に間に合うよう示してもらいたいということでございます。これに対しまして、三月二十四、五両日、
政府より自衛力漸増計画についての資料が
提出せられ、大橋国務大臣よりこれに基いて
説明があつたのでありますが、要するに、警察予備隊と海上保安庁とにつきまして二十七年度
予算に計上されている範囲内における人員、編成及び装備の増強計画を明らかにし、これ以上の増強については今後の治安及び財政事情を考慮して
決定したいと言い、二十七年度中においても更に増強することあるべきを暗示したのであります。
先に申上げました
昭和二十七年度
予算と憲法に関する小
委員会は、三月二十三、四日の両日に亘
つて、戦力に関する憲法第九條の解釈及び行政協定と憲法第七十三條との関係について再検討を行
なつたのでありますが、翌二十五日、小
委員長楠見義男君から詳細な
経過報告がございました。その詳細は速記録によ
つて御承知を願いたいと存じますが、極めて簡單に要約して申上げますと、小
委員会では
委員会における
審議を更に深めて検討を行
なつた結果、いろいろの点が明らかと
なつたが、併しながら問題の根本的な点については二つの見解が対立したまま何ら新らしい展開を見なかつた。
従つて当初から戰力及び行政協定に関連して憲法上の疑義を持
つておつた者にと
つては依然として疑義を明らかにするに至らなかつたということであります。
かくて
質疑を終局し、
討論に入りました。先ず吉田法晴君より社会党第四控室を代表して反対、石坂豊一君より自由党を代表して
賛成、山下義信君より社会党第二控室を代表して反対、杉山昌作君より緑風会を代表して
賛成、岩木哲夫君より改進党を代表して反対、駒井藤平君より民主クラブを代表して
賛成、東隆君より第一クラブを代表して反対、木村禧八郎君より
労働者農民党を代表して反対、岩間正男君より日本共産党を代表して反対の旨を述べられました。よ
つて討論を終局し、
採決の結果、本
委員会に付託せられました
昭和二十七年度
予算は多数を以て可決すべきものと
決定いたしました。
以上御
報告申上げます。(
拍手)