運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-02-29 第13回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十九日(金曜日)    午前十時二十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十七号   昭和二十七年二月二十九日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第二日)  昨日の国務大臣の発言に対し、これより順次質疑を許します。岡田宗司君。    〔岡田宗司登壇拍手〕    〔「大橋国務大臣どうした」「閣僚諸君どうした」「議長要求大臣の顔を揃えなさい」「要求大臣の揃うまで質問を待ちなさい、大臣がいないのに質問してもわかりやしない「待て待て」「やつたやつた」「無駄じやないか、質問する大臣がいなくてどうする、誰が答弁するか、自由党答弁できるか」大臣がいなくて答弁のしようがないじやないか」と呼ぶ者あり〕
  4. 岡田宗司

    岡田宗司君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、昨日調印され、公表されました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に関し、政府に対してその内容の重要なる諸点につき若干質問いたしたいのであります。  我々は安保條約第三條に基いて締結される行政協定内容日本にとつて如何なる意義を有するものであるかについては、すでにこの條約の締結当時大体想像されておつたところでありますが、昨日発表された行政協定の全文を読んで、我々はこの協定が如何に日本主権を著しく傷つけ、日本独立を妨げ、従属国たらしめた屈辱的なものであるかを知つたのであります。(拍手、「そうそう」と呼ぶ者あり)かかる協定を結びながら、その屈辱的本質を美しい言葉でごまかし、国民に対して、あたかもこの協定が両国対等立場で結ばれ、日本にとつても利益であるかのごとき幻想を與えようとしている政府媚態的態度に対しまして、限りなき忿懣を感ずるものであります。(拍手吉田首相は本国会の本会議又は委員会におきまして行政協定安保條約第三條に基く事務的な取極めであることを再三再四力説されておりました。併しその内容を見るならば、日本国主権を制限する裁判管轄権の問題、アメリカ軍の機密を保持するための立法等に同意した第二十三條、毎年一億五千五百万ドルに相当する日本通貨をそのまま合衆国使用に供することに同意した第二十五條等々を含み日本国民基本的人権権利、義務、その生活に非常に関係のある事項を多く含んでおるのであります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)その内容から言えば、万国郵便條約や最近結ばれた日米加漁業條約の比ではないのであります。然るに行政協定なる名をいいことにいたしまして、政府独断專行でこれを締結し、国会審議にかけないでいいとしておる態度は、誠に憲法の精神を蹂躪し、国会を軽視し、民主主義政治をないがしろにした官僚独善行為といわなければなりません。我々は、本協定のごときは、実際には立派な條約であつて憲法第七十三條に基き当然国会承認を必要とするものと信ずるのでありますが、首相は、なぜこれを国会審議に委ねその承認を求める手続をとらなかつたのでありますか。首相国会における審議を恐れて、独断專行的にこの内容国民に押付けようと考えておられるのでありましようか。  次に、我々は前国会において安保條審議の際に、当然行政協定内容を明らかにすべきことを政府要求いたしました。然るに政府は言を左右に託しまして、行政協定内容はおろか、その輪郭にも一切触れず、合衆国政府の要請により両條約の国会における承認をむやみに急ぎまして、遂に自由党並びにそれに同調するものの多数の力を以て、いわば無理やりに白紙委任状を取つてしまつたのであります。(「嘘つけ」「その通り」と呼ぶ者あり)そうして、その白紙委任状に基いてかかる屈辱的な行政協定を結んでしまつたのであります。然るにアメリカ合衆国のほうはどうでありますか。合衆国上院は、行政協定内容が明らかにされなければ両條約を承認しないという態度をとつていることは、御承知の通りであります。(「それが対等か」と呼ぶ者あり、拍手)これは明らかに対等地位にある国同士の姿ではありません。我々は、今回の行政協定の結ばれる過程におきましても、丁度、吉田首相台湾政府中国政府認めてこれと平和條約を結ぶことをダレス氏に要求され、これに従つたのと同様に、アメリカ側要求に止むを得ず笑顔を以て従つたのであるかどうか。行政協定に関しまして、日本側が提出して容れられなかつた問題は如何なる問題であつたか。これにつきまして吉田首相の責任ある御答弁を求めたいのであります。(「その通り」「いないじやないか」「恥かしくて出られないのだ」と呼ぶ者あり)  次にお尋ねしたいことは、第二條規定されておる「施設及び区域」の規定であります。政府は、行政協定中には軍事基地のことはないと盛んに強弁しておりました。軍事的目的使用される施設及び区域が、言葉実質的意味におきまして軍事基地をも含むことは明らかであります。これを軍事基地でないというのは、丁度政府警察予備隊を兵力でないと言つているのと同じことでありまして、全く国民を愚弄するものにほかなりません。特に行政協定締結されました今日、個々の小さな施設は別といたしまして、重要な施設並区域につきましては、どこどこにあつて大体何に使われるかくらいは明らかにさるべきであると思うのであります。一体アメリカ側、特に軍部は、現在占領下において使用している施設並びに区域を、若干の重要でない施設、例えばホテルや娯楽施設や若干の港湾施設を除きまして、大部分はそのまま保有して使用を続けて行こうとしているのではないでしようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)聞くところによれば、各地において占領軍に属する人々が、何か新らしい目的のために使用するらしく、土地等を調査して、その土地住民たちに著しい不安の念を與えているのでありますが、一体政府の見通しでは、日本政府使用を許すことに同意しなければならない施設及び区域の数及び面積は、現在よりも更に増加するのであるかどうか。その点について明らかに御答弁を願いたいのであります。  次に、アメリカ軍がこの施設及び区域安保條約第一條軍事目的使用するに当りまして、行政協定においては何ら制限を付されず全く自由なのであります。従つてこの施設及び区域に、原子爆彈水素爆彈等を集積することも又アメリカにとりまして自由なのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ここを基地にいたしまして原子爆撃を行うことも又アメリカ軍にとつては自由なのであります。行政協定進行過程におきまして、国民並び国会が非常に心配いたしまして、この問題につきましてしばしば政府に対しましてこういう点について問い質しておるのであります。然るに岡崎国務大臣は、本問題については交渉の間にそういう話は出なかつたと言つて答えておられますが、これはアメリカ側がみずから問題にするはずはないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)当然日本側から問題を提起いたしまして、日本における施設又は区域原子爆撃基地にすることを許さないとか、少くともイギリスのごとくあらかじめ同意を要するとかすべく努力をすべきではなかつたでありましようか。この点協定アメリカに全くのフリー・ハンドを許しているのでありますが、岡崎国務相は、締結過程においてこの問題を提起して、日本原爆基地として使用されることを避けるために努力したかどうか。この点をお伺いしたいのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  アメリカ軍使用を許された施設及び区域原爆基地として使用されはしないかという国民の持つ大きな不安のほかに、更に大きな不安となつておりますものは、アメリカ軍がいつ如何なるときに出動するかという問題と、日本警察予備隊又は保安隊が海外に派遣されはしないかという点であります。この二つの点は勿論今回の行政協定條項範囲外の問題となつております。だが併し第二十四條には「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障條約第一條目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」と規定されているのであります。当然この場合には問題になるものと思うのでありますが、かかる條項行政協定に挿入されたのは、ただ漫然とそういうことが書かれたのではないのであります。かかる緊急時におけるアメリカ軍出動の諸條件日本警察予備隊又は保安隊出動、その指揮等の問題が検討されたものと思うのでありますが、二十四條の討議の内容につきまして岡崎国務大臣から大略承わりたいのであります。  次に、第二十六條に定められておりまするところの合同委員会についてお伺いしたいのであります。日本代表者一名は何人が任命されるものでありましようか。それは、内閣との連絡を緊密にし、合同委員会の決定が直ちに行われるように、閣僚の中から任命されるものであるかどうか。例えば岡崎国務大臣合同委員になるのかどうか。これはどうも岡崎国務大臣に聞くわけには参りませんので、吉田総理の後の御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  而うして合同委員会構成上は日米対等のように見えるのでありますが、実際におきましては、アメリカ側委員安保條並び行政協定に基く強大な権利日本側要求する立場にあるのであります。従つて日本側委員立場は常に受動的でありまして、それを如何に実行するか、その場合に如何に若干の緩和を求めるかというくらいの権限しかないと思うのであります。岡崎国務大臣は、この合同委員会が果して日本国民の満足されるように運営されるものであるかどうか、これが真に対等のものであると考えておられるかどうか。その点についてお伺いしたいのであります。  次に第七條についてお伺いしたいのであります。「合衆国軍隊は、……日本国政府に属し、又は日本国政府によつて管理され、若しくは規制されるすべての公益事業及び公共役務を利用する権利並びにその利用における優先権を享有する権利を有する」。と規定されておるのであります。この点は実に重大であります。第二條に定められた日本中重要な場所にある施設及び区域は、アメリカ軍が常時專属的使用することができるようになつている上に、すべての公益事業及び公共役務を利用する権利を、非常時においてではなく、常時優先的にアメリカ軍に與えておくということは、アメリカ軍日本行政経済国民生活の上に余りにも強大な支配権を許すものであると私は思うのであります。この点について岡崎国務大臣はどう考えておられるか。アメリカ軍に対してかかる広汎な権限を付與しておる例は、英米間海軍及び空軍用基地賃貸借協定中にも、又、軍隊地位に関する北大西洋條当事国間の協定にも、米比軍事協定等の中にも見当らないところであります。かかる規定は、日本独立国として扱われておるものではなく、従属国として扱われておることを明らかに立証するものと言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)何故に政府はかかる優先権非常時に限定せず、かかる広汎な権利を許したのであるか。そのいきさつを伺いたいのであります。  次に、問題の第十七條裁判管轄権の点につきまして、木村法務総裁にお伺いしたいのであります。政府はしばしば行政協定には治外法権はないと言明して来た。併し第十七條は明らかに合衆国軍隊構成員及び軍属並びにそれらの家族治外法権を與えておるではありませんか。岡崎国務相は、やれ属地主義だの属人主義だのと大いに学のあるところを示しておられます。(笑声)あたかも属人主義治外法権ではないかのごとき口振りで我々並び国民をごまかそうとしておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併し第十七條第二項の「合衆国軍事裁判所及び当局は、合衆国軍隊構成員及び軍属並びにそれらの家族日本国内で犯すすべての罪について、專属的裁判権日本国内で行使する権利を有する。」との規定や、第二項(b)の「合衆国当局は、合衆国軍隊使用する施設又は区域内において、專属的逮捕権を有する。」とか、同じく(C)の「合衆国当局は、前記の施設又は区域の近傍で、当該施設又は区域の安全に対する犯罪の既遂又は未遂の現行犯に係る者を法の正当な手続従つて逮捕することができる。」とかいう條項があるのでありますが、これらは、日本国領土内に他国裁判権のみならず逮捕権が広く行われることを意味することは明らかであります。最近出版されました天川博士編法学辞典にも、治外法権を「国際法外国人がその国の国家権力作用、殊に裁判権に服しない資格」と定義してありまして、これに照らしましても、行政協定第十七條アメリカ軍関係者治外法権規定しておるものであることは疑う余地は全然ないのであります。岡崎国務相は、これが、北大西洋條当事国間の協定合衆国について効力を生じたときには、これと同じものに結び直されることができるから、ほんの暫定的なものだとか、又、最近ではイギリスを初め諸国に外国軍隊が駐留し、かかる性質のものが実施されておるのだから、昔のように騒ぐべきことではないとかいう見解を持つておられるようでありますが、いずれにいたしましても、これが治外法権であり、而もその内容たるや、アメリカフイリピンとの間の協定にも及ばないものであることは明らかなのであります。(「フイリピンより惡い」と呼ぶ者あり)而も第十七條第五項には「日本国が1に掲げる撰択をしなかつた場合には、2以下に定める裁判権は、引き続き行われるものとする。」と規定してあつて、若し日本外国の圧力によつてこれを撰択しないという態度を余儀なくされるといたしますならば、アメリカと他の国々との協定に比して最も劣惡で屈辱的なこの治外法権の方式が引き続き行われる可能性が開かれておるのであります。  そこで木村法務総裁並び岡崎国務大臣にお伺いしたいのは、第一に、この裁判権及び逮捕権規定が、アメリカイギリスとの間の協定若しくはアメリカフイリピンとの間の協定又は北大西洋條協定に比して不利なものであるということを、率直にお認めになつておられるかどうかということであります。(「フイリピンより惡いぞ」と呼ぶ者あり)次に、なぜかかる不利なものを喜んでこの内閣はお認めなつたのか。その間の交渉いきさつを明らかにされたいのであります。(拍手、「日本人じやないよ」と呼ぶ者あり)  最近起つた千住の富士銀行のギヤング事件を初めとして、相次ぐアメリカ軍人日本人に対する犯罪事件は、国民を非常な不安に陷れているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)平和條効力発生後もかかる事件が相次ぎ、而もこの行政協定規定によつて今日のごとく犯人が挙らないということになれば、一体国民はこれを何と考えるか。そこで木村法務総裁にお伺いしたいのは、この行政協定によつてアメリカ軍人施設又は区域外において日本人犯罪を加えた場合、日本警察はこれを逮捕することができるのかできないのか。又、その場合、日本警察権限はどの程度まであるのか。その点を明らかにされたいのであります。又、施設又は区域外日本人アメリカ軍人等犯罪行為をなした場合、アメリカ側警察がこれを逮捕することができるかどうか。日本警察が逮捕した場合には、これをアメリカ側に引渡さなければならないのかどうか。更にこの場合の裁判管轄権がいずこにあるのかをはつきり御説明願いたいのであります。  次に第二十三條についてお伺いしたい。この條文の前段に「日本国および合衆国は、合衆国軍隊合衆国軍隊構成員及び軍属並びにそれらの家族並びにこれらのものの財産の安全を確保するため随時に必要となるべき措置を執ることについて協力するものとする。」とあるが、日本法律外国人生命財産につきましても日本国民に対すると同じように保護をしておるはずであります。ここに特別の規定を設けまして、ひとりアメリカ軍人等につきまして、他の外国人に対する以上に如何なる具体的な特別措置を講じようとするのか。その形式並び内容の説明をお伺いしたいのであります。更に後段の「日本国政府は、その領域において合衆国の設備、備品、財産、記録及び公務上の充分な安全及び保護を確保するため、並びに適用されるべき日本国の法令に基いて犯人を罰するため、必要な立法を求め、及び必要なその他の措置を執ることに同意する。」とあるが、これはアメリカ軍のための防諜法のごときものを制定することを意味するのかどうか。そうだとすれば、その大体の構想並びに、いつ、それが国会に提出されるのかをお伺いしたいのであります。  次に池田大蔵大臣にお伺いしたい。第二十五條二項(b)に「合衆国が輸送その他の必要な役務及び需品を日本国調達するのに充てるため、毎年一億五千五百万ドルに相当する額の日本国通貨合衆国に負担をかけないでその使用に供すること。」とある。この金額が二十七年度予算に組まれておる防衛支出金の六百五十億でありますが、従来はかかるものとして終戰処理費があり、それは日本国政府特別調達庁その他の行政機関を通じて使用していたのであります。然るに今回は合衆国使用に供すとなつておるが、これは従来のごとく日本国側機関で支出しないで、六百五十億をそのままアメリカ軍のほうに引渡し、アメリカ軍において自由に使用するものであるかどうか。その使用の方法を明らかにして頂きたいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  第二に、安全保障諸費として計上されておる五百六十億円でありますが、この臨時軍事費的な金額につきまして、大蔵大臣は、行政協定締結されれば、いずれその使途を明らかにすると言われておりましたが、今や行政協定は結ばれたのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)これも又アメリカ軍使用に供せられるものであるかどうか、又行政協定内容従つて日本側使用するものであるかどうか、並びにその使途について明らかにして頂きたいのであります。  次に、日本日米安全保障條約の締結によつていわば軍事同盟締結したのであります。アメリカ北大西洋同盟締結国を初め、軍事的に提携した国々に対して、軍事援助のみならず、多くの経済援助を與えておることは周知の通りであります。今や日本アメリカ軍事同盟を結んだのでありますから、これと同時に、アメリカ軍事援助経済援助が行われるという噂がありますが、その点についてアメリカ政府から何かそういう話があつたことがあるかどうか。又池田大蔵大臣アメリカ政府に対しまして、軍事援助経済援助を求める交渉をしたことがあるか。又は今はしておらなくても近い将来において交渉するつもりであるかどうか。この点率直に御答弁を願いたいのであります。(「総理に聞くぞ、総理総理」と呼ぶ者あり)  次に廣川農林大臣にお伺いしたい。(「いないぞ」と呼ぶ者あり)最近各地において、アメリカ軍使用する施設及び地域にするためか、或いは警察予備隊演習地帶にするためか、とにかくいろいろな調査が行われたり、又接收を言い渡されたりしておるのであります。而もそれらの土地には開拓民が入つておりまして、すでに立派な農耕地となつた所や、放牧地採草地が多いのであります。かくてこれらの土地の農民の間には非常に不安の念が高まつておりまして、すでに反対の運動も起つておるのでありますが、農林大臣はかかる土地がどんどん潰されて行くことも止むを得ないとお考えになつておるのかどうか。それとも食糧政策の上から見て、こういうばかげたことをおとめになるおつもりかどうか。その辺の対策を具体的にお示し願いたいのであります。  更に吉武労働大臣にお伺いしたいのは、第十二條の五項の日本人労働者アメリカ軍に使われる場合におきますところの労働関係法規の適用の問題であります。今日この問題が各地におきましていろいろむずかしい問題となつておることは、すでにこの議会におきましても論議されたのでありますが、行政協定効力が発効いたしました後において、この法律が果してアメリカ軍によつて守られるものかどうか。若しこれが守られない場合におきまして、一体この法律をどういうふうにして実行せしめるのであるか。(「そうだそうだ」「その点をよく衝け」と呼ぶ者あり)その点について吉武労働大臣のお考えをお伺いしたいのであります。  そのほかに、或いは密輸出入の防止の問題、(「時間々々」と呼ぶ者あり)アメリカ軍国内における調達の問題等々、幾らでもお伺いしたいことがございますが、本日は時間もございませんので、この点はこれぐらいにとどめておきまして、なお委員会におきまして詳細にお尋ねし、この行政協定の全貌につきまして我々は審議を盡すことをここに申上げて、私の質問を終りたいと思う次第であります。(拍手、「吉田総理はどうした」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡崎勝男登壇
  5. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  第一には、この協定をどうして国会承認を求めないかというお尋ねでありますが、これは安全保障條約第三條に、両政府間の行政協定によつて決定するというふうに、はつきり書いてありまして、「両国の」となく、「両政府間の」と書いてありますので、これは政府間でできるものと考えております。(「どこの国の協定だ」と呼ぶ者あり)そこで、実際上裁判管轄権のごとき、行政協定範囲を逸脱しておるのではないかという御意見でありましたが、安全保障條約でアメリカ軍隊の駐屯を国内認めました以上は、国際法及び国際慣例によりまして、外国軍隊他国に駐屯する場合の特権については規定があるのであります。又実際行われておる慣例があるのでありまして、今度の協定におきましても、この国際法なり、国際慣例なり、或いはどこかにあるもの以外は入れてないのであります。(「フイリピンより惡いぞ」と呼ぶ者あり)従つて国際軍隊をすでにここに置くという以上は、この程度特権は当然認めるべきものと考えております。又特に今度の協定の二十七條の二項には、本協定実施のために、予算上、立法上の措置を必要とするときは、おのおのかかる措置国会に求めることを特に記載してあるのであります。(「前提が問題だ」と呼ぶ者あり)又行政協定アメリカ上院の批准の條件であるというように言われましたが、これは私がここでも再三申上げましたように、決して條件ではないのであります。(「事実上そうなつている」と呼ぶ者あり)なおこれに関して日本側からいろいろ提案して容れられなかつたものは何であるかというお話でありますが、これはいろいろの問題、殆んどあらゆる問題につきまして日本側意見を提示し、又向う側も意見を提示して話したのでありまして、(「恐る恐るだろう」と呼ぶ者あり)これは殆んど全部の問題について我々の意見は申しておるのであります。(「容れられなかつたんだろう」と呼ぶ者あり)  それから第二に施設及び区域についての御質問でありますが、これが軍事基地でない理由を示せというお話であります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)そこで、軍事基地という定義も非常にはつきりはしておりませんが、例えば米比協定における(「定義じや国は守れない」と呼ぶ者あり)書き方は、アメリカ軍隊の駐屯するかなり大きな地域軍事基地という言葉で現わしております。その米比協定によるフイリピンにおきまするいわゆる軍事基地の中においては、アメリカ裁判管轄権專属的に適用されまして、フイリピン人であろうと、どこの国の人であろうと、すべてその基地内ではアメリカ裁判権に従う、アメリカ法律が適用される、こういうことになつております。今度の協定におきましては「施設及び区域」と書いておりますのは、この施設及び区域の中におきましても日本法律は適用するのでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)これは日本人のみならず、アメリカ軍人軍属に対しても、ひとしく日本法律が適用されることは協定の中に明記してあります。(「了解」と呼ぶ者あり)従いまして、我々は、いわゆる非常にはつきりした概念ではありませんけれども、いわゆる軍事基地というものとは相去ることほど遠いと思うのであります。(「明快々々」「頭が禿げるぞ」「詭弁詭弁」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)なおホテル等の返還があるけれども、今後は一体話合いで施設区域が殖えるのか減るのかというお話でありますが、只今ホテル等が返還されておりますのは、これは占領軍が一方的に不必要なものを返しておるのでありますが、(「ホテルなんか問題じやない」と呼ぶ者あり)今後のことは、話合いによつて決定するのは、これは当然でありまするが、大体のところ、現在よりは無論施設区域等の(「ホテルじやない、国を返してもらうんだ」と呼ぶ者あり)範囲は減ることと考えております。  それから第三に原爆基地の問題でありまするが、これはいろいろ会談の中には、無論この行政協定として討議をする範囲ではありませんけれども、国会等における種々の御意見は先方によく伝えておきました。併しながらこの問題については何ら権限を持つておらないのであります。(発言する者多し)  なお二十四條の敵対行為の起つた場合若しくは起らんとする場合の討議の内容はどうであるかというお尋ねでありまするが、これは率直に申しますると、先方は元来、こういう協定は、事前に外国からの侵略を防止することを專ら目的としておるのであつて、そのためには、北大西洋條約におけるがごとく、單に、あの場合では各国の軍隊がありまするが、この軍隊がお互いにただ助け合うということでなくして、ちやんとした、各国の軍隊を打つて一丸とした組織を作り、そうして統合参謀本部のようなものを作り、そうしてその上に最高司令官を置いてきちんとした態勢にして置けばおくほど外国からの侵略を未然に防げる。こういう考えで、北大西洋條約におきましては、アメリカのアイゼンハウワー元帥が最高司令官になつて、現にきちんとした組織を作りつつある。これがつまり侵略を未然に防止するゆえんであるからして、日米間にも、成るべくならば、きちんと日米の間に緊密なる連絡があつて、十分に国を守る組織ができておるということを外国に示すことが望ましいということはあつたのであります。伊上ながら、現在におきまして我がほうにおいては軍隊がないのでありまするし、(「予備隊があるぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)又軍隊がない現状におきましてそういうきちんとした形を作るということは、実際やつてみましてもなかなかできないのであります。又現在そういう敵対行為の危險がどこにあるというわけでありませんので、(「無論そうだ」と呼ぶ者あり)この際はそういうきちんとしたものは到底できませんので、協定では二十四條のような形にいたしたのであります。  合同委員会についてのお尋ねでありまするが、これは協定にもありまする通り施設及び区域の決定を主にいたす機関としておりまするが、その他にも協定の運用上必要なる事項については日米間で協議をいたす機関になつております。そこで、まだこれは委員等も決定しておりません。いずれ独立した日にこれは効力を発生するのでありまするから、その間には無論定めまするが、只今のところはまだ何ら決定に至つておりません。ただ話合い中に、米国側では一体どういう種類の人を任命するつもりであろうかということを聞いてみましたら、米国側もまだ何もはつきりしたことはきまつておらないけれども、比較的事務的なものと、二の合同委員会考えておるので、非常に地位の高い人がこの委員になるということではないであろうというような話合いがあつたのであります。  公益事業等についてのお尋ねでありまするが、これはガス、水道その他防疫関係とかいろいろのものがあると思いまするが、これは日本政府と同様の條件でこれを使用するということであります。何らその間に特別の特権等は、日本政府以上のものは無論ない。(「優先的とある」と呼ぶ者あり)のみならず、実は電話の料金の問題につきましては、これも議事録に載つておりまするが、日本では、現在一般の人の使う電話料金と政府機関の使う電話料金では、政府機関のほうが安いのであります。而もその政府機関よりは警察予備隊とかその他の警察が使う電話料金はもつと遥かに安いのでありまして、そこで、現在この協定では、事実上その真中の、つまり一般の政府機関の使う電話料金でアメリカの駐屯軍も使うということになつております。併しながら先方ではこれに対しまして、ひとしく日本の治安を守るための機関である以上は、(発言する者多し)警察予備隊とか国警とかの使う料金で使わせないで、もつと高い料金で使わせるということは、アメリカ軍隊に対して差別待遇ではないかというような意見も出たのでありまするが、この際はとにかく警察予備隊等の非常に低いものは困るということで一応こういうふうにきまつたのであります。そういうことであります。(「お手柄でしたね」と呼ぶ者あり、笑声、その他発言する者多し)  なお治外法権云々についてのお尋ねでありまするが、治外法権定義はいろいろありまして、はつきりいたしていないと考えております。そこで、今度の協定の、特に裁判管轄権等についてこれを治外法権かどうかという議論をいたしても仕方がないのでありまして、(発言する者多し)実質を御判断願いたいと思うのであります。そこで、先ほども申しましたように、安全保障條約を締結してアメリカ軍隊国内に駐留することをきめた以上は、その軍隊の駐留に伴う国際法及び国際慣例特権を許容するのはこれは当然でありまして、(「認めたのは間違いだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)又実際の協定の面におきましてそれ以上のものは提供しておらないのであります。又第二には、先ほども申しました通りアメリカ軍人軍属等に対しましても、日本法律を尊重し、これに違反しないという義務を與えておるのでありまするから、治外法権と我々は考えておりませんで、普通の軍隊外国に駐留する場合の特権に限られておる、こう考えております。なお、米比協定に比べて今回の協定が我がほうに不利であるという御意見でありまするが、これは世界いずれの国におきましても、最近の考えは、国内に一定の地域を限つて、その地域内にはその国の法律が適用しない、従つてその地域内においてはその国の国民といえども外国裁判権に服するのだという、いわゆる米比協定のやり方よりは……施設区域等の地域におきましてもその国の法律が適用するのである。その国の国民のみならず、その駐屯する軍隊の編成員に対してもその国の法律が適用するのである、又裁判権についても、その国の国民裁判権は依然としてその国が保有するのが適当であるというので、最近は属人的な方式に切替わりつつあると考えております。従いまして、米比協定よりは只今の協定のほうが、最近の観念から申すと適当であるということになつております。  なお北大西洋條約の協定は、これはまだできておりませんが、これよりも更に進んだものであることは確かであります。従いまして、我々は協定の話合いの中におきまして先ず北大西洋條約に基く軍隊地位に関する協定の中の裁判管轄権内容を今度の協定に取上げたいというので、これを主張いたしましたが、先方でも原則上これは認めましたけれども、まだこの北大西洋條約に基く協定効力を発生しておりませんので、アメリカについてこれが効力を発生したときは日本にも同様のことを認めよう、それまでは、日本アメリカ関係は、主としてアメリカイギリスとの裁判管轄権関係と同様にいたしておるのであります。  なお、協定二十三條の軍隊等に関する保護規定につきましては、外国に駐留する軍隊は、その安全に関して、一般の外国居留民よりは特殊の権利認められるのは当然であります。従いまして、これにつきましては必要な立法措置を講じようということをいたしておりまするが、只今これは各国の例も参照いたしまして研究中でありまするから、いずれ成案ができましたならば国会に提出して御審議を願うつもりでおります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  6. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 裁判権の問題につきましては、只今詳細に岡崎国務相が説明されたのでありまして、それ以上のことはありませんが、ただ一言申上げておきたいのは、御質問にもありましたように富士銀行の問題でありますが、ああいう問題につきましては、将来日本側において米国の軍人といえどもこれを捜査逮捕することは当然のことであります。まだ逮捕した者をアメリカ側に引渡してアメリカ側裁判するということであります。(「それが問題なんだ」と呼ぶ者あり)それからアメリカ側軍人軍属に対して日本人犯罪を犯した場合にどうするかということであります。それはもとより日本側においてこれを捜査し、逮捕して、日本裁判に付するということでありますから、この点においては何ら疑問がないのであります。(「どこの国民だ」「当り前じやないか」と呼ぶ者あり)要するに本協定におきましては、アメリカ側においても日本法律を尊重して、軍人軍属といえども日本法律を守る義務を十六條にはつきり規定されておりますので、従来のようないわゆる治外法権というような観念とは全然別のものであるということを申上げます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  7. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。  米軍の駐留によりまする我がほうの負担は、行政協定第二十五條の二項の一号乃至二号でございます。而して二十五條第二項第一号はいわゆるレント——不動産、建物等の使用によりまする使用料——の補償、これが九十二億円と予定いたしております。この九十二億円は日本政府が直接にその不動産の使用料として所有者に拂うのであります。御質問の点の一億五千五百万ドル即ち五百五十八億円につきましては、駐留軍が日本国内におきまして調達いたしまする労務、或いは鉄道運賃、電話料でございまするが、こういうものにつきましては、アメリカの特別勘定に入れまして、そこで支出いたすことにいたしております。併しアメリカの特別勘定ができますまでは日本政府において今まで通りにいたします。又その五百五十八億円のうちの大部分の労務関係の労務費はやはり間接的になりまして、今まで通り日本政府が代つてやることになると思います。而して今お話のように、特別勘定に入れるということは、日本の金をそこに入れるということはいけないじやないか、こういう議論が起りますので、話合いの上で特別勘定に入れますが、この金を使うときには日米の合意がなけらねば使われないということにいたしております。従いまして、アメリカ一存ではできません。日米の合意によつて、四半期ごとに支出負担行為を付けてそうして出す、出したあとの報告は毎月日本政府に報告する、こういう手配をとつているのであります。(「どこで監査する」と呼ぶ者あり)  次に安全保障諸費の内訳は衆議院の予算委員会で申しておきましたが、(「献金は御免だ」と呼ぶ者あり)大体五百六十億円の内訳は、営舎、住宅、敷地等は三百七億円、通信関係で百十七億円、道路関係で八十億円、港湾の荷役施設等で二十五億円、大体そういう予定でおるのであります。御承知の通り六大都市或いは七大都市に今駐留しておりまする米軍が、この大都会より離れて田舎のほうに駐留いたしまする関係上、こういう費用を一応見込んでおるのであります。  第三の御質問の、軍事援助経済援助アメリカ要求したか、今後要求するか。——軍事援助要求はいたしておりませんし、いたしません。経済援助につきましては今後の情勢によりまして考えたいと思いまするが、今どういう経済援助大蔵大臣が言うか言わないか、こういうことは申上げかねるのであります。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  8. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) お答えいたします。  駐留軍に雇用されまする労働者に対する労働法関係は、十二條に示されておりまするごとく、日本国内法規が適用されるのであります。従いまして、当然その法規は守らるべきものと存じまするし、守られない場合におきましては法の命ずるところによつて処置されるべきものと存じます。
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田内閣総理大臣は病気のため、廣川農林大臣は母堂葬儀のため、いずれも出席できませんので、答弁は他日に留保されました。中山福藏君。     —————————————    〔中山福藏君登壇拍手
  10. 中山福藏

    ○中山福藏君 行政協定の細目に関する質疑は、岡田議員によつてその重要部分が盡されておりますから、私はこの行政協定の精髄を決り取つて、二、三政府に質疑を試みたいと考えるのであります。  先ず行政協定が何故に締結されなければならなかつたかということを吟味してみますると、これは日本の敗戦という事実と、憲法第九條の規定の存在することの二点から発足したものであることは言うを待たない。(「賛成なのか」と呼ぶ者あり)即ちこの憲法第九條は、正義と秩序を基調とする国際平和を国民が念願する。武力による威嚇、武力の行使、かくのごとき行動につきましては、我々はその行動を起すことを欲しない。かるが故に陸海空軍というような戦力を保持しないという事柄から、結局平和條約と並んでこの安保條約というものが締結されるに至つたということは、皆さん御承知の通りであります。(「おかしいぞ」「そんなことはあるか」と呼ぶ者あり)即ちこの行政協定の狙うところは何かというと、日本国というのは、一方においては厖大な戦力を有しているところの国々を北のほうに控え、この侵害に対して(「何を言うか」と呼ぶ者あり)如何に我が国の安全を図り得るかということから発しているのでございまして、(「気は確かか」と呼ぶ者あり)即ち今共産党の人の言われます通りに、ソ連、中共というのは厖大なる戦力を有して、いつ我が国に━━━━をするかわからんという現実に対して、(「どうかしているぞ」「君は戦争挑発者か」と呼ぶ者あり)我が国の安全を絶対に保障しなければならないということは、国際連合憲章の大精神である正義と基本的人権の尊重というところから、どうしてもアメリカと我が国は安全保障條約の第三條に基いて行政協定締結しなければならんということは、いやしくも(、又追放になるよ」と呼ぶ者あり)国家の独立基本的人権というものに対して重大なるところの関心を拂う国民としては、当然の措置と私は考えるのであります。(「それが緑風会代表か」と呼ぶ者あり)併しながら私はここに政府に質しておかなければならんことは、かくのごとき重大な協定を結ぶに当つて、何が故に国会審議にその協定内容をかけなかつたか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)憲法第七十三條の第三項におきまして、内閣は條約の締結権を持つているのであります。従来我が国におきましては、多くこの行政協定の種類を諸外国締結するに当りましては、内閣独自の見解に基いてこれを行なつて来たのであります。(「それが悪かつたのだ」と呼ぶ者あり)今日もまた同一の行動をとられておりますけれども、そもそも(「そもそも困るよ」と呼ぶ者あり)條約というものの締結せられる事柄というものは、国家の重要な事項、国家の主権に関する国家間の諸行為を規律する規定でありまするから、勿論政府としても重要な関心をこれに拂つておられると思いまするけれども、今回の行政協定安保條約第三條に基いて発足したと言われておりまするから、政府においてはこれは議会の審議にかける必要はないと言われている。併しながら法律の実体的の規定というものは、一つの項目を定めておいて、その施行細則的な事柄については、成るほど政府の言われる通りだと私も考えておる。併しながらこの行政協定内容を見ますると、全然この内容というものが安保條約第三條に現われておりません。現われていないところにどうして施行細則というものを規定することができるか。これは法律的な取扱といたしましては、政府の行動というものが非常に無理を伴つておるように私は考えます。(「安保條約を通したからそうなるんだ」と呼ぶ者あり)仮に、仮に政府のおつしやることが一応正しいといたしましても、現在は歴史を読む時代ではなくして、歴史を作る時代でありますから、(「そうですよ」と呼ぶ者あり)政府が真に国会を重んじ、国民というものに対して将来の日本の行くべき道を示さんと欲するならば、かくのごとく重要なる内容を包容しておるところの行政協定の項目を、逐次にこの議会に報告されて、(「それはわかつたよ」と呼ぶ者あり)周到なる審議をすべきものと私は田やりのであります。何故に政府はこういうふうな重大な問題を議会の審議にかけなかつたか。(「そうそう」と呼ぶ者あり)これを私はお聞きしておきたいのであります。これは将来非常な先例になることでございますから、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私は、政府は單に、この行政協定が調印されたんだから、安保條約の第三條に基いてやつたんだからというような簡単なことで、この場合を(「過ぎるだろう」と呼ぶ者あり)過ごされることはできないと信ずるのであります。(「その通り」「教えてくれよ」と呼ぶ者あり)どうかこの点につきまして、責任ある且つ御親切なる答弁国民の前に発表して頂きたい。(「時間が勿体ないから八百長質問をやめて下さい」と呼ぶ者あり)八百長質問ではございませんよ。  第二に政府にお尋ねしたいと思いまする事柄は、只今岡田君の御質問にもありました通り、この治外法権というものについての考え方でありまするが、これは主観客観おのずから見るところが異なるでありましよう。併しながら常識的に見て、(「そうそう」と呼ぶ者あり)私はこのたびの行政協定裁判管轄に関するところの問題は、どうしても治外法権的の素質を多分に含んでおるものと考えられるのであります。(「そうだ」「いいぞ」と呼ぶ者あり)私は曾つて日本が不平等條約のために非常に苦しんだ事実を知つておるのであります。今日まで日本人全体が昭和十二年以来陰欝なる気分を以て誠に苦しい生活をしたということは、内閣諸公において御存じの通りであります。このたびこそは、この平和、安保條約の締結発効を期にいたしまして、従来の陰欝な気分を拂拭して、日本人らしいところの気分になりたい、こういう念願に国民ことごとく燃えておる今日において、この治外法権的な行政協定裁判管轄権に関する規定が結ばれたということは、国民全体が非常に失望しておるということを御記憶を願いたいのであります。私は只今木村法務総裁或いは岡崎国務大臣の御答弁によりまして、それは米英仏或いは米比の行政協定の場合に比較して優るとも遜色はないというようなお答えを承わりましたけれども、なお且つ一方においては、北大西洋條約が発効したならば、日米の裁判管轄権はこれに準ずるというようなことを行政協定のうちに謳われておりまするけれども、それだけの見通しをつけ、それだけの期待を国民に抱かせんとする政府であるならば、なぜこの場合に、北大西洋條約の発効しない今日においても、直ちにこれと同じような管轄権というものを日米の間に御規定にならなかつたか。この点をお尋ねをするわけであります。裁判管轄権は米国並びに米国民のために作られるものではなくて、この行政協定裁判管轄権こそは、多く日本並び日本人のために作られておるということを私どもは断じて忘れることはできないのであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)どうかこういう点につきまして明確なる政府の御答弁を煩わしたいのであります。  第三にお尋ねをしてみたいのは、行政協定第二十四條、これは岡田君からもこの問題については触れておられます。いわゆる外国軍隊が侵略して来るとか、急迫なる脅威を受けるというようなことが書かれておりまして、この場合には両国の政府の相談によつて共同の行為がとられる、こういうことになつておりまするが、急迫なる事態とは一体如何なることを指しておられるのか、又その限度、こういう問題につきましてどうかその標準というものをお示しを願いたい。又協議をされるということになつておりまするが、その協議というのはどれくらいの、どの範囲において協議ができるのか、軍隊の指揮権とかいろいろな問題を協議の内容に織込んで行くことができるかどうか、そういう点も一応御明確に願いたいのであります。  第四番目にお聞きをしたいのでございまするが、それは只今いろいろと質疑応答のありましたる施設とか地域の問題でございます。これは施設地域の問題というものは、両方の政府合同委員会その他の機関にかけられて御相談があることと考えまするが、こういう問題については国民は非常に関心を持つておると私は思うのであります。例えば先ほど岡田君からも御質問のありましたる通りに、農業関係とか労働関係とか、或いは社会保健に関する設備の接收だとか、日本全体の国民に及ぼす影響というものは非常に大きいように考えられまするから、大体の標準というものをすでにおきめになつておることと私は考えておるのであります。如何なる範囲において、如何なる種目において、又如何なる地域において、安全保障の第一條目的を完遂するために政府考えておられまする標準を私に示して頂きたいと思うのであります。  第五にお伺いしてみたいのは、池田大蔵大臣がおられますから、周東安本長官はおられませんけれども、大体常識的なことでありまするからお答えを願いたいと思いましたが……、今池田大蔵大臣もおられませんから、これはいたし方ございません。併しながら行政協定締結いたされました結果、産業経済界に及ぼす影響は相当大きなものがあろうと存じます。この行政協定で日米両国の間において種々の問題が協定されて、それが実行に移されまするときにおいては、必ず産業経済の上に相当深刻なる影響を與えると思うのでありまるが、政府はこれに対して如何なる準備と措置を講ぜられる所存でございましようか。この点をお伺いいたします。その他いろいろと質問したいと思いまするけれども、私はこの際皆様に一言したいことは、すべて政治というものは、国家将来の動向を決定するということは言うまでもございませんが、(「質問をやれ」と呼ぶ者あり)單に党派的な考え方から私はかようなことを申上げておるのではございません。私は緑風会という至公至平な(「たまには野党になれ」と呼ぶ者あり、笑声)団体の一員といたしましてお尋ねしておるのでありますから、先ほどの野次のような御心配には及ばないのであります。我々はこういうふうな立場から最後に政府に釘を差しておきたい事柄があるのであります。要するにこの行政協定は、国家の安全を保障する意味において作られたものであるが、自衛力の増強によつてやがては日本という国は真に独立した国家として堂々たる歩武を進むべき時代が来ると考えておりますが、大体自衛力の漸増ということは、いつ如何なる時を目当てにしてこの自衛力が増強され、行政協定が破棄される見込を付けられておりますか。(「明治三十七八年だろう」「明治元年だよ」と呼ぶ者あり)私は元来或る一部の人が騒ぐように、この問題を、日本立場を閑却して、この問題を徒らに取上げて、日本の安全を脅かすごとき行動は断じてとつてはいけないと考えております。私はどうかこういう問題につきましては、この敗戦の気分を拂拭して、元の姿に日本を直し、そうして外国のお世話にならないような国家を作り上げなければならんと考えておりますが、その時期は一体いつという見込を付けて岡崎さんはこの行政協定締結されたのでありますか。只今イランにおいてモサデグ首相の言うには、一九四七年に多分アメリカの軍事指導団を七十二名入れるという約束をしたというお話でありますが、現在イランにおいてすらも、若し経済援助というものが或る場合の戦争協力を意味するならば、その経済援助は要らないという気骨のある態度をとつておるということを承わつております。(「そうだ」と呼ぶ者あり)日本はこのたびこういう立場にあるとは言えまするけれども、憲法の最高の理想といたしておりまする世界の平和、私はこの平和のためには、今日戦争によつて傷つけられたる日本国民全体が平和を希求して止まないと考えておりますが、併しながら私どもは単なる平和論者ではない、真の平和論者でなくちやいけないと考えております。私どもは飽くまでも(「大砲を帶びた平和論者か」と呼ぶ者あり)我々を脅威せんとする外敵に対しましては、日本国日本人の名において、断乎としてこれを……(「撃滅する」と呼ぶ者あり)撃滅する(笑声)力のある国家にならなければならないと思料するものであります。どうかこういう点につきましても、岡崎国務大臣は、アメリカ日本と仲をよくするということは誠に結構でありまするが、大体のこういう点についての見通しをお付けになつて、そうしてこの行政協定締結せられておるものであると考えまするが、重ねてその見通しにつきまして御高見を承わつておきたいのであります。  簡単でありまするが、これを以て私の質問を終りたいと思います。(拍手、「街頭でやれ、街頭で」「何言つたかわからんぞ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  11. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  この協定国会承認を求められぬのはどういうわけか、求むべきではないかというお話でありますが、これは先ほどの岡田君の御質問にお答えしたのでありまするが、安全保障條約の第三條に「アメリカ合衆国軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」と書いてありまして、我々は細心の注意を拂いまして、アメリカ軍隊の配備をきめる範囲にこの協定をとどめたい、こう考えております。又そのきめ方につきましては、およそ一国の軍隊外国に駐屯した場合の各種の特権とか或いはその他のやり方とかにつきましては、これは日本が初めてでなくして、イギリスにもありましたし、又過去においてはフランスの場合もあります。エジプトの場合もあります。それぞれの場合がありますので、その一定の国際法のきまり以外にも、慣習と申しますか、国際慣例と申しますか、そういう種類のものもかなり正確にできておるのであります。従いまして、我々はそういうものを参考にしまして、その範囲を逸脱しないように細心の注意を拂つてこれを作り上げたのであります。従いまして、安全保障條約が国会承認を得て、その第三條で両国政府間にかかる協定をきめることは規定してありまするから、両政府でこれをきめることは差支えないと考えております。(「アメリカはそれでいいかも知れんが、こつちは困る」と呼ぶ者あり)なお、先ほど申上げました通り、本協定の第一十七條の第二項には、この協定の実施のため必要とする立法上、予算上の措置はおのおの適当な方法で国会に求めるということを明記してありまして、(「当り前だ」と呼ぶ者あり)それで若し政府の限りでできない事項がありますれば国会審議を求めることにいたしております。さようでありまするから、政府としてはこの程度協定政府の間で(「阿呆の一つ覚えだと呼ぶ者あり)できると考えております。  なお、いわゆる治外法権関係についてのお話でありまするが、これも先ほど申上げました通りでありまするが、なお、お答えいたしますると、過去の日本における不平等條約の歴史をお述べになりまして、こういう過去の苦心もあつたのだから、この点はよほど注意しなければならん、こういうお話でありまするが、成るほど過去において、安政の條約以来日本でいろいろな苦心をいたしたことは私も承知しております。併しながらあの場合は、外国人日本に居留する一般の人に対する特権であります。今回のは、例えばアメリカ人でも普通の居留民に対してはかかる裁判上の特権は與えられないのであります。特にアメリカ軍隊日本に駐屯するその事実から、軍隊構成員に対してのみ、国際法なり国際慣例なりに認められておる裁判管轄権認めようというのでありまして、過去の不平等條約のときとは全然この関係が違うと考えております。又あの場合は、日本法律等が外国の居留民に対しても適用されないという問題があつたのでありますが、今回は先ほども申上げました通り、一般のアメリカの居留民に対してはすべて日本法律日本裁判権が適用されるのは当然でありますが、アメリカ軍隊の所属員に対しましても、日本法律は尊重され、これを守る義務を負わせておるのでありまするから、さよう御承知願いたいと思います。で、今度の安全保障倹約で軍隊日本国内に駐屯することになつたのでありまするが、軍隊は勿論イギリスにもありまするし、比島にもあるのでありまして、その関係ではイギリスでも比島でも一定の裁判管轄権をその駐屯軍に認めておるのであります。併しながら、なぜ、北大西洋條約ができなくても、日本ではその條約に基く協定と同様のものを今度入れなかつたかというお話であります。私どもも北大西洋條約の協定をそのままここに取入れたいと思つたのでありますが、アメリカ側立場からしますると、北大西洋條約の協定ができるまでは、アメリカイギリスとの間の軍隊地位に関する協定におきましても、やはりアメリカ軍人軍属等の所属員はイギリス裁判管轄権に服さないということになつておりますので、それ以上のことを日本にのみ認めることは、これは困難でありまするし、又事実上北大西洋條約の協定ができますまでは、国際慣例としてもそういうものはないのでありまするから、暫定的に英米の方式に倣いまして今回の協定を作りまして、北大西洋條約ができましたら、イギリスも当然それに入りましようが、我々もその協定を適用したい。こう考えておるのであります。  なお第三に、急迫したような事態というのはどういうふうにして判断するのかという御質問でありまするが、これはいろいろの場合があると思います。又日本に非常に近く何か起りましても、日本にとつて急迫してないと判断される場合もありましようし、又遠くで起りましても、これは危險だという場合もあるだろうと思います。例えば只今朝鮮でああいう戰闘行為が事実起つておりまするが、日本国民はあれによつて日本が非常に危險な状態になつたと考えておる人もあるかも知れませんが、又ない人も多数あると思います。そこで、こういう問題は、あらかじめこういうことになればこうだというようにはなかなかきめかねる問題だと思いますので、そこでどういう事態が危險なのかということにつきましても両国政府の間で十分相談をいたしたい、こう考えておるのであります。又こういう場合にどうするかということでありまして、例えば指揮権はどうするかというようなお話がありました。こんな危險な場合を予想することはいたしたくないのでありますが、万一あつたときにはこれは非常に大変なことでありまして、日本のこの領土が外国に侵入されるとか、或いは内乱で非常な事態が起るとかいう危險なことでありましたら、この際は国を挙げましてあらゆる措置を講ずる以外にはちよつと方法は無論ないのであります。でき得る限りの最善の措置を講ずる以外に方法はない。こう考えております。  それから施設及び区域につきまして大体どういう標準でやるのか。こういうお話でございますが、これの原則といたして考えておりますることは、いずれこれは駐屯する軍隊がおるのでありまするから、施設及び区域を提供するのは、これは当然と思いますけれども、その場合には先ず日本の産業経済にできるだけ支障の少い方法でやろう、又アメリカ側も同様に産業経済に最も支障の少いような個所を選んで施設を提供してもらおう、こういうふうに原則的な話合いはできております。併しながら更に政府としましては、今後いろいろ話合いをいたすときには、はつきりしたまだ標準というようなものもきまつておりませんけれども、例えば学校であるとか、或いは病院であるとか、そういうものはできるだけ早く今接收されているものはこちら側に返還をさして、そしてこれを日本国民の用に供したい。更にその他につきましては、今申しました経済産業等に支障のできるだけないようにという原則で以て処理したいと、こう考えております。  最後に、この自衛力の漸増によつて日本外国のお世話にならずに国の独立を守り得るのはいつかという御質問でありまするが、これは非常にむずかしい御質問でありまして、いろいろの問題がこれには含まれております。原則としては、我々も、独立国たる以上は、よその国のお世話にならずして国の独立を守る、又国民もその決心でありたいことは当然でありまするが、財政経済関係から申しましてもなかなか一朝一夕にこういうこともできかねるのでありまするし、国民が漸次独立をいたしましてから、いよいよ独立国民とし、而も世界の非常に経済的にも文化的にも高い程度の国の国民としての覚悟がだんだんきまつて参りますれば、自然そういう方面のことも国民の自覚によつて早くできるものかと存じまするけれども、今から、いつということは、これは予想は我々にはなかなか困難であります。又この問題はいずれも相対的のものでありまするから、号らの力がどうであるにもよりまするけれども、同時に外国からの侵略というふうな危險がない、つまり世界の平和がどの程度維持されているかということにもかかわるのであります。国連の機構とも相待ちまして、我々はできるだけそういうことの危險のないような事態を希望はいたしておりまするけれども、只今何ともこれは申上げかねるのを御了承願いたいと思います。(「霞関の官僚国を誤まる」「霞関の堕落だ」「堕落じやない、初めからだよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  12. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 只今岡崎国務相から詳細に答弁がありました。私はこれ以上附加える何ものもありません。(「駄目だ、そんなことでは」「在野法曹団から抗議が出ているぞ」と呼ぶ者あり)     —————————————
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 山田節男君。    〔山田節男君登壇拍手
  14. 山田節男

    ○山田節男君 昨日正半日米両国代表者によつて調印され、同日午後本院において折衝の当事者である岡崎国務相から報告されましたる、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定及び交換公文に関しまして、私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、吉田政府質問し、その所信を質すと共に、事態の究明を求めんとするものでございます。  で、我が日本社会党第二控室は去る第十二国会におきまして、平和條約の批准には賛成いたしましたけれども、日米安全保障條約に対しては反対の態度を明らかにいたしたのでございます。その根本理由といたしましては、日米安全保障條約のごとき一種の集団的安全保障の取極めは、平和條約発効後即ち我が国が完全な独立主権国家となつて初めて行い得るものだと確信し、又安全保障條約の中核となつておりまする同條約第三條に定めてありますところの、アメリカ合衆国軍隊日本国内及び周辺に駐屯する諸條件を、單なる両国政府間の行政協定のごときもので決定するということは、我が国の憲法に違反するものであり、又主権在民の代表である国会としては到底これを許容すべきものではないという信念に立つていたからでございます。今回その全貌を明らかにされました日米安全保障條約に基く行政協定内容を見ますというと、我々の杞憂はいよいよ実現化いたしまして、我々の信念の正しかつたことを雄弁に物語つているのでございます。(拍手)我々は、吉田総理がかくのごとき越権行為を独断的に專行されたことに対しましては、重大なる政治的責任を感ぜられる義務があると存ずるのでございます。行政協定というものは、第二次世界大戰後に生れた新らしい形式の国際條約でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)行政という文句にとらわれますると、如何にもときの行政政府が勝手に取極め得るがごとく見えまするが、これは大きな誤まりでございます。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)殊に日本憲法は第四十一條におきまして、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」かように定めてございます。事いやしくも我が国の主権又は国民基本的人権に関する国際的な取極めは、その名称の如何を問わず、当然憲法第七十三條の定むるところに従いまして国会承認を経べきものでございます。(「その通り)と呼ぶ者あり、拍手)御存じのように、アメリカ合衆国の大統領は、元首の地位を保つと同時に、その行政上の大権は極めて広汎に亘つております。みずからの権限に基きまして、行政協定、即ちエグゼキユーテイヴ・アグリーメント、これを結びまして、一種の暫定的條約すら結んだ事例がございました。アメリカ合衆国の大統領の権限として認められている、これは一つの慣行になつておるのでございます。然るにこの強大な権限を持つアメリカ合衆国大統領に比しまして、日本内閣総理大臣は元首ではございません。ただ法律の定むる範囲内で行政を担当する最高責任者であるに過ぎないのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)かくのごとく提灯と釣鐘のごとき(笑声、拍手)比重と権限の相違の下におきまして、あたかも対等地位権限にあるかのごとき誤まつた認識の下に今回の行政協定が調印されたことは憲法の精神から申しましても明らかに違憲でございます。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これがために八千四百万の同胞を今日の窮状に陷らしめました秘密外交の失敗を再び繰返博んとするものでありまして、実に非民主的であると断言せざるを得ないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)憲法第九十八條によりますると、「憲法は、国の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と規定いたしておるのであります。吉田総理は、政府の当然の権限に基いて、その内容は全く條約と同じ比重を持つ行政協定を独断で取極めたと確信していられるのでありましようか。若し然らば、その憲法上の根拠を明白にして頂きたいのでございます。その明示がない限り、憲法第九十八條第二項に定めるところの條約遵守の必要はなやと考えますが、この点に関する吉田総理の見解を明確にお示し願いたいと存ずる次第でございます。(拍手)なお、この点につきましては、只今岡崎国務相から大部分答弁がございましたけれども、例の安全保障條約第三條の末尾に、行政協定は両政府間においてこれを定むるものであるから、決してこれは違法ではない、かように申しておられますけれども、その弁解は以上申しました理由によりまして何ら根拠ないものと私は考えるのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)  次に、この友好と互讓の下に成立したと言われまする行政協定内容につきまして、岡田議員並びに中山議員の御質問と多少重複いたしまするけれども、逐次質問をいたしたいと存じます。  第一に、この行政協定中、最も国民の関心を集めていたのは裁判管轄権の問題でございます。すでに岡田議員並びに中山議員から詳細なる質問がございました。この裁判管轄権の取扱い如何によりて、私は本行政協定の性格が定まり、又、ラスク特使が来目早々、行政協定は飽くまで平等の立場に立つ交渉であると明示されたことが守られているかいないかが判明する最も明白なテスト・ケースであると思うのであります。行政協定第十七條第二項によりますると、アメリカ合衆国軍隊構成員軍属、又それらの家族日本国内で犯すあらゆる犯罪について、その專属裁判権アメリカ側にあることが保証されております。換言すれば、裁判管轄権属人主義がとられておることは明らかでございまして、これを只今岡崎国務相からいたしましては、これは極く新らしい意味の治外法権である、いわゆる古い意味の治外法権ではないということを説明しておられまするけれども、併しこれはこの條文をよく読むことによりまして、明らかにこれはアメリカ側に対しまして治外法権認めるものである、自主独立の国家といたしましての主権が歪曲され否定されていることを示すにほかならないと思うのでございます。而も同條第一項の初頭におきまして、昨年の六月にロンドンで署名されました軍隊地位に関する北大西洋條当事国間の協定、これがアメリカについて効力発生しましたるときは、日本が好めばその協定と同じようなものを結ぶことができる、かようになつておりますが、日本独立主権国として対等地位において行政協定が取極められる建前にありながら、なぜ最初から北大西洋條約と同じく属地主義にされなかつたのか、理解に苦しむものでございます。先ほど岡田、中山議員からもこの点に関しまして御質問があり、岡崎国務相からも御回答がありましたけれども、私は遺憾ながら岡崎国務相の御答弁によつては了解できないのでございます。先ほど繰返されましたがごとく、不平等條約の撤廃に苦難を嘗めました我々日本国民といたしましては、国民感情の上からいたしましても、独立日本のプライドの上からいたしましても、誠に不面目に思う。政府当局のイソフエリオリテイ・コンプレツクスと申しますか、一つの劣等感のいたすところであると、国民一般は極めて不満に感じているのでございます。先ほども申されましたように、最近都下に起きました某銀行のギヤング事件、或いはその他の地区におきまして強盗或いは脅迫のような種々の犯罪が起きておりまするけれども、その検挙はなかなか挙らない。徒らに民心を惑わしているのでありますが、これは一に裁判管轄権治外法権的な属人主義に基いているからであります。先ほど木村法務総裁から御答弁がこの件についてありましたけれども、こういうような拘束された一方的な日本裁判管轄権の下において、よく治安を保ち得る自信がおありになるや否や。重ねて私は率直な御意見を承わりたいと存ずるのでございます。  次には、これ又、前質問者の諸君によつて問題になつた点でありまするが、緊急事態においての米軍の出動についてであります。安全保障條約の第一條に定めまするがごとく、アメリカ軍隊は、極東におきまする国際の平和と安全の維持に寄與し、並びに一つ又は二つ以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された我が国における大規模の内乱及び騒擾を鎮圧するための援助、及び外部からの武力攻撃に対する我が国の安全に寄與するために駐屯することになつておるのであります。行政協定第二十四條におきまして、米軍出動の場合は具体的に協議すると、極めて漠然とした規定があるのみでありまして、日米の協議が事前に行われるのか、事後に了承されることでいいのか、明らかにされておらない。又、アメリカ軍日本警察予備隊が共同行動をとる場合の総合的指揮はどうなるのか、これも明示されておりませんし、先ほどの岡崎国務相の御答弁によりましては明瞭になりません。北大西洋條約によりまするところのいわゆる何と申しますか、ノース・アトランテイツク、トリーテイ・オーガニゼイシヨン、これにおきましては、先ほど岡崎国務相も言われましたごとく、統合参謀本部がございまして、アイゼンハウアー元帥がその最高指揮官となり、その下におきまする幕僚は、この北大西洋防衛條約加盟国の軍の代表者が参加いたしておるのでございます。こういうような工合に、欧州軍の統合本部のような構想の下において最高指揮官を置いて、この日米合同の兵力と申しますか、軍力と申しますか、それに対して統帥権を委任するのか。又、作戰の幕僚といたしまして日本側からも代表者を置くのかどうか。この点について行政協定取極の当の責任者岡崎国務相の見解を再び承わりたいのでございます。この点は、日本の自衛的兵力が本来の趣旨に反しました目的或いは区域出動を余儀なくされはしないかとの危惧心が持たれまするので、特に明瞭にして頂きたいと存ずるのでございます。  次は防衛支出金の問題でございます。先ほど大蔵大臣から御説明がございましたが、なおこの問題について私は補足的に質問申上げたいと存じます。  御承知のように明年度の予算におきまして、政府防衛支出金といたしまして、六百五十億円の負担を計上いたしております。この日本の今日の経済状態といたしましては、過大な自衛力漸増の負担の上に、又その上に六百五十億円という負担金を課せられておるのでございます。日米安全保障條約は、日本の安全をアメリカの援助によつて保障するものでありまするけれども、又同時に日本は、アメリカの極東、否、アジアにおける戰略的衛星国としての重大なる役目をも果すものであります。北大西洋防衛條約加盟諸国は、アメリカから軍備拡張のため多大なる援助を受けており、近く西欧軍に参加せんとする西ドイツにおきましても、相当寛大な援助が與えられるやに聞き及ぶのでありますが、東亜におきまする我が国の任務は重大なるものであることと、我が国の経済的実力の貧弱なることに顧みまするとき、日本に対する負担は、この防衛支出金六百五十億円にいたしましても、余りにシヴイアであると思われるのでございます。自衛力漸増に伴う経費の激増と過大なる年々の防衛支出金の見通しの下では、国民生活の水準も引下げ、又バターよりも大砲だという財政経済に向うのが必須であるかのごとく思われるのでありますが、これに対しまする池田大蔵大臣の健全均衡財政は如何にして保持する構想があるのか。この点についてお示し願いたいと存ずるのでございます。  次に、この行政協定の第二十三條に、例の駐屯軍の軍隊軍属、その家族に対しまする保安の問題がございます。これは今朝の新聞を見まするというと、政府は今国会に、防諜法、国家機密保持法案を出すというように伝えておりまするが、こういう事実が果してあるのかどうか。こういう保安的な、曾つての軍国主義時代に制定されて国民の自由を奪いましたところの軍機保護法のごときものが現われるといたしますならば、これは單に日本憲法に反するのみならず、裁判管轄権におきまして治外法権的な特権を與えた上に、なおその上塗りをするということになるのでありましてこの点は殊に我々国民として憂慮するわけでありまするが、この点につきまして政府はどういう限界においての保安的立法をなさんとするのか。その内容のあらましを御説明願いたいと存ずるのでございます。  次は駐留軍に対しまする労務の調達の問題でございます。行政協定第十二條の5によりまして、日本政府の援助によつて駐留軍は役務調達することになつております。先ほど吉武労働大臣からの御説明にありましたように、賃金その他の労働條件、又は労働関係に関するあらゆる法規は、これらの労務者に完全適用され、若しこれに違反したような場合があつたれば断乎処分する、かように心強い御回答がありましたけれども、この先ほど触れました保安の問題に関しまして、恐らくこの協定第二十三條に基きまする保安基地内或いは施設内におきまして相当広汎に応用されるものと存じます。で、これは直ちに労働者の労働関係に非常に広く響く点でございます。こういう点につきまして政府は如何なる保障を與えんとするのか。又先ほどの御答弁で明らかになつておりませんけれども、この駐屯軍に使われまするところの労務者の身分はどうなるのか、間接雇用の建前でありまするが故に、従来のごとくこれは公務員に準ずる要員として扱われるものかどうか。この点について明らかにいたして頂きたいと存ずるのでございます。  次には、日米の安全保障條約に基きまして行政協定が成立いたすわけでございまするが、この行政協定、或いはその基となりまするところの安全保障條約のごときものを持たない、例えば英連邦軍のごとき、今日占領軍として駐留しているこの軍は、将来どうなるが。先日、私は本議場において質問を申上げましたが、英連邦軍は昨年の十二月の十五日以来、従来の英連邦占領軍の名前を変更いたしまして、英連邦朝鮮派遣軍ということになつておるのでございます。かまうな、事実上国連軍の一部として、今日、日本に駐留いたしておりまするが、こういつたような関係は、講和條約発効前に朝鮮の事態が円満に解決すれば問題は少いかも知れないと存じまするけれども、若し朝鮮の事態が解決しないといたしまするならば、これは実に国際法上から申しましても変なものと考えるのでありまするが、これに対しましては政府は如何なる施策を考えておられるのか。この点を明らかにして頂きたいのでございます。  次には原爆基地の設定の問題でございます。先ほど岡崎国務大臣原爆基地日本の内地に設けないようによくお願いを申したということでございます。過日我々参議院の議員の有志の中で、昨年渡米いたされました議員の有志諸君がラスク特使を迎えて懇談会を催しました。そのときに同僚でありまする岡本愛祐議員から、この原爆基地の設定につきましてお願いやら質問があつたのでございます。私もラスク特使のそばに座つておりまして、言葉はつきりと聞いたのでありまするが、行政協定においては、決して原爆基地となるような、こういうような規定は設けない、広島、長崎におけるようなこの原爆の惨害を見ても、日本国民の感情から見ても、かようなことはすべきものではない、こういうことをはつきりつておるのであります。私はこの行政協定の中には、ミスター・ラスクもかような気持でおられるからして、アメリカイギリス協定の中にありまするように、この原爆基地に関しましては、はつきりとした明文が謳われておると想像いたしたのでありまするけれども、昨日発表されました行政協定を見まするというと、一つの文句もこの中に謳われていないということは、誠に私は心外に堪えないのでございます。(拍手)かようなことからいたしましても、先ほど来、岡崎国務相対等でやつたのだということを飽くまで申されまするけれども、この一事を以ちまして、ミスター・ラスクの言葉、ミスター・ラスクが了解されておられたような事項すら、この協定の中に挿入し得ない。ここに私は今日の吉田政府のやることが、すべてインフエリオリテイ・コンプレツクスの代表的なものであると断ぜざるを得ないのでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの点につきまして、岡田議員からもこの協定條約が如何にも日本アメリカに従属化せしめたような印象があるということを申されましたけれども、(拍手)私はこの一事を以ちましても、吉田政府の実に弱腰であり(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)その癖、国内に向つてはワンマンである、独裁者である。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)国外に向つては福の顔をし、又国内に対しては鬼の顔をするという従来の封建的な人であることを最も雄弁に語つておると思うのでございます。  次に、時間がございませんから端折つて質問申上げまするが、先ほどの岡田議員の質問に関連いたしてでありまするが、日本は米軍に対しまして日本の通信施設を貸與することになつております。岡崎国務相は電話料金のことだけ御説明になりまして、その他のことに触れられませんで、岡田議員の御質問が徹底しなかつたようでありまするから、私は重ねて御質問申上げます。と申しますのは、この協定の第三條の第二項におきまして、米国軍は、従来使用しておりましたところの電波放射の裝置が用いるところの周波数、又電気通信諸般に亘りまするものは、現在使用しているものをそのまま使う、こういうことになつておるのでございます。御承知のように終戰後日本は、戰災の結果もございまするけれども、殊に電気通信のサービスが惡く、まして電話のサービスというものは全く呆れたものでございまして、本院におきましても、電話サービスの改善について決議案が上程され、可決されたようないきさつがございます。その根本原因はどこにあるかと申しまするというと、勿論戰災によりまする通信施設の破壊、この復旧が遅れていることに起因いたしまするけれども、その大きな原因の一つといたしましては、今日電話線の、即ちケーブル線の最も優秀なる部面が占領軍によつて占有されておりまするが故に、全く汽車よりも遅いような急報になり、或いは大阪、神戸間が至急報を以ても二時間もかかるというような電話のサービスの現状でございます。若しこの協定にありまするがごとく、今日の日本の通信施設、最も能率が上らない重要な根拠となつておりまするところの通信施設、これを現在のままで持越して使用されるということになりまするならば、日本独立国家になり、経済的にもいろいろな方面におきまして電気通信施設の改善能率化が要望されておる今日、私はますますこの電話サービスの改善というものに対して不安を抱くのでありまするが、(「そうだ」と呼ぶ者あり)こういうような協定の下におきまして、日本政府は如何なる対策を以て、国民が今日不便にさらされ、電話は「出んわ」というような言葉でも、しやれておられるような現状でありまするが、佐藤電通大臣といたしましては、如何ような施策をいたされるのか、この点について明らかにされたいと存ずるのでございます。その他いろいろと御質問申上げたいこともございまするけれども、時間もございませんし、又余つておる時間で若し再質問が許されまするならば、それに時間を割愛いたしたいと存じまして、これを以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  15. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えをいたします。  第一は、この協定を作つたのは憲法違反ではないかというお話でありまするが、これは先ほど来たびたび繰返して申しておりますところでありますが、憲法條項に基きまして安全保障條約の承認国会に求めたのでありまして、その安全保障條約の第三條に両政府間で行政協定締結することを認められておりますので、両政府間で協定を結んだのであります。又その内容につきましては、一国の軍隊他国に駐屯する場合の国際慣例に則りまして、この安全保障條約の実施の細目を定めることにいたしまして、それ以上に出ないように細心の注意を拂つておりますので、(「出ているよ」と呼ぶ者あり)即ち憲法若しくは法律に違反することはないと思います。(「行政協定は條約だよ」と呼ぶ者あり)  なお裁判管轄権の問題につきまして、これ又先ほどと同じお答えになりまするが、北大西洋條約に基く軍の地位に関する協定ができまする場合は別でありまするが、それまでは、フイリピンがやつておりまするような、基地内の管轄権基地外の管轄権を異にするやり方と、英米の間にやつておりまするように、軍の所属員に対する裁判管轄権とその他の一般の国民及び第三国人に対する裁判管轄権を異にする、いわゆる属人方式と申しますか、そういうやり方と、二つだけがあるのであります。アメリカイギリス協定でも、アメリカ軍隊の所属員に対しましてはこの属人方式をやつているのでありまするから、我々も現在のところはこの属人方式をとり、北大西洋條約の協定ができますれば、これの協定と同じようなものに切替える、こういうことでありますので、さよう御承知願いたいと思います。  又第二十四條の、敵対行為の発生の危險等があつた場合につきまして、予備隊と米軍との共同行為をとる場合はどうするのか、こういうお話でありまするが、これは、内乱にいたしましても、或いは直接侵略の場合にいたしましても、国の安全を脅かされる、国の独立を失うか失わないかという極めて緊急な且つ非常の事態であります。もとよりこういうものをあらかじめいろいろ予想するわけではありませんが、こういう万一非常な事態が起りましたときは、これはもうあらゆる必要且つ適当な手段を講ずるほかはないのでありまして、ただこういういろいろの場合におきましても、現在の警察予備隊が海外に出動するというようなことはないということは、しばしば担当大臣等から申上げておる通りであります。  なお第二十三條の、アメリカ軍隊及び所属員の保護等に関する措置につきましては、これも先ほど申上げましたが、軍隊の安全には特殊なものがあることはこれは常識であります。そこで只今愼重にこの立法措置を研究中でありますので、いずれ成案ができましたならば国会に提出して御審議を願いたいと思つております。併しながら、戰時中の立法として非常に弊害が叫ばれておりましたようなものを又作るつもりはないのであります。  なお国連軍と現在の占領軍関係等についてのお話でありまするが、英濠軍は、やはり名前はどうでありましようとも、現在では日本占領に協力しておりまする連合軍の一部であるという事実には変りがないのでありまして、それが又アメリカ軍隊にいたしましても、御承知のようにアメリカ軍隊であり、そうして連合軍の一部の軍隊であり、且つ国連軍の一部であるというような三つの性格を持つております。そういう関係と同じように、英濠軍についても、国際連合軍の一部という性格は持つておろうと思います。そこで政府態度につきましては、これはサンフランシスコ会議の際に交換公文を両国政府で……、交換公文がありまして、又平和條約の中にも同様の條項がありまして、日本政府は現在も又独立後も国際連合のいろいろの措置についてはでき得る限りの協力をするということにいたしておりますので、その趣旨で今後措置したいと考えております。  又原爆基地等の問題についていろいろお話がありましたが、これも先ほど申上げた通りでありましてただ一言附加えますれば、今度の行政協定の中には、如何なる武器を持つか、潜水艦を持つか、飛行機を持つか、機関銃を持つか、どういうものを持つかというようなことについては全然記載をいたしておらないのでありまして、さよう御承知を願いたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  16. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。  駐留軍労務につきまして、間接雇用にした場合の身分関係はどうなるかというお尋ねでございますが、御承知のごとく現在は特別職の扱いになつております。独立後にこれを続けるか、又他の身分関係を作るかということは、目下検討中でございます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇拍手
  17. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答え申上げます。  御承知のように今日進駐軍が施設使用いたしておりますのはスキヤツピンによつて使用いたしているわけでありますが、この行政協定に基きますれば、施設及び区域につきましては今後の協議によることになつております。そこで今後これらのものが決定を見ますれば、進駐軍の移動等も当然考えられるのでありますので、国内の通信状況に変更……今まで使用いたしておりましたものを返すとか、或いは新たに施設をするとか、これらの変更並びに影響をこうむることは当然であります。従いまして私どもといたしましては、この協議に際しまして、万全の用意の下に、サービスの低下を来たさないように最善を盡して参る考えでおるのであります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  18. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 先刻岡田議員に対する私の答弁において明瞭にいたしておきました通り、今後講和條約発効後におきましては、米軍の施設区域外における米国軍人その他従属者の犯罪については、日本側においてこれを捜査し、これを逮捕することになるのでありまするが、そういう場合が将来起りますると、我々といたしましてはこの逮捕権を十分に行使するつもりであります。国民諸君におかせられましても、そういう犯罪の捜査逮捕につきましては御協力をお願いいたします。(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)遠慮なくやるつもりであります。(拍手
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣答弁は他日に留保されました。  これにて午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩    午後一時十九分開議
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。有馬英二君。    〔有馬英二君登壇拍手
  21. 有馬英二

    ○有馬英二君 私は民主クラブを代表いたしまして、昨日政府国会に発表いたしました行政協定について、以下若干の質問吉田首相並び岡崎国務大臣に対していたしたいと存ずるのであります。  政府岡崎国務大臣日本政府の代表として、アメリカ合衆国代表のラスク氏と、去る一月二十八日以来十数回の公式、非公式折衝をなさしめながら、昨日正午、成文ができて調印するまで、全然内容を秘密にして発表することを避けて来まして、調印後初めて岡崎国務大臣をして国会に報告せしめたのであります。で、これは立法機関である国会承認を求めたものであるとは解しがたい。言うまでもなくこの行政協定安全保障條約の第三條に規定されており、いわばその細則のごときものである。この協定によつて合衆国軍隊日本国内及びその附近における軍隊の配備を規律する條件を決定するものであります。    〔議長退席、副議長着席〕 昨年九月安保條締結以来、この行政協定こそ我が国の安全を真に保障してくれる最も重要なる具体的規定であるとして、国民は一字一句も漏らすことなく知らんと欲していたのでありまするが、政府は昨日まで約一ヵ月間、その構想をも知らせず、全然秘密に折衝を行なつたのであります。これは政府のかねて持つてつたところの腹案があつたのでありましようが、アメリカ合衆国の提案を見て、それから折衝を続けるべきであるという消極的な態度を持しておつたから、今日まで内容の明示もできなかつたのであろうと善意に解釈しても、何故成文になつて調印を終つた後においてもこれを国会に提出して承認を求めないのであるかということを、甚だ遺憾に思うのであります。で、吉田総理の従来の答弁によりましても、すでに安保條約第三條が国会承認済みであるから、行政協定承認を求める必要がないのであるというように回答せられておるのでありますが、成るほど安保條約第三條は国会承認を経ております。併しこの協定は、その第三條以外に、安保條約に基く各自の義務を具体化し、且つ両国民間の相互の利益及び敬意の緊密な「きずな」を強化する実際的な行政取極であつて国会承認を経なければならないと私どもは解釈しておるのであります。聞くところによりますると、アメリカ合衆国では行政協定上院承認を求めなくともよいと言われておるのでありまするが、首相は、やはりアメリカ合衆国の見解をそのまま抱いておられるのであるかどうか。いずれにいたしましても、政府のこの見解は誤まりであると私どもは考える。我が国の安全保障を詳細に規定するこの大切なる立法国会承認を得ないということは、国民が承知しないと同一でありまして、国会を無視したものと言うべきであると考える。而も行政協定の第二十七條には、必要とするものについては立法上の措置立法機関に求めることを約束すると明記してあるのであります。政府はこれにつきましてその一つ一つの個々の條例、或いはそれについての法案を或いは提出するのかも知れませんが、なぜこの行政協定全体を立法機関であるところの国会に提出して承認を求めないのであろうか。それは必要を認めないからであるということであるのでありましようか。若し国民にこれを知らせないで、そうしてこのまま軍に報告で終つてもいいというようなことであるといたしますると、国民は納得しないであろうと思うのであります。私は特に先般来外務委員会におきまして、この協定につきまして数回岡崎国務大臣から答弁を求めておるのでありまするが、未だに私が今まで述べましたように立法措置をとらないで、外務委員会に提出されないということについて、私は非常に不満を感じ、この点について特に首相並び岡崎国務大臣答弁を求めたいのであります。  第二は、駐留軍の駐屯に必要な施設及び区域の点についてお伺いしたいのであります。この点につきましては今まで我が同僚各位からいろいろ質問がありまして、又岡崎国務大臣からも答弁がありましたが、私は、やはりこれについてまだ同大臣の御答弁に飽き足らないのであります。個々の施設及び区域につきましては第二十六條の合同委員会においてきめるということが記載されております。これについて細かいことは更に委員会において質問をすることにいたしましても、誠に不明確なことが多いと考えられるのであります。第一、安全保障條約第一條に揚げるところの目的の遂行に必要な施設及び区域と記載されてありますが、その広さとか、或いは数とか、或いは範囲とか、或いは場所というようなことについては何も明記されていないので、ただ合同委員会できめるのであるというように簡單に取扱われておるということは、甚だ不可解であります。合同委員会構成は第二十六條に示されてあるのでありますが、これにつきましては先ほど来やはり同僚からの質問がありましたが、かような重大なる行政協定中の区域並び施設の問題を單に合同委員会に任して、それでよろしいものであるかどうか。而もその合同委員会の性格というものが明確にされておらないのであります。この点は我々は甚だ不満であります。今、例をアメリカ合衆国フイリピンとの軍事基地に関する協定の一九四七年三月に締結したものを見ましても、附属書A及びBには、航空基地、海軍基地、要塞、その他休暇娯楽地、一般貨物の置場所というものに至るまで明細に記載されてあります。然るに今回の行政協定には、個々の施設及び区域合同委員会がきめるのであるということを書いて、詳細には記載されておりません。これほ或いは軍の機密に属するためであるか、或いは今は時がないからして間に合わないから、後に合同委員会にきめさせるのであるというように軽く取扱つておられるような意味であるのか。いずれにしても国民が最も深き関心を以て聞かんと待望しておりました駐留軍の区域、所在、数、或いは区域の広さというようなものが全然不明であるということは、国民が誠に不安を抱くと思うのであります。丁度例えて申しまするならば、目隠しをして、危險がないから、おれのあとについて来いと言つておるのと同一でありまして、国民はただ合同委員会に、その性格の甚だ不明瞭であるところの合同委員会にそれを一任しておるということになると思うのであります。この点、甚だ不可解であつて国民の眼を蔽わんとしておるような態度であると私どもは存ずるのであります。一昨年朝鮮動乱が始まりまして以来、我が国は御承知のように共産陣営の重圧を身近かに感ずるようになり、殊に北辺の地北海道におきましては、ソ連と地を接しておる関係上、北海道の危機がひそかに叫ばれておることは、皆さん御承知の通りであります。それなればこそアメリカ合衆国の州兵二個師団が北海道に駐留しておるのであります。北海道四百万の住民は、このアメリカ軍の駐留によりまして、初めて枕を高くして安んじておるというような現状であります。今日我が国民全体が、今回の行政協定によるところのアメリカ軍の駐留、而もその区域等について、又その軍の構成、或いは軍の人員、そういうことについてはつきりと知つて、そして初めて自分たちが安全保障されて安んじようと考えておる矢先であります。然るに政府はこれを察せずして不明瞭な行政協定で以て一時を糊塗しようとしておるのは、我が国民を全く失望に陷れると考えられるのであります。私は速かに、政府がこの行政協定に示されたように、合同委員会を早く組織いたしまして、米軍の施設及び区域の個々について国民を安んぜしめるような施策を施して頂きたいと存ずるのであります。なお、合同委員会の決定につきましては、我が国の経済自立を成るべく害さないように勘案してもらいたいということをここに附言をしておきます。これにつきまして、政府はそういう用意があるかどうかということを岡崎国務大臣に伺いたい。  第三には、裁判管轄権でありまして、これにつきましては先ほど来同僚諸君からたびたびお話がありました。私ども外務委員会におきましても、先日岡崎国務大臣から親しく答弁を承わつたのでありまして私自身としては一応政府の意のあるところを知つているのでありますが、即ち政府は、岡崎国務大臣の言われるように属人主義を我が国ではとろうとしているのであります。例えばアメリカフイリピンとの協定では、属地主義はとつておるけれども、先ほど来しばしば岡崎国務大臣答弁にもありまするように、暫定的に属人主義とつたほうがいいのであるということを言われるのであります。一九五一年六月十九日にロンドンで署名された軍隊地位に関する北大西洋條当事国間の協定、これが合衆国についてその効力を生ずるまで、今から暫らくの間、属人主義でやつて行きたい。若し効力が発したならば、選択で前記の協定の相当規定と同様の裁判権に関する協定に変えるというような政府の意向であります。一応それは私ども了承するのでありますが、併しながら決して釈然たり得ないものがあります。前記北大西洋條約が有効になつたときは、という仮定であります。なお、若し一年間に有効にならなかつた場合も規定されておりまするけれども、有効になるということがもう数ヵ月間に行われる、こういう見通しが付いておるというのならば、なぜこの際これを直ちに実行をいたしまして、その屈辱的だと考えられておるところの属人主義をとらなければならないか。先ほどからたびたび例に引かれておりますように、数日来アメリカ兵の軍服を着た白人が、白晝銀行に押入つて強盗を働いておる。それ以来同じような事件が毎日頻々として報道されておるではありませんか。これはアメリカの制服を着た軍人であれば、賊を働いても逮捕することができない。或いは逮捕しても、これを日本法律で律することができないというため起つた事件でありまして、誠に我が国民は戰慄を禁じ得ないというような不安な状態に陷つておるのであります。若し條約が発効されまして、そうして占領軍が駐留軍に変つたといたしましても、この條約にありますところの属人主義をとつておるならば、やはりその関係は同じようでありまして、制服を着た白人の強盗がますます殖えるばかりでないかと私どもは心配するわけであります。岡崎国務大臣は、速かに本協定の第十七條第三項を全面的に改正して、以て我々の不安をなからしめるような用意があるかどうかということを伺いたいのであります。  第四に、非常事態における異同措置に関してお伺いをいたしたい。これも先ほどからたびたび質問がありまして、岡崎国務大臣答弁がありましたが、私はなお観点を変えまして少しく伺いたい。第二十四條には、日本区域において敵対行為又は敵対行為の緊迫した脅威が生じた場合について記してあるのであります。これが即ち緊急或いは非常事態の表現であります。実に甚だ短かい表現である。ここに言うところの敵対行為というのは如何なるものを意味するものでありまするか。英語ではホステイリテイという字が使つてある。これは日本国内の安全を脅かすところの内乱的の暴動ということもこの中に含まれておるかどうか、或いは單に外敵の襲来ということの意味でありますか。日本の安全を脅かすということは、この大規模な国内的な動乱、それから外部からの襲来と、この二つのほかにはないはずであります。吉田首相は、十月から警察予備隊を保衛隊とするというように発表され、その数も非常に増加するということを発表されておるのであります。吉田首相並び岡崎国務大臣その他主管大臣は、この措置によりまして国内の動乱が鎮圧できるものというように考えておられるらしい。我々も又それを信じたいと思うのであります。然らば駐留軍の出動ということがどういうときに起るのであるか。それは取りも直さず、国内の動乱には動かない、外敵の襲来のときに初めて出動するというのでありましようが、そういうときには共同措置をとると、こう書いてある。共同の措置というのは一体どういうことを言うのであるか。恐らく我が国の安全を守り、防禦する、外部からの襲撃に対しまして我が国を守るということでなければなりません。勿論その際アメリカ軍は航空隊或いは海軍等の出動もいたすでありましよう。而してその際日本と共同の動作をするということであるといたしまするならば、我が保衛隊もアメリカ軍と共同作戰をするのであろうと考えられます。それは作戰という字は用いてない、共同措置であるというように言われるのかも知れません。併し事実は我が国を外敵から守るところの動作をするのでありますから、これは海におきましても、或いは空におきましても、或いは陸におきましても、アメリカ軍と共同いたしまして日本防衛する共同作戰にほかならないと私どもは思うのであります。この共同措置ということは、字には措置としか書いてありませんから、それは戰争ではない、共同の事柄を措置というのであるというように非常に簡單に解釈されるのかも知れませんが、実際におきましては共同動作或いは共同作戰と解してよろしいと思うのであります。若しそうであるといたしまするならば、吉田首相はこれを戰争ではないので防衛であると強弁されると私は思うのでありますが、それは吉田さんお一人、或いは吉田内閣閣僚はそれで承知をされるかも知れませんが、国民はそれでは納得しないであろうと私は思うのであります。
  22. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 時間が大分過ぎております。
  23. 有馬英二

    ○有馬英二君(続) 私は再軍備を論ずるのではありません。我が国の非常事態に防衛の任に当るところの保衛隊が米軍の手足まといにならないで、米軍兵士と同様に、否、それ以上に勇敢に鬪うような訓練と武器の給與が行われて、十分国家の安泰を守り得るだけの力になり得ると確信を以て国民に保証されるかどうかということを、吉田首相並び岡崎国務大臣にお伺いしたいのであります。なおいろいろな点について申述べたいのでありまするが、時間もありませんし、なお詳細は外務委員会において質問をいたしたいと存じます。私の質問はこれを以て終ります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一の御質問は、昨日発表するまで内容を何も言わなかつたではないか、こういうお話でありまするが、この会談におきましては正式会議を開くこと十一回でありまして、その都度話合いのついたものにつきましては、その題目と簡單な内容でありますが発表しております。で、昨日発表いたしました二十九ヵ條の項目は十一回目で全都題目と簡單な内容はすでに発表しておるのであります。又国会におきましても、本会議、各委員会等でいろいろ御質問がありまして、先ほども有馬君が外務委員会でこういうことがあつたとおつしやつたように、我々も努めてこれを説明しておりましたのでありまして、ただ正確なる案文等は、これは先方と協定しまして昨日まで発表はいたしませんでしたが、その大体の趣旨とするところ、内容等は決して隠すことはなかつたのであります。  なお行政協定日本の安全保障を規定するもので重大だというお話でありましたが、安全保障を規定するのは條約でありまして、この安全保障條約に基いて駐屯軍の配備の條件を規律するだけのものがこの行政協定でありますので、政府は、午前中に申しましたように、條約によつてこれは政府のできる範囲内のことであると、こういうふうに考えておるのであります。  なお、施設区域について、その広さとか、数とか、範囲とか、場所とかは何にも記してない、又合同委員会の性格が明らかでないと、こういうお話でございますが、これも先ほど来申上げました通り、第一の原則は、この施設区域使用する場合に、日本経済とか産業とかにできるだけ支障を及ぼさない、こういう原則に基いて行うのでありまして、又その合同委員会がどういう趣旨でやるかということは、協定の第二條、第三條にその方針が書いてありまして又同時に交換公文の中にもこれが明らかにされております。で、国民が早く知りたい、どの程度のものかということを承知したいということは、これはお説の通りでありますので、政府でもその点は特に意を用いまして、二の協定ができますると直ちに人員を選びまして先ず予備作業班を作りまして、これによつて個々の施設区域を検討いたしまして、きまつたものは直ちに実行に移す。そうしてこの協定効力を発生する日、即ち独立いたしまする日にはこの仕事を合同委員会に移す、合同委員会は更にできるだけ急いできめまして、遅くとも平和條約に規定してある九十日という範囲内には是非これをやつてしまいたい。但し例外として、若しその移転すべき先の建物等ができないというような場合には、例外的に今いるところに暫らくおつてもいいんだと、こういうような基準に基きまして、この合同委員会は作業をいたすのであります。なお、早くこれをきめたいということは誠に御同感でありまするけれども、全国にありまする今たくさんの施設等、これは御承知の通り非常に数多くあります。これを一つ一つ検討いたしまして、要るか要らないか、又要るとしてもこれをもつと産業経済に支障を及ぼさないほうに移せるか移せないか、これを一つ一つやつて行くのでありまするから、どうしても時間が相当かかります。できるだけ双方とも熱心に且つ早くやろうという決意だけはいたしておりまするから、かなり困難な仕事ではありまするけれども相当早く実行できるのではないかと、こう考えておるのであります。  それから裁判管轄権についてお話がありまして、これは先ほどから何回も申上げておりまするのですが、一つ、北大西洋條約もまさにできんとしているときに屈辱的な属人方式の裁判管轄権認めたのはどういうわけであるか。こういう御質問でありまするが、私どもはこれは別に屈辱的とは決して考えておりません。外国軍隊他国に駐屯する場合は、その礼儀としましても、又国際慣例国際法規定によりましても、裁判管轄権に関して特権認めるのは、これはもう、いずこの国でもあることであります。そうして属人方式というのは、現に英米の間の軍隊に関する協定によりまして、アメリカ軍隊イギリスに駐屯しておる現在において、やはりこの方式をとつておるのであります。イギリスもやはり北大西洋條約の方式によりたいでありましようけれども、現在においてはまだその協定ができておりませんので、日本のやつておりまするような属人方式によつておるのでありまして、決してこれは日本だけが屈辱的にやつておるんだということにはならないのであります。  又、第二十四條の敵対行為の意味は何であるかということでありまするが、これは、やはり大規模な内乱の場合も我我は敵対行為考えまするし、外部からの侵入の場合も当然こう考えるのであります。で、内乱の場合につきまして、どうやつて一体アメリカ軍隊出動するかというお話でありまするが、これは安全保障條約の第一條にあります通り政府の明示の要請があつたときにアメリカ軍出動するのであります。  なお、共同措置ということの意味は何であるか、こういうお話でありますが、これはまあいろいろの場合が仮定されると思いまするが、例えば予備隊は予備隊でこつちをはつきりつてくれ、アメリカ軍隊はこつちを守るというようなやり方もありましようし、一緒になつてやろうという場合もありましようと思います。勿論自分の国を守るのでありまするから、アメリカ側の将兵にだけ守らして、こちらは何も関係がないんだとか、そういうわけではないのでありましてこういうことは望ましくないし、又我々は予期しておりませんけれども、万一こういう不祥事件が起りました場合は、予備隊と言わず何と言わず、国民全部が先ず自分の国を守るというためにできるだけのことをいたすのでありまして、それとアメリカ軍が一緒になつて適宜の処置をとる以外には方法はなかろうと考えて、二十四條にはあのように規定をいたしておるのであります。(拍手
  25. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 吉田内閣総理大臣答弁は他日に留保せられました。三好始君。     —————————————    〔三好始君登壇拍手
  26. 三好始

    ○三好始君 私は改進党を代表して、行政協定に関し政府の所見を質さんとするものであります。日米安全保障條約が合法的に成立している限り、條約第三條に基く行政協定締結されること自身は予定のコースと考えられるけれども、問題は、協定内容と、国内法上正当の手続をとるか否かにかかつて来るのであります。今回の協定は、内容に問題があるだけでなく、特に憲法第七十三條と関連する成立手続において最も重大な問題を含んでいることを指摘せざるを得ないのであります。私は以下質問を展開するに当りまして、先ず一般的な問題として、政府は條約と憲法はいずれが優先すると考えているかについて明確な説明を承わつておきたいのであります。具体的に今回の行政協定憲法に牴触するかどうかは議論の分れるところであるかも知れませんが、條約と憲法の牴触の問題は一般問題として重要問題であると考えますので、最初に当つて特に政府の見解を質しておきたいのであります。  行政協定は、名称の如何を問わず、又、安全保障條約第三條の委任の範囲内であるか否かを問わず、実質上は広義の條約であることは疑いを容れないところであります。米国憲法では、午前におきまして山田委員が指摘いたしましたごとく、慣習法として行政権による協定締結権が確立いたしておりますけれども、これは米国憲法成立の歴史的年代的理由に基くものでありまして、條約は上院の三分の二の同意を要するとの規定が生れた今から百数十年前においては、條約の締結国会の同意を要するという国はどこにもなかつたのであります。このような時代的背景の下に生れた慣習としての協定締結権を日本国憲法上に導入しようとすることは、大いに危險であると言わなければなりません。殊に米国議会は安全保障條約の審議の一部として行政協定を実質上審議する態度をとつているのは、政府の十分承知せられている通りであります。日本国憲法行政権による協定締結権を認め規定はどこにもありません。又、安全保障條約第三條は国会協定に対し承認を與える権限を放棄したと認められる根拠も規定しでおらないのであります。私は日本憲法構造の上からも、行政協定は、新たなる国際合意、即ち條約として国会承認を求むべきものであると考えざるを得ないのであります。若し政府がこれと異なる立場をとるものとすれば、それは行政権による協定締結権を憲法上の慣例として確立しようとしていると解するのほかありませんが、政府の見解を承わりたい。  私は、行政協定日本憲法上如何なる場合も国会に提出して承認を求むべきものであると考えるのでありますが、特に本協定安全保障條約第三條の委任の範囲を越えると認められるときは問題は極めて明瞭であります。安全保障條約第三條は委任の具体的な範囲を明確にしておりませんが、当然に確立せられた国際法の原則に基くことを前提としていると認めざるを得ないのであります。然るに、行政協定内容はそれを越えていると認められるのであります。例えば駐留軍の地位、殊に刑事裁判管轄権は、外国軍隊認められている国際法上確立せられている原則を越えていると言えます。例えば一国の軍隊他国領土内にあるとき、軍隊治外法権を有するのが国際法の原則であります。併しながら、軍隊の営舎を離れ、且つ公務にあらずしてなした行為については、滯在国は法権を行使しても差支えありません。それは特権が個々の軍人軍属に属するものではなくして、全体としての軍隊に與えられた特殊地位と見なされているからであります。決して包括的な属人主義が確立せられているのではないのであります。ところが行政協定においては、設定された地域以外における公務にあらざる行為にも日本の法権が及ばず、軍人軍属家族にまで治外法権が行われることは、決して当然の権利認めることはできない。(拍手)私はその違法性を指摘しているのではありません。かかる行政協定国会承認を得ずして発効せしめんとしていることが違法だと主張いたしたいのであります。これに対し政府の見解を明らかにせられたい。  私はこれに関連して交換公文に触れたいのであります。行政協定は、米国の憲法上は上院承認を要しない事項でありますが、日本国憲法上は国会承認を要すると認めざるを得ないことは、すでに繰返して述べた通りであります。従つて日本国会の承認條件として行政協定効力を発生する旨を交換公文において明らかにすべきであつた考えるのであります。  次に伺いたいのは、行政協定は條約と同一の手続で公布されるものであるかどうかを伺いたいのであります。若し條約と同一手続で公布されないとすれば、直接には国民に対し拘束力を有しないと解すべきであるが、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手政府の所見を明らかにせられたい。合同委員会は、安全保障條約乃至行政協定の実質上の運営を支配する重要なものでありますが、その決定は、大きく言えば日本の運命を決すると言えるのであります。この合同委員会日本側委員政府機構の内部でどのような地位に置かれ、委員会国内法的には如何に運用されるのか。国内法上の地位を明らかにせられたいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  駐留軍の兵力、兵種については、協定において何ら言及されておりませんが、これは決定すれば公表されるもののであるか、秘密事項なのであるかを伺いたい。  協定第二十四條の緊急事態における共同防衛措置は、当然に、保安隊に切換えられるという現在の警察予備隊と関連を持つて来ると考えられるのであります。予備隊の海外出動はないということは政府が繰返して言明しておるところでありますが、先ほど承わりましたところによりましても、少くとも国内において外敵の防衛に任ずることが考えらるのであります。果してそうであるといたしますというと、この場合、憲法第九條第二項との関係がどうなるかは重大な問題であると考えられますので、政府の見解を承わりたいのであります。又緊急事態において保安隊の最高指揮権が日本側にあるのかどうかを示して頂きたいのであります。  駐留軍の施設を含めて、合衆国軍隊構成員軍属並びにその家族の公用私用のため消費する物資は、占領中に比べて増大すると解してよいかどうか、又これが日本のインフレと、どの程度の関連を持つと考えておるかをお尋ねいたします。  次に、行政協定の成立に伴い必要となる国内立法措置は如何なるものがどの程度予定されておるのか、又その国会提出の見通しがどうであるかを承わりたいと思います。  最後に、交換公文の末尾にあるところの、平和條約による占領軍撤退期間後、本協定によらざる施設及び区域認めることの具体的内容を聞きたいのであります。これは現在占領軍使用中のものを意味すると思われるのであります。併しながら、元来行政協定によるいわゆる区域は、範囲の明確な小地域と解すべきでありますが、占領軍に果して明確な駐留地域認められておるのかどうか、若し明確でないとすれば、どのような取扱をする方針であるか承わりたいのであります。駐留地域は、特に裁判管轄権との関係で明確を要すると考えられますので、ここに、はつきり質しておきたいのであります。  以上を以て私の質疑を終ります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  27. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えいたします。  行政協定締結権限がどうかというお話でありまして、アメリカもずつと前にこれは認めたことで、その当時の情勢を反映しておるのである、こういうお話でありまするが、最近でもずつと例がありまして、アメリカ大統領に特殊のエグゼキユーテイヴ・アグリーメントを結ぶ権能を與えて来ておると私は了解しております。又日本にほ前例がないのではないか、こうおつしやいますが、それは、立法機関である国会が、この間、安全保障條約を承認されまして、その第三條において両政府間に行政協定を作ることを認められておりまして、今もおつしやつたように、委任されておるのだと、こういうお話通りであると私は考えております。そこで、それでは内容が逸脱しておるではないか、こういうお話でありまするが、公務と公務でないとを問わず、又施設内と施設の外とを問わず、アメリカ側裁判権が軍所属員に及ぶということは国際慣例に例がない、こういうお話でありまするが、私はこれについては如何なる国際慣例をお引きになつておるのかわかりませんが、少くともアメリカイギリスの間に現在行われておる裁判管轄権に関する協定では、やはりこういうふうに属人的な裁判管轄をイギリス側で認めておるのでありまして、これは国際間の慣例であるとしか考えられないのであります。それから協定の公表の手続はどうかというお話でありまするが、これは勿論官報に出しまして公示いたします。    〔副議長退席、議長着席〕  それから駐留軍の兵種等は公表されるかというお話でありまするが、これは軍の機密に属することでありましようから、恐らく私は公表されないものと考えております。  予備隊の外敵の防衛に任ずることは憲法との関係上問題ではないかというお話でありまするが、これは自衛権の行使でありまして、予備隊と言わず、消防隊と言わず、或いは我々一介の国民と言わず、誰でも自分の国が侵されんとするときは当然自衛権を行使してこの国を守るのであります。ただその守る力が多い少いということはありましようけれども、これは何も憲法に牴触するような問題ではないと確信いたしております。又予備隊の指揮権はどこにあるか、これは法令によりまして、ちやんと日本の法令に規定してあるのであります。あの通りであります。  それから、駐留軍の使用する公私の物資等は今と比べて将来は減るかというお話であります。これは私は減ると考えております。又、日本経済に影響を與えることのないように双方で十分協議をいたすことになつております。  それから施設区域について、現在の区域一体はつきりしておるのか、今後はどうするつもりかと、こういうお話でありますが、現在も区域は明確になつております。併しながら今後はますますこれを明らかにして国民はつきり知らせるつもりでおります。  又今後法律等できめるようなものはどういう事項があるかというお話でありまするが、これは協定に、もうすでに明らかにしておりますように、アメリカ軍若しくはこの文書等の保護をするために法律が必要であると考えておりますが、その他にも関税などの点で法律が要るのではないかと考えまして、只今研究中でございます。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  28. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御質問に対しては大体岡崎国務相から答弁されたのでありますが、ただ憲法と條約とどちらが優先するかという御質問に対しては一言触れておきたいと思います。それはいろいろ学説があります。私の知る範囲におきましては、條約は憲法に優先するという学説のほうが多いように知つておるのでありまするが、併し私はあえてその学説をとろうとするものではありません。(笑声)ただ政府といたしましては、條約を締結する際に当りましても勿論憲法に違反するようなことはいたしていないつもりでございます。本協定におきましても勿論憲法を尊重して締結されたものと考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  29. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 私に関係ある御質問の事項は、予備隊は海外に出動しないが、国内防衛に当るとすれば、憲法第九條との関係はどういうことであるか。第二は、日米軍事協定の際におきまする予備隊の指揮権はどこにあるかという問題でございましてこのどちらの点につきましても岡崎国務大臣からお答え申上げたところに盡きておると存じます。ただ予備隊と憲法との問題についてだけ触れておきまするが、警察予備隊は予備隊令により国内治史確保のために組織せられたものでございましてその裝備も法律目的上必要なる範囲において考慮せられておるのでございまするから、戰争遂行に必要なる戰力を具備しておらないわけであります。外敵防衛の有効な手段といたしましてはもとより戰力であり、そのために、戰力のない我が国といたしましては、米国の戰力に依頼いたしまするために安全保障條約を結んだのでございますが、この戰力でない予備隊といえども、外敵侵入の際の自衛権行使の補助的手段として使用されることは当然予想されることであります。又憲法第九條第二項の趣旨に反するものでもないと、こう考えている次第でございます。(拍手アメリカの歩兵と一緒じやないか」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣周東英雄君登壇拍手
  30. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 駐留軍の求める物資資材等の関係からインフレが起ることはないかとの御質問でありますが、先ほど岡崎君からもお答えがありましたように、行政協定内容といたしましても、国民生活に圧迫を及ぼさないように物資資材の調弁についてはよく協議して実行に移すことになつておりますから、その懸念はないと考えております。(拍手、「議長、あまり少いじやないですか、出席が」「與党はどうですか、與党は」と呼ぶ者あり)     —————————————
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  32. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 行政協定を目の前に見て、国民は事態の重大を予感し、今更に驚いております。岡崎国務相は、この條文の発表によつて反対の声は消え去るだろうと述べたけれども、これに対して昨日のラジオ東京のニユース解説者は、「独立後の行政協定にまでアメリカの軍事的見地に盲目的に信頼することしか知らない岡崎国務相並び首相は占領ぼけしているのではないか」と指摘し、本日の毎日新聞は、「岡崎国務相らの行政協定の読み方は、そうして日本国民の心の読み方は、一般民衆とは大分違うらしい。」(「そうだ」と呼ぶ者あり)「岡崎国務相国会議員だが、霞ヶ関育ちの系図は争えない。日米安全保障條約が発表されたとき、このような行政協定政府独断でできるものと誰が思つたか。この條文には日本の運命が包まれている。日本の室、日本の陸、日本の海、日本主権の制限が包まれている」と記しているのであります。  我々はさきに、平和條約及び日米安全保障條約が、全面講和への方向の努力を放棄していわゆる多数講和によつて日本独立自由の主権の回復ではなく、占領の事実上の継続であり、而もその惡しき形式における占領の継続ともいうべき日本主権の制限は、日本の人民主権に対する圧制を含む国内の反動逆コース警察国家帝国主義の復活と結ぶ危險があることを、痛感警告したが、不幸にしてこの警告が、今やこの行政協定によつて、そうして、本日、毎日新聞、読売新聞などによつて報道されたように、そのすぐあとに政府考えているいわゆる治安立法、又は防諜法、国家機密法、軍機保護法などによる国民の自由の権利の重大な制限に伴われなければならないこの行政協定によつて、白日の下に暴露され実証されたことを、我々は深く悲しみ憤ると共に、日本憲法に違反し日本国民の意思に反するこれらの決定が本質的に無効であることを宣言するものであります。  日本独立自由の主権は、いつまで、そうしてどこまで制限されねばならないのか。日本外国の軍事体制の下に置かれるのか。軍事体制は結局我々国民に沈黙を強制するのではないか。現にこの行政協定が、事実上国会審議をも許さず、秘密事項を背後に隠し、有無を言わさず強制されているのではないか。日本にどれほどの数の米軍が駐在するのか、その行動は事実上何によつて決定されるのか、それさえ国民は知らされていない。否、政府閣僚首相さえ知らされていないのではないか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)衆議院二百八十の絶対多数の與党自身、行政協定の進行中これらについて何事をも知らされていなかつたではありませんか。  行政協定を前にして首相に向つて質さなければならない第一の点は、首相は、政治家が国民を欺いて戰争への道を準備することを許さないために、政治家をして法の前に責任あらしむる目的を以て行われた東京及びニユールンベルグの国際法廷の憲章並びにその判決は、ただに一の判決としてのみならず、その主旨原則において国際法上に確立せられたものであることを認めるか否か。この点であります。私は、あらかじめ数目前、法務委員会においてこの点につき法務総裁の見解を質し、法務総裁は内閣法律顧問として、私のこの質疑に対し、国際法廷のこれらの点は国際法上に確立されたものとされねばならないと答えたが、首相はこれを明確に認識しているのか。  第二に、日本国憲法はその第九十九條において、国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を嚴守する義務を最も嚴かに命じているが、首相は、首相自身、又国務大臣、又我々国会議員がこの義務をいやしくも嚴守しなかつた場合、そこに最も重大なる責任の発生することを明確に認識しているのであるか。  行政協定に関連して、第三に首相に向つて質さなければならないのは、現在及び行政協定以後、日本政府措置によつて生じ又は生ずべき職力に類似するものが日本国憲法の嚴重に禁止している戰力に転化することを、いやしくも許してはならない責任を持つて、嚴重な監視の責任を首相にみずから負うているのであるが、首相は如何なる点においてこの転化をせしめない決意を有するのか。その最も重要な諸條件首相国民の前に列挙明示する責任があります。(拍手)現在、国民の不安も又かかつてここに存するのであつて首相は率直に、その重要な諸点において、これらの点においては断じて憲法の許さぬ行為をなすものでないことを明らかにするならば、国民はどれほどその不安を解消することができるかわからないのであります。而も現在まで首相はこれをなしていない。今後もなす意思を持たないのか。  即ち、第四に首相に向つて質さなければならないのは、現在日本の保有する戰力に類似する力は、ここに徴兵制又はこれに類似する強制、又これを海外に出動せしめる措置がとられ、又これを事実上直接に外国軍隊の軍事的行動の下に補助的に動かされるような場合、これは直ちに日本国憲法の嚴重に禁止する戰力と転化することを、首相は認識しているかどうか。若し認識しているならば、首相はその憲法嚴守の責任上、現憲法下において、決して、徴兵制又はこれに類似する強制、又は日本の現有する戰力に類似する力を海外に出動せしめ、又はこれを事実上直接に外国軍隊の軍事的行動の下に補助的に行動せしめるような、如何なる措置をも許さないし、又許されないことを確認しているのであるか。これを明示すべきであると私は感ずるのであります。  第五に、行政協定、なかんずくその規定する日本に駐留する米軍の軍事上の機密の保持の要求によつて、言論、報道の自由、そのほかのあらゆる自由が制約され、日本が再び新たに警察国家となる危險のあることを、首相は認識しているのか、認識していないのか。若しこれを認識しているとするならば、首相は具体的に如何なる点において警察国家の発生を防止する保障とするか。これらの諸條件についてみずから首相は決意を表明し、これらの諸條件国民の前に明示して、国民の不安を一掃する責任があるとは考えないのか。  言うまでもなく治安は警察的手段によつてのみ守られるものでは断じてありません。国民生活の安定なくして、徒らに警察的手段のみによつて治安を維持しようとするならば、そこに必らず警察国家が発生することは、歴史も又論理もこれを明らかにしているところであります。而も、国民生活の安定なくして、徒らに警察的手段のみによつて治安を維持しようとする結果は、必らずやそこにいよいよ国民の不満が増大し、さまざまの治安の上の不安が生ずるのであります。これを抑えるためにますます警察的手段を増大し、そのために国民生活の安定においていよいよ不満足な結果を来たす、こういう循環作用を続けて行くことほど恐ろしいことはないのであります。首相はこの点について何らかの認識を持つているということは、我々は現在上程せられておる予算案を見ても断じて認識することはできないのであります。而も現在東大等に起つているこれらの事実に対する政府態度を見るに、あたかも教育を警察の下に置いて憚らないかのごとき態度をとつております。教育を警察の下に置いてどこに教育の権威がありますか。警察が、何らの生産的な或いは建設的な或いは指導的な任務を持ち得ないことは明らかであります。過去の日本の政治家は、あたかも警察によつて国民を指導するかのごとき幻想に陷つて日本を今日の悲惨に陷れたのでありますが、警察は何ら建設的な任務を持つものではない。教育はこれに反して建設的な任務を持つものであります。学園の自治が守られるか守られないかということは、これは教育に関係する当局者自身の問題であり、行政府の責任或いは法務総裁の責任は、この学園の自治を、外部から不当な圧迫を加えるべきでない、この点を守ることに存するのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに、みずから教授の講義をノートするために警察官が不法に教室に出入する、或いは教授の身許調査を行う、このようなことを現に実行し、特審局長のごときは、教育の自由或いは学問の自由、学園の自治というものについて、何らの認識のない発言をしておられる。このような事態に対して、私は、首相が、日本国憲法の嚴に命ずるところの思想、言論の自由、これを嚴守すべき責任を回避するものと判断せざるを得ないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  第六に、首相は、現在上程されている行政協定が、日米安全保障條約第三條の規定する事務的協定範囲を越えて、協定そのものが日本国民権利義務及び財政上の負担に重大な関係を有する規定を含んでいることを認めるのか否か。岡崎国務相は、昨日、本院において協定の説明中、裁判権などの関係條項のあとの條項に移る際に、ここで又事務的規定に戻りましてと述べたことは、速記録にもこれを示すところであるが、これは言葉だけの問題ではありません。裁判権の問題は決して單に事務的な規定ではない。又一億五千五百万ドルの経費というものも、決して單に事務的なものではございません。その他、現在我々の眼の前に提出されておる行政協定安全保障條約第三條の規定する事務的規定を著しく逸脱したものであることは、現在世論の指摘しているところでもあります。これらについて或いは朝日新聞、或いは毎日新聞、或いは読売新聞、その他の新聞が指摘しているところは、まさか政府がこれを無視し得るとは考えないところでありましよう。行政協定に基いて立法又は予算を要するものは国会審議を求めると言うけれども、これは当り前であつて、その根本となるこの行政協定が、而もこの協定そのものの中に、日本国民権利義務及び財政上の負担に関する規定を含む以上、この行政協定国会承認を求めない政府態度憲法違反であり、従つてその行為は無効であります。(「責任負わない、国民は」と呼ぶ者あり)  現にこの行政協定に基いて提出せられた立法なり予算案なりが、この国会で否決せられた場合には、政府はどうするつもりであるか。その場合、これに関する行政協定は、国際的には有効であるけれども国内的には無効となるのであります。これは両條約委員会において私が前法務総裁に質したところにおいても明らかである。こうなつた場合には政府はどうするのか。政府は、国内においては憲法を改正するか、国際的にはこの條約の改訂を求めるか、この二つの途しかない。而も国会憲法の改正を拒否し、相手国がこの国際條約の改訂を拒否した場合には、政府は如何なる政治的責任をとるつもりであるか。この点から見ても現在政府が行なつておるような行政協定は無効であります。日米安全保障條審議の際に、私はこの点を追及して、政府はそのような事態が起らないようにあらゆる努力をすると言つた。これは政府が私に向つて與えた公約である。このあらゆる努力という中には、本行政協定のごときものに対して、十分に、あらかじめ国会審議を仰ぐということを含んでいるものでないとするならば、それは單なるリツプ・サービスに過ぎない。  第七、裁判権に関して。日本に駐在する米軍の必要を越えて日本裁判権の制限を許したことは、対等の原則に背くごと、横田教授そのほか公正なる学者の指摘するところではありませんか。原則として北大西洋條協定と同様のものを承認するというならば、何故直ちにこれによることができないのか。占領終結後に直ちに日本独立主権の回復を承認しないという一般的態度が、ここにその片鱗を現わしているのではありませんか。岡崎国務相がこの裁判権の問題につき、本日、本院のこの演壇において詭弁を弄した感を與えたことは、極めて遺憾であります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)即ち、彼は一方では、日米行政協定は英米協定或いは米比協定に比して最近の進歩を示しているということを言いながら、他方では、この日米協定が、後日北大西洋條協定の主旨によつて救済されるという確固たる保障の規定を持たない、保障のない規定を以て、国民を欺く危險を犯しているのであります。エジプトは、英軍が六十回に亘つて撤退を約束したにもかかわらず撤退しないために、現在行動を起しておるのであります。いわんや独立後の対等協定たるべき本協定において、米国側の意向のみを考慮し、日本国民日本国会の意向を考慮すべき措置を少しもとらない政府の本協定締結全体の行為は、まさに憲法違反であり、無効であると言わなければならない。(拍手)  第八、日本に駐在する米軍の数、その米軍の行動、これらにつき、安全保障條約においても、行政協定においても、日本の同意を要件とする明示の規定のないものについては、日本国民及び国会は何ら適法の責任を負うことができないということを、ここに明らかにしておく必要があります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  最後に、この日米行政協定と並行して、従つてこの行政協定と事実上の関連を持つて日本国政府が、現在中国の正式の政府として、国際的に承認されつつある政府にあらざる台湾の何らかの勢力と行なつていると伝えられる交渉は、そもそも如何なる法的根拠によるものであるか。この法的根拠を我々の納得する形において政府は責任を以て説明することができるか否か。これが行われない限り、国会はこの政府の行動につき何らの責任のないことを、あらかじめここに宣言しておくものであります。(拍手)少くとも、それが名実ともにいわゆる友好條約以上のものとなるならば、理論上からも、現実にも、それはもう無効であることを政府は果して認識していないのか。而もこの点において、現在日本政府の行動は、英国政府立場をも極めて困難ならしめておる。中国やソ連ばかりではなく、英国政府立場をも危くしつつある現在の日本政府の行動に対して、而もそれに対し何らの審議を求めていない政府態度に対して、国会は何らの責任を感ずることがないということを明らかにしておくべきであります。  結論として、この日米行政協定なるものは、日本国憲法に違反し、従つて無効である。これに対して、政府は、これが憲法に違反していない、従つて有効であるということを以て我々に納得させることができるか否か。これらの点を首相に向つて私は質疑するものであります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  33. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えいたします。  羽仁君は我々と思想の根本に違うものがあるらしく、如何に親切丁寧に今まで説明いたしましても御了解にならないようであります。(「思想じやない、事実問題だ」と呼ぶ者あり)  なお、行政協定に秘密事項が背後に隠されておる、又日本側は有無を言わさずこれを押し付けられた、こう言われますが、一体何を根拠にしてかかることを言われるのであるか。交渉の衝に当らない羽仁君が、どこからそういう言明の材料を得られたのか。私には全然了解ができません。  なお、日米行政協定憲法に違反するものであるという議論につきましては、先ほどから法務総裁が詳しく御説明した通りでありまするから、私はここに蛇足を加えません。  なお、裁判管轄権の問題につきましても、いずれ北大西洋條約に従うものならば、なぜ今やらなかつたか、こういうお話であります。これも先ほどから繰返し繰返し申しておる通りでありまして、我々はでき得るならば、北大西洋條約に基く軍隊地位に関する協定に従いたいと考えて、このことを話しましたけれども、今これはアメリカについて効力を発生していないから、現状においては、例を挙げれば、フイリピンアメリカのやつておるような協定か、イギリスアメリカのやつておるような協定か、そのいずれかの形式に従わざるを得ない。そこで私は英米の形の形式に従つたのである。そうして北大西洋條約に基く協定効力を発生すれば、これに切換えるのである。こう申しておるのであります。  なお、駐留軍の行動についてというお話でございますが、これは先ほども申した通り、軍の機密ということもありまして、アメリカ側としましても、その数とか地位とかいろいろの点まで知らせることを好まない国がそばにもありましようから、これは発表されないと考えております。  台湾の国民政府との交渉につきましては、これは先にしばしば緊急質問総理大臣よりお答えした通りでありまして、我々は善隣友好の関係をできるだけ各国に押し及ぼして行きたいと考えておりまして、台湾及びその他の地域を統治しておりまする国民政府との問にも同様の関係を及ぼしたいと思つて交渉を進めておる次第であります。(拍手
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣答弁は他日に讓ることにいたします。堀眞琴君。     —————————————    〔堀眞琴君登壇拍手
  35. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、今回の行政協定に反対し、この行政協定に関し国民が多大の関心を持つておりまする点から、吉田総理木村法務総裁並び岡崎国務大臣に対しまして以下質問をいたとたいと思うのであります。  先ず第一に、行政協定は、成るほど名前は行政協定であるが、併し実質的には日本の国とアメリカの国とが結んだ広義の條約ではないかという点についてであります。内容から見ましても、これまで同僚議員諸君によつて指摘されましたように、裁判管轄権の問題にしましても、或いは非常事態の認定の問題にいたしましても、或いは駐留軍の駐留地域の設定や施設利用に関してこれを決定する合同委員会の設置の問題にしても、いずれも、国の主権国民の基本的な権利義務に関する重大な問題を含んでおるのでありまして、(「そうだ」と呼ぶ者あり)これを單に行政上の権限と責任において取り結ぶことのできる行政協定であるとなすがごときは詭弁も甚だしい(「その通り」と呼ぶ者あり)と申さなければならんと思うのであります。  政府側が、この行政協定に対しまして、これは飽くまでも行政協定である、従つて国会承認を必要とするものではない、條約ではない、こういう見解をとつておるのでありまするが、その見解を見まするというと、大体三つの根拠に基いておるやに思われるのであります。  一つは、これ又同僚議員によつて幾たびか指摘されたのでありますが、アメリカ行政協定の慣行に従つて日本においてもアメリカの慣行通りにこれを行政協定とするという考え方であります。確かにアメリカにおきましては大統領の権限として行政権を持つて、いわゆる行政協定を取り結んで、従つてそれは国会承認を必要としないという慣行が政治的に確立いたしております。これは申すまでもなく、條約は上院の三分の二の同意を得なければならん、ところが三分の二の同意を得るということが大統領にとつては極めて困難であるというところから、政治的な含みを持たせまして、国会乘切りの手段として大統領にそういう権限を慣行上認めているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら法律的にはこれには三つの根拠があります。一つは即ち、国会が大統領に対してそういう権限認めている場合、第二には、大統領の権限並びに責任において、つまり行政権の権限並びに責任においてこれをなし得るものと認められた場合、第三番目には、通常の條約に関しましてその実施細目をきめる、いわゆる協定であるということにおいて認められた場合、この三つの法律的な根拠を持つているのであります。従つてアメリカの慣行といえども決して單に大統領に行政協定の広汎な権限を許したとは申すことができないのであります。尤もこの問題につきましては、アメリカの学者の間にもかなり今日まで議論のあるところでありまして、曾つてウイルソン、彼が大統領になる前の一九〇八年の彼の著書において、アメリカの大統領が国の元首として、行政権の首長として、軍の最高司令権を持つ者として、政党の総裁として、極めて絶大なる権限を持ち、而も外交上このような権限が慣行として認められるならば、大統領の権限はいわば独裁的な性格を持つものではないかということを、すでに一九〇八年に彼は指摘いたしておるのであります。それはともかくといたしまして、アメリカの慣行がこうであるから、日本においても同じように、そういう慣行が行わるべきだと言うに至りましては、言語道断も甚だしいものと申さなければなりません。第一に、アメリカ憲法日本憲法従つてアメリカの政治機構と日本の政治機構とは違つております。(「その通り」と呼ぶ者あり)アメリカは三権分立の制度によつております。国会と大統領は対立いたしております。ところが日本におきましては国会が最高の機関であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)内閣総理大臣国会の指名によつて任命される、いわば国会に依存する機関であります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手従つて内閣総理大臣といえども国会から独立してその権限を行うことはできないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つてアメリカの慣行を云々することによつて行政協定の広汎なる権限政府において行い得るものとすることは、間違いだと申さなければなりません。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)  第二に、政府の見解といたしまして行政協定は、つまり安全保障條約の実施細目をきめたものである、ところで、安全保障條約についてはすでに国会において承認を経たものであるからして、その安全保障條約に基く行政協定はすでに包括的に承認されたものと見て差支えない、こういう議論であります。確かに安全保障條約につきましては国会は多数を以て承認を與えたかも知れません。併しながら、その際、実施細目として行政協定に対する承認を恐らく與えたとするならば、安全保障條約の規定するところの内容に限定されて初めて承認を與えたものでありまして、若しその内容安全保障條約の要求する実施細目を越えて規定したものであるとするならば、これに対する承認は得られなかつたと見なければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も安全保障條約の当時におきましては、その実施細目に当るべき行政協定内容については少しも確定しておらなかつたのであります。若し、何ら確定しておらないところの内容を持つものについて包括的にこれを承認することができるとするならば、これこそ私は一九三三年のドイツの授権法と同じフアツシヨ的な性格を持つものではないかと思うのであります。(拍手)  それから第三に、政府の見解として行政協定を実施するに際してその予算を必要とするものについては予算案に、又法律となすべきものについてはこれを法律案として国会承認を求める所存である。従つて行政協定そのものは何ら国会承認を必要としない、こういう議論をとつておるのであります。確かに、予算を必要とするもの、法律を必要とするものについて国会がこれについて審議をすべきことは当然のことであります。併しながら、その基本となるところの行政協定については何ら国会承認を経ず、その一部であるところのものについてこれを実施するために予算案乃至は法律案として国会に上程する、これは本末転倒も甚だしいものと言わなければならんのであります。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり)  私は、これらの三つの見解が政府によつてとられておるのでありまするが、そのそれぞれについてこれを反駁いたしたのであります。政府は果してどの見解を以て、国会承認を必要としない、行政協定は條約ではない、單に安全保障條約の実施細目であるということを言われるのであるか。その根拠を総理大臣並び木村法務総裁から伺いたいのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  次にお尋ねしたいのは、この実施細目と言われまするが、結局この実施細目というのは、法律の場合におけるところの施行細則のごときものを意味するのであるかどうかということであります。若し法律に対するところの実施細目或いは政令のごときものであるとするならば、それは結局その法律が施行されるために必要とされるところの手続規定するものであります。この行政協定がそれと同じ性格を持つものであるとするならば、同じように、條約によつて一定の方針が決定されて、それに基いて具体的な手続としてきめられたものが行政協定でなければならんと思うのであります。又そういうような内容を持つからこそ、私は行政協定という名前が正しくそこに使用し得るものだと思うのであります。若し政府の言うがごときものとするならば、一体、果してこの実施細目をきめたという行政協定の性格というものは、憲法上どのように規定し得るものであるか。私は先ほどドイツの一九三三年の授権法ということを申上げましたが、若しこの実施細目をきめた行政協定によつて包括的な権限政府がなし得るものだとするならば、全く憲法を無視した行為だと言わなければならんし、又国会も、若し政府にそういう権限を與えるとするならば、みずから進んで自己の審議権を放棄したものと申さなければならんと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ましてや国民はこれに対しまして非常な疑惑の目を以て見ております。若し国会がこれに対して十分なる審議を盡さないとしたならば、果して国会の任務、国会の職能というものはどこにあるでしよう。(「要らないよ、それなら」と呼ぶ者あり)私は憲法を無視し国会審議権を無視したこの重大なる事柄に対しまして、政府はどのように考えていられるか。この点を首相並び木村法務総裁から伺いたいのであります。  次にお尋ねしたいのは裁判管轄権の問題であります。同僚議員の多くによつてこの問題はかなり具体的に質疑が行われたのでありまするが、私も若干これに関しまして質問をいたしたいのであります。  先ず第一に、刑事裁判管轄権につきましては、行政協定はいわゆる属人主義の原則を貫いております。但し北大西洋條約の行政協定が発効するその場合においては、これを選ぶことができる。又その行政協定が発効しない場合においては、日本政府の要請によつて裁判管轄権については再考慮をするという規定になつております。従つてこの刑事裁判管轄権につきましては、それは暫定的な規定であると申さなければなりません。若し暫定的な規定であるとするならば、すでに同僚議員も指摘しておりまするように、初めから北大西洋條約の行政協定の方式をむしろとつて、それによつて裁判管轄権をきめるべきではなかつたかということが考えられるのであります。それから又占領軍の側から申しまして、占領軍から駐留軍に切替えられる、その際のいろいろの事情から、刑事裁判権管轄権についてあのような属人主義が貫かれたのでありまするが、併しこれは占領軍の占領が結局永久占領として残つて行くのだという印象を国民に與えるのではないかということが考えられるのであります。若しそうとするならば、恐らく国民感情の上においては、この占領軍が駐留軍に切替えられたその瞬間からして非常な惡感情を持つであろうということは、想像に難くないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  それから又、属人主義日本の国の主権裁判管轄権の重大な制限であることは言うまでもないのであります。曾つて日本の安政條約がどのようなものであつたか、その中に規定されておつたところの自主権のない関税或いは領事裁判権というものが、日本にとつてどのような屈辱的なものであつたかというようなことは、私がここにくだくだしく申上げるまでもないと思うのであります。我々は、この対等の條約、対等立場において結んだ條約である、或いは友好と信頼の精神を以て結んだ條約である、或いは互讓妥協の精神によつて話を進めたと岡崎国務大臣は話しておられるのでありまするが、併しどこに友好と信頼の精神が見えるでありましようか。我々はむしろ裁判管轄権に関する限り屈辱的な関係がそこに横たわつているのだということを認識しないわけには行かんのであります。先ほど岡崎国務大臣は、イギリスアメリカとの行政協定、或いはフイリピンアメリカとの行政協定についてのお話がありました。今見るべき根拠がないからして、而も北大西洋條約の行政協定もできておらん、だからしてイギリスアメリカとの行政協定を根拠としてあるのだという説明であつたようであります。併しながら、イギリスアメリカとの行政協定につきましても、駐留地域外の関係において、刑事裁判管轄権属人主義認められているとは私は思わないのであります。ましてや、フイリピンの場合について見ましても、両当事者がアメリカ軍人である、而もアメリカの安全に重大なる影響を與える事件であるという場合においては、アメリカ法律が施行されるのでありまするが、併しその他の場合については属地主義の原則の上に立つているのでありまして、若しそうとするならば、今度の日米行政協定は、フイリピンアメリカとの協定以上に屈辱的なものではないかと申さなければならんと思うのであります。この点に関して木村法務総裁の御答弁をお願いしたいと思うのであります。  次に非常事態の認定に関する問題であります。本協定の第二十四條によりまするというと、日本区域において敵対行為又はその急迫した脅威が生じた場合は、両国政府は直ちに協議しなければならないというようなことに規定されております。その具体的な措置や事実の認定というものは両国政府の協議に待つことになつていることは、この規定から明らかであります。併しながら、そういう事態が起きた、而も遅滯を許さない緊急な場合であるという場合に、実力を持つところのアメリカ軍の行動というものが結局においては事後承諾を求める結果となることは明白であります。而もそれが不測の戰争にまで発展したという場合、日本及び日本国民一体どうなるのでありましよう。みずから欲せざるところの戰争に引き入れられ、そうして果ては戰争の惨禍を日本及び日本国民ひとりが負わなければならんという結果にならないと、何びとが保証することができるでありましよう。その場合、日本の例えば警察予備隊であるとか、或いは名前は保衛隊に変るかも知らん、或いは保安隊になるのかも知れませんが、それらの日本人の部隊、或いは警察、交通、通信、工場、防空の諸施設その他国民を挙げてアメリカ軍の指揮下に入らないと、何びとが考えることができるでありましよう。これ又みずから欲せざる戰争に、外国軍隊の指揮下に戰争を行うことを余儀なくされるという結果になるのであります。(「大戰争だよ」「その通り」と呼ぶ者あり)どこに日本独立と平和が保障されておるのでありましよう。本協定には秘密協定はないということを言つております。岡崎国務大臣もそう申しております。單に両国政府間でこれを協議するというだけで、その時期、その機関、或いはその他について何ら具体的な規定を設けておらんのであります。秘密事項が約束されていないと果して我々は考えることができるでありましようか。恐らく両国政府或いは両調印当事者の間の了解事項として何らかのものが隠されているのではないかということを我々は疑わざるを得ないのであります。この点につきまして、岡崎国務大臣の御答弁を煩わしたいと思うのであります。  なお、このほかにお尋ねいたしたい問題があるのでありまするが、時間も切迫しておりまするので、最後に、この行政協定の性格について一言申上げたいと思うのであります。先ほども申しましたように、岡崎国務大臣は、友好と信頼の精神によつてこれを結んだ、或いは調印の際の挨拶でありまするが、互讓妥協の精神を以て結んだ、こう申しております。然るに、果してこの協定が互讓、妥協の精神、友好と信頼の精神を表現しておるのでありましようか。日本を戰争の中に巻き込む危險、これが私だちにとつて最も重大な関心事となつているのであります。従つて日本独立と平和もこの協定によつて犠牲とされる危險がある、アメリカに新たに日本が従属するという危險がそこにあるのであります。近東諸国、東南アジア諸国におきましては、最近民族独立の運動が盛り上つております。イランにおいてエジプトにおいて又、最近インドネシアにおきましても御承知のような政変が起つております。このインドネシアの政変は、インドネシアとアメリカとの間の安全保障法による経済援助というものが結局インドネシアの独立を侵害する、インドネシアの自主権を侵害するというところから出発いたしておるのでありまして、スキマン内閣の最近の総辞職は我々にとつて非常に大きな教訓を與えるものと申さなければならんのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私はこの意味におきまして、この行政協定国会承認を経なければならんということを先ず第一に質問いたし、それから、その裁判管轄権並びに緊急事態の認定に関して政府側の所見をお伺いいたしたいのであります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私に対する御質問は、何と申しますか、急迫せる事態においてどうするかということが何も規定してないじやないか、こういうお話であります。先ほどからしばしば申しておりまするように、北大西洋條約におきましては、急迫なる事態というのではありませんけれども、條約加盟国の安全を保障するために、最高司令官を任命し、合同参謀本部といいますか、合同司令部のようなものを作り上げ、そこに各国の軍隊が緊密に組織化されておる、こういう成るほど規定を作つております。ただ我々の場合には、こちらに軍隊がまだあるわけでもありませんし、北大西洋條約のような形のものを作ることはどう考えてもできそうもないのであります。我我も米日の間に緊密なる連絡があり、一致して国を守るという形をとつておるんだということを外に示したいとも考えておりますけれども、今のところはあの程度規定しかできないのであります。これは北大西洋條約のやり方がむしろ珍らしいほうでありまして、一般にいろいろの條約もありまするが、なかなか具体的にこうするんだということは書いてないのが普通でありまして、堀君の好んでお引きになる中ソ同盟條約におきましても、やはり具体的の事項は書いてないのであります。  なお、どこに一体信頼と好意との條約であるという証拠があるか、こういう御質問でありまするが、これもやはり同じようなことでありまして、この協定若しくは日米安全保障條約は米国においても非常な信頼と好意を以て作られたものであることは当然であります。何となれば、米国が日本軍隊を駐屯して日本の安全を保障しようということは、取りも直さず、万一のときには米軍の子弟が死にもするかも知れん、怪我をするかも知れん、こういう危險も負担しているのであります。(「有難迷惑だ、それじや日本人はたくさん死ぬよ」と呼ぶ者あり)又、同時に、この條約を結んでアメリカ軍隊日本に駐屯する以上は、日本の側でもこれを迎えて快くここにいてもらう、そのために十分の協力をするということでなければ、やはりここに軍隊を置く値打ちはないのであつて、我々のほうもアメリカ側に十分なる信頼を示し、アメリカ側のほうも日本国民の感情、措置等に十分なる信頼を示して、初めてこの條約はでき、そうしてこの條約の実行ができるのであります。日本を侵略するというようなことを仮に考えているような国がありとしますれば、その国にとつてこそは日本の安全を保障するかかる規定は気に入りますまいが、然らざれば、国民全体として、この安全保障條約及び行政協定によつて差当り日本の安全が十分に守られると考えるのは当然と我々は思つております。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  37. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  この行政協定の性質に関しましては、しばしば申上げた通りであります。(「何回聞いてもわからないよ」と呼ぶ者あり)改めて申上げる必要はないのでありますが、即ち今回の行政協定は、安全保障條約第三條に基きまして両国政府間の協定に委任された事項を実現したものに過ぎないのであります。いわゆるアメリカの慣行と認められているものとは必ずしも同じではないということを申上げます。即ちアメリカの慣行では、基本條約の根拠がなくても行政協定はやつているのであります。然るに本行政協定は基本條約があるのであります。その基本條約に基いてやつているのでありまして、アメリカの慣行とは全然違うというのであります。繰り返して申しますると、この行政協定安全保障條約第三條に規定いたしまする駐留軍の配備を規定する條件を定めているものであります。その範囲内においてこの協定を結んだものに過ぎないのであります。従つて安全保障條約が議会の承認を得ました以上は、改めて行政協定についての承認は必要ないと考えているのであります。(拍手)  それから裁判権の問題であります。これについてお答えいたします。今度の行政協定第十六條によりますると、「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に、政治活動を愼むことは、合衆国軍隊構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。」と、即ち日本に駐留しておりまする軍人軍属はすべて日本法律を尊重するという根本建前をとつているのであります。これは重要なことであります。殊に、このアメリカかち駐留いたしておりまする軍人軍属の人たちの犯罪行為につきましては、これは日本法律によつて処罰されることになるのであります。ただ裁判権が米軍にあるというのに過ぎないのであります。(「それはおかしいよ」「ただとは何だ、ただとは」「そんなことはおかしいじやないか」と呼ぶ者あり)従いまして、施設以外において、アメリカ駐留軍の軍人軍属が犯した犯罪につきましては、これは日本側において捜査し、逮捕して、そしてアメリカ側に引渡して、(「引渡す」「そこからおかしい」と呼ぶ者あり)アメリカ側日本法律によつてこの裁判をするという建前をとつておるのであります。私は、これは国際慣行から申しましても、決して日本の多大の讓歩とは考えていないのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣答弁は他日に留保されました。兼岩傳一君。     —————————————    〔兼岩傳一君登壇拍手
  39. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して若干の質疑をなさんとするものである。そもそも平和、安保の二條約が審議された前国会において、我が党は、その講和の方式、外国武裝軍隊の永久駐屯、軍事基地の設定、自由なる貿易の制限、賠償の方式、領土の決定等、これらがポツダム宣言、カイロ宣言、ヤルタ協定、国連憲章及び日本国憲法に違反し、日本国をドル帝国主義のアジア侵略の道具にしようとするものであることを明らかにした。従つて平和、安保両條約を具体化するための今回の行政協定が、かの二條約と共に、国際協定を破り、日本国憲法に違反する無法且つ無効なる條約であることは、第一に、平和憲法下において外国武裝軍隊を無期限に置かんとするものであること、第二に、非常事態における統帥権を外国軍人に渡さんとするものであること、(「そうだ」と呼ぶ者あり)第三に、日本地域内において裁判権外国に渡さんとするものであること、第四に、軍事基地施設によつて日本人財産権が侵害されるものであること、第五に、外国軍票が無制限に発行せられること、第六に、外国軍人軍属の安全保護の名の下に独立国民の権利を剥奪せんとするものであること等、世界に類を見ない屈辱的なものであり、日本独立と栄誉を踏みにじるものであることは、今や明々白々である。平和、安保二條約の審議に際し、欺かれてこれに白票を投ぜられた緑風会、自由党その他の良心的な議員諸君も、今更責任の重大なることを痛感しておられることと思う。(「何を言うか」「今からでも遅くないよ」と呼ぶ者あり)行政協定は明らかに恥ずべき條約である。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)而も日米対等立場で結ばれる條約ではなくて押し付けられた條約である。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)然るに政府はこの協定を以て安保條約の実施に伴う行政的な細目取極めに過ぎないと国民を欺きつつ、吉田総理並びにその側近によつて專断的に作り上げられて来た。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)  そこで聞きたい。若し然りとすれば、吉田内閣一代限りのもので、内閣が倒れたら、行政協定は当然破棄されていいものと考えるがどうか。(「そうだそうだ」「国民は知らんよ」と呼ぶ者あり)若しそうでなくて、国と国との間の永続的な取極めであると言うならば、当然憲法第七十三條によつて国会承認を求めなければならないではないか。これに対する総理並び岡崎国務相の責任ある答弁を求める。(「答弁答弁」「必要なし」「答弁しなければおかしいよ」と呼ぶ者あり)  次に軍事基地等について質す。その第一は、行政協定において米一駐留兵力、駐留期間及び地域施設が明記されていないということである。これでは、米軍が欲するならば、事実上自由に兵力を幾らでも増加できるし、日本全土に亘つて無制限に基地施設を拡大できるし、且つ無期限に駐留できるではないか。  第二に基地使用方法であるが、米軍は地域施設をどう利用するか。行政協定において何の制限もない。従つて米軍が欲するならば、極秘のうちに原子爆彈を貯えることも、これを使用することも自由であり、従つて原爆による日本の報復爆撃も避けられぬということになる。この点について私が数目前外務委員会で質したところ、岡崎国務相は、答弁の限りでないと逃げ、又本日岡田議員の質問に対して相談はしたと言つておる。これでは問題は解決されないで、ごまかされているだけではないか。原爆はアメリカが中国、ソヴイエトを攻撃するに必要ではあるけれども、アジアの平和と日本防衛には絶対的に有害である。(拍手、「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)従つて行政協定において原爆基地の拒否を明記しなければならんと思うがどうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  それから第三に、ラスク・岡崎交換公文によれば、施設及び区域の取極めにおいて、日米の合意が得られなかつた場合は、従前のままで使用することになつておる。これでは何のための協議か。これだけ愚弄されても、日本が哀れむべき従属国ではないと言えるのか。これで、占領政策の名の下にアメリカ軍から直接に、強制的に取上げられ、ろくに補償もされていない農地、山林、漁区、港湾、建物の所有者たる日本人の希望が微塵に砕かれてしまつた。然るに交換公文の結語において、岡崎国務相は白々しくも、政府の名においてこれを確認することの光栄を有しますと述べておられる。(「大した光栄だ」と呼ぶ者あり)岡崎君の光栄とは果して如何なる意味を持つものであるか。何びとの光栄であるかを答弁願いたい。(「奴隷の光栄だ」「国を売渡すことの光栄か」と呼ぶ者あり)  次に日米軍隊出動に対して質す。先ず警察予備隊の海外出動であるが、今回の協定のどこの條項にも、これを国外に出してはならんと書いてない。従つて平和條約第五條に基いて国連軍のあらゆる行動に協力する建前から、これの海外出動は避けられぬではないか。若し吉田総理がかねて衆議院及び本院で出しませんと言明しておられることが日本国民を欺くものでないならば、総理の言明が條文になつておらねばならないではないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は吉田総理に質す。総理国民に対する公約を果すためには、この点を行政協定に明確に書き入れる以外に、警察予備隊の海外派遣を拒否する如何なる方法もあり得ないではないか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)若し国内法によつてこれを拒否し得るならば、木村法務総裁からその根拠を示されたい。(「そうだ」「答弁々々」と呼ぶ者あり)而も大橋国務相は、衆議院において、防衛という限界の中で海外派遣はあり得るという意味のこと述べておられるではないか。大橋国務相の答弁を求める。(「国連警察軍だろう」と呼ぶ者あり)  次にアメリカ軍出動について次の三点を質したい。  その第一点は、日本に駐留する米軍が海外に出動しようとする場合、事前に米国政府日本政府に相談する義務があるかどうか。これに対して日本政府はこの要求を拒否する権利を持つているかどうか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)この問題である。(「その通り」と呼ぶ者あり)去る二月十九日、この点について衆議院改進党の藤田氏の質疑に対して吉田総理は、米軍の海外出動は米国政府の自由であると放言しておられるが、果せるかな、行政協定二十四條において、この場合の規定として、日本国政府及び合衆国政府は直ちに協議しなければならないと、あいまい至極な規定をやつている。強大な米軍に事実上支配されておる日本が、必要に応じて協議してきめるということは、米国の命ずる通りになること、米国の命ずるままに日本人を大戰争に投入し、日本国を再び焦土と化すことではないか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)吉田総理の良心のある答弁を求める。  第二は、駐留米軍が外国の教唆又は干渉によつて引き起された大規模の内乱及び騒擾を鎭圧することを理由として出動する場合である。この場合、安保條約第一條においては、米軍の出動日本国政府の明示の要請によると規定されておるのでありますが、果してその内乱及び騒擾が外国の教唆又は干渉によつて起きたものか、それとも「かいらい」政府の打ち続く惡政に憤激して民族独立のために立ち上つたかを、識別し認定するところの具体的な基準は何か。誰が認定するのか。日本国政府なのか。合同委員会なのか。国権の最高機関たる国会であるか。この点を明確に答弁されたい。(「答弁々々」と呼ぶ者あり)  第三は、米軍が出動し、日本人部隊がこれに協力する場合に、警察、通信、交通、工場、防空等は挙げて米指揮官の指揮下に入ることの取極が要請されていると思うがどうか。北大西洋同盟においては、まだ軍隊もできぬのに、合町司令部の指揮官としてアイゼンハウアー元帥を決定しておる。今回の行政協定の作成に当つて、この点がどう討議され、どう決定され、了解事項と称して秘密にされたのかどうか。この点を明らかにされたい。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)  最後にお尋ねする。最近外人による暴行、ギヤング事件等が頻発しつつある。例えば富士銀行事件のごとき問題が起つた場合に、日本人が身の安全を期するため、正当防衛としてギヤングと鬪い、不幸これを殺傷した場合、これは日本国内法によつて日本裁判所が裁判するのかどうか。この点について木村法務総裁の明快なる答弁を求める。(拍手、「しつかりやれよ」「下手に答弁をすると再質問するぞ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  40. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私に関する御質問は、この協定ができたとして、内閣が何かの理由で代つたときはどうなるかというのが第一点のように思いますが、これは條約に基きまして正当の権限を以て作つた協定でありまするから、内閣が代つても引続き有効ではあります。併しながら現内閣はなかなかそう倒れないから御心配は要らないと考えます。(拍手)  米軍の国内出動と米軍の海外出動につきましていろいろの御質問がありまして、第一には、日本側はこういうときは一体どういうふうにするのかと、こういうお話でありまするが、予備隊の海外出動については、大橋国務大臣等からお答えがしばしばありましたので、私は省きますが、国内の場合、国内に米軍が出動する場合は、勿論、條約第三條に基きまして、日本政府の明示の要請があつたときに限るのでありまするが、いずれ海外出動のときは、又この日本政府との間に協議が行われるということになつております。元来この協定は、先ほどから繰返しますように、双方の国の好意と信頼に基いてでき上らなければならず、又それによつてのみ実際の実効を発揮する協定でありまするから、双方共にこれは十分なる信頼と好意を以て実施に当るのであります。  それから施設及び区域につきましていろいろお話がありました。第一に、合意ができない場合には依然としてずるずるべつたりに長くおるのじやないかというお話でありまするが、これも根本的に申しますと、我々はお互いに信頼を以てこの協定の実施に当るのであります。先ず予備隊作業班を以てできるだけ早くこの問題を片付ける。條約が効力発生しますれば、この協定も有効になりますから、そこで合同委員会を設けて、そこでどんどん進める。これで必ずできると確信しておりまするが、万一できない場合はというので、この万一の規定を設けているのであります。殊に合意がないという場合もあるかも知れませんが、若し我々は、万一そういうことがあるとすれば、一つの今いる所から他へ移る場合に、こちらの建設物等が間に合わないで暫定的に元の所におらなければならん場合もあるだろう、こういうことを考えてこの交換公文をいたしたのであります。  なお予備隊の問題について、これは行政協定関係がありまするから私からお答えいたしまするが、この海外出動の問題を行政協定の中に明確に定めなければいけないじやないか、こういう御意見のようでありまするが、我々は、先ほどから法務総裁も申しておられます通り、この行政協定は、安全保障條約の第三條に基きまして、日本に駐留する米軍の配備の條件を規律する行政協定であると考えております。従いまして、それ以上のことを協定すれば、それは條約に認められた以外のことになりまするから、好ましくないと考えているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて日本の予備隊等のことをこの協定の中で締結するということはこれは筋が違うと考えておつて従つてこういうものは協定してないのであります。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  41. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 兼岩君にお答えを申上げます。  衆議院におきまして私が警察予備隊の海外出動があり得るととられる意味の答弁をした、こう仰せられたのでございまするが、それは急迫不正の侵害に対しまする独立国としての固有な基本的な権利といたしまして、国際公法におきましては自衛権を認めていることは、御承知の通りでございます。而してその自衛権の行使として許されまする活動の範囲といたしましては、若し急迫不正の侵害を排除するために必要があれば外国の領土においてその国が実力を行使することも認められている。これが国際公法の通説でございまするが、併しながら我が国におきましては、警察予備隊というものは国内治安確保のために設けられたものでございまするから、かような場合においても国内法上警察予備隊の海外出動は許されておらないのでありましてそういうことはあり得ないと、どういうことを申上げたつもりでございます。これは速記録をお調べ頂けばそういう意味であるということが明らかであると存じます。(拍手、「わかつた」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  42. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  アメリカ駐留軍の軍人その他従属者が日本国民に危害を加えんとし、加えた場合において、それに対して正当防衛行為が成り立つか成り立たないかということ、もとより日本国民はそういう場合においては正当防衛権を行使し得るのであります。従つて、そういう場合に、その出でた行為については、刑法第三十六條によつて、何ら犯罪構成しない、罰せられないということは明瞭であるのであります。従いまして、将来仮にさような違法な行為に出でて、身に危害を加えられんとする場合には、大いに日本人も正当防衛権を行使してよかろうかと考えております。(「裁判は誰がするのだ」と呼ぶ者あり)もとより日本裁判所で裁判いたします。(「よし」と呼ぶ者あり、拍手
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣答弁は他日に留保されました。    〔兼岩傳一君発言の許可を求む〕
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩君、何ですか。
  45. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私、時間が残つておりますので、再質問をお許し願いたいと思います。
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 数分間残つておりますので、再質問を許可いたします。兼岩君。    〔兼岩傳一君登壇
  47. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 只今の答弁のうち、最も重要な点についての答弁が何らないところをこれから徐々に指摘いたしまして、(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)再答弁を求めるのであります。  先ず第一に、私が吉田総理、若しでき得べくんば岡崎国務相に求めておることは、国連軍のあらゆる行動に協力しなければならない以上、この行政協定に「出さない」ということを明示してないならば、総理の出しませんという言明は、国民を欺くものではないかということであります。従つてこれに対して岡崎……勿論これは総理自身に、尋ねるところの権利は留保いたしますが、この席ではつきり岡崎国務相木村法務総裁から、これを行政協定に明示しなくてもいいという外交的基礎と、国内法によつてこれを拒絶し得るという法律的根拠を木村法務総裁から要求するものである。  その次に、アメリカ軍出動について日本国政府に事前において相談があるかどうか、この相談を受けたとき、日本政府要求を拒絶する権利があるかどうか、これについては全然答弁がない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)而もこれについて行政協定二十四條は、「直ちに協議しなければならない。」というあいまいな表現をしておるけれども、これでは全く何ら拒否する権利がないと考えざるを得ないではないか。この点を明確な答弁としてお答え願いたい。  それから第三に、外国の教唆又は干渉によつて引き起された内乱であるのか、それとも「かいらい」政権の打ち続く惡政によつて憤激する民族独立の運動であるかを、(笑声)何によつて識別し、何によつて認定するかの具体的な基準、そうして、その決定者が日本国政府か、アメリカ政府か、合同委員会か、国権の最高機関であるかを明らかにされたい。この点の答弁が全然ない。(「自分で判断しておけ」と呼ぶ者あり)  それから、その第四には、司令官を誰にするかについて明示の公表がないけれども、秘密裡に打ち合わされたことがあるかどうか、その点の答弁。  それから第五に、行政協定において、かくのごときこの規定の仕方では、無制限に兵力が増加できるし、無制限に基地施設は殖えるし、且つ無期限に駐留できるではないか。そうでないかどうか。この点を明快にこの席から答弁して欲しい。  それから第六に、(「何なら個條書で一つずつ聞いてもいいよ」と呼ぶ者あり)原子爆彈をこの日本基地において貯蔵し、これを使用することを拒否するか。百歩を讓つても、明確にこれの使用について事前に国会承認を得る等々の、さような具体的な規定が一つもなくて、如何にして日本を焦土にしないところの保障があるかという点、この点の明快な答弁がない。(「そうだ」「何も答えておらんじやないか、国会答弁というのはこういうものだ」「仲間が質問中だよ」と呼ぶ者あり)  第七に、ラスク・岡崎交換公文によれば協議が調わなかつた場合には従前の通りかという質問に対して、岡崎君は、一生懸命に協議するのだけれども、万々一協議が成立となかつたならば、それは従前のままであつても止むを得ないという、小商人の道徳を以て国際政治の私の質問に対する答弁に代えようとしておる。(笑声)我々はさような小商人的な交渉を聞いておるのでなくて、日本国を興亡の渕に投げ込むところの協定において、幾千万の日本国民の利害を預かる政治として、この協定が調わなかつたならば従前通りだということでは、これは最も哀れむべき属国ではないか。然るに岡崎君は、これを以て光栄と呼んでおるのは何んであるかということを聞いておるのだ。これに対して答弁を求める。(「時間がない」「あるある」と呼ぶ者あり)  それから最後に第八番目に、只今この行政協定が、若し政府のやり方で行くなら吉田内閣の一代限りのものである、我々の主張に従えば、我々が若し国会において審議決定をしたならば、それは條約として有効であるという、その條約論、憲法論を質したのに対して、不遜にも、吉田内閣はまだ当分続くという、国会を愚弄する答弁を以てこれに臨んで。(「然り」「やれやれ」と呼ぶ者あり)君たちの内閣が続くか続かないかは日本国民が決定することで、岡崎君の関知するところではない。(「そうだ」「お前たちみんな青い顔になるぞ」と呼ぶ者あり)問題は、国会承認を求めないならば、内閣が代つたときにはその効果がなくなるではないか、法律的、憲法的、国際法的根拠がないではないかという、これに対する答弁を求めるのだ。(「必要なし」「なぜ必要ない、どういう理由で必要ないのだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡崎勝男登壇
  48. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 初めのは国連協力と予備隊の関係考えますが、これは先ほどから申しておるように、今度の協定アメリカ軍の配備の條件をきめるのであつて、国連協力の問題とは別であるというわけであります。(「そんなものが答弁になるか」と呼ぶ者あり)それから司令官が何か秘密協定できまつておるかというお話でありますが、これも、もう先ほどから何遍か繰返して申しておるのであつて、司令官であろうがなかろうが、秘密の協定は何一つないと、こう申しておるのであります。  それから、この安全保障條約若しくは行政協定によれば、無期限に兵隊を置き、又これを拡大することもできるではないかというお話でありまするが、実は話合いのうちにおきましては、むしろアメリカは、安全保障條約の前又等の規定によつて日本において早く自衛力の漸増を行い、自分の国の兵力は早く引き揚げたい、こういう強い希望があるのであります。(「條文に保証がないじやないか」と呼ぶ者あり)  原子爆彈の問題につきましては、(「希望だけじや駄目だ」と呼ぶ者あり)こういう問題をはつきりしなければ、日本を焦土にするではないかというお話でありますが、安全保障條約は、元来、日本が焦土になるようなことのないように、あらかじめ予防措置をとつておるのでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)さよう、その点は御承知を願いたいのであります。  又外国の教唆又は民族独立運動、これはどういうふうに区別するのかというお話でありまするが、いずれにしましても、内乱と称されるものは、憲法法律、その他の国内規定に違反して、暴力を以て志を遂げんとするものでありまするから、これは日本政府が十分に認定をし、必要の場合には米軍の出動を要請するのであります。(「国会との関係は」と呼ぶ者あり)海外の出動について協議があつた場合に、日本政府は拒絶をする権利があるかどうか、こういうことでありまするが、これも実は、この安全保障條約、従つてこの行政協定も、元を質せば日本の安全保障をいたすための條約であり協定であります。従つて日本のほうで、自分の国の安全を乱される危險がありやなしやを先ず心配するのであつて、我々のほうでこういうことは先に考える問題であります。なお、こういう協定の交換公文に「光栄を有す」とか何とか言うのはおかしいではないかというお話でありますが、私の知る限りでは、如何なる国際間の交換公文のおしまいにも、やはりこれと同じ文句が付いているのでありまして、喧嘩をする手紙にもやはり親愛なる何々と書くのと同様であります。(笑声、「最後の発言は落第、幼稚園」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇
  49. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 日本の国連に対する協力は、国内法に許された範囲内において協力するのであります。従いまして、国内法に許されない範囲においては協力はできないわけであります。警察予備隊警察予備隊令に基きまして日本の治安維持のために設けられたるものでありまして、この意味から申しまして海外出動ということは考えられないのであります。
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。国務大臣の発言に対する質疑は終了したものと認めます。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)