○山花秀雄君 私は日本社会党第四控室を代表して、最近頻々として発生せる占領軍使用の飛行機事故による我が
国民に與えられたる生命財産の損失問題に関し、これらに対する
政府の補償対策及び今後のこの種問題に対する
政府の所信をお尋ねするものであります。
昨年十一月十八日、東京都下横田航空基地附近の北多摩郡砂川村においてB二九が墜落し、積載せる爆彈の破裂によ
つて多数の人命と家屋及び家財を損失したることは、
諸君の御
承知のところであります。越えて本年一月二十九日、川崎市馬絹の宮前小学校裏山の畑地にB二九が墜落爆破し、これは幸いにも墜落場所が畑地なりし故、人命の損傷はなか
つたのでありますが、今月七日、埼玉県入間郡金子村にてB二九の墜落は、多数の人命と家屋、財産の損失を見たのであります。このように横田航空基地管下における飛行機事故は僅々三ヵ月間に三回及んだのであります。現在占領軍による航空基地はひとり横田基地のみではありません。私は寡聞にして横田基地管下における
只今申上げました飛行機事故しか存じませんが、何か九州福岡
地区においても相当大きな事故があつたことを聞いているのであります。
そこでお尋ねいたしたいことは、現在占領軍によ
つて飛行基地として使用されている個所は何ヵ所ぐらいあるのであろうか。これらの基地は講和條約発効後、占領支配の終了と共に当然閉鎖されるものと思うのでありますが、伝えられるところによれば、日米安全保障條約の締結の結果、これらの飛行基地が名目を変えてそのまま残されると言われておりますが、我々は、戰争遂行のために、多量の爆彈を積載して、而も平和
国家として再建出発せんとする我が領土の上空を自由に飛来することは、不慮の
災害だけでなく、万が一にも外国軍隊の攻撃の的になり得る危險性を感ずるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)よ
つて我々はこの種の飛行基地の残されることは反対であります。(「
異議なし」と呼ぶ者あり、
拍手)
政府はこの問題に関する事情を
国民の前に明らかにされたいのであります。又今日までこの種の飛行機事故及び占領軍を相手方とする交通事故等によ
つて相当の人命及び財産の損失をこうむ
つていると思うのでありますが、この件数並びに損害の実質を、今後の対策
確立の参考上明らかにお示しを願いたいものであります。
なお前
国会の十一月二十日
開議されたる予算
委員会の席上において、砂川村の被害事件の質疑中、
池田大蔵大臣は、占領軍を相手方とするこれらの被害は、責任の如何にかかわらず、占領軍はその被害に対して賠償の責に任じないと声明があ
つたのではなかろうかと記憶すると
発言され、そのとき和田予算
委員長より、そういう声明があれば、材料としてお出し願いたい。事態をはつきりさせるためにお調べ願
つて、その声明を出すように取計ら
つて頂きたいと
委員長要求のあつたことは、
池田大蔵大臣の知るところであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)その後この声明を提出されたか、私は聞きませんが、我々は
国民の代表としてこれらの諸問題を
審議する重要なる参考となりますので、即刻提出し得るや
否や、お答え願いたいものであります。又その席上で当時の大橋法務総裁は、「占領軍の行動に対して日本
政府としてその責任を問うという途は許されておらないのであります。そうしてその占領軍の行動によりまして、そこに何らか
国民に対して損失が生じましたる場合におきましては、もとよりこの損失というものは、日本国
政府の
立場として、
国民に対してできるだけ手厚くこれを解決するということが、それが当然なことだと思います。従いまして
政府といたしましては、当然そうした問題のありました場合においてはできるだけ手厚い解決方法を
措置するということは当然と
考えるものであります」と
発言されたのであります。占領下にある我々日本人のすべてはその占領
政策に服従することは、ポツダム宣言を受諾した日本
国民として当然の義務であります。我々はそのことを十分了承しておりますが故に、今日までその占領
政策を忠実に守
つて来たのであります。
併しながら他国の戰争に戰争遂行を目的とした爆彈を山積した飛行機が飛来しつつあることが正当なる占領
政策の行為であるや
否や、我々は疑念を持つものであります。(「そうだ」「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)これらの行為が正当なる占領
政策の行為であるか、又は占領
政策の枠外にある行為か、この際、
政府の率直なる
見解を質すものであります。若し
政府が正当なる占領
政策の枠外にある行為であると認識されました場合、当然の処置としてその被害者の損害を占領軍当局に賠償を支弁されるよう折衝に当られるのが
政府のとるべき任務と存ずるものであります。
政府はその任務を遂行する決意を有しておられるや
否やをお尋ねする次第であります。従来ややもすれば占領軍の事故による被害は一種の天災のごとく扱われて、その損害を賠償支弁する責任の所在も明白ならず、それ故に
政府より終戰処理費及び平和
関係善後処理費から支弁されていると聞いているのであります。その支弁される金額は御見舞
程度という極めて僅少なものであり、当面を糊塗しておるのであります。
政府は、講和調印後の事態と最近の
国民の輿論に鑑み、昨年十二月その支弁額の
改正を見た閣議決定の「占領軍の事故により被害を受けたものに対する見舞金に関する件」によるも、なお且つ僅少の誇りを免れない
程度のものであります。これらの事故は、特に飛行機墜落による事故は絶対に被害者の責任ではないことは明らかであります。その責任の所在は明白であります。それ故に、
政府は思い切
つて被害者が納得し得る損害賠償の
措置をとられる意思を有しておられるや
否や。その所信を発表せられんことを願うものであります。又現在協議中の
行政協定も近日中に終了するやに伝えられているのであります。この協定項目のうちに駐留軍
関係との事故発生による紛争の解決項目も
審議せられておりますや
否や。若し
審議されておりますならばその條件をここにお示しを願いたいものであります。この際、
政府に御注意申上げたいことは、たとえそれが不十分なる見舞金の支弁でありましても、すべての被害者に公平に
配分されなくてはなりません。
併しながら、過日の砂川村の一例によ
つても明らかなごとく、実際
生活に困る人々が見舞金の支弁なく困
つているということであります。即ち住居損傷の場合その補修費として四万円を基礎に支弁され、これを上廻る場合はその実損の五〇%支弁されることにな
つているのでありますが、被害者は農家所在地の砂川村においても全部家持ちではないのであります。そこには若干の借家人がおりますが、家主は補修金を受取りそのまま家屋の修理をいたさず、現在に至
つても破壊されたままの家屋に住み、困窮を極めている実情であります。支弁されたる金額は家持ちに対する見舞金でなく、飽くまで家屋の補修費として支弁されたもので、この金額は家主がひとり所得する
性質のものではありません。併しこのような事態の起きることの原因の
一つは、破損物に対する支弁金額が少いところから来るものと
考えなくてはなりません。これらの実情に鑑み、今後の家屋損傷の補修費は如何なる形で支弁されますや。砂川村に起きたこの実例に徴し、
政府はどうお
考えになり又どう処理されまするや。お尋ねするものであります。更にお尋ねいたしたいことは、これまで占領軍との事故による場合の損害は、極論すれば全くの泣き寝入りのごとき扱いを受けていたのであります。
政府は、講和條約発効後の
措置として、駐留軍
関係との事故処理に関する新らしい協定事項に基く條件が定められましたる場合、その條件をこれまでの事故犠牲者に対して遡及して支弁されるお
考えを持
つておられまするや
否や、お尋ねするものであります。
最後に一言いたしたいことは、砂川村にB二九が墜落したとき、乗務員は全員難を逃れて、消火救援に赴いたところの基地に働く日本人労務者が爆彈の破裂のために殉職したと言われているのであります。このことは、率直に我々の感情を申上げますと、否、日本
国民の感情を吐露いたしますと、何かしら割り切れない後味の悪いものが残るのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)なぜ乗務員の全員が助かり、勇敢にも危險を顧みず消火救助に赴いた者が死んだのでございましようか。この悲惨事を未然に防止することができなか
つたのだろうか。その場合緊急の
措置がとれなか
つたのであろうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)あの場合の
災害の実情をもつと詳しくはつきり調査されたことだろうと思いますから、この席上において、はつきりして頂きたいと思うのであります。埼玉県金子村の事故につきましても、東電飯能営業所の佐島満三氏は同じく危險を顧みず送電線切断作業に赴いたばかりに殉職されたことが新聞紙の報道によ
つて明らかにされているのであります。
政府は、このように勇敢にして犠牲的
精神を発揮し職に倒れた、その他不測の事故によ
つて生じた犠牲者に対して、「占領軍の事故により被害を受けたものに対する見舞金に関する件」という一片の閣議決定の僅少なる見舞金で片付けるのは、何としても我々の承認できないところであります。最高の弔慰金と損害の全額賠償の
措置を至急とられんことを要求し、ここに、これらの不測の事故によ
つて尊い生命を失われた日米両国の犠牲者に対して謹んで哀悼の意を表し、私の
質問を終るものであります。(
拍手)
〔
国務大臣岡崎勝男君
登壇、
拍手〕