○三輪貞治君 私はこの際、
日本社会党の第四控室を代表いたしまして、
労働大臣及び法務総裁に対して、最近頻頻として行われておりまする
労働運動に対する不当弾圧に関しまして
質問を試みたいと思います。この問題は、我が党山花
議員が一応先般の
一般質問で触れておりまするけれども、時間の都合で詳細に意を盡すことができませんでしたし、又
政府の答弁も満足すべきものがありませんでしたので、重ねて
質問をする次第であります。
現在本
国会に上程されまして、衆議院において審議中でありまする
昭和二十七年度予算に明らかでありまするように、今や如何なる名前で呼ばれようとも、事実上の
日本の再軍備が、警察予備隊の大拡張或いは防衛隊への切替え等の形で押し進められておりまするが、(「憲法違反をや
つているのだ」と呼ぶ者あり)このような厖大な軍事予算が、軍需インフレ、物価騰貴、重税、平和産業の破壊をもたらしまして国民生活に大きな打撃を與えることは、疑いを容れないところであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)従いまして、これに対して生活を守るための勤労大衆の反抗も又必然の結果であろうと思う次第であります、(「その
通り」と呼ぶ者あり)そこで、
政府は、これらの大衆の反抗を抑えるために、今や公然と
労働運動に対する弾圧に乗り出しているのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
労働三法の改悪、或いは団体等規正法、ゼネスト禁止法、集団デモ取締法等、すべてこの具体的な現われたらざるはないのでありますが、かかる法律の制定を待つまでもなく、時代逆行の警察政治は着々として現実に進行しているのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)殊に昨年末の激しい越年闘争に当局はびつくり仰天いたしまして、その反動性を露呈いたしまして、不当にこれをば弾圧いたしております。官公庁は勿論、自治体におきましても、千葉県庁の組合が交渉中に全幹部の自宅が不当な捜査を受けるとか、或いは京都では二千の警察官を動員いたしまして交通
労働組合の幹部を逮捕する等の事態が起
つております。その他、電産、三越、帝国石油、東
日本重工業、全日通、全建労、赤羽日鉱、ピクターオート、
昭和飛行機、富士モーター、これらの民間産業の
経営者もこの反動
政府に倣いまして、吉田首相の言ういわゆる不逞の輩として公然として組合員を弾圧する等、頻々としてその実例は枚挙にいとまもなく起
つているのであります。ここに私はその著名なるもの二三につきまして具体的に申上げまして、
政府の見解を質したいと思う次第でございます。
先ず皆さんがよく御
承知でありまするかの三越争議について申上げます。三越の争議は、一万七千円を要求いたしまして固いました昨年の七月の闘争の場合に、全三越の中央闘争委員が七月九日の中元売出し休日振替えを拒否したことと、七月十七日の定時一齊出動の指令を出したという
理由に基きまして、これを会社側が十月二十五日に金主越中鬪委員六名の解雇と九名の譴責処分を行
なつたことから出発しておるのであります。そして各位御
承知のようなあの歳末売出し中の十二月十八、十九のスト断行にまで発展したのであります。この三越の争議に私も直接
関係いたしましたが、今度の争議ではつきりとわかりましたことは、三越の会社側の
労務管理が全く拙劣でありまして、昔ながらのいわゆる六三越の手代、大番頭、小番頭、小檜とい
つたような古い封建的な
考え方で貫かれました階級的な秩序を絶対とするところの古い観念で
労働組合というものが見られておる。又独裁的な組織が絶対服従という形において作り上げられておるということでございます。でありまするから、少くとも三越におきましては、岩瀬社長初め
使用者側のこの封建的な
労働観から、労資対等の原則に基くところの
労働関係の実態がなか
つたと、こういうふうに私たちは結論を付けるざるを得ないのでありまするが、これはあに三越のみならず、これらのいわゆる古い老舗の
労働関係におきましては、封建的隷属
関係に置かれておる
労働者が数多くあると思われるのであります。この種の
労働状況につきまして、
労働大臣はこの実態を如何に認識されており、又それに対する
労働対策を如何に
考えておるかをば先ずお伺いいたしたいと思います。
次に歳末の売出し中のストにおきまして、組合側はいわゆる実力行使といたしましてピケラインを張りました。ところがこのストの最中に、このピケ・ラインに対しまして最高検察庁と警視庁におきましては、これを営業妨害と見るという重大なる共同見解の発表をいたしておるのであります。そこで、この見解に基きまして警視庁は警察官を動員いたしまして、梶棒によるこれこそ本当の実力行使をやりまして、このピケ・ラインを破
つており、(「その
通りだ」と呼ぶ者あり)私は現実にこの破られておるピケラインの所におりまして、その実態を知
つておる。そして、この梶棒による数人の怪我人を出す、或いは検束者を出すと、こうい
つたような事態が起
つてから、遂に二十二日から企図いたしておりました組合側の無期限ストというものは自発的に中止の止むなきに
至つたのであります。言うまでもなくこのピケツテイングというものは、ストライキ中にはこれは殆んど不可避的に付きまとうところの争議手段でありまして、それは、スト破りやスト団員の脱落を防止いたしまして、ストライキの実効を確保するために就業妨害を與える行為でありまして、少くとも資本主義社会における
労働法的秩序においては、
一般的に正当なる手段として認められているということは、これは柳川真佐夫氏外四氏の共著であります「範例
労働法の
研究」という資料においても明らかにされているところであります。而も三越の場合には、御
承知のように三越の従業者は三五%対六五%という男女比率でありまして、女が圧倒的に多い。この女子
従業員諸君がこのピケ・ラインを張
つてお
つたのでありまして、決して暴力行為というものではなか
つたのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)むしろ会社側こそ暴力団を雇いまして、そうしてスト破りに狂奔した始末であるのであります。のみならず一方的に、検察庁或いは警視庁が、スト最中に、この威力的なピケラインに対しまして、これを営業妨害として強権を発動するという意図に出ましたことは、明らかに一種の威嚇でありまして、憲法に保障されているところの争議権をみずからこれは検察庁或いは警視庁が犯していると私たちは思われるのであります。これに対しまして
労働大臣及び法務総裁の率直なる見解の御披瀝を願いたいと思います。
三越問題はこのくらいにいたしておきまして、次に方向を変えまして、帝国石油、即ち油田に巣喰う略奪
経営に対しまして組合が起ち上
つております帝国石油株式会社の問題をここに取上げて見たいと思います。帝国石油は、信越、山形、秋田、北海道の各地に油田を持ちまして、組合員五千九百十七名を擁しているのであります。資源庁及びGHQの天然資源局がたびたびこの帝国石油の濫掘、濫採に対しまして、これを中止するように勧告をいたしたにかかわりませず、
経営者は高率配当を目的といたしまして、その濫掘、濫探を継続いたしまして、而も血税で賄
つた二億に及ぶ多額の国費を助成されている油田を故意に崩壊の危機に立ち至らしめるという
事件があ
つたのであります。そこで
昭和二十七年度
国家予算におきましては、石油及び天然ガスに対する助成金はことごとく削減をされているのであります。このことは昨年十二月二十一日の石油経済新聞が次のごとく報じていることで明らかであります。即ち石油経済新聞の二十一日号には、「資源庁では
昭和二十七年度石油及び天然ガスに対する試掘助成金及び地質調査費総額三億一千六百万円の要求をしていたところ、このほど大蔵省より地質調査費のみ一千八百万円の予算が内示され、その他の要求はことごとく却下された。これは帝国石油の四割配当及び六百万円の軍役賞典が大蔵省を刺戟したものと注目され」云々と、かように記されております。又この問題は、過ぐる第十二
国会におきまして、参議院の通産委員会、衆議院の経済安定委員会において、期せずして與野党の究明のメスが加えられておりまして、その速記録によ
つてもこの間の事情は詳細に記されておりますけれども、私はここにその実際を紹介するの煩を避けたいと思います。その上に、あまつさえ山勝工業株式会社という非常に
関係の深い会社がございますが、これと結託いたしまして、
政府の助成金で購入いたしました機械、資材類、而もこれは使えるものをばスクラップと称しましてこれを不正に安く売却し、山勝工業は昨年それを乗替えてほかの所に売却しようということをいたし、その売上代金を帳簿に記載せずに不当に
経営者がふところに入れておる。かような背任行為をなしており、又横領いたしておる事実があ
つたのであります。そこでこのような乱脈
経営に対しまして、組合が石油鉱業を護り、而も自分らの生活基盤を擁護するために起ち上
つたことは、これは当然であります。そこで組合はたびたびこれに対して反省を求めたのでありますけれども、誠意を示さないのみか、威嚇を加えて参りました。そこで組合は昨年十二月十九日に東京地検に対しまして、光野中央闘争委員長を告発人として、被疑者である酒井社長を初め六名の幹部を背任、横領、贈賄被疑
事件として至急取調べの上厳重処断するようにと告発をいたしたのであります。ところが会社は、一月十五日、この告発人光野委員長ほか七名の組合幹部に対しまして十七日附を以て懲戒解雇を通告して来たのであります。その
理由を見ますと、同社の
従業員規則第五十七條によりまして、会社の機密を漏らそうとした者、或いは漏らした者は懲戒解雇に付するという條項によ
つて、これをば解雇しておる事実であります。会社は右規則に言いますところの重要な機密を漏らそうとし又は漏らしたということで、上述の
通りに解雇したとすれば、彼らの言ういわゆる会社の機密であるところの高率配当のための計画的濫掘、濫探資材の不正売却の事実をみずからが認めて語るに落ちたというべきであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)又
従業員は、如何なる
経営者側における背任、横領、不正に対しても、それが会社の浮沈にかかわり、而も
日本の重要産業を崩壊せしめるごとき事実であ
つても、これを黙過しなければならんのでありましようか。而もこの告発問題は東京地検の特捜部居林検事を担当者といたしまして本格的検察活動に入
つておるのであります。その解決をみない今日にとられた会社側の解雇は、明らかにこれは
不当労働行為と思われるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)又一会社の
従業員就業規則などというものは
労働法に優先するとも
考えられないのであります。私はこの問題について
労働大臣の見解をお伺いいたしたいと存じます。
次に京都市交通の問題でありまするが、これは昨年の暮の争議におきまして、組合幹部八名を政令二百一号の違反で検挙し、うち五名を起訴し、市側は釈放された前述八名を含みますところの十一名の一方的餓首を行な
つておる
事件であります。検挙そのものが
理由薄弱であり、いわんやそれが首切りの
理由とならないことは勿論であります。即ち京都市交通は地方公共団体の行う公企業でありまするから、組合員は
公務員法の
適用から除外されております。無論、公共企業体
労働関係法の
適用も受けません。而も又地方公共企業体
労働関係法というものがまだ未制定である。そこで今日の段階におきましては、このような地方公共団体の行う公共企業の
労働者はいわば中ぶらりんの
状態であるのであります。これをば政令二百一号違反に問うことは、これは重大なる憲法違反であると思われるのでありまするが、
労働大臣及び法務総裁の見解をお質しいたしたいと思います。
次に、さつき
山田議員かちも触れられましたが、私は多少角度を変えまして、いわゆる
特需関係の工場の
労働問題について例を挙げてお質しいたしたいと思います。即ち東
日本重工業或いは
昭和飛行機、ピクター・オート、C・L石油等の問題でありますけれども、東
日本重工業の場合を一例として申上げますると、東
日本重工業株式会社東京製作所というのは、事業不振を打開するために、一昨々年四月一日から米第八軍の
管理下に、兵器、自動車修理という、いわゆる。道工事に作業を転換して今日に至
つておる工場であります。組合員は三千七百名を持
つておりまするが、この組合に対しまして
占領軍当局におきましては、当所の組合活動が当所の作業に協力する
立場を持つ限り、自分らも協力を惜しむものでないという言明をいたしておりまするし、組合も又〇道作業に対して協力をする態度を明らかにして今日まで協力をいたして来ておるのであります。ところが一九五〇年秋、全産業に亘りまするいわゆるレッド・パージが行われまするや、同年十月二十一日軍命令で四十五名の飯首がなされました。次々にその後、一九五一年一月十七日、四月三日、八月十一日、八月二十六日と数回に亘りまして十数名の者が「当所施設内に立入りを禁ず」という命令で餓首をされました。これに従わねばL・Rが否応なしに暴力で追い出すというむちやなやり方が行われておるのであります。これに対しましてその
理由の具体的提示を求めても、司令官は、この措置は、軍の調査機関の調査と
日本政府及び警察の調査に基いた結果、上級機関より保安上の措置として立入りを禁止する命令が来たのであるから、司令官としてはそれ以上その
内容については知らないとい
つたような、全く「のれん」に腕押しの
状態で、泣き寝入りをさせられておるのであります。果して
政府は如何なる法的根拠に基いて、如何なる機関をして、如何なる調査報告を
連合軍に対してなしておるのでありましようか。又今後もこのような嫁の告げ口を、あることないこと姑にするような、小姑的な、而も奴隷的な根性を捨てないつもりであるか。私は法務総裁にお尋ねしたいと思います。
更に本年一月六日には、善良な、建設的な、民主的な組合員が、又十二名同じような軍令馘首を受けておるのであります。
軍当局と会社間の
契約は全く明らかにされておりませんけれども、少くとも
従業員雇用契約は明らかにこれは会社側との間に結ばれておるはずであります。米
軍当局とではない。
従つて従業員は当然
国内法の保護規制の下にあるのに、実際には上述のような
軍当局の一方的措置で
理由も明示せずに処断されておることは、全く
日本国民としての人権を無視せられておると言
つても過言でないと思うのであります。(
拍手)
政府は従来この種の
質問に対しては、いつも「物需工場に
労働三法は
適用されている」と答えておりますが、ちつとも
適用されておらないではありませんか。今も
山田議員の
質問に対して同じような答弁をされておる。又昨年十一月十五日の、平和、保障両條約特別委員会で曾祢
議員が
質問いたしたのに対しましても、これは保利
労働大臣でありましたが、占領の直接の
労務に従事する者については
占領軍の規律の下に
労務に服するのであるから
労働法の
適用の枠内にあるとは申されないけれど、その他のP・D工場乃至特需工場においては、これはもう当然
日本の
労働関係法規が完全
適用の
状態であるから、当然そのように実施されていると思うと、かように答えておるのであります。又つい先日一月二十八日の山花
議員の
質問に対しましても、これは現在の吉武
労働大臣ですが、米国
政府と
日本の或る会社との間に取り行われている
契約は飽くまで
契約である、その
契約が直ちに
労働者に対して
国内法に優先するとは
考えていないということを言われておる。又
山田議員に対しても先刻同様の答弁をされておりまするけれども、答弁は答弁として、実際には
国内法規は無視して暗闇に放置するようなことが行われておる。大根を切るようにむちやくちやた切られておるという
状態が現われておる。私はそうい
つたような、ただお義理一遍の「行われておると思う」とい
つたような答弁でなしに、もつと誠意ある答弁と、これに対してどのような措置をと
つておるかということについて、はつきりと
お答えを願いたいと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)