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1952-02-04 第13回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月四日(月曜日)    午前十一時零分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第九号   昭和二十七年二月四日    午前十時開議  第一 電波監理委員会委員長任命に関する件     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、お諮りして決定いたしたいことがございます。経済安定委員長から、国土総合開発指定地域実情実地調査のため、熊本県、宮崎県及び露見島県に、山田佐一君、須藤五郎君を本月千五日までのうち十日間、予算委員長から、最近の中小企業金融等実情実地調査のため、大阪府に石坂豊一君、東隆君、岩間正男君、佐多忠隆君を、静岡県に高良とみ君、内村清次君、池田宇右衞門君、吉川末次郎君を本月十一日より四日間の日程を以てそれぞれ派遣したい旨の要求書が提出されております。各委員長要求通り、これら十名の議員を派遣することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求通り議員を派遣するこに決しました。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、電波監理委員会委員長任命に関する件を議題といたします。  一月二十五日、内閣総理大臣から、電波監理委員会設置法第六條の規定により、電波監理委員会委員網島毅君を電波監理委員会委員長任命することについて、本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本件全会一致を以て同意を與えることに決しました。      ——————————
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、人事官任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。  一月二十五日、内閣総理大臣から、国家公務員法五條規定により、入江誠一郎君を人事官任命することについて、本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件同意を與えることに決しました。      ——————————    〔山田節男発言許可を求む〕
  10. 佐藤尚武

    ○醸長(佐藤尚武君) 山田節男君。
  11. 山田節男

    山田節男君 私はこの際、行政協定に基く労務提供労働関係についての緊急質問動議を提出いたします。
  12. 高橋道男

    高橋道男君 只今山田君の動議賛成いたします。
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 山田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。山田節男君。    〔山田節男書登壇拍手
  15. 山田節男

    山田節男君 私はこの際、行政協定に伴う労務調達によつて生じます労働関係について緊急質問いたしたいと思います。  御承知のように昭和二十年八月十五日に我が国が無條件降伏いたしまして以来、占領軍が全土に軍政を布きまして、昭和二十年九月三日の連合軍最高司令官指令第二号によりまして、日本政府占領軍維持のために労務提供する義務を負わされたのでございます。爾来常時三十五万乃至四十万の進駐軍要員がこれに使われておつたのであります。そして爾来国家予算の一割八分乃至二割五分を占めまする終織処理費の中で、いわゆる終戦処理事業費の殆んど九八%というものは、これら常時三十五万乃至四十万の進駐軍労務者に対する対価として支携われて来たことは御承知通りでございます。かようなたくさんな労務者進駐軍のために使われておりまするけれども、私は質問の前に、一応この進駐軍労務者特質につきましてこれは單に吉田内閣のみならず、各議員皆様方の御認識を願いたいと存ずるので、一言触れてみたいと存じます。  この進駐軍労務者は非常に特性のあるものでございます。従いましてこれによつて生じまする労働問題も極めて特殊なものでございます。その理由はなぜかと申しますならば、先ず服務いたしまする環境が異なつている。即ち一般公務員とか或いは産業労働者に比べますると環境が違います。第一に言語の障壁があるということでございます、言葉の違いでございます。第二には風俗習慣の相違でございます。かような服務環境からいたしまして、これに従事いたしまする服務員緊張度と申しまするか、極めて精神的に負担の過大な作業である。これが一つの特質でございます。第二の特質は、これ父御承知のように、労務調達に関しましては、政府主務官庁といたしまして特別調達庁労務調達責任を負わされているのでございます。併しながら、これらの進駐軍労務者は、給料政府によつて拂われるのでございまするからして、給與関係におきましては日本政府雇用主でございまするけれども、その実際の使用権進駐軍要員使用権は、現地の労務士官或いは軍の係の者がいたすのでございまして、ここに極めて奇妙な労働関係を生じまして、即ちそれは雇主の二重性ということでございます。日本政府は單に給料掃うのみであつて、又労務を採用調達する任務のみでありまして、実際の人事権と申しまするか、使用主としての責任義務並びに権利というものは全然持たないというような、極めて奇妙な労働関係になつておるのでございます。  かようなわけで、去る第五国会におきまして国家公務員法が制定されましたときに、これは政府給與を受ける者であるから公務員とすべきであるとの話がございまして、関係当局においても極めて強く主張されましたけれども、遂にこれを特別職にした。と言いますのは、この進駐軍労務者身分或いは労務の性質からかような結果になつたのでございます。かようなわけで、極めて特殊な進駐軍のこの労働関係からいたしまして、先ず第一に、私どもが過去六年間見まして、先ほど申上げましたように雇用主が二重性になつておりまするが故に、使用者がいわゆる軍当局によりまして、極めて、何と申しまするか、占領軍のために提供されておる労務であるという故を以ちまして普通のいわゆる特別職でございまするからして一般労務者と同じく労働三法がこれに適用されるわけでございまするけれども、幾多の不当労働行為が行われておる。殊に労働基準法関係におきましては、全く治外法権的な状態でございまして、例えば解雇予告規定であるとか、或いは就業規則の設定、こういつたような労働基準にとりましては最も根本的な問題も無視されるというような、治外法権的な労務行政が行われておるために、誠に労務者としましては過去六年間極めて不利な、身分の不明瞭な、又雇用の安定の極めて欠けておるところの労働に服して参つておりました。その間、その事務官庁である特別調達庁にいたしましても、或いは労働省にいたしましても、かような特殊の環境に作業しておりますが故に、労務管理が徹底を次ぎ、労働立法がこれに対して何らタッチできないというような状態にあるのでございます。のみならず、昨年の七月一日のアメリカ会計年度からいたしましては、アメリカ労務の全額を負担するということになりまして、いわゆるこれは労務要求書によりまして、労務費アメリカがダラーで拂うということになりました。それに附加えまして、今度は各家庭或いはクラブ等におきましては、直接に個人的な契約によつて雇うというようなことになりまして、その数が全国におきまして約六万もある。かような状況でございまして、なお、そのほかに日本政府責任において雇い又給料を拂うというような種類労務者もございまして、ここに三種類労務関係が生じておるのでございます。かようなわけでありまして、過去六年有半、かような占領軍政下にあつて生じましたところの特殊の労務問題に対しまして、政府が如何に努力いたしたかは、これは存じませんけれども、その効果というものはさつぱり挙つていない。そこで私は今回緊急質問として、吉田内閣に次のような点につきまして質問いたしたいのであります。  御承知のように安全保障條約に基きまして行政協定が今日協議されております。これに関連しまして過去六年有半、三十五万乃至四十万の労務者に関することにつきまして、政府は如何なる方策を持つてつておるか。今田総理大臣がお見えになつていませんので、外務のほうを主管しておる国務大臣である岡崎氏にこの点について質問申上げたいと存じまするが、過去の只今申上げました事例に基きましてこの労務管理の二重苦からいたしまして、日本労務者が非常な不利をこうむつておりますが、この点につきましては吉田内閣としても十分お考えになつていることと存じまするが、昨晩の新聞を見ますると、行政協定の中で、調達、ブロキュアメントの部分については、すでに日米意見が一致したということを見たのでありますが、この点の中におきまして、この日本労務提供に対しましては、飽くまで対等の立場として日本国内法適用するようになつておるかどうか。なお、これは皆さん御承知通りに、北大西洋條約におきましては、この條約加盟国アメリカとの條約の内容を見ますると、米軍駐屯地に要する労務は、相手国の正式の職業紹介機関を通して一般労務と同じ條件で行うということになつておりまするが、こういうような建前によつて現在行政協定を結ぶべきことになつておるかどうか。この一点をお聞きしたいと思うのであります。  次に、この安全保障條約に基きまして、米軍が本土並びに周辺に駐屯いたすことになるのでありますが、これには、土地、建物、労務調達のために従来の特調のようなやはり主務官庁が要ると思うのでありますが、政府としては、この行政協定に基きましてアメリカ軍にいろいろなものを調達するために今日の特調のようなものを設ける御意思があるかどうか。この点をお聞きしたいと思うのであります。  それから次には労働大臣にお願いいたしたいのでありまするが、先ほども述べましたように、占領軍政下策おきまするこの労働関係というものは極秘て不安定のものでありまして、又政府労働行政の埒外に置かれておる。かような経験から鑑みまして、労働大臣といたしまして、この行政協定に基いて労務提供するとこういう場合に、過去のこの苦しい経験に懲りまして、必ずや労働関係に対して単純化し、労働三法をこれ又完全に適用する、かように私はせられる御意思があると存じまする炉、この点について労働大臣所見を伺いたい。  なお、この労務者につきましては、健康保険厚生年金等適用しておりまするが、失業保険或いは労働者災害補償保険法、これは昨年十二月、横田の基地におきまして、ああいつたような一大事故が発生いたしまして、数十名横死傷いたしました。かようなことは、今後駐屯軍に使われる者にとつては共通の運命に置かれていると思いますが故に、これに対する労働大臣の率直なる御所見を伺いたいのであります。  なお、公共契約法、これは去る第七国会吉武大臣が次官であつた当時と存じておりますけれども、公共契約法を出すということになつておりました。これはジユネーヴの国際労働会議採択の條約によつて各国ともこれを採用いたしまして、国を相手とする契約には、不正を防止する手段として公共契約法を持つのが近代文明国家の原則となつております。然るにこれは、案ができたにもかかわらず、保險業者等の反対のために遂にこれが引つ込められたのであります。昨年以来このアメリカ軍のいろいろな調達に関しまする契約書を見まするのに、すべてこの公共契約法によつておるのであります。日本には公共契約法がないがために、極めて不利な、極めて不確実ないろいろな日米との契約を行なつておるのでございます。こういうような関係からいたしまして、公共契約法を是非実施する必要があると思いまするが、労働大臣としてはこれに対してどういう御意見であるか。この点を明らかにして頂きたいのであります。  又これに附随いたしまして、近来特需工業が盛んになりまして、アメリカ軍一般産業経営者とが契約いたしまして、軍需その他のものを製造しておりまするが、これに対しても、これ又特殊な労働問題を起しております。関東だけでも約四万の労働者がこれに従事いたしておりまするが、経営者側におきましては、先ほど申上げましたように、人事権労働者使用権というものが米軍にありまするが故に、経営の干渉となり、又人事におきましては、全く経営者が権限を持たないということになることからいたしまして、従業員雇用の不安定、その他労働者條件のいろいろな不利な点がございますが、これに対しまして労働大臣は如何なる施策をせんとするか。又通産大臣がお見えになりませんけれども、通産大臣としましてもこの点につきましては慎重に考慮される必要があると存ずるのでございます  時間がございませんから端折りまするが、最後に、これ又総理大臣がお見えになりませんから、岡崎国務大臣の御回答を願いたいのでありまするが、英連邦軍は昨年の十二月十四日を以ちまして名前を英連邦朝鮮派遣軍と変えたのでございます。これは如何なる理由でそういうことになつたのか。若しこの英連邦軍英連邦朝鮮派遣軍ということになりますならば、これに対しまする従業員の問題或いは日本とこの英連邦朝鮮派遣軍との関係について、どういうように我々は認識すべきか。この点を一つ明らかにして頂きたいのであります。なお、英連邦軍講和條約の発効後におきましては、当然日本から撤退すべきものと考えておりまするが、この点について御意見を伺いたいと思います。  なお、最後大蔵大臣がお見えになつておりまするからお伺いいたしまするが、今度安全保障條約に基きまして、行政協定によつて日本労務提供するということになりますれば、従来の占領軍政下における労務提供とは違います。従いまして労務者はその身分が今後行政協定に基いた場合には全然変るのであります。これに対し、こういう身分変更に際しましては、従来この進駐軍要員として働いておりまする二十数万の者に対しまして、一応退職金はこれを出すべきものである。これにつきましては特調或いは労働省からのお話があつたかも知れませんけれども、大蔵大臣はこれに対して法律的に財政的に如何ようにお考えに、なつておるか。この点につきまして御所見を煩わしたいと存ずる次第であります。  これを以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  16. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) お答えいたします。  行政協定の中で、殊に労務の問題については平等の立場でやるべきであるという御意見でありまするが、これは勿論その趣旨でやつております。ラスク特使の声明の中にもその通り書いてございます。  それから労務者に関する問題でありますが、これについていろいろ御意見がありまして、我々も北大西洋條約の規定等十分参考にいたしておりまするし、只今の御意見十分参考にいたしまするが、まだ行政取極の中ではこの問題には入つておりませんので、これは今後の交渉の問題になるわけであります。  又特調に関しまして御質問でありましたが、政府全般方針としましては、総理施政方針にもありますように、できるだけ簡素な行政機構で今後の政府の中を運営して行きたいという方針はきまつておりまするが、特調を今後残すか、或いは特調のようなものを何かの形で残すかどうかということにつきましては、これ又まだ行政協定の中で話が始まつておりませんし、我々のほうも種々研究を要する点がありまするので、まだ決定には至つておりません。さよう御承知願いたいと思います。(拍手、「英連邦はどうなんだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  連合軍関係労務者身分の問題でございまするが、お話通り只今国家公務員法第二條によりまして特別職公務員と相成つております。講和成立後、今後は駐留軍関係労務者ということになるのでありまするが、この経費の負担とか、或いは雇用身分関係、或いは待遇等につきましては、行政協定関係もありますので、只今のところきまつておりません。今後適当な方法できめたいと思います。(拍手、「退職金はどうするのだ」「英連邦軍の答弁がないよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  18. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) お答えを申上げます。  労働関係の法規の適用につきましては御趣旨通りにいたしたいと考えております。従来失業保険或いは労災保險適用のないことを不当のように仰せられておりまするが、実は失業保険は別に失業手当を出すことになつて一向差支えがございませんので、特別の取扱をしているだけであります。なお労災保険につきましても、労働基準法に基く補償以上のものをいたしておりまするので、特別の取扱をしておるだけでございます。なおアメリカ公共契約法等の制定の御希望がございましたが、これは現在昭和二十二年法律百七十一号に基きまするいわゆるプリヴエイリング・ウエイジによつて賃金基準を定めてやつておりまするので、将来は将来として又研究をいたすことにいたしたいと思います。  なお特需関係の工場が進駐軍契約をしておつたことについてのことでございますが、これは過日お答えをいたしましたように、或る会社が註文を出す間において契約をすることでございまするから、その契約内容についてとかく言うわけには参りませんが、その契約が直ちに国内法に優先するということはございませんので、支障ないものと考えております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  19. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今英連邦軍に関する御質問を落しましたから追加いたします。英連邦軍の名称の変更につきましては、これは英連邦のほうの都合によることと思いますので、我我のほうの知る限りではないのであります。ただ政府といたしましては、国際連合の正式の決定に基く各種の措置につきましては、日本は條約発効前といえども能う範囲内においてこれに協力する建前をとつております。又條約発効後は、当然、條約の規定に基きまして、これに協力する建前をとつておりますので、この点はでき得る限りの協力をするということについては変りはないのであります。(拍手)      ——————————
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。文部委員長堀越儀郎君から常任委員長を辞任いたしたいとの申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      ——————————
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) つきましては、この際、日程に追加して、常任委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  24. 高橋道男

    高橋道男君 只今常任委員長選挙につきましては、私は成規の手続を省略して議長が指名せられんことの動議を提出いたします。
  25. 木村守江

    木村守江君 私は只今高橋君の動議賛成いたします。
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 高橋君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長文部委員長梅原眞隆君を指名いたします。(拍手)      ——————————    〔井上なつゑ発言許可を求む〕
  28. 佐藤尚武

  29. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 私はこの際、国立鯖江病院の誤薬事件に関する緊急質問動議を提出いたします。
  30. 木村守江

    木村守江君 私は只今井上なつゑ君の動議賛成いたします。
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 井上君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。井上なつゑ君。    〔井上なつゑ登壇拍手
  33. 井上なつゑ

    井上なつゑ君 私は只今より国立鯖江病院に起りました誤薬事件について緊急質問をいたします。  昨年八月二日福井鯖江病院において誤薬静脈注射によつて二名の患者が死亡されたという不祥事件が発生いたしましたことは、誠に申訳のございませんことでございます。そもそもこの誤薬致死至つた経緯は誠に複雑多岐でございます。と申しますと、同病院薬室におきまして、内科患者に使われます葡萄糖液外科用に使われます三%ヌペルカイン液が同時に作られまして、そうして又同様の容器に入れられ、又同一蒸気消毒器に入れて消毒されたのでございます。それが責任者でございます薬剤師が取出せばよかつたのでございますが、責任者助手をしております笠島希代枝という事務員が取出したのでございます。その事務員は、その二つの薬品同一容器であり、同一色でありますのと、一色でございますので、内用外用区別もせずに棚に置いておいたというのでございます。ところが病室からたまたま葡萄糖を請求に参りました看護婦に、誤まつてその劇薬の三%ヌペルカインを渡したのでございます。これを受取りました看護婦斎藤スズ子と申しますのも、その劇薬レッテルを十分見ることなしに、お医者様の御命令に従つて二OCCの静脈注射器三本に取りまして、これを他の看護婦と共に二名の患者注射をいたしましたのでございます。ところが、その結果、不幸にして二名の患者呼吸麻痺を起して死に至つたといういきさつでございます。検察庁におかれましては、九月十四日、製剤担当者薬剤師三浦貞治は、薬事法違反業務過失致死により、又事務員笠島希代枝看護婦斎藤スズ子業務過失致死ということで、それぞれ起訴せられまして、以来五名は福井地方裁判所武生支部において第一審の公判を受くるに至りましたのでございます。四回に亘つて公判を、全国十万の看護婦たちは、その成り行き如何と見守つておりましたが、その予想はすつかり裏切られましたのでございます。と申しますと、この事件を惹起いたしました原因、即ち同事件の欠陥と申しますものは、只今申上げましたように、一、その容器薬名箋に、劇薬普通薬区別標識がなく、殊に内用外用区別標識がなされていなかつたこと、即ち薬事法第三十五條及び第三十九條が守られていなかつたのでございます。二、笠島薬剤助手レッテルを何ら確かめることなく同一格納場所に入れまして、又渡すときもこれを見なかつたのでございます。三、静脈注射は当然医療行為でございまして、お医者さんがなさらなくちやならないのでございますが、これをなさらなかつたことは医師法第十七條を守つていられないことになるのでございます。四、看護婦斎藤スズ子が受領のときも、又注射筒に入れるときも薬品を確かめなかつたことでございます。この病院全体の管理が不良であつたというような点にもかかわりませず、昨年十二月十二日看護婦斎藤スズ子一人のみ有罪判決をせられたのでございます。即ちこうしたこの大きな事件責任を二十三歳の年の若い斎藤看護婦一人の責任に負わされたのでございます。全国看護婦一同の不満はこの上もないのでございます。本人はもとより早速第二審のために控訴中でございます。  つきましては厚生大臣にお伺いいたしたいのでございますが、この判決をどう見ておられましようか。有罪者が一人しか出なかつたことで御満足でございましようか。先ず御意見がお伺いいたしたいのでございます。  次に厚生大臣にお伺いいたしたいことは、かかる大事件を起しておきながら看護婦一人有罪としただけで責任は全うしたとお考えになつておられましようか。当然受くべき責任者責任を回避したとお思われになりませんでしようか。やはりこの際、本事件重要性に鑑みまして又社会一般のために、責任の所在を明確にしておきたいと存じますが、これに対してどういうお考えをお持ちでございましよう。若しこのままになりますならば、今回看護婦に與えられましたような事件が、看護婦責任ということになりますと、一体、看護婦業務というものはどういうようなものになるのでございましようか。(拍手)極端に言いますと、看護業務は薬の鑑別もしなくてはなりません。又病人の看護もしなければなりません。又医療行為静脈注射もしなくてはならないという結論になるのでございます。病院はお医者さんも要らなければ、薬剤師も要らないということになるわけではございませんでしようか。看護婦だけおればいいということだと言えましよう。厚生省ではこれをお認めになるのでございましようか。終戦後、保健婦助産婦看護婦法の制定がありまして、看護婦の地位が一応向上いたしましたといえども、まだまだ日本の今日におきましては看護婦の地位は低く、戦争中の惰性に引ずられ、絶えず圧迫に苦しんでおります。今回の事件がよくこれを証明いたしておるのでございます。病院におきます患者の治療は、医師、薬剤師看護婦その他病院の職員が完全にチーム・ワークをいたしまして初めて完全に行われるのでございまして、このチーム・ワークをいたしますメンバー一人々々が、各自の責任を負わなければなりません。それだのに看護婦にできるだけ多くの仕事を與えられて、最大の責任を負わされておるのでございます。(「そうそう」と呼ぶ者あり)医師個人のお仕事もしなくちやなりませんし、その上、国立病院などでは定員法の枠に傭人として看護婦も雑役婦も一緒にはめられておりまして、雑役婦が減らされますれば看護婦は当然雑役婦の仕事までいたさなければならないのでございます。言い換えますと、今回の鯖江病院は、医師法薬事法も保健婦助産婦看護婦法もその運用が完全でないということになるのでございます。結局遵法精神に欠けていたということになるのでございます。厚生省設置法にも、医療法にも、その病院における責任者、即ち職場における職務の責任者があると思いますのに、この場合どうして責任者が出ないのでございましようか。この点お伺いしたいと思います。  第三点は、次にお伺いしたいことは、本事件発生後はどんな措置をとられましたでございましようか公判後どんな行政処分をなさつたかお伺いしたいと思います。公判中に病院当事者は、病院機構につき、又製剤関係について、厚生省より何ら注意を受けたことはないと申しております。どういう理由で厚生省は視察し又監督をなさらないのでございましようか、承わりたいのでございます。三浦薬剤師は、劇薬劇薬の標示をしないことは、従来の病院の慣例になつていると申しております。昨年あの皆様も御承知の有名な医薬分業法、即ち医師法、歯科医師法及び薬事法の一部改正のときは、その審議の際にも、薬局の整備はひとり開業薬局のみに限らず一般公立の医療機関にも及ぶべきであるということを強調いたしておきましたが、一体これがどういうふうに運営の面に及ぼされたのでございましようか。どうぞこの措置についてお伺いいたしとうございます。  それから行政処分ですが、いつ如何なる方法で誰を処分されたか承わりたいと存じます。若し告訴された三名を解雇したと言われるならば、更に承わりたいことは、判決後、判決文を読まれたかどうかということでございます。国家が無罪にした三浦薬剤師や笠島事務員を何故解職なさいましたか。理由を承わりたいと思います。国家が右両名を無罪にしたのは、條件付であることを御承知でありましようか。併せて承わりたいと思います。  最後に承わりたいことは、全国病院に、この事件発生後、看護婦による静脈注射をやめる指令を出されましたかどうか、承わりたいと思います。先般も九州八県の看護婦に伺いましたところ、ただ二県だけは静脈注射は医師にお返ししたと申しておりますが、他は未だに実施いたしております。すると、今日この時間に日本中のどこかで、又かかる不祥事件が起らないとも限りませんが、この責任は一体誰が負うのでございましようか。(拍手看護婦が次々に体刑の処分を負うのでございますか。お伺いしたいと思います。私はこの際、厚生大臣の英断を要望してやみません。全国看護婦に一齊に静脈注射の中止をさせて頂きたい。さもなければ、医師法、保健婦助産婦看護婦法を改正して、国民が安心して看護婦から公然と静脈注射をして頂くように教育をして、保護されるよう善処して頂きたいのであります。(拍手)このようにすることは、医師は医師の責任を、看護婦看護婦責任を果すことでありまして、病院管理もよくなり、看護業務の基準も自然に確立されるのでございます。  次に法務総裁にお伺い申上げます。あの事件に対する検事の求刑は、三浦薬剤師一年の禁錮、罰金五千円、笠島希代枝に罰金五千円、斎藤スズ子に禁錮十カ月でありました。即ち三浦薬剤師の求刑が一番重うございましたのにもかかわらず、看護婦のみ有罪判決を受けましたが、とれについてどんなにお考えになりましようか。お伺い申上げとうございます。  次に、起訴された裁判所では、むしろ薬剤科長に責任があると言つておられますが、薬剤科長を不問にされるつもりでございましようか、承わりとうございます。又静脈注射医療行為で、当然医師がなすべきものと医師法第十七條に示されておりますが、医師の刑事訴追はされませんでございましようか、承わりとうございます。  三番目は、公判の結果、前にも申上げましたように、全責任を弱い看護婦にのみ負わせられたようですが、検事の論告の趣旨は、本人の自戒と一般警戒のための厳重な処罰要求とでございますが、看護婦のみに責任を負わせて一般警戒になるとお思いになりますか。責任回避とお考えになりませんか。承わりたいのでございます。(「検事総長をやめさせろ」と呼ぶ者あり)  その次は昨年二月、同様の誤薬致死事件が神奈川県小田原市に起りました。尤もこれは注射でなく浣腸でございました。小田原の簡易裁判所では略式命令で看護婦に八千円の罰金刑を求刑され、非常に救われたのでございます。然るに同じ国家の利益代表者がされます刑事訴追が、所によつてかくもまちまちになつておりますが、どういうことでございましようか。指揮系統があるのでございますか、どうでございましようか。それをお伺いいたしたいのであります。  最後に法務総裁にお願い申上げたいことは、公判の際には看護婦の求刑に看護実習教本を引用されましたが、看護実習教本なるものは非常に理想的なものでございますが、只今の現実ではなかなかこの通りに行つておらないということでございます。殊に有罪なつ斎藤看護婦のごときは昭和十九年から看護婦の道に入りました。即ち終戦前から終戦後に亘つて教育を受けております。日本の終戦後の看護婦只今岐路に立つていると申して過言ではございません。本事件は戦後の看護婦の歩み方に重大なる関係を持つことになるのでございます。(「井上弁護士うまいぞ」と呼ぶ者あり)どうぞ今後の看護事業の発達のため実際に即した御判断を賜わらんことをお願い申上げて、質問を終ります。(拍手、「社会党演説だ、それは」「社会党に入党しなさいよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉武惠市君登壇
  34. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 井上さんの御質問お答えを申上げます。  鯖江病院におきまする誤薬事件は誠に申訳ない事件と思つております。これの行政処分の件でございますが、これは看護婦につきましては過般一応第一審の判決がございました。併しながらこれに対しましては、検事及び被害者のほうからも控訴して、今なお係争中になつておるのでございまするので、この判決の成り行きを見まして行政的な処置をとるつもりでございます。  なお、その後一般にどういう処置をとつたかということでございますが、この事件に鑑みまして、お話のごとく静脈注射のごときことは医療行為に属することでございまするから、嚴に医師でなければならない旨の通知を発して警告をしている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  35. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  鯖江の誤薬事件、誠に私も遺憾に存ずるのであります。お尋ねの件に関しましては、これは裁判の手続内容に関することであります。裁判所がどういう判決をするかということは政府においては一向関知しないのであります。これは全く裁判所の権限に関することであります。で、本件につきましては誠に不都合なことと考えております。そこで検事局では全員に対して起訴をしたのであります。相当な事件でありまするから、愼重に考慮してこれを起訴したのであります。ところが裁判の結果、今申されましたような判決が下りたのであります。その判決に対しては、検察当局としては、これは相当なものじやない、妥当を欠いておると、そういう考えの下に、全員ひとしくこれは控訴いたしました。で、只今名古屋の高等裁判所にこの事件が係属中であります。万一、若し名古屋の高等裁判所において我々の満足行かないような判決が下ると仮定いたしますれば、これ又相当の考えを以て処置しなくちやならぬと考えております。検察庁といたしましてはこの事件は誠に不都合だと考えております。将来もかような事件がありますると、検察庁においては相当の処置をするつもりであります。さよう御了承願いたい。  小田原の事件につきましては、これも相当の注意をして処置をいたしているのであります。何分にも被害者の未亡人からこれは穏便に済ましてもらいたいということの申出がありましたので、略式として八千円の処分をしたのであります。これは検察庁もその被害者の未亡人の意思を酌んで、さような処置をしたということでありますから、さよう御了承願います。(「二重煙突はどうした」と呼ぶ者あり)      ——————————    〔三輪貞治君発言許可を求む〕
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三輪貞治君
  37. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 私は、この際、労働運動不当弾圧に関する緊急質問動議を提出いたします。
  38. 高橋道男

    高橋道男君 只今の三輪君の動議賛成いたします。
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三輪君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。三輪貞治君。    〔一二輪貞治君登壇拍手
  41. 三輪貞治

    ○三輪貞治君 私はこの際、日本社会党の第四控室を代表いたしまして、労働大臣及び法務総裁に対して、最近頻頻として行われておりまする労働運動に対する不当弾圧に関しまして質問を試みたいと思います。この問題は、我が党山花議員が一応先般の一般質問で触れておりまするけれども、時間の都合で詳細に意を盡すことができませんでしたし、又政府の答弁も満足すべきものがありませんでしたので、重ねて質問をする次第であります。  現在本国会に上程されまして、衆議院において審議中でありまする昭和二十七年度予算に明らかでありまするように、今や如何なる名前で呼ばれようとも、事実上の日本の再軍備が、警察予備隊の大拡張或いは防衛隊への切替え等の形で押し進められておりまするが、(「憲法違反をやつているのだ」と呼ぶ者あり)このような厖大な軍事予算が、軍需インフレ、物価騰貴、重税、平和産業の破壊をもたらしまして国民生活に大きな打撃を與えることは、疑いを容れないところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従いまして、これに対して生活を守るための勤労大衆の反抗も又必然の結果であろうと思う次第であります、(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで、政府は、これらの大衆の反抗を抑えるために、今や公然と労働運動に対する弾圧に乗り出しているのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)労働三法の改悪、或いは団体等規正法、ゼネスト禁止法、集団デモ取締法等、すべてこの具体的な現われたらざるはないのでありますが、かかる法律の制定を待つまでもなく、時代逆行の警察政治は着々として現実に進行しているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に昨年末の激しい越年闘争に当局はびつくり仰天いたしまして、その反動性を露呈いたしまして、不当にこれをば弾圧いたしております。官公庁は勿論、自治体におきましても、千葉県庁の組合が交渉中に全幹部の自宅が不当な捜査を受けるとか、或いは京都では二千の警察官を動員いたしまして交通労働組合の幹部を逮捕する等の事態が起つております。その他、電産、三越、帝国石油、東日本重工業、全日通、全建労、赤羽日鉱、ピクターオート、昭和飛行機、富士モーター、これらの民間産業の経営者もこの反動政府に倣いまして、吉田首相の言ういわゆる不逞の輩として公然として組合員を弾圧する等、頻々としてその実例は枚挙にいとまもなく起つているのであります。ここに私はその著名なるもの二三につきまして具体的に申上げまして、政府の見解を質したいと思う次第でございます。  先ず皆さんがよく御承知でありまするかの三越争議について申上げます。三越の争議は、一万七千円を要求いたしまして固いました昨年の七月の闘争の場合に、全三越の中央闘争委員が七月九日の中元売出し休日振替えを拒否したことと、七月十七日の定時一齊出動の指令を出したという理由に基きまして、これを会社側が十月二十五日に金主越中鬪委員六名の解雇と九名の譴責処分を行なつたことから出発しておるのであります。そして各位御承知のようなあの歳末売出し中の十二月十八、十九のスト断行にまで発展したのであります。この三越の争議に私も直接関係いたしましたが、今度の争議ではつきりとわかりましたことは、三越の会社側の労務管理が全く拙劣でありまして、昔ながらのいわゆる六三越の手代、大番頭、小番頭、小檜といつたような古い封建的な考え方で貫かれました階級的な秩序を絶対とするところの古い観念で労働組合というものが見られておる。又独裁的な組織が絶対服従という形において作り上げられておるということでございます。でありまするから、少くとも三越におきましては、岩瀬社長初め使用者側のこの封建的な労働観から、労資対等の原則に基くところの労働関係の実態がなかつたと、こういうふうに私たちは結論を付けるざるを得ないのでありまするが、これはあに三越のみならず、これらのいわゆる古い老舗の労働関係におきましては、封建的隷属関係に置かれておる労働者が数多くあると思われるのであります。この種の労働状況につきまして、労働大臣はこの実態を如何に認識されており、又それに対する労働対策を如何に考えておるかをば先ずお伺いいたしたいと思います。  次に歳末の売出し中のストにおきまして、組合側はいわゆる実力行使といたしましてピケラインを張りました。ところがこのストの最中に、このピケ・ラインに対しまして最高検察庁と警視庁におきましては、これを営業妨害と見るという重大なる共同見解の発表をいたしておるのであります。そこで、この見解に基きまして警視庁は警察官を動員いたしまして、梶棒によるこれこそ本当の実力行使をやりまして、このピケ・ラインを破つており、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私は現実にこの破られておるピケラインの所におりまして、その実態を知つておる。そして、この梶棒による数人の怪我人を出す、或いは検束者を出すと、こういつたような事態が起つてから、遂に二十二日から企図いたしておりました組合側の無期限ストというものは自発的に中止の止むなきに至つたのであります。言うまでもなくこのピケツテイングというものは、ストライキ中にはこれは殆んど不可避的に付きまとうところの争議手段でありまして、それは、スト破りやスト団員の脱落を防止いたしまして、ストライキの実効を確保するために就業妨害を與える行為でありまして、少くとも資本主義社会における労働法的秩序においては、一般的に正当なる手段として認められているということは、これは柳川真佐夫氏外四氏の共著であります「範例労働法の研究」という資料においても明らかにされているところであります。而も三越の場合には、御承知のように三越の従業者は三五%対六五%という男女比率でありまして、女が圧倒的に多い。この女子従業員諸君がこのピケ・ラインを張つてつたのでありまして、決して暴力行為というものではなかつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)むしろ会社側こそ暴力団を雇いまして、そうしてスト破りに狂奔した始末であるのであります。のみならず一方的に、検察庁或いは警視庁が、スト最中に、この威力的なピケラインに対しまして、これを営業妨害として強権を発動するという意図に出ましたことは、明らかに一種の威嚇でありまして、憲法に保障されているところの争議権をみずからこれは検察庁或いは警視庁が犯していると私たちは思われるのであります。これに対しまして労働大臣及び法務総裁の率直なる見解の御披瀝を願いたいと思います。  三越問題はこのくらいにいたしておきまして、次に方向を変えまして、帝国石油、即ち油田に巣喰う略奪経営に対しまして組合が起ち上つております帝国石油株式会社の問題をここに取上げて見たいと思います。帝国石油は、信越、山形、秋田、北海道の各地に油田を持ちまして、組合員五千九百十七名を擁しているのであります。資源庁及びGHQの天然資源局がたびたびこの帝国石油の濫掘、濫採に対しまして、これを中止するように勧告をいたしたにかかわりませず、経営者は高率配当を目的といたしまして、その濫掘、濫探を継続いたしまして、而も血税で賄つた二億に及ぶ多額の国費を助成されている油田を故意に崩壊の危機に立ち至らしめるという事件があつたのであります。そこで昭和二十七年度国家予算におきましては、石油及び天然ガスに対する助成金はことごとく削減をされているのであります。このことは昨年十二月二十一日の石油経済新聞が次のごとく報じていることで明らかであります。即ち石油経済新聞の二十一日号には、「資源庁では昭和二十七年度石油及び天然ガスに対する試掘助成金及び地質調査費総額三億一千六百万円の要求をしていたところ、このほど大蔵省より地質調査費のみ一千八百万円の予算が内示され、その他の要求はことごとく却下された。これは帝国石油の四割配当及び六百万円の軍役賞典が大蔵省を刺戟したものと注目され」云々と、かように記されております。又この問題は、過ぐる第十二国会におきまして、参議院の通産委員会、衆議院の経済安定委員会において、期せずして與野党の究明のメスが加えられておりまして、その速記録によつてもこの間の事情は詳細に記されておりますけれども、私はここにその実際を紹介するの煩を避けたいと思います。その上に、あまつさえ山勝工業株式会社という非常に関係の深い会社がございますが、これと結託いたしまして、政府の助成金で購入いたしました機械、資材類、而もこれは使えるものをばスクラップと称しましてこれを不正に安く売却し、山勝工業は昨年それを乗替えてほかの所に売却しようということをいたし、その売上代金を帳簿に記載せずに不当に経営者がふところに入れておる。かような背任行為をなしており、又横領いたしておる事実があつたのであります。そこでこのような乱脈経営に対しまして、組合が石油鉱業を護り、而も自分らの生活基盤を擁護するために起ち上つたことは、これは当然であります。そこで組合はたびたびこれに対して反省を求めたのでありますけれども、誠意を示さないのみか、威嚇を加えて参りました。そこで組合は昨年十二月十九日に東京地検に対しまして、光野中央闘争委員長を告発人として、被疑者である酒井社長を初め六名の幹部を背任、横領、贈賄被疑事件として至急取調べの上厳重処断するようにと告発をいたしたのであります。ところが会社は、一月十五日、この告発人光野委員長ほか七名の組合幹部に対しまして十七日附を以て懲戒解雇を通告して来たのであります。その理由を見ますと、同社の従業員規則第五十七條によりまして、会社の機密を漏らそうとした者、或いは漏らした者は懲戒解雇に付するという條項によつて、これをば解雇しておる事実であります。会社は右規則に言いますところの重要な機密を漏らそうとし又は漏らしたということで、上述の通りに解雇したとすれば、彼らの言ういわゆる会社の機密であるところの高率配当のための計画的濫掘、濫探資材の不正売却の事実をみずからが認めて語るに落ちたというべきであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)又従業員は、如何なる経営者側における背任、横領、不正に対しても、それが会社の浮沈にかかわり、而も日本の重要産業を崩壊せしめるごとき事実であつても、これを黙過しなければならんのでありましようか。而もこの告発問題は東京地検の特捜部居林検事を担当者といたしまして本格的検察活動に入つておるのであります。その解決をみない今日にとられた会社側の解雇は、明らかにこれは不当労働行為と思われるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)又一会社の従業員就業規則などというものは労働法に優先するとも考えられないのであります。私はこの問題について労働大臣の見解をお伺いいたしたいと存じます。  次に京都市交通の問題でありまするが、これは昨年の暮の争議におきまして、組合幹部八名を政令二百一号の違反で検挙し、うち五名を起訴し、市側は釈放された前述八名を含みますところの十一名の一方的餓首を行なつておる事件であります。検挙そのものが理由薄弱であり、いわんやそれが首切りの理由とならないことは勿論であります。即ち京都市交通は地方公共団体の行う公企業でありまするから、組合員は公務員法の適用から除外されております。無論、公共企業体労働関係法の適用も受けません。而も又地方公共企業体労働関係法というものがまだ未制定である。そこで今日の段階におきましては、このような地方公共団体の行う公共企業の労働者はいわば中ぶらりんの状態であるのであります。これをば政令二百一号違反に問うことは、これは重大なる憲法違反であると思われるのでありまするが、労働大臣及び法務総裁の見解をお質しいたしたいと思います。  次に、さつき山田議員かちも触れられましたが、私は多少角度を変えまして、いわゆる特需関係の工場の労働問題について例を挙げてお質しいたしたいと思います。即ち東日本重工業或いは昭和飛行機、ピクター・オート、C・L石油等の問題でありますけれども、東日本重工業の場合を一例として申上げますると、東日本重工業株式会社東京製作所というのは、事業不振を打開するために、一昨々年四月一日から米第八軍の管理下に、兵器、自動車修理という、いわゆる。道工事に作業を転換して今日に至つておる工場であります。組合員は三千七百名を持つておりまするが、この組合に対しまして占領軍当局におきましては、当所の組合活動が当所の作業に協力する立場を持つ限り、自分らも協力を惜しむものでないという言明をいたしておりまするし、組合も又〇道作業に対して協力をする態度を明らかにして今日まで協力をいたして来ておるのであります。ところが一九五〇年秋、全産業に亘りまするいわゆるレッド・パージが行われまするや、同年十月二十一日軍命令で四十五名の飯首がなされました。次々にその後、一九五一年一月十七日、四月三日、八月十一日、八月二十六日と数回に亘りまして十数名の者が「当所施設内に立入りを禁ず」という命令で餓首をされました。これに従わねばL・Rが否応なしに暴力で追い出すというむちやなやり方が行われておるのであります。これに対しましてその理由の具体的提示を求めても、司令官は、この措置は、軍の調査機関の調査と日本政府及び警察の調査に基いた結果、上級機関より保安上の措置として立入りを禁止する命令が来たのであるから、司令官としてはそれ以上その内容については知らないといつたような、全く「のれん」に腕押しの状態で、泣き寝入りをさせられておるのであります。果して政府は如何なる法的根拠に基いて、如何なる機関をして、如何なる調査報告を連合軍に対してなしておるのでありましようか。又今後もこのような嫁の告げ口を、あることないこと姑にするような、小姑的な、而も奴隷的な根性を捨てないつもりであるか。私は法務総裁にお尋ねしたいと思います。  更に本年一月六日には、善良な、建設的な、民主的な組合員が、又十二名同じような軍令馘首を受けておるのであります。軍当局と会社間の契約は全く明らかにされておりませんけれども、少くとも従業員雇用契約は明らかにこれは会社側との間に結ばれておるはずであります。米軍当局とではない。従つて従業員は当然国内法の保護規制の下にあるのに、実際には上述のような軍当局の一方的措置で理由も明示せずに処断されておることは、全く日本国民としての人権を無視せられておると言つても過言でないと思うのであります。(拍手政府は従来この種の質問に対しては、いつも「物需工場に労働三法適用されている」と答えておりますが、ちつとも適用されておらないではありませんか。今も山田議員質問に対して同じような答弁をされておる。又昨年十一月十五日の、平和、保障両條約特別委員会で曾祢議員質問いたしたのに対しましても、これは保利労働大臣でありましたが、占領の直接の労務に従事する者については占領軍の規律の下に労務に服するのであるから労働法の適用の枠内にあるとは申されないけれど、その他のP・D工場乃至特需工場においては、これはもう当然日本労働関係法規が完全適用状態であるから、当然そのように実施されていると思うと、かように答えておるのであります。又つい先日一月二十八日の山花議員質問に対しましても、これは現在の吉武労働大臣ですが、米国政府日本の或る会社との間に取り行われている契約は飽くまで契約である、その契約が直ちに労働者に対して国内法に優先するとは考えていないということを言われておる。又山田議員に対しても先刻同様の答弁をされておりまするけれども、答弁は答弁として、実際には国内法規は無視して暗闇に放置するようなことが行われておる。大根を切るようにむちやくちやた切られておるという状態が現われておる。私はそういつたような、ただお義理一遍の「行われておると思う」といつたような答弁でなしに、もつと誠意ある答弁と、これに対してどのような措置をとつておるかということについて、はつきりとお答えを願いたいと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 時間をすでに超過いたしました。
  43. 三輪貞治

    ○三輪貞治君(続) そこで私は最後に……。
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 簡單に端折つてお願いいたします。
  45. 三輪貞治

    ○三輪貞治君(続) はい。以上のように、労働法の改惡或いは彈圧法の制定を待つまでもなく、実際には労働者に対する彈圧が着々として進行いたしておるのでありまするが、この上に今度の国会に、ともすれば労働三法の改悪或いは彈圧法の上程がされようといたしておることを考えますると、我々は現在の反動的な実態に鑑みまして膚に粟を生ぜざるを得ないのであります。(「憲法破壊だ」と呼ぶ者あり)特に憲法におきましては明らかに、これは変な言い方でありまするけれども、憲法を破壊することを目的とずるところの秘密的な政治結社さえも認めるということが出ておるのであります。(「言語道断だ」と呼ぶ者あり)即ち如何なる、レツテルを貼られようとも、国の主人公が国民であるから、国民に嫌われるような政治思想はこれは普及するはずがない。併し又国民に好かれるならば、どのようなレツテルを貼られておる思想であろうとも、この発展を阻止してはならないということを、はつきり憲法においては書かれておるはずであります。而もこれを刑罰をパックとして政府が民主主義を育成しようなどというような非常に僣越な考え方がその中心となつて、それらの弾圧法規が用意されておるということは、これは明らかな私は憲法の蹂躙であると思うのでありまするが、(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)その点については、それらの法律が出て具体的に詳細に質問いたしたいと思いまするけれども、この際はつきりと法務総裁の御見解を承わつておきたいと思います。(拍手)若しそういうふうに政府の力で民主主義が育成されるならば、今続々と追放解除をされて、法務総裁もその一人でありましようが、非常に民主的な顏をして政府の台閣に名を連ねておるこれらの人々が最も羽振りを利かしておつた東條内閣の時代こそ、一番民主主義育成の絶好の機会でなかつたかと言いたいのであります。  私は、最後に、時間がありませんので、政府並びに與党の諸君に老婆心までに申上げておきたいことは、
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三輪君、時間が切れておりますから……。
  47. 三輪貞治

    ○三輪貞治君(続) 徒らに国民大衆の弾圧に狂奔いたしまして、弾圧法を濫造し梶棒を整備することに汲々とする半面、国民生活を底知れぬ不安の深淵に陷れ、治安維持法と並び称してちつともそれに(「結論々々」と呼ぶ者あり)優るとも劣らない悪法と言われておるような法律の制定を考え、又防衛費を殖やして、防衛費の増額と国民生活の圧迫の果てしないシーソー・ゲームを演じながら、
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三輪君、時間ですからおやめ願います。
  49. 三輪貞治

    ○三輪貞治君(続) 軍国主義、警察国家再現への道を辿りつつあるような、おろかなる政策に早く気付くべきであるということであります。秦の始皇帝の万里の長城が、それを築くため相次ぐ苛歓談求をほしいままにいたしまして、却つて内部の騒擾内乱のために北胡の侵入を容易ならしめた史実を反省すべきであり、一方、善政を布いたことで有名なかの尭帝三尺の階段に及ぱなかつたと皮肉つた後世史家の批判に傾聴すべきであると、あえて忠告を申上げて、私の質問を終ります。    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  50. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 三輪君の御質問お答えをいたします。  第一は三越争議に関する件でございますが、これは営業妨害として検挙されたというお話でありますが、私の聞いておるところは、單なるビケツトではなくして第三者のお客さんに対する妨害が行われたと聞いております。  第二に帝国石油の件でございますが、これは私まだ聞いておりませんので、(「何の大臣か」と呼ぶ者あり)取調べた上でお答え申上げたいと思います。(「しつかりしろと呼ぶ者あり)  次に京都市電の問題でございますが、これは現在の法規心おきましては公務員法及び政令二百一号につて禁止されている行為を、あえて行いましたがために、法の処断に相成りましたことは、止むを得ないと思います。  次に東日本重工の件でございますが、これは私もたびたび申上げましたごとく、進駐軍と或る会社との間に行われる契約契約でございます。その契約が直ちに国内法を拘束するものでないことは勿論でございます。数回に亘つて解雇が行われましたのはそれぞれの根拠において行われ、法の違反があつたとは存じておりません。  次に労働三法改惡の件でございますが、私どもは労働法の改正をいたすつもりで目下法制審議会に諮問中でございます。決して改悪若しくは断圧の意思はございません。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  51. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 三越に関する件につきましては只今労働大臣から答弁した通りであります。政府といたしましては正常なる争議行為を規制する意思は毛頭ないのであります。(「そうか」「やつているじやないか」「足下を見よ」と呼ぶ者あり)  それから京都の問題でありますが、公営企業に従事している職員については政令第二百一号が適用されていることは、国会においてすでに成立いたしました地方公務員法の附則第二十項が明瞭にこれを定めているところであります。従つてこの違反行為を問うことは勿論適法であつて、憲法違反ではないと信ずるのであります。  それから進駐軍の司令官に対する云云の件でありまするが、検察庁といたしましては司令官に対してさような申入れをいたした事実はございません。  次に帝国石油の問題でありまするが、これは只今検察庁において適正な立場からこれを取調べておるのであります。いずれ結果は後日明瞭になろうと思います。  次に法令の来たるべき制定については、十分憲法に規定されました基本的人権を尊重する意思であることをこの際申上げておきます。(拍手)      ——————————    〔小林亦治君発言許可を求む〕
  52. 佐藤尚武

    議員佐藤尚武君) 小林亦治君。
  53. 小林亦治

    ○小林亦治君 私はこの際、開拓行政のことに関し緊急質問動議を提出いたします。
  54. 高橋道男

    高橋道男君 只今の小林君の動議賛成いたします。
  55. 佐藤尚武

    議員佐藤尚武君) 小林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 佐藤尚武

    議員佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。よつてこれより発言を許します。小林亦治君。    〔小林亦治君登壇拍手
  57. 小林亦治

    ○小林亦治君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、全国の五百万農家、なかんずく十五万開拓農民のために、政府に御質問をいたしたいと存じます。  食糧の不足を海外に期待することが如何に危險であり、国政としては愚策であるというのほかはありません。いわんや国内増産が可能である場合においては、なお然りであります。国の自存独立の第一條件が生産力であり、なかんずく食糧の自給にあるということは殆んど論を待たない。されば、終戰後国政改革の真先に問題になつたのが農地改革であつたことは故なしとしないのであります。昭和二十年の十一月の緊急開拓計画が二十二年度より実行に移されましてすでに五年を過ぎた今日、当初の百五十五万町歩開拓は漸くその三分の一にも充たない現状であります。必要度の高いこの重要政策に対する政府の態度は余りにも冷淡であり無策の結果であります。入植開拓者に対する政府の助成金は甚だ低額であつて、その大半が入植農民の犠牲において開墾せられ、又増反開拓についての補助金に至りましては、昭和二十四年度以降はこれを打切つてしまつたという、冷酷にして無責任なる農林行政がとられております。これは、政府といたしましては、食糧の輸入などという、およそ逆な政策によつてその日暮しができるようになつたことに安心したからでもありましようが、全くゆるがせにできない問題であります。曾つての大英帝国が今日世界の斜陽貴族になり果てたことの原因は、これはたくさんございましようが、何といいましても国内の食糧不足がその原因の最たるものであることは御案内の通りであります。私はこの際、これらの点について政府に誠意のある御反省を願い同時に確固たる所信を伺いたいと存じます。  大蔵大臣は二十六年度予算を説明するに当つて百五十五万町歩開拓が「経済情勢の変化と、計画の不完全」を理由として当初計画の失敗せられたことを明らかに認めておられます。この失敗を認められておられながら、改めてこれをやり直すお考えはないように見受けられるのであります。農林当局はいやいやながら惰性でやつておるというのが現状でありまして、これは、誠に遺憾に堪えないところであります。政府というものは與えられた財政のやりくりにの入没頭するビジネスマンの寄り集まりであつてはならないはずであります。経論と抱負に富んだ政治家の会議体でなければならないと思うのでありまするが、現内閣はどう見てもビジネスマンの寄り合いの上に(拍手)ワンマン政権がちよこんと乗つかつておる恰好に見える。国民にとつては誠に迷惑至極な政府と申さなければならんのであります。(拍手)私は過ぐる第十二国会におきまして、農林、大蔵両大臣に質問いたしました。その要点は、「昭和二十二年以降すでに五十万町歩が開拓せられ、今日では優に一千万の人口を賄つておる。現在なお開墾可能地が二百万町歩ほどある。これを開墾すれば今日の年間主食の不足量二千万石は優に生産が可能である。この際、山林地主の土地の開放を断行すると同時に、入植開拓者に対する完全なる国家補償、増反開拓農民に対する補助金の高額なる復活を図ることが急務である。我が国の人口が近き将来に一億を数うるようなことがあつても、これを断行すればびくともしない。よろしく経倫を断行してもらいたい。」かような数点の項目を挙げまして質問いたしましたのに対して、根本農林、池田大蔵両大臣はこれに対して食糧増産は我々の一大政策であるから財政の許す限り善処いたしましようという、誠意のある御答弁があつたのでありますが、目下の二十七年度予算案を見まするに、この期待がはずれまして、全く失望に堪えません。(「口先だけだつたのですよ」と呼ぶ者あり)成るほど八千五百二十七億という曾つてない大予算ではあるが、千八百億を超える防衛関係費の重圧のために多くの内政費が削除せられ或いは減額されたもののある中に食糧増産費の面においては九十五億が増額せられておるので、根本、池田両大臣の御誠意は若干ながら認め得るのでありまするが、開拓、開墾の項目においては、抜本的な見るべき積極政策が依然として貧困であるということは看過できないところでございます。繰返すまでもなく、食糧が一億の八品を賄うためには、治山、治水の美名を濫用せずに、思い切つて山林原野の開放を断行することがその第一であります。第二尺入植開拓者に対する政府補償の増額し第三に増反開拓農民に対する補助助成金の高額なる復活を図らなければならんことは繰返すまでもありません。然るに土地改良とか営農だけに重点を置く食糧増産行政は、どう見てもビジネス行政であつて、経輪を断行する政治ではないと考えまするが、この点について農林大臣の御意見を伺いたいのであります。食糧年間不足額の二千万石を輸入に待つことは最大の愚策であり特に農村の二、三男対策が深刻な問題になつておる今日、入口の調整、移民の計画などは、いずれもその解決策たり得ない今日、可働入口を解決するためにもこの問題は余りにも重要であります。重要国策ということになれば、防衛豫には六百五十億、関係費として一千八百億という金を捻り出す能力のある政府が、防衛に優るとも劣らない負極問題には僅かその十分の一をも與え得ないはずはないと思うのであります。私は十五万戸の開拓農民並びに全国既成農家五百万戸を代表して、開拓、開墾に対する国策の急務を叫んで、再びこの壇上に立つた次第でありまする炉、池田大蔵、廣川農林両大臣共に自由党内閣としては力量に富んだ手腕のある政治家と存じますので、願くは両大臣のその御手腕を以て、もう一ペン開拓開墾について経綸を織り込まれたるところの予算案の練り直しを願いたいというのが私の要求の趣旨でございます。(「望みありませんね」と呼ぶ者あり)  最後に、関係大臣である大橋国務大臣並びに廣川農林大臣にお伺いします。日米安保條約の行政取締が如何ようになつておるかは知りませんが、開拓地、これは主に旧軍用地であります。これが駐留軍或いは警察予備隊の用地として接収の対象となうておるために入植農民はおびえておる現状であります。彼らは開拓に至難な最初の数年間粒々額に汗を流して開墾に鍬を振い、漸く一家の糊口を繋ぎ得るに至つた途端に、一朝にしてその耕地を奪わるることは、余りにも悲惨と申さなければなりません。そこで、軍用地は成るべく原野を以てし、能う限り既耕地を避けてもらいたい万止むを得ずして収用するといたしましても、おびえ切つた入植農家を路頭に迷わすがごときことのないように、これに與うる換地並びに補償の具体策を速かに講じられまして、犠牲をなくするように万全の措置をとつて頂きたい。今日入植農民の状態は、当初政府の声がかりにもかかわらず誠に惨澹たる状態にあります。医療設備、教育、営農、それらに対しては当初政府の約束の半分にもなつておらない。今朝、私の郷里山形県から入つた新聞には、五年前に入植開拓をしたところの三十七歳になる開拓農民が五人の一家心中を途げたという記事が載つております。これは好個の適例なのであります。これはひとり山形県の入植開拓農民の状態ではございません。全国の十五万戸の開拓農民の現状がこれであります。後ほど政府にこの新聞をお廻ししますから、仔細に御覧願つて、開拓農民の悲鳴の一端をお読みを頂きたいと存ずるのであります。  以上要約いたしまして、私の質問演説を終ります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えいたします。  開拓者に対しまする予算上の措置についての御質問でございまするが、従来以上に、お話通り、食糧増産には昭和二十七年度の予算につきましては計上いたしたのであります。今年度三百億円を四百億円にした。百億円の増加ということは未だ曾つてないのであります。如何に我々が食料増産に対して意を用いているかということを御了承願いたいと思います。  今、特に入植者についての問題でございまするが、政府といたしましても今までのいわゆる開墾作業費とか或いは入植施設費の単価が非常に安うございましたから、これを思い切つて四、五割程度上げました。従いまして昨年度十六億円であつたのが二十一億円にもなつておるのであります。又開拓者の最も望んでおりまする酸性土壌を中和さすための補助、これにしましても今年度一億三千万円程度のものを三億円余り出し、開拓者の収益の増加を期待する。或いは新たに開拓者信用基金制度を設けまして、一億円を開拓者の組合に融資する。又ほかの方面でございまするが、開拓者に対しまして特に家畜の導入等のための費用も見ておるのであります。で、昨年の六千五百に対しまして今年度は七千戸の開拓を計画する等、できるだけの措置をいたしております。又新規の開拓とか、或いは今までの開拓を続けて行くにしましても、昨年度は公共事業費のうちの開墾干拓等につきましては六十五億円出しておつたのを、来年度は九十二億円、こういうふうに四割程度の増加をしている。政府が如何に開墾干拓を通じての増産或いは開拓者に対する措置についで努力しておるかということを予算で一つ御了承願いたいと思います。  なお、増反開拓者農民の補助という問題でございまするが、これは終戦直後やつたのであります。併し我々といたしましては、先ず集団開拓のほうに力を入れて、今までの農民のかたが自分の労力で新たに開墾される分につきましては、財政上、今のところ補助することにはなつていないのであります。国といたしましては、先ず集団開拓のほうに力を入れるべきじやないか。而して財政上の余裕がありましたならば増反開拓者に対しての補助も将来考えて行きたいという気持を持つておりまするが、今の状態では集団開拓のほうにだけいたしまして、増反のほうに対しましては遺憾ながらその余裕がないという状況であるのであります。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  59. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) お答え申上げます。  警察予備隊の演習地の整備をいたしたいと存じておりまするが、何分狭隘なる国土でございまするから、土地の利用につきましては細心の注意を要する国情にあると考えまして、用地の取得に当りましては、食糧の増産並びに民生の安定にいやしくも障害を與えることのないよう嚴に戒めておる次第でございます。従つて演習地といたしましては、荒蕪地、原野等から選ぶということはもとよりでございまして、すでに開拓地として開墾されておりまする土地の附近に候補地を物色いたしまする場合には、特に注意をいたし、でき得る限り開拓地に影響を及ぼさないような工夫をいたしておる次第でございます。又どうしても開拓地を使用いたすために……、ほかには土地使用の計画が立ちがたい、又他に適当の土地もないというような場合は、止むを得ず使用することにも相成るのでございまするが、その場合におきましては、御趣旨通りに、関係者に対して相当なる補償をいたしまするのほか、地元関係機関の協力を得まして、その善後措置についても万全の方途を講ずる考えであります。今後もこの方針を以て進みたいと存じます。(拍手)    〔政府委員野原正勝君登壇
  60. 野原正勝

    政府委員(野原正勝君) 農林関係お答えいたします。  山林原野を開放すれば、なお二百万町歩もあるではないか、これを治山治水の美名の下に開拓を澁つているようなふうに考えられる、甚だ遺憾であるという御質問であります。これを大いに積極的に開拓をするならば、人口一億に達してもなお十分だと考えるが政府はどうかというような御趣旨でございます。山林原野を開放して開拓する余地は、今後まだ七十万町歩くらいあるという見当でございます。現在開放しました所が大体百三十万町歩でございまして、そのうち大体耕地に十分なりと思われるものが約七十万町歩でございます。(「もつとある」と呼ぶ者あり)なお開拓する余地がある七十万町歩というのは、大体耕地になるものがそのうち五十万町歩というふうに考えているのであります。(「そんなことはない、もう一遍調べろ」と呼ぶ者あり)従つて合計約二百万町歩の開拓適地のうち、百二十万町歩程度は開拓地として開墾ができる、耕地になると考えているのであります。  昭和二十七年度の開拓事業費の予算は八十九億円でございまして、そのうち開墾関係が六十七億円、干拓関係に二十二億円であります。これによりまして七千戸の新規入植と四万町歩の開墾と千三百四十八町歩の干拓を造成しようというのであります。治山治水に名をかりて開拓を積極的にやつていないというようなことはないのであります。  又土地改良事業費は百二十億円でありまして、土地改良、開拓事業総計いたしまして二百十五億円でございますが、開拓事業はそのうちの四一・四%でありますが、これは食糧増産のそれぞれの特色を生かしまして、並行的に、既耕地の改良と合せて開墾下振事業等をいたして参るわけでありまして、開拓事業を軽く見ているというふうなことは断じてございません。  又人口一億と申されましたが、我々は、漸を適うてこの国土を十分に生かして行くならば、十分将来におきましては一億より以上の人口を養えるものであるというふうに考えております。  それから入植農家に対する補助金を増額せよというお話でございまするが、誠に御尤もな点でございまして、政府といたしましてもできるだけ多くの補助金を出したいと考えているのでありまするが、国家財政の面でこの十分な期待に副い得ないでいるわけであります。昭和二十六年度に比べまして、主要補助金たる開墾作業費では今回約三割がた二十七年度予算では殖やしております。それから開拓者の住宅のほうにおきましては、二十六年度よりも五割がた殖やすことにいたしまして、酸性土壌等につきましては先ほど特に大蔵大臣から詳細な説明が、ございました通りでございます。又開拓者資金融通特別会計法等におきましても三割ほど増額になつておりまして、国家財政等から見ましても、特に二十七年度におきましては食糧増産のための画期的な予算措置を講じたつもりでございます。又それと相関連いたしまして開拓行政は今後とも十分強力にこれを進めるという考え方でいるわけでございます。  それから増反の開拓農家に対する補助金が開墾事業に対して打切られているということは御指摘の通りでございまして、この点は今日財政的に非常に困る面もあるのでございます。先ほど大蔵大臣からもお話がございましたが、農林省といたしましては実は大いに希望しているわけでございます。但し二十四年度以降からも増反地の補助事業といたしまして、道路であるとか、水路であるとか、そういつたものに対しましては相当の予算を出しまして補助をしておる次第でございます。今後とも私どもは開拓行政は十分不動の国策として、これは絶えざる努力を以て今後強力に進めたい。かように考えておる次第でございます。  以上お答え申上げます。(拍手
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会の議事日程決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十一分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員派遣の件  一、日程第一 電波監理委員会委員長任命に関する件  一、人事官任命に関する件  一、行政協定に基く労務提供労働関係についての緊急質問  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、国立鯖江病院の誤薬事件に関する緊急質問  一、労働運動不当彈圧に関する緊急質問  一、開拓行政に関する緊急質問