○
山下義信君 私は
日本社会党第二控室を代表して、政府に対し若干の質問を試みんとするものであります。
我々は、いま日本の運命について重大なる立場にあることを深く反省するものであります。同時に、八千万国民も又国家の将来に対し心から心配いたしておると思うのであります。ただひとり、あなた方政府のほうが
却つて真劍味を欠き、熱意に乏しいことを、前
厚相橋本君と共に遺憾とするもので二ざいます。(拍手)国民は長い間の苦難に耐え、敗戰者としての隠忍を続けて参りました。それもただ一つ明日への希望を持てばこそであります。明日への希望とは新たなる日本の建設、これであります。このことによつて、平和にして明るい生活の生れることを期待したからであります。然るに事実は、新らしい日本にあらずして
王政復古が行われんとし、明るい生活にあらずして暗澹たる耐乏が近付きつつあるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)人のよい日本人に、はかない夢を抱かせ、パンを與えずして石を與えんとする者は、そもそも何者でありましようか。政府の
施政方針には新日本建設の気魄なく、その政策はあたかも砂のごとく蝋のごとく、全く国民をして失望せしめたのであります。総理は何が故に、独立後の日本の構想を明らかにし、民族の進む大道を明確にしなかつたのでありますか。(「できないからだ」と呼ぶ者あり)我が党は、四つの島の日本にあつては、友愛と正義、平和と勤労を基調とし、万人平等の福祉を理想とする
社会連帯の精神に立ち、以て
福祉国家の建設をなさんとするものでありますが、今廟堂にあつてその衝に当る
吉田総理は、果して如何なる日本を構想し、何を以て施政の根本とするものでありましようか。(「何にもない」と呼ぶ者あり)
防衛漸増が先であるか、民生安定が後であるか、はた又二者いずれを以て
第一義諦とするお考えでありましようか。今日の国民は久しく窮乏のどん底に喘ぎ、殊に今どきの青年は貧乏以外の人生を知らないのであります。この国民を駆り、この貧乏にして不健康な青年を駆つて、何を生産し、何を防衛せしめんとするのでありましようか。総理は大砲をとらずと言いながら小銃をとらしめ、
防衛漸増の仮名の下に
段階的軍備を考えておるようであります。やがて
米軍撤退のあとは、甘んじてアジアの番犬となるの肚でありましようか。若し断じて然らずと言うならば、その然らざるゆえんを承わりたいのであります。政府の国策極めてあいまい、
従つて政策に生命なく、ただ当面彌縫の
安易政治をなすの結果は、
民主日本の後退、社会不安の増大を招き、遂には幾十万の
漸増軍隊もその用をなさざるがごとき事態の招来を、国民と共に真に憂慮いたすものでございます。
次に総理の
政治責任についてお尋ねいたします。総理は組閣以来内閣を改造すること数次に及び、閣僚を更迭すること五十有余名に及ぶのであります。何のためにかような
改造更迭をいたしたのでありますか。政策の転換か、失政の追及か、はた又單に
大臣病患者の渇をいやしたのに過ぎないのでありまか。「そこだそこだ」と呼ぶ者あり)我々はその
趣旨説明を聞かなければなりません。
曾つて片山内閣の当時、一閣僚の罷免について、本院はその説明を求めた前例がございます。けだし閣僚の更迭は重要なる国務でありまして、決して
吉田一家の私事ではないからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)又総理は、治績挙らざれば責を閣僚に帰し、己れ知らざるもののごとくてありますが、憲法第六十六條第三項には、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と明記し、総理の任免権を以てするも、なお
連帯責任を免かれ得るものでないことを明らかにいたしておるのであります。(拍手)総理は憲法の條文を如何に解し、何を以てみだりに閣僚を更迭したのであるか。お答え願いたい。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)総理のごとき態度を以てするならば、日本歴史始まつて以来専横極まりなき太政大臣であります。天皇以上であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々は
敗戰革命において天皇制を廃し、
却つてここに
吉田天皇を見る。何たる皮肉でありましようか。ここに列する閣僚の面々、断じて
パチンコ大臣であつてはならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)たとえ、その逆鱗に触るるあつて、
夕べ恩寵の喜び、忽ち斧鉞の悲しみに変りましても、毅然としてやつて頂きたいのであります。入軽ければ政治又軽く、政治に対する民衆の信頼が失墜することは、共産党以上に注意いたさねばなりません。(笑声)
閣僚更迭と総理の責任について総理の御所見を伺いたいと思います。
次は
国民生活の確保についてでありますが、総理はその
施政演説において、
国民生活の確保について万全の考慮を拂い、
国民生活を安定せしめると述べたのでありますが、その確保とは何を確保し、安定とは如何に安定せんとするのでありますか。総理は前国会において、現在の
国民生活は行過ぎである、もつと
耐乏生活をしなければならんと言われたのでありますが、今なおさようにお考えでありましようか。現在の
生活水準を維持するか、今後その水準が低下するかは、重大なる問題でありまするから、特に総理の御所信を承わりたいと思うのであります。
実は
吉田内閣悪政の結果、貧富の懸隔いよいよ甚だしく、大衆の生活は想像以上に逼迫し、婦女子は相次いで泥沼に顛落し、遂には生存を絶望して
一家心中のごとき惨劇が年々激増するという有様であります。
生活保護法の一例を見ましても、二十四年五月の百五十四万六千人から、昨年八月には二百三万人と増加いたし、
大蔵省当局は昨年度
予算編成に当つて、逐月二・五%の増加率を見込まざるを得なかつたのであります。蔵相は
予算演説において
民生安定費の増加を説いておりますが、その実体は
生活保護費の増加に過ぎません。何ら積極的民生安定ではないのであります。昨年一ヵ年におきまして、悲惨なる
一家心中事件が一体何件あつたとお思いになりまするか、驚くなかれ実に百九十三件の多きに
上つたのでございます。親子相抱いて死んだもの七十件、三人共に死んだもの五十五件、四人枕を並べて死んだもの四十八件、一家五人全部のもの十一件、又甚だしきは七人ことごとく死んだという哀れな家庭すらあつたのでございます。これを地方別に見ますると、東京の三十九件を筆頭に、新潟の十九件、大阪の十三件、これに次ぎ、各府県ことごとくこの悲惨事を見ざるはないのでございます。又これを職業別にいたしますと、農業三十二件、
失業者二十九件、
俸給生活者二十件、蔵相御案内の
中小企業者十七件等でありまして、(笑声)意外にも農家が多数を占めておるということは注目すべき点であります。以上を見ましても、如何に全国民が
生活難の脅威におののきつつあるかを明白に物語るものでございます。政府は、この最たる事実を以てしましても、なお且つ生活は
安定せりなどと、うそぶくことができるでありましようか。たまたま口を開けば、餓死は当然などと放言し、その
政治性格の冷酷なる、如何に與党の諸君といえども到底看過し能わざるところでありましよう。この際、政府は、如何に国民の生活を確保し、如何にその低下を防止せんとするのでありましようか。我我は、
経済白書によつて八二%の
消費水準を云々し、労働省の
実質家計指数六八%を引用するまでもなく、それらの数字よりも、その数字のうちに隠されたる
国民生活の不平等、
国民福祉のアンバランスを以て重大問題なりとするものであります。これを是正し、その行過ぎを抑え、その足らざるところを補うてこそ、初めて政治ありと言うことができるのではありますまいか。勿論、貿易の振興、生産の増強は
重要政策には相違ありませんが、そのことたる、本年を限つて成るというものではなく、道遠しと言わねばなりません。
巨大資本先ず栄え、その間、大衆は永く疲弊し、他日余りあるに至らば僅かに残肴を振舞わんとするものでありまして、右の手にては
労働生産性を弱め、左の手にて
生産増強を夢みるなど、その愚や逐に済度の道を知らざるものでございます。政府は確たる
分配政策を持たないようであります。
社会保障政策の採用に極めて消極的であることは、これを立証して余りあると思うのであります。今日、世界のいずれを見ましても、
社会保障制度に熱心ならざる国は一カ国もございません。米国においてすら、本年度の予算中それらの経費は
社会保障費と
軍人援護費を合せまして七十五億ドルに及び、実に
内政費の百六十八億ドルに対しまして四割五分を占めておるのであります。老齢、失業等の
国庫負担は別に二十八億ドルを計上し、意外に巨額を支出いたしておるのであります。我が国同様のドイツにおいてすら、七十五億マルクの
内政費に対しまして、
戰争犠牲者への年金三十億マルク、
社会保険への補助七億マルク等、大半は
社会保障費を以て占められておりましてへ我が国と比較いたしまして格段の相違を感ずるものでございます。費用の点はともかくもといたしまして、
社会保障、民生安定に熱意のないことにつきましては、ただただ呆れるのほかはないのでございます。かの大磯の風景を御覧なさい。深夜寒風に坐して君の門を叩く、戯歌の声世人皆これに涙す。君冷々として犬を抱きて走り去る。これはこれ、いずくの宰相でありましようか。(拍手)我々は、
社会保障の政策なくしては
民主国家は片輪であり、国民一人々々の生活は断じて確保し得ないと信ずるものでありますが、総理の御方針、蔵相の見解、
厚生大臣の
推進プログラムについて承わりたいと思うのであります。
続いて
物価政策についてお尋ねいたします。
国民生活と
物価政策とは
一心同体の関係にあることは申すまでもございません。すでに
安本長官も
物価政策を以て
国民生活を確保する考えであると申されておりまするが、その
物価政策について明確に承わりたいと思うのであります。我が国の物価は昨年の六月に比しまして、
卸売物価において五六%、
消費者物価において二五%騰貴したのでありますが、この
物価水準をどの程度まで低落させるという御方針でありましようか。
輸入品物価の見通しと
輸出品物価の
国際水準への
鞘寄せ政策とが、一方においては
財政膨脹の物価への撥ね返りとの関係において、如何に調整せられ、如何に総合して計画せられてありますか。具体的にお示しを願いたいと思います。又今後
防衛体制の漸進に伴いまして、
国内消費物資の
生産状況が如何なる影響を受けるでありましようか。又
国民所得計画の上に
賃金政策は如何にお考えでありましようか。
国民生活との関連性を中心に
安本長官の御答弁を得たいと存じます。
大蔵大臣は物価の前途は横這いと見ておられますが、その理由が承わりたい。又物価と金融は重大なる関係がございますが、
物価政策に対する
金融政策につきまして
大蔵大臣の方針を承わりたいと存じます。
次は生活の
合理化の問題でございます。我々
社会党本部派は、(笑声)單に
国民生活の切下げに反対するばかりでなく、
講和日本の成果として
国民生活水準の向上を要望いたすものであります。これがためには、あらゆる施策を集中いたしまして生活の
合理化を図り、近代的な明るい
生活設計を推進すべきであると考えるものであります。
耐乏生活よりは生活の
合理化をなすべきであります。衣食住に亘つてこれを科学的に検討し、経済的に、能率的に、又栄養的にも
一大改善を行いまして、生活を堅実化し、
従つて又生活を倫理化し、この面からして
国家再建の道を推進いたさねばなりません。如何なる程度の
生活水準を與えるかは、必然的に如何なる
生活様式を以てするかの問題とも相成るのであります。こういうことになりますと、内政にまずいと言われる
吉田総理もなかなかの御蘊蓄であろうと存じますので、
国民生活の改善に対する御所見をば承わつてみたいと存ずるのでございます。又
安本長官はその演説において
栄養改善を云云されましたが、何か具体的な政策がおありでございますか。一方では
栄養士法などを廃止し、又は
食品関係の
行政圧縮などが伝えられておりますことは、甚だ遺憾とするところでございまして、
国民栄養の問題につきまして
厚生大臣からも御答弁願いたいと存じます。我々は法律を以て再統制を言わんとするものではございません。併し、現在のごとく、一部目に余るところの
浪費頽廃の悪風潮をそのままといたし、非能率、不合理なる
生活様式をそのままといたしておきましたのでは、
生活水準の確保又は向上の問題も漠然と相成りまして、折角の努力も水泡に帰するわけでありまして、為政者の心すべき点ではないかと思うものでございます。
私は
天野文相に伺いますが、こういう世相におきまして
道義興隆を図ることは誠に困難ではないかと思うのでありますが、何と言つても衣食足るを第一とし、社会の流行、風俗に透徹した観察を行い、政治の
公平民主化とその文化性の高揚を強力に推進することは、当然の施策と考えるのでありますが、
国民生活いよいよ低下して
道義與隆の名案果して何かあるでありましようか。近時
社会道義の状態は如何にこれをお考えになりましようか。又
教育環境の問題として、
男女共学制の再検討、
兒童福祉の励行、特飲街の防止等につきまして、文相として何かお考えをお持ちでございましようか。又今日の学徒は
徴兵制の施行を非常に危惧いたしておるのでありますが、
防衛漸増の過程におきまして、将来
徴兵制が考慮されるでありましようか。又先に
戰争遺族の問題について、
出動学徒、
女子挺身隊等の犠牲者について文相の努力を期待申上げたのでありますが、如何相成りましたか。御答弁に預かりたいと存じます。
さて、
遺家族援護の問題につきまして
大蔵大臣にお尋ねいたさねばなりません。我々は、この問題は金だけの問題ではなく、全く
誠意如何の問題であると思います。今日までの経緯やその対策を見ますと、政府の態度に甚だ誠意の足らざる点を痛感いたすのでございます。
大蔵大臣は早くから二百億前後を予定し、
予算案提出の間際までその金額を抑え、非常に冷淡なる態度であつたと聞きますが、なぜさように冷淡なる態度をとられたのでありますか。この
質疑応答は国民と共に承わりまするが、特に広島県第二区に配付いたすつもりでおります。(笑声)又
閣議決定案を見ますと、
国家補償でもなく、
社会保障的でもない。これは如何なる理念に基く案でありましようか。一体お燈明料という考え方はどういう意味であつたのでありますか。又その金額の決定に当つても何を基準となされたのでありますか。誠に了解に苦しむものであります。(拍手)例えば両親に対する年金をなぜ一律にしないのであるか。又一千六百円を以てして
戰争未亡人の生活が保障し得るとどうしてお考えになりましたか。その他、
軍人恩給復活の場合との均衡、
文官恩給とのこれ又均衡の問題、
生活保護との比較の検討、又雇員、傭員の場合における旧
共済組合年金との
関係等を十分御検討の上、合理的な結論を出されたものでありましたかどうか。若しさようでないといたしますならば、いわゆるよい加減のお考えでありまして、それこそ誠意なき態度とのそしりを免れ得ないと思うのであります。いま一度考え直して見るとのことでありますが、政府は差当
つて既定の方法を実施し、漸次改めようというのでありますか。それとも
閣議決定は御破算にして、取りあえず一
往十万円の弔慰金を支出し、明年度より
本格的支給方法を考えようとなさるのでありましようか。蔵相及び厚相よりその
基本的方針を承わりたいと思うのであります。又最も重大なる問題は、今回の
支給対象の中には、
内地軍属、
徴用工、
動員学徒等を無残にも除外いたしておる点であります。これは如何なる理由に基くのでありますか。かかる
戰災援護は、殊に人命の
損害補償につきましては、最も公平を期すべきでありまして、一つには厚く、一つには薄く、特に一局部に限るがごときは、人道上大いに慣しむべきものと考えるのでございます。(拍手)政府は、改めてこれを考慮し、或いは
財源措置と睨み合せ、不公平なきを期するお考えはないのでありましようか。なお蔵相は前国会において、賠償費との関係があるということを言われたのでありますが、その関係について納得の行く御説明を望みます。又遺族の多くは生活の逼迫から
交付公債の現金化を急ぎ、それがために売り叩きに会い、損失をこうむることのないよう、如何なる御用意をお拂いになるつもりでありましようか。又
生活保護費の二十余億円が
援護費に振替えられるようでありますが、
生活保護費との併給はしないという考えでありましようか。なお本問題の実際処理には非常にたくさんの人手が要ると思うのでありますが、
本省関係におきましては増員の必要はないのでありますか。
厚生大臣に伺います。
戰争遺家族の援護と共に、元傷痍軍人の援護も重大なる問題であります。政府の対策は、
支給対象約五万、予算十九億円、その支給は七段階に分つとのことでありますが、一項症即ち両眼盲目に等しいもの又は両脚両腕切断のもので、一ヵ月僅かに四千五百円、二項症即ち食物を噛むことができないものや言語の機能を失つたものが、これ又僅かに一ヵ月四千円というのであります。これでは一ヵ月三千円の赤字となりまして、生活不能は言うまでもありません。特項症や一、二項症のものは附添を要する重症者でありますが、妻子ある者への考慮は如何なされるのでありましようか。これ以上支給額の再検討をするお考えがありますかどうか。又
右対象者の中には、軍属、
徴用工、
動員学徒、
女子挺身隊等を含むのでありましようか承わりたい。
厚生大臣の御答弁をお願いいたします。
未
帰還者の問題につきましては、
朝野なお心痛に堪えないところであります。その後、引揚促進について政府は如何に努力し、又
留守家族に対し如何なる援護の用意がありますか。
外務大臣及び
厚生大臣から御答弁を得たいと存じます。
ソ連政府は張る一月二十一日、
米国政府に覚書を送り、
戰犯以外は
日本捕虜は全部送還したと通告いたしたのでありますが、
日本外務省は昨年七月二十五日、なお生存する者七万七千と
生死不明者二万八千とを確認する旨報告いたしましたことは周知のごとくであります。この報告に対しソ連は何らの回答をしないままで、本年初頭
スターリン首相の対日声明があつたのであります。
吉田総理はこのメッセージに対し、「先ず捕虜問題を解決せよ」と応酬したようでありますが、近時一部に
スターリン圏との
経済取引に関し種々の動きがあり、又
世界経済会議の開催等が伝えられておりますが、この機会に、政府は未
帰還者引揚促進、即ち先ず
捕虜問題解決の要求との関係において、何らかの対策を進めるというお考えがあるのでありますか。場合によつては
世界経済会議への参加を許さぬという考えでありましようか。又ジユネーヴにおける
国連捕虜特別委員会参加の効果に対するお見通しについて、
外務大臣に承わりたいと思うのであります。
木村法務総裁にお尋ねいたします。戰犯として巣鴨或いは海外に抑留されている同胞の
助命歎願について
留守家族や
宗教団体等から悲痛なる運動が行われておりますが、
海外抑留者の
内地服役の問題、
死刑執行猶予助命の問題、
服役年限短縮の問題等につきまして、当局の努力をお聞きいたしたいと思います。又
死刑遺家族の援護につきまして、又
戰犯留守家族の
生活援護につきまして、何らか対策を講ずる考えがありますかどうか。
関係閣僚の誠意ある御答弁を得たいと思うのであります。
社会保険の確立につきまして
厚生大臣に御質問いたします。最近の重要問題といたしまして、一点単価の
値上げをいたしました。これが
各種保険の医療費に及ぼします影響は総額どのくらいになるお見込でありますか。その
保險経済に及ぼす結果が、保険料の引上げ、一部負担の加重となつて、被
保険者の利益を著しく阻害する虞れは果してないというお考えでありましようか。而もこの
値上げは暫定的であるということでありまするが、政府は今後再び
値上げをするという考えがあるのかどうか。又この際、
保険医制度の再検討、
診療報酬制度の改善についてどういう方針をとる考えでありますか。特に
医療給付に対する
国費負担は、政府としてやる考えか、全くやらない考えであるかどうか。
厚生大臣並びにこの点は
大蔵大臣のお考えをも承わりたいと思うのであります。
次は
兒童福祉の諸問題についてお尋ねいたします。
吉田総理は、先に
兒童憲章の制定を承知し、何を思つてか、
婦人兒童庁の設置を命じたとのことでありますが、政府の
兒童政策は実にひどい有様であります。
民生安定費の圧縮を遺憾とする我々を唖然とさせましたことは、僅かに五億の予算を今年は三億に削つたという一事であります。可憐なる兒童の養育費は
平衡交付金中で横領されており、去年から
値上げもなく、円滑に交付もされず、十五万の
保護兒童は政府から非常に虐待されておるのであります。
吉田総理のごとき近代の
文化政治家が(笑声)子供をいじめて平気でおられるわけはないと思います。(笑声、拍手)
厚生大臣と
岡野国務相は
平衡交付金問題で国会を欺くのでありますか。総理の面前でその責任を明らかにして頂きたいと思う。政府は当初の
予算内示には補助金にしておつたと言いますが、
岡野国務相、あなたが反対されたのでありますか。誰が反対したのでありますか。又
兒堂福祉に関する
地方行政もこれも縮小すると伝えられておりますが、果して事実でありますかどうか。御答弁をお願いいたします。
兒童福祉の重要なるテーマといたしまして、施設における満年兒童の
職業補導の問題がありますが、
厚生大臣はどうするおつもりでありますか。
保護受託制は
消極的糊塗手段でありまして、單に
徒弟制度を合法化したのみであります。是非とも根本且つ
総合的対策が必要であります。
パチンコをやめさせようとするならば
職業補導をするに限るのであるが、青少年の不良化を防止するには職業に就かせるのが最良の手段である。これら
少年兒童の
職業補導施策につきまして、
厚生大臣、
文部大臣、
労働大臣は何を協議し、如何なる成案を実行せんとするのでありますか。ここに明示されんことを望むものであります。
関連して
法務総裁に伺いたい。それは
人身売買の問題であります。最近悪質なる
人身売買が盛んに行われていることは御承知の通りであります。昨年一ヵ年におきまして、十八歳以下の少女六百七十四名が売買されたのでありました。従来は多く農家に売渡されたものが、近来はその五五%は特飲街に売られているのであります。福島県国警の報告を一例にすれば、昨年中に検挙した
人買い屋は四十名に上り、前年の二倍に増加したとのことであります。又、今までは二十歳前後の婦人を狙つたものが、近頃は十四歳から十八歳未満の少女を狙つているとのことであります。
婦人兒童の
売買禁止に関する一九二一年の国際條約に復帰すべき日本として、この対策をどうするお考えでありましようか。又
売春婦取締の問題は、
占領政策の関係におきましてあのようになつてはおりますが、
自主日本といたしまして放任しがたい問題と思われますが、
法務総裁は
売春婦取締法を提案する御意思がありますかどうか。又、
厚生大臣は、これらの対策、即ち転落の防止、闇女の
更生施策等について如何なる努力が携われてあるか、お示し願いたい。なお、
法務総裁は、人口問題とも関連し、闇堕胎の弊に鑑み、刑法の堕胎罪を廃止するの御意思があるかどうか、伺いたいと思います。
最後に
吉田総理にお尋ねいたしたい。それは
政権授受についてのあなたの御信念であります。あなたは、いつも
政権授受のルールを明々白々にすることを以て
民主政治の要締であると主張し、
芦田内閣の出現に対し非難されたことがあると記憶いたしております。政権の
たらい廻しは国家のためにとらざるところという御信念でありましよう。一体、今日の憲法におきましては、一旦衆議院において絶対多数を占むる以上、如何なる失政が堆積しても任期中は内閣更迭の必要はないというお考えでありましようか。民心なお内閣にあるか、すでに民心吉田内閣を去つて清新溌剌なる新政治を望みつつあるか、何によつてこれを察知することができましようか。あなたは衆議院において人心なお我々にありと豪語されましたが、これはあなたの独善ではありますまいか。衆議院に過半数を占むる内閣の進退は吉田内閣が最初でありますだけに、参議院はその任務において重大なる決意を持たなければなりません。内閣の進退、
政権授受のルールにつきまして、総理の御所信を承わりたいと存じます。
以上を以て私の質問を終ります。(拍手)
〔
国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕