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1952-01-26 第13回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年一月二十六日(土曜日)    午前十時十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和二十七年一月二十六日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。(第三日)  昨日に引続き、これより順次質疑を許します。岡本愛祐君。    〔岡本愛祐君登壇、拍手
  4. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 緑風会を代表いたしまして、吉田総理大臣以下関係国務大臣に質問をいたします。  連合国占領下にあること六年有余の我が国は、平和條約によつていよいよ近く再び独立を取戻し、新生民主主義平和国家として国際社会に復帰するのであります。併し他方よりこれを見れば、平和、安全保障両條約によつて、我が国は中立の立場を捨て、民主主義国家の陣営に投ずるのであります。而して民主主義陣営国際連合軍朝鮮戦線に送り、北鮮共産軍中共軍等共産主義陣営と戰つているのであります。目下進行中の休戦会談が曲りなりにも成功すれば幸いであるが、不幸にして休戰交渉が決裂した場合は更に事態は悪化するのである。チャーチルイギリス首相は、去る十七日、米国上院下院合同会議で演説し、米英両国は、休戰が失敗した場合には、速かに断固且つ有効な対抗措置に出ることに意見の一致を見ていると中共に警告しております。又外国電報の伝えるところによれば、万一休戦協定成立後、共産陣営がそれに違反した場合には、中国大陸の鉄道、補給中心地、発電所その他軍事目標国連空軍集中攻撃の的となるであろうと言つております。万一かかる不幸な事態になつた場合においては、共産陣営側も米軍の日本における基地に対して攻撃を加える事態を生ずることは明白であります。若しこの場合原子爆彈我が国民の頭上に投ぜられることがあるとすれば、我が国民に恐るべき損害をもたらすことは又明白であります。私は先日広島市の原子爆彈落下地点にある原爆記念館を訪ね、当時の広島市人口四十数万のうち実に二十六万人の犠牲を出したことを再認識して慄然としたのであります。原子爆彈による犠牲の恐ろしさは、身を以て体験した日本人が世界中で最も痛切に感じておるのである。(「その通り」と呼ぶ者あり)日米安全保障條約で当分の間日本の国土を米軍に守つてもらうことは、不本意ながら止むを得ないのでありますが、その結果原子爆弾で数百万の非戦闘同胞が殺戮されるに至ることは絶対に避けなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)昔の言葉に「国破れて山河あり」と言いますが、「国存して国民なし」という状態に立至つては大変であります。  そこで総理大臣お尋ねをいたしたいのであります。チャーチル首相は私と同じ心配を持つてトルーマン大統領と会談して、非常の場合に際し、米軍のイギリス基地の使用は米英共同決定によることを確認し、これを世界に宣言したのであります。それと同様に吉田総理大臣は、日本に駐留する米国軍中共基地を爆撃するために日本の基地を使用するようなことがある場合には、必ず日本に協議せとめることを交渉する用意がありますかどうか。(「はつきり聞いて下さい」と呼ぶ者あり)  次に、総理大臣は、その場合に日本の米軍基地原子爆弾使用の基地とすることを拒絶する御用意がありますか。又私は、少くとも米軍が駐留し又は使用する基地の周辺の市町村に対しては、速かに民間防衛の態勢を整えしめ、人命救助災害防禦等に当らしめる必要を痛感するのでありますが、総理大臣は如何にお考えになりますか。すでに東京都下の基地におきまして、米軍飛行機が爆彈を載せたまま墜落し、大災害が発生した事実があるのであります。この原子爆彈攻撃の問題は、なまやさしい問題ではありません。両條約の発効に当つて、日本国民にとつて最も大きな心配事であります。総理大臣が一身を賭してその解決に当ることこそ国民に対する最大の義務ではありませんか。総理大臣の善処を強く要望するのであります。  次に、ラスク米国特使は、米国側行政協定試案を携えて今朝日本に到着したはずであります。ここにいよいよ行政協定に関する交渉が開始されるのであります。これに対処して日本政府側でも、米英間の協定、米とフィリピン間の協定等の例によつて、行政協定の試案乃至は米国側の申出に対し、主張すべき意見がまとめられているはずであります。現に昨朝の朝日新聞にもその輪郭が掲げられているのでありますから、この際、岡崎国務大臣から日本側の主張の大要をお話願いたい。行政協定は実は日本が完全な独立国に復帰した後に締結するのが本筋であつて、今これを締結するのは便宜上の問題であります。(拍手)併し今協定するに当つても、もとより日米対等の立場に立つて締結すべきは当然でありまして、米国側の強圧に屈してはならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)今朝の毎日新聞によれば、AP通信は、米軍部日米安全保障條約の行政協定平和條約発効に優先させたいと考えている理由は、平和條約発効後日本側米国大使を利用して駐留米軍司令官の権限を抑えたいとの誘惑を感ずることを惧れ、あらかじめそのような事態の起る余地のないようにして置こうとするものであると伝えております。行政協定については、両條約特別委員会で審議の際私より強く要望し、吉田総理大臣も又確約されました通り、憲法に牴触するがごとき協定は嚴禁であります。又法律を要し、予算の編成に待つを要するものは、必ず国会の議決を経て初めて協定の効力を発するように措置されることを要望いたします。(「軍事基地は提供しないと言つたぞ」と呼ぶ者あり)又米軍の駐留は成るべく大都会の地を避け、諸種の紛争、延いては日米間の悪感情を発生するようなことを未然に防ぐ用意が必要であります。又米軍の地区又は設備の使用は最小限度とし、元来国の所有であつた地区又は施設であつても、すでに地方公共団体民間産業の利用に供しているもの、並びに近く民間企業の利用に供せられ、大いに我が国産業の発展に費する既存の計画のあるものは、できるだけ接收を避け、今まで数年間の建設の努力を無にしないように留意せられたい。いわんや、行政協定の進行中に既成事実を作り上げるため、これら転換施設賠償解除、又は軍事返還施設等を、行政協定の成立を待たず、強制的に再接收するがごときことは、絶対に拒否しなければならないと存じます。以上につき岡崎国務大臣の答弁を求めます。  第二に、中国との国交回復の問題についてお尋ねをいたします。首相は昨日、ダレス大使に対する昨年十二月二十四日附首相の書簡に関する初生議員の質問に対して、右書簡は米国議会における批准を速かならしめるものであるからとのダレス氏の希望に応じ、総理大臣の意見をこの書簡にしたためて出したので、決して米国側の圧迫によるものではない旨を答弁せられたのであります。この総理大臣の意見は不幸にして本院の両條約特別委員会では明らかにせられなかつたのであります。又その後も秘密に付せられ、漸く米国上院の両條約審議の直前、一月十六日に至つて発表せられたのであります。何故にかくのごとく秘密にする必要があつたのか。日本が中国政権として中共政府を選ぶか国民政府を選ぶかは、我が国の将来の外交上、貿易上、大関係のある最も重要な事柄であります。従つて全国民は深くこれに関心を持ち、列国側も又これを注視していたのであります。本院の両條約特別委員会においてもこの問題につき各委員からかずかずの質疑が発せられ、総理大臣はその都度今後の国際関係の推移を見て愼重に考慮する旨含みの多い答弁をしていたのであります。然るに十二月十八日参議院において両條約の承認を可決した後一週間を経ないのに、突如として総理大臣の独断でかかる重大な決定を行なつたことに対し、私は深く遺憾とするのであります。(拍手)私は、否、全国民は、この重大問題について不意打ちを食つた感が深いのであります。(「国会を無視しているぞ」と呼ぶ者あり)そうして国家の運命が国民の知らぬ間に政府の一存で決定せられていたという大きな不満を感じているのであります。(「独断政治だ」と呼ぶ者あり)総理大臣は、これは国会の承認を経べき義務はない、一々国会に報告する義務もないと言われますが、特別委員会で審議の当時、総理大臣の意見がまだ決定されていなかつたならともかく、総理大臣の意見が決定していて、而も国民の代表たる我々委員には秘密にせられ、これを批判する機会が失われたのであるとすれば、それは旧態依然たる秘密外交であつて民主政治ではないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)誠に不都合であると言わざるを得ません。何故秘密にする必要があつたのか。秘密にせられていただけ、或いは米国側の圧迫があつたのではないかという懸念が持たれるのであります。(「懸念でない」「事実だ」と呼ぶ者あり)これらにつき総理大臣の弁明を求めるのであります。  次に、この総理大臣の決定は、国民政府を中国の統一政府とみなし條約を結ぶというのでなく、限定された地域を領土とする国民政府平和條約を結ぶものであるのでありますか。一月十六日書簡の発表に際し、総理大臣の代弁者である増田自由党幹事長は、この條約は、現に国民政府支配下にあり、又今後支配下に入るべきすべての領域に適用されるものであると言つております。この言よりすれば、台湾の国民政府中国全土正統政府とみなして條約の相手方とするのではなく、差当り台湾だけの政権として相手にするものと解せられますが、果して然りでありますか。又そうとすれば、中国本土を領土とする中共政府との関係はどうするつもりでありますか。(「明確にしてもらいたい」と呼ぶ者あり)総理大臣は、ソ連と中国北京政府との條約が日本を仮想敵国として結ばれ、又現に国連が北京政府を相手にして戰争状態にある今日において、日本政府だけが中国北京政府講和交渉に入ることができないと言われますが、私は北京政府を全然相手にせずと言うのではなくて、日本はそれらの支障が除かれることに努力して、北京政府とも成るべく速かに事実上の友好関係に入り、中共貿易を促進せしめる必要があると信ずるのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)総理大臣の御方針は如何であるか、伺いたいのであります。(「輿論だ」「世論だ」と呼ぶ者あり)  第三に、自衛力拡充の問題についてお尋ねいたします。政府は明年度予算案において、警察予備隊費五百四十億円、海上警備増強費七十億円を計上し、三万五千人の予備隊員及び八千人の海上保安隊員の増強を計画しておられます。警察予備隊員三万五千人、海上保安隊員八千人の増員は、如何なる基礎によつておるのであるか、米国側と打合せの結果、取りあえず予算を工面して増強したというに過ぎないのではないか。大橋国務大臣警察予備隊について、差当りの計画として現在の国力の許す範囲内で三万五千人を増加したと言い、而も二十八年度以降の増員は、現在のところでは計画がない、将来内外の状況を見て考慮すると答弁されました。併し警察予備隊の性格は、仰せのごとく国民の権利と自由が正しく守られるため、独立国として国内の治安を維持し、公共の福祉を守るためのものであり、対外関係のものではありません。対外関係は当分の間米軍が担当してくれるのでありますから、そこに我が国が自主的に決定し得る国内治安維持力拡充の目安がなければならないのであります。これは別に米軍の駐留計画と睨み合せる必要はない。従つて政府警察予備隊増強年次別計画を立てていなければならないと存じます。若しそれがないとすれば、三万五千人の増員はでたらめであり無責任であると言われても仕方がないのであります。(拍手)巷聞伝えるところによりますと、岡崎国務大臣が中心になり、旧軍人の某々を参謀として自衛計画が立てられつつあると言われております。大橋国務大臣は、昭和二十八年度において予備隊員を三十一万人に増強することは全くのデマで、全然根拠のないことだと言われますが、米国側から予備隊員充実の目標としてその程度の要望又は期待があつたのではないか。私はかかる期待は余りに過大であると思うのであります。大戰以前の我が国平時兵力は二十一個師団、二十一万人であつたことを思い合せれば明瞭であります。又海上保安隊員八千人増員の根拠はどこにありますか。その米軍駐留期間内の最高目標はどの程度でありますか。海上保安庁関係の船舶その他の充実計画についてお伺いいたします。(「はつきり答弁しろ」と呼ぶ者あり)世上、警察予備隊員海外出動が要請される虞れがあるとか、海上保定隊員が国連側に動員せられる計画があるとか噂されておりますが、私は両條約審議の際に、総理大臣大橋国務大臣が答弁せられた通り、かかることは絶対にあり得ないと信じたいのであります。以上につきまして大橋国務大臣及び村上運輸大臣の御答弁を求めます。  更に、我が国が完全なる独立国である以上は、永久にアメリカ軍に駐留してもらうことは当然できないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)日米安全保障條約の前文に明らかなごとく、この措置は暫定措置であり、アメリカ側も、日本が直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うことを期待しているのであります。而も国際連合憲章の枠内における集団的安全保障の方式によれば、同盟国は集団的に自衛することとし、おのおの自国の軍備を充実し、お互いに助け合つて共同防衛をするのであります。早晩我が国国際連合に加盟し、又国際連合加盟が実現する以前においても、連合憲章第二條の義務を平和條約上の義務として受諾する以上は、我が国限つて永久に軍隊を持たずして、自分の危いときは他国から助けてもらうが、他国の危いときは軍隊がないから助けないということは、国際協力の建前上できないのではないかと私は存じます。よつて総理大臣に次の諸点をお尋ねいたします。  総理大臣は、米国軍撤退の時期においてもなお再軍備を必要としないとお考えになりますか。次に再軍備に当つては全国民の意思に問い、憲法を改正することが絶対に必要と私は考えるのでありますが、総理大臣は如何にお考えになりますか。総理大臣は、現在以上の増税を要し、又は国民の生活水準を引下げるような條件の下においては、自衛力の拡充は絶対にやらないと言明される用意がおありになりますか。以上につき総理大臣の明確な御答弁をお願いいたします。  次に警察予備隊の対象である国内治安の現況についてお尋ねいたします。国内治安の確保こそは我が国産業進展の基盤であり、総理大臣の期待する外資導入前提條件でもあります。然るに我が国国内治安の状況は決して楽観を許さないのであります。一月十五日発行の日本週報によれば、昨年十月日本共産党は第五全国協議会を開き、その戰略目標反米民族解放に集中せしめるための新綱領を採択し、日共はこの新綱領によつて今後一切の闘争を暴力闘争に向けることとし、別に武装行動綱領を決定したと言い、武装行動綱領の全文を載せて我々は直ちに軍事組織作つて行動を開始しなければならないと結論していると報道しております。果してかかる事実があるのであるかどうか。徳田球一君以下多数の共産党の被疑者はいまだにその足跡をくらましておる状態であります。又法務府特審局では日共テロ化を重視して、目下全国会議を開催し、緊急対策を講じておることを報じております。又一方、講和條約発効後、極右団体極右活動が活撥化する徴候が見えておるとも伝えられております。その他種々のデマ風説が乱れ飛んでいて、国民は国内治安の状況について半信半疑であります。甚だしいのは、自衛力増強の予算を通過せしめるため、又は治安機構を強化するため、当局が特に声を大にして危險を叫んでおるのだというような説をなす者すらあるのであります。(「その通りだよ」と呼ぶ者あり)この際、木村法務総裁及び大橋国務大臣から現在の治安状況について詳細な御説明をお願いいたします。  又木村法務総裁は、治安機構の強化を図るため警察予備隊海上保安隊とを所管する治安省又は国防省を設け、一方、国家地方警察法務総裁の所管とし、特審局と併立せしめる案を持つておられると新聞紙は伝えておりますが、果してそうであるか、お伺いいたします。治安機構の強化を困るに際しては、断じて警察国家の再現に陷るとの非難を招く虞れのないよう万全の用意を要します。現行警察法では国家公安委員会及び国家地方警察隊内閣総理大臣の所轄の下に置かれております。而して「所轄の下に」とあるのは指揮監督の権限の最も弱い態様を表現しているのであります。然るに実際上は警察法に何らの根拠のない国務大臣総理大臣の一片の計らないで担当大臣となつておる現況であります。これは甚だ不当であります。殊に、曾つてあつたごとく、国家地方警察だけを担当する国務大臣を置いたことは、人物によつては甚だ危險であります。選挙干渉とか政治策動とか等の虞れが生ずるのであります。私は法務総裁たる国務大臣に対し、国家公安委員会及び国家地方警察隊を所轄するところの総理大臣の権限を代行せしめる法制上の根拠を明白に警察法に規定して、法務総裁国家公安委員会との関係を現在の総理大臣国家公安委員会との関係と同様とすれば、この問題は解決し得るのではないかと考えます。又然る後には、現在法務府にある特審局国家地方警察本部と一本とし、情報網が二種類に分れて混雑し、却つて反撥弱体化しつつある欠点を除去すべきものであると考えます、木村法務総裁の御答弁を求めます。次に、明年度予算のうち、防衛費及び講和関係費に関し二、三の質疑をいたします。  明年度予算総額八千五百二十七億円は補正後の本年度予算総額に対し五百九十億円の膨脹であります。政府は一般会計予算をこの程度で抑えたことを成功としているようでありますが、明年度予算膨脹の最大の原因は、申すまでもなく防衛費及び講和関係費が二千三百六十一億円に上り、本年度の一千三百六十五億円に対し約一千億円を増加したのによるのであります。我が国自衛力の増強、賠償、外債の安排、ガリオア、イロア資金等の返還は、国民の生活水準を引下げない範囲内において行わるべきものでありまして、特に、賠償を行い、その他債務を履行する限度は、平和條約第十四條によつて、我が国が存立可能な経済を維持すべき範囲内、即ち生活水準を低下せしめない範囲内に限定しているのであります。然るにこれら防衛費及び講和関係費が一千億円も激増することは、生産的な支出を妨げるばかりでなく、生産力の拡充に役立たぬ不生産的な消費支出を増大するものでありますから、インフレ再燃の原因となり、延いて間接に国民の生活水準を引下げる原因となるのではないか。従つて総理大臣が自認している脆弱な自主経済の基礎を危くする虞れがあると存じます。これらに対する所信とインフレ対策に関する大蔵大臣の方針をお尋ねいたします。  次に、大蔵大臣は、日米安全保障條約による米国軍駐留費の分担金として防衛支出金六百五十億円を計上し、「その内容は近く行政協定で具体的にきまるが、米軍の装備、食糧、被服及び給與等は米国で負担し、その他の経費については両国で分担することと予想される」と言つておりますが、米軍駐留実施細目を定める行政協定の内容が定まらずして防衛支出金額を算定するのは甚だ乱暴であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その内訳の大略を示されたい。又米軍の駐留は集団安全保障の方式によるもので、東洋の平和と安全を最大の目的とするものでありますから、成るべく日本の負担分を軽減するよう努力せられたいのであります。又安全保障諸費五百六十億円は「営舎の建築等について特段の措置を講ずると共に、治安に関する機構の確立、学校その他教育関係機関設置等をも考慮したものである」と言つておりますが、内容甚だ不明瞭であつて、金額も余りに巨額に過ぎ、納得しがたいのであります。改めてできるだけ詳細な内訳を示して御説明を願いたい。  次に戰死者遺家族及び戰争による傷病者に対する援護措置について、政府は遺家族年金その他として二百三十一億円を計上するほか、交付公債約八百八十億円を以て遺家族の一時金に当てるにとどめておつたのであります。これに対し当面の責任者であつた橋本厚生大臣は、援護費三百五十億円、交付公債一千億円を主張し、容れられずして辞職するに至つたのであります。大蔵省案厚生省案とはその差八十億であつて、厖大な千八百二十億円の防衛費の中からでも何とか差繰りのできたものではないかと考えられます。橋本厚生大臣が辞職の声明におきまして言つておる通り、戰死者の妻や、子や、老父母等に対して、戰死者に代つて扶養の責任を果すこと、又傷病軍人をしてその日の生活に窮せしめないことは、いやしくも独立国家たる限り、その第一日から国家の果すべき最小限度の義務であると私も信ずるのでありまして、祖国の防衛を全うするには、社会保障制度の確立と共に、この義務を果すことが最も必要であります。大蔵大臣は何故八十億円の追加措置を惜しんだのであるか。今からでも遅くはないのであつて、更に善処するよう考慮するところはないか。弁明を求めます。  次に青少年性生活の紊乱について質問いたします。香川県の中学生妊娠中絶事件、青森県の同様事件、その他各府県において思春期少女の無茶な性生活が発見せられた由で、これが事実とすれば甚だ憂慮すべき状態であります。私は第九国会においてこの本会議場において、青少年の犯罪や破廉恥な行動についての質問をいたし、その原因は、自由主義のはき違いと享楽第一主義、従来の道徳の軽視と風俗習慣の蔑視、教育の欠陷、社会秩序の混乱に原因があり、当局が、社会の規律、新道徳、正義感の涵養を怠つていたからであると指摘をいたしました。文教刷新と卑猥極まる性生活雑誌等で刑法上の猥褻罪に該当するものの嚴重な取締を要望したのであります。そうして青少年不良化防止に対し、総理大臣初め関係各大臣に警告し、その具体的な対策を質しました。而して各大臣からそれぞれ答弁するところがあつたのでありますが、一向にその実が挙らない。青少年の犯罪はその後減少するどころか、依然激増しておるのであります。而して今又更に十三四歳の中学生妊娠事件等少年少女性生活の無軌道が全国的に起つたというようなごときことは、実に慨歎に堪えないのであります。政府は速かにこの悲しむべき状態に対し、一日も早く有効適切な措置を図らなければならない。文部大臣は、果して、新聞雑誌等に報道されておるかかる事実が全国的な現象であると確認しておられるのであるかどうか、又その具体的な対策を如何にして施されるのかどうか、お答えをお願いいたします。  最後に、米麦統制の撤廃その他米麦の問題について農林大臣に質問いたします。第十国会で麦の統制撤廃の案が不成立に終つたのにもかかわらず、政府は米まで統制を外す方針を決定したことは誠に意外であつたのであります。本院で否決の運命を見るまでもなく、総司令部の容れるところとならず、取止めとなつたのは当然と言うべきであります。併し今後の情勢如何によつて撤廃を実施する意向が依然あるようでありますが、政府の方針はどうでありますか。我々も事情が許すならば統制を解くことにはあえて異論はないのであります。併しその時期はまだ到来していないと思うのであります。我が国が脆弱な自主経済の上に立つておるとき、自由販売による米価の暴騰は悪性インフレの要因となり、経済自立に大きな障害となるばかりでなく、消費地の産地買いあさりで米価は上る一方となり、消費者は苦しみ、国内治安の紊乱に拍車をかけることとなるのであります。しかのみならず、我が国現下需給状況は決して楽観を許さないのであります。これらの心配のなくなる時期を待ち、法制を整え、万全の対策を立てて後撤廃すべきであると信じますが、農林大臣の方針は如何でありますか。次に、政府は米の供出は順調であり、食糧輸入も好調だと言つているが、果して右のごとく楽観してよいか。昨年産米は近来にない不作で、五等米を含めて漸く六千万石を維持するに過ぎません。供出割当の基礎となつた生産見込よりも実収高が減少した今日、二千五百五十万石の供出確保は困難ではないか。特に西日本地帶では大幅の減額補正を要求しておる実情であります。輸入の面を見ると、外米の買付は必ずしも楽観をすることができない。外麦のほうは物量的には問題はありませんが、その買付先が、アメリカ、カナダ等のドル地域である関係上、外貨の面から制約を受けはしないか。二千五百万石程度の供出が確保され、外米が或る程度輸入できても、本年の米を食う率は非常に低下をいたします。特に下半期において著るしい。その現象は消費地において殊に甚だしくなるであろうと思われます。かような情勢下において政府は麦の統制を外すつもりであるのでありますか。麦の統制を外せば、政府がみずから麦を米産地に送り、米を消費地に送り出す操作は困難になります。この意味で麦の統制撤廃も又愼重な考慮を要するものであると思いますが、如何にお考えになりますか。次に、政府は食糧の増産を呼号しておられますが、その中心は価格の問題であります。然るに米価は米価審議会の最低石当り七千五百円とするという答申を無視し、政府は七千三十円に独断的に決定しておられます。政府は、米価を根本的に再検討し、増産を図る意思はありませんか。日本の食生活は米と麦とに頼らなければならないが、麦の対米価比率を引下げる政府の方針は食糧増産の方向に反しておると思います。米麦の価格に対する農林大臣の根本方針をお尋ねいたします。  以上を以ちまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕
  5. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えいたします。  爆撃の危險について縷々御意見がありましたが、私もこの日本の爆撃の危險については絶えず注意を拂つて、報告等、新聞その他については研究いたしておりますが、併し今日、日本としては如何なる危險状態におるかという実際については、何ら政府としては承知しておるところはないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)が、これはやがて安全保障條約、行政協定とか、或いは占領が終つた場合におけるいろいろな引継ぎのうちに、外界の危險状態はこうこうかくあくと米軍の報告をやがて入手する機会があるであろうと思いますから、そのときに十分研究いたします現在のところは安全保障條約で一応保護せらるると考えております。  又中国問題についていろいろお話がありましたが、この台湾政府との間に或る條約を結ぶということと、平和條約にいわゆる中国政府中国を代表して、そうして日本平和條約に入り込むという、その政府とは意味が違つております。現在台湾政府が或る地域において統治の実権を握つて統治をいたしておる。その事実に基いて、善隣の関係から、その関係をよくするためにこの條約を結ぶというのであります。そこで昨日も申した通り、私のダレス宛の書簡は、即ち上院における平和條審議を促進するに便利であるというから発表いたしたのであります。これは昨日詳しく申述べております。併しながら、これを以て、これらの台湾政府と或る條約に入つたとか、或いは中共日本に対する態度を改めざる限りは台湾政府同様の條約に入り込むことができないと申すことは、これを以て中国との関係が打切られたわけではないのであります。中国日本との関係は御意見通り地理的にも歴史的にも親密な関係があるのでありますから、この関係は時と共に成るべく早く改善いたしたいと思いますが、現在においてはできないというだけのことであります。これを以て打切られたのではありません。中国との関係はなお注意をいたして改善いたす考えであります。  又再軍備についてお話がありましたが、再軍備は私は今日のところは財政的にこれを許さない。軍艦一艘造つても、飛行機を造つても、日本の財政は引つくり返るとは申せないが、併しながら非常な負担になる。増税も止むを得ざることになりますから、国力の許すと共に、国力の発達と共に漸増すると、この趣意で参りたいと思うのであります。今日は再軍備をいたす考えはございません。故に安全保障條約を結んでおるのであります。再軍備をいたす場合には憲法その他のことを考えなければなりませんが、併し私は今日のところ、政府は再軍備考えておりませんから、この問題は憲法改正等の問題はないのであります。  その他は主管大臣からお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手
  6. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定について御質問がありましたが、この交渉は無論米国側に強圧されるというようなことはありませんし、全く平等の立場において話合いを行うのであります。日本側の各種の腹案は我々のほうでも無論研究をしておりまするし、準備もありまするけれども、これから話合いする前にこういうことを申上げるのは適当でないと思いまするから、これは差控えます。  なお、駐留地とか、施設とか、各種の問題について御意見をお述べになりましたが、これは十分承わつておきます。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手
  7. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 自衛力の漸増の年次別計画に関して御質問を頂いたのでございますが、警察予備隊増強につきまして決定いたしておりまする計画は、二十七年度予算に現われておりまする三万五千増員のそれだけでございまして、二十八年度以降については、昨日も申上げましたるごとく、何ら計画の定まつたものはございません。将来内外の情勢、国力等を勘案いたしまして計画いたすつもりでございます。御質問中に、予備隊は国内治安のものであるから自主的に決定すべきものであると、かような御意見でございました。この点は私も全く同感に存じまするが、但し安全保障條約によりまして、米軍は、政府の明示の要請により、国内治安の面におきましても重要なる機能を分担いたすことになつておるのでございまするから、警察予備隊の今後の計画に当りましては、米軍駐留の細目と睨み合せて決定する必要あるものと考えておる次第でございまして、政府といたしましてはこれらの事項をも考えまして、将来の計画を定めたいと存じます。  次に日本共産党の昨年決定いたしたと言われておりまする武装蜂起の問題でございまするが、日本共産党は、昨年二月第四回全国協議会、次いで十月第五回全国協議会を開催いたし、当面の武装蜂起の準備工作について討議を行なつた模様でございまして、先般発行停止処分を受けました同党非合法の機関紙でございます内外評論の第十五号昭和二十六年三月十五日付のもの、及び共産党の党内資料でありまして昭和二十六年十月二日付の「我々は武装の準備と行動を開始しなければならない」という表題のものがございまするが、これには、それらの決議内容を收録してあるものと認められるのでございます。これらを要約いたしますると、工場、農村、山岳地帶等に拠点を設定いたし、いわゆる地域人民闘争によつて大衆の抵抗自衛組織を結成しつつ、軍事技術の普及パルチザン闘争の準備訓練を行い。これを拡大強化しつつ蜂起の時期を狙うというものでございまして、当面の闘争段階を長期に亘る防禦段階と規定しつつ、各種の妨害、破壊、爆発、襲撃等を企図いたしておるのでございます。この方針に基きまして現在全国的に非合法裡にその準備工作が推進されつつあるものと認められるのでございまして、政府といたしましては、この種の非合法的な尖鋭的動向に対しましては、万全の対策を考慮いたしておる次第でございます。(拍手、「なかなか詳しいものだね」「勝手に作つたんだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣村上義一君登壇、拍手
  8. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) お答えを申上げます。岡本さんの御質問の要旨は二点あつたと記憶いたすのであります。一つは、海上保安庁の今後数年間に亘る拡張計画について、いま一点は、海上保安庁で米国の輸送船を護衛してハワイその他の地点に行くというようなことがないかというようなお話があつたと存じます。  先ずこの海上保安庁は、御承知の通り沿岸及びその海面における種々の仕事を総合的に処理して、その保安に当るというのが任務であります。いわゆるコースト・ガード主義を採用することになつたのであります。で、従来の燈台或いは標識の設定或いは取換えというような仕事、海図の作成、或いは潮流に関する諸般の調査というようなこと、更に海難の救済というようなこと以外に、漁船の保護でありますとか、密入国の防止とか、或いは密貿易の防止であるとか、更に又本年の初めから我が国に委讓せられました航路の安全宣言に従事する仕事をする。これには勿論、浮流機雷或いは磁気機雷等の発見除去を完璧ならしめ、然る上に航路の安全宣言を世界に向つてするという権能及び任務であるのであります。こういう諸般の仕事を一万マイルの沿岸並びにその海面に亘つて保全して行くということにつきましては、現在の海上保安庁の人間及び設備では誠に不十分でありまして、手薄であり、又欠陷がないと言えないのであります。それで、現在八千人の職員のところに、二十七年度においては六千人増加するという計画を立てたのであります。(「行政整理はどうした」と呼ぶ者あり)なお巡視船であるとか掃海船であるとかいうようなものにつきましても、一部新造をやりたい。併しながら警備は十分でないのであります。借入、艤装を要するものがあると思うのであります。で、要するに、これら複雑な広汎な任務を途行するためには、二十七年度予算の遂行によりましても、なお不十分たるを免れないのであります。なお、船の新造でありますとか、或いは又小型飛行機とか、レーダーとかいうようなものを活用し得るならば、一層その設備の欠陥を補い得るだろうと考えておるような次第であります。二十七年度予算計画でなお不足しておる分は、成るべく近き将来において充実したいと念願いたしておるのであります。併し数年間に亘つてという御質問のようでありましたが、その後のことは何ら今考えておりません。  なお第二点の、海上保安庁の所属船が米国の輸送船をハワイまで護衛して行くかというようなことは、全然そういう事実はありません。又そういうことをやる実力は実際ないのであります、御了承を願います。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手
  9. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  内地の治安状態は表面一応平静を保つておると申すことができます。(「資料を出せ、資料を」と呼ぶ者あり)但し一方内部に立至りますると、なかなか容易ならざるものがあります。一部過激分子が国際社会党と共産党と互いに手を取つて暴力革命をやらんとする動きがあるのであります。なかなか容易ならざることがあるということを諸君に申上げます。(「取消せ」「えらそうなことを言うな」「黙つて聞け」と言う者あり、その他発言する者多し)国民はどうぞこのことをしつかり胸に置いて頂きたいのであります。これは我々は何としてもこの日本治安を守らなければならんと思つております。我々はこのことについては、十分当局と共に対処いたしたいと考えております。武装行動綱領、これらのことにつきましては、只今大橋国務相から申上げた通りでありまするが、この文書につきましては、何人がこれを交付し、又如何なる背景の下にこれを交付したかということは未だわかりません。併し目下これらのことについては十分に調査中であるということを申上げたいと思います。  治安機構の問題につきまして申上げます。これは只今申上げますように、これらのことに対処して十分機能を発揮しなければならんと思つておりまするが、従来の特審局、或いは自警、国警、これらの調整が問題であります。私は徒らに機構をいじることはいたしません。この調整連絡を十分にとりまして、そうしてこの機能を十二分に発揮いたしたいと考えておるのであります。岡本君より、この公安委員に対する総理大臣権限法務総裁に一部委壤したらどうかというようなお話がございました。これも尤もな御意見考えまするので、十分に考慮いたしたいと思います。その他機構の問題につきましては、只今申上げました通り、まだ成案を得ていないのでありまするが、十分なる機能を発揮すべく考慮いたしたいと考えておる次第であります。さよう御了承願います。(拍手、「内容がないくせに何を言うか」「問題にならん、何とかしなさい」「議長、待つた」「ちよつと答弁待つた」「どうするのだ、今の問題は」その他発言する者多し)    〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手
  10. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。  昭和二十七年度予算総額八千五百二十七億円のうち、国際関係並びに治安関係経費は二千三十三億でございます。而して昭和二十六年度予算総額七千九百三十七億円中、治安関係並びに国際通貨基金加入の二百億円を加えまする国際関係経費は千五百九十六億円でありまして、その差額は五百億円余りであるのであります。而して五百億も殖えたから国民生活を不安定に導きやしないかという御懸念でございまするが、これは昨日もお話を申上げましたように、国内関係経費は、今年度は六千三百四十億円であつたのが、来年度は六千四百九十四億円と百五十数億円殖えております。而も内政費にあつた外為関係の繰入八百億円が三百五十億円に減りおした。社会保障関係、労働関係でも二百五十億円近く今年度より殖えるのであります。又治山治水につきましても百十一億円も殖えます。農林水産関係のほうにおきましても百四十億円増加いたしまして八百億円を計上するという状態でありまして、経済力の確保、国民生活の安定には差支えのないようにできておるのであります。(「昨日聞いた、それは」と呼ぶ者あり)而して又、こういうふうにして行きますと、例えば治安関係経費とか国際関係経費がたくさん要るからインフレになりやしないかという御懸念でございまするが、従来通り一般会計並びに特別会計、政府関係機関を通じて、絶対均衡予算で行つておりますから、一般金融機関のほうにおきまして政府の施策に順応してやればインフレになる虞れは万々ないと思いまするが、併し脆弱な我が国経済でございまするから、外国の情勢によりまして非常な変化を来たすことがないとも限らないのでありまして、従いまして財政演説で申上げましたように、インフレの起らないように、国民生活安定に害の起らないように随時施策して行きたいと考えておるのであります。  次に講和関係経費の内訳につきまして、防衛支出金安全保障諸費につきましての御質問でございまするが、これは財政演説或いは昨日の答弁通りでございまして、(「何も言わない」と呼ぶ者あり)自衛権を行使する有効な手段を持たない我が国といたしましては、自衛のために暫定措置として米国軍駐留を望むのであります。米国軍駐留に対しまして我々が応分の負担をすることは私は当然であると考える。而して六百五十億円の算定の基礎につきましては、私は大体各国のいろいろな例を見まして、一応不動産の借入料はこつちで拂う、あとは半分ずつ、こういうことに考えているのであります。而も又、六百五十億円が日本の財政状態からして背負い切れないほどの問題かと申しますと、私はこの程度は皆負うべきだと思います。アメリカは日本駐留に対してこれの数倍或いは十倍近い負担をしていることを思うとき、私はこの程度のものは負担すべきことは当然であると考えているのであります。又安全保障諸費につきましては、先般も申上げましたように、防衛支出金或いは警察予備隊費等との関係もありまするが、行政協定において今後日本で負担することを予想せられる営舎の建築とか、或いは監視船その他の増強とか、或いは電気通信、道路港湾施設強化拡充、こういうことを予定いたして五百六十億円を組んでいるのであります。  なお戦死者遺家族に対しましての大蔵省案とおつしやいますが、私の当初考えておつたのと橋本君が考えておつたのを、内閣閣僚のうちで特別の委員長を設けまして、そうして小委員会を設け、又特にお二方のお智惠を借りてできた案であるのであります。大蔵省の初めの案は百九十億円程度であつたのであります。それを内閣全体といたしましてきめたのが二百三十一億円でございます。財政演説で申上げましたように、只今の財政状況、又将来の国民負担のことを考えますと、この程度で止むを得ないものではないかと考えている次第であります。(拍手
  11. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 先刻の答弁に関して木村法務総裁から発言を求められましたから許可いたします。木村法務総裁。    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手
  12. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 先刻私の発言中に国際社会党と言つたのは誤まりであります。国際共産党の誤まりであります。謹みて訂正いたします。(「了承」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣天野貞祐君登壇〕
  13. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 青少年の現在の状態につきましては私も誠に困つたことと思つて苦慮いたしております。併し、ああいう激しい事柄が全国的だとは考えておりません。けれども、只今おつしやつたような自由主義の履き違えによる一般の気風の弛緩ということは全国的ではないかと考えられますので、それをどうか矯正いたしたいと思つております。青少年生活は、言うまでもまく社会、狭くは家庭を基盤といたしておりますから、社会生活或いは家庭生活等が健全でなければ青少年生活が健全であるわけには行かないと思います。(「政治はどうした」「政治の責任だよ」「政治は社会の前だよ」「黙れ」と呼ぶ者あり)従つて、この社会教育を通じて社会一般の教養を高め、社会一般の道義を高揚するということが先決問題であると思つております。青少年教育については、只今おつしやつたような自由主義的な考え方を履き違えるということがありますので、もつと紀律を嚴重にして、そうして意志を鍛練する、そうして誘惑にも打克てるような強い意志力を養うというような教育を一方にすると同時に、(笑声)運動とかいろいろな文化活動とかいうものによつて、若い者のエネルギーを健全なほうに向けさせるというようなことを努めたいと思つております。  又昨今非常に問題になつておる性教育ということもありますが、これは非常に愼重にやらないと却つて弊害を生ずると考えますので、文部省内には社会教育審議会というものがございますが、そこに純潔教育の分科会を設けまして、そこで研究をいたしまして、そうして純潔基本要項とか、男女の交際の礼儀とか、そういうようなふうのものを作つて、そうしてこういうことに対処いたしたいと思つております。(笑声)要するにこの問題はただ子供の性教育というようなことだけでは足りないのであつて社会一般の道義を高める、子供の教育においても、もつと本当に意志を鍛練するというような教育をしたいと思つております。そういうようなことによつてこの問題に対したい考えでございますが、一挙にこれを解決してしまうということは、その根源が社会そのものにあるから容易にできないというような考えでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇、拍手
  14. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 岡本さんのお尋ねにお答えいたします。  米の統制撤廃を断行する意思があるかどうかということでございますが、意思は十分持つております。併しこの統制撤廃をするにいたしましても、非常にこれは重大な食生活であるのでありまするので、量や質や価格や流通度を十分考えまして、愼重にいたす考えでおるのでございます。(「やつとわかつた」と呼ぶ者あり)それから、この問題について消費者や生産者に対してのお話でありますが、私もあなたと同じような考えを持つておるのであります。  本年度の供出の話についてでありますが、生産見込高と実收高とに多少狂いがありまするので、現在この補正をやつておる最中でございまするが、西日本は不幸にして秋落ちその他で生産が非常に減つておりますが、幸いに東日本のほうにおきましては、これは実收高を見ますると非常に豊作になつておりまするので、この補正をいたしまして、政府できめました二千五百万石を上廻るように私はしたいと思つておるのであります。極く最近心から喜んで供出ができるような方途を発表いたしたいと思つておるような次第であります。(笑声)又輸入につきましても、これはそう御心配が要らないようでありまして、現在の船繰り或いは到着等を見まして、決して御心配ないようであるのであります。それから下半期における米食率の御心配でございますが、この輸入と供出量とを、現在供出を十分推進いたし、又輸入に十分手当を加えまして、米食率の低下を来たさないように努力をいたす考えでおります。それから麦の問題でありますが、麦もやはり米と同様に十分愼重に考えたいと思いますが、麦は併し相当これはその段階に近付いておるように実情がなつておるように思われるのであります。  それから食糧増産の問題でありますが、御指摘のように食糧の増産は米麦を中心とするのは、あなたのお考え通りでありますが、もう少し我々は広く考えまして、これを畜産なり或いは海産物なり、もつともつと広く考えて行きたいと思うのでありますが、何を申するにも米麦を中心とする習慣がありますので、この米麦を増産する最大中心は、あなたの御指摘のように価格にあるようでありまするので、米価決定に当りましては米価審議会等の意見を十分尊重し、真の農民の声を聞いて愼重に検討いたす考えであります。麦の対米比価の問題につきましても、これと同様に愼重にいたす考えでおります。(拍手)     —————————————
  15. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 吉川末次郎郎君。    〔吉川末次郎君登壇、拍手〕    〔「ごまかさんでしつかりやれ」と呼ぶ者あり〕
  16. 吉川末次郎

    ○吉川末次郎君 私は、去る二十三日、本院において行われましたる吉田内閣総理大臣演説中心といたしまして、日本社会党第二控室を代表いたしまして政府当局質問いたしたいと思うのであります。  自由党内閣治下の現在、日本の政治情勢を見まして、私は曾つて年少学生の頃に滞在いたしました第一次大戰後のドイツの政府の実情を常に想い起さざるを得ないのであります。それは、インフレーシヨン、経済の窮乏或いは風紀の頽廃等のもろもろの敗戰国的現象が全く相似ておるということばかりでなくして、なお、それよりも、ドイツが第一次大戦後共和革命によりまして、その第一條第二項に「国権は国民より発する」という人民主権に則る民主主義的な憲法を新たに制定いたしまして、それに伴う法律制度的な改革を断行いたしましたにもかかわらず、ドイツ国民の封建的後進性と、久しきに亘る国家至上主義、軍国主義観念の根強さは、容易にその頭の切替えを行うことがドイツ人にはできなくて、外交上におけるところの他国圧迫経済恐慌の襲来によりまして、直ちにナチス政治勢力の接頭を促し、再びドイツを敗戰亡滅の悲運に逢着せしめたことは、皆さん御承知のことと思うのであります。私は現下の日本がそれと全く同じコースを辿りつつあるということをば、国民の将来のために深く憂いとせざるを得ないものであります。大体右のような基本的な観念によりまして、政府の具体的な施策について二、三御質問いたしたいのであります。先ず第一に衆議院の解散問題について総理大臣及び木村法務総裁お尋ねいたしたいと思うのであります。総理大臣は衆議院の解散は行わないと言つておられるのでありますが、私は、平和條発効と共に、首相が御演説になりましたように新日本として国際間に新らしく発足するということのためには、国内の政治も又それに伴うところの新らしい発足をするのでなければ、それに符応しないと考えるのであります。よろしくこの際衆議院を解散いたしまして、新らしき国民の政治意思に基く新らしい政府が樹立されることが、私は正しいことだと考えられるのであります。(拍手、「そうだ」と呼ぶ者あり)右につきまして吉田内閣総理大臣は、私が申しましたようにはお考え下さるわけには行かないのであるかどうかということを御答弁が願いたいと思うのであります。又解散を首相が拒否せられておりまするのは、憲法第六十九條によるところの、即ち不信任案が成立するのでなかつたならばこれを行うことができないという、一部の人たちの憲法論によつておられるものであるかどうか。言葉を換えて言えば、憲法第七條に基くところの衆議院の解散は不可能であるというようにお考えになつているかどうかを、首相並びに法務総裁よりその御見解が承わりたいのである。又次に、若し首相のおつしやいますがごとくに、現代議士の任期一ぱい解散はここれをなさないということでありまするならば、予算審議上、当然に国会法の改正を行わなければならないということになつて参ります。解散を吉田さんはやらないということをお考えになつておりまするならば、政府は本国会にこのような国会法の改正案を提出せられるところの意思を持つていらつしやるかどうかということを併せて御答弁が願いたいと思うのであります。  次にお尋ねいたしたいとこは、行政機構の改革の問題につきまして、若し総括的に首相にお考えがありまするならばお述べを願いたいと思いまするし、木村行政管理庁長官、大橋国務相、人事院の総裁及び自治庁長官、国家公安委員長及び地方財政委員長等から、それぞれその御管掌の事項に触れました私の言説につきまして、御答弁が願いたいと思います。  行政機構の問題につきまして先ず第一にお伺いいたしたいと思いますることは、政府は行政機構の大きさ、行政機構の規模をどのようなものとするお考えであるかということでございます。現在の機構は二府十一省一本部であります。新聞その他の伝うるところによりまするというと、政令諮問委員会案なるものとしては一府十二省、又、世にこの木村案として報道せられておりまするものによりまするというと一府九省、その他行政制度審議会案によりますると一府十省等となつておりまして、その内容はそれぞれ異なつておりまするが、いずれも政府のおつしやいまする行政機構の簡素化の趣旨に副うたものであるかどうかは知りませんが、現在の機構よりは縮小されることになつております。現在政府がこれについて持つていらつしやるところの具体的な構想、これは昨日目下調査中であるという御答弁がありましたが、でき得る限り具体的に、発表し得る範囲最大限にまで、今日これを国会を通じて明白にして頂きたいと思うのであります。  次に、私は保安省及び治安省の構想につきましてもお尋ねいたしたかつたのでありまするが、岡本君より先ほど御質問がありまして、時間がありませんから、この点は省略いたします。  次にお尋ねいたしたいことは、行政機構の改革につきまして、この内政省の名におきまして内務省の復活が計画せられており、その計画はその筋から中止を命ぜられたというところの説も伝わつておるのであります。その真相を明白にして頂きたいと思うのであります。このような内務省の復活計画のごときは、旧内務省の官僚によるところ化の逆転であると私は考えるのであります。(拍手)彼らは日本独立回復を機縁といたしまして、地方自治体の権限を縮小して、再び戦前の中央集権的警察国家の再興を夢みておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)曾つて軍閥とタイアップして日本をプロシヤ主義化することを図つて来た内務省の官僚らは、彼らのイデオロギーの徹底的な民主化が先ず行われない限りは、かくのごとき計画日本の将来のために断じて我々の許しがたきことであると考えておるのでありますが、政府の御所見を承わりたいと思うのであります。  次に行政機構の改革につきまして、政府は人事院並びに国家公安委員会、地方財政委員会等の各種の行政委員会制度の廃止を考えられておるようでありまするが、私たちは思いまするに、それは三権分立以外の第四権的な存在としての、新らしい民主的な政治機構としてのこの委員会制度の精神がまだ十分に理解されておらないということから来る、世間一部の守旧者流の謬見に禍いされておるのではないかと考えるのであります。事実その機能が無用化しておりまするところの委員会はこれを廃止するということには私も賛成することにやぶさかならざるものでありまするが、戰前と同じところの官僚主義考えによりまして、わざと、この民主主義的な政治機構でありまするところの戰後の委員会の精神を理解し得ない、その本来の機能を発揮せしめることには少しも努力しないで、直ちにこれを廃止しようとするがごときことは、これ又日本民主化の逆転であると私は言わなければならんと思うのであります。  次に、この地方制度の改革が、シヤウプ勧告を基本とするところの地方行政調査委員会議の勧告書、即ち世間にいわゆる神戸勧告を参照しつつ考えられておるようでありまするが、結局政府当局の復古的な政治観念と旧式官僚主義とが、その後の自治体警察の廃止、町村警察の廃止によつて行いましたところの実績等にも見られるがごとくに、結局これはこの神戸勧告中の官僚主義に符応するところの部分だけを採択してお茶を濁して、そのほかのお気に入らないところの民主主義的な改革の面は、やがて独立の回復と共にことごとく廃棄してしまうというのが、恐らく現内閣の行政機構改革に対するところの肚であると私は推察いたすのであります。大体そういう肚を持つておるという人が多いということは、憲法の規定を無視してまでも府県の知事をば又もや昔の官選制度に還してしまうというような馬鹿げた運動がまじめに行われておるということによつて大体その動向は推察せられると考えられるのであります。  考えまするのに、大体シヤウプ使節団というものは、財政学者や租税学者の使節団でございまして、日本の地方行政の改革のためには、丁度、昔、後藤新平さんが東京市長に就任いたしましたときに、アメリカの政治学者チヤールズ・エー・ビーアドを招聘いたしまして、縦横に先ず東京市政を批判せしめまして、これが改革案を徴して参考といたしましたごとくに、シヤウプ税制使節団の勧告と相並んで民主主義的な政治学者の使節団を迎えまして、その勧告をも併せて聞くということが私は必要であると考えるのであります。言うまでもなく、日本の地方自治制というものは、山県内務大臣の当時にプロシヤ人でありまするアルバート・モツセが日本に参りまして、これが書き上げたものから始まつておるものでありまするので、最初からのドイツ的な、プロシヤ的な伝統は、脈々として日本の地方行政を今なお支配し続けておるのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)地方行政の民主化を完成すること、教育の民主化を完成するということを基本とせずして、日本政治の民主化、日本社会の民主化は断じて行うことはできません。然るに、教育の面におきましては君が代の復活を図つたり、いわゆる天野勅語等に見られまするところの、古いドイツ古典哲学かぶれの天野貞砧氏によつて日本教育が指導され、(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)この地方行政が相変らず古いドイツ式の、ドイツかぶれの旧内務省の官僚によつて指導されておりまする限りは、日本の民主主義は絶対に成長することはできないのであります。(「紀元節が飛び出して来るだろう」と呼ぶ者あり)右についての御答弁が願いたいのでありまするが、自治庁の長官の名を通じましていろいろな地方行政の改革案が今日まで発表されておるのでありまするが、失礼ながら自治庁長官の岡野さんは地方行政の素人でいらつしやる。その下に事務をとつておりまするところの旧内務省の官僚どもが(「ノーノー」と呼ぐ者あり)全部これをでつち上げるのでありまするから、(「そうだ」と呼ぶ者あり)今日まで発表されたものはことごとく戰争前の古い官僚政治への復帰そのものにほかならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)一々これを批判する時間はございませんからこれは他日に讓りますが、以上申上げましたことにつきまして、先ほど名を挙げましたかたがたから一つ御答弁が願いたい。特に人事院の総裁、地方財政委員会の委員長、国家公安委員会委員長等からは、その御管掌になつておる人事院及び委員会を政府が廃止しようといたしておることについての御所見を一つお述べを願いたいと思うのであります。(「答弁無用」と呼ぶ者あり)  第三番目にお伺いいたしたいことは労働法の改正問題についてであります。私は思いまするのに、終戰後行われましたるところの日本政治におきまして、最も偉大なる成功の一つは、土地改革の断行であつたと私は考えるのであります。若し蒋介石氏や李承晩氏が共産党にその先鞭をつけられないで、せめて日本がやつたくらいの土地改革を早くから断行しておりましたならば、蒋介石は毛沢東氏等によつて中国の本土を追われるというようなこともなく、李承晩氏も恐らくは今日以上に高い声望を同国民の間にかち得られておつたのではないかと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この大きい日本の終戰後における政治上の成功、これをやつたところの人、その実はやらされたところの人たちは、今日に至るもその私が言うているような意味においての真の意義というものを理解されておらないと思うのであります。又労働組合が民主化の基礎であることにつきましては、先頃のサンフランシスコの講和会議におきましても、イギリスの時の外務大臣ハーバート・モリソン氏も日本の政治の将来に関して喝破いたしているところであります。併しながら、このことにつきましても、土地改革と同じように、できるならば労働組合もぶつ潰し、農地改革も昔に返し、そうして資本家と旧地主と旧官僚の利益を天皇を神格化することに結び付けて、紀元節の再興の法案を目下作成中であるというような自由党の諸君には、このことは御理解ができなかろうと私は考えるのであります。(拍手、「紀元節何が悪い」と呼ぶ者あり)労働意欲の高揚は結構でありますけれども、軍拡景気を当て込んで、その間に、ただ、しこたま儲けておこうというようなことから、むやみに労働者の尻を叩いて過重労働を強い、罷業権を奪い、労働行政におけるところの官僚の支配権力を強化するというような労働法規の改正に対しましては、我々断固反対であります。目下労働三法の改正につきまして政府はいろいろと御考案になつているということは新聞紙上にも伝えられているのであります。当局の吉武労相は(「これも旧官僚」と呼ぶ者あり)独立後の日本におけるところの労働行政に対してどのような構想を持つていらつしやるか、又当面の労働三法の改正についても発表し得るだけの労働省の具体的な今日までの構想を、この議場においてこの際明白にして頂きたいということをお伺い申すものであります。  次に中国政府承認の問題につきましていろいろと先ほどから御質問があり、御答弁もあつたのでありまするが、若干その問題につきまして專ら吉田内閣総理大臣の御答弁を得たいと思うのであります。(「御意見はいいですから簡單に」と呼ぶ者あり)中国における二つの政府の選択承認の問題はむずかしい問題でありまするが、併し我々の立場からいたしまするならば、真に中国五億の民衆と心からなる提携をなし、国際連合の枠の中で東亜の安定と平和を図ることを根本方針としてこれを選択し、それを承認するの挙に出ずべきものであると考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これがためには、その前提といたしまして、日本国民が先ず講和條約の発効によりまして、何ものにも強いられざるところの独立国民たることの資格を獲得するということが先決要件でなければならないと思います。(「そうだ」と呼ぶ者あり)従つて軍事占領下におきましては、我らはこれを選択するところの自由は持たないのであるということを考えなければならんと思うのであります。講和條発効後、少くとも朝鮮事変が平和的に一応落着くところに落着いた後におきまして、それと睨み合せて徐ろに我らの態度を決定すべきであるというのが私たちの考え方であります。(「遅過ぎる」と呼ぶ者あり)共産主義国家中共承認の挙に出ることはもとより当然のことでありまするが、併しソ連の衛星国でなくても、中共政府承認いたしておりまするものは、いわゆる民主国家中にも十数カ国ありますることは、(「二十数カ国だよ」と呼ぶ者あり)衛星国以外において十数カ国ありますることは、羽生君も昨日申されたことであります。それらのことを十分我々の考慮のうちに入れましても、私たちはなお日本中国に対するところの外交的な関係からいたしまして、今日直ちに中共政府承認をなすというところの挙に出るというようなことにつきましては、吉田政府台湾政府選択承認と共に、いずれも時期尚早であるというところの見解を我が党は持つておるのであります。(拍手、「見解の相違」と呼ぶ者あり)吉田首相も昨秋の臨時国会におきまして、両政府のいずれを承認するかは、暫らくその赴くところを見て然る後決定したいという旨をばしばしば我々の前に声明せられました。然るに突如として今回の書簡発表の挙に出られましたことは、他の議員も申されましたごとく、誠に国民の意外とするところでありまして、その独断專行的な態度につきましては、首相の御弁解もありましたけれども、私たちも又先の議員の質問のうちにありました言葉と同じように、秘密外交である、非民主的な外交であるというところのそしりは、私はこれは免れないものであると考えておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)以上申述べましたことにつきまして、他の議員にもすでにお答えになつておる点もありますが、講和條発効後、朝鮮事変帰結後、かかる意思表示は行うのが正しいという私の言を中心として、もう一度一つ御答弁がこのことについて願いたいと思うのであります。  それから、その次に私は、昨日野次のために十分聞き取れなかつたのでありまするが、昨日の夕刊を見まするというと、羽生議員の質問に対して総理大臣は、今日に至るも私は断じて再軍備は行わないという御答弁があつたことが新聞に載つており、又只今も岡本愛祐君の質問に対して同様の御答弁がありました。これは私の最も欣快とするところでありまして、満腔の賛意を私は吉田首相に表明いたしたいと思うのであります。(拍手)併しながら、どうぞこのお言葉も、先ほど申しましたように、中国政府の選択承認はもつとあとにすると言われた直後に、その前の言葉を引つくり返されまして今度のような書簡発表となりましたような、そういうことにはならないように、どうぞ一つお願い申上げるということをば條件といたしまして賛意を表することを申上げておきたいと思うのであります。(拍手)  最後に伺いたいことは、アメリカに対しまして、我らは現段階におきまして、アメリカと協調して行かなければならないところの場面が極めて多いと信じておるものであります。併しアジア政策につきましては、我々は常にアメリカと協調しながらも、その一面においては、時にアメリカを日本のほうから指導するところの精神を失つてはならないというように考えておるものであります。(「そうだそうだ」「賛成」と呼ぶ者あり)アメリカが国民政府への援助を打切りましたことによりまして、今日のような中国状態を来たしました。又ヤルタ会談におきまして取りきめましたことの誤まりからも、又アジアの赤化が起りました。更に遡りまするならば、日本とアメリカとの戰争におきましても、もとより日本の軍閥に多くの誤まりがありまするけれども、アメリカの為政者の側にも、これは正しい、成功であつたということは、私は今日できないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)死んで行つた故ルーズ・ヴェルト大統領のごときは、恐らくは、日本とあのような戰争をしたということについては、後世歴史家の相当手きびしい批判を受けなければならないのではないかと考えるのであります。(拍手)今日米国民の多くはそのことを認識して後悔いたしておるのであります。このように、アジア政策についてアメリカがそうした失敗を繰返すということは、そもどこから来るのであるか。それはアメリカ人がアジアのことをばよく知らないからであります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)丁度日本人が朝鮮や中国のことならよく知つていますけれども、アメリカのお隣りの中央アメリカの諸国や南米のことについてはよく知らないのと同じであります。そういうように、アメリカと我々は常に協調して世界を歩んで行かなければなりませんが、ときにはそのアメリカの言うことにはそのまま従わないで、そうしてこれに忠告を與え、これに指導を與えて行くということが、これは真にアメリカを友邦として進むところの我が日本国民の親切心を表現するところの結果になることもあるということを忘れてはならんと思うのであります。(拍手)  その次に、吉田総理大臣は、このたび、台湾政府友好関係を結びたい旨の意思表示をせられたのでありまするが、そもそもそれは、全体的な中国の政治的将来に対する正しい見通しに立つて、当然かかる大事が行われなければならないものであります。それは、総理の言われるごとくに、ただ單に、條約面からこうなつているから、法律形式がごうなつているから、こういうことをやつたんであるというがごときことは、(「本末転倒だ」と呼ぶ者あり)いわばこれは三百代言的な外交である(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)と言わなければならないのであります。私は、賢明なる吉田総理が、そんな愚かしい肚でお行いになつたものではないというような推察をいたしたいのであります。中国は将来どうなつて行くのだろうか、中共政府は今後どのように進んで行くのだろうか、台湾政府はこれからどうなつて行くだろうか、又それと併せて朝鮮はどのようになつて行くのであるかというところの正確なる判断と見通しなくして、このダレス氏宛書簡に現われたような大胆なる挙には、私は外交上は出でがたいのであると考えるのであります。(「そうです」「ドン・キホーテ」と呼ぶ者あり)私はアメリカを旅行中、昨年いろいろ見ましたもののうちで、アメリカの有力な雑誌でありますところのUSニューズ・アンド・ワールド・リポートのうちに、曾つて中国におけるところの米国軍の参謀長であり蒋介石の軍事顧問でありましたウエデマイヤー将軍が発表しておりますところのアジア政策に対する意見に、非常に私は興味を感じました。それは、恐らく私の推察いたしまするところ、アメリカ人が通例コンモンに持つておりますところのアジア政策の意見をよく表明しておるものでないかと考えたからであります。ウエデマイヤー氏が申しておりまするのに……。非常に長い書物でありまするから、これを一々ここに申上げる時間がありませんから、困難でありまするが、大体を要約してあらましのことを申しまするというと、「朝鮮の平和協定は一時成立しても、又共産党によつて破棄されることは、過去の中国における今の国共協定の例などからしても明らかなことである。南鮮は戰禍によつてすでに数百万以上の死傷者及び戰災者を出している。だから南朝鮮の人心は国連よりもむしろクレムリンのほうに傾いている。アメリカはこれ以上アメリカの青年をば朝鮮事変のために殺すべきではない。米国の金融的な、物資的な援助の中心はヨーロッパである。国連軍は朝鮮より撤兵してその威厳を失わないようにするために、ソ連及びその衛星国との国交を断絶すべきである。アジアのことはアジア人に任すことを本旨として、国民政府を軍事的経済的に極力再び援助してやるならば、蒋介石はもう一度中国国民大衆の支持を猛得することは可能である。中国人は心から必ずしも共産主義化してはいない。中国をクレムリンより引離してチトー政権化することも可能である。日本人は極めて優秀なる国民であり、他国の苦情がそのことにあるかも知れないけれども、日本を再武装して適当の経済安定を與えることが、極東における連合諸国の最上の反共産政策である。」このようにウエデマイヤー氏は書いているのであります。  次に、吉田総理大臣中国にも長く御滯在になつたとのことでありますから、中国の将来や朝鮮の将来につきまして(「何か野次れ」と呼ぶ者あり)恐らくはウエデマイヤー将軍などよりも遙かに優れた自信のある見通しの上に立つて、今回の挙に私はお出になつたことであると深く信ずるのであります。(「その通り」「違う」と呼ぶ者あり)そのような立場におきまして、私は次のことについて具体的な御答弁を、どうぞでき得る限り具体的に、明白に、これは私たちが聞こうとしておるのでなく、私が聞こうとしておるのでなくして、八千万の同胞がすべて、あなたの朝鮮や中国に対するところの将来の見通しを聞きたがつておるのでありますから、(「そうそう」と呼ぶ者あり)八千万同胞に答える意味において、多少デリケートな点もありましようが、でき得る限り一つ明白に国民全部に答えて頂きたいのであります。私はその話の糸口を引つ張り出しますために、具体的に私の質問要項をここに列挙いたします。  第一は朝鮮の問題につきまして、朝鮮停職協定成立するものと吉田さんは見ていらつしやるかどうか。協定成立した後、朝鮮はどのようになつて行くと判断しておいでになるのであるか。第二番目には、南鮮の民心はすでに国連軍よりもクレムリンに傾いておるというようにはお考えにならないかどうかということ。第三番目には、国連軍は朝鮮から撤兵することはないというようにお思いになつていらつしやるかどうかということ。そのほか朝鮮の将来に対する吉田さんの見通しにつきましてお答えが願いたい。  又次に中国につきましては、十分の経済的軍事的か援助がアメリカから與えられたならば、台湾政権中国を再び支配し得られるようになるとお考えになつておるかどうかということ。第二番目には、大陸の中国人は共産主義を心の中で支持していないと吉田さんは思つていらつしやるかどうかということ。第三番目には、中国のチトー政権化は可能であるかどうかということ。そのほか中国の将来、中共政府が将来どうなつて行くか、国民政府が将来どうなつて行くかということを、この中心として、以上列挙いたしましたことに基きまして、吉田さんの聰明なるところのこのアジア政策に対する見通しと分析とを、国民の前に御披瀝下さいますることをば、私はお願いするものであります。私の質問はこれで終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手
  17. 吉田茂

    国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。  第一に衆議院の解散について縷々御意見でありますが、私は施政方針演説その他において申述べました通り日本は今日財界政界ともに安定を必要とするのであつて、その安定を紊す原因ともなるべき解散は行わないということは、施政の方針その他において十分明らかにいたしておるつもりであります。この政治上の理由から私は解散いたしたくないと考えます。又その解散をいたさないために予算その他の措置について支障が起るというお話でありましたが、これは支障の起らないように現に関係当局をして研究さしております。先ず善処いたしますつもりであることを御承知を願いたいと思います。  次に中国問題について縷々お話でありましたが、先ほども申す通り中国のどの政府中国の代表政府として考えるかという條約上の問題と、台湾政府に対して、或る條約関係をこしらえるということは、別問題であるということは先ほど申した通りであります。その中国全体との関係については、先ほど申す通り、善隣の誼から申しても、日本の歴史的地理的関係から申しても、最も親善なる関係に入りたいということは私も念願しております。その方針で善処いたすつもりであります。  再軍備についてはしばしば申します通り、再軍備差当りいたさないつもりでおります。できないと思います。  それから朝鮮、中国その他について私の見通しは如何というお尋ねでありますが、多少の見通しは仮にあつたところが、在外事務所、公館等がない今日において、如何なる事態にあるかという現在の状況については政府は何ら承知するところはないのであります。(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)新聞雑誌による材料は別であります。正確なる資料に基いてお話をいたすまでには達しておりませんから、将来ゆるゆる相談をします。    〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手
  18. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 解散の問題につきましては只今総理大臣から申上げた通りであります。重ねて私から申上げません。  機構の問題につきましては、昨日一松君に対する私の答弁において申上げた通り、この終戦後厖大な行政各種の機構の拡大、これは何としても整理しなきやならん。そうして機構の改革をいたしまして国民の負担を軽減いたしたい。これが目的であるのであります。その見地から我々は目下愼重にこれを研究いたしております。只今委員会を廃止云々と申されたのでありますが、この全部の委員会を我々は廃止しようという考えは毛頭もないのであります。又、内務省の復活はどうかという御議論でありまするが、これも内務省の復活、そういうことは考えておりません。又GHQからのそういう指示も何もないのであります。我々は、如何にして各種の繁多なる行政事務を整理して、現在の国情に合つた、すつきりした行政機構を作り上げようかということについて、全力を注いで研究中であるということを申上げます。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇、拍手
  19. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 行政機構の問題につきましては、只今法務総裁よりお答えのありました通りでございまするが、これに関連いたします事柄といたしまして、特に警察法に関する部分につきましては、行政管理庁長官と密接なる連絡をいたしまして、私といたしましても研究をいたしておるのであります。未だ具体案を得るに至つておりませんが、公安委員会の廃止というようなことは全然考慮をいたしておりません。ただ、現在、公安委員会は御承知の通り総理府の所轄となつており、内閣及び国会等の連絡は内閣総理大臣を煩わす建前となつておるのでございまするが、実際問題といたしまして内閣総理大臣は激務のために十分なる連絡を事実上とりかねる状態でございまして、止むを得ず実際上の必要に基きまして他の国務大臣を指名いたし、この連絡のことに当らせておるという状況でありまするから、行政の簡素化を図る見地からいたしまして、この点の解決といたしまして所轄法務府に移してはどうかということを研究いたしております。併しこのことは政府と公安委員会との警察法上の現在の関係を法律的に改めようという意図を持つて考えておるのではなく、現行法規によつて公安委員会が内閣総理大臣に対して持つておりまする法律上の関係を、そのまま法務総裁との間に作り上げることにするほうが連絡上便利ではないかという、ただそれだけの点でございます。併しこの点といえども、未だ固まつた考えではなく、研究中の事柄であるということをお断わりいたしておきます。  なお警察制度の問題といたしましては、特審局との関係を調整する必要があろうとは考えておりまするが、この点につきましても、なお愼重に研究をいたしておる段階でございまして、未だ申上げる程度に達しておらないことをお断わりいたします。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手
  20. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 吉川さんの御質問にお答えを申上げます。  第一点は労働組合を潰すんじやないかというお尋ねでございますが、私どもは健全なる労働組合の育成には十分努めて来たつもりでございます。今後といえどもこれの育成につきましては努力を続けるつもりでございます。第二に、労働法の改正に関する意見をということでございますが、これは目下法制審議会にかけまして審議中でございます。私といたしましては、近く日本独立をする、独立後の日本経済の自立は容易でないと存ずるのであります。従いまして、これにつきましては労使共に御協力願わなければならない。そこで、できるだけ争議はこれを避けまして、労使共に合理的な機関によつて合理的に解決して行く途を図りたいと、かうに考えておる次第であります。なお労働基準につきましては、できるだけ国際水準を保持いたしまして、日本の国情に即応する所要の改正を図りたいと思います。これらにつきましては目下法制審議会等におきまして審議中で、近く答申があることと存じまするので、その答申を待ちまして具体的に決定いたしたいと思います。さよう御了承を願います。(拍手)    〔政府委員辻二郎君登壇、拍手
  21. 辻二郎

    政府委員(辻二郎君) お答えを申上げます。  警察機構の問題は大きな政治問題でありまして、政府並びに国会において十分に御審議になるべき問題であると考えます。国家公安委員会を廃止するという案につきましては、私どもは今日まで何ら正式な御意向を聞いておりません。従つて国家公安委員会におきましては、この問題を正式に審議いたしたことは、ございません。(拍手
  22. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 岡野国務大臣、浅井人事院総裁は、総司令部に連絡のため、野村地方財政委員長は病気のため、それぞれ答弁は他日に留保されました。  国務大臣演説に対する質疑はなおございますが、これを明後日に讓り、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 御異議ないと認めます。次会は明後二十八日午前十時より開会いたします。議事日程決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十五分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)