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1952-01-23 第13回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年一月二十三日(水曜日)    午後三時七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第四号   昭和二十七年一月二十三日    午後三時開議  第一 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第九十六番、地方選出議員小滝彬君    〔小滝彬君起立、拍手〕      ——————————
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 議長は、本院規則第三十條により、小滝彬君を水産委員に指名いたします。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。  吉田内閣総理大臣周東国務大臣及び池田大蔵大臣から発言を求められております。これより順次発言を許します。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はここに第十三回国会の開会に際し、施政方針演説するを欣快といたすものであります。  思うに、平和條約は近く列国批准を了して効力を発し、新日本として国際の間に新らしく発足せんとするに至りましたことは、真に御同慶に存ずるのであります。そのここに至れるは、過去六カ年有余に亘り、八千有余万の同胞一致協力国力回復に渾身の努力をいたし、列国が我が民族の優秀性愛国の至誠を認識せる結果であると存ずるのであります。  我が国現下情勢は、先ず食糧確保基礎として、内外の諸環境と相待ち日々安定を加え、労資の関係も漸次健全なる方向に向いつつあるのであります。我が国民所得は、昭和二十六年度においては四兆六千六百億円に達し、生産額戰前昭和七年より十一年を基準として一三八%となり、外国貿易は一昨年以来とみに激増し、輸出入総額は一兆二千億余円、三十五億ドルに達し、世界軍拡景気に刺戟せられ、ますます活況を呈しつつあるのであります。ドル資金は昨年末において五億五千万ドル、英貨は七千五百万ポンドを保有し、国家財政基礎も堅実の度を加えて参つておりますが、政府は来年度以降においても均衡財政を堅持するに努めつつ極力インフレ防止に力を毒して参る所存であります。  併しながら、明治以来幾十年の間に蓄積せられた国力は、敗戰の結果一朝にして喪失し、多少の繁栄によりて経済基礎漸く成らんとしておりますが、未だ脆弱なることを免れません。故に、市場景気の些細なる変動によりましても、直ちに経済界に影響し、一喜一憂するの現状であります。たとえ平和條発効による独立回復するも、かかる脆弱なる経済財政基盤においては自立経済達成は困難であると憂うるのであります。  併し、若しそれ、産業合理化、施設の改善、電力源開発外航船舶増強など成るにおいては、生産及び対外貿易は一層の進展を見るべきを確信いたします。而して、このことたるや、一に外資導入を待つにあらざれば急速の進展は期し難く、外資導入は、国情の安定、わけて政局の安定を見るにあらざれば、期待することができないと考えるのであります。政府国民諸君協力を以て、国情並びに政局の安定に、極力、力をいたしたい考えでございます。  次に当面重要な事項について政府所信を申述べます。  外交関係について申述べますが、各連合国における平和條約の批准状況は、順調に進行しておる模様であります。又、日米安全保障條約に基く行政協定についても近く具体的交渉を行う予定であります。  今日、平和の維持経済発展は、自由主義諸国が互いに密接なる相互援助関係を樹立するにあらずんばその実現を期し難いのであります。政府平和條約を基調として、国際連合原則に則り、極力国際協力推進することを外交大本といたすのであります。  而して平和條約に調印しなかつた諸国とも速かに国交回復を実現すべく現に話合いを進めております。又、中立国及びイタリア、ヴアチカン等国々との間にも国交再開話合いを進め、そのうち若干の国とはすでに外交関係再開の了解に到達いたしました。中国に関しては、平和條約に示された諸原則従つて国民政府との間に正常な関係を再開する條約を締結する用意がある旨を明らかにいたして置きました。  又我が国国際連合加盟の速かならんことを希望はいたしますが、その加盟前においても国際連合の行う平和維持措置に対して今後とも全幅の協力をいたす考えであります。  平和條約中の漁業條項、諸賠償條項に関する交渉は、政府としては十分なる誠意を以てこれに当る決意であります。日本米国、カナダ三国政府代表者間において、すでに北太平洋公海漁業に関する国際條約案が一応妥結し、客年末十四日に仮調印を見るに至つたのであります。これは関係各国において好感情を以て迎えられております。  又、賠償について、すでにインドネシアの代り表国賠償漁業等の問題について協定成立せしむる意向の下に交渉君開始いたしました。フイリピン政府とは賠償のための下交渉の準備をすでに始めております。なお、我が国と韓国との間における諸問題の解決のため、双方の意見を交換し、互いに理解を深めて参つておりますが、近く本格的会談を行うに至ることと存じます。  我が国国際経済関係については、平和條約の効力発生後に、できるだけ速かに関係各国通商航海條約を締結する考えでございます。特に日米の間の通商航海條約については近く米国政府との間に具体的な交渉に入り得ることになつております。  財政関係について申述べますが、講和後に対処すべき明年度予算においては、我が国経済力増強国民生活確保について万全の考慮を拂いつつ、平和回復に伴う新たなる責任を遂行し、自立国家としての地位確立を期したいと存じます。即ち平和回復に伴うて賠償防衛負担費国内治安費等を初めとして、財政支出相当増加いたしますることを免れませんが、従来の均衡財政方針を堅持すると共に、経費の重点的配分を更に徹底せしめ、財政規模を飽くまでも国民経済力の限度に適合したものにとどめたいと存じます。経済規模拡大発展を図り、経済安定の基礎確立するため、今後資本蓄積を強力に推進する措置をとりたいと考えております。税制については、本年度において実施した改正を来年度においても強化維持し、国民負担増加を避け、その適正化を図ることといたしております。今後とも増税は避け、減税に努むる所存でございます。  行政機構関係について申述べますが、政府講和成立を機として、現行複雑厖大行政機構根本的検討を加え、極力行政簡素合理化と共に国費の縮減を行い、簡素且つ能率的な行政機構に改めるがため、国家行政組織法及び各省設置法等改正法律案を本国会に提案して協賛を得る考えでございます。  又地方制度については検討を加え、簡素にして且つ能率的な地方行政確立を目指して、今国会関係法律案を提出いたしたいと考えております。  国内治安関係について申述べますが、現下国際情勢を反映して、共産分子国内破壊活動は熾烈なるものがありまして、治安上甚だ注意を要するものがあります。かかる事態に対処して本国会に所要の法案を提出する所存であります。(拍手)  産業通商貿易関係について申述べますが、広く自由世界との通商貿易振興するため、価格の低位安定と品質の向上に特段の努力が必要と考えます。政府は、そのため、必要な電力石炭等の急速な増強を図ると同時に、産業合理化生産設備近代化及び技術水準向上、特に最新技術導入等につき鋭意施策推進いたしたいと考えます。  海運関係につきましては、政府昭和二十四年以来見返資金貸付等によつて大型航洋船整備拡充に努めた結果、本年当初において二百五十五隻百五十万総トン外航船腹を保有することとなりましたが、最近の情勢に顧み、大型航洋船の建造、改造等に要する資金確保に特別の措置を講じ、外航船腹緊急整備を図る所存でございます。  労働関係について申述べますが、経済自立達成上、産業平和を確保し、労働者福祉を図りつつ、労働能率向上し、進んで国際的信用維持高揚するがため、現行諸法規につき検討中でありますが、このことは事態に即応する当然の措置でありまして、経済民主化労働條件国際的水準保持という基本方針には何ら変るところがないのであります。これに関する一部の危惧は全く当らざるものと御承知を願いたいと存じます。(「よく聞いておくぞ」と呼ぶ者あり)  国民生活関係について申述べますが、生産増強も“貿易振興も、又物価の安定も、帰着するところは国民生活の安定であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)終戰以来逐年国民生活は安定の歩みを辿り、生活水準も漸進的に回復を見ておりますが、(「まだまだ」と呼ぶ者あり)食糧政策については、前国会において明らかにいたした通り、食糧事情は、全国農家理解協力による生産及び供出の好調と、食糧輸入の順調の結果、著しく安定を見るに至つております。何ら前途に不安はございません。併しながら国内食糧増産による自給度を高めることは農業政策大本であります。政府は来年度において食糧増産につぎ格段の予算措置を講ぜんとするものであります。  なお、近時災害による国土の荒廃甚だしく、産業経済の復興と民生の安定を甚だしく阻害しておる実情に鑑みまして、積極的に、治山、治水利水事業総合計画を策定すると共に、道路の整備及び住宅の建設にカを注ぐ計画であります。  国民生活の安定と相待つて、文教の振興政府の常に意図するところであります。特に国民教育基盤たる六三制の義務教育については一層その充実向上を図るのほか、産業教育振興し、学術文化の高揚のための措置を講ずる考えであります。  引揚問題に関しましそは、いまなお多数の未帰還者のありますことは誠に遺憾に堪えないところであります。月下スイス国ジユーネーヴにおいて開催中の「国際連合の引揚に関する特別委員会の主催する会議]の招請に応じ、政府代表者三省を出席せしめております。再度に亘り引揚問題について説明の機会を與えられるに至りましたことは、国連引揚特別委員会その他関係諸国の好意と援助とのたまものでありまして、日本政府は、これらの国々に対し深甚なる謝意を表すると共に、すべての連合国が、国際連合を介し、又は他の方法によつて、これら日本人の速かな帰還を実現するために、あらゆる努力協力とを與えられるよう切望してやまないものであります。(拍手)  戰歿者の遺族及び戰傷病者に関しては、政府としては敬弔と感謝の誠をこめ、愼重審議研究を続けて参りましたが、今期国会にこの予算並びに法律つ案を提出する考えであります。  終りに臨みまして一言いたしまするが、新日本発足の門出において、私は国民諸君と共に更に決意を新たにして、外、平和條約を基調とし、国際連合原則に則り、国際協力推進し、内“治安防衛確保しつつ、経済財政基礎を強固にするがため、国民的一致協力国力培養に專心せんことを要望いたしますのであります。既往六年有余の苦難に耐え忍ばれたる八千余分同胞愛国の至情は、世界列国環視の下に新日本建設の偉業を開く抱負とつ矜持を持つて勇往邁進せられることを私は信じて疑いません。(拍手
  7. 佐藤尚武

  8. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 諸君我が国は、近く発効する平和條約の成立に伴い、国際経済に復帰し、自立国家としての名誉ある地位確立いたし、世界の平和と共通の福祉増進に積極的に寄與し得ることとなるのでありますが、この機会におきまして私は、日本経済に関する最近の諸情勢政府経済政策の大綱につきまして、所信を明らかにいたしたいと存ずるのであります。  先ず日本経済に関する最近の諸情勢について申上げますると、我が国経済は、一昨年の六月朝鮮動乱の勃発を契機といたしまして、生産上昇貿易規模拡大等産業活動の著しい進展を示したのでありまするが、昨年四月頃から、国際市況の影響もありまして、経済動向は再び転換し、一時は、輸出の減退、貿易関連商品を中心とする価格の低落を見たのであります。併しながら世界政治経済基調はなお不変でありまして、昨年秋頃から漸次輸出増進し、物価も微騰に転じて、最近はおおむね横ばいの状況であります。  この間、鉱工業生産は引続きおおむね順調に推移いたし、昭和二十六年度昭和七—十一年基準に対しまして一四〇%前後となる見込であり、昭和二十五年度の一〇五%に対しまして三割以上の増加となるのであります。又貿易につきましては、昭和二十六年度輸出は、特需を含めて約十七億ドルに達し、昭和二十五年度に比し五割以上の増加となる見込であります。又、昭和二十六年度輸入は、援助輸入を含めまして約十八億ドルに達し、これ又四割程度増加となるのでありまして、貿易規模も又著しく拡大を見ておるのであります。これに伴いまして国民所得も又増加いたし、昭和二十五年度の三兆五千九百億円に対しまして、昭和二十六年度においては四兆六千六百億円に達する見込であります。  右に述べましたごとく、我が国経済は著しき回復の跡を示して参つたのでありまするが、最近における我が国経済情勢には幾つかの注目すべき現象が見られるのであります。即ち電力及び石炭等動力源不足が今後の生産上昇の隘路をなし、これらの増強達成されない場合には生産は頭打ちの虞れがあるのであります。又、国内価格国際価格と比較いたして相当割高なものがありますため、一部の物資につきましては輸出の伸長が阻害されておるものであります。国際収支及び貿易の面におきましても、貿易規模といたしましては拡大しつつありまするけれども、ドル地域との通常の貿易関係は入超であり、今後はドル収支全体としても不均衡を生ずる虞れもあるのであります。更に我が国経済基盤は依然として浅く、資本蓄積は貧弱であり、経済発展基礎は未だ十分でないと言わなければなりません。(「そんなことあるか」と呼ぶ者あり)而も我が国は、昨年六月を以て米国の対日援助が打切られ、真の意味での独り立ちの経済を営むこととなつたのであります。それに加うるに、講和発効によりまして、自衛力漸増、対日援助債務の返済、賠償、外債の支拂等に伴う新たな経済上の負担増加するのでありますから、これら新たに増加する国民負担を克服しつつ、国民生活水準維持向上と、国民経済の健全な発展とを達成するためには、何といたしましても、生産増強し、輸出増進輸入確保とに努め、経済規模拡大を実現して行かなければならないのであります。幸い我が国には未稼働生産設備と豊富な労働力とが存するのでありますから、これに必要な動力原材料等供給確保し、更に前述のごとき諸問題を解決し、打開するならば、生産増加貿易規模拡大等によりまして、将来我が国経済力を充実強化し、国民生活維持向上を図ることは決して難事ではないのであります。(「本当か」と呼ぶ者あり)  諸君、右のごとき実情の下において、講和後における日本経済運営を如何にすべきかは、おのずから明らかとなるのであります。政府といたしましては、今後の我が国経済を次の基本政策によつて運営いたしたいと考えるのであります。  第一は、米国初め友邦諸国に対する経済協力乃至東南アジア地域開発への参加を通じて、広く世界経済に寄與しつつ、日本経済自立達成することであります。第二は、電力等動力源及び国内資源開発鉱工業生産増強すると共に、農林水産資源培養を図り、食糧自給度向上等に努めることであります。第三は、輸出増進輸入確保により貿易規模拡大しつつ、国際収支均衡、特にドル收支均衡を図ることであります。第四は、物価の安定を確保し、国際競争力保持国民生活の安定を期することであります。第五は、経済運営に当り、自由経済基盤の上に、重要物資需給適合資金調整輸出入調整等について、総合的且つ計画的な施策を講ずることであります。  次に、この基本政策に基き、今後探るべき方策について申述べたいと思います。  第一は、国際経済協力を積極的に推進することであります。而して、これが具体化につきましては、政府は、諸般情勢の推移に即応しつつ、随時万全の施策を講じて参る所存でありまするけれども、差当り次方法によりまして経済協力推進に努めたいと存ずるのであります。  その一は、米国国防生産進展に伴い供給不足する緊要物資について、我が国からの輸出増加することであります。例えば、鉄鋼、アルミニウム等米国において特に不足している物資につきましては、原材料輸入確保されれば相当輸出余力が存するものであります。又、機械類等につきましても輸出増進いたしたいと存じます。なお、その際新たに設備整備を必要とする場合におきましては、原材料確保、製品の輸出等について相当長期に亘る契約の締結が望ましいのであります。  その二は、東南アジア諸国開発に対する協力であります。東南アジア諸国は、地下資源開発食糧増産等計画を進めており、米国その他の諸国もこれに対して援助を行なつておるのでありまするが、鋼材、機械器具化学肥料等供給の著しく不足している物資につきましては、我が国からの協力に期待するところ大なるものがあるのであります。我が国としては、これら物資輸出促進に努めますと共に、開発実施に必要な技術援助につきましても、これを積極的に行う所存であり、これらを通じて東南アジア諸国開発促進協力して参りたいと思うのであります。  その三は、国際割当物資に関する協力であります。国際割当物資のうち、我が国からの輸出可能な、例えば硫黄等物資につきましては、輸出増加を図る所存であります。なお、国際割当物資米国輸出制限物資等で、特に世界的に需給の逼迫しているものにつきましては、これが輸入確保とその効率的使用を図るため、不要不急用途への使用制限流用防止等措置強化して行きたいと考えます。これらと共に、いわゆる特需の発注に対しましては、政府は引続き能う限り協力して参る考えでありますが、更に今後米国国防生産進展に関連して予想される需要に対しても、生産設備労働力とを活用してこれに応ずる所存であります。  以上のごとき方法により経済協力推進することにより、今後米国初め友邦諸国から必要な物資及び資金確保し、又東南アジア諸国からも、原材料食糧等輸入増加し得ることとなり、我が国経済自立達成に対する協力をも期待し得るものと信ずるものであります。(「早い早い」と呼ぶ者あり、拍手)  第二は、電力石炭等の急速な増強国内資源開発を図ることでありますが、政府電源開発のために政府資金重点的に投資することとし、民間資金の活用と相待つて昭和二十七年度は前年度のほぼ倍額に相当する千二百億円程度電源開発資金確保いたして、急速に電源開発促進いたす方針であります。我が国生産設備有効稼働せしめる場合の鉱工業生産は、昭和七—十一年基準に対しおおむね二〇〇%程度となるのでありまして、電源開発といたしましても、少くとも現有生産設備能力有効稼働を図ることを目途とし、昭和三十年度末に需用端電力量約四百六十億キロワツト時の供給確保することといたしておるのであります。(「日本のためにならん」と呼ぶ者あり)即ち昭和二十六年度需用端電力量はおおむね三百四十億キロワツト時でありますから、電力供給量において約三五%の増加と相成るのであります。開発実施に当りましては、電気事業者自家発電公営等の既存の企業形態を極力活用いたすことは申すまでもありませんが、特に開発規模が大きく、且つ治水利水等の見地から総合的に開発を必要とする特定の地点につきましては、新たに電源開発機構を設けて、これが開発促進を期する所存であります。(「自由経済を放棄したか」と呼ぶ者あり)他面、これと並行して、送配電損失の軽減、電力消費合理化を図り、電力利用効率増大する考えであります。この電源開発計画水力電源開発を主体とするものでありますが、これには相当の期間を要しますので、差当り電力用炭確保による火力発電増強自家発電動員等によりまして、その間、電力需給緩和を図りたいと存じます。現在、輸出を強く要請されておりまする化学肥料アルミニウム等増産のごときも、これらの諸措置を急速に実施しなければ多きを期待することはできない実情であります。  次に重点を置くべきは石炭供給量増加であります。これがため、炭坑の若返り、設備近代化等によりまして、石炭増産促進すると共に、輸入増加を図る方針であります。これと同時に、現下石炭需給状況に徴しまして、熱管理強化重油転換等措置によりまして、石炭消費の節約に努めると共に、例えば電力のごとき重点部門における石炭入手確保等を図りたいと存じております。右の電力石炭等燃料動力源増強と相待つて、今後の鉱工業生産増強重点は、先ず国際的に不足する物資供給におく必要がありますが、これがためには、産業構成において、機械金属等重工業部門肥料等化学工業部門強化が要請されるのであります。これと共に、他面、能う限り国内自給度向上に資するため、未開発森林資源開発及び造林、鉱物資源開発国内資源高度利用等を十分に助長する所存であります。  第三は、貿易を一層振興すると共に、国際収支、特にドル収支均衡を図ることでありまするが、国際収支につきましては、現在のところポンド地域に対する輸出増大によりましてポンド貨保有高増加すると共に、特需その他の貿易外收入増加によりましてドル貨も又漸増を示しておりまするが、食糧及び原材料の多くをドル地域からの輸入に依存しておりまする我が国貿易の特質から見て、今後相当額ドル収支の不均衡を生ずる虞れがあるのであります。従いまして、ドル地域に対する輸出増進いたしますと共に、ポンド地域からの輸入を極力促進して、ドル地域及びポンド地域を通じまして貿易規模拡大しつつ、これが調整を図つて参ることが、現下貿易政策の急務であります。(「中国貿易はどうした」と呼ぶ者あり)これがため、政府といたしましては、前に述べました経済協力のための諸方策推進と相待つて輸出信用保険制度拡充輸出振興外貨制度等によりまして、ドル地域向け輸出増進を図る所存であります。これと同時に、ボンド地域に対する貿易につきましては、東南アジア地域開発への協力と相待つて原材料食糧等について、極力ポンド地域からの輸入増加を図つて参りたい所存であります。政府は、これらの点に鑑み、従来に引続き外貨予算編成上今後一層愼重考慮を拂つて参る所存であります。産業界においても、政府の意のあるところを諒とせられ、以上申述べました政府施策協力せられたいのであります。  なお、政府は、今後も外航船腹増強して、輸出入の円滑を図ると共に、海運收入増加によりましてドル不足緩和に資する所存でありまして、昭和二十七年度におきましても約三十万総トンの新造船の着工を期しておるのであります。(「造船資金はどうした)と呼ぶ者あり)  第四に、国内物価の安定を図ることであります。輸出増進し、又国民生活維持向上せしめますためには、物価の安定が特に必要であります。政府は、物価安定に関する基本方針といたしまして、重要産業物資及び生活必需物資需給適合資金調達等、適切な施策運営により、これを確保して参りたい考えであります。特に電源開発等、投資の増大経済協力促進等によりまして需要増加する金属石炭木材等につきましては、生産増加輸入確保輸出調整等によりまして需給適合を期する考えであります。併しながら、個々の物資のうちには時期的に需給適合しないものもあろうかと思われるのでありまするが、これらの物資については使用制限等の措置により不要不急の需要を抑制し、需給均衡を図つて参りたいと考えております。(「自由経済はどうした、放棄したか」と呼ぶ者あり)  第五に、経済増強のための資金対策といたしましては、生産及び貿易を通じて経済基盤の充実を図るため、引続き財政及び金融を通ずる資金需給均衡を堅持しつつ、電源開発を中心として、石炭増産、船腹の増強農林水産資源開発増産、鉄道車輌の増加及び国鉄電化等に投資の重点を置く考えであります。(「本当か」「大丈夫か」「うるさい」と呼ぶ者あり)  昭和二十七年度における産業資金需要は、設備資金及び運転資金を含めまして一兆一千億円程度に達するものと見込まれ、これが確保につきましては、預貯金の増強、企業の自己蓄積増加等、資本蓄積促進に必要な施策を講じて参る考えであります。特に設備資金につきましては、政府資金の活用と、これらの措置によりまして、電源開発のために約一千二百億円、石炭増産及び合理化のために約二百億円、外航船腹増強のために約五百億円、農林水産資源開発のために約七百億円の資金供給し、設備資金総額約四千四百億円程度確保に努め、資金効率的使用を図りたいと考えておるのであります。市中金融機関においても、右の政府施策に全面的に協力せられ、この際、資金重点確保に努め、不用不意の用途への融資を抑制し、資金運用の効率化を図るべきであります。特に右の緊急部門の投資と競合する設備資金につきましては、当分の間極力融資の抑制を図られたいのであります。  政府といたしましては、右に関連し、住宅以外の不要不急の建築を抑制いたしておりまするが、これと共に、工場等につきましては、電力需給の推移をも勘案して、設備の遊休化を生ぜしめないよう、適切な措置を講じて、これが調整を図つて参る所存であります。又、公共事業につきましては、国土の保全及び開発のため、昭和二十七年度には一千三百億円を計上し、土地改良等による農業生産力の増強、治山治水その他経済基盤の育成強化に努め、重点的且つ効率的な運営を企図いたして参りたいと考えております。  最後に国民生活の安定について申述べたいと存じます。政府は、終戰以来今日まで国民生活の安定に努力して来たのでありますが、幸い国民の勤勉と米国経済援助とによりまして、国民生活水準は漸進的に回復を見たのであります。然るに米国経済援助も打切りとなり、講和に伴い国民負担増大するのでありますから、国民生活の安定と向上を期するためには、前に述べました通り、生産増強貿易振興物価の安定を図ることが大事であります。最も基本となります食糧につきましては、食糧事情は漸次好転し、米麦を通ずる主食の需給輸入確保と相待つて、ほぼ均衡を得るに至りましたが、国民生活に及ぼす影響が最も多大でありますので、諸般経済情勢を十分に勘案して愼重に対処いたして参りたいと思うのであります。即ち主食の価格及び需給の安定を図ることを根本といたしまして、これがため、先ず国内食糧増産を図ることを第一義とし、土地改良の促進等により、農業生産力の増大に努める所存であります。これと並行して、我が国の米の生産及び輸入実情に鑑みまして、この際、従来の米食偏重の傾向を打破し、食生活の改善を図るため、油糧作物、畜産物及び水産物の増産、利用の高度化等、総合食糧政策推進すると共に、他面、学校教育を通じ、食生活の改善、国民の栄養知識の普及等を図る所存であります。(拍手)  以上、政府経済施策重点について申述べたのでありますが、今後これらの諸施策実施いたしました場合の昭和二十七年度貿易及び重要物資生産並びに国民所得の見通しにつき、一言いたしますれば、おおむね次の通りであります。即ち、輸出特需を含めおおむね十九億ドル程度となり、輸入は二十一億ドル程度になるものと予想され、昭和二十六年度に比べても貿易規模相当拡大を見るのであります。このほかに貿易外收支を合わせ考えますと、昭和二十七年度国際收支の規模は、受取約二十四億ドル、支拂約二十三億ドルとなりまして、差引一億ドル程度の受取超過となる見込であります。  鉱工業生産は、全体としては昭和二十六年度に比べて約一〇%近くの上昇が期待できるのでありますが、今、重要物資について生産見込を推計いたしますれば、石炭約四千九百万トン、普通鋼鋼材約四百六十万トン、セメント約七百五十万トン、硫安約百九十万トン、綿糸約七億七千万ポンド程度生産が予想されるのであります。これを戰前昭和七—十一年水準と比較いたしますると、約五〇%程度増加に当るのであります。  右の生産貿易等の経済規模拡大に伴いまして、昭和二十七年度国民所得は五兆三百億円程度に上るものと推計され、昭和二十六年度に対し約八%の増加と相成るのであります。  諸君我が国講和成立によりまして、国際社会の光輝ある一員として世界経済に参加することとなつたのでありますが、講和に伴う新たな国民負担が加わる上に、内外の諸情勢の推移に深く思いをいたしますならば、今後の日本経済運営は誠に容易なことではありません。この困難を克服して、日本経済の健全な発展向上とを築き上げて行くためには、政府施策と相待つて国民諸君のたゆまざる努力が必要なのであります。(拍手諸君、徒らに安易を求めることは私の採らざるところであります。併しながら、過去六年余に亘る我が国経済の著しい復興と、そのために我々国民が拂つた輝かしい勤勉努力の跡を顧みまして、日本経済の前途に対し明るい希望を持つものであります。(拍手)私は、日本の新たなる門出に当りまして、国民諸君と共に決意を新たにし、日本経済発展向上のため努力いたす所存であります。(拍手
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 池田大蔵大臣。    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  10. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和二十七年度予算の提出に当りまして、政府財政金融政策に関し、率直に所信を申述べたいと存じます。  平和條約の発効に伴い、我が国が六年有余に亘る占領下の状態を脱して再び独立国となる日の近いことを思うとき、心からなる喜びを感ずるのであります。併しながら、それは同時に、我が国経済的にもみずからの力と責任とにおいて生きて行かねばならぬことはもとより、国際的な義務を履行し、更に積極的に国際社会に貢献すべき使命を担うことを意味するのであります。我々はこの際、我が国経済の過去を顧みると共に、その現状とみずからの弱点とを十分に認識し、光輝ある将来に向つて一層の努力を続けるため、覚悟を新たにいたしたいと思うのであります。  昭和二十年八月、敗戰の日を迎えた頃の、あの惨澹たる我々の生活は未だに記憶に新たなるところでありまするが、それはそのまま当時の我が国経済の姿であつたのであります。荒廃した国土、破壊され消耗した生産施設、而も海外から何百万という引揚の人口を加えて、我々の経済は徒らに混乱を増すのみでありました。物価と賃金の悪循環が始まり、財政も金融もその秩序を失い、経済はまさに崩壊の寸前にあつたのであります。その後、我が国民諸君のたゆまぬ努力は、米国援助を得て、よくこの危機を切り抜けたのでありまするが、昭和二十四年二月、国民絶対多数の支持を受けて、我が自由党内閣が時局の收拾に臨みました当時におきまして、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手鉱工業生産水準は未だ戰前の七割にも達せず、食糧事情もなお十分でなく、いわゆる悪性インフレーシヨンは依然高進を続け、財政も赤字、企業も赤字、家計も又赤字という状態は、更に通貨の増発、物価と賃金の上昇をもたらして、経済全体の姿を異常に歪んだものとしていたのであります。(「選挙演説と違うぞ」と呼ぶ者あり)このときに当り、我が自由党内閣の実行いたしました政策は、先ず財政の総合的均衡を図つて悪性インフレーシヨンの原因を排除し、これによつて安定した通貨の上に、本来の価格機能を通じまして、経済の正常化、能率化をもたらし、我が国経済国際経済に参加せしめつつ、その自立発展を図るという構想によつたのであります。その政策の具体的内容につきましては、ここに繰返して申述べる必要はないと思うのでありまするが、今その成果を一瞥いたしますならば、鉱工業生産昭和二十四年二月に比べまして、現在二倍程度増大いたしました。輸出昭和二十三年度三億四千万ドルに対し、二十六年度はいわゆる特需等を含めまして十七億ドル、約五倍の顕君な伸長を示しているのであります。(「物価は」と呼ぶ者あり)物価と賃金の悪循環は断ち切られました。価格及び流通の分野において広汎に行われておりました闇経済はおおむね正常化されたのであります。(拍手)これと共に通貨に対する信用も回復を見たのであります。(「その通り」「物価は騰貴した」と呼ぶ者あり)国家財政は、その規模、即ち国民所得に対する割合におきまして、二十三年度の二一・三%が二十六年には一七%程度に縮小いたしました。租税負担も又同じく二〇・六%から一五%程度に減少いたしたのであります。(「二十六年度から逆転したぞ」と呼ぶ者あり)企業におきまする自己資本蓄積は、資産再評価等の措置とも相待つて不十分ながらも促進せられ、貯蓄性預貯金及び証券投資も増加し、資本蓄積の面におきましても或る程度の正常化が見られたのであります。国民生活も、例えばエンゲル係数即ち家計費のうち食糧費の占める割合は、六四%程度から最近は五四%程度まで改善せられ、統計の上でも回復の跡が見られるのでありまするが、消費の内容及び質の向上考慮に入れまするならば、計数に現われた以上の充実を見たものと考えるのであります。(「その通りではない」と呼ぶ者あり)私はこの機会において政府の政策に協力を惜しまれなかつた国民諸君に心からなる感謝を捧げたいのであります。(「国民は怒つているよ」と呼ぶ者あり)その間、安定政策の実行が或る部面にとつて相当苦痛であつたことも否定いたしません。併しそれは国民経済全体の合理化、安定化のために、誠に止むを得なかつたところであります。国民諸君が大乗的見地からよくその苦しみに耐え、積極的にこれを克服せられましたことに対し、衷心より敬意を表する次第であります。  以上申述べましたごとく、我が国経済は著るしい回復を示し、特に朝鮮動乱後において飛躍的な発展を見ているのであります。併しながら、このような回復米国の対日援助に負うところが大きく、又朝鮮動乱後の世界的な軍備拡張に伴う国際経済の好況と我が国の地理的條件に基くいわゆる特需増大とによるところが多いのであります。将来、国際経済の如何なる変動にも自力を以てよく対処し得るや否やという見地から検討いたしますときは、遺憾ながら我が国経済はなお幾多の弱点を有し、その基礎は必ずしも強固であるとは申しがたいのであります。(「大蔵大臣兼安本長官」と呼ぶ者あり)  御承知のごとく我が国は戰争の結果、その領域は本土のみとなり、生産設備等に重大な損害を受け、又在外財産は殆んどその全部を喪失し、海外における経済活動の足場も失つたのであります。一方、人口は現在すでに八千四百万人以上に達し、年々百三十万人内外の自然増加を示している状態であります。このように我が国経済は狭隘な基盤の上に多数の人口を養わねばならないという基本的に困難な條件に立つているのであります。而も我が国経済はあらゆる面で蓄積不足という重大な弱点を持つております。山林の濫伐、河川、道路の損傷、鉄道、通信、港湾施設等の修理不足、地力の低下、その他国土資源の荒廃は未だ甚だしいのであります。企業の面におきましても、資本不足が未だ著るしく、特に自己資本不足は、金融機関のオーバー・ローンや、事業会社のオーバー・ボロウイング等の現象を招来し、経済情勢の変動に対する企業の彈力性を乏しくしているのでありまして、これがため、常にインフレ的傾向を激化する可能性を包蔵する半面、又常にデフレ的現象を深刻化する危險をも伴うという、いわゆる経済の底の浅さに苦しまなければならない状態であります。(「池田財政だからだ」と呼ぶ者あり)又個人生活の面におきましても、住宅はなお不足し、日常生活は文化的なものにはなお程遠く、貯蓄の不足は常に生活を不安定なものとしているのであります。このような蓄積不足とも関連いたしまして、我が国産業構造におきましても弱点を有するのであります。産業基礎たる動力及び輸送力、殊に電力、船舶等が不足する半面、一部には過剰設備があり、又設備近代化の立ち遅れ、償却の不足等が未だ十分に是正されていない実情であるのであります。(「金を出してくれないからさ」と呼ぶ者あり)貿易におきましても、全体的に我が国経済の海外依存度が高いのみならず、ドル圏から多く輸入し、ポンド圏に多く輸出するという貿易構造は、ポンド貨に兌換性が乏しいことと相待つて、いわゆるドル不足、ポンド過剰の問題を起しているのであります。又現在の国際情勢の下においては、遠隔の地から必要原料を輸入するという不利を克服しなければなりません。又、我が国の人口問題とも関連いたしまして、農山漁村、中小企業等、比較的経済力の薄弱な部門に多くの人口が依存している関係上、経済不安が直ちに社会不安に繋がる傾向が強いのであります。  このような各部面における弱点は、物価の動きにもこれを見ることができるのであります。朝鮮動乱勃発後において、我が国物価相当上昇を示しまとたのは、一般輸出及び特需の好調に基因するものであり、我が国物価は海外物価の動向に大きく左右されるのであります。又我が国産業における合理化の不徹底な部門においては、国内価格国際価格を上廻るものもあり、特に最近における一般的なコストの上昇傾向は、我が国物価国際物価に対する割高を来たす虞れなしとしない状況であります。(「合理化資金を出しなさい」と呼ぶ者あり)  このように我が国経済には、今後補強を必要とする部面が多々あるのでありまして、これまでの経済回復のみを見て楽観することは許されません。(「安本長官聞いておるか」と呼ぶ者あり、笑声)殊に独立国として国際経済に参加するに際しましては、種々の苛烈な條件が予想されます。賠償の提供、旧債務の安拂、国内治安確保等の責任が加わるのみならず、国際経済基調が今後如何に変動いたしましても、他国の援助によらずみずからの力を以てこれを乗り切らなければならないのであります。いわんや、米国その他友好諸国との経済協力、東南アジアの開発等を通じて広く国際社会の安定と福祉とに貢献せんと念願する我々は、誠に任重くして道遠しの感を抱くのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)現下情勢において、国際経済の正確な見通しを立てることは、何びとにとつても困難であろうと存じます。併しながら来年度におきましても、世界的軍備拡張の大勢よりいたしまして、国際経済はおおむね強含みを続ける半面、世界各国のインフレ抑制の政策によつて、全体としては堅実な歩みを続けるであろう。と見るのが妥当であり、朝鮮動乱勃発後我が国経済が経験した急激な景気の上昇を再び期待するような甘い考えを持つことは危險であると考えます。従つて、将来の我が国経済の使命から申しましても、又当面の見通しから申しましても、真劍に経済合理化し、健全化し、みずからの力を更に強くする努力を拂わなければならないと存ずるのであります。経済向上を図る上において、みずから努めずして成り、みずから働かずして実現する手品のごとき方策はありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの際、国民諸君がインフレーシヨンを是認し、インフレーシヨン調歌の政策が如何に口に甘く、体に害のあるもりであることを十分に理解せられることが最も大切であると思うのであります。敗戰に続くこの六年余の経験は、我々にとつて決して無意義ではありません。国際的には協調の精神を知り、政治的には民主主義の理念を学び、経済的には結局において健全な運営方針によることが如何に大切であるかを体得したのであります。今後の国民経済運営もこの方向に沿つて行われなければならぬと信ずるのであります。今後の経済運営における課題は、国民生活向上を終局の目的としつつ、次の三つの要素を如何に按配するかにあると思います。(「第一は再軍備だろう」と呼ぶ者あり)  第一は、国際関係から生ずる問題であります。即ち、如何に賠償、対外債務の支拂、安全保障及び治安確保等に必要な支拂に対処するか、又国際收支の拡大均衡とを如何に実現するかということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その二は、経済の充実発展のための要求であります。即ち国内投資をどの程度の速度と規模において実現するかということであります。その第三は、民生の安定という見地からの要請であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち国民の当面の生活をどの程度の歩調と内容において向上させるかということであります。この三者は互いに競合する半面、又互いに因となり果となる関係にあるものでありまして、国民経済全体として最大の効果を挙げ得るよう、この三者の順序と振合いを調整することが政治の役割であります。(「再軍備費はどうする」と呼ぶ者あり)又財政金融政策の任務は、国民経済の正常にして能率的な機能をでき得る限り生かしつつ、必要な限度においてこれに調整を加えて行くところにあると考えるのであります。来たるべき昭和二十七年度こそは、我が国経済がよく国際経済の中に伍して存立を維持し、着実に拡大発展を実現し得るか否かの岐路に立つ年であります。この意味において、経済運営は一層健実に、更に真剣に行うことが緊要であると存じます。(「そんなきまり切つたことを言うな」と呼ぶ者あり)  以下昭和二十七年度予算について説明いたします。今回の予算編成に当つては、以上申述べましたような経済運営の基本的な考え方に立脚いたしたのでありまして、先ず財政規模国民経済力の限度にとどめることが絶対に必要であると考えたのであります。(拍手)即ち、平和條約に基き、又平和回復後の独立国家としての責務に鑑み、当然に負担しなければならない諸経費のみならず、各部面における財政支出への要望は極めて多額に上つておりまするが、国民の負担能力を考慮いたしまして、極力財政規模の圧縮に努め、一般会計の予算総額を八千五百二十七億円余にとどめたのであります。(「大分圧縮しましたね」と呼ぶ者あり)これは五兆三百億円程度見込まれる国民所得に対し一七%弱に当り、昭和二十六年度における割合と同程度であります。その結果、税制につきましても、原則として従来とつて参りました措置を引続きそのまま踏襲することといたし、国民負担の軽減適正化を更に一歩進めることができたのであります。政府といたしましては、今後とも増税に訴えるがごときことは極力これを避ける所存であります。  次に、財政收支均衡方針は従来通りこれを堅持し、一般会計はもとより、各特別会計及び政府関係機関を通じて総合的に收支の均衡を図つております。言うまでもなく、財政は、金融面の施策と相待つて国民経済の健全な運営確保し、その合理化発展とを図るべきものでありますから、予算執行に当つては、総合的な資金需給情勢等を勘案し、実情に即応した措置を講ずる考えであります。  次に経費の配分に関しましては、平和の回復に伴い、我が国は、日米安全保障條約の精神に基き、進んで相互安全保障の責任を果し、且つ、国内治安力を確保増強する必要があるのでありますが、賠償、外債の支拂等の諸経費をも合せ、これら経費が国民経済に過度の圧迫とならないよう能う限りの配意をいたしました。その結果、いわゆる内政費につきましても前年度以上の金額を確保し得ることとなりつたのであります。これらは挙げてこれを経済力の増強と民生の安定とに振り向け、その効率的活用と重点的配分に努めたのであります。  次に予算の内容のうち特に重要なものにつきまして概略説明いたします。  先ず第一に平和回復に伴う措置といたしましては、防衛支出金六百五十億円、警察予備隊費五百四十億円、海上保安庁経費のうち警備救難に関するもの約七十億円、安全保障諸費五百六十億円、連合国財産補償費百億円、平和回復善後処理費百十億円、総計約二千三十億円を計上いたしました。(「詳細を承わりたい」と呼ぶ者あり)防衛支出金は日米安全保障條約に基いて駐留する米軍に関して我がほうにおいて支出を予想される経費であります。(「大変な扶養家族じやないか」と呼ぶ者あり)自衛権を行使する有効な手段を持たない我が国といたしましては、防衛のための暫定措置として米軍の駐留を希望したのでありまして、これに関する経費の一部を負担することは当然の措置であります。(「何が当然か」「どこできめて来たんだ」と呼ぶ者あり)その内容は近く行政協定の締結等によつて具体的に定められることとなりまするが、米軍の装備、米軍の食糧、被服及び給與等は米国側において負担し、その他の経費については両国において分担することが予想されますので、我がほうの負担米国側のそれに比して僅少であると考えます。(拍手)  警察予備隊及び海上保安庁につきましては、その内容を充実し、機能を強化するため、所要の措置を講ずることといたしました。即ち、警察予備隊におきましては、現在の人員七万五千名を更に三万五千名、海上保安庁におきましては、八千名を更に六千名増員すると共に、装備、施設等の拡充を図ることといたしました。安全保障諸費は、治安確保を期するため、警察予備隊及び海上保安庁に計上いたしました経費のほか、例えば営舎の建築、通信、道路、港湾等、諸施設の整備、巡視船等における装備の強化、監視施設の充実等について特段の措置を講ずると共に、治安に関する機構の確立、学校その他教育訓練機関の設置等をも考えておるのであります。今後における諸情勢の推移により、内容が更に具体化するのを待つて、これらの経費の配分を適切に行いたいと思うのであります。  連合国財産補償費は、平和條約に基き連合国財産に関する補償のために要する経費でありまして、(「賠償だよ、それは」と呼ぶ者あり)連合国財産補償法の規定に従つて計上いたしたものであります。  平和回復善後処理費は、連合国に対する賠償、対日援助費の返済、外貨債の償還、その他対外債務の支拂及び占領によつて損害を蒙むつた本邦人に対する補償等を予定いたしております。計上いたしました金額が比較的僅少でありますのは、対外的な経費の支拂につきましては、交渉等の関係上、年度の当初からの支出を必要としないと認められるごと、及び昭和二十六年度補正予算に計上されました平和回復善後処理費が来年度に繰越して使用できることを見込んだためであります。  第二に、経済力の増強のための措置といたしましては、先ず食糧増産対策に重点を置いております。今後人口増加による需要量の増大に対応するためにも、又国際收支の観点からいたしましても、食糧自給度向上を図ることが肝要であります。これがため、来年度予算においては、本年度に比し約百億円を増額して四百三億円を計上し、土地改良事業及び開墾干拓事業の推進、農業共済保險事業の改善充実等を図ることといたしました。  次に国土資源の維持開発であります。来年度における公共事業費は、その最重点を、災害の復旧及び治山治水事業に置き、昭和二十六年度以前に蒙むりました全災害の約三割を来年度中に復旧する予定であります。又河川事業につきましては、電源開発を兼ねた総合開発事業としてこれを推進する計画であります。又経済基礎の充実を図るため、特別会計を含めまして千百八十三億円に上る産業投資を予定いたしております。  第三に、政府は民生の安定及び文教の振興のため、積極的な施策を講ずることといたしました。(「給食はどうした」と呼ぶ者あり)即ち、先ず生活困窮者の保護、健康保險その他の社会保險、結核対策及び失業対策につきまして、五百二十七億円を計上し、本年度に比して六十七億円を増額いたしております。なお、住宅事業の急速な改善に資するため、住宅金融公庫に対し百五十億円の投融資を予定いたしておるのであります。(「一般会計を減らしておるじやないか」と呼ぶ者あり)  次に、戰死者遺家族及び戰争による傷病者(「それだ、問題は」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)に対する援護措置につきましては、遺家族年金その他として二百三十一億円を計上いたしますほか、交付公債約八百八十億円を以て遺家族一時金に充てることといたしました。政府は、国民諸君と共に、戰死者に対し改めて敬弔と感謝の意を表し、(「何を言つている」と呼ぶ者あり、拍手)遺家族及び傷病者のかたがたに深い同情の念を抱くものでありまして、今後とも能う限りの援護措置を講ずる所存であります。(拍手)併し財政の現状に鑑み、(「橋本やめたじやないか」と呼ぶ者あり)又将来に亘る国民負担考慮いたしまして、只今のところ、この程度にとどめざるを得なかつたのであります。(「再軍備のためだ」と呼ぶ者あり)  文教の振興につきましては、六三制校舎の急速な整備を行うため所要の経費を計上いたしますと共に、学術振興、職業教育のための施策の充実について、特段の配意を加えることといたしました。  次に地方財政につきましては、平衡交付金を千二百五十億円に増額すると共に、別途、資金運用部資金による地方債引受の枠を六百五十億円に拡張いたしました。最近、地方財政は逐年膨脹の一途を辿り、財政困難の声が高い実情であります。このような地方財政状況に対しましては、政府並びに地方公共団体共に根本的な検討を加え、行政事務の刷新、歳入の確保、経費の節減及び効果的な使用等について特段の工夫努力が肝要であると存じます。(「責任転嫁しても駄目だ」と呼ぶ者あり)  次に歳入の主たるものといたしましては、租税及び印紙收入を六千三百八十一億円、專売公社益金を千二百五億円と見込んでおります。昭和二十六年度の租税收入は、昨年十二月末の実績におきまして、予算額の七二%以上に達し、年度を通じて予算額を確保し得る見込が十分であります。来年度経済状況につきましては、諸種の観測もあり、租税收入の見積りが過大ではないかという議論をも聞くのでありますが、今後、生産物価共に堅実な歩みを続け、国民所得も順調に増加するものと考えられますので、六千三百八十一億円の租税及び印紙收入を確実に見込むことができるのであります。従いまして、租税收入不足の結果増税に訴えるがごときことは絶対に起らないと確信いたしております。(拍手)税制改正につきましては、先般所得税の軽減を中心といたしまして租税負担の合理的調整措置を講じ、平年度約千億円に達する減税を実施したのでありまするが、来年度におきましても従来の据置を維持するほか、更に所得税及び相続税の負担の軽減合理化を図り、又課税の簡素化及び資本蓄積に資するため、税制改正を行いたい考えであります。即ち、所得税につきましては、生命保險料控除の限度の引上げ、譲渡所得課税の軽減、簡素化等を行い、相続税につきましては税率の引下げ、基礎控除及び生命保險金控除の引上げ、退職金控除の新設等の改正を予定いたしております。又法人税につきましては、徴收猶予の場合の利子税の引下げ等、その合理化を図ることといたしております。なお、砂糖消費税につきましては、その負担の現状及び統制の廃止を考慮いたしまして、増徴を図ることといたしました。(「増税か」と呼ぶ者あり)  次に、金融に関する施策について申述べます。先ず財政による産業資金確保の問題であります。本来産業資金は民間資本の自発的蓄積に待つのが望ましいのでありますが、現状においては未だ不十分でありますので、本年度におきましても、市中金融機関による供給が困難と思われまする長期産業資金、中小企業資金及び農林漁業資金等について、財政資金によりこれを積極的に確保する方針をとることといたしました。(「自由経済の放棄」と呼ぶ者あり)即ち、一般会計、資金運用部資金及び見返資金を合せまして、総額千百八十三億円に達する財政資金の活用を図つております。なお、このほか資金運用部資金につきましては、今後の状況により金融債の引受等による産業資金供給について更に努力と工夫をいたす所存でございます。  次に資本蓄積増強であります。政府は昨年来特に資本蓄積増強に意を用い、これがため積極的に諸施策を講じて参つたのでありまして、その成果は見るべきものがあります。即ち昨年中における金融機関の一般預金の増加額は六千億円を超え、前年の増加額の一・七倍余に達し、投資信託は総額百三十三億円という好成積を收め、株式の拂込金額又約七百五十億円に達する状況であります。このような趨勢にもかかわらず、資本蓄積生産の復興に比較いたしまして著るしく立ち遅れているのでありまして、政府は引続き資本蓄積のための諸施策を更に強力に推進いたす所存であります。即ち税制において資本優遇の措置を講じまするほか、企業の社内留保の確保については今後とも十分配意して参りたいと考えております。又、近く郵便貯金の利子及び預入限度の引上、国民貯蓄組合の非課税限度の引上及び無記名定期預金の実施等の措置を講ずるのほか、特に電源開発資金等に充てるため、新たに貯蓄債券を発行する計画であります。資本蓄積不足を短期間に一挙に解決することはなかなか困難はありますが、政府国民諸君と共に着実に資本蓄積推進して参りたいと存じます。  次に金融機関の経営等に関する問題であります。金融機関の経営方針につきましては、特に経営の健全化と資金の効率的な活用について要望いたしたいのであります。これがため資金の吸收蓄積に一段と努力されることは申すに及ばず、資金の運用に当りましても、かねて政府の要望いたしております不要不急資金の貸出の抑制について積極的に協力せられることを期待いたします。今後の情勢によりましては、信用調整措置は一層その必要性を加えるものと予想されるのでありまするが、政府といたしましては、できるだけ金融機関の自主的措置に待つ所存であります。自立後の経済運営に当つて金融機関の任務は誠に重大であります。この際、各金融機関はよくその公共的使命を自覚し、その役割を遺憾なく果されることを切望してやみません。  なお、金融機構につきましては、政府は逐次その整備を図つてつたのでありまするが、今後とも事態に即応して金融体制の整備確立を進めたいと思つております。  最後に国際金融の問題について申述べます。終戰当時我が国は外貨資金を全く持たなかつたのでありますが、国民諸君努力により、貿易も漸次伸長を見まして、外貨も充実して参りました。昨年米国の対日援助が打切られました後も、国際收支上の著るしい困難を来たすこともなく、今日我が国の外貨保有高は約九億ドルに達して、昨年三月末に比し約四億ドルの増加を示し、米国援助額を控除いたしましても、なお約二億七千万ドルの増加と相成つております。(拍手、「円資金不足するぞ」と呼ぶ者あり)併しながら、このような表面上の好転にもかかわらず、なお幾多の問題を包蔵していることは否定できません。これまでの国際收支の好況も、実は朝鮮動乱に伴う特需の影響による一時的な部面が少くなく、又今後はこれまでのような外国の援助を期持するわけに参らないことはもとより、新たに各種の対外債務の支拂の問題を控えております。従つて堅実な国際收支上の自立がすでに達成せられたものと考えることは尚早であります。我々は正常なる輸出増進に対し今後一段と努力することが必要であります。  更に我が国国際收支の現況については、これを通貨別に検討して、ポンド手持高の異常な増加に注目する必要があります。これを漫然放置するときは、外貨收支の面から貿易が行詰る慮れがあるのであります。これが打開のため、基本的な方向として極力通貨別にも均衡のとれた貿易の拡張に努むべきでありまして、特にポンド地域又はオープン勘定地域からの輸入促進に先ず主眼を置くべきであります。御承知の通り外貨予算面におきまして、本年度第四・四半期にはこれらの地域からの輸入増加するごとといたし、その運用面におきましても、自動承認制の拡大を図り、輸入保証金の割合を引下げる等の措置を講じたのでありますが、国内金融の面におきましても、日本銀行の融資斡旋等の活用を期待しておるのであります。  次に外貨資金と国内資金との調整の問題であります。外貨資金蓄積に努めなければならないことは勿論でありますが、これに見合つて放出せられまする国内資金がインフレーシヨンの要因となる危險があるのであります。政府はいわゆるインベントリー・フアイナンスによつてこの間の調整を図つているのでありまするが、本来は外貨資金増加に見合う国内資金は民間において蓄積されることが望ましいのであります。現在為替銀行は、為替業務の取扱につき、その資金の大部分を財政資金及び日本銀行からの融資に依存しておるのでありまするが、政府は為替銀行がその自主性を回復し、その創意と工夫によつて、正常な為替取引を円滑に進め得るように育成して参りたいと考えております。なお、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への参加も近く実現を見るものと期待されますが、今後とも我が国現行為替レートを堅持し、外資導入その他国際的な資金の交流の円滑化に努め、国際金融の本道を進んで参りたいと考えるのであります。  以上昭和二十七年度予算に関連いたしまして、政府財政金融政策の大綱について申述べた次第であります。(「軍国主義の復活予算だ」と呼ぶ者あり)繰返して申しますが、今や我々は、国際社会において再び栄誉ある地位確立するための出発点に立つておるのであります。この際、政府も、地方公共団体も、企業も、家庭も、おのおの独立国としての自覚に欠くるごとなきやを謙虚に反省すべきときであると存ずるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この意味におきまして、私はここにあえて国民諸君に訴えたいのであります。企業は濫費を愼み、資本蓄積に努めると共に、合理化を進めて、国際経済の変動によく堪え得る実力を涵養し、個人生活は、享楽に堕するごとなく、健全な家庭生活を楽しみ、苦しい中にも節約と貯蓄に努め、将来と子孫のために備えて頂きたいのであります。(拍手)又、公務員諸君は、予算の執行に当り常に適正を旨とするは勿論、更に進んで積極的にその能率的な使用を図るための工夫と努力とをお願いいたしたいのであります。私は、日本国民の勤勉と叡智とは、必ずやよく我が国経済の弱点を克服して、みずから恃むところある経済確立し、世界各国民の尊敬と友情とをかち得ることを諸君と共に確信するものであります。(拍手
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今の国務大臣演説に対しまして質疑の通告がございますが、この質疑は明後日に讓りまして、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明後二十五日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、新議員の紹介  一、常任委員の指名  一、日程第一 国務大臣演説に関する件