○金子洋文君 私は
日本社会党を代表しまして、再軍備に反対し、平和憲法を擁護するために、吉田大臣がいらつしやいませんから、
政府に対して、
質問をいたしたいと存じます。
日米安全保障條約はその前文において、
日本は武装が解除されているので、講和後固有の自衛権を行使する有効な手段を持
つていない、ところが世界の現状は無責任な軍国主義が駆逐されていない、そこで
日本の希望によ
つてそういう軍国主義を阻止するために、
日本国内及びその附近にアメリカの軍隊を置いてやるというふうに謳
つているのであります。即ち講和後
日本は真空
状態になるのだから、ソ連や中共の直接及び間接侵略を受ける危險がある。そこで
日本及びアジアの安定のためにアメリカの軍隊を置いてやるという恩恵的な條文とな
つているのであります。(「そうじやない」と呼ぶ者あり)ダレス特使が来朝して、
日本の真空を問題にした当時においては、朝鮮動乱から受けた衝撃が高潮に達した頃合いでありましたので、
一般国民が
日本の真空に対して憂慮し、同感したのは無理もないことと思いますが、一年有余を経て冷静に物事を批判できるように
なつた今日では、
日本の真空に対する憂慮なるものが余りに神経的であ
つたことや、
国民を神経戦に誘い込もうと意図した或る人々の企らみであ
つたことに、
国民一般はようやく気付いて参
つたのであります。勿論私は講和後の
日本の真空
状態が何ら危險がないと言うのではございません。併し朝鮮動乱に狼狽して、明日にもソ連や中共が海を越えて
日本を侵略するように妄想したことは、一極の神経戰にかか
つたものであり、平和憲法を否定して
日本の再軍備を企らむ人々の神経戰に乗ぜられたものと言わねばなりません。(「ノーノー」「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)なぜかなれば、ソ連や中共が
日本を侵略するということは第三次世界大戰を
意味するものでありまして、容易になし得るものではございません。若し仮にそういう
事態が起
つたとしましても、(「困る、
国民が」と呼ぶ者あり)
日本経済の許す範囲の軍隊などというものは、戰車に対する竹槍のようなものでありまして、却
つて禍いを大きくするものと言わねばなりません。(「少し共産党じみているな」と呼ぶ者あり、笑声)ソ連の直接侵略は、ヒトラーと共同してそれぞれ利益を分配したポーランドに見るだけでソ連衛星国の革命には自国の軍隊を使わないで、他の方法を以て支援しているのであ
つて、それらの衛星国には
経済の許す最大の軍備があ
つたことを忘れてはなりません。中国の革命もその
通りでありまして、中共の勝利を助けるためにアメリカが絶大な援助をした結果とな
つているのであります。従いまして、
日本の真空を誇大に宣伝する人々の意図は、これらの事実に眼を掩うて再軍備を強要する最も悪質的なものと言わねばなりません。(「そうだそうだ」「ノーノー」「不見識なことを言うな」と呼ぶ者あり)率直に申しますならば、日米安全保障協定の主たる目的は、講和後の
日本の真空もさることながら、條約前文の後半に謳
つているように、朝鮮動乱をできるだけ早く有利に解決するために、講和後も━━━━━━━月末国内及びその附近に━━━━━━━━━ことにあるのでありまして、
日本の真空などは附随的なものと申さねばなりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そのことは古田総則と取り交わしたアチソン長官の書簡に見ても明らかでありまして、
日本の真空などには一言も触れておりません。ひたすら朝鮮の動乱を案じて、国際連合の行動に従事する軍隊を
日本国内及びその附近に置いて、支持することを
日本国が許し、且つ容易にすること、又
日本の施設及び役務の使用に伴う費用が現在
通りに、又は
日本国と当該国際連合との間で別に合意される
通りに負担されることを望んでいるのであります。(「何だかわからないよ」と呼ぶ者あり)このアチソン長官の書簡に見る
考え方が、日米安全保障協定が結ばれるに至
つた現実的な根本的な狙いであると思います。
従つて日本の希望によ
つてアメリカが軍隊を置いてやるという恩恵的な條文は、客観的な現実━━━━━━━━━━━━━━━━━なものと申して過言でないと思います。(「その
通り」「そうだ」と呼ぶ者あり、
拍手)
この協定には前文の後段の文章が示すように再軍備の玉手箱が隠されております。然るに吉田総理は両條約審理の特別委員会の席上、私の
質問に対して、「再軍備の王手箱は隠されておりません」と答えているのであります。(「その
通り」「全くだ」と呼ぶ者あり)これは吉田総理の苦しい詭弁であることは言うまでもありませんが、(「ノーノー」「それは本当だよ」「虚偽だよ」と呼ぶ者あり)再軍備が隠されていると否とにかかわらず、吉田総理が
経済上の理由からしばしば繰返しているように、みずからの手によ
つて再軍備しないであろうことは仮に承認してもよろしいと思います。併し
政府の係諸君に言いますが、吉田内閣はもはや長いことはございません。(「その
通り」「余計なことを言うな」「余計な心配をするなよ」と呼ぶ者あり)桐一葉、二葉も、三葉も落ちて、すでに天下の秋は去
つて、勤労大衆は冬の寒空に生活の不安におびえておるのに、恐らく吉田総理は左うちわで今日も大磯の波音を聞いているでありましよう。併し時代はそういう
段階ではございません。(「余計なことを言うな」「その
通り」と呼ぶ者あり)もはや
国民の
総意が吉田内閣を去
つたことは、(「何だ、
緊急質問か」と呼ぶ者あり)総理の郷里であり、
自由党の金城湯池である高知の知事選挙において
自由党が敗れ去
つた一事が、よくそのことを物語
つていると思うのであります。(
拍手、「
緊急質問」「つまらんことを言うな」と呼ぶ者あり)すでに
政府も御承知のように、我が
日本社会党を除いた野党連合は、虎視眈々として次期政権を狙
つて(「行かないよ」と呼ぶ者あり)おりますし、(「行かない行かない」と呼ぶ者あり)片山哲氏は逸早く国会解散と野党連立政権担当の意のあることを表明しました。(「そんなこと言わないよ」と呼ぶ者あり)慌てた一部の人々は右派的聡明さを以て取消しましたが、いずれにせよ、(「
緊急質問」と呼ぶ者あり)吉田内閣の命脈は旦夕に迫
つていることはもはや疑う余地はございません。(「嘘言え」と呼ぶ者あり)
そこで私
政府にお尋ねしたいことは、(「何を聞こうとするのだ」「これからですよ」と呼ぶ者あり)よし吉田内閣の手で再軍備なされなか
つたとしても、再軍備を欲する政党や首班によ
つて次期政権が担当された場合、再軍備は必至であると言わればなりません。
従つてかかる條約を結んだ吉田総理の責任は重大であると思います。(「そんなことじやない」と呼ぶ者あり)仮に芦田均氏のごとき恥を知らない、似て非なる平利憲法礼讃者が次期政権を担当した場合、(「その
通り」と呼ぶ者あり)この條約を楯にと
つて再軍備を行うのは必至と思うが、
政府はそれをどう考えておられるか、これが
質問の第一点。(「民主党によく聞けよ」と呼ぶ者あり)第二点は、そういう場合この條約を結んだ首相においても重大な責任があると思うが、その責任を明らかにして頂きたい。(「そんな仮定の責任はとれん」と呼ぶ者あり)第三は、アチソン長官の書簡にもあるように、講和後アメリカ解除が駐留して
日本の施設を使用することにな
つているが、
日本の軍事施設を使用しても、首相が委員会において答えたように、軍事基地を與えることにならないのかどうか、同時にそのことは平和憲法に背反すると思うが、総理の
見解はどうであるか、総理がいないから
政府の
見解はどうであるか。(「誰もいないよ」「不まじめも甚だしい」と呼ぶ者あり)
サンフランシスコ講和
会議に出席して感じたことは、トルーマン大統預の演説を聞いてもそうでありましたが、(「無
政府状態だよ」と呼ぶ者あり)アメリカにおいては
日本の再軍備は既定の事案とな
つております。中には
日本に平和憲法を進めておいて、今更、再軍備を強要するのはアメリカの正義を誤まり、背信を世界に示すにひとしいと反対する人もありますが、そういう人々も
日本の再軍備は既定の事実と見ておるのであります。こういうアメリカの
考え方を作り上げたのはダレス特使の演説や声明であ
つたことは言うまでもありませんが、ワシントンやロスアンゼルスにおけるダレス特使の演説を要約すると、
一、
日本が講和後の軍事的真空を避けるため、
日本みずからの選択によ
つて駐兵を希望するのであ
つて、強制されたものでないこと。
二、安全保障は双務酌、相助的でなければならない。
日本のみが只來りすることは許されない。
三、
従つて駐兵協定は
日本が再軍備するまでの暫定的取極であること。
四、この取極は
日本に対して事実上の保護を與えるが、
日本自身の寄與が明らかになるまで
法律的保障を與えない。
この演説
内容からいたしまして、アメリカ人が
日本の再軍備を既定の事実と考えるのは当然と思います。両條約審議の委員会において、私はこのことを申上げて、総理はダレス特使のこの演説をどうお考えにな
つているかを
質問したのでありますが、総理のお答えは、「ダレス特使の演説の
内容については自分は直接新聞発表を読んでいないが、ほかからいろいろ聞いている。ダレス特使が再軍備は師既定の事実のように言
つたとしても、私との間に再軍備について話したことはございません。」かように答えておるのであります。お答えのように、ダレス特使と総理との間に再軍備についてお話がなか
つたかも知れないが、
日本の運命を決する講和について話合
つたことは間違いない事実であります。その特使がアメリカに帰
つてしました演説の
内容について、御自分が新聞発表を読まないで、ほかからいろいろ聞いただけでは、一国の外務大臣として職責を果たすものとは言えないと思います。(「今日もおらない」と呼ぶ者あり)同時にこのことはダレス特使に対しても甚だ非礼であ
つて、若しダレス特使の演説
内容が総理との話合いと相違している場合には、それに対して適当の
処置をとることは当然であ
つて、呆然として見送る態度は、外務大臣として無責任も甚だしいと言わざるを得ないと思います。(
拍手、「ノーノー」と呼ぶ者あり)今回三たび来朝されたダレス特使は、
日本へ再軍備を勧める考えはないと記者団との会見で申しているが、アメリカにおいては
日本の再軍備が既定の事実とな
つていることは絶対に間違いございません。そのことはアメリカを訪問したオーストラリアの外務大臣が、帰国に際して声明した言葉によ
つても明らかでございます。即ち十二月十二日夕刊紙の伝えるところによると、ケーシー・オーストラリア外相は記者団に対して次のように答えているのであります。(「それがどうした」と呼ぶ者あり)ワシントンでの会見の結果、米
政府当局の保障によ
つて日本の再軍備に対するオーストラリアの恐怖の念は非常に薄く
なつたと、かように申しておるのであります。(「結構じやないか」と呼ぶ者あり)言葉を換えて言うと、オーストラリアにと
つて恐怖の念が非常に薄く
なつたところの再軍備が行われることが明らかにされておるのであります。この條約には再軍備の玉手箱は隠されておりませんと、私に答えた総理の
答弁を、先に苦しい詭弁であると申したのもこの故でありまして、(「それは詭弁だ」と呼ぶ者あり)それは日米安全保障條約に再軍備が秘められておることは世界が確認しておるところの既定の事実であることを強く申しておきたいと思います。(「その
通り」「明々白々」「確認しても
日本はやらんよ」と呼ぶ者あり)私は、吉田総理が軍備が嫌いであることをよく承知しております。
日本の軍隊の例を引いて、軍備がしばしば国を誤まるものであり、有害無益であることを委員会で縷縷述べたときの首相の誠実を疑うものではありません。(「それでよろしい」と呼ぶ者あり)ところが総理の頑強な軍備反対が、ダレス特使と会うたびことに次第に軟化し始めたことは否むことはできません。(「その
通りその
通り」「心配ない」と呼ぶ者あり)そうして最後に総理は、
日本の
経済事情が許さないから再軍備はできないというところまで追い込まれざるを得なか
つたのであります。この敗北的な言明は誠に重大であります。何故重大かと申しますと、この言明を裏返すと、
経済の事情が許すなら独立国家として再軍備するのはよろしいということになるのでありまして、
日本の平和憲法を蹂躪する言明となるからであります。(「そんなことない」と呼ぶ者あり)
そこで私は再軍備に反対し、平和憲法を飽くまで擁護する立場において、次の三点について
政府に
答弁を求めたいと存じます。
政府は平和憲法を擁護するためにも、飽くまで再軍備に反対するのかどうか、これが第一点。第二点は、ダレス特使の演説
内容をみずから目を通さないことは、ダレス特使に対して非礼であり、外務大臣として怠慢であると思うが、(「やめたらどうだ」と呼ぶ者あり)
政府のお考えを聞かしてもらいたい。(「
答弁無用」と呼ぶ者あり)(第三点は、警察予備隊は時期を見計ら
つて軍隊に切換えられると
国民一般は相愛の念を持
つています。(「そんなことない」と呼ぶ者あり)果して然るかどうか、
政府の所見を伺いたい。
日本は敗戰によ
つて重大な打撃を受けました、が、占領政策の民主的
措置によ
つて、貴重な革命的收穫を得たことは諸君も御承知の
通りであります。然るに吉田内閣の反動政は、これらの民主的制度を官僚的狡智を以て次々と扼殺するのみならず、敗戰後のただ一つの輝かしい国宝とも言うべき平和憲法さえ踏みにじ
つて戰争の不安をかき立てる方向へ進んでおります。而も失政に次ぐ悪政の連続で(「ノーノー」と呼ぶ者あり)第十一回
臨時国会だけでも、米麦統制撤廃において無能を暴露し、(「余計なことを言うな」と呼ぶものあり)行政整理において無残に敗退を喫し、天野
国民実践要領は空中分解して天下の物笑いと
なつたのであります。(「その
通りその
通り」「十一回国会ではない」と呼ぶ者あり)そのいずれの一つをと
つても、吉田内閣は当然引責辞職すべきであるにもかかわらず、(「責任を重んじろ」と呼ぶ者あり)末世的表情を示しながら、政権にかじりついて恥じるところがございません。(「何の
質問だ」と呼ぶ者あり)
今や吉田内閣に対する不信の声は澎湃として天下に満ち溢れていることは、高知の知事選挙のみならず、(笑声)
中小企業者や、農民の怨嗟の声にも、果敢な労働者諸君の冬季攻勢にも顕著に示されているのであります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)私は勤労大衆の名において吉田内閣の退陣を強く要請して
質問を終りたいと存じます。(
拍手)、「その
通り」「誰が
答弁するのか」「落第々々」「愛嬌がある」「誰だね」「
答弁の必要なし」「あるあると呼ぶ者あり)
〔金子洋文君「誰です
答弁するのは、下手な
答弁すると再
質問しますよ」と述ぶ〕
〔国務大臣益谷秀次君
登壇、
拍手〕