○
羽仁五郎君
只今の点につきまして私も
伊藤委員と同じ
趣旨の
質問を
前回にいたしまして、それに対する今一応の
お答えがあ
つたのですが、
前回に伺いました点は、なお
はつきりこの際申上げておいたほうがいいと思うのでありますが、第一は、刑の
本質に関するものです。これについては大体今日御
説明がありました中にも、平和に対する罪、それから、いわゆる
一般に言われているように
個々の
職事犯罪、それから
人道に対する罪、そういうような点ですが、これらについては去る二月二十五日の本
委員会において私が
法務総裁に向
つて質疑し。
法務総裁の
お答えが
参議院法務委員会会議録第八号に載
つております。これは
政府の正式の
見解でしようから、少くとも今日おつしや
つた以上に、
法務総裁の
お答えの中にその点が
はつきり現われております。で、この点は明らかにして頂くことが、本
法律案の審議の上に欠くべからざる
條件であろうと思う。それでそういうことを我々が繰返し繰返し要求するのは、
伊藤委員のお
考えも恐らくそうであろうと思うのでありますが、この
法律案が餘りに事務的に過ぎている。それでこの
法律案が若しこのままだと、そういう点で
法律としての権威において欠ける
ところがあるのじやないかということが疑われるからです。第一の点はその
意味で、刑の
本質を明らかにしなければならん。なぜ明らかにしなければならんかというと、刑の
本質についての明確な
認識というものがないと、それを
執行する上にも、又それに対して
赦免その他の寛大な
措置がとられる上にも、その
態度というものに
はつきりした根拠がないかの
感じを与える。だから極くあつさり申上げれば、平和に対する罪、
職事犯罪及び
人道に対する罪というものは確立されたものであり、我々もこれを確立せられたるものとして
認識する。この点が
はつきりすればこそ、これを
執行する上においても
確信があるし、又それが今
平和條約が発効し、
日本が独立する際において、或いは最も寛大な
措置がとらるべきたという主張を内外に向
つて述べる上にも、しつかりした
確信を持
つて言うことができる。そういう
意味で第一点としては刑の
本質の明確な
認識がなければならない。第二点は、それあ
つて初めてこれを
執行するのも、それについて寛大な
措置がとれるのも、その
確信があ
つて初めてできることになる。第三点は、この前に或いは申述べなか
つたかと思うのですが、同時につまりこういうような
機会に、或る
意味において
日本に今まで
先例のなか
つたような刑の
執行及び
赦免に関する立法が行われるのですから、我々としてはこういう
機会にこれ以外の刑の
執行及び
赦免について、今までにある
先例というものを或る
意味においてはそれに拘束されないで、刑の
執行についても、
赦免についても、新らしい
進歩を表わすことを私としては実は期待してお
つたのです。それで今までの
日本の
国内法による刑の
執行及び
赦免については、それが必ずしも我々の期待するような
進歩というものが現われていない。表われていないけれ
ども、そこに
進歩を表わそうとすると、
先例なりいろいろな従来の問題があ
つて、必ずしもすぐさまそういうふうには行けない。併し現在この問題にな
つておる
平和條約第十
一條による刑の
執行及び
赦免については、これは
先例がないのですから、だからこの際最も
進歩的な
態度をとるということができる。そうした
進歩的な刑の
執行及び
赦免に対する
態度というものが、各
條文に現われておることが必要ではないか。もつと具体的に申上げるならば、つまり例えば
岡部委員が常に言われるごとくに、
刑務所という
ところは人を入れておく
ところではない、人を出す
ところであるというような、非常に卓見だとして私は尊敬しておる者でありますが、併しそれは今までの
刑法なり或いは
監獄法なりというものには、そういう精神はなかなか現われていない。
伊藤委員がこの間各
條文について御
質問にな
つた。つまりそこに入
つておる人にと
つてできるだけ親切な
立場をとる。例えばこれはこの間各
條項についての
逐條審議の際、
伊藤委員が述べられた御
意見の中の三分の一くらいは、そういう点に関するものだ
つたと思うのですが、それがこれでは現われていないのです。それでそういう
意味で、こういう
機会に特にこういう前例のない刑の
執行及び
赦免について、現代の国際的な最も
進歩的な
行刑の
あり方というものが、この各
條項に現われて来るということを私は非常に期待していたのです。
ところが一向そうでない。或る場合、つまりさまざまの
先例によ
つて拘束されておる今までのあれと、大した違いはないので、私は非常に残念だと思う。こういう
機会に、こういう特殊の場合において、
進歩的な
態度をとれば、やがてそれが逆に
影響を及ぼして、従来さまざまの
先例で拘束されていた
行刑に関する
法律なり
制度なりを、これから逆にそつちに、
進歩的な
影響を与えることができて、
日本の
行刑制度というものが、この際一歩前進することができると、そういう期待を非常に持
つてお
つたのですが、それがまだここには現れていない。
以上申上げましたような三点、この三点を本来ならこの
條文の上に現したいと思うのですけれ
ども、それは如何にも無理だと思う。そこで次善の策としては、前文なりにでもそういう
趣旨を現して頂くことができればと、私
たちとしては非常にこれを希望する、併しこれもなかなか無理かと思う。そこで百歩を譲りまして、この
法律が成立する前後に、百歩を
讓つて、最小限として、この
委員会で以て今の三点について、私の申上げたような
趣旨をお汲みとり下す
つた政府側からの御発表があれば、それを以て我々は満足するより仕方がないのじやないかというふうに
考えたわけなんです。それで、大広そういうふうになされるように、私は了承してお
つたのですが、
先ほど伺
つておると、それが何だか逆に崩れてしま
つたので、どうも
先ほどの御
説明では満足することができないのは非常に遺憾に思いますので、
伊藤委員も御同感のようでありますから、次の
機会に、今のような点について、
政府の御
意見として伺うことができれば、我々も満足することができるんじやないかというふうに思うのです。