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1952-04-04 第13回国会 参議院 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月四日(金曜日)    午後二時二十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡部  常君    委員            加藤 武徳君            長谷山行毅君            宮城タマヨ君            吉田 法晴君            伊藤  修君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    法務政務次官  龍野喜一郎君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務府橋正保護    局長      古橋浦四郎君    中央更生保護委    員会事務局長  齋藤 三郎君    中央更生保護委    員会事務局少年    部長      池田 浩三君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○平和條約第十一條による刑の執行及  び赦免等に関する法律案(内閣送  付)   —————————————
  2. 岡部常

    委員長岡部常君) 只今より小委員会を開会いたします。平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題に供します。前回に引続き質疑を継続いたしますが、質疑に入ります前に前回伊藤委員及び羽仁委員の御質問に対する政府の御答辯をお願いいたします。
  3. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 御質問趣旨戦犯者に対する刑というものの本質というものはどんなものかという御質問のように伺いましたのですが、これは御承知通り平和條約の第十一條によりまして、連合国側裁判を受諾いたしたのでありまするから、原則的にいわゆる平和に対する罪、戦時犯罪及び人道に対する罪についての連合国側裁判を受諾したわけでございます。従いまして政府としてはその裁判による刑をまあ執行せねばならんわけでありますが、現に拘禁せられている人たち個々裁判の内容については、勿論我が国として審査する権限を持たなかつたことは御承知通りでありますが、従いましてその罪とせられておる事実もその多くは戦事中の特殊な状態下において行われました行爲についてその責任を問われたものでありまして、個々に検討すればいろいろ同情しなければならない事情もたくさんあろうかと思われます。法律の実施に当つて赦免、刑の減刑、仮出所の勧告を活溌に行うなど、実際に当りましてはそのよろしきを得た処置をとりたいというふうに思つております。なおこれで再度の御質問があればお答えいたします。
  4. 伊藤修

    伊藤修君 只今の御答辯では、一昨日古橋さんそのほかのおかたから御説明があつたと一歩も出ていないのです。いわゆる刑の本質というものは少しも明らかにしていない、外輪を縷々お述べになつているに過ぎない。私の聞こうとするのは刑の本質について私はお尋ねしておるのですから、なおよく御研究の上一つ答辯願いたいと思います。
  5. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 私ども考えておりますのは、伊藤さんの御質問に対して適確なる答辯となるかどうか知りませんが、いわゆる戦犯者に対する刑というもの、これは国内法上の刑とはその質を異にしておるものである。即ち刑法各條に定めるところのいわゆる刑という観念を以て律すべきものではなかろう、これは一にかかつて戦犯であると認定いたしました連合国側の定めるところによりまして裁きを受けたわけでございまして、わが国内法上におけるいわゆる刑とは違うものであろうというふうに考えております。併しながらこの條約によりまして我が国はそのよつてつたところの如何を問わずその裁判は受諾することになつております関係上その受諾した以上は、受諾し且つその刑の執行を引受けておる関係上、結果的に見ますればその刑の執行に当りましては、巣鴨プリズンですか、というようなところに収容いたしまして嚴齋に執行しているわけでございますが、お尋ねのこの刑というものの考え方国民感情としても私は国内法上のいわゆる刑法の各條に進めておるいわゆる刑並びに罪とは違うものであるというふうに考えております。
  6. 伊藤修

    伊藤修君 ですから国内法上の刑でもない、又諸外国においての裁判所で言い渡された刑でもない。いわゆるこの今次の戦争がもたらしたところの結果において言い渡されたものであるから、そうした刑というものは何を意味するものか、それをお尋ねしているのです。違つておることは我々でも知つておりますよ。それはいやしくも日本国民拘禁して行くのですから、その刑の本質もわからずして拘禁するという理由はないのですね。條約でそういう定めをしたから何が何だか知らんけれども拘禁して置くのだと、そんな不見識なことはあり得ないと思うのです。それじや我々は全く連合国に隷属したところの一属国民に過ぎないですよ。我々は少くともその條約に定められた義務を引続いてこれを履行して行こうというのには何がためにこれらのいわゆる人々戦犯としてその身柄拘禁して行くのか、何を彼らに今後拘禁のうちに求めるのか、それがわからずして拘禁して行くというあり方は私たちとしては到底考えられないのです。従つて基本的なものを我々としてははつきり認識して、その下にこれらの法律によつてすべてを賄つて行くというあり方が一番正しいのじやないか、本質も究めずして、ただ与えられた條約をそのまま履行して行くという事務処理的なお考え方では納得できないと思うのです。今すぐじやなくともよろしうございますから……。
  7. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 刑の本質問題は重大なる問題でございまするが、先ほども縷々申しました通り我が国国内法的な立場から見れば戦犯者に対する刑が直ちにいわゆる刑若しくは罪というふうに見るべきものではなかろうということは先ほど申しました通りでありまするが、先ほど條約によつてその裁判を受諾したのだからただそのまま漫然と刑を執行するというだけでは如何にも不見識であるという御意見でございましたが、まあ一方から見ればそうでございましようが、併しながら敗戦の結果我が国だけの立場から見ますれば、いろいろ不都合な点、或いは不合理な点もほかにもいろいろあろうかと存じますが、この結果を我々といたしましては殆んど批判することなく受諾しなければならんことは、占領治下において止むを得なかつたという点は御了承願えると思います。ただ講和條約においてそれをそれでは認めるということは不都合じやないかという議論は成るほど立ち得ると思います。立ち得ると思いまするが、併しながら本問題は條約を受諾するかしないかというようなときに、十分檢討さるべき議論ではないかと思います。私はただ車にすでに国会においてあの平和條約を承認した以上は、もうそのときに議論済みの問題であると言つて逃げを張ろうという気持はございませんが、すでに條約としてその重要なる一項目として十一條にその裁判の結果を受諾するように締結しました以上は、その刑の本質法律的に見まして国内法的に、或いは国際法的に見まして如何なるものであるかということを論ずることももとより必要であろうかと思いまするが、我が国側としてはその裁判の結果を忠実に履行するということこそ條約尊重という意味から言つて大事なことじやなかろうかというふうに考えております。無論伊藤さんの御説のこの戦犯の刑というものについての見方については異論ございませんが、我々といたしましては先ほどもくどくど申上げましたようにまあ戦勝国家の与えました一つのまあ制裁と申しますか、そういう意味に解し、それを又條約において認めるということを受諾した以上は、これが執行について忠実に当るというふうに解した方が、最もいいのじやないかというふうな態度を持つておるわけでございます。
  8. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記をとめて。    〔速記中止
  9. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記を始めて。
  10. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今の点につきまして私も伊藤委員と同じ趣旨質問前回にいたしまして、それに対する今一応のお答えがあつたのですが、前回に伺いました点は、なおはつきりこの際申上げておいたほうがいいと思うのでありますが、第一は、刑の本質に関するものです。これについては大体今日御説明がありました中にも、平和に対する罪、それから、いわゆる一般に言われているように個々職事犯罪、それから人道に対する罪、そういうような点ですが、これらについては去る二月二十五日の本委員会において私が法務総裁に向つて質疑し。法務総裁お答え参議院法務委員会会議録第八号に載つております。これは政府の正式の見解でしようから、少くとも今日おつしやつた以上に、法務総裁お答えの中にその点がはつきり現われております。で、この点は明らかにして頂くことが、本法律案の審議の上に欠くべからざる條件であろうと思う。それでそういうことを我々が繰返し繰返し要求するのは、伊藤委員のお考えも恐らくそうであろうと思うのでありますが、この法律案が餘りに事務的に過ぎている。それでこの法律案が若しこのままだと、そういう点で法律としての権威において欠けるところがあるのじやないかということが疑われるからです。第一の点はその意味で、刑の本質を明らかにしなければならん。なぜ明らかにしなければならんかというと、刑の本質についての明確な認識というものがないと、それを執行する上にも、又それに対して赦免その他の寛大な措置がとられる上にも、その態度というものにはつきりした根拠がないかの感じを与える。だから極くあつさり申上げれば、平和に対する罪、職事犯罪及び人道に対する罪というものは確立されたものであり、我々もこれを確立せられたるものとして認識する。この点がはつきりすればこそ、これを執行する上においても確信があるし、又それが今平和條約が発効し、日本が独立する際において、或いは最も寛大な措置がとらるべきたという主張を内外に向つて述べる上にも、しつかりした確信を持つて言うことができる。そういう意味で第一点としては刑の本質の明確な認識がなければならない。第二点は、それあつて初めてこれを執行するのも、それについて寛大な措置がとれるのも、その確信があつて初めてできることになる。第三点は、この前に或いは申述べなかつたかと思うのですが、同時につまりこういうような機会に、或る意味において日本に今まで先例のなかつたような刑の執行及赦免に関する立法が行われるのですから、我々としてはこういう機会にこれ以外の刑の執行及赦免について、今までにある先例というものを或る意味においてはそれに拘束されないで、刑の執行についても、赦免についても、新らしい進歩を表わすことを私としては実は期待しておつたのです。それで今までの日本国内法による刑の執行及赦免については、それが必ずしも我々の期待するような進歩というものが現われていない。表われていないけれども、そこに進歩を表わそうとすると、先例なりいろいろな従来の問題があつて、必ずしもすぐさまそういうふうには行けない。併し現在この問題になつておる平和條約第十一條による刑の執行及赦免については、これは先例がないのですから、だからこの際最も進歩的な態度をとるということができる。そうした進歩的な刑の執行及赦免に対する態度というものが、各條文に現われておることが必要ではないか。もつと具体的に申上げるならば、つまり例えば岡部委員が常に言われるごとくに、刑務所というところは人を入れておくところではない、人を出すところであるというような、非常に卓見だとして私は尊敬しておる者でありますが、併しそれは今までの刑法なり或いは監獄法なりというものには、そういう精神はなかなか現われていない。伊藤委員がこの間各條文について御質問になつた。つまりそこに入つておる人にとつてできるだけ親切な立場をとる。例えばこれはこの間各條項についての逐條審議の際、伊藤委員が述べられた御意見の中の三分の一くらいは、そういう点に関するものだつたと思うのですが、それがこれでは現われていないのです。それでそういう意味で、こういう機会に特にこういう前例のない刑の執行及赦免について、現代の国際的な最も進歩的な行刑あり方というものが、この各條項に現われて来るということを私は非常に期待していたのです。ところが一向そうでない。或る場合、つまりさまざまの先例によつて拘束されておる今までのあれと、大した違いはないので、私は非常に残念だと思う。こういう機会に、こういう特殊の場合において、進歩的な態度をとれば、やがてそれが逆に影響を及ぼして、従来さまざまの先例で拘束されていた行刑に関する法律なり制度なりを、これから逆にそつちに、進歩的な影響を与えることができて、日本行刑制度というものが、この際一歩前進することができると、そういう期待を非常に持つてつたのですが、それがまだここには現れていない。  以上申上げましたような三点、この三点を本来ならこの條文の上に現したいと思うのですけれども、それは如何にも無理だと思う。そこで次善の策としては、前文なりにでもそういう趣旨を現して頂くことができればと、私たちとしては非常にこれを希望する、併しこれもなかなか無理かと思う。そこで百歩を譲りまして、この法律が成立する前後に、百歩を讓つて、最小限として、この委員会で以て今の三点について、私の申上げたような趣旨をお汲みとり下すつた政府側からの御発表があれば、それを以て我々は満足するより仕方がないのじやないかというふうに考えたわけなんです。それで、大広そういうふうになされるように、私は了承しておつたのですが、先ほどつておると、それが何だか逆に崩れてしまつたので、どうも先ほどの御説明では満足することができないのは非常に遺憾に思いますので、伊藤委員も御同感のようでありますから、次の機会に、今のような点について、政府の御意見として伺うことができれば、我々も満足することができるんじやないかというふうに思うのです。
  11. 岡部常

    委員長岡部常君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  12. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記を始めて。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 今のような問題を究めて行かないということは、例えばこの巣鴨刑務所という僅かの形式の問題になつて来ますけれども刑務所自体に対しても私は好ましくないと思う。本質が明かになりさえすれば、結局刑務所という名前は不適当じやないかと思う。例えば拘置所とか収容所とかいう名前になつて行かなくちやならんです。刑というものに対する本質が明かにならんから、漫然刑務所として受入れている。そうすると、そこを出所するということは、あたかも前科者が出所して来るというような感じを抱かしめる。国民感情の上においても、いわゆる国内法での刑と同一視せられるという震れがある。こういう点はやはり私たちとしては考慮すべき必要があるんじやないか、こう思いますが、やはり基本問題を明かにしないというと、こういう問題がなおざりにされて行つちまうということになるんですから、そういう点は後で御懇談を申上げるとして、私はやはり全体的に本法を成立させる上において明かにする必要があると思う。若し明かになりますれば、やはりこの刑務所という名前は、これは岡部さんも御同意のようであると思いますが、私はこういう名前は廃止すべきじやないかとこう思うのですが…。  次にお伺いしたいことは、この第五條ですね、五條で、「但し千九百五十一年七月六日に国際刑法及び刑務委員会によつて承認された被拘禁者処遇に関する最低基準その他の国際慣行を尊重するものとする。」とあるこの「承認された被拘禁者処遇に関する最低基準その他の国際慣行」というものはどういうものであるか、これをお示し願いたい。ここでも等しくやはり被拘禁者と、こういう表現を使つておるのです。被告人とは言わない。何かそこに異つたものがあり得るのですか。
  14. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 国際慣行と申上げますのは主として只今巣鴨プリズンにおいてやつておりまするいろいろな処遇方法を申上げるのでございまして、具体的に述べれば、あそこにありまする自治制度とか、それから喫煙等の許可せられておる点、入浴等の点、そのほかいろいろの細かい処遇等につきまする慣行を申すのでございます。又国際連合において認めました被拘禁者処遇基準最低基準もこれは非常に細かい規定でございまするが、いろいろとその中には精神的な面から具体的な処遇方法に至るまで細かく規定いたしまして、収容者処遇保護するようた規定がございます。それらを日本の国情に照しまして採用できる限り採用する、尊重するという趣旨のものでございます。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 まあ最低基準はこの資料として頂きました分でよくわかりますが、いわゆる慣行については、現在集鴨プリズンにおいて行われておるものが即これが国際慣行であるという御説明であります。従つてこの方法に言う受刑、いわゆる刑というのですから受刑者になるのですが、この受刑者国内法のいわゆる刑罰に相応するものであるとすれば、日本監獄法においてもこれと同様な処遇をしなければならないという又理論が出て来るのですが、そうでなく巣鴨プリズンにおいて拘禁せられておる状態というものは、いわゆる今次戦争に対するところ応報刑である、或いは懲罰であるというようなことになつて参りますならば、又別段の考えが出て来るのですが、そういう点もやはり影響して来ると思うのですが、刑罰本質がいわゆる国内法的なものと同様な概念であるということになりますれば、何をかここのみに特別なかような方法を講ずる必要があろうかということになる。若しここに講ずるならば、他の一般受刑者にも講ずべき筋合いじやないかとかように解釈しておるのですが、だから昨日からお尋ねしておる問題は、こういう点から言つてもやはり明らかにしておいて頂かなくちやならんと、こういう理由を重ねてここで質問に代えて申上げておきます。  それからいま一つは、昨日の死刑の問題ですが、昨日監獄法を準用するからそれで賄えるというような御説明でありましたが、この監獄法本法で準用されるものは受刑者に関する規定だけであつて監獄法の第九條によれば死刑囚には刑事被告人に適用する規定が準用されることになつておる。従つて死刑の言渡しを受けた者に対する処遇方法というものは結局準用されないというふうに解釈される。して見ますれば本法でこれを規定しなかつたならばこれに対するところの手当はできないはずじやないかと思うのですが、殊に外地から死刑囚を引継いだ場合におきましてどういう根拠によつてこれを拘置して行くか、死刑執行に至るまで拘置するかということについても刑法の第十一條の二項か直ちにそれに適用できるとは考えられないと思うのですが……。それから昨日の漫然監獄法が準用されるという御説明だけではちよつと不十分じやないかと思うのですが、重ねてその点を御説明をお願いします。
  16. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 條約の発効いたしました後において極刑である死刑執行するということは、私どもは何としても妥当ではないと考えられまするので、この法案におきましてはその死刑を引受けて執行するというような規定は一切設けておりません。併しそういうような死刑の言渡しを受けた者を日本側引渡しを受けまして、そうしてその助命歎願をするということは、これは如何なる場合においても当然私どもはしなければならんことだと思つておるのでございます。監獄法におきまして、そういうような死刑囚引渡しがございました場合にも、これは一応受刑者規定を準用し得る監獄法規定がございまするので、それによりまして死刑を待合せておる期間常にそういうような取扱いをしておりますから、職事犯罪人死刑囚引渡しを受けた場合におきましても、監獄法條文によつて拘禁し得ると考えたのでございます。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 それはちよつとどうかと思うのですね。基本的な考え方として私は外地にいるこれら不幸な死刑囚日本身柄を取つて、そうして助命機会をつかむというあり方が一番いいと思うのですが、なぜ積極的に政府はそういう考えにならないのでしようか。死刑囚引取考えはないのだという考え方は私は納得できないのです。死刑囚なるが故にそれは外地において見殺しにするという考え方なら、これをも何ら考慮する必要はないのです。我々は目前に死を待つこれらの不幸な人々身柄をこつちに引取るチヤンスをつかむべきじやないか。そうして引取つたものを法の運用によつてこれらの助命機会をつかむように一日も生かしておいて、そうして私はあらゆる機会をつかんでこれらの人の助命の目的を達成すべきじやないですか。死刑囚引取考えはないのだと言つて本法で、賄わないのだという考え方は私は絶対に賛成しがたい。従つて死刑囚をも引取るのだという法の建前をとつておかなくちやならんと思う。してみますれば、そういう根本的な考え方なれば、諸外国に現在生きておる死刑囚日本引取るべき機会はあり得る、又引取らなくちやならん。こういう信念で行けば、引取つた、場合にこれに処するところ規定を設けておかなくちやならん、刑法第十一條死刑囚に対して特段に規定があるのだから、こうした規定が直ちに本法で適用できるとは考えられないのです。身柄引取つたならば、死刑囚に対するその規定をそのまま適用なさるという、漫然とお考えのようですけれども、これらは国内法的な刑罰法を受けておる被告人じやないのですから、刑法一條が直ちに適用されるとは考えられない。やはりこれに準用するとか、これに附属したところ條文をここに書き込まなくちやいけないじやないですか。
  18. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) 只今の御説明は、或いは不十分であつたかも知れませんが、実は御見解通り当局としても考えておるのでございまして、先ほど申上げましたのは、死刑囚をそのまま外地に拘置するという意味では全くないのでございます。死刑囚は、でき得るだけこちらに引取つた場合には、その死刑囚赦免減刑等勧告をする考えなのでございますが、死刑執行そのものをこちらで引受ける考えはない。その意味で申上げたのでございますから、御了承願いたいと思います。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 それじや前のほうの訂正、補足だけであつてあとのほうの御答辯がないですね。それから死刑囚引取つて日本で以て絞死刑に処するという考え方は、勿論ないのです。併し一応死刑として言い渡されて、向うで拘置されておるのですから、その死刑を私どものほうで引受けましようと懸引き上当然言つてもいいことです。私どものほうへくれれば助けてしまうと言えば、引渡しやしない。日本人日本人によつて処刑するから、こちらへよこして下さい。身柄引取つてしまえばこつちのものですから、こちらであらゆる機会をとらえて赦免することを考える。初めから赦免するから引渡して下さいと言つたつて、引渡す気には絶対にならないでしよう。だから死刑囚をも我々が担当するのだ、何となれば條約十一條によつてその執行を委託されているのだ。刑の執行といえば死刑をも含むのだから、條約の全文から言つても当然包含されるところの事項だから、まさに我々のほうに引渡すべきである、こう要求して私はいいと思う。先ずそれで死刑執行我我が引受けるのだと、こう表面上打出して引取つて、然る後に国内的に処置すればいい。必ずしも引取つたから、後生大事に、くそ正直に殺してしまう必要は毫末もない。その後において皆さんにおいて適当に御処置つて然るべしです。條約正文からすれば、これをも私は引取機会があるのだから、死刑執行はこつちがいたしますと言つて引取るべきです。そうして、国内においてあとは処理すればいいですから、今日全国で以て、諸外国におるところ死刑囚に対して、各国の元首に対しまして国民が切なる要求をして、助命運動をしておるものですから、まさにこういうチャンスをつかまえて、政府みずから助命チャンスをつかむべきことに働きかけることがいい。従つて、法文の上においては、死刑はやれない、そうするつもりはないのだというてんからそういう頭があるから、それは除外してしまうという結果になつてしまう。それを引受けるのだという考え方でやはり條文をお書きになつたほうがいいじやないかと思う。然らばその者を引取る場合においては、この法文だけでは、根本的に起草するときに死刑囚引取らないという起草の仕方だから死刑囚に対するところの手当というようなものは考えておられないだろうと思う。今大体御説明になつたのを聞いても、それは、この法文では賄なつていないと思う。私どものほうでその死刑囚引取るという考え方に対して御賛同ならばそれに対するところの法文の手当を虚心坦懐にお考え下さつたほうがよろしいと思う。
  20. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) この法文の立案に当りまして、死刑囚引取ることを忘れていた、或いはそういうことを引取らない方針であつたのでは決してございません。その点につきましては、十分考慮したのでございまするが、私どもとしましては、一方においては、外交折衝その他によつて必ず本国に送還される場合に、連合国側において減刑等措置をとられることを強く期待すると共に、若しこちらに死刑囚のままで引取つた場合にもあらゆる機会を捉えてその減刑助命等に努力するつもりでございます。その精神においては全く御同感でございまするが、十分検討の結果、そういう油女の体裁にしたのでございます。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 こういう法文の体裁にしたというのは、それを引取つた場合に、どうするのですか。法文の根拠がないじやないですか。
  22. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 引取つた場合には、監獄法によりまして、未決囚の規定死刑確定囚についても準用されるように、同様に解しておるのでございます。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 私は監獄法でそこまでは賄えないと思うのですが十一條に対するところの御解釈はどうなるのですか。これは適用されるのですか、適用されないのですか。
  24. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) ちよつと御質問の要点はどこでございますか。この第一項でやらなければならんという御意見ですか。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 いわゆる死刑囚拘禁して置くということの根拠法はどこに求めるのかというのです。
  26. 岡部常

    委員長岡部常君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  27. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記を始めて。
  28. 伊藤修

    伊藤修君 もう一つ聞いておきますが、今申上げたような、万一赦免がかなわずして、どうしても本人を執行せざるを得なくなつた場合における規定は、本法によつては直ちに賄えないのですが、やはりこれも監獄法の中の死刑執行に関する規定を或いは準用しておかなくては不備になりはしないかと思うのですが、そういうことは望ましいことじやありませんけれども、万々一そういうふうになつた場合には、これに対するところの準用規定を設けて置かなくちや措置ができなくなりやしないか、こう思うのですが、これらの点を一つ御研究願います。後日御答辯願いますれば結構でございます。
  29. 岡部常

    委員長岡部常君) ほかに御質問ありませんか。
  30. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 前に伊藤委員その他から御質問がございましたそうですが、赦免及び刑の減刑につきまして全然内容と申しますか、基準というものがないということですが、戦犯として、鴨プリズンに入つておる人たちの各A級、B級、C級といつたような項目別にそれぞれ事情が違つておりますが、それから又一人々々について罪状は違いますが、この個々について基準というものをお考えになるのか、一応こういう條章ができた以上、その中味について何らかの御考慮があると思うのですが、全然ないというお話では、それじやこれを実際にやるときにはどうなるかという問題が起るわけですが、その点についてもう少し考えられて泊ります項目といいますか、或いは構想を承わりたいと思います。
  31. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 国内の仮釈放等につきましては、法律規定がございまして、改俊の情があるときには仮出獄をさせることができる規定がございますが、これは実際にはどういうふうにやつているかと申しますと、本人が自分がやつたことに対する自責の念を十分持つており、それから本人が社会に出た後に犯罪を侵す虞れがないよいうふうないろいろな状況、こういうものが第二に考慮されます。第三には、そういう人を仮出獄することによつて国民がどう考えるか、それを是認するか、こういう点が第三として考えられる点と思います。今度の法案におきましては、その点は書かなかつたのでございまするが、常識上からそういつたものが考えられるだろうと思う。それから改俊の情というものが中へ入つておる人の何と言いますか、いろいろだ裁判戦争終了後特殊の状況によつてなされておつたような関係で、必ずしも改俊の情というものを書くことがいいかどうか、私どもはこれを避けたほうがいいのではないかという意味合で書かなかつたのでございまして、氣持としてはそういう点に気持を置いて審理せられ、そうして勧告という手続が決定される、こういうふうに考えております。
  32. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今の御答辯質問の要点を外れておりましたが、仮出所の問題じやなくて、刑の軽減の問題又は赦免の問題ですが、死刑囚の問題については先ほどお話が出ておりますが、その他の点についてこれは刑期の長短はありますが、各級ごとに何らかの例えば先ほど死刑囚の問題については、一応の御構想があつたわけですが、その他の点について何らか構想はないわけではないでしよう。そういうものについてどういう構想があるかということを承わりたい。
  33. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 赦免及び刑の軽減につきましては、個々のケースを十分調査いたしまして、それに値するかどうかということをきめる以外には方法がないのではないか。国内的には従来の恩赦に当りましても、やはり個々のケースを調べるということにいたしております。特別の減刑の場合にも同様にいたしております。それから赦免及び刑の軽減は戦犯者の特質といいまするか、そういう点から考え、殊に平和條約が発効するという後にこの法案が出るわけですから、さような場合にいうてはできるだけいろいろな機会をつかまえて、その活用を図つて行きたい。そのために餘り国内的に制約的な文字を入れることは避けたほうがよくはないか、こういうふうに考えて立案いたした次第であります。
  34. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 例えば講和発効後の機会としては、或いは戴冠式云々といつたようなお話も出たということですが、例えば従来大赦、特赦等の監獄法規定がございますが、そういう機会一つの時期でありましよう。それから死刑囚については、その死刑の免除というようなことについて先ほど御構想を承わりましたが、或いは例えば人道に対する罪、或いは俘虜虐待等の問題にいたしましても、起訴されて十年、十五年と刑を受けております者、それからこれは戦争中のキャンプの実情によつて実際には同じような事案であつても、刑が軽かつたと申しますか、或いは又場合によつては全然刑を受けていないといつたような面もありますし、そういう点から行きますと、一つのこれは何と申しますか、他の例からする赦免或いは刑の軽減の一つ理由になるかと思うのですが、これは一番極端な死刑の場合とそれから一番軽い場合の問題でお話を申上げましたが、その中間についてもそういういろいろな問題があるだろう。そういうものについてどの程度まで考慮せられておるか、或いは、今後考慮せられるかどうかという点をお尋ねしたわけであります。
  35. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 只今の御質問赦免、軽減ということを主としてお尋ねでございますが、今日巣鴨でなされております仮出所につきましては、やはり犯罪事実があるのだという前提の下にいろいろなことが考慮が拂われて行われているということになつております。併しこの法案の活用につきましては、この罪を受けた人の話も十分伺つて、そうしてその罪に問われました事情は十分考えて、個々の事案に妥当な結果をもたらしたい、こういうふうに考えております。
  36. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記をとめて下さい。    午後三時三十一分速記中止    —————・—————    午後四時一分速記開始
  37. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記を始めて下さい、ほかに御発言のかたはありませんか。……ありませんければ、今日はこれを以て散会いたします。次回は追つて。    午後四時二分散会