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1952-06-17 第13回国会 参議院 法務委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)    午前十一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            松浦 定義君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            紅露 みつ君            羽仁 五郎君   衆議院議員            鍛冶 良作君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第四局長    野木 新一君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     関   之君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  五鬼上堅磐君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局総務    局第一課長)  桑原 正憲君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君    最高裁判所長官    代理者    (事務総局刑事    局長)     岸  盛一君    東京地方検察庁    検事正     馬場 義續君   —————————————   本日の会議に付した事件法廷等秩序維持に関する法律案  (衆議院提出) ○訴訟費用等臨時措置法等の一部を改  正する法律案衆議院提出) ○破壞活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を開きます。法案審査に入ります前にちよつと委員各位に申上げます。  破壞活動防止法案に関しての請願が十五件、陳情が七件当委員会に付託されております。その件名とそのほかに委員長等に対する陳情も併せて昨日までに配付いたしました資料にすべて記載してございますから、法案審査の参考として御覧おき願います。なおこれらのものの詳細につきましては、専門委員室に調査を命じてありますから、若し必要がございますならば報告をお求め願います。それではこれより法案審査に入ります。本日は先ず法廷等秩序維持に関する法律案衆議院提出)を議題に供します。発議者より先ず説明を聴取いたします。
  3. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 只今議題となりました法廷等秩序維持に関する法律案について提案理由を申し上げます。  新憲法下におきましては、国会で制定せられました法律権威を守ることは、民主主義の基本的な要請でありまして、法律の具体的な宣明を使命とする裁判が健全に運営されなければ健全なる民主国家の建設を到底望むことができないことはいうまでもないことであります。然るに我が国最近の社会情勢を見まするに、国民の一部には、裁判の重大な使命を十分に理解せず、或いは裁判所における審理妨害し、或いは裁判所権威を全く無視した行為に出る者が続出するという遺憾な状態であります。若し、これをこのまま放任するときは、裁判威信を失墜し、遂には裁判の機能に重大な障害を生ずる虞なしとしないのであります。このような事態に対し、裁判威信を保持し、法の権威を確保し、民主主義の健全な発展を図るためには、裁判所における事件審理妨害する等、裁判威信を著しく害する行為に対し遅滞なく適切な制裁を科することとすることが、最も必要且つ適当と存ずるのであります。  このような見地から法廷等秩序維持を阻害する行為制裁を科する制度を設け、これを新らしい司法制度の一環として加え、その円滑な運用を図るために、ここにこの法案を提出いたした次第であります。  以下、この法案内容につきまして、実体的な部分手続的な部分とに分けて、概略説明申上げます。  まず、実体的な部分について申上げますと、第一に如何なる行為法廷等秩序維持を阻害するものとして制裁対象とするかが、最も重要な事柄でありますが、この点につきましてこの法律案では、これを必要最小限度のものに限定する方針をとりました。即ち、裁判所又は裁判官が、法廷又は法廷外事件について審判その他の手続をするに際して、その面前又はその他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動裁判所の職務の執行妨害し若しくは裁判威信を著しく害する行為を、制裁を科するものとして取上げるのであります。次に、この法律規定する行為をした者に対して科する制裁でありますが、もともと法廷等秩序維持に反する行為は、裁判権威を保持し、裁判の円滑な運用を図るために、特に、これに制裁を科するのでありまして、これを犯罪とみて刑罰を科するわけではありません。広い意味におきましては、一種違法行為でありますが、裁判運用の枠内におけるいわば一種秩序罰と称すべきものであります。このような見地から慎重に検討の結果、その制裁は、二十日以下の監置若しくは三万円以下の過料とし、情状によつてこれを併科できることといたしました。  この法律規定する制裁を科する手続におきまして最も特異といたします点は、裁判所又は裁判官が、自らの発意に基いてその手続を開始し、その裁判所又は他の裁判所審判をいたし、審判検察官の関与を必要としない点であります。このことは、この制度が、専ら裁判威信を保持し、裁判の健全な運用を保護することを目的としたのでありますから、制裁の権限を発動するか否かを、その裁判所又は裁判官の意思によらしめることが妥当でありまして、いやしくも法廷等秩序維持のためにこのような制度を認めます以上、制度本来の建前から当然のことと申さなければなりません。  手続の上における第二の特長は、簡易な手続をとつている点であります。この制裁の性質が刑罰ではありません関係から一般の刑事事件のような複雑な手続はとつておりません。これはこの法案において制裁を科する行為が、原則として、裁判官面前における最も明白な、証拠調も必要でないような行為対象とするからであります。必要に応じて証人訊問その他の証拠調もいたしますが、元来刑罰ではないのでありますから、刑事訴訟法とは全然別の簡易な手続といたしたのであります。併しながら、不服申立その他につきましてはいろいろと慎重に考慮いたしております。通常不服申立方法としましては、地方裁判所家庭裁判所若しくは簡易裁判所又はその裁判官のした制裁を科する裁判に対して、法令違反理由として高等裁判所抗告することができ、高等裁判所又はその裁判官のした裁判に対してはその高等裁判所異議申立をすることができることとなつております。更に抗告又は異議申立について高等裁判所のした裁判に対しては憲法違反等の事由のあるときに、特に最高裁判所抗告することのできる途も開かれております。なお、抗告をするには、申立書原裁判所に提出しなければならないことになつておりますが、原裁判所は、抗告理由があるものと認めるとき、その他原裁判を更正することを適当と認めるときは、自由にその裁判を取消し、又は本人の利益に変更することができるのでありまして、この点非常に幅のある取扱となつております。  次に制裁を科せられるべき行為をした者を不安定な状態に置くことを防止するためには、その行為終つた時から一箇月を経過した後は制裁を科する裁判をすることができないこととするとともに、監置裁判執行は、その裁判があつた時から三箇月を経過した後は、これを開始することができないことといたしております。又、制裁を科する裁判言渡された者の利益を保護するため、抗告異議申立等の結果、取消の裁判があつた場合については刑事補償法を準用して補償する制度を設けております。  その他、裁判執行に関する規定等が設けてありますが、審判手続その他についての細部の規定は、最高裁判所の規則の定めるところにゆだねるのが適当と思われますので、その趣旨委任規定を設けてあります。  最後に、前に申し上げました監置制度は、この法案によつて新たに設けられまする全く新しいものでありますので、附則においてその施設、処遇等についての規定を設けました。  以上をもちまして、本法案提案理由の御説明を終ることといたします。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御質疑のおありのかたは御発言願います。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 いきなりこれでもう質疑に入つて審議を進めるのですか。
  6. 小野義夫

    委員長小野義夫君) そうです。すぐにも上げたい。
  7. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつとそれは無理でしよう。
  8. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 日がないので御遠慮なく御質疑の点は……
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではお尋ねをいたしますが、名前は違つておりましたけれども、同様の法律が前に衆議院審議せられたと申しますか、或いは考慮せられて成立に至らなかつたということを聞いておるのであります。なお破壞活動防止法案を研究して勉強しておる際に裁判秩序保持のために、ちよつと今法文は見当りませんけれども、裁判の運行に関しまする裁判所法その他に若干の規定を見るのでありますが、こういう現行法では賄えないという理由と、それから先に衆議院で考慮せられました裁判所侮辱制裁法、それが成立に至らなかつた理由と、なおこれをこういう法律で出して参りました理由一つ
  10. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 実は名前も変つたものですから、全然新らしい法律なつたと同様でありまするが、内容は前の裁判所侮辱制裁法案修正したものであります。ところがその修正は根本的な修正になつたのであります。そこで前に予備審査としてこちらに出ておつたと思いますが、あの考え方からいたしますると、いわゆる裁判所侮辱ということを建前としてやつております。従つてそういう一種刑罰的なものでありました。そこで今おつしやるように裁判所法審判妨害罪と同様でないけれども同様のように感ぜられるような点があつたわけであります。ところでいろいろ質疑をし研究をいたしました結果、さようなことを考えるよりか目下の日本現状からして必要な最小限度のものにとどめていいのじやないか、こういうことから考えまして、裁判所に対する侮辱した者を制裁するということよりも、裁判所秩序を侵害した者を罰する、こういうふうに考えたわけであります。而もその秩序を侵害して罰するのは目に見えておる差当りの者だけにとどめる、現に騒いでおる者を手当をする、こういうだけのものであるということになりますると、これは秩序罰でよかろう、こういうことになります。そうなりますと裁判所法に定められておりまする審判妨害とは全然趣きを異にいたしまするので、裁判所法審判妨害罪行為があつて、それが犯罪と認めるときに検察官がこれを起訴しまして、初めてやりますが、これはそうじやない、見ておる裁判官がこれは困るからやめろ、こいつは邪魔になるから出してくれ、こういうほんの一時の秩序を維持するだけ、こういうことになりますと、ほんの秩序罰として審判妨害とは全然趣きを異にするものではないか、こういう考え方になります。そこで進んでその制裁をも前のは百日となつておりましたのを思い切つて切下げまして二十日といたしました。それから五万円乃至三万円だつたのでしたが、これを三万円に切下げてしまつた、五万円以下の過料となつていましたのを三万円に切下げた、これが修正の主なる点でございまして、審判妨害罪とは全然観念の異なつたものになつたことを御了承おき願いたいと思います。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 何しろ関係資料をよく見てないので或いは多少当てずつぼうになるかも知れませんけれども、今の御説明で、侮辱制裁法考え方とそれから秩序維持に関する法律との差については、この過料点等説明もございましたけれども、前の法律の場合にはこういう点が問題になつたわけで、ここではこう直したのだ。本質の問題については余りお触れにならなかつたように思うのでありますが、それらについてもう少し承わつておきたい。
  12. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 本質につきましては第一条の修正が、そちらに参照条文が出ておると思いますが、参照条文を御覧下さい。前の案ではこの法律裁判所侮辱とその制裁とに関して規定したものであつて、「裁判所威信を保持し、司法の円滑な運用を図ることを目的とする。」こうなつておりました。それを変えまして「この法律は、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等秩序を維持し、裁判威信を保持することを目的とする。」前のは裁判所侮辱制裁する、このたびのは法廷等秩序を維持する、こういうふうに直した、これが根本的の改正でございます。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 最近の法廷秩序に関するところの全国における事例がどの程度発生しているか、どなたからか御説明願いたい。概略でよろしうございます。
  14. 岸盛一

    説明員岸盛一君) 最近において起きております各地法廷斗争事例一つ一つ申上げますと非常に数が多うございまして、時間がとれますので、全国的に概観したところを申上げたいと思います。終戦後日本裁判所の特異な現象としまして非常に各地法廷斗争が繰りひろげられて来たのであります。恐らくかような事例は世界にその例がないであろうとさえ言われておるのであります。その斗争のやり方はいろいろ変化がありましたのですが、極く最近までの状況を概括的に申しますと、ますますその手段が兇悪化して参つております。悪質化して参つております。第一に法廷斗争が単に偶発的な散発的なものではなくして、計画的、組織的に行われておるという点が一つ特徴であります。それから第二の特徴裁判所、つまり裁判官並びに裁判官以外の裁判所職員に対して直接暴行脅迫等行為が行われ、或いは裁判所内部における器物の毀棄、建造物損壞行為など刑法犯に値いするような行為をあえて辞さないというくらいに暴力的になつて来ております。又計画的且つ組織的な面について申上げますと、この最も適例は先ほど広島に起りましたいわゆる被疑者奪還事件でありますが、この事件が計画的であつたことは、本件はいわゆる勾留理由手続そのもの裁判官が行なつている間は傍聴はさほどの混乱もなく順調に進んだのでありますが、その手続終つて裁判官が閉廷を宣するや否や指揮者命令の下に多数の傍聴人がそれぞれの役割に従つて瞬時の間に被疑者を奪取したという状態であります。又それに至るまで法廷内における手続き進行中、いつの間にか法廷裁判官の出入口の一部が傍聴人によつて占拠されてしまつていたというような状態であります。又混乱の最中に指揮者らしい者が「あれは投げるな」ということを命令したそうでありまして、「あれは投げるな」というその「あれ」とは一体何を指すか、非常に意味深長なものがあると思います。かようなものをあらかじめ用意して法廷の中に傍聴人が来ておつたということは十分に窺われるのであります。  なおこの広島事件のほかに或いは大分地方裁判所における電報局事件判決言渡時における事件、この事件では、事前に地検では被告人奪還を計画しているという情報がございまして、有罪判決直後に傍聴人が一斉に立上つて被告人席になだれ込まうとしたのでありますが、あらかじめ被告人の席と傍聴人の席との間に頑強な裁判所職員十五名を配置しておりましたために、これを食いとめることができました。そのために職員三名が傷を負つたような次第であります。若しこの際、裁判所のかような措置がなかつたならば或いは第二の広島事件が起きていたかも知れないといわれておるのであります。  なお、津の地方裁判所における事件でありますが、この事件の際は第一回公判当時二百人に余る傍聴人が十本の赤旗を先頭に街頭デモを組んで裁判所へ押しかけて参りました。その赤旗十本のうちの三本は先のほうをそいで丁度竹槍のようにしてあつたということであります。かように公判開始前にすでに裁判所の外部においてかような組織的な行動が開始されるのであります。又法廷斗争が計画的であつたということは、裁判所警戒を厳重にいたしておりましたときは比較的問題は起りませんが、普通の警備状態或いは又手放しである場合にはその間隙をぬつていろいろな事件が起ります。  先ほどの広島事件の場合、或いは大阪の地方裁判所堺支部における裁判官に対する暴行事件、これは裁判官法廷が余りにそうぞうしいので法廷秩序を乱す傍聴人に対して退廷を命じましたところが、それを不当であると言つて傍聴人が騒ぎ出したために、審理を続けることができずに、一時休憩を宣して判事室に戻ろうとしたのでありますが、その法廷を出るや否やそこに傍聴人が押しかけまして、裁判官を取囲んで品々に「殺してしまえ」とののしり、裁判官の腰のあたりを靴でけつたという事件であります。こういう広島の場合とか、堺の場合には事前に特別な厳重な警戒をせずに通常の場合と同じような手続きを進めようとしたのでありますが、かようなときにはかような事件が発生いたしておるのであります。以前にも公判傍聴人、一般人を動員しようとして裁判所を誹謗したビラを撒いたり或いはアジビラを張つたりしたことはしばしばありましたが、最近のように組織的に人間を動員して指導者の下に行動するということはなかつたのでありますが、この点については、最近の行動は非常に組織的、計画的に行われておると見られるのであります。  又最近におきまして法廷内の傍聴人法廷外におりまして傍聴券を持たないために傍聴席に入れない群衆、いわゆるデモ隊とが内外呼応して気勢を挙げ、そうして心理的に裁判官を威圧しようとして法を無視した不当な要求を提示して裁判進行妨害を試みようとする傾向が見受けられるのでありまして、顕著な例としましては、ついこの間山口の地方裁判所下関支部で行われました出入国管理令違反事件の第一回公判の際の模様はまさにそれに当るものであると思うのであります。この事件では被告人たち人定質問に先立つて、口々に警察官吏による裁判警備の解除を求め、これは被告人らに対する人体の拘束と同じものであると非難して、弁護人はこれに同調して法廷が騒然となること数回、この間裁判所の正門前に待機しておりました群衆は随時喚声を上げて気勢を示した。弁護人審理続行は不可能なりとして延期を求めましたが、裁判官がこれを却下しましたので、更に裁判官の忌避の手続をとりました。この申請が却下されるに及んで裁判長の許可を受けずに退廷するに至つたのであります。この間裁判長は喧噪中人定質問起訴状朗読等手続を強行して遂に秩序に従わない被告人全部の退廷を命じたという事例があります。  かような事例はここで口を以て申上げてもなかなかその現状をお伝えすることができないほどいわば言語に絶した騒ぎが繰りひろげられております。又最近の傾向は、先ほど申しましたように暴力行為脅迫行為を敢て辞さないという点が大きな注目すべき点でありますが、従来は法廷斗争と申しても裁判所職員に対して暴力を振つた脅迫をした例は殆んどなく、仮にありましても極く稀れでありましたが、最近はかかる事例各地に頻発しております。  大分地方裁判所における先ほどの電報局事件担当裁判官の下には、売国奴襲撃隊或いは行動隊青年愛国グループという名義で被告人をすぐ釈放しなければお前を殺害するといつた趣旨脅迫状が黒枠で舞込んでおります。  又大津地方裁判所判事、これは上村判事ですが、上村判事を殺せとか、或いは人民の手で処断しろというようなビラ街頭にはられたこともあります。かような例はその他旭川等においても行われております。又同じく旭川の或る判事に対して……。
  15. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと御注意申しますが、その辺であと件数を省略してどれくらいの件数というか……
  16. 岸盛一

    説明員岸盛一君) かような次第で、裁判官に対する脅迫というものも今日ではあとをたたぬ次第でありますが、なお審判手続中における暴力行為、これは例えば法廷秩序維持のために裁判官命令を発します。つまり退廷命令を発しますと傍聴人がスクラムを組んでそれを援護して、廷吏の退廷命令執行妨害する。強いてこれを執行しようとしますと、そこで暴力沙汰が起るというような例は数えきれることができないほど起つております。又開廷中に検察官の求刑が重いといつて、その被告人検察官に向つてなつたという例もあります。  或いは或る簡易裁判所では拘留訊問をした際に、裁判官に対して殺してやるということを叫んで、足で裁判官の机を蹴上げるという暴行をやつております。その被疑者は室外に連行される際に命を貰つたから覚えておれというような捨てぜりふを残しております。その他いろいろ裁判所における不穏当な言動は限りありませんが、要するに如何なる理由があつて法廷内の暴力行使を正当化することはできないと思うのでありますが、いわんや民主政治における裁判所というものは、公平な立場に立つてあらゆる法律上の争い、紛争を解決する唯一の機関でありまして、そこでは法廷秩序の支配の下にすべての争いが平和的に公平に解決されるはずのものでありますが、最近の情勢では今申しましたような事情であります。甚だ簡単でありますが。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 最近の事情はよくわかりましたが、然らば裁判所法の第七十一条乃至七十三条によつて、現在におけるところの裁判所のこのありかたに対しまして、秩序を保ち得ないという理由をお伺いいたしたいのですが。
  18. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 理窟の上では秩序を保でるわけですが、検察官がこれを起訴しなければならないものであります。従いまして而も検察官が出ておる。検察官は騒ぐ者の相手かたになるものですから、それがそこで直ちに起訴しようということになると容易ではありませんので、そこでその前に手当をしておいて、それで手当をしてそれですめばよろしい。それでもいかなんだら検察官で起訴する。こういうところに行くべきもので、その前に簡単に一つ抑える方法が必要だとかように考えまして本法案の制定をお願いするわけでございます。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 今の鍛冶さんの御説明現実主義であつて簡単に取締るということだけを考えていらつしやるが、私は鍛冶さんもよくおわかりのことと存じますが、裁判所の現在のありかたといたしまして、やはり威あつて猛からずという姿が望ましい。法律で以て規制しなければ秩序が保てないということではなくて、基本的に裁判所はそれでなくても国民は心服して、我々が曾てあつたような姿で裁判所は維持したいと思うのです。これにはやはり裁判官の素質の問題になると思う。中央においてはさようなことはあり得ないと思いますが、地方においては相当裁判官自身が、裁判威信を傷ける行動若しくは態度、言動というものは多々見受けられます。これらの点は当局においても相当の御関心と御監督というものはあり得ると思う。それから裁判官の独立という蔭に隠れて、裁判官の自由奔放などということは許されないと思います。先ずこの点に対しまして、裁判所はどういうお考えを持つておりますか。お伺いいたしたいと思います。
  20. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 只今伊藤委員のおおせられた威あつて猛からず、正にその通りであります。ただ先ほど岸刑事局長からも御説明いたしましたように、現在の事態においてはやはり法廷秩序を保持するためには、威あつて猛からずの姿だけではできない。それで裁判所としてもこの法律成立を望んでおる次第であります。たまたま裁判官のうちにこれも必ずしも裁判官のみではありませんので、おつしやるような独立の蔭に隠れて自由奔放なようなことがあつた場合には、最高裁判所としても十分さような者に対する処置は、従来訴追或いは懲戒というような点もとつて来ておるのであります。なお今後においでも只今御質問のなされたような趣旨のないように、我々としては司法行政面から考えて行きたい。かように考えております。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 その点は特に一つ事務当局の御考慮を煩わして、法をまつまでもなく裁判所の高い地位というものが国民にそれ自体反映するように、而うして法廷秩序はそれによつて保たれ得るというような理想的な境地を作り出すように御努力下さらんことをお願いしておきます。  この法案に対しまして先の当委員会において予備審査当時におけるところのあの状況と今日の状況とも違つておりますし、又法案の立てかたも根本的に改められたのであります。我々としての考えかたは、いわゆる裁判所がみずからとつて以て裁判するという点について、大きな疑点を持つた次第であります。この点本法に対してどういうお考えを持つておりますか。お伺いいたします。
  22. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) 自分が制裁しようと指摘した者をみずから裁判するということは、理論上どうかと疑念を持たれる点でありますが、これはほかのと違いまして目に見えておるものをすぐにこれだといつて、お前はこういうことをしたから退廷をさせる、更にまだ危いから監置しておくのだと、こういうことを目の前で見てやるものでありますから、それほど証拠その他のことにやかましいことはないのじやないかとかように考えることが根本であります。併しでき得るものならば他の裁判所でやることが最もいいことでありますから、この第三条におきまして、前ののは裁判所侮辱にかかる事件はその裁判所審判するとこうなつておりましたものを、今度は「前条第一項の規定による制裁は、裁判所が科する。」とこういうふうに改めまして、できれば他の裁判所でやる。それから他の裁判所でやる必要がないというほどの簡単なもの、若しくはやろうと思つてもやれない場合は、その裁判所でもやつてよかろう、こういう意味にして、原則は他の裁判所でやるということを考えておるわけであります。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますとその点はあれですか、原則としてはこれは一応他の裁判所でやる、いろいろな例外的な意味において、その裁判所において行うという御趣旨はわかりまするが、それは本法によつてつていないようですが、何かルールによつて賄うのですか。
  24. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) その点もルールで勿論規定を明確にするつもりでおります。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 次にこの第二条ですね、対象たる事実はここに制約されておるのですが、どうも「秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず」というのはどういう趣旨か、先ずそれから伺いましよう。
  26. 野木新一

    政府委員(野木新一君) 便宜上私から御説明申上げます。「秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行なわず若しくは執つた措置に従わず」という趣旨でありますが、この趣旨衆議院法務委員会で提案になつた最初の案におきましては、「秩序を維持するため」という文字がなかつたわけでありまして、その後衆議院法務委員会でいろいろ慎重審議せられました結果、「秩序を維持するため」という文字が入つたわけでありますか、その趣旨は、一つは単なる、純粋な訴訟指揮上の命令はここから外そうということが一つあるわけであります。といいますのは、訴訟指揮上の命令に従わないというのは、訴訟法によつてそれぞれその従わぬことのため不利益を受けますので、それは訴訟法の内部で賄うことにし、ここではむしろ法廷秩序を維持する、そつちの面から取上げて、専らそつちの角度からこの法案を組み立てるほうが妥当であるというような見地から、その趣旨をはつきりさせるために「秩序を維持するため」という文字が入つたわけであります。例えば秩序を維持するために裁判所が命じた事項を行うと申しますのは、法廷で騒いだりする者は或いは退廷命令を下す、ところが退廷命令があつたのにもかかわらず、これに応じないというような場合が、一つ典型的な場合ではないかと思います。次に、「若しくは執つた措置に従わず」、これも秩序を維持するため裁判所がとつた措置に従う、そういうふうにかかるわけでありますが、これは、例えば検証などの現場で、ここからこちらに入らないようにというような繩張りでもして、そこに入らせない措置を講ずる場合に、それを無視して入つて来たというような場合、或いは傍聴券を持つている者だけ入廷を許すというような場合に、傍聴券を持たずに無理に入つて来るというような場合が、まあこれに該当するものと存ずる次第であります。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、あれですね、ここの「秩序を維持するため」ということに前段も後段もかかる、こういうふうに解釈していいのですね。
  28. 野木新一

    政府委員(野木新一君) この「命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず」という……
  29. 伊藤修

    伊藤修君 その二つにかかる……
  30. 野木新一

    政府委員(野木新一君) ここまでは  「秩序を維持するため」というのにかかつておるわけであります。「又は」以下はこれとは又別の言葉になるわけであります。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 なお、この只今例示せられました表現の中には、いわゆる訴訟指揮とか訴訟法上の指揮とかいうのは含まない。これは明らかですね。
  32. 野木新一

    政府委員(野木新一君) その点が衆議院法務委員会で議論になつた点でありまして、この趣旨はそれを含ませないということをはつきりさせる意味で、「秩序を維持するため」という文字を入れたわけでありまして、結論としては含みません。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 従つて検察官及び弁護士というものが、訴訟遂行上訴訟法上の手続についていろいろ行動、防禦するというようなことについてはこれに含まれておらない。
  34. 野木新一

    政府委員(野木新一君) さようでございます。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 次に「暴言、暴行、けん騒」これはまあ表現それ自体で明らかになると思うのでありますが、「その他不穏当な言動」というのはどういう例を示すのでありますか。
  36. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) これはまあ随分これを表わすのに苦心したわけでありますが、まあ「暴言、暴行」はわかります。その次「けん騒」ですがこれもまあいろいろありましたけれども大体わかると思うのです。そこでこれでいいのじやないかと考えたのでありまするが、暴言、暴行もけん騒もせなんで不穏当な場合があり得るということが予想できたわけであります。それでこれを入れましたのですが、例えばそつと法廷内で先ほど言われるような黒枠のビラを配るとか、黙つて裁判官を威圧するようなビラを貼るとか、こういうようなのはこれはどうも何も暴行じやないじやないか、けん騒しておらんじやないか、静粛にやつておるじやないかということをよく近頃言われるものですから、そういう場合がありましたものですから「不穏当な言動」というふうにいたしましたのですが、要するにこれは常識上から考えまして普通あるべからざる行動をしたものと認定されるもの、かように解釈してよかろうかと思います。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 恐らくこの法案は先の裁判所侮辱制裁法案がこの法案に変がえつてつたのですから、この趣旨を飽くまで体して頂いて、いわゆる気違いに刃物を持たすというようなあり方でなくてはならん。それこそ裁判所威信を著しく害することになると思います。だからこの法律を、必要な最小限度において今日の法廷威信を保つということで、濫りに濫用するということがあつてはならないと思うのです。
  38. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) もとより只今伊藤委員がおつしやる通りでありまして、むしろ我々としてはこの法律ができてもこの法律が実際にしばしば使われるというようなことは殆んどないのじやないか、かように考えております。例えば新憲法は裁判所に違憲審査権というようなああいう権力を与えておつても、殆んど違憲の判決をするというようなことは極めて稀なような何でありまして、この法律も願わくば成るべく伝家の宝刀を抜くことなくして、法廷秩序を維持するというように我々としては努めて行きたいと、かように考えております。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 でありますから、最高裁判所の御意思もそこにあるといたしますれば、そういう趣旨の何か訓令、指示というようなものをなさるお考えですか。
  40. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) まあ或いは通達するとか、或いは会同とか、その他あらゆる手段を講じて、この法の成立いたしました暁には、この法の趣旨を具現させたい、さように考えております。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 私はこの法を運用する場合におきまして、事務当局にお願いしておきたいことは、いきなりこの法を適用せず、先ず一応戒告してなお応じない場合において発動するというような、一つの事実上の取扱の緩衝地帯をお設けになることが非常にいいと思います。これは法文においてそうやるということは、これは余り好ましくないことですから、取扱の上において一応戒告し、そうしてそれによつてもなお継続するごとき状態にあれば直ちに発動する、こういう一つの扱い方をなさることが裁判所威信を保つゆえんじやないかと思うのですが、こういう点も御考慮いたしますかどうか。
  42. 五鬼上堅磐

    説明員(五鬼上堅磐君) 只今伊藤委員の御発言十分運営の面において考慮してやつて行きたいと思います。
  43. 伊藤修

    伊藤修君 先ほど村さんに御注意申上げておいたのだが、原案の「不隠当」は隠の字が違つておりますから……。
  44. 鍛冶良作

    衆議院議員鍛冶良作君) こつちのほうは違つておりません。
  45. 伊藤修

    伊藤修君 我々に来ているのが違つておりますから、このまま法文に出ますとみつともないから、「隠」の字が穏当でないから、ミスプリントとして公式に一つ手続きをとつて頂きたい。
  46. 岡部常

    ○岡部常君 本法案における制裁秩序罰であるということは先ほどの提案理由によつても又この法文にも現われておるところでありますが、実際に現われた事例、先ほどたくさんお述べになりましたところを以てみますると、大分刑罰事犯に当るようなものもあるように考えられます。恐らくこの秩序罰を以て臨むのと刑罰を以て臨む事案とはよほどこれは境を接してその限界がむずかしいように私は考えられるのであります。その点について限界をどういうふうに認められるか、そのお考えを一つ承わりたいと思います。
  47. 野木新一

    政府委員(野木新一君) この法案の第二条に掲げているような行為法廷等秩序を害する行為であるという面から取上げておりまして、それに対していわゆる刑罰なり秩序罰という一つ制裁を科するという考えであります。従いまして第二条に取上げた行為が、例えば非常に極端なような場合には、公務執行妨害に一部なるというような場合もあるし、又単に公務執行妨害にはならないし、又裁判所法規定する審判妨害罪にも当らない、他の刑罰法にも当らない、純粋にこれのみであるという場合もいろいろな事案の中にはあると思いますが、いずれにせよこの第二条としてはもつぱら秩序維持という見地からその行為をとらえて、それに相当する秩序維持という制裁を科して行くわけであります。これを検察官が例えばそれが同時に公務執行妨害に当る、或いは審判妨害に当るというように考えた場合に、検察官がそれを犯罪として取上げ、又これに対して刑罰を科するほうが相当であるという見解からその行為をそちらの面から起訴するということを妨げないものであります。併しその場合におきましては運用において十分検察官も考慮しますし、又裁判所でもその犯罪として起訴された者に刑罰を科するという場合におきましても、若しその行為に仮にこの法案制裁を附加して行くという場合には十分量刑その他において斟酌する、そういうような運用になるものと考えておるのでありまして、いわゆるどれが犯罪になりどれがこれのみに当るかという限界につきましては、御趣旨のようにぴたりとそこに一線を画するというようには行かないのではないかと存ずる次第であります。
  48. 岡部常

    ○岡部常君 そこで実際今まで起りました事案について検察庁で相当の手当をしておりますかどうか、どうもその点がいささか緩漫のように見えておりますが、実情について裁判所のほうから……。
  49. 岸盛一

    説明員岸盛一君) 従来の例から見ますとこれが検察権の発動によつて審判妨害罪によつて起訴された事件は三件だけでございます。これは非常に事件としては少いのでございます。どうして少いのかと申しますと、これは先ほどちよつと話が出ました通り、やはり検察官が当事者として本来の事件で相手方の当事者と相対峙しておりますところへ、その法廷で起きた脇道の事件で更に追い討ちをかけるということは心理的にむずかしい点があると思います。  それからこの種の事件といたしまして、仮に検察官が起訴しましても又その公判において法廷闘争が繰りひろげられるということで、審判妨害罪で処理するということは当該の手続において適時適切に秩序を維持して行くということのためにはさして利き目がない、さような面もあろうと思われるのであります。
  50. 岡部常

    ○岡部常君 それで私は実は憂いますのは、こういう法律ができましても実際のところそれだけの実効を持ち得るや否や。例えば三条に書いてあります「裁判所職員、警察官」云々と書いてございますが、実際のことにぶつかつて本当の拘束ができるか、或いは更にこの裁判執行ができるかどうかということが疑問になるのであります。殊にこの第七条の「裁判官命令執行する。」云々となつておりますが、これはどういうものを以てその執行に充てるか、又その員数というようなことはどういうふうになつておりますか。その点をお伺いいたします。
  51. 野木新一

    政府委員(野木新一君) この制裁を科した場合にその執行がうまく行くだろうかという点でございますが、第三条二項はこれは制裁を科する前の一つのいわば保全的の手続でございまして、ここには行刑官吏は入つておりませんが、被告人附添いの行刑官吏が被告人を引致するという立場から或る程度の措置はできると思いますが、それ以外のことにつきましては裁判所職員、警察官が一時的の拘束をするということになつております。併し三条二項の拘束は監置ではありませんで、只今申上げたように一種の保全処分であります。これは実際問題としてもこの程度で賄えるのではないかと存じておる次第であります。次に七条一項の「制裁を科する裁判は、裁判官命令執行する。」と申しますのは、これは刑罰検察官の指揮によつて執行するというような建前になつておるけれども、検察官の介入を避けまして裁判官命令執行するという趣旨であります。なお監置につきましては第二条第二項におきまして「監置は、監置場に留置する。」という規定を置きまして、この法案で創設いたしました監置という秩序罰執行監置場に留置してするという建前になつております。而して監置場につきましては、附則第二項に監獄法の一部を改正いたしまして、監置場は労役場と同様に監獄に附設するということにいたしまして、監置の処  分の内容につきましても、この監獄法の規定を改正いたしまして、原則としては刑事被告人に準じて取扱をいたし、ただ監置制裁であるという面を考えまして、監置させられた者を秩序を維持させるために被告人よりもやや重い取扱をいたしております。そうして結局におきまして刑罰の一番軽い拘留、未決拘留のいわゆる拘留、そういう処分になつておるわけであります。
  52. 岡部常

    ○岡部常君 この拘束と監置の区別は無論わかつておりますが、その拘束でさえも現在の状況から想像しますと大分心細いように感ぜられるのでありまして、その点は十分にお手当なさらなければ、折角法ができても実効が挙りませんから、その点を十分に御留意するように希望いたしておきます。  それから附則の施行期日でございますが、これは「六十日をこえない範囲で」云々とありますが、これはどういうわけで六十日とせられたのでありますか。
  53. 野木新一

    政府委員(野木新一君) この法律を要求する声も一面非常に強いわけでありますが、他面この法律案手続の細部を広く裁判所の規則に委ねておるわけでありまして、裁判所の規則が正式に制定されるためにはルール諮問委員会といつたようないろいろな機関を経て制定されますので、若干日時がかかりますので、それらの点をも考慮いたしまして一応六十日をこえない範囲内で規則の準備等も睨み合せまして政令できめる、そういう建前にいたしたわけであります。
  54. 岡部常

    ○岡部常君 これは実際の法の必要からいいますと、そんなに悠長に時をかすべきものでないと思う。恐らくこれは相当な下準備をなすつておることと私は想像いたしますが、成るべく早く実施を見られるように希望しておきます。
  55. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 議事進行について。ちよつと速記をとめて頂きたい。
  56. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  57. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて下さい。  次に訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案議題に供します。御質疑のおありのかたは発言を願います。……別に御質疑もないようでありますが、質疑は終了したものと認めます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に御異議がないと認めまして、これより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
  59. 伊藤修

    伊藤修君 本法に対しましては先に私が五点に対して質疑を申上げておつたのです。その五点に対しましてはことごとく最高裁判所においても私と同意見のようであつたのです。ですから、その点を基本的に早急に実現することを条件にして本案については賛成します。
  60. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ほかに御発言もなければ討論は終局したものと認めて直ちに採決に入ります。  本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  61. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。  なお例によりまして委員長の口頭報告の内容審査報告書の内容等は便宜委員長に御一任を願います。本案に賛成の諸君の御署名を願います。  多数意見者署名    伊藤修      宮城タマヨ    松浦 定義    加藤 武徳    左藤 義詮    玉柳  實    長谷山行毅    岡部  常    中山 福藏    吉田 法晴
  62. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これにて休憩いたします。    午後零時二十四分休憩    —————・—————    午後二時十八分開会
  63. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を再会いたします。破壞活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案以上三案を便宜一括して議題に供します。先ず宮城委員の御発言を願います。御要求によりまして東京地方検察庁の馬場検事正の御出席を頂きました。
  64. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 馬場検事正はお出で頂きましてお忙しいところ恐れ入ります。実は私が今日特に馬場検事正にお出でを頂きましたわけはいろいろ一問一答によりまして、この破防法の審議が進んで見ますとどうしても今日は検事正からざつくばらんに本当のことをおつしやつて頂きたいと思う一つ二つの問題がございますので御苦労願つたようなわけでございます。私は先だつても申したのでございますけれども大体今までこの検事や検察官を引つくるめまして世の中の人の概念は不浄役人というような考えを持つておりますが、私はいささかその検事の仕事の内容も理解しておるつもりでございますし、又いかに検事が命を捧げ非常に苦労してその職責を尽しておるかということも知つておりますもので、殊に今度の扇動という文字を若し活かさなかつた場合はどういうその検察のかたがたとしては差障りといいますか、仕事に困難がございますかという点について、私は法律家ではございませんから、素人にもわかるような御答弁を願いたいと思つております。私の考えでは、この扇動を活かしておきませんと、十分の一といいますか、十分の三か、或いは百分の一か、それはわかりませんけれども、確かに私は検事の活動を鈍らせるということはわかつておるようでございますが、併し教唆罪が独立いたしました上で、これで何とかして賄えないことはないのではないかという考えも持つおりますけれども、そこいらの点を具体的に御答弁願いたいと存じます。
  65. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 御質問の点でございますが、教唆罪はもう政府委員かたから御説明なつたと思いますけれども、相手が特定しておる場合でございます。ところが破防法で問題になつております扇動の文書でありますとか、或いはそれに近い宣伝文書であるというようなものは、相手が不特定多数の場合で、教唆犯が独立いたしましてもその規定ではこれを取締ることができないのであります。  次に扇動という規定がなかつた場合に取締上どういう不便があるかというお尋ねでございますが、最近のメーデー騒擾事件その他の類似の事件の取調を通じて見ますと、又私どもから見ますなら全く年端も行かない十六歳くらいの少年までが、殆んど狂信的に共産主義運動に唆されると申しますか、狂信的な態度を以てああいう行動に移つておるのでございます。実障私どもの手にかかつて来る者は、そういう背後にあつて操る人たちではなくて、操られた人たちであるというふうに考えられるのであります。而もその操られておる人たちは白い生地に色を塗るようなことでございますから、殆んど無条件にこれを受入れてそれを直ちに行動に移すというのが今日多く見られる例でございます。取調の実際に当つて見ましても、例えば私どもは成るべく母親とか家族の人なんかの面会はできるだけ便宜を図ることにしておりますが、母親が来ても会わない、若し母親が自分の運動をとめるならば、母親も人民の敵であるというようなことを平然と言うところまで狂信的になつておる例があるのでございます。かようなことを見ますにつけましても、特に今日問題になつておる青少年に対しましては、無責任な宣伝、扇動の行為からこれを守るということが私どもの任務ではないかと、かように考えておるのであります。  そこで一、二の例を申上げますと、これもすでにきつと政府委員から御説明があつたと思いますが、急のお呼出しで材料を整える暇がなかつたのでありますが、例えば「中核自衛隊の組織と戦術」という球根栽培法の二十六号の文書でございますが、その中の一部は「中核自衛隊は武装した組織である。従つてこれを組織すると同時に、あらゆる努力を払つて武器を持ち、これを運用する技術を修得しなければならない。武装と武装行動に必要な軍事教育、軍事訓練は、中核自衛隊にとつて欠くことのできないものである。中核自衛隊の武器の主要な補給源は敵である。中核自衛隊はアメリカ占領軍を初め敵の武装機関から武器を奪い取るべきである。このことは可能である。すでに労働者がいろいろな形で敵の武器を持出しており、大衆斗争の中でもこれを意識的に計画すれば必ず取れることが明らかとなつておる。又札付の警察官等を襲い武器を奪うこともできる。我々はこれを行わなければならない。」云々というようなこと、これに類似のことを記載した文書があるのでございます。これを見ましてすぐ私どもが思い起しますのは、例えば蒲田の事件でありますとか、矢口交番の事件でありますとか、或いは最近の岩之坂上襲撃事件というようなものを考えてみますると、やはりこれらの文書と因果関係があるというふうに考えられるのでございます。そこで成るべく言論の自由を守らなければならないことは、私どもも十分承知いたしておるのでありますが、こういうものを放置しておきますと、結局青少年或いは思慮未熟な自由労働者等が、無条件に無批判にこれを受入れて直接行動に出るという虞れが多分にあるのではないか、多分にあると私は信じておるのであります。さような意味合いから、決して望ましいことではありませんけれども、今日の案に出ておる程度の扇動等の取締規定は止むを得ざる措置ではなかろうかと、かように考えておるのであります。
  66. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今馬場さんのお話から思い出しましたが、この間私が伺いました政府に対する質疑で、まだ御答弁がなかつたことで、この間のメーデー事件のときに十六歳くらいの子供が十一人、その当時は十一人くらいでございましたが逆送されておりますが、今どのくらいになつておりますか。家庭裁判所につながりました子供がざつと七十人くらいおりますはずでございます、メーデーの事件で。この家庭裁判所と申しました意来はおわかりになりましようけれども、少年法で保護さるべき少年が七十人近く家庭裁判所に参りまして、それが二週間ぐらい前の話で十一、二人逆送されておるわけであつたのでございます。そのほかにございますか、又その子供たちはどういたしましたでしようか。
  67. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 今数字を持つて参りませんでしたので、私の記憶で申上げますと、多少の違いがあるかも知れませんが、十六歳の少年を家庭裁判所から逆送して参つたのは、私の記憶では三人か四人でございます。それから十八歳以上二十歳までの少年はもう少し多いと思いますけれども、七十人とか八十人という数では断じてないと思います。と申しますのは、今までの起訴数は今のメーデー事件では百八十人であります。そのうち少年が八十人にも上つておるはずはないと私は記憶いたしております。恐らく二十人前後では……、今ここに表がありますが、十六歳未満三人、六月十六日現在で十六歳未満が三人、十九歳未満が十三人、こういう数字でございます。
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは逆送されて起訴された子供でございますね。私が家庭裁判所に参りました七十人と申しましたのは、それは勿論その中から十何人かが起訴されて、家庭裁判所に送られておる子供はとにかくメーデー事件で七十人近くあつたのでございます。それは私はちやんと調査してございます。
  69. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 送置したのは恐らくお話のように数あると思いますが、逆送されたものは法律上大体検事は起訴強制を受けておりますから、殆んど全部起訴しております。その起訴数が十三人、かように考えております。
  70. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 起訴手続はもうできましたのでございますか。
  71. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは期間に制限がありますから済んでおります。
  72. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そこで私はこれは法律論ではございませんけれども、今馬場検事正がおつしやつた十六歳前後の青少年につきましては、無責任な言動から守つてやらなければならないということもおつしやるし、又何でも無条件で無批判でやつておることなんだからこれを守つてやらなければならないということをおつしやつたんですが、その無条件、無批判、無責任なごときり考えられない、いわば教育の過程にある、教育して保護して導いて教えなければならない過程にあります子供たちに対して、この扇動という言葉で縛つていいのでございますか。もつとそれよりもほかにしなければならないことが私どもとしてはあるのではなかろうかと考えます。そこでこの扇動という言葉は非常に私は問題にしております。
  73. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 私が申上げましたのは、今申しました十六歳とか八歳とかいう人は被扇動者の立場にあるわけであります。私は取締らなければならんというのはそういう人たちを扇動するその前の段階で、うしろにあつてつておる人を取締らなければならないという意味であります。
  74. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 併し結果におきましては、結局扇動されまして行動しないでも、つまり、あれをやれ、こうおだてられた、そのおだてに乗つて列を作つても、若し走つたとしても、その人たちは縛られるでしようか、ちよつと来いは言われると思うのですが、そこはどうなんです。
  75. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 扇動に乗つて行動をした者は処罰されるという御質問の趣旨でありますか。
  76. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その行動に乗つたと言いますけれども、それは勿論一定の意思を持つてやるわけでも何でもございません。とにかくおだてられて、例えば総理の官邸に火をつけろというようなことを無責任に言いました者に乗ぜられ無責任に何となしにざあつと行くところの群衆に対しては、法の適用はないのでございますか。
  77. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは扇動の行為のない者は、そこに一緒に居合せたからといつてこれを処罰することはできません。
  78. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そこが大変私どもの心配する点で、法律建前は勿論そうでございますし、それから政府の説明を聞いておりましても勿論そうなんでございますけれども、現に今いろいろ起つておりますこの間の何日でございましたか、渋谷なんかでやつております警察にひつぱられておりますのを私が立つて見ておつたのです。そしてばたばたと縛られて行くのを私見ておりましたから、この法律ができましたらあれ以上のことをやられるのじやないかということを私は心配したのです。
  79. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 具体的にどういうことになりますか……、私どもはこの規定で取締りますのは、非常に激烈な扇動文書を出すとか、或いは非常な悪質な宣伝を出しておだてるほうを取締るつもりで、それでおだてられた者がこの刑罰法規に触れるような行為があれば、これは取締の対象になりますけれども、そうでない限りはおだてられたほうが取締られるということはちよつと考えられないように思うのでございますが。
  80. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 説明はよくわかります。けれどもいろいろ調べてみましたら、例えばやれと言われてついて参りました者をひつぱつてつて調べてみたら、まあ何日かかかつて或いは数時間かも知れませんが調べてみたら、これは何でもなかつた、例えば文書を所持していた、勉強のために本を一冊学生が抱えおつた、たまたまそれがつかまりまして見たらどうも穏当でないものを持つてつた、そうして家庭も調査し、学校も調査し、附近を調査いたしまして、これは何でもなかつた、勿論法の通りにそれは何でもなかつた、問題でなかつたとあなたが説明なさる通りに結果はなりますけれどもその過程を私ども心配するというのです。
  81. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 今穏当でない文書を持つてつたからひつばられたというあれでございますが、これは私は立案に当つておりませんから詳しい法律内容をここで説明するほど知識はないのでございますけれども、この三十七条の規定を見ますと、所持の場合は「頒布し若しくは公然掲示する目的をもつて所持した者」ということになつておりまして、要件がただ持つておるだけでは充たされないことになつておるのであります。今日の捜査の実際を見ましてもこれを掲示する目的をもつてつてつたのだということを言う被疑者はおよそ一人もいないといつてもいいくらいです。あの過激運動をする人たちの中で、断圧のための斗いという文書に、とにかく調べに対しては絶対に黙秘しろ、氏名を言うことすら敵に対する妥協であるということで、とにかくなんでもかんでも黙秘せよという教育を非常に行なつておるようであります。そこで今度のメーデー騒擾事件を見ましても、最も強い黙秘の態度をとるのは学生でございます。殆んど言わないという状況でありますが、そうでなくてもやはりこの所持を取締るというのは、相当大部に頒布したり掲示したりする者だけを、相当の部数を持つておるその場合が取締の対象になるのでありまして、ただ一部持つてつたからすぐ公然掲示する目的があるといつてこれを逮捕することはできないだろうとこう考えております。
  82. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはもう耳にたこができるほどその説明は聞きました。併し実際問題では、例えば学生が本を十部とか、又二十部持つていたからこれは目的があつたろうとかまだいろいろな理窟はつきますけれども、併しそれが本当にそうであるかどうか、そうであるということはどうしてわかりますか。それはただ所持しておつた宣伝ビラの枚数によるとか、顔を見たらどうもこの子はそうでもなさそうだときめられるのは一体それはどこで誰がきめるのですか。
  83. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 御質問のように、数多くの文書を持つてつたから、それですぐ掲示する目的とか頒布目的ということの認定はできないと思います。取調べの実際におきましても例えば印刷屋が、御意見の場合は印刷の問題が取上げられておりませんけれども、前の政令三百二十五号の場合でも、事情を知らない印刷屋が内容を読まずに印刷しておる場合、或いは内容を理解でききない印刷屋が印刷しておる場合は勿論それで取締はしていなかつたのであります。それでどういう場合にそれを認定するかと言われましても、これはここでかような場合と公式的にお答えすることはちよつと困難でございますが、やはりその被疑者の平素の行動でございますとか、或いは思想傾向でございますとか、或いは文書を受取つた経過でありますとか、そういうものをいろいろ総合いたしまして、第一段では検事がこれは公然掲示する目的をもつて所持しておつたものだという認定をするに足る嫌疑があると思う者ならば検事が起訴をする形になつておる。最終的には裁判官が認定するということになるのでございます。
  84. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは折角馬場検事正に来て頂きましたが私の心配は依然としてございます。その認定する者がやはり警察官であり、検察官であり、検事であるので、そのときに、お前は無罪放免だよといつて帰されまして、まあこれでなんでもなかつたよというのはそれは縛るほうの人の考えることで、縛られるほうはそれが問題です、心配がそこにある。間違えられて調べて縛られた場合に、例えば隣り近所に警察がいろいろあの娘はどうだ、少し色が付いておらないか、附合つているのはどういう人たちかと、或いは学校に行つていろいろ調べたことによりまして、もう立つ瀬がなくなる、結婚もできなくなつたという事例も実際あるのですから、私どもの心配はその容疑者としてひつばられて無罪放免で帰されるところの人があつちやならないということを心配しているのです。けれどもそれは私は取調べをするほうの側から申上げますと、確かにそれをやらなければそれで本当の本物がつかまる、大物がとらえられる端緒になるだろうということは勿論わかつておりますよ、わかつておりますけれども、それでそれもとにかく必要であるのではないかと残念ながら思う点があるのでございますが、一体その縛るほうの側から、検事の立場といたしましてどのくらい一体検挙いたしましてそれが本物になるか、そのまあ数の大体の割合はどんなものでございますか。無罪放免にすることのできない事実上のものがどのくらいあるのでございましよう。
  85. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 今その数字は私調査したものを持つておりませんので、どのくらいという答えはできませんけれども、そうむやみに今お話のようなものを逮捕して調べているという事実はないというふうに私は考えておりますが、そういう例がたくさんございますでしようか。
  86. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはたくさんあると思いますが、もう縛ります、つまり警察官がこれはおかしいぞと思つてこの扇動に乗つてこういうことをやつたが、これは本物かも知れない、その持つておるものは確かにこれは今縛つてつても大丈夫と思つてつたのが、実は十の十或いは半分も的中するということは私はないと思つておりますがどうでございましよう。
  87. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) さようなことはないと思いますのですが、例えば今度のメーデーの事件の起訴数が非常に少いようでございますけれども、それはできるだけ起訴を制限しているのでございます。だから帰されるのでも起訴しようと思えばできる証拠のあるのもたくさんありますのですよ。現に今度は千人以上逮捕をして検察庁に参りまして、それから成るべく拘留のところでその証拠の薄いもの或いはないものははねるというのではねて拘留するのが六百人から七百人の間であつたように思うのでございます。それで、今日まで騒擾罪で起訴しましたのが百八十名、それからその騒擾罪に直接関係のない公務執行妨害等で起訴しましたのが八名であつたように記憶しております。そのほかいま百人くらいまだ未決定のまま拘留しておりますが、それで、じやその拘留、起訴しないで釈放しましたものがみんな今お話のような証拠のないものかといいますと、そうじやないのでございます。証拠があつても私は少くとも十八歳未満の少年は原則としてこれは起訴しない方針で行こうという方針をとつておるのでございます。ところがあの問題の三人は、いろいろな観点から家庭に返してもどうも適当な保護者がないというので一応起訴しておくということにしまして、そのうちの一人は又その後いろいろ検討した結果家庭に任したほうがいいのじやなかろうかというので保釈にしておるというような状況で、犯罪成立すれば或いはそれに何か疑いがあればどんどん検挙するという方針で行くつているつもりじやございませんですが。
  88. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今度その千人を逮捕なさいまして六百人を拘留にした。それからそのうちでも起訴されたものが百八十人その他八人、まだ未決定のものが百人ございますね。そうすると、私が問題にして今伺つておりますのはこの起訴されますくらいなもので百八十人、これは問題でない。これはもう、私どもは起訴しなければならないような行動に出るものは飽くまで強く私は法の制裁を加えて頂きたいと思いますけれども、千人のうち七百八十人のものが起訴された、而もその千人のうちで逮捕いたしましたら、それは勿論これは警察につながれたと思いますが、六百人が拘留されている。そうするとその千人のうちから百八十人を引きましたざつと八百二十人というものに対する私が心配をしているのでございます。それを縛るほうの側から言つたらば逮捕したつてそんなことはいまに明らかになるぞと言う、いよいよ公判に行つて証明すればそれでいいじやないかと言うけれども、私ども母親の立場で心配いたしておりますのは、その起訴されないような、起訴されるほどのものでもないものはどうか逮捕させたくないのです。警察にもやりたくないのです。殊にこの青年層や学生層のものに対しましては、このことが私一生涯に非常に害になる。これで若い芽が折られるというように心配いたしておりますから、今申上げていることで、これで私は数字もはつきりいたしました。つまり八百二十人というものがまあ、少しは落度もありましようけれども、或る意味においての私は人権を蹂躙されているという結果になるのじやないかという、これも私は濫用という中には入るのじやないかと思います。これは、私は悲しいことには、この濫用ということは、例えば逮捕いたしますときには濫用していると言つてしているものは警察官でも検事でも私は恐らくない、一生懸命やつている。でも結果を見ますとそれが濫用になるのですから、結果を見てわかることなんで、ここに非常に私はむずかしい問題があると思うのです。如何でしよう検事正のほうは。
  89. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 私の説明が足りなかつたので誤解を招いたようでございますが、今の起訴した百八十人というのは騒擾罪の現場指揮と率先助勢だけしか起訴していないのでございます。だから起訴しようと思えば附和随行で大部分起訴できるかも知れませんが、私は成るべく附和随行した者は、処罰規定はありますけれども、処罰しないで済まそうということでまだこれは起訴不起訴の未決定のままで置いてあるので、割合にその罪のない者を縛つたという趣旨では毛頭ございませんから、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  90. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは結局今起訴されているのは百八十人でございますが、拘留が百人くらいあるのでございますね。ですけれども、大体から申しますと最後まで参りまして千人のうちどのくらい起訴されるのでございましようか。
  91. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 今申しましたように現場指揮と率先助勢だけですと、まあ大体二百人を少し超える程度で済むのじやないか、あと附和随行をどのくらい起訴するかということはいろいろ検討した上できめたいとかように考克ております。だから恐らく不起訴にする場合、皆罪はないのではなくて、起訴猶予ということになると思うのです、若し許す場合は。
  92. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そういうことはいつ頃わかりますのですか、そのはつきりしたことは。
  93. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) これはちよつと、どうしても七月の末くらいになるのじやないかと思います。
  94. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 七月の末。
  95. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) はあ。
  96. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その問題につきましてはこれで打切つておきます。  それから清原刑政長官にちよつとお願い申上げます。昭和十六年の十二月八日に太平洋戦争の御詔勅を拝したのでございますが、あの頃に、大変失礼なことを言いますが、私は清原さんは思想検事でいらしたと思いますが、如何でしようか。
  97. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) お答え申上げます。私は昭和十五年からドイツ、欧米各国へ出張を命ぜられまして、それで太平洋戦争の始まる直前に、開戦の二十日ほど前でございますか帰朝いたしまして司法省に勤務いたしておりましたが、それから翌年の一月の初めぐらいでしたか、開戦直後まで本省の刑事局第五課長のポストにおりましたが、帰朝句々でございましたからこの間あまり、あまりといいますか、帰朝報告その他の事務をとつておりまして、一月になつて大審院検事局のほうへ転補いたしました。ですから司法省におつたことは事実でございます。
  98. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その頃に、この地方検察庁の思想検事のかたに聞けば一番よくわかるかも知れませんが、馬場検事正もきつとその頃東京にお出でだつたと思いますが、あの十二月八日の朝転両者を大方検挙したと思いますが如何ですか。全国の転両者を。特審局長もその頃に検事でいらしたのですか。
  99. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さようであります。記憶はありません。その頃十二月八日の早朝一斉検挙をやつた記憶はありません。
  100. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 馬場さん如何でしようか。
  101. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) どうも私はそのとき経済課長をしておりましたので、司法省で。それで外人を検挙したとう記憶は残つておりますが、転両者を検挙したという記憶は残つておりません。
  102. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) 私そういうさつき申上げたような事情でありますが、私の記憶では戦争の始つた直後に、今馬場検事正が言われました通り、外国人に対する一斉検挙があつたように記憶しております。転両者につきましては私も記憶がございません。
  103. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 関さん如何でしよう。
  104. 関之

    政府委員(関之君) 私も馬場検事正の下で経済課におりましたが、そのようなことは記憶がありません。
  105. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私それは多分清原さんや馬場検事正に伺えばわかると思つて不用意に出て参りましたが、併し私はその日の場合のことは、これは私といたしましては記憶違いでは絶対ないと思つております。ということは私ども、皆さん検事畑のかたは御存じの通りに、随分治安維持法で宮城が人を縛りました。けれどもどうしてもこの人たちを、まあ亡夫の言葉をかりますと、正しい中道を歩む日本人に立て直さなければならないというような考えで更新会を立てておりました。自分の住宅も皆そういうかたたちのために提供いたしまして、あの時代の言葉を使いますと転向してもらうということに努めておりました。そうしてその転両者は殆んど一万人以上を数えておりまして大変喜んでおりました。その矢先に昭和十六年の十二月八日の明方に東京であつちでも検挙されこつちでも検拠され、中道を歩んでそうして本当に立派な国民として孜孜自分の仕事に努めておりましたところの者たちが、もうあつちでもこつちでも検挙された検挙されたという電話がかかります。人がとんで来ます。おかしいなおかしいなと言つておりますうちに地方からどんどん電報が来ます。電話がかかります。どういうわけだろう、折角の転両者が皆こういうふうに検挙される、一体何だろう、何だろうと言つておりました。ところが丁度おひるに宣戦の詔勅を拝した。これは大変なことじやないかと言つておりますうち全国からこの報告がございまして、確にあの宮城が法務府ですか、警視庁ですか、検察庁ですか、私はその時代にははつきりいたしませんけれども、どこかに行つておれは文句を言つて来るよといつてうちを出まして、うちを出てどこへ行つて文句を言つたのか知りませんが帰りましてから三日間くらいはそれこそものを言わないでおります。あの好きなお酒も飲まないで三日くらいは実にこれは慎んでおるんだか、自分の意に反するというのですか何ですか、とにかく三日間ものを言わないでおつた。私にし  たらこれは忘れられないことであります。私は治安維持法のこの一つの何と申しますか、適用の非常に間違つた現われじやないかと思います。そのために折角立ち直つてつております者たちが、一カ月、二カ月、長い人は半年以上も縛られてぶちこまれておつた。これはどうぞ馬場さん調べてみて頂きたいと思います。こんな私の記憶に、こんな私の悲しい記憶に絶対に間違いはないと思つておりますから一つ調べてもらいたいと思います。
  106. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  107. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて下さい。
  108. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから馬場検事正にお伺いいたします。検察陣の立場として今度の公安調査庁ができますと、私ども素人にはちよつともう一つ形の変つた検察庁ができるような感じがいたしますけれども、どういうものでございましようか。
  109. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 公安調査庁の任務とするところは恐らくいろいろな情報を集めてこの破壞活動の防止に努めることと思いますが、検察庁の仕事は御承知のように証拠によつて事を決するという職能を持つておるのでおのずからこの使命が違うと思います。で人によつては同じような役所を二つ作らないで、検察庁と警察に分けたらいいのじやないかというような意見もございますけれども、私は検事は成るべく情報活動というような渦中に入らないで、一歩退いて警察官或いは公安調査庁から集つて来た資料を検討して処置をするという形のほうが人権の保護という観点から見ましても妥当ではないかというふうに考えておるのでございます。
  110. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そのことはよくわかつておりますが、実際にこの法を運営して行きます上には公安調査庁と検察庁というものが本当に一体不離となつてやらなければ効果は上らないものであろうと思つておりますが、その点について中央部では困難がございませんが、地方に参りますと、検察庁はもうできておりますし、これから又公安調査庁はまあこの今あるものが公安調査庁となるわけだろうと思つておりますが、その最下部までこれは協力して行かれるお見込みはございますでしようか。
  111. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは今日までもまあ多少のトラブルはありましても或る程度やつて来ておりますし、警察それから特審、警察、自治体と国警とあるわけですが、それに検察庁も加わつて四者緊密に連絡をして行かなければならないし、又私はやり得ると、かように考えております。
  112. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 若しこの検挙、捜査、それからすべてにこの事件を処理をいたします上にこの公判で以て敗れましたというようなときに、これはまあ公安調査庁としましても、検察庁としましても、おのずとその仕事の内容も違つておりますけれども、その責任はどちらが主に明らかにしなければならないのでございますか、誰が責任を負うのでございます。
  113. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 検事がやりますのは御承知のように起訴、不起訴を決定することと、公訴の維持でございます。それで検事の起訴が客観的に見て甚だ不相当な資料で起訴しておるということが明らかになれば勿論検事は責任を負わなければならんと思いますけれども、ただ無罪になつたから全部検事が責任を負うというわけにも参らんと思います。と申しますのは、同じ資料でも見方の相違がございますから、無罪事件全部について検事が責任を負うということには参らないと思います。ただ検事が起訴当時に相当の注意を払つてつたかどうか、その注意を払わなかつたという場合には職務執行の怠慢であるとか過失の責を負わなければならんでしようし、悪意でやるということは絶無と思いますけれども、あればそれは別の問題であろうと思います。
  114. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうしますと、公安調査庁というものはこの事件に対する責任というものはないのでございますか。
  115. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) これは公安調査庁が、仮定の問題でございますがね今強いて議論をすれば嘘の資料を提供するということではない限り、起訴、不起訴について公安調査庁が責任を負うということはないだろうと思います。
  116. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうするとこれはとても変なこと、おつしやりにくいことかも知れませんが、今度公安調査庁の調査官その他千七百人の職員が今の特審局から移るわけなのでございますが、そうすると大体において今の千二百人に五百人ぐらい加えて膳立ができると思いますけれども、その大体の今までの特審の職員を公安調査庁のほうに移し、検察庁の見方としては御安心でございましようか、何かそれでは心細いというような見方もございましようか。
  117. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 私は特審の幹部職員を知つているだけでその他の職員はあまり知らないので、ここで責任のあることは申上げられませんが、御承知のように取締の対象になるほうは非常な巧妙な組織を持つて活動しておるのでございますから、やはり今の特審の職員につきましても相当の訓練を絶えずして行かなければならんだろうとかように考えております。
  118. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 特審局長ちよつとお尋ねいたします。ちよつと私は素人考えかも知れませんけれども、職権濫用の一番元になりますのは情報網といいますか情報活動をしております者、つまりもう少し言いますとスパイの情報にすべてが基く、すべてとも言われませんけれども大部分は基いての調査が始ると思つておるのでございますが、この情報網に活動しております人たちはどういう条件で御採用になるのでございましようか。
  119. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 現在私どもの職員は平均いたしまして七号俸の程度でありまして、これを警視庁の警察官に比べますると警部補の初任給、国警の警察官に比べますと警部の初任給、そういうものが一般のレベルであります。中には警視正或いは刑事というようなものの出身者もあります。一般に平均いたしましてその程度の職員工でございます。こういう職員につきましい、情報活動につきまして一番大事なことは、情報素材として得て来るものにおびえたり驚いたりして、それをうのみにするということが一番危険でありまして、情報というものは飽くまで素材として入つて来る、これをいろいろ検討いたしましてその確度を計る、そして情報として一つの成る程度の確度のものにまとめ上げるということと、他面情報を取扱つている過程におきまして非常に確度の高いもので而も捜査の端緒になるものはこれを取上げまして、その事実の有無を調査するというような立て方になつております。情報を直ちに事実認定の判断の資料にすべきものではないというふうにまあ訓練いたしております。最初は非常にいろいろなへまもあります。或いは間違いもありましたが、私ども自身がまだ不馴れでりますがだんだん取扱も馴れて来ている、更に将来そういうようなものについては一層私ども初め十分な訓練を経て行きたい、かように考えているわけであります。
  120. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうするとこの情報活動しております者は職員で、兼職の者はないのでございますね。
  121. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 現在千二百名のうち約七百名が調査活動に従事いたして、あとの五百名は事務その他雑務に従事しております。兼職者はございません。兼職と申しますと私どもこれ少数の幹部の者は検事出身であります。そういう意味の肩書上の兼職はあります。
  122. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると当り前の職員以外に情報を売込む人たちが随分ありやしませんでしようか。又そういう者を使つているという向きがあるんじやございませんか。
  123. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 売込んで来るというような情報は大体かんばしいものではないものでありまして、そういうようなものはこれに直ぐ飛びつくというようなことはしないように訓練いたしております。
  124. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 宮城委員ちよつと申上げますが、この問題に関しましては昨日吉田委員からも十分、それから羽仁委員相当強くいろいろ何をして一応詳細審議を終つておるのでございますが……
  125. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 昨日私は欠席いたしましたので……、特審局長に伺いますけれども、職員として情報を集めております者にも又ときどき情報を売込むような者があるらしいのでございますが、そういう者が、このあなたたちが縛ろうとしていらつしやるような向う側と両方情報を交換しているようなことはないのでございましようか。
  126. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) まあ社会でお取扱になる一般のかたがたの中には、極く少数情報ブローカーというようなものがあるやに聞き及んでおるのでありますが、かような者は努めて相手にしないように、慎重な態度をとるように努めております。又只今御質問の御趣旨はダブル・プレーと申しますかギヴ・マンド・テイクと申しますか、というようなことで情報を扱うというような者があるのではないか、そういうようなものを相手にしているのではないかといいうような御質問ではないかと思うのであります。さようなものも成るべく努めてこれを相手にしないようにいたしております。
  127. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 相手にしないという程度でやつぱりあることはあるのでございますね。(笑声)
  128. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 具体的にそういうものがあつたという事実はまだ聞いておりません。絶無とは神様でありませんので申上げかねますが、努力はそういうふうなものを相手にしないというような方針で行つております。
  129. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 結局は縛らなければならん敵方に特審局が金をみついでおるというような結果にならないように私どもは案じておるのでございますが、いま一つ最後に特審局長に伺いたいのは、今度五百人も新たに採用なさいますときに、この前も私の質問に対して余り満足いたしませんでしたが、今まで特高警察として働いておりましたような者はお使いにならない方針でございますか、どうでございましようか。そのことをはつきりお答え願いたい。
  130. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) その点につきましては、先般法務総裁から成るべくそういうかたを使わないような方針つで努めたいとお答えいたしておる次第でございます。私どもといたしましてもそういう線で運営して行きたいと思つております。
  131. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その問題に関連して私も土曜日もその点について随分伺つたのですが、この際はつきりしておかれたらどうかと思うのです。特にその理由は、本法によつて特高復活の虞れが多分にあるということは世論が指摘しているのですから、その世論に反省せられて特高警察官並びにいわゆる思想検事というものは、この公安調査官の職員として採用せられるのに適当でない、採用しないというはつきりした態度をとられることが、公安調査官が仮に本法が成立して出発して後に、つまり明朗な世論の支持を受けるか受けないかということに関係して来るのじやないですか。現に本法は全知識階級を敵に廻しておるという非難さえある。で、本法が社会を暗くするのではないかという非難さえある。その際において未だにその点について成るべく採用しないようにするという程度で、果して本法が世論の支持を受け、又公安調査庁が世論の支持を受けて本当に立派な仕事ができるかどうか、大問題だと思いますので、今御無理ならあとでも必ず法務総裁から一つお答えを願いたい。  それから昨日私も委員長の御賛成で懇談の際に申上げておきましたが、情報は絶対に買わないという原則を立てて頂きたいのであります。これは堂々たる新聞社その他調査機関は情報を買うようなことはやつておりません。情報を買うようなことをやると情報を売ろうとする人ができる、その情報を売ろうとする人が大学内をうろうろしたり、或いは学者の身辺を徘徊したりする、生活に窮して昔そういうことをやつたことがあるというふうな人がそういう誘惑に引かれて、それで九州大学の中をうろうろしたり、捕えられれば、或いは自分は特審局員だと偽りを言つてみたり、或いは友達に会いに来たのだと言つて、場合によつては警察官までが薄給で生活困難のために、或いはそういう情報を売れば五百円になる、場合によつては五万円で買つてくれるというような話があるわけで、一口や二口売れば二千円くらいの収入になるということを考える人が出て来る。それは結局公安調査庁がそういうことを責任を持つているのじやないかも知れないが、併し情報を買うという組織をおとりになれば間接の責任を持たなければならん。この点からいつてもこれは今の問題の特高警察官並びに思想検事というものは一切採用するべきでない。即ち情報は一切買わないということを言われなければ、私は本法が、政府が企図しておられるように、世論の支持を受けなければ運用されるものではないし、却つて知識階級を敵とすることになつてしまうということを十分お考え下さいまして、今の二点についてはつきりしたお答えを頂きたいと思いますが、如何ですか。
  132. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 只今御質問になりました御要望の点は拝聴いたしておきます。
  133. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の点について法務総裁からお答えを頂きたい。
  134. 小野義夫

    委員長小野義夫君) よくこちらから言います。
  135. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 先ほどの十六年十二月八日の検挙のことは一つお調べ下さい。
  136. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 承知いたしました。
  137. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 明日の委員会でも馬場さんでなくても、どなたからでも……
  138. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) 今取りあえず検察庁に問合せておりますが、その当時の人がい合わせていないので直ぐ御返事つできるかどうかわかりませんが、とり調べまして必ず御報告いたします。
  139. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の宮城さんの前の質問に対して馬場検事正に伺つておきたい。
  140. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 簡單に一つ
  141. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 宮城さんの御質問のお答えの点なんですが、最初に宮城さんのおつしやつておられるのは、扇動ということについての所罰の目的が果されるかということが一つなのと、それから扇動ということがあるために、却つて、少年たちの将来を誤るのじやないかと思う、扇動というものを罰することにしても、扇動者の大物をつかまえるという自信がおありになるかどうか、この点が一つです。この法に扇動というものを入れても、その実効ありや否やということが第一と、それから少年が扇動を受けて活動をして罪に陥ることは私も真底から嘆かわしいことだと悲しみます。併しながらそれは扇動者を罰するという、大した効果のない法律を以て少年が扇動から守られるかどうか、或いは少年に対しては他の方法例えば教育というような方法もあるのです。それで警察だけが日本の社会を維持しておられるわけじやないのですから、それには学校もあれば新聞もあればいういろいろ教育者もありまし、いろいろと他の方面でそういう点をできることがあるのじやないか。それを扇動を罰するといつても扇動者は実はなかなかつかまらない。現につかまつちやいない、そうしてその扇動に附和雷同した程度の人々が半ば扇動との関係で、殊に少年が逮捕され将来をすつかり破壞されてしまう、そうしてその少年が扇動されないようにするには他に教育その他のさまざまな機関がある。そういうほかに方法があるじやないかという点をお聞きになつておるのです。そこであなたのお答えとしては、先ず第一には扇動ということをやることによつて、その目的が果せるかどうかということが第一、第二には扇動という文字を置くことによつて他の方法で改善されるかも知れない少年を罪にひつかけることによつて将来を破壞してしまうという点についてはどう考えておられるか、その点が第一だと思うのです。その二つだけにしておきます。
  142. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 扇動という文句があるために少年が守られるよりむしろ引摺り込まれるのではないかというお尋ねでありますが、これはどうも私は今日の事件の捜査の実際を通じまして、先ほども申しましたように、無垢な青少年が引摺り込まれておることによつて、おだてられて、非常に狂信的になつて弊害は恐るべきものであるというふうに考えております。そこでどうしてもこれはやはりこの前の扇動者を取締ることが必要ではなかろうか。必ず扇動者がつかまるかといいますと、それは全部つかまるということは勿論申上げられませんが、或る程度その目的を達成することができるだろう。それからもう一つの検挙だけでその目的を達することができないだろうというお話は、それはもうその通りであります。私は検事の果し得る役割というものは決してそう大きなものではない、だから戒心しながらこの点はやつておる。私、今日の非常に国際的な組織で扇動しておるような段階では、やはり扇動を取締らないとただ他の教育その他の施設だけでやるには少し世の中が乱れ過ぎておるのじやないかというような感じがするのであります。
  143. 小野義夫

    委員長小野義夫君) よろしうございますか……。それじや伊藤さん。
  144. 伊藤修

    伊藤修君 宮城さんの質問に関連して。先ほどメーデーの場合におけるところのいわゆる検挙率、起訴率をお話になりまして、まだ未起訴に対しては附和雷同者があるのだ、若しやるならば相当数があるのじやないか、こうおつしやつておりますが、それはわかります。又そういう検察行政を運用されること、結構だと思います。謝意を表します。私のお尋ねしたいのは、その未起訴分のうちでどれだけ嫌疑なしの者があるか、それを承わりたい。
  145. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 今私がここで正確に申上げるだけの知識はございませんが、恐らく犯罪成立するほうがずつと多いだろうと思います。あれは大体の、例えば一つの職安を考えてみますと、そこの幹部がみんなを率いてあそこを突破して入つておる、法律上は、率いられて入つていけんところに入つて騒ぐということになれば、やはり附和随行ということになるだろうと思うのです。併しながらそういうひきずらされた者は起訴しないですむならば起訴しないですまさせる、かように考えております。
  146. 伊藤修

    伊藤修君 その心持はよくわかります。そのお考え方も私は結構だと思うのです。成るべく罪人を作らんように、そうして一般予防が達成されればまさに目的は達成できるわけであなたのお扱いはいいと思うが、私のお尋ねは、全然嫌疑のない者があつたと思うのです。それは今日までどのくらいあつたかわかりませんか。
  147. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは今お答え申上げるだけの資料を持つておらないのですが。
  148. 伊藤修

    伊藤修君 相当数あるのですか。
  149. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 私はそう沢山ないと思つておるのですが。
  150. 伊藤修

    伊藤修君 どのくらい。
  151. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 今申上げることは却つて危險です。帰つてから調べて来れば主任検事なり……
  152. 伊藤修

    伊藤修君 この前一つたまたま問題になりましてお尋ねしたら、それは全、然嫌疑がつかんで帰したということあつたらしいのですが。
  153. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは今度のメーデーでなくて蒲田の事件じやありませんか。    〔委員長退席、理事宮城タマヨ委員長席に着く〕
  154. 伊藤修

    伊藤修君 いやメーデーの中で……
  155. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは一般の世論なり、この原則としてですね、一人の無事をも苦しめないということは、あなたも座右銘にしておられると私は確信します。勿論人間のすることですから、その点については何ですが、私さつきも……
  156. 伊藤修

    伊藤修君 人の質問を取つちや困る。
  157. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、その点でこの前問題になつたのは工業技術庁のかたです。工業技術庁の工場の職員がその工業技術庁の職場でメーデーの翌日に昨日のことを話していた、見て来たように話していたというんです。それでそのときに逮捕された人が、あれはあんなに話していたんだから昨日広場に行つたんだろうというように自供したらしい。その自供に基いて検事が令状を請求されてその人を逮捕した。ところが当日そのメーデーにも広場にも出てはいない。終日その工場で働いていた。その人をメーデーの話をしていたという理由で逮捕したそれですね。
  158. 伊藤修

    伊藤修君 うん。
  159. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 私は今その話を詳しく存じておりませんが、ちよつとお答いたしかねますが。
  160. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことが多々あるんでしよう、それで宮城さんが……
  161. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) いやたくさんはないと思います。
  162. 伊藤修

    伊藤修君 ですから私は正確な数字をお伺いしようとするのではない。あるでしようというんです。あれば数人、数十人、或いは数百人あるとかいう概略はお伺いできるのじやないか、こう申上げたのです。
  163. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは今ちよつとわからないのです。今起訴するほうのやつを、一生懸命……中に入つておる連中を先に調べておるので、相当嫌疑の濃厚な者だけ起訴しておいてあとは釈放して、あとで又在宅のままで調べるという方針をとつておりますので、今大体何人であるということを私申上げることはできないと思います。
  164. 伊藤修

    伊藤修君 先ほど宮城さんの質問の点で、今一点濫用の点ですね。これはあなたの御承知のことと思いますが、年間を通じて約百万通近い逮捕状が出ているのです。そのうちあなたたちの手許に起訴送致されて来るものはたつた二、三十万と記憶しておるのですが、残りの六、七十万というものは、これは闇から闇にいつておるわけです。この事実を以てしても今日の警察制度が如何に職権の濫用が有り得るか、それは中には逮捕状を請求したけれども、調べた結果ものにならんから送致しなかつたというのもあるでしよう。併しことごとくはそうとは限らない。少くとも逮捕状を請求する以上は何らか容疑事実が明確でなければならんはずです。又裁判所もそれを信じて判を押したわけです。事実は盲判ですけれども。少くとも容疑ありと認定し得るような資料があるとか若しくは供述をし、それによつて逮捕状が発行されたわけですから、そうしたものが大多数そのようなことで闇から闇に送られておるという事実を考え合せましても、本法が施行された場合においてより以上の弊害が出るのではないかと憂えるのです。この点逮捕状がさように出ておるということはお認めになるんでしよう。
  165. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 逮捕状が出ておりましてそれが検察庁に送致されて、拘留されないで釈放される事例が相当多数あることは私は事実だろうと思うのです。併し中には拘留されなくつてもすぐ起訴するという場合もございますし、又起訴猶予にするというのもありますし、間には今伊藤委員のおつしやいましたように、疏明資料が調べてみた結果不十分で拘留をするには不十分であるというので釈放したというのも私はたくさんあるだろうと思います。それで逮捕状の濫用ということは国会でも弁議士会でもしばしば論議されておるので、私どももそういう点の制限だけという点から申上げるならば、検事を経由するというほうがより人権を尊重する趣旨に合うのではないかという意見も持つてつたのですが、これに又反対する立場の意見もございますので、今日のようなことになつておるのです。そこで私に関する限り特に本年の初めから何とかこれを少しでも弊害を除去したいというので、警視総監と相談いたしまして、一番逮捕状をたくさん出すいわゆる一般の刑事事件につきまして、たしか警視庁に七方面ございますが、それにそれぞれ相当老練な検事を担当検事として刑事部に置きまして、それが一週に一回は必ずその方面本部に出かけて、そうしてその管内の警察署で逮捕状を請求するときには、そのとき検事に相談するようにということを申したのです。この点は警視総監も全面的に賛成しまして今年の初めに打合せをしてやつたのですが、これは非常に結果がよろしいのです。意外のところにいい結果を来たしたのは公判の検事が相当助かるんです。公判異議申立もなしにスムースに行くということを申しております。それで検事が相当程度逮捕状の請求にタツチしまして、法律の知識に乏しい警察官の間違いを正すということは必要だと思います。それで破防法の成立しました暁に逮捕状をどうするかということは、そういう法規的に、或いは内規的に何らか皆さんの御納得の行くような方法で、私は運用しなければならないと思いますし又その方法はあろうかと、かように考えております。
  166. 伊藤修

    伊藤修君 この点はさきに私はずつと前に資料をもらつたことがあると思いますが、今日現在の資料一つつて一年間のトータルを出して逮捕状は何百万通出ておるか、そのうち検察庁に送致した事案の逮捕状、要するに逮捕状としての実効をなしたもの、その数を一つ御報告して頂きたいと思います。よろしうございますか。どなたか返事をしないのですか。
  167. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) よろしうございます。検務局長に連絡して調査をいたさせまして報告いたします。
  168. 伊藤修

    伊藤修君 明日までにお願いします。馬場さんのおつしやたように、検察庁に来てから処分された、それは逮捕状の効力を生じたわけですから、そうでなくて検察庁に来ない分があるのです。警察で賄われてしまつた分。
  169. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) いや逮捕状が出ますと、これは全部検事に送付しなければならないことになつておるのです。
  170. 伊藤修

    伊藤修君 出ない分があるんですよ。それは例の何に違反するわけですね。併しこの立件されたものと立件されないものと、逮捕状として起訴されたもの、起訴されないもの、その種別を全部明細に出して頂きたい。
  171. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) できる限り正確に集めまして提出いたします。
  172. 伊藤修

    伊藤修君 それから今……。
  173. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつきの件は私少し間違いかあつたので訂正しておきますが、電気試験所の分会それで芝橋班、「五月一日メーデー事件に対し、検察当局は、労働組合および民主団体に広汎な捜査を実施しているが、当分会(芝橋班)に対しても六名に逮捕状を執行し、十一名に任意出頭を要求して取調べを行つた。」ところがこの六名のうちメーデーに全く参加しないものが二名、それからメーデーに参加したけれども行進に参加しない者が二名、他の二名も事件の局外者であり、取調べの結果事件に無関係のことが証明された、この六名に対して逮捕状が執行されて、そのうちの二名は全然メーデーにも行かなかつたあとの二名はメーデーには行つたがその行進に加わらなかつた、それから最後の二名は行進には行つたけれども事件の局外者であり、取調べの結果事件に無関係であつた、こうなると一〇〇%この逮捕状というものが確実な証拠に基いていないということになつているのじやないか。そこで宮城先生のさつきの御質問は扇動というようにこの罪を拡げましてそれでいよいよこういうふうに本当に罪するべきでない人が逮捕されたり或いはその任意出頭を命ぜられたりしてもなかなか嫌なことですから、それで殊に若い人などはもうそれで将来が破壞されちやうのではないか。こういうふうに現在の逮捕状の執行においても、ここには六名逮捕状を出して六名とも証拠がないと、そういうようなところで又扇動というふうに拡げることがあなたのほうで高い立場にお立ちになつてお考えになつてどうであるかということの御質問であつたように私は思うのです。私もその点同感なんですが、これがもつと人権蹂躙が少しもされていない、逮捕状の執行も非常に厳格であるというような場合でさえ扇動ということはよほど問題じやないかと思うのに、その扇動というふうに網を拡げて行くということについて我々としては非常に心配を持ち、又世論もそれを非常に不安に感じているのじやないかというように思うのでありますが、これはまああなたに特に今ここでお答え頂ければ結構なのですが、先ほどのようなお答えであるならばそれはたびたび政府からも伺つたことで、濫用のないように努力するというが、法の上でそうはなつていないというふうになるのですけれども、実情はこういうふうである、逮捕状が非常に濫用されている。六名に対して出された逮捕状は一つも証拠はなかつた、まあ一〇〇%証拠のない逮捕状がこの場合には出ている。この場合のみを以て全般を推すわけではありませんけれども、従つて全般においても多分に問題があるのじやないか、そこを扇動というふうに拡げて行くということがどうであるかというのです。それはどうですか。
  174. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) この具体的事件について私今聞いていないので御説明いたしかねますので、いずれ取調べまして又明日でも法務府の政府委員を通じて御返事させるということにいたします。
  175. 伊藤修

    伊藤修君 もう一つ馬場さんにお尋ねしておきたいのは、今日まで政令三百二十五号で捜査をやつておりますね。これ又私は余りよく事例は知りませんけれども、直接知つたのは先般安来町の事例について実地に実情を調査し、親しくそれらの関係者から聞いたのですからこれは最もよく知り得た一つ事例です。これは特審局が先ず構想を定めて、そうして検察庁へこれを申入れて、あたかも検察庁が指揮命令しているごとき検挙捜査というものが行われているのですね。このあり方が私は非常に現行法の上においてもよくないと思うのです。いわんや今度の本法のこの問題になつている破壞活動防止法については、そういうことはないと逆にこれは書いてあるのですが、将来やはりこの運用としてはそういうふうになつて行くのではないでしようか、この点はどうでしようか。今の事例と今後のこの法律によるところの運用と両方を一つお聞かせ願いたいと思います。
  176. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 特審がいろいろ情報を集めて或る犯罪の嫌疑があると言つて来ました場合、多く告発をして参つたのでございます、検察庁において。それでその告発に基いて検事が捜査をするということになつておるので、命令をするという形にはなつていないように心得ております。今後もそれだから私はこれが一緒になつてやつちやまずいと思うのです。一緒に検事が初めから情報活動に入つてしまいますとどうしてもこれの心理的負担を負うようなことになりやせんか。やはり検事は離れた立場におりまして如何に特審がこれで十分だと言つて来てもこれをけとばす場合もなきやならんと思うのです。だから一歩離れた立場にあるほうが公正に行われるのじやないか。で私はこの機構の問題では特審と検察庁と一体になることは絶対に御免こうむりたいということを初めから申上げておるわけでございます。
  177. 伊藤修

    伊藤修君 それは従来は告発を待つて活動をなされたことは、これは表向の建前で実際はそうでなくして特審が捜査の現場へもどんどんタツチして告発して進んで指揮命令している形、どうもこれは全国的らしいのです。馬場さんの手許じやそんな特審の駆使に甘んじてはおられませんけれども、ほかではどうもそうらしいのです。このあり方はよくないと思いますがどうです。
  178. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) それは私はあまり詳しく存じませんが、特審が行政措置として捜索をしておるのと一緒になつているのじやないでしようか、検事の令状に基く捜索と別に。
  179. 伊藤修

    伊藤修君 それはたいてい行う場合があれば同時にやつちまうのです、便宜上、検察庁が利用されているわけですね。そうすると外観から見ると如何にも検察庁が特審のお使い役をやつているというふうに見えるのです。
  180. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 私はそういうためにやはり検事総長というものが終身官としてあすこにいるのだと思うのです。それから又今度の検察庁法で法務総裁が検事総長を通じなければ部下を指揮命令できない、具体的事件について指揮命令できないというのは私どももこれを主張した一人でございますが、そういう含みを持つてあの規定を入れて頂きたい。そうしないと法務総裁が一般の検事に直接指揮するというようなことになりますとやはりそういう弊害が生じますから、これはやはりあの制度を大いに活用しなければと私は今でも活用しているつもりであります。
  181. 伊藤修

    伊藤修君 私はこの本法のごときものが、どうせ問題は刑事問題が起るのですから、そういう刑事問題があつて初めて破壞活動をされておるということの認定が出て来るのですから、これを主として原因にしてそうして団体を規制するというのだから、検察庁で刑事事件を調べてそれでそれを起訴したら同時に検察庁が裁判所に対して団体規制の手続を非訟事件手続法によつて両面相待つて検察庁が公共の福祉を守るためにやられる、こういう建て方ならばいいと思つたのですが、まああなたの御見解では第三者の立場で行きたい、みずからそれで没頭したくないというお気持はよくわかるが、むしろあなたたちに引受けてやつて頂いたほうがいいと思うのですが、どうでしよう、そうすると国家の費用も非常に助かるのです。特審局もやめてしまう、公安審査委員会もやめてしまう、そうするとこの問題は全部解消するのですが、どうです、引受けてやろうという度胸はないですか。
  182. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 大いに御信頼をなさるようなお言葉で甚だ恐縮でございますが、ただ私は一番恐れますのは先ほど申しましたように権力が集中するということはいちばん問題だと思うのです。両方を持つということは非常に危険ではなかろうか、逆の場合を考えてみますと。  それからもう一つはやはりこうまあ、裁判官ではございませんけれどもやはり裁判官に準ずるくらいの気持で一歩退いて冷静にことを判断する、これは私戦争中からずつと見ていて特にその点を感ずるのであります。だからこの点成るほど費用の点もございますけれどもやはり検事は一歩退いた立場におるほうがことを公正に運びます上においてよろしいというように考えております。
  183. 伊藤修

    伊藤修君 まあそういうお考え方ならば進んであなたに仕事を持つて行こうと思われませんが、少くとも本法が施行されました場合においては特審局の下使いをするというようなあり方は絶対に阻止して頂きたい。あなたは中央の模範的な検事正として御在任なんですから、これは全国に及ぼす影響は大きいのですから少くともあなたがそういう態度をとつて頂くということが私は望ましいと思うのです。この点を一つ御確信を伺つておきたいと思います。
  184. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) その点は私の信条としておりますので、私のでき得る限りやるつもりでおりますし、これまでもやつて来ておるつもりでおります。
  185. 吉田法晴

    吉田法晴君 馬場検事正がおいでになります間に簡単に二点をお尋ねしたいのですが、さつきの御説明の中に宮城前広場の事件について、立入を禁止せられたと申しますか、或いは許されないという言葉をお使いになつたか、そのへんはつきりいたしませんけれども、そこに入ることについて附和随行したこういう御説明があつたかのようで、あの事件の騒擾罪で問われた理由と申しますか、それの一端をさつきお洩らしになつたように思いますので、もう少しそれをはつきり承わりたいと思います。あの宮城前広場の使用の問題については、行政措置とそれから裁判がありましたことは御承知の通りであります。そこで宮城前広場を使わせるべきであつたかどうか、この点は争いが起つております際にデモであそこに入ることが禁止されたところに入るのだ、従つてつて起りました事件があの地方について一地方の静ひつを阻害した云々、こういうことになつたといたしますならば、あそこに入ること自身が先ほどの御答弁によるとすでに問題になり、騒擾の一つの大きな原因になつておるのではないかと考えられますので、その点、それだけ一つお伺いをいたしたいと思います方
  186. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 先ほど宮城先生から割合をお聞きになつたものですから、具体的事件でも処理の点は申上げても差支えないと思つて申上げましたが、そのときに説明の仕方が悪くて多少或いは事件内容に亘ることを申上げたかも存じませんが、御承知のようにまだ公判開始前のことでございますから事件内容に立入つたことをここで説明することは一つ差控えたいと存じます。
  187. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではその点については不用意に出ました答弁で、はつきりしません疑問が残りましたからお尋ねしたわけですけれども、これは遠慮いたします。もう一つこれは馬場さんにお尋ねしたいのでありますが、それは宮城委員その他からも心配をせられまして御質問せられたことでありますが、あのメーデーの事件の際にもそうであるし、或いは東大事件等で福井君といいますか検挙せられたこともございますが、最近の事件で相当学生が交つておることは御承知の通りであります。この学生に対して検察庁としてと申しますか、或いはもつと大きく刑政の立場から問題になるかも知らんと思うのでありますけれどもどれだけ考えて頂いておるか。これは先ほどの御質問の中に出て参りました学生の指導という問題に関連して参ると思うのでありますが、曾つてに比べまして最近の学生に対しても余りこれは考慮がないのではないか。少くとも例えば福井君の問題の場合のごときは、これは警察の運営であつたかも知らんと思うのでありますけれども、検挙に当つての動きについては私ども考えざるを得ない点があるのだと思うのでありますが、検察の第一線に働いておられる馬場さんとして、この学生の問題についてどういうように考えておられますか。運用上のお気持の問題について一つ方針を承わつておきたいと考えるのであります。
  188. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) 学生は申すまでもなくまだ思慮が必ずしも成熟していない連中でありますからこれを成人と同様には成るべく取扱わないで、できるだけ寛大な処置をとりたいというのが基本方針でございます。ところが個々の事件を見ますと、どうしてもこれは放置できないという場合が出て来るものですから、それが一つある。それも見方の相違で立場を変えて御覧になるとあんなものは起訴しなくていいのじやないかという御意見も恐らく出て来る余地がありますけれども、私どもの基本方針はそういう気持でございます。  それからもう一点、特にこういう委員会かたにお願いいたしたいことは、教育者の態度と申しますか、やはり教育者が本当りに熱誠学生の訓育に当るという態度に出て頂かないと実に私は危険ではないか、かように考えております。例えば大学で真理の探求に勇敢であれという訓示をせられる、これは結構でありますけれども、何が真理であるかということは、学生時代に大いに研究しなければならんまだ過程であろうと思います。まだ入る早々の人に向つて、真理の研究の方向、何が真理であるかの研究をしろということを恐らく当人は前提として言われておりますけれども、大いに勇敢であれと言われますと、むしろ誤解するのじやないかというような点もございますし、又このメーデーの事件で高等学校の生徒なんかの連座しておる例を見ますと、高等学校の先生の教えておられることがどうも少し当を失しておるのじやないかと思われる事例が二、三あるのでございます。いずれこれは調べて済みましたならば適当な方法で有識者にも、一つ御批判を仰ぎたい、かように考えておる次第であります。
  189. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の点は検事正が善意でおつしやつてつたと思うのですが、これは検察のお仕事も実に大変なお仕事で同情に堪えないと思うのですが、教育の仕事もなかなか大変なことで、御推察が容易にできますように、青年諸君が一方においては極めて急進的な意見を持つておる。これを頭から抑え付けて教育して行くということはできないのでございます。或る程度まではその青年諸君の急進的な者の希望というものもいれてやりながら、それを教育して行くという面で、まあ端的に申せば教育の場におけるそうした寛容の精神というものはこれは是非尊重して頂きたいというふうに思うので、今の御意見と正面衝突して矛盾しておるようには思わないのですが、聞きようによりますとそれを誤解されると思いますので、その点を希望として申上げておきます。
  190. 馬場義續

    説明員(馬場義續君) おつしやる通りでございますが、私もだから教育に寛容の精神が必要であることは勿論そうであると思います。ただ取締だけで決してやれるとは思つていない。ただ併し今日の、これはひがみかも知れませんが、大学等のなさりかたを見ますと、もう少し責任を持つておやりにならなければならんと思います。いささかうるさいからそつとしておこうというような面があるのじやないかという気がしておるのです。
  191. 伊藤修

    伊藤修君 吉河さんあなたにちよつとお尋ねしたい。宮城さんの質問に関運しまして二点ばかりお伺いしておきたい。先ほどあなたが御答えになりまして、警察官、特高、検察官、むしろ思想警察官という前歴の者は成るべくとらないようにするというお答えであ  つた。これはこの前質問いたしましたときにはつきり法務総裁はとらないとおつしやつたはずです。特に警察官の古手は絶対にとらない。然らばどうして人的資源を賄うかというふうに追究して行つた法務総裁ははつきりとらないとおつしやつたはずです。思想的立場におつた特高警察、思想検事というかたがたはとらないということは、私は断言して頂きたいと思うのです。
  192. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御趣旨の点はなお総裁にも申上げたいと思います。先般総裁は公安調査庁の支局長と申しますか、局長と申しますか、そういう幹部には非常に年をとつた老朽化した警察官或いは特高経歴のある者はとらないようにしたいというように御答弁になつたと思うのでありますが、なお只今御質問の趣旨につきましては総裁にもよく申上げたいと思います。
  193. 伊藤修

    伊藤修君 その点はあなたも記憶していらつしやつたわけですから……。その支局長のみならず、それに配属されるところの各職員かたも、私はそういう基本的なあり方にあつて欲しいのです。若しそうでないと世の批判が特高の復活というそしりはどうしても免れないのですよ。又国民の危惧はそこにあるのですから、この点は一つ十分基本的な私の質問に対する法務総裁の考え方はすべてに、というふうにお考えを頂きたいのです。この点はあなたから責任を持つてお答えを頂けなければ法務総裁から責任を持つて答弁するようにお約束をして頂きたいと思います。
  194. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問の趣旨は総裁によく申上げておきます。
  195. 伊藤修

    伊藤修君 それから第二点は、先ほど宮城さんから質問がありまして、あなたのお答えの中に売込みの情報は買わないというふうでありました。又その半面を推察いたしますると、結局常やといの情報屋というか或いは情報雇いというのですかね、官吏でいえば雇いでしよう、そういう言葉があるのでしようか。
  196. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 実は言葉が足りないのでありましたが、先ず金をくれというような、最初からこれを渡すから金をくれというような申出をする金銭日当の情報提供者というふうな意味でお答えいたしました。
  197. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると情報網のあり方といたしましては、例えば東京なら誰それ、誰それ、十人なら十人、名古屋なら二十人、こういうものが確定しておるのじやないですか。
  198. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 特定のものがやはり継続的に長期に亘つて確定しておるという事実はありません。
  199. 伊藤修

    伊藤修君 これはそういう片鱗的なお答えでなく、その機構はどうなつているのです、それでは。そうするというと臨時に売込はない、確定しておるものはない、その中間的存在というものはどんなものですか。    〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕
  200. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 臨時に情報を提供してくれるものもあります。或いはそう長期に亘りませんが、継続して提供してくれるものもあります。併しそう長期に亘つて特定のものが相当数確定しているというような状態ではありません。
  201. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとその情報屋というものは何々ということが大体あなたのほうでわかつているわけですね。
  202. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 情報を提供してくれるものの氏名はわかつております。又第三者を通じまして第三者から提供を受ける場合もあります。
  203. 伊藤修

    伊藤修君 第三者にいたしましたところが、これは直接、間接いずれにしろひとしく立場は一緒だと思います。で、臨時一回限りのものと数回に亘つてやるもの、即ち長期に亘つてやるものとの比例はどのくらいです。
  204. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) これはちよつと今私の手許に資料もございませんのでお答えいたしかねますので御了承願います。
  205. 伊藤修

    伊藤修君 ではその数字を明日出して頂きたいと思います。
  206. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) ちよつと今それを全国に亘つて照会する……、いずれ必ず適当な機会には伊藤委員の……
  207. 伊藤修

    伊藤修君 併しこれは国家の大切な予算をお使いになることです。予算の使途が判然しないというあり方は私は好ましくないと思うのです。少くともその支出伝票というものは送られて来るはずですから、経理の上において。してみますれば何人にどれだけの支出がなされたということは十分おわかりのはずだと思うのですよ。支出に対していろいろの巷間臆説をたくましうされるから、この点はやはり明確にする必要があると思うのです。又今後の予算計上の上においても当然これは調べておかなければならん問題だと思う。
  208. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) でき得る限り調査して御要望に副いたいと思います。
  209. 伊藤修

    伊藤修君 本日はこの程度にして明日……。
  210. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 議事の進行について御相談申上げたいと思いますが、ちよつと速記をストツプして……    〔速記中止〕
  211. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて下さい。じやこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会