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1952-06-13 第13回国会 参議院 法務委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十三日(金曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            一松 定吉君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            片岡 文重君            羽仁 五郎君   衆議院議員    田嶋 好文君   政府委員    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第四局長    野木 新一君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     關   之君    法務特別審査    局次長     吉橋 敏雄君    中央更生保護委    員会事務局長  齋藤 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       掘  眞道君   説明員    最高裁判所長官    代理者    (事務総局人事    局長)     鈴木 忠一君   —————————————   本日の会議に付した事件訴訟費用等臨時措置法等の一部を改  正する法律案衆議院提出) ○犯罪者予防更正法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○本委員会の運営に関する件 ○破壞活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を開きます。  本日は先ず訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案議題に供します。先ず提案者説明を聴取いたします。衆議院議員田嶋好文君。
  3. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) それでは提案理由説明をさして頂きます。  只今議題となりました訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案提案理由を御説明申上げます。  この法律案は、第一に訴訟費用及び執行吏手数料等増額を、第二に執行吏恩給増額目的としておりますが、先ず第一の点について申上げますと、御承知通り民事訴訟費用刑事訴訟費用及び執行吏手数料等につきましては、戰争中の物価の高騰に応じて臨時的にこれらを増額するために、民事訴訟費用法刑事費用法及び執達吏手数料規則の特例として、昭和十九年に訴訟費用等臨時措置法が制定されましたが、終戰後も引き続く経済情勢変動に伴い、数度この法律改正し、これらの額を増加して参つたのであります。前回増額、即ち昭和二十三年十二月の改正以来国内経済事情は多少安定はして参りましたものの、物価の騰勢はなお継続し、例を総理府統計局調査消費者物価指数にとりましても、昨年中の物価指数平均は、昭和二十三年平均の約五割方の増加を示し、現行訴訟費用及び執行吏手数料等の額によつては、訴訟関係者又は執行関係者等の負担の公平を期することが困難となりました。よつてこの際更に暫定的にこれらの額を増加しようとするのが、この法律案の第一條の趣旨であります。  その要点は、民事訴訟費用中の書記料及び翻訳料並び執行吏の差押、競売その他書類送達等手数料等について、只今申上げましたような物価指数増加率に応じてそれぞれ約二分の一を増加し、又、民事訴訟刑事訴訟証人鑑定人等並びに執達吏手数料規則による証人鑑定人及び執行吏日当及び宿泊料等については、その性質上国家公務員に支給する日当及び宿泊料にならつてそれぞれ約三分の一を増額し、いずれもその額を現在の状況に適応するように改めたのであります。  次に執行吏恩給増額の点は、この法律案の第二條に定めてございますが、御承知通り現在執行吏につきましては、昭和二十六年九月三十日以前に退職した者に対し、一般公務員のいわゆる七千九百八十一円ベースに基く恩給が支給されておりますが、同日以前に退職した一般公務員につきましては、前回国会において成立いたしました恩給法の一部を改正する法律により昭和二十六年十月分以降一万六十二円の新ベースに基く恩給が支給されておりますので、執行吏につきましても、これと歩調を合せて、同月分以降新ベースに基き、恩給年額を、九万一千円を俸給年額とみなして算出した年額に改定することとしたのであります。  以上がこの法律案提案理由であります。  何卒よろしく御審議のほどお願いいたします。
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて。    〔速記中止
  5. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。本案に対する質疑は次回に行うことにいたしまして、本会議の都合上ちよつと休憩いたします。    午前十一時一分休憩    ——————————    午前十一時四十二分開会
  6. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を再開いたします。  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案について御質疑のおありのかたは御発言を願います。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 この法案につきまして、先ず根本的に今日の執行吏あり方執行吏制度あり方、こうした根本問題を先ず一応明らかにしなくちやならんと思うのです。又政府の、或いは最高裁判所考え方というものを伺つておきたいと思います。  提案者においては実務家であられますから十分御承知のことと思います。私が申上げるまでもなく、今日の日本民事訴訟制度というものは、如何に国民の間においてその実生活とマッチしていないかということは申すまでもないのです。ひとしく国民基本人権保護目的とする裁判所あり方といたしましても、民事事件の今日の状態においては、到底国民財産的な面におけるところ基本人権保護というものは全きを得てないと思うのです。にもかかわらず、その最終段階たるところのいわゆる執行吏制度において殊に甚だしいと思うのです。数年の長きに亘つて或る一つ事件を起し、そうして失われたところ財産的基本人権を回復しようと、こう国民努力して、その結果漸くその希望を達し得たといたしましても、この最終段階においてその目的あいまい模糊たらしめるというのが今日の実情であります。殊に今日の執行吏というものが、その委託者に対して、依頼者に対しまして取捨撰択するがごとき傾向にある。具体的に申しますならば、委託者使物をするとか特別に旅費を出すとか、或いは饗応するとか、金銭的謝礼をするというようなものにあらざれば、その委託した事件を速かにこれを執行しないのです。これが全国の執達吏あり方であると申上げても私ははばからないと思うのです。殊に東京あたり執達吏あり方というものは聞くに堪えない実情にある。我々地方に属する者においても、その地方裁判所に属する執達吏というものが実に腐敗しきつているのです。懇意な人若しくはそういうようないろいろな特別の関係のある事件は速かにこれを執行いたしますが、然らざるものに対しましては、忙しいとか順序がそう行かないとか言つてなおざりにして、受諾はいたしておりますがこれを執行しないというのが今日のあり方です。これでは国民は折角費用努力と日子を費して、裁判所に自己の失われた基本人権保護を受けたといたしましても、その最終段階においてこれを実現する機関において、かような腐敗した機関に委ねたならば、ひいては国家威信にも関し、最高裁判所威信にも関し、憲法の保障するところ基本人権の保障というものは全く画餅に帰してしまう。  私は先ずこの執達吏の今日のあり方についてどうする考えを持つていらつしやるか、この点を第一にお伺いしたいと思う。
  8. 田嶋好文

    衆議院議員田嶋好文君) 只今伊藤委員のお言葉は、幸いにいたしまして私も弁護士実務携つておる関係から一つ一つ御尤もな点ばかりであります。これに対して何らの弁解の余地も現在の執達吏はないものと考えますが、私たち提案者立場から言いましても、実はそうした立場から執達吏制度裁判制度に対しまして大きな検討を加えると共に徹底的な改革を必要とする段階にあることは、ひとしく認めておるのであります。併しこの制度そのものを根本的に改正するといたしますとき、現在の日にちを以ていたしましては如何ともしがたい事情にあることは、参議院の皆様におかれましても御承知通りであると思います。実はこの法案は、申上げる必要はないかとも思いますが、衆議院において先議をしないで、参議院先議をして頂いて、そうして十分な制度的な検討願つて、そうして我々の院のほうへ御送付願うつもりであつたのでありますが、併し不幸にいたしまして、参議院のほうが御多忙であつたかどうか知りませんが、なかなかこの法案参議院にかかるに至らない。ところがそうした欠陥はございますが、そういう欠陷を補う一つの手段として考えられますことは、やはり生活の安定を幾分なりとも執達吏に與える、そうした面で暫定的にそのでこぼこを是正して行く途がここに考えられるわけでありまして、その意味におきまして取りあえず、この全部によりまして執達吏経済生活が絶対に確保せられるという保証はできかねるのでございますが、一般公務員との給料の権衡も考えまして、この程度においてそうした不平不満の一部の是正を図りたいと、こう考えて本法案を特に急いで提出したような次第でございます。  先ほども申上げましたようにこれは衆議院のみの問題ではない、全国的な問題であります以上は、参議院も同じお考えをお持ちのことと思いますので、この問題に対しましては国会立場から総力を挙げて将来大きな検討を加えながら、大きな改革が加えられますことを期待いたしている次第でございます。
  9. 伊藤修

    伊藤修君 提案者の御意思はよくわかりました。勿論そうなくてはならんと思います。そういう点に対しまして将来とも十分関心を持つて、これらの制度に対するところ改革一つ御盡力を賜わりたいと、かように存ずる次第であります。勿論この提案理由たるところの、これらの職務に携わるところの人々の生活を維持するために必要最小限度賄いをするということについてはやぶさかでないけれども、先ほども申しましたようなあり方においては、到底この種の賄いだけではそれが拂拭されるとは考えられないのです。やはり制度欠陷その他規律規範というものに欠けるものがあるのではないかと、かように考えるのです。現在私の知つている限りにおきましては、最高裁判所においていわゆる執行吏職務規律、若しくは規範というようなものが末だ制定されていないように聞き及ぶのですが、少くとも終戰後すでに六カ年もたち、最高裁判所職務も軌道に乘つているごとと存じますが、かような重要な、最前線ともいうべきこうした機関に対するところ職務準則というものができているかできていないのか、この点を先ずお伺いいたしたい。
  10. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 執達吏職務準則については、従来各控訴院管内において執達吏職務準則というようなものが大同小異の内容を持つて規律せられておつたわけであります。それが引続いて現在においても生きているわけでございますけれども、やはり実情にマツチしない面がいろいろあると思います。殊に終戦後の経済事情の大変動伴つて、あらゆる面の生活環境が違つて来たのに連れて、執達吏生活というようなこともその例外たり得ないわけであります。従つて執達吏の実際の取扱いというようなものを、今御指摘になりましたような、かなり法律の予期しておらないような面が出て来ているということは私どもも認めざるを得ないわけです。それでそういう新事愛に即応して、執達吏職務規律監督というようなことを全国的に考えなければならないということを痛感しておりまして、これは今御指摘になりましたように、若干遅まきの謗は免れないかも知れませんけれども、昨年の十月から日本弁護士連合会代表者、それから東京高裁、地裁の裁判官、東京執行吏役場代表者、それに事務総局から民事局長等が加わられまして、執行吏事務協議会というのを設けまして、昨年の十月から今までに約六、七回に亘つて執行吏事務改善について協議を重ねて、その結果大体の論点は出揃つたと思いますので、それについて対策を講ずるものは講ずることとし、研究を要するものは各委員の手許で研究を重ねた上で、そうして更に成案を得た上会合を開いて協議することになつてはおります。併し只今指摘になりましたように、やはりそういう職務監督というような面を、当面の手当としては監督ということ、職務準則というようなことについて努力をしなければならないわけなんですけれども、根本的な問題は、やはり執行吏制度の根本的な改善ということを考えなければ、国民の期待に副い得ないのではないか。従つてできるだけ近いうちにそういう立法的な措置、根本的な措置ということを考えなければならないと、そういうように考えております。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 一体最高裁判所はいわゆる憲法に保障せらたところ基本人権を保障するところ殿堂である。その誇りを高く掲げておられるのです。我々はそれを又期待しておるのです。又そうであるべきことを我々は信じて疑わないのです。然るに終戰以来国内法規の整備というものがあらゆる意味において行われたにかかわらず、ひとり民事手続においては未だ整備されていないのです。その日暮しです。基本たるところ民事訴訟法においても然りです。而して先ほど申しましたごとく、その実現最終段階において図るところ執行吏制度に対して遅まきながらという今御説明がありましたが、遅きに失するのです。最高裁判所ができたら直ちにかようなことはすでに検討されて、今日明らかにこれらの統一規定若しくは統一的な法律というものが制定されなくちやならない。最高裁判所ルールで以て賄えるような事項です。あえて法律は私は要らないと思う。さようなものを荏苒日を暮している。最高裁判所ルールを見ますと、実に一般法規にもひとしいほどの数多くのルールが作られているにかかわらす、ひとりこれのみルールができないということは、最高裁判所仕事としては余りこれに関心を持たないのではないかと思うそれで以て国民基本人権を保障するという殿堂と言えるのですか。ルールを作るのに忙しいというなら、あれほどたくさんルールを作つていらつしやるのですから、これくらいのルールは当然速かに作らるべきはずのものです。昨年あたりから今日に至るまでまだその成案が得られないということは、余りに怠慢に失するではありませんか。殊に元の控訴院管内、即ち今日の高裁管内ごと一つの基準がある。それは戦前のものである。今日の新しい時代においてそれが即適用できるとは考えられない。又裁判所制度においてもいわゆる変革を来たしておりますれば、それに適合するように、又新らしい時代基本的人権という大きな観点に立つて、その実現を期待し得るような方向にその規範というものを作られなければならないと私は思うのです。そうした面がなおざりにされているということはどういう関係があるのですか。仕事をなさらないのですか。関心を持つていなかつたのですか。その点を一つ伺います。
  12. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 関心を持つていないわけではございませんし、関心は持つておりますのですけれども、やはりこれは監督規定というようなことを直す、根本の問題としてはやはり民事訴訟法強制執行の面にも関係をして参ります。更には執達吏規則というようなものも、その法律改正というようなことにも当然関係をして行きまするものですから、ただ監督的な職務規則的なものだけをやつても、抜本的な改善にはならない面が実際上生じて来ると思います。それで終戰後すぐに手を着けるということをしておらないのであります。法律のほうの改正強制執行改正というようなことも念頭にあつた関係で、最高裁判所としてもその執行吏制度についての根本的な改正について考慮は拂いながらも、それを立法府のほうに強く要望するというような点がなかつたわけであります。これは確に若干手遅れだと申されれば手遅れでありますけれども、事務局のほうとしては決して興味がないとか、改正をする意思がないとか、そういう意味合いでおつたわけではないことを御了承願いたいと思います。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 勿論その職務内容については民事訴訟法執行に関する規定と関連を持ちますが、少くともこの制度というものに対しまして、最高裁判所が先ず以て打立てるという考え方は当然なさなくちやならんと思うのです。而してその制度を公正に維持し得るというルールお作りになる必要があるのです。例えば最高裁判所の中に調査官制度を設けられますれば、それに対する調査官の機能を十分に発揮し得るような、或いは事務的な操作について最高裁判所事務の促進ができるような制度をいろいろお作りになる。又それに対するルールお作りになるはずです。いわゆる執行吏制度というものが、今日ならばそれを今日のごとく委託制度にするか、最高裁判所官吏ですか、官吏の中にこれを取入れて、最高裁判所自体においてこれを行う、勿論末端の裁判所が行うのですが、裁判所において行うようにするとか、根本的な制度の打立て方は私はあり得ると思うのです。ただ基本的な民事訴訟法ができないといたします。もう遅きに失するのです。少くとも司令部のおるうちに手を著けなければならない法律つた。それが荏苒今日に至つておるということは、国民基本的人権を保障する上において非常に大きな失態ではないかと思うのです。それができないからといつて、今後二カ年、三カ年このまま置いておくということは、私としては容認できがたい。これは速かに執行吏制度をどう基本的に打立てるかという考え方を確立して、その上において現行法とマッチさせたところ職務規律というものをお作りになればいいと思うのです。そして民事訴訟法改正されますれば、それにふさわしいように改正して行かれればいいと思うのです。民訴ができるまでやらないというような考え方では私は納得できないのです。如何ですか。
  14. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 御尤もなんです。この執行吏制度欠点と申しますか、只今いろいろ御指摘なつ現実面における欠点というのは、形の上では官吏国家公務員というようなことになつておりますけれども、收入が足りない場合には補助するということで、而も手数料その他の費用の額というようなものは法律できめて、自由競争に任せておかない。そして足りなかつた国家が補助するという、いわば実質上は官吏ともつかず、而も本来の商売人ともつかずというような関係になつている。そして依頼者の直接の依頼に基いて執行行為をするという、そういう今の制度に私はやはりいろいろな弊害が生ずる原因があるのではないかと考えておるのであります。従つて、併し御承知のように執行吏仕事というものはいろいろな部面が、部門がございますけれども、とにかく裁判で確定された権利実現に協力をする。実現そのものに携るということが執行吏固有仕事として非常に重大な役割を演じておるわけです。そうしますと結局強制力を以て私人財産に当る。私人の行動を束縛するということになりますから、結局国家強制権を持つてつて、その国家強制権国家官吏執行をさせるのだという建前は、やはり将来といえども崩せないのじやないか。そうしますと執行吏というような者を今の官吏並みに、官吏に取入れて、そして俸給賄い仕事裁判所仕事として、裁判所の職員として固有仕事として執行をさせるというようなことにせざるを得ないかとも考えられるのですが、その際にやはり給與ということが当然に問題になるだろうと思います。これは御承知のように執行吏仕事というものは決して好ましい仕事ではないわけです。いわばこの民事の、民事における行刑官吏というような形になります。執行吏の娘だといえば、嫁の売れ口も乏しくなるという現在でありますから、普通の費用で一体果して官吏として賄い得るだろうか、執行できるだろうかという疑問が生じて来るわけでございます。でございまするから将来の方針としてそういうような執行吏職務の特質といいますか、そういうところ国家官吏という面と、それから收入によつて、そのこんな不愉快な仕事を若干カバーし得るというような面を考えて、そして根本的な制度を打立てなければならないと思います。これは外国でも御承知のように歩合制度であるとか、收入を全部執行吏收入とするとか、官吏として行わせておるとか、いろいろな関係がございますが、それは結局は執行吏仕事の不愉快さ、困難さということに渕源しておると思うのです。そこで最高裁判所としてはそういうことはいろいろ考えてはおります。将来は今も申上げましたように、立法をしなければならないわけですけれども、差当つて現実に起つておるいろいろな弊害を除去し得るためには、できるだけ早く職務準則というようなものを、最高裁判所ルールの形で作らなければならないということで、事務局ではその用意を進めておりますから、法律ができるまで、民事訴訟法強制執行の部分が改正できるまでルールを作らないで放つておくというようなつもりはございません。それは遠からずルールの形で実現し得ると思つて努力しております。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 今遠からずというのですから、余り遠くはないと思いますが、それは遠からずではなくて、速かにという言葉で表現して頂きたい。いついつかまでとは申しませんが、速かにお出しになることが私は適切ではないかと思うのです。今日のあり方で以て国民がそれによつてすべての権利保護が賄われておるという事態ですから、一日もそれを早く出すことを期待してやまないのです。そして今職務の本質においていわゆる刑訴の場合におけるところ行刑官にひとしいようなものであると仰せられております。まさにその通りです。併し行刑官の場合には、これよりももつといやな仕事をしておるのです。死刑もやるんです。生きておる人間を長年月拘禁して見守つておる。この仕事の不愉快さというものは執達吏の比ではないのです。これが官吏で今日ちやんと賄われておるじやないですか。民事関係よりはこの行刑官のほうが仕事内容から申しますればいやな仕事であるか、不愉快な仕事であるか、陰欝仕事であるかということは比にならない。その行刑官が皆今日嬉々としてやつておるとは言いませんが、少くともこの仕事携つて、今日官吏制度として厳然として存在しておるのです。して見ますればこの民事執行官とも言うべきこの執行吏においても私は官吏で賄うということもなお私は不合理ではないと思うのです。その制度がいいか悪いかは別問題として、これはあなたのほうでよく御研究になる必要があると思うのでありますが、又官吏でやる場合において、仕事甲乙というものはあるべきものではないと思います。誰でも好き好きで、特審局のようないやな仕事を進んでやろうという人もあるのです。死刑執行をやろうという人もあるのですから、我々が考えておる以上にいろいろな異状の精神を持つておる人もおるのですから、これは仕事内容興味を持ちますから、決してそれによつて私は甲乙は附けられないと思う。だからこれをあえて官吏にしたところが、これにふさわしいところのやはり官吏という者が携つて行けるものと私は確信して疑わない。又この官吏は刑務所の看守程度のものにしておいてはいけない。これは少くとも裁判所に永年奉職して、書記を十年なら十年、今の事務官といいますか、勤めた者を任用するとか、或いは局長程度の人を任用するとかいう高い地位におくべきですね。そうしないと判決の内容をそのまま実現しようとするのですから、これは駈出しじや困るのです。そうなりますと結局待遇問題が起つて来る。これは一つ俸給表及び委託事件に関するところ国家制度においてそういうことが賄えるか賄えんかわかりませんが、別な私は特別手当を出す方法を考えてもいいと思うのです。これは最高裁判所考えられるべきだと思うのです。だからその人にふさわしい手当を出すということは私は十分国家としても考えて差支えないと思う。重要な仕事なんです。どんな名判官がたくさんおつても、その名判官によつて打出された判決というものを現実に具体化せなければ何もならないのです。それは画に描いたぼた餅ですよ。その現実に打出すものはこの執行吏なんです。その執行吏が判決の内容、判決が企図しておるところ内容というものを現実に打出し得ないというような人間であつてはならんと思う。従つてこの行刑官にふさわしい執行吏というものは、今日の人的……あの態様ではいけないと思う。もつと立派な人を出すべきだ。それには今、多年裁判所で勤め上げた人に、最後の奉公としてこの職に携る道を開けて、これを高い地位の、いわゆるそこに行くことを名誉と心得るもの、例えば裁判所をやめて公証人になることを名誉と心得る、権利を買つてそれに転職するという今日のあり方のごとくこれを持つてつて御覧なさい、執達吏の株というものは高くなつて執達吏を希望するという者は最高裁判所に陳情これ努めなければ執達吏になれないということになる。そこまで持つてつて頂きたい。そうすれば今日の世の非難を受けるがごとき執達吏の内状というものがその点から拂拭されると思う。規則ばかりではいけない。やはりそういう点を考慮して私は制度を打出さなければいかんと思う。そういうお考え方はどうですか。
  16. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 私が最前執行吏行刑官に比較したのは、本来の官吏として執行吏という制度を設けた場合に、できないという意味じやなくて勿論できる。できるけれども、行刑官に比べられるべきものであるから、その待遇として、待遇問題については通常の官吏と異なる待遇を以て臨まなければならないだろうという趣旨において申上げた意味なんです。その点は伊藤委員只今の御発言と同趣旨でございます。決して官吏としてできないという意味ではなく、官吏としてやる場合には、普通の官吏よりもその職務が十分とれるようにいい待遇を與えなければならないという趣旨で申上げたわけであります。  それから官吏として執行吏制度というものを考えるときに、その地位を現在よりも重くしろということも、これも事務局のほうでも同感でございます。現在の執行吏という者はいろいろ非難がございますし、率直に申上げれば、やはりその質として優れておるとは私どもも自負できないと思うのです。そう申しますのは、結局戰前においては裁判所で長く勤めておつた上級の書記がやめて執行吏になる。従つて法律の知識は相当あつた。そういう者が執行吏役場に相当おつたわけですが、戦後はいろいろな事情からして執行吏を希望をする者というのが殆どなかつたわけです。最近は漸く若干出て参りましたけれどもなかつたのです。従つて素質の点からいつても必ずしも優秀な者が現在執行吏となつておらないわけであります。外国などの例を見ますと、執行吏は相当の、まあかなり重要な地位を占めておつて、公に選ばれたりするような制度になつている。サラリーなども相当高く、地位も相当認められているわけです。今御指摘になりましたように、この裁判の判決の執行をする際に法律知識が相当要るのじやないかとおつしやられた通り法律知識が相当執行吏は必要であつて、その点から言えば、現在の制度をそのまま申しても、執行吏は或る意味で独立の機構で、必ずしも具体的な行為について一々裁判所の指示はされておらないわけであります。その点からしても執行吏の地位というものは高くあるべきであり、殊に戦後のいろいろな場合、殊に仮処分などの場合には執行吏にかなりの認定権といいますか、裁量権といいますか、そういうものを付與した仮処分等をさす場合もあり、そういう点を考えても、執行吏法律家としても相当な素養を具えていなければ勤まらない職務だということはお説の通りであります。その点から申しましても執行吏の地位を高めるということは、結局裁判を終極的に実効あらしめるということになるわけでございますから、執行吏の地位を現在よりも高くして、そうしてそれを優遇をする、同時に素質を向上さして、法律家としても他にひけを取らないような人物を備えるということが必要であることは伊藤委員の御指摘通りだと思います。事務局においてもそういう点はそういう方向に持つて行くべく従来考えて参つております。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 どうも従来考えては参つていらつしやるけれども、それを考えるだけでは、いつまでも頭の中にしまつておいたのでは駄目なんです。お互いに考えたことは直ちに実行に移さなければいかんのです。今日の社会情勢というものは、殊に今日の日本としてはいい考え方は直ぐ打出さなければいかんのですよ。今日の日に困つているのですから、今日の立派な日本を作ろうとしてお互に努力しているのですから……。鈴木さんは休むに似たりとか何とかいう考えで、これは余り考え過ぎて、うちの中にしまつておいては役に立たないのです。これがいいと確信されたらそれをどしどし速かに実現して頂くように努力してほしい。由来裁判所というものは非常に物事に慎重で、度が過ぎるのですね。或る意味においては勇気がないというのです。これがいいと思つた最高裁判所は独立したのだからどんどんそれを実行に移して頂きたいのです。これだけ長年の間受けて立つ、いわゆる裁判をするのに受けて立つという立場で以て非常に実社会に疎いのですね。これを改めて頂きたいのです。最高裁判所がいやしくも独立して国民の前に立つた以上は、今日の国民生活をどう導くかということにやはり思いをいたして頂きま出して考え、いいと思つたことは直ぐにこれを実現するように努力して頂きたい。二年も三年も、十年もかかつて判断をするというような悠長な考えは棄てて頂いて、我々国民と共にある、最高裁判所が共にあると、こういう考え方を以つてすべての今日の仕事をなさつて頂きたいと思います。その意味においてこの問題に対しましても速かにこれはあなたたちの考え方を具体化して頂きたい、こう思うのです。私の強い希望は、官吏とする場合においてはやはり地位を高いものにすべきことは当然です。又今後お説の通り、私が申上げるまでもなく、行政事件というものが裁判所に帰一されておりますから、いろいろな複雑な仮処分というものが相当起り得るのですね。執行吏に対して重大な責任を持たせられるような状態に今日は置かれているのですから、だから従来の、戰後臨時雇的な執行吏、質の下つた執行吏にこれを任しておいたのでは結局は最高裁判所威信に関する。又日本の司法権の独立はどこにあるか、司法権の尊厳というものがこの点から崩れて行くと思うのです。それは由々しき問題と思うのです。国民は非常な努力を費やして、その結果受けるところがこんなことかということになりまして、裁判所頼るに足らずとなつたら、日本制度というものはすべて打ち壞されるということをお考えにならなければいけないですよ。ただ裁判所があるからいいのだという考え方ではいけないと思う。日本人が、日本国民が頼るのはどこですか、裁判所以外にないじやないですか。すべて挙げて裁判所に事を任せよう、裁判所の裁断を受けよう、その指示に従うのだ。それは我々は納得する、こういう気風が満ち満ちておるのです。どこの行政官庁に行つて、我々は、私たちの生活をすべて任すという所がありましようか。最高裁判所に限つて国民はすべて任しているのです。これほど信頼の高い最高裁判所が、その国民の信頼を裏切るがごときこういう制度をそのまま一日も存在せしめるということは、これは最高裁判所のために私は非常に遺憾に思うのです。これは私は速かにやめるべきです。曾つても私は非公式に言つたことがある。由来今日に至るまで何らなさらない。でありますから私はこの法案が出て来たときにこの苦言を呈したいと思つて、私は参議院でするべきでなくて、私はむしろ衆議院で出して、こちらが批判的な立場に立つて苦言を呈したい、かように考えた次第です。この点は十分一つお帰りになつて事務局とよく打合せて頂いて、速かに実現されるように努力して頂きたいと思います。  それでまあそれは将来のことでありますが、将来としても近い将来のことですが、現実の問題として、一体今日執行吏監督裁判所長がなすつているのですか。これは実際行われていますか、どうか。裁判所長が一体関心を持つておるかどうか。
  18. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 執行吏監督は、終戰前は地方裁判所長が監督をするということになつておりましたけれども、裁判所法施行以来、結局裁判所で、又地方裁判所監督をするということになつておるわけでございます。従つてそれは実際的に言えば、裁判会議でその具体的な場合に監督すべき事項が起ればきめて監督をする。或いは一般的に裁判会議できめた方針に則つて裁判会議から委嘱を受けた者が監督をするというような形になるのでございますが、実際においては多くは地方裁判所長が裁判会議の委任を受けた形で監督をするとか、更には東京地裁のごときは、民事部の上席の裁判官が監督をするとか、大阪の地裁で申上げれば、所長、上席の裁判官、それから執行部の裁判官、簡易裁判所の上席の裁判官という者から構成しておる執行吏監督委員というようなもので監督しておる例もあります。それから京都の地裁などでは、執行部の裁判官と訟廷課長が監督をしておる。あとは大抵の所では普通所長が裁判会議の委任を受けた形で監督をしておるということになるのであります。これは職務のつまり管理としての一般的な監督意味でありますけれども、具体的な職務執行について異議というようなことが出れば、それは勿論各裁判所執行を担当しておるいわゆる執行部でその具体的な事件についての異議を通じて監督をしておるわけでございます。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 あなたはそんなことだからふしだらなんですよ。勝手放題なことをやつているのですよ。一体私は常々最高裁判所に言うのですよ。裁判官が余り行政に興味を持ち過ぎるのですよ。今日の裁判官は今まで持つていなかつたものだから、今日裁判所が独立したと言つて、司法行政に興味を持つて、本来の裁判のことはそつちのけにして来ているというのが本来の……ここに出て来ている一つの例なんです。一体裁判会議でかような監督事務を行えるのですか。かような事務を、職務裁判会議に委ねるということは根本的に間違つていると思います。裁判官が自分の本職を打つちやつておいて、若しもそれを外して執達吏あり方について一々監督できるですか。況んやそれはその会議において、一にも二にも司法行政を裁判会議に付するというあり方は、私は今日の裁判官が堕落する一つの大きな原因だと思うのですよ。これは裁判所よりも……、近く裁判所法を改正して、裁判会議というものは諮詢機関に直すべきです。そして裁判所長に本来の権限を持たすべきですよ。民主的も度を過ぎると却つて仕事の秩序を紊すのですよ。目的を達しないですよ。それも独裁ではいけないから、裁判所長が会議に諮問する。そうして職務執行に多数の人の意見を徴して行うというあり方ならば、まあ今日の憲法の精神にも悖ることはないと思うのです。そういう方向に私は裁判所法も改正しなくちやいけないし、改正しない今日の段階においては、最高裁判所ルールにおいて、かような事項については挙げて裁判会議は所長に委託すべしという訓令を発すべきですよ。又ルールを制定すべきですよ。それで統一するのですよ。どこの裁判所はこういうやり方、あそこの裁判所はこういう……、それ自体が最高裁判所がこれに無関心だということをみずからあなたは物語つているのです。一つ国家制度の中にその機構のあり方が区々であるというあり方は私はあり得ないと思うのです。やはり規律した、厳然とした一つ監督機関を、指導機関というものを持つてつて、これらの裁判威信を保たしめるには、又裁判執行の完全な実現を図るべきように常に監督指導して行くというあり方が正しいと思います。そういう方向に持つて行かなければいけないと思います。  第一に私は附加えて申上げておきますが、執行吏という言葉がいけないのです。これはもつといい言葉にしなくちやいけない、名前を……。執行吏なんというのは昔の、明治時代にできた吏とか廷丁とか、ああいうような言葉はこの際直して、もう少し言葉を名称自体にも私は考慮しないというと、こういう者になり手がないです、それは先ほどおつしやつたように執行吏の娘は嫁にもらい手がない、首切り浅右衛門の娘は嫁にもらい手がないとは言わないですよ。これは嚴然たる、いわゆる何というか、御家人ですか、或いは直属した武士であるのですから、やはりその人の身分というものに対しても考えをこの際及ぼさなければいかんと思うのです。そうすることがやはり執行吏の地位を高め、又国民の信頼に応えられるようになると思うのです。第一に私はさような今日のあり方の、裁判会議に委ねておいて、素知らぬ顔をしておるという最高裁判所あり方はよくないと思います。でこれはどうなさいますか。
  20. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) その裁判会議が司法行政をやつて行くという建前が、裁判所法の現在の建前でございますが、それについて伊藤委員裁判官が司法行政に興味を持ち過ぎるという御指摘なんですけれども、これはむしろ裁判官は司法行政に本来興味を持つていないのじやないかと思うのです。私は実際……それを司法行政をするように最高裁判所法がしておるところに矛盾があるので、この執行吏制度監督についても、裁判官が裁判会議を中心として監督をしておらないというのは、やはりそれは各裁判官が行政に興味がないからだ、裁判会議監督をしているというところ一つも現在ないのです。裁判会議が結局所長に任す、或いは委員に任す、執行部の判事に任すというようなことになつているのですが、私はこの監督がうまく行われないという場合は、監督者のほうに責がある点を決して逃げるわけではございませんけれども、執行吏の主な作用は大体法律においてきまつております。そうして而もそれが執行吏の独立の権限としてやられるというやはりその面が強く出ておりますから、それを監督をするということになりますと、勢い執行吏の権限を侵すということになりますから、その監督権があとに退いて、消極的に非行があつた場合に監督するというふうな形になつているところは私はやはり執行吏に対する監督が行届かないということが出て来るのではないか、むしろ監督の不十分だという点は、現在の執行吏あり方法律による権限がかなり独立に與えられているという点にある。而もその内容、独立の権限を十分に行うのに必ずしも適当な者が執行吏になつていないという点にいろいろな弊害が出て来ると思うのです。裁判会議の点について伊藤委員から御指摘がありましたが、これは私どももいろいろ裁判会議というもののあり方については考えておりますし、いろいろな意見も出ておりますし、将来或いは御指摘なつたように改正しなければならないというようなことになるかも知れませんと存じますけれども、裁判官が裁判会議監督をするということになつているから執行吏監督が不十分だとはすぐには言えないような気もいたすのでございます。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 これは裁判会議は本来興味を持つていないのだ、併し法律が與えたからから興味を持つのだ、同じことなんですよ、それは同じことです。法律で與えたから興味を持つているのです。だから法律を直さなければいけないというのですよ。ところが如何せん今日は法律で與えておりますから自然興味を持つて来るのです。指摘しろと言えば私は事実指摘して挙げますよ。甚だしいのになると、給仕や小使に至るまで裁判会議で容啄しているのですよ。それでひねもす暮しているのです。本来の裁判を伏せておいて、誰を部長にするとか誰を担任にするとか、そういうことに論議を費しているのですよ。だからよく喋べる奴が結局部長になつてしまうのですよ。そういうあり方は結局裁判官を冒涜するものだと思うのですよ。そういう弊害が徐々に起りつつあることはあなたも御承知通りです。これは根本的に私は改むべきものだ、それは別の問題でありますが、この問題に関連しては裁判会議はかような実際事務のことについては、私は現在の法律ではそうなつておるのですからこれは止むを得んのです。だからこれをうまく運用する意味において最高裁判所努力すべきだ、こういうのです、現在の法制の下において。それは結局裁判会議で、今の法制の下では所長にすべてこの事項は任せる、こういう決議をとるように訓示をなさるべきだし、指示をなさるべきだと、こう申上げるのです。そうして今日の過渡期を賄うべきだ、こういうのですよ。そうして又今度は監督の面ですよ、これはあなたの、執行吏の規則の上において非常に独立の権限があるから余り容喙できないというのですが、正しい職務執行をすることに容喙ができることは当然のことです。私の言うのはそうじやない。その権限の立場に立つてこれを濫用し惡用している、不正をしている、こういうことは申告を待つまでもなく、常に監督によつてこれは是正すべきだ、こういうのです。監督ということはそういうことです。その監督ができないようならばこれは監督じやないのです。ただ人事を見ているだけでは困るのですね。少くとも監督の地位に立つ以上は、そういう点は訴えがあれば当然であるし、申告があれば当然のことなんです。そうじやなく、自分の所属している執行吏の今日のあり方はどうであるかということは常にその理事者を呼んで実情を聞くなり、あり方を聞くなり、そういうふうな状態を聞くなりして、間接にも直接にも監督の方法はあり得ると思うのです。こんなことは私が一つ一つ行政的なことを指示する必要はないと思うのです。皆様において御研究になつて監督の方法は十分あり得ると思うのです。そうするならば、こうした非難は或る程度是正されると思うのです。そうしてその間に立派な法律お作りになつて、立派なルールお作りになつて、完璧なものをお作りになるという方向に持つてつて頂きたい。法律が今できればいいのですよ。法律のできるまでの間のことを今あなたに申上げているのです。あなたもその責任の地位に立つていらつしやる以上は、やはり日本のためにああいう点は何とかこの過渡期を乘り越すようにお手当をなさるべきである。こう申上げるのです。ただ監督の地位にあるという名目上の監督じや困ると思うのです。如何ですか。
  22. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 御趣旨よくわかりまして、別にこちらの反対いたすところはないと思います。できるだけ早く御趣旨に副うように手当したいと思います。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 だからルールのできるまでの間はできるだけ早くじやないのですよ。すぐやるべきだと、こう申上げるのですよ。ルールでそういう点を十分考慮して、ルールのほうで賄つて頂くということは当然のことだと思うのです。そのルールのできるまで、若しくは法律のできるまでは、今日の法律の下に世の非難を受けないようなお手当をなさるべきだと、こう申上げるのです。  それから次に現在執行吏についての不正事件、若しくは国民のこれに対して不服を申立てられたような事件というようなものはどのくらいあるのですか。
  24. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 只今わかつておる点だけを申上げますと、昭和二十五年以降で執行吏の懲戒等の行われた事例が五件ございます。その中の一つは、国家公務員法の八十二條の二によつて戒告になつております。それからもう一つ国家公務員法の七十九條の二によつて休職になつております。他は転勤という形で事実上の処分をしておるようであります。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 それは公式にいわゆる懲戒委員会にかかつたものでしようが、そうじやなくても、私はそんな数じやないと思うのですね、全国で。そんなことは私らの岐阜地方裁判所管内でも十や二十ありますよ。一つ一つ指摘しろというのなら私指摘して見せます。東京なんか恐らく枚挙にいとまがないでしよう、東東の執行吏は。そう言うと執行吏は怒るかも知れないけれども、私はそういう点断言してはばからないのです。そういうことは少くとも上司の監督の地位にいる者が見ていないと思うのです。あなたのほうでそういう報告が来ていないとすれば。一偏東京のこの執行吏あり方を責任ある人にここに来て説明して頂きますか、それともお調べになつて文書でお出し下さつてもいいと思いますが。
  26. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 調査の上文書で提出いたしましよう。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 どつちにしても、くどいようですけれども、今日の執行吏をこのまま見過していてはいかんですよ。裁判所威信にかかわりますよ。もう少しよくしなくちや、立派な最高裁判所のああいう建物ができて、立派な人が椅子に坐つていらつしやるけれども、末端の者が、裁判長を代表して国民に接触している者がふしだらなあり方では、最高裁判所の立派なものが傷つけられますよ。これは私は田嶋さんも恐らくそういうことに対して御同感であろうと思うのです。どうか私は最高裁判所を思うが故に申上げるのですから、惡く思わずに聞いて下さい。
  28. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 只今のお言葉は私どもも決して反対すべきものを持つておらないのであります。執行吏の素質の改善をしなければならないということと、執行吏制度を適正に打立てなければならないということは、お説の通りできるだけ早く実現実行をしなければならないと考えて、その方針で事務局の者は実行いたすつもりでおります。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 これは担任は誰ですか、關根さんですか。
  30. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) そうです。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 いつ頃帰つて来ますか、關根さんは。
  32. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 来月の半ば頃です。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 關根さん帰つて来たらすぐやるようにおつしやつて下さい。
  34. 鈴木忠一

    説明員鈴木忠一君) 帰つて来ないうちに準備します。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 あなたがやつて下さい。關根さんが帰つて来たらできておると見せてやつて下さい。
  36. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それじやこの程度にして休憩いたします。午後は一時半に開会いたします。    午後零時四十一分休憩    ——————————    午後二時九分開会
  37. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を再開いたします。  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案議題に供します。本案につきましては先に衆議院において修正されましたので、便宜政府より修正点について説明を聽取いたします。
  38. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案につきまして衆議院修正がされたのでございまするが、この主なる点は四十一條の五項に関する改正規定を、政府提案におきましては、これは関係人の……、引致に関する点でございますが、政府の原案におきましては「引致状による引致は、警察官、警察吏員又は保護観察官が行うものとする。」、こうございますが、修正案では、この引致が保護のためのものでございまするし、刑事手続でございませんので、この実体から保護観察官が、第一の責任者ではないが、保護観察官に行わせることが事実上困難であるという場合に警察官又は警察吏員に委嘱して行なわせるということが適当ではないか、こういう意味合いで修正されたのでございます。これは政府提案いたしましたのは、現行法の順序をただ刑事事件でないという点から、司法警察官を警察官とし司法警察吏員を警察吏員といたしまして、順序は現行法のままにいたしたのであります。実体は現在でもこの事案の性質からいたしまして、保護観察官が中心になつていたしておりますので、この修正案は現状に合うものと考えております。  その他施行期日の「五月一日」というのを「公布の日」ということに改める等、字句の整理に関する改正でございます。  それから戰犯者に関します平和條約十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律中にも同様これは條文を整理する点がございますので、それに関する修正案でございます。
  39. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 本案に対しまして宮城委員より質疑の通告がございますので、許可いたします。
  40. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案につきまして局長に三点について伺いたいと思つております。  第一番に第三十條でございまするが、三十條の二項「その他中央委員会の規則で定める場合」ということがございますが、これは具体的にどういう場合がございますでしようか。
  41. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 現在中央委員会の規則をいろいろ研究いたしておりまして、まだ決定には至つておりませんが、現在の研究段階考えておりますことは、第一には前に一度申請があつて審議をして、何かの事情でまだ早いというためにそれが棄却になつた。その後事情が変更して、その点に関する事情が変更して、そうして今度申請があつたという場合に、前回の面接から三カ月というふうな短期間しかたつていないというような場合は、委員会の見るところによつて、必要がないとすれば省略してよろしいというふうに考えていいのではないか。それから現在刑務所におきましては、諸般の事情から殆んど開放的な構外作業場を持つておりまして、そこに成績のよろしい、仮釈放の適格性を有するだろうというような人を送つて構外作業をさせております。かような構外作業に対してそこに泊り込んで出役していて、それも相当期間に亘る、そうしてその期間何ら反則がないというようなことについて、書面による調査で十分であるという場合には省略することができる、そういうような点を考えております。
  42. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちよつとそれに関連いたしますが、この三十條三項でございます。その中に、今までは施設の長又はその他の職員の立会及び意見の聽取が必要という事項になつておりましたが、今度はそれが改められております。ということはこれは何か私にはわからないのですが、何かそのほうが便利なことでもあるのでございましようか。
  43. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 仰せの通りに、只今法律によりまして施設の職員が面接に立会うことをいたしておりますが、場合によつては施設の人がおらんほうがいいのではないか、率直に本人がものを言える場合があるのではないか、或いは構外作業のような比較的少数の職員が出向いておるような所では、場合によつては長時間に亘り立会うということが困難な場合もあるのではないか、そういう点を考えて彈力性を持たせようと、こういう意味合いでございまして、かように改正をいたしたからといつて立会をしないということを原則といたしておるのではございません。委員等からそういう場合があるということを聞きますので、稀なる場合にはそういうこともできると、こういう改正をしたらいいのではないかと、かように考えた次第でございます。
  44. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これは本質的に非常に弊害があるというわけではないのですね。事務上の時間の都合等もあるのでございますか。
  45. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 大体さような場合を考えて、事務的に考えてかようにしたほうが便宜ではないかと考えております。
  46. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それからこの四十一條でございますが、四十一條の第二項第一号の規定しております住居は、居住することは当然同項第二号の事項に包含せられる事柄でございますが、特にこの本号を設けておきます必要はないものと思いますけれども、その点はどうでございますか。
  47. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 仮釈放いたします際に住居地を指定いたしておりますので、遵守事項の内容になつておりまして、その居住すべき場所に無断でいないという場合には、遵守事項の規定の違反ということになります。ただ今度考えましたのは、遵守事項違反だけで停止をするということは、もう少しその点は真重にしたほうがいいのではないか、ということは遵守事項の中で指定された住居にいず、無断でそこからよそへ行つてしまうということは保護観察をいたす者にとりますと致命的で、保護観察が事実上不可能になるということになりますので、かような場合は遵守事項違反のうちの一つではございますが、その点を引致の理由とする、こういうふうにいたしたのでございます。
  48. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 遵守事項その他の報告は定期的にされておるのでございましようか。
  49. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 遵守事項につきましては委員が面接等におきまして、十分本人が更生するのにどういう点を守つたらいいかという点を考慮いたしまして、出る際にそれを定めまして、そうして本人にこれを誓約させて出す、かようにいたしておる次第でございます。
  50. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 観察中報告はどのくらいいたすのでございましうか。
  51. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 遵守事項を定めまして仮出獄とさせますと、その遵守事項なりその他いろいろな記録が実際に保護観察を担当いたします保護観察官、若くは保護司の手許に仮出所になる日以前に到達するように努めております。そしてそれによりまして担当する観察官或いは保護司は保護観察をいたしまして、毎月一回その成績を報告してもらうようにいたしております。
  52. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは毎月一回ずつ出しますということは、保護司としましたら大した骨が折れないでございましようか。なかなか停滞しおりますというような話も聞きますが、如何でしよう。
  53. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 保護司ののかたがたは他に職をお持ちになつて、本当に同胞を救済しようというために殆んど無報酬で、実費についても十分な補償をもらわないでやつております。そのかたがたにお願いすることは無理なようですが、これをやりませんと観察ができないというわけで、お願いしてやつておるわけでございます。現在全国的に、大体勘ですが、六割ぐらい毎月御報告をもらつておるのじやないかと思います。成績のいいところでは八割或いはそれ以上ということになつております。その点では全国の保護司のかたがたたちに常に感謝と敬意を拂つておる次第でございます。
  54. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 仕事の実質から申しますと、余り報告通り数字ができておりましても、内容がそれに伴わないような場合があるでございましようし、むしろ本当に観察して下さつておるかたがたは、報告はあと廻しになるという場合がございまして、必ずしも報告が出ないということが成績が惡いという結果ではないと私は思つておるのです。ただそういうふうにまあ本当に奉仕的に働いて下さいますかたがたに対しまして、本当のことは余り手数のかからないようにして、実は子供を可愛がつて、本当の観察をして頂きたいというような意味から、この頃よりより考えられております報告だけを専任の保護司を作つてさしたらどうかというようなことも、意見が出ておるじやございませんですか。私はそういう方法をとることが一つ事務とそれから観察の内容を充実するという意味から惡くないと思つておりますが、その点局長の意見は如何でございましようか。
  55. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 只今仰せの通りに観察報告を出さないかたでも実際よくやつておるかたもございます。ただ全般的にこの制度の向上なり或いはケース・ワークの技術なりを発展させるというためには、実際によくやつて頂いて、無理ではございますが、御報告を頂くということが望ましいという意味でお願いしておるわけでございます。なお只今も仰せの通りに、これについての何らかの便法を講じたらという御意見もありますので、これについては十分考慮いたしたい、かように存じております。
  56. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その次は四十二條の二項についてちよつと伺いたいんでございますが、この三十三條の第一項第二号の少年院の仮退院者及び同第四号の十八才未満の執行猶予者でございまして、保護観察中の者が、居住すべき住居に居住しないというようなときに、保護観察をすることが不可能という場合もやはり保護観察を停止することができるように改めるという必要はないでございましようか。この点如何ですか。
  57. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 仮退院中の者或いは十八才未満で刑執行猶予になり、法律によりまして保護観察に付せられておる者につきまして、指定された住居に無断でおらなくなつたという場合には事実上保護観察ができないという場合もございます。ただそれを制度として保護観察を停止するかどうかという問題につきまして、私どもはかように考えておりまするが、仮退院を取消して保護收容するというのは家庭裁判所が決定をされる。それから執行猶予の取消しということも同様裁判所の決定によつてやられます。その間は法律によりまして保護観察をするという建前になつておりまするので、これを無断で裁判所の決定前にそれをやらないということは、一面裁判所の権限を半面的ではございまするが、侵すようなふうに見られるというので、この間は事実上不可能ということはあるかもしれませんが、まあ極力やるといろ建前で、それをはつきり法律に書くかということは如何かと、かように考えております。
  58. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 わかりましたでございます。  それから次は四十二條の二でございますが、第六項によりまして保護観察停止決定が取消されました場合に、第七項によつて停止決定はなかつたものとみなされるようでございますが、仮出獄者の停止決定の時からこの取消決定の時までの行為、遵守事項違反などにつきましては、この第五項の適用がされるでございましようか。まあ仮出獄の取消しなんか、それは如何でございましようか。
  59. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 第四十二條の二の第六項、第七項は、本人が指定された住居を無断で逃走しましておらなくなつたために、保護観察を行うことができなくなつた。即ち保護観察を免れるという場合に保護観察の停止をいたします。現行法通りその停止の期間中は刑期に算入されない。併しあとでそうじやなかつたと、本人の責任じやなかつたと、そういうことがわかつた場合には、決定を待ちましてその停止を取消して、その場合はその期間を遡つて取消すということに、第七項によりましてその停止後の期間は刑期に算入する。元通りに回復させる。これが当り前であろうと、こういうふうに考えて、第七項をさような意味合いで書いたのでございます。  然らば通常の場合その保護観察の停止中に遵守事項を遵守しなかつたということを理由として、仮出獄を取消すかどうかという問題が、第五項でございますが、保護観察をできない理由で停止をいたしまして、保護観察をいたしておらないのですから、その間の遵守事項違反を理由として仮出獄を取消すというのは、いささか一方的ではないかというふうに考えまして、その期間中は仮出獄の取消はできない。その期間中の遵守事項の違反によつては仮出獄はできないというようにするのがよろしいのではないかという、かように考えて第五項を置いた次第でございます。
  60. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その次に第四十五條でございますが、第二項の留置は第一項の委員会の審理開始決定の結果として当然できることになるのでございましようか。それともこの裁判所から留置状が発せられなければならないということになつているのでございましようか。
  61. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) これはこの関係におきましては、引致につきましては裁判官の発する引致状によつて引致するものでございますが、その引致いたしました結果、これは取消すか取消さないか審理をする必要がある。その間若干の日数本人の身柄を拘束するという必要がある場合、留置の決定をすればそれによつて更めて裁判官の令状をもらわないでも留置が或る期間できるというにいたしたのでございます。これは実際上その審理をする必要があるかどうかというようなことは委員会でなければわからない。又本人は本来ならば施設に收容されて裁判所の判決によりまして收容されておるべきはずの人でありまして、現行法でもこの点は裁判官の留置の許可状を必要としないというようにいたしますということをそのまま踏襲されておるわけでございます。
  62. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この第三項の所に留置の期間の延長のことがございますが、これは二十日を越えることができないというふうになつておるのでございますけれども、この二十日ということはどういうところから出ておるのでございますか。
  63. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 仮退院中の少年にしてやはり戻してもう一遍少年院に入れて教育する必要があるというような場合に、往々にして身柄を拘束する必要がございます。実際問題といたしまして……。さような場合には引致状を出して、そうして一応の調査をいたしまして、これは審理するという必要があるということになりますると、審理を開始する旨の決定をいたして十日間、最長十日間適当な施設に留置する。そうしてその間家庭裁判所に対して少年委員会から戻し收容の申請をされますると、裁判所がそれについての決定をするのにやはり若干の日数が必要であろう、それを十日もあれば大体できるのではないか、こういう考えで、初めの普通の場合の十日と裁判所に申請してから裁判所が必要とするであろう十日を加えて二十日と、こういうふうにいたしたのでございます。
  64. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 わかりました。この法案につきましての私の質疑はそれで終りましたのでございますけれども、この前の委員会のときにちよつと問題にいたしましたこの平和條約の発効に伴いまして、受刑者が大巾に恩赦になりましたのでございますが、あのときに、少年の問題はどうなるかということを申したのでございますが、その後何か御様子がわかりましてございましようか。
  65. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) この前の委員会におきまして宮城先生から御注意がございましたので、早速小林局長に連絡をいたしました。ところが相当前にそういう空気が若干あつたそうでございますが、その後矯正局と私のほうから通牒を出しまして、それぞれ審理いたしまして、退院を早めたほうがいい人については退院をさせる等のことをさせました。その後問題はないということを聞いております。
  66. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実際においてはそれではこの少年院のほうもこの頃相当退院が許されておりますのでございますか、如何でございましようか。
  67. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 詳細な統計的のことは存じませんが、相当仮退院が行われているはずでございます。
  68. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私はもう終りました。
  69. 中山福藏

    ○中山福藏君 私一つだけ聞いておきたいのですが、この四十二條の二の第五項の所に、「仮出獄中の者が保護観察の停止中に遵守すべき事項を遵守しなかつたことを理由とし、仮出獄の取消しをすることができない。」というような條項がありますね。私もいろいろ犯罪がなぜ殖えるか、累犯みたいなことがなぜ流行するかということを調べて見ますと、その仮出獄とか、それからあの保釈のときなんかですね、それから刑の執行が終つて出たときに、ただ出し放しなんですね。職業紹介所と連絡をとつて、この人が獄から出たらどういうふうな職業に従事して、犯罪を二度と再び犯さないかという処置をちつともとつていない。これが私は非常な手落ちだと思つておるのです。で若し当局がそういう点まで気を配つて頂いて、これが出たらどこの職業安定所の紹介でどこの工場に勤めるという、その廊下を……監獄から工場までの廊下を作つて頂く、そういう施設をしなければ、出し放しじや、泥棒の習癖のあるような人は、なかなか直らんのです。それが非常な欠陷だと普段私は考えておるのですが、そういう点について考えておられますかどうですか、一つ……。若しあつたらその構想を聞かして頂きたい。
  70. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 只今仰せのことは申されました通りでございまして、私どもこの法律の運用は、刑務所と社会に橋をかけるということでなければならんと存じております。現在まだ発足早々でもございまして、十分なことは到底参つておりませんで、ただ現在では仮出獄、刑期三分の一に達する二月前に刑務所からいろいろな資料をもらいまして、そうして家庭の問題であるとか職業の問題等について極力努力をする又中央におきましては労働省ともいろいろ折衝いたしまして、労働省から施設ごとに担当者をきめてもらいまして、一人か二人の担当者をきめてもらつて、その人と私どものほうの機関と連絡をとつてやるようにいたしております。併し実際まだまだ不十分でありまして、今後十分その点は大いに努力いたさなければならん、かように考えております。
  71. 中山福藏

    ○中山福藏君 実はこういう質問をただ徒らにするのじやなくて、こういう事柄は私は数年前に、私ども在野法曹においては提唱しておる、それが少しも……。ただ議会ではこうするとかああするとかいう弁明をなさるのですけれども、少しもそれが実際に現われていないのですよ。だから本当に一つ徹底した社会政策、刑事政策というものをやつて頂かんと非常に私は………ただ法律の作り放しでは効果が挙つて来ないと思うのです。実は先般、先々月でありましたか、私は一人の犯罪人の弁護に立つた。国選弁護であつたのです。この人は二階に宿を借りて、そしてその家主の着物を横領して売つたというので公判に附されておつたという工合に聞いて参つたのですね。監獄から出たときに、職業紹介所に直ちに行つたというのです。職業紹介所に頼んで、六カ月しても、就職口を見付けてくれないのです。だから監獄から出たばかりで、小遣銭はないし、どうすることもできないから、仕方がないから下のおばさんの着物を売り飛ばして小遣銭にしたと、こういうことなんです。これは一例ですがね。こういう者はたくさんあるのです。私は学生時代に巣鴨に参りまして典獄に聞きましたところが、一体出獄した人は何割くらい帰つて来るかと、もう翌々日ぐらいは半分くらい帰りますと、典獄さんがその時代にも言つておりました。その時代から、ちつとも……四十年ばかりたちますけれども直つておらんですね。又そういう点について少しも気を配つておらない。これは四十年間の懸案と言つても差支えないくらいの問題です。一つこういう問題も法務総裁ともお打合せして頂いて、立派な一つ社会政策の見地に立つて刑事政策を活かして頂きたい。かように考えまするから、特にこの点御注意を一つ申上げておきます。
  72. 左藤義詮

    左藤義詮君 先日の大赦で今の恩典に浴した人々が社会へどういうふうにして更生するか、その廊下の繋ぎ方についていろいろ質問をし要望をしておいたのですが、その後どのくらい職業安定所等によつて就職しているか、或いは今中山さんのお話のように、数日ならんうちに又元へ戻つて来ているというような者がありはしないか、そういうことについて今すぐでなくても結構ですから、次の機会までにそういう一つ調査の資料を委員会にお出し頂きたいと思います。委員長、それは要望しておいて下さい。若しありましたら、お調べになつたものがありましたら今でも……。
  73. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 五月の二十日に全国から電報で照会を発しまして参りました統計によりますると、今度の大赦減刑によつて出所した者、勿論このうちには、当時余りに多数の人が出てはちよつと混乱を生ずる点を考慮いたしまして、四月の初旬から仮出獄の形で出所させております。それを合せまして一万一千人くらい出所いたしました。四月の初めからぼつぼつ出て、四月の二十八日までに出た人が総計一万一千人ございまして、そのうち五月の二十日までに犯罪を犯して刑務所に再収容された者が二十六人ということになつております。勿論犯罪を犯しても発覚しなかつた者、或いは犯罪の確定しない者もございますが、いろいろと心配をいたしましたが、想像以上にまあ無事に済んだ、かように考えております。
  74. 左藤義詮

    左藤義詮君 就職状況は……。
  75. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 就職状況は全国的に統計はできておりませんが、東京において聞いたところでは、東京の都内で就職しましたのは百五、六十名でございまして、三分の一程度が安定所のお世話で就職し、残りの三分の二が保護会その他で、十数名まだ職がないという人がおりましたが、大体一番惡い條件で日雇いというようなことで就職しておりますというような状況であります。
  76. 左藤義詮

    左藤義詮君 そういうことを調査をすることが、非常にそれを奨励するということになりますから、全国的にやはり連絡をして、資料を集めて下さい。
  77. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これは齋藤局長にお礼を申上げたいと思つております。地方を歩いてみますと、今度の恩典にあずかつた人々がもう曾つてない環境上の調べがよくできておりましたために、初めに、第一番目に刑務所に迎えに参りまして、我が家に連れて帰つたといつたような者が多いために割合に事故がないのじやないかというようなことを聞いておりましたのでございますが、これは全く地方委員会が非常に活動をしたためだろうと思つておりまして、そのことを大変喜んでおります。ただ今左藤委員からお尋ねのことなんかは、これは矯正局長にも一度おいで願つて、私ども又詳しい話が聞きたいと思つておりますので、委員長のほうからさようお取計い願いたいと思います。
  78. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 承知いたしました。他に御質疑もなければ質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これより討論採決に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議ないと認めてこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ討論は終局したものと認め、直ちに採決に入ります。ちよつと申上げますが、本案につきましては衆議院で修正されておりますのですが、修正点を含めての原案でございます。本案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔賛成者挙手」〕
  81. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 全会一致と認めます。よつて本案は全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお例によりまして本会議における委員長の報告及び審査報告書の内容は便宜委員長に御一任を願います。本案に賛成の諸君の御署名を願います。  多数意見者署名     伊藤  修  宮城タマヨ     内村 清次  玉柳  實     長谷山行毅  中山 福藏     岡部  常  加藤 武徳     左藤 義詮  一松 定吉     片岡 文重   —————————————
  82. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に議事の進行に関しまして皆様にお諮り申しますが、今後本法務委員会の議事の運営に、関しまして、大体の日程は前回委員長及び理事の打合せで目標は出たのでありますが、なおその補足として日程を組みたいと思いますが、これにつきまして委員長及び理事の打合に御一任を願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議がないと認めます。さよういたします。   —————————————
  84. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に破壞活動防止法案及び関係法案を一括して議題に供します。先ず片岡委員に御質疑を願います。
  85. 片岡文重

    ○片岡文重君 昨日団体の意義について若干御意見を伺つたのですが、なおこの団体の内容については不明確な点がございまするので、他の面からこの理解を深めて参りますために御質問を進めたいのでありますが、その前に一応この三條の規定について順次順序を追つて一つ御質問を進めて行きたいと思うのであります。  そこでお尋ねしたいのは、すでにこれは法理論的には御質問がなされたかとは存じますけれども、実際に団体の役員となつて活動をして参りました者の立場から、その歩んで来た経験から考えまして、これだけの表現では甚だ納得しかねると考えますので、法理論的にというよりも、むしろ実際に適用される場合にどういうふうに適用されるであろうか、こういうことを理解いたしたいと思うのであります。そこでこの第三條の一項の一号のイであります刑法七十七條、七十八條、七十九條に規定する行為でありますが、この中に特に七十八條の内乱の予備、陰謀、それから七十九條の内乱等の幇助に規定する行為となつておりますが、この内乱の予備、陰謀というものは、内乱を行うために予備をし或いは内乱を企てるということがこの條項であつて、予備陰謀だけを目的として行為を行うということはあり得ないと思うのです。つまり五月一日なら五月一日を期して内乱を起そう、そのためにはどういうふうにしたらよろしいか、先ず食糧を貯え、医薬を貯え、或いは資金を貯えるというようにしてその準備がなされると思うのでありますが、その場合にこの法案の定義から参りますると、予備、陰謀を教唆、扇動する対象としての処罰を考えられておるようでありますが、目的は予備、陰謀にあるのじやなくして内乱を起すことにある。然るにこの條文では七十八條、七十九條の行為に対してもなお扇動若しくは教唆をした場合、こういうことがある。事実問題として内乱の予備、陰謀だけを教唆し扇動することがあるのかどうか。又一体そういう場合にあるとするならば、予備や陰謀だけを計画をして、どういうためにそうするのか、そうして又これに計画した者でなければわからんとおつしやるかもわかりませんが、そういう場合にまでなおこれを処罰しなければならないのかどうか。それらの点について少し丁寧に御説明を頂きたい、こう思うわけでございます。
  86. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。形式的に申上げれば内乱罪の予備、陰謀は独立罪として規定せられております。従いまして当然刑法の共犯の適用があるわけです。従いましてこの予備行為、陰謀行為について刑法の共犯の教唆の適用があることは形式的に当然のことであります。さてそういうことが実際に考えられるかという御指摘であります。内乱の予備、陰謀は、もとより内乱を実行するための予備、陰謀であることは申すまでもありませんが、実際に内乱というものが行われる事態を想定いたしますると、相当大規模に相当長期に亘つて各種の段階やいろいろな形態を経て行われる危険性があるのではないかと考えられるのでありまして、その予備の形態にいたしましても、その陰謀の形態にいたしましても、極めて広汎な各種の態様が考えられます。こういうような予備行為、陰謀行為に対しまして、直接それを教唆、扇動するということも又当然実質的にも考えられ、その教唆、扇動が結局は内乱の教唆、扇動に理詰めで押せばなるのではないかという御指摘もあつたかと思いますが、実際の適用といたしまして、相当大規模な予備行為、相当大規模な陰謀行為というようなものに対しまして直接これを扇動する、或いは直接これを教唆するという行為を捉えてこれを防止しなければならない。理論上煎じ詰めてそれは内乱の教唆、扇動ではないかというふうに持つて行くことが直接取締る、その危険性を予防するゆえんではない、多少そこに無理が行われるのではないかと考える次第であります。
  87. 片岡文重

    ○片岡文重君 今御答弁の中にありました通り、教唆、扇動の対象が理詰めで押して行けば内乱になるけれども、内乱とは、大袈裟にと申しますか、大規模になされる場合には、その予備、陰謀だけが対象になり得ることもある、こういうふうに伺つたのでありますが、少くとも指導する、或いは扇動する、誘導するというような場合であるならば、そういうあなたのおつしやるようなことはあり得るかも知れません。予備、陰謀だけを、取りあえずここまで予備を進めておこう、少くとも差当つてここまでは一つ計画したらよかろうということで、実際に指導を與えるような場合にはそういう見解は成り立つかも知れませんが、内乱を起すという目的がなくて、その目的のない事態に対して目的のないものに予備をしたり或いは陰謀を企てたりということはこれは私はあり得ないと思うのですけれども、その指導とか扇動とかいうことと、この教唆若しくは扇動という点についての区別がつけられますかどうか、或いはそれを同一に考えておられるのかどうか、この点を一つお尋ねしたい。
  88. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。法律的に見ればそれは扇動であり教唆でありましよう。併しこれを社会的に見ると、多くの大衆を駆つて内乱という目標に駆り立て動員して行くというようなことが、政治的指導とも見られるかと思うのでおりますが、これは法律的に見れば飽くまでそれは内乱予備、陰謀の教唆であり扇動に該当するものと考えているわけであります。
  89. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういたしますとこの刑法七十七條の後段にございまする二号、「謀議二参與シ、又ハ群衆ノ指揮ヲ為シタル者ハ」云々となつておりますが、この謀議に参與し或いは群衆の指揮、謀議に参與するまではともかくとして、この群衆の指揮をなした者と、こういうものは一体扇動になるのですか、それとも教唆になるのですか。
  90. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。昨日もお答えいたしましたが、内乱罪における構成要件は朝憲紊乱を目的として暴動をなすことであります。それは集合犯罪でありまして、現実に内乱が起きましたならば、これに参加している者は、その行為の態様によりまして、或いは首魁となり、謀議参與となり、或いは群衆指揮となり、更に又諸般の職務従事及び附和随行ともなるかと考えるのであります。併し内乱が起らない前にはこういう態様は考えられないのであります。そのときには予備、陰謀があり、予備、陰謀の教唆、扇動ということも考えられるのであります。かように考えておるわけでございます。
  91. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういたしますと、この内乱が起つてから初めてなされる行動についてはこういう謀議又は指揮という條文に当てはまるのであつて、起る前については予備、陰謀、若しくは陰謀であるということが一つと、それから予備、陰謀の教唆若しくは扇動というのはその群衆行動の枠外にあつて、これをいわゆる扇つたり、暗示を與えたりするような場合がその教唆、扇動であつて、みずから内乱の予備に参画し、或いはその一員となつて内乱を惹起せしめる集団の、ここでいう団体の一員となつて、その行動をとつた場合にはそれは教唆若くは扇動ではない、こういうふうに判断してよろしいのですか。
  92. 關之

    政府委員(關之君) 大体法律的構成はお尋ねの通りと思うのでありますが、内乱の遂行者があるといたしますれば、それが予備、陰謀、実行の着手、そうして既遂というふうに相成るのであります。かような実行行為の外側におきまして教唆し、扇動するものは法律に言う教唆であり、扇動である。かようなふうに考えるべきであると思うのであります。
  93. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういたしますと、この同じ行動をとつても、その団体の中におると外におるとの違いによつて教唆若しくは扇動という行動になる、行動といいますか、行動というよりも罪になる。その中におれば内乱罪によつて、或いは内乱の予備陰謀の罪によつて罰せられる、こういうことになるのですか。
  94. 關之

    政府委員(關之君) お尋ねの通りであります。
  95. 片岡文重

    ○片岡文重君 わかりました。では今の点はそういうことに一応理解をいたして進めたいと思うのでありますが、それでは更にお尋ねをしたいのは、この内乱と言いますのは、この七十七條に規定されておる通りに朝憲紊乱ということが目的であり、そうしてそのために暴動を起すものである。ところが例えば労働組合等のごとくに一つの思想を異にする、何と言いますか、結合体、これは当然この法律でいうところの破壞的な団体では勿論ございませんけれども、一つの特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体としての定義には該当すると考えられますが、この法律でいうところの団体という定義に当てはまるところの労働組合がここにあるといたしますると、この労働組合というのは思想的な団体でありませんから、その中には破壞活動を以て労働者の権益を守ろうと考えておる人たちもおるでありましようし、或いはそういう非合法なことをやらないで、暴力的なことをやらないで、建設的に事を進めて行こうと考えておる諸君もいるでありましよう。而もこれらの区別が判然といたしている場合にはよろしいのですけれども、恐らく今日においてレッド・パージを大袈裟に行われてからの組合の状態というものは、そういう区別が甚だ不明瞭になつて参りました。  更にこういう破壞活動防止法案というものが法律となつて実施されて参りますならば、一層そういう破壞的な活動をいたして組合の利益を守ろうとするような人々の意思が表面に現われ、そういう識別が明瞭になるということは更に困難な状態になつて来ると考えられます。併しながら労働組合の活動は一層活撥になつて来るでありましよう。従つて建設的な運動を進めようとする人たちの活動も活撥になつて来る。これに便乘しよるとする、破壞活動を目途とする人たちの運動もより巧妙に、表面に出ないで、而も実質的にはより一層その成果を挙げようと努力するでありましよう。こうい組合の状態にある団体がたまたま争議行為を行なつて、その争議行為に参加した組合員が感情の激するところ常軌を失して或る種の行動に出た。例えばあの過日の宮城前広場での事件、或いは交番焼打ちとまで行かなくても、いろいろな怪奇な事件が起つたといたします。こういう場合に一体内乱となるのか、或いはそれは騒擾となるのか、或いはそれは正当な組合活動として認められるのか、こういう点についてどういうふうにお考えになりまするか、一応御意見を伺いたい。
  96. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 個々の組合員のかたがたが感情の激するところ各種の不祥事件を惹起し、その事件内容によりまして、それは騒擾罪になる場合もある、或いは単なる公務執行妨害にとどまることもある。併し押付けて行きまして、朝憲紊乱を目的とする暴動までも若し起した場合にはそれは内乱になり、それぞれ刑法の規定するところによつて処罰を受けることは止むを得ないと考えるのでありまして、ただその場合に私どもといたしましては、そういうような刑法で規定されているような、只今申上げたような犯罪行為は組合の正常な活動ではないと考えている次第であります。
  97. 片岡文重

    ○片岡文重君 この暴動であるとか或いは内乱であるとかいうようなことが明瞭にわかつている場合にはこれは余り問題も起りませんし、起つたとしても今の御答弁の通り明快に処理ができると思うのであります。併しながらその行動が結果から判断をされて、正規の組合の機関によつて決定をされた枠を逸脱して争議行為が行われた場合、昨日内村委員から宇部窒素の争議の問題が引例されたようでありますが、こういう場合のように、殊にこの宇部窒素の場合にはまだその特定な別個な目的を以てなされたものとは私ども考えられませんので、今お伺いしているような事態にはまだなつていないと思うのでありますけれども、少くとも今までの各委員諸君からしばしば御質疑がありました通り、この法案というものが対象にしている団体というものは特定な団体である。明らかに明示されておらないけれども、各委員諸君の質疑に対してお答えになつ政府委員の御答弁を以てするならば、明らかに特定な団体を指しているものと理解される。従つて特定団体、政府委員がお考えになつておられる団体の構成員或いは役職員は、こういつた法律に引つ掛らないように、万全の注意をして行動をとるだろうということが容易に推測されるのでありまするし、現にそういう方法をとつて今もなお行動が進められているものと考えられます。従つて組合等が今後活動を進めて行くためには、どうしても自分だけの団体独自の行動をするよりも、法的に、而も政府或いは国民大衆から支持を得ているところの団体の中に潜入して、その行動の成果を挙げようとする方法が必ずとられるに違いないと思うのであります。そういう事態になつた場合に、先ほど申上げました通りその特定団体の指導者は、許された労働組合の中に入つて、争議行為の行われているのを奇貨としてデモを行い、そのデモの中に参加して、而もこれが小さな団体であるならば、そういう危険はないでしようけれども、例えば電産であるとか国鉄であるとか、全逓であるとか、或いは放送であるとか、こういう全国的に大きな影響を與えるような労働組合の内部にあつて一つのトラブルを起せば、明らかにこれが朝憲紊乱の域にまで進み得るという確信の下に進むか否かは別問題として、指導者はそういう確信の下に立つてその行動を起したという場合に、その認定を一体どうしてされるのか。つまりそれが内乱となるならば暴動として判定をされるのか、乃至は内乱や暴動ではなくして、正当な組合活動とは言い得ないけれども、たまたま感情の行過ぎであつたということだけで処理できるのか、その点についてもう少しはつきりと御答弁を頂きたいと思うわけであります。
  98. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。特定団体の構成員が、公正な而も大規模な労働組合等の内部に潜入しまして各種の破壞的な活動をする、これは飽くまでその特定団体の構成員個人の責任であり、その特定団体の活動と認められなければならないのでありまして、労働組合の活動ではない。これは明らかに私どもの立場としては、労働組合とは関係のない活動であると考えなければならん。さように考えております。
  99. 片岡文重

    ○片岡文重君 私の説明がまずいのですか……その労働組合の正常なる活動というのは、正常なる機関の決定に従つてなされた場合には、これはどういう事態が起つてもそれは内乱では恐らくなかろうと思うのであります。せいぜい騒擾ぐらいにはなるかも知れませんが、それは内乱にはならない。けれども正常な機関の決定ではないけれども、その組合の中に入つている特定団体に、つまりこの法律に掲げられたところの暴力主義的破壞活動を行うことを当面止むを得ないと考えている団体の役職員或いは構成員がこの争議行為の中に入つてつて、何らかの機会にその人たちが指導を行うような事態になり、そうして参加している者は、その内乱等についてはもう全く反対の立場をとつている団体の構成員であるけれども、たまたま、例えば考えられることは、昨日も参議院の中に陳情が参りました、大勢、あの場合に司会者が解散を宣してからもなわたつてその司会者の命に従がわずして演説をした議員もおられる。こういう場合に、この場合を指しておるのではありませんが、若しも仮にああいうような事態が起きて、而もその解散すべき団体が解散をせずして、その司会者に関係のない人たちの指揮に従つて、而もその指揮者がその団体の中に団体員として構成されておる一員であるというような場合に、これがよしこの際ここで以てこのダムを爆破すれば、或いはここでこの駅を爆破すれば大きな内乱にまで行くだろうという認識の下に東京駅を爆破する、或いは信濃川のダムを爆破するというような行為が起つた場合に、これは一体内乱となるのか、或いは暴動なのか。或いはそれは組合活動の行過ぎとして処罰を受けるのか。而もこの場合誰が一体処罰を受けるかという問題にもなつて来るのですけれども、これは一体そういう場合の、その団体の行動というものはどれに照して規制をされるのか。
  100. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  101. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をつけて。
  102. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問の通りでありまして、さような場合に規制処分をこの法案によつて受けるのは、特定の破壞団体でありまして、決して正常な大衆団体ではございません。又刑事上の処分を受けるのは、或る破壞活動をやつた個々の破壞分子であります。
  103. 片岡文重

    ○片岡文重君 その結論に対しましては、私御答弁を信頼いたしたいと存じます。そこで問題となつて来るのは、その判断でありますが、昨日伺つたところによりますと、この機関が、機関というよりも団体の内部活動について捜査をする、調査をするというようなことは、公安調査庁の係官は任意調査であつて、その建物の中に入ることを、いけませんと一こと言われれば、それで帰らなければならない、それ以上押して入ることは住居侵入の罪に問われることになる。昨日の御答弁に関する限り公安調査庁の調査権と申しますか、そういう権限というものは狭い範囲である。    〔委員長退席、理事宮城タマヨ委員長席に着く〕 そして而も弱いものだ、こういうふうに伺つたのですが、そういう調査権限もない、裏付も弱いというような係官だけで、そういう微妙な動きをしておる際の団体の行動は、どうして動いておるか、どうしてそういうトラブルが起つて来たのかというようなことを調査することが果してできるかどうか、その確信がおありになるかどうか。又おありになるとするならば、どういうような方法でそういう場合に調査をお進めになるのか、その点を一つお聞きいたしたい。
  104. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 非公然な破壞団体の活動が任意調査を建前とする公安調査官の調査によつて把握することができるかという御指摘でありますが、これは私どもかねがねお答えいたしております通り、公安調査官の調査力を、調査技術、調査能力を向上させることによりまして、困難ではありますが、必ずやり遂げたいと考えておる次第であります。具体的にそれではどういう方法をとるかという御質問でございますが、これは捜査と同様、具体的な事件に即してやはり立てられて行かなければならない。一つここで私は率直に申し上げたいのでありますが、公安調査庁というようなものが若しできました場合におきましては、こういう破壞活動の暴力主義的な活動は国民がこれを防止して行かなければならない筋合のものでございまして、公正な活動をなされる大衆団体の側におかれましても御好意ある御協力が必ずや得られるものであろう。又私どもも調査官を訓練いたしましてその御信頼が得られるような方向に持つて行かなければいけないじやないかと考えておる次第であります。
  105. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと私今のあなたの扇動と教唆のこと、これ一つ明確にしておいて世人の疑いを受けないようにしておきたい。専門家でありまするお互いでありますからわかつておるのですけれども、速記録を通じて国民が見て、成るほどそれが扇動か、それが教唆かというようなことを明らかにしておきたいために少しばかりお尋ねしておきたい。  まあ今まで質問応答で大体固まつておりますけれども、もつと明確に、極く簡單にやつておきたい。教唆と扇動の区別、教唆は特定人に向つて或る犯意を注入する。扇動は不特定多数の人に向つて或る犯罪の実行なら実行を扇動する、これは間違いないね、そういうことで……。問題が結局一方は特定の人、一方は不特定多数の人に向つてということで……。
  106. 關之

    政府委員(關之君) 大筋としてお言葉通りであります。
  107. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこでね、すでに或る犯行をなそうという決意を持つておる者に向つて或る犯罪の意思を注入した、それはどうなるか、その注入した人は……。
  108. 關之

    政府委員(關之君) すでにお尋ねの或る犯意のある者に対してその犯意を強める、強化するというようなものは、これは教唆でなくして扇動に当るのであります。
  109. 一松定吉

    ○一松定吉君 それからすでに犯罪の決意があり、そして実行がなかつた、犯罪の決意のある人に向つて或る犯罪をやれということを注入する。けれどもその人は犯罪の決意はあるけれども、実行は到頭しなかつたというと、その犯意を注入した人の責任はどうなるか。
  110. 關之

    政府委員(關之君) これは刑法の一般原則から申しますならば、教唆の関係の実行がなければさような犯罪をやる、そそのかす行為は罪にならんのでありまするが、本法におきまして規定する第三十七條以下の規定におきましては、すでに或る犯罪を実行せんとする決意があつて、更にその決意を強化せしめるということをいたしたその者は、扇動された、そそのかされた者が犯罪を実行しなくても、この法律規定で定めるところによつて、そのままで扇動罪として刑事上の責任を受けるということになるのであります。
  111. 一松定吉

    ○一松定吉君 それが扇動だね。そこで或る犯罪をやることを成る特定の人に注入した。そこでその人は何らの決意もせず、従つて何らの実行もないというときはどうなるか。
  112. 關之

    政府委員(關之君) この法案におきまするお尋ねの場合は教唆又は扇動に当るかと思うのでありますが、この教唆又は扇動は相手方に対しまして新らしい犯意を起させる可能性或いは既存の犯意を一層強化せしめる可能性あるさような行為だけで足りるのでありまして、更に相手方が犯意を起して犯罪を実行するということは要件ではないのであります。
  113. 一松定吉

    ○一松定吉君 さつき私は或る特定の人に向つてということを、不特定多数の人に向つてということで教唆と扇動を先ず分けた。そこで私の尋ねたその或る特定の人に向つてその八が或る暴力行為をやろうという決意だけある。その決意ある人に向つてこれをやれとやつたところがやれとやつたけれども、実行しなかつた。これは扇動だと言いましたね。それは扇動じやないでしようね。特定の人にやるのだから……。
  114. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お尋ねの場合は教唆であります。ですが、犯意のある者に対しましては教唆は成立しません。犯意のない者に対しまして新たに犯意を起させるに足るような行為をすることが教唆であります。従つて犯意のある者にさような行為をやつた場合におきましては、その犯意のある者が犯罪の実行に出ます場合には、刑法の従犯、事前の制限、従犯というようなものが成立する場合があります。
  115. 一松定吉

    ○一松定吉君 それはわかつておる。教唆は犯意ある者には成立しない。特定な人がそのときは……、
  116. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) それは教唆は、独立犯としてここに規定してあります教唆は飽くまで犯意のない他人をして一定の犯罪を実行する決意を新たに生じさせるに足る行為でなければなりません。ですから犯意のある場合は入りません。
  117. 一松定吉

    ○一松定吉君 犯意のある者に或る犯罪をやれということの意思を注入したけれども、その人間は実行も何にもしなかつたというと犯罪は成立しないのだね。扇動にもならなければ教唆にもならないね。
  118. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さようでございます。扇動や教唆にはなりませんが、幇助の場合は先ほど申上げた場合であります。
  119. 一松定吉

    ○一松定吉君 それから全く犯意のない者に或る犯行をする意思を注入する。何らの受けこたえもなし、従つて実行しないというと、それは何か特定な人をですよ……。
  120. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 全然犯意のない者、他人に対しまして一定の犯罪を実行する決意を新たに生ぜさせるに足る行為をした場合には、ここに規定する教唆が成立します。
  121. 一松定吉

    ○一松定吉君 いや、そうじやない。犯意のない者に或ることをやれと言うて唆かした、特定の人を……。ところがその決意をしない。その時分にはどうなるか。
  122. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) ここに規定する教唆は、教唆を受けた相手方が新たにその教唆の結果犯意を持つことを必要としませんので、やはり教唆犯が成立します。
  123. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで今のその点はあとで問題になりますから、よく一つ……。つまり犯意のない者に犯意を注入した。けれども、犯意のない者は勿論犯罪の決意もせず、実行もしなかつた。併しそれは教唆になるのだ、そこです。それは一つ明かにしておいて下さい。  次に今度は、不特定、多数の人に向つて、或る暴力行為の扇動をやるのですね。そこでその場合その者は犯意も何にもない。犯意も何にもないのに扇動せられたがために犯罪の意思を決意して、そして実行したというと、これはどうなります。
  124. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お尋ねの場合には、その扇動行為が独立罪として成立する。でその扇動の場合におきまして、実際の具体的な事件につきまして、その扇動を受けた相手方が、不特定又は多数の場合でありますが、その中に特定人が混じておつたという場合につきましては、別に教唆犯が成立する場合があると考えられます。
  125. 一松定吉

    ○一松定吉君 特定人が混つておるというのは、これはどういうことなんです。不特定多数の人に向つて、どこそこに行つて火をつけえ、こういうことを言つたその時に、特定人が混つておるというのはどういう状況ですか。
  126. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 扇動罪につきましては、その相手方は不特定又は多数人でありまして、その多数人の中には、実際問題として、法律概念ではございませんが、実際の問題として特定人が入つておる場合もあり得ると考えております。
  127. 一松定吉

    ○一松定吉君 その特定人が混つておる例を一つ挙げてもらわにやいかんので……。
  128. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) ここに参集した大勢の大衆の中に、大衆に向いまして、一つの犯罪を扇動する、私がまあ演説をやりまして扇動をすると、あそこに何の誰兵衛がいるということが明らかに認識される、それを多数人の一人として扇動の対象になるというような場合ではなかろうかと思うのであります。
  129. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうするとその特定人がそこに誰兵衛が、俺の知つておる誰兵衛がおる、俺は多数の人に向つて、こういうことを言つておるが、誰兵衛にも言うておるのだという認識があつてつた時分には、多数の中に特定人がおるのだ、その特定人に対してはそれは教唆になつて来るのですか。
  130. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さようであります。
  131. 一松定吉

    ○一松定吉君 特定人に対して教唆になる、そうすると特定人以外の者については、扇動になる、こういうわけですか。
  132. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さようであります。
  133. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると一個の行為が教唆になり扇動になると、こういうのですね。
  134. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 実際の事案といたしましてさような場合もあり得るかと考えております。
  135. 一松定吉

    ○一松定吉君 それはまあ一つ……。それからその次には、すでに決意を持つておるその多数のうちの者が、決意ある者に対して犯罪の暴力行為の扇動をやつたところがそれがもとになつて扇動ができたというと、その扇動した人はどうなるのです。
  136. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 扇動罪の責任を負うわけであります。
  137. 一松定吉

    ○一松定吉君 扇動罪の責任を負う……、この時分に、扇動された人がやつた行為の実行正犯じやないのだね。
  138. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 扇動罪はそれ自体犯罪が成立する、この場合に別個の観点から、刑法一般の教唆とか或いは教唆が成立するか否かは、具体的な事実について別個に解決される問題であると考えております。
  139. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこでやはり不特定多数の人に対して扇動したところが、扇動された人け何にも、決意もなければ何らの反響もなく、勿論実行がないという時分にも、その扇動した人は扇動罪でやられるのだね。
  140. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さようであります。
  141. 一松定吉

    ○一松定吉君 いやよくわかりました。そこで一つお尋ねしたいのは、その特定人に向つて或ることを扇動する、おだてる、ところがおだてられたけれども、特定人はそのおだてに乗らない。従つて決意もない、従つて実行もない。けれどもそれは教唆犯で罰すると、こういうのだねさつきの……。
  142. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) それは教唆犯が成立する場合には、教唆犯を以て罰しられる場合がある、かように考えております。
  143. 一松定吉

    ○一松定吉君 さつきあなたのお答えは、或る特定人に向つて或る暴力行為の意思の注入をやつたところがその特定人はその注入に応ぜずして決意も何も起さない。従つて実行もないというときに、その犯意を注入した人はどうなるかということを私はお尋ねしたところが、それは教唆犯が成立するのだとおつしやつた
  144. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問が犯意の注入というお言葉で進めて参りましたから、極く荒筋の対象についてお答え申上げましたが、教唆とは他人をして一定の犯罪を実行する決意を新らたに生じさせるに足る行為でなければならない。ところが扇動とは中正の判断を失わせて犯罪実行の決意を創造させ、又は既存の決意を助長させるような勢いを有する刺激を與えるということになつておりまして、行為の態様が異るのであります。従いましてさような教唆の要件を満す場合においてのみ教唆犯は成立する。
  145. 一松定吉

    ○一松定吉君 今のあなたのようにそのいうむずかしい熟語を使うからして国民はみんな迷うのです国民にわかるようにしないと、そうしますとわかるようにするのには、今私があなたにそこで平易な言葉でお尋ねしているので、特定人の甲が俺は何もしようと考えておらんのに、乙がお前は総理大臣の官邸に火をつけえ、こういうように乙が甲に話した。ところが甲はそういうことを言うけれども聞き流しにして意に解せずしてこれを実行も何もしなかつたときに、お前は総理大臣の官邸に火をつけてあれを焼けということを言うた人間はどうなるのかと聞くのです。素人がわかるように言うているのです。
  146. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 教唆が成立します。
  147. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこです。そういうことで教唆が成立する、その教唆が成立してそれが罰しられるということが世人はこわがるのです。効果も何も発生しない、一松がこういうことを言うたけれども一松、あれは気狂いみたいなやつだからあんなのの言うことは聞くまいじやないか、誰も相手にしなかつた、誰も相手にしないので勿論実行もなくて、一松がそういうことを言うただけで罰しられる。それがこわいということが一つ。いま一つは、大勢の人のおるところに行つてそうしてあの総理大臣の官邸に火をつけえ、出て来る者があつたらば片端しから殺せと言つたところがその多勢の者がそれを聞いたけれども、何もあいつの言うことは馬鹿だ、あんなやつに応ずることはないと言つて決意もしなければ何も反響もなく、従つて実行もないときには扇動となると言うのでしよう。そういうようなところは、その扇動になるということですぐにそれをとらえて罰するというようなことが、国民は非常にそれを心配しておる、こういうような考えを私は持つておる。そこで私がこの法案を修正すると仮定すれば、さつき例を挙げたような或る特定人に向つてこういうことをせい、ああいうことをせいと言うたけれども何も手応えもなく、応ずる者もなかつたというときには、法律上から言えば教唆ということになるが、そんなことは罰する必要はないじやないか、それが多数人に向つてああいうことをせい、こういうこどをせいと言うに破壞活動の扇動をやつたけれども、相手方が何もこれに応ずる者がなかつたというときに扇動を罰するということは危険だから、そういうようなときにはこの教唆、この扇動は罰せん、但しその教唆によつて実害が生じた、その扇動によつて実行正犯ができたというときに罰するということにすれば、この教唆とか扇動とかいうことがあつても、国民は余り恐れんことになりまするが、そういうような修正をしたらば、あなた方の目的は達しないのか、ここを一つ聞いて見たい。それを聞きたいために今そういう例を挙げて見た。もう一遍申しますと……、わかりましたか、それじやどうぞ。
  148. 關之

    政府委員(關之君) 只今お尋ねの点は、この法案一つ基本的な問題につきましての問題をお示しになつた点でありまして、従来の刑法の原則におきましては人をそそのかした場合には相手方が実行したということを條件にしてそそのかしたものが処罰されるということが刑法六十一條以下の原則になつているわけであります。而してかようなことが、結果が行われたというごとの立証と、そしてその事実を基礎にしてそそのかしたというその行為を処罰するということに相成つているわけであります。とこうで問題は、或いは今申しました人を殺せとか、或いは火を付けろ、或いは内乱を起せとかような言動でありまするが、かような言葉は、これはその言葉が用いられる事態、官観的な事態如何によりましては、さような結果が惹起される危險性が極めて濃厚に相成るわけであります。すべて考え方として、事案として若し内乱が起り、そこに殺人が起り、或いは放火が起る、起つて簡單に申しますならば、血を見てからその事態を收拾すればよろしいではないか、こういう結論がそこに出で来るわけであります。併し果して現下のいろいろな事態から見まして、さような結果内乱が起る、或いはそこに殺人が犯される、或いは放火が犯される、そういう血を見ての結果を見て、事態を処置しただけで足りるかどうか。そういうことが現下の公共の福祉を保持する上から見まして、そういうことで足りるかどうかというこの問題が問題の分岐点になる点であろうと思うのであります。そこでそれでこと足りるというお考え方もこれも勿論あり得るかと思うのでありますが、私どもとしましては現下の事態に鑑みまして、さような結果を見ただけで、その実害が発生した、その上だけの処置でいいか惡いか、公共の安全の保持の上から見て、それだけでよろしいかという点につきましては、公共の安全を保持する上から見て、それだけでは足りない。やはりその以前におきまして結果の発生する可能性あるかような危險の言説或いは出版物に対しまして相当の規則を加え、或いはこれを事前においてキヤツチして犯罪としてこれを取締るということが必要であろう、かように考えるのであります。この考え方はあえてこれはこの法案において日本が特別に編み出したということでは毫もないのでありまして、すでに英米その他の外国におきましては、重罪の扇動ということが、それ自体危險の発生する可能性がある、実害を見て初めて処理するということは公共の安全を保持する上において当を得ない。やはりかような実害を発生する明白なる且つ現在的危險性のある各種の言説に対しては、これを犯罪とし、その他必要なる規制を加えて行くというこの考え方が英米その他ドイツ、フランス各外国における立法例の原則になつているわけであります。或いは又日本の法制におきましても、例えて申しますならば、国税の徴收法であるとか、或いは米穀の食糧緊急措置令でありますとか、或いは公務員法乃至は地方公務員法等におきまして、すべてさような観点から危險な行為、客観的な事態に対しまして明白に現在的危險、実害行為を呼び起すような言説に対しましては、これは犯罪規定で処分する、犯罪規定でこれに所要の刑罰を課するという規定が現に日本の刑法例にもあるわけであります。例の太政官布告と申しまして、明治の初年に制定されました爆発物取締罰則は、明らかに教唆と扇動をそれ自体犯罪として処分するということが明瞭に各條文に規定されているわけであります。これらの考え方は、要するに血を見るとか、或いはそこは実害的行為の発生する前に社会に対してかような現実的な危險な行為を呼び起すことのできる慣れのある明白な現在的危險のあるところのその行為に対しては、これを処置するという考え方になつているわけであります。この法案におきましては、第三條第一項の各号に掲げる行為は、内乱であるとか、或いは殺人、放火とか汽車の転覆或いは爆発物の使用というがごとき、結果が起りますれば、極めて取返しのつかないところの社会に実害を與える行為であるわけであります。然らばこれらの行為をそのまますべての言説を放任いたしまして、結果を待つて処置すればよろしいではないかということは、私どもとして国家の、公共の安全を確保する上におきましては到底忍び得ないところであると思います。すでに血を見、すでに多くの非を見、或いは内乱というような重大な結果を見て処置をしたところで、これはただ彌縫策に過ぎないと思うのであります。やはり公共の安全を確保するというその考え方から見まするならば、勿論人権の擁護をこれを慎重に考慮しつつ、その事前においてかような実害行意を呼び起す明白且つ現在的危險のある行為に対しましては、必要最小限度止むを得ない範囲においてこれに刑罰を課し、必要な規制を加えて行くということが、どうしても公共の安全を保持する上に必要だと私は確信しておるのであります。そのような事態によつてこの法案に所要の規定を設けた次第でございます。
  149. 一松定吉

    ○一松定吉君 今あなたの言うことは理論上はわかるのですが、併しながらあなたも知つている通り、今全国の大学高等学校等の総長、学長、教授、助教授、中小学校の教師、生徒、公務員、労働組合の人々が扇動という規定のあることによつて非常に畏怖の念を感じておる。これらの人々が何故そんなに扇動という規定を虞れるかと言えば、仮に或る人が政府の施政に対する攻撃演説をしたとする、そんなときにこの人が今演説をしたことについてこれが扇動罪として罰せられるのではないかと虞れる、その結果もうこんな演説はしないほうがよいというように、すべて言動が消極的になるとすれば、これは憲法において保障せられた我々の思想の自由、言論の自由が抑圧される結果となる。さようなことでは面白くないからこの扇動の規定一つ取除いてもらいたいという声が殆んど全国民の輿論となつている。さればこの規定を取除くことがよいと思いますが、万一この扇動という規定を全部削除することができないとするならば、これを一つしぼつて見てはどうか。しぼるについては勿論どの程度にしぼるかということになるが、扇動によつて扇動された者が動乱を起したならば、そのときにその扇動した人を罰することはいいが、扇動はしたけれども、其の結果として何にも起らなかつたときには、この扇動を罰する必要はないのではないか。論者或いは血を見てから罰するか罰しないかをきめることは遅いから、血を見ない前に罰する必要があると主張せらるるけれども、扇動したけれども其の結果何ら暴行が実現しなかつたということであれば、何も世間の秩序は乱していないんだから、扇動を罰する必要はないではないか。さようなわけだから扇動全部を取り除く事が出来ぬならば、扇動の結果破壞活動が起つたときに限り扇動を罰し、然らざる場合には、これを処罰しないという程度に制限を設けたならばよくはないかと考えておるのです。このようにすればあなたの御心配になつておる扇動をした者は逃れて、扇動によつて実行した者だけが処罰されることになるのが不都合だといふことはなくなるのではありませんか。さすれば扇動を罰する規定を設けた趣旨にも反せずに効果を挙げることができると思うが如何ですか。私はさような理由でどうしても扇動全部を削除することができんならば、この程度にしぼつてはどうだろうかと考えているのであります。これは私の一人の考えでありますから一つ研究を御願いしたいのです。  尤もあなたがたのお挙げになつた特別法には、いろいろな扇動に関する規定のあることは承知して居りますが、それはそれぞれ特別な事情から必要に応じてあのような法文を規定したわけで、それあるがために本法にも扇動の規定を設けなければならんという理由にはならぬと思います。何んとなれば、刑法の運用については今まで扇動の規定はなかつたにかかわらず、刑法の運用で秩序の維持は十分にできたんだから、今俄かに刑法を運用するに当つて、扇動の規定を設け、一網打盡に関係者全部を罰せんとするがごときことは、世人の非常に虞れるところである。そこで前に挙げたような各層の人々がこの扇動の規定を取止めてくれと主張しているのであります。この事に関し我々のところへ毎日送られて来る葉書や手紙や電報が五十通以上で、二三寸位の高さになるのであります。以上申しましたように扇動というものをこわがつている。それならば扇動をしぼつて見てはどうかということとなつたのです。しぼるならば、その扇動によつて何か効果があつた場合には、その扇動者を一諸に引つくくつてやれるが、扇動はしたけれども何も反響は起らなかつたというときには、その扇動者は罰せんぞというふうにすれば、世人が恐れている扇動ということについて、よほど緩和されて、世人が安心するのじやなかろうか。私はこの法を一つ成立せしめたいという考えから、かような事を考えておるんですよ。これについて一つ御意見を承わりたいのです。前にも申しましたようにあなたはそれは血を見る前にやると言われるが、血は見ないのだ、今の場合血は見なかつたのだから、その扇動は見逃してもよろしくはないか。扇動をしてそこに必ず結果が現われたときには、勿論扇動した人間を扇動罪で処分する。扇動はしたけれども、何も現われなかつたときは、扇動を罰しないというのです。私がこの間引倒したイギリスのバッキンガム宮殿の隣のハイドパークで、共産党の人が英国人の二、三百人集まつておるところで、共産党の主張、なかんずく暴力的扇動についてああせいこうせいといろ扇動演説をしておつた。そこに巡査が二、三人立会つおりながらにこにこ笑つて聞いておる。私は不思議に思うて、その巡査に対してどういうわけで君らはあんな不穏な言論を取締らないのか。我が国では治安維持法というものがあつて、すぐに不隠の言動者を取締るべく逮捕して検察庁に送るのだがと言つたところが、同巡査はそれはイギリス人は非常に教育の程度が高くて知識も貴国人よりも優れているから、そういうようなものには乗りませんから、あんなことを言つたつてみんな馬耳東風ですよ。全然治安を紊すということにはなりませんから取締る必要はないのですと答えられました。私は成るほどそうかと感心して帰つたということを例に挙げましたが、こういうようなふうに扇動には乘らないのだというような場合には、その扇動を罰せんでもいいじやないか。扇動によつて危險のあるとき、例えば扇動によつて直ちに実行行為者が現われ、火をつけるとか人を殺すとかいうことがある。そういうときに扇動でひつくくるということは大変よくはなかろうか。そうすれば世人はああいう扇動という規定をそんなに恐れぬこととなるのではありますまいか。これが私をして扇動によつて何らの成果を挙げないようなときの扇動は取りのけたらどうかということを考うるに至らしめた原因の一つであります。いま一つ私の考えておることは、例えば放火、殺人とかいうようなものについては、その扇動というようなことについて、今の原則は適用するとしても、それ以外の公務執行妨害のごとき、巡査が梶棒を持つているからあれを一つ取上げて、そうして叩きつけるというようなことを言つたからといつて、それですぐ扇動で罰するというようなことについては、やはり世人が恐れているようなことだから、そういう程度の扇動は一般刑法の制裁に讓つて、これから取りのけたら、世人が扇動に対する不安という声が幾分でも緩和しないだろうかこう考えるから、あなたがたの御意見を聞いているのです。もう御意見がなければそれでもいいが……。
  150. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) 本法案中の扇動の字句につきまして、只今一松委員より傾聽すべき御意見を拜聽したのでありますが、大体大衆犯罪につきまして扇動というものは極めて重要なる役割を持つておることは申上げるまでもないところであります。先ほど政府委員からして扇動の立法例につき申上げましたが、なおそれに附加いたしまして、刑法の改正草案でございます。これは一松先生よく御承知通り数年の久しきに亘つて極めて慎重に検討したのでありますが、その刑法の改正草案におきましても、内乱罪につきまして朗らかに扇動という字は新たに入れておるのでございます。何となれば、この大衆犯罪におきましては、この扇動によつて先ほど一松委員指摘通りに実行するものが現われて来る。而も多くの場合に実行するものは実は細鱗でありまして、細かい鱗か、小さい魚でありまして、呑舟の魚は逸せられてしまう慮れがあります。殊に先ほど一松先生は実行があつて初めて扇動を処罰してはどうかというお言葉でございましたが、極めて卑近な例で甚だ失礼でありますが、扇動と言えば一種のだんだん注射をして行つて麻痺させて行くようなものであります、ですから中正の判断をだんだん麻痺されて行くような扇動行為に対して実行行為がないから捨てておく、そういうような観点、これも一つの見解ではございましようが、その線で進んで行きますと、結局実行行為さえなければ、如何なる扇動行為をやつても放任行為として捨てておけということになる。本法案におきまして立案しておりますのは、御承知通り極端なのは、内乱罪であり、放火であり、騒擾であり、殺人であり、勿論只今指摘のような若干それと違つた部分もありまするが、狙いはおおむねこれは大衆犯罪でございます。従いまして單独犯ではありませんから、こういう大衆犯罪につきまして扇動の字句を除去してしまうということは、治安保持の面から見まして到底政府当局といたしまして容認いたしがたい点があります。かように申上げたのであります。
  151. 一松定吉

    ○一松定吉君 政府当局として出した原案から扇動を削られることは、これはどうも容認しがたいということはよくわかるけれども、あなたの改正刑法の草案の中に扇動ということがあるから、それでいいということはいかんよ。改正草案には何も君、国会の審議を経たものでも何でもない。ただ案を作つた人が、作つてこしらえているだけだから、国会の審議を経るときにやはりこの議論が出るから、それはいかんよ。ただ問題はさつき言つたように、世論がこんなにやかましいときにこれを出して、そうしてやるということよりも、朝日新聞の昨日の論説を読んだでしよう。こうこうこういうときに扇動ということがあるから、この際は扇動をやめておいて、そうしてどうしても扇動が必要であるというときに追加しても、そういうことは遅いことはないじやないか。そのときは国民もああいうふうに言つたけれども、扇動は必要だということになると、国民も反対しないようになるから、これは一つ立法府として考えなければならないということを朝日新聞の論説に書いてある。あれは大変傾聽に値いすることだから聞いて見た。併しこれ以上は議論はいたしません。ただ参考のために私の意見を……。
  152. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) すでに刑政長官からお答えがありましたのに、私から申上げて大変失礼でございますが、扇動につきまして非常に世論の一部で以て御心配の向きがあり、延いてはこの法律に対するいろいろな反対或いは批判となつていることは私もよく存じているのであります。公聽会やその他でいろいろのかたに私も接し、私のところに来るいろいろな文章等によりますと、扇動という言葉を非常に誤解されているのではないだろうか。普通団体活動として扇動が広く効果的手段として行われておるのでありまして、普通社会活動の面におきましても、アジとか扇動とかいう言葉はしよつちゆう使われている。そういうような言葉に非常に誤解されて、何かと言えば、すぐ扇動にひつかかるのじやないかというたうな誤解があるのではないかと私としては考えているのであります。従いましてそのしぼり方でありますが、扇動という言葉を一層明確ならしめるという意味は、非常に考えなければならない立場ではございますが、そういう意味のしぼり方という点を考えるべきではなかろうか。そうして一般世論の誤解を解き、並びにこの法案の扇動についての規定の嚴格な運用に資するということができるのではないだろうか。何か一口言うと扇動でひつくくられるのじやないかというような非常な誤解があります。この点はこういう法案でございますから、扇動という意味を一層明確ならしめるような意味のしぼり方があるのではなかろうか。これを戻しまして、刑法の教唆の原則に戻しましてしぼるというのは、扇動の規定の本来の趣旨、眼目と一致しないということになるのではなかろうかと考えておるわけであります。  その次の議論につきましては、非常に御傾聽に値する議論を承わりまして、これから研究して行きたいと思つております。
  153. 片岡文重

    ○片岡文重君 今一松先生からの御質問に対して当局から、この教唆、扇動は実害がなくとも成立をするのだ、この罪が成立するのだということを明確に伺いまして、これは実に重大な問題であると私どもは考えざるを得ないのであります。この第一條に、まあ大変失礼な御質問の仕方をするかも知れませんが、この法律は団体の活動として暴力主義的破壞活動を行なつた団体に対する規制を定めるのだ、こう言つております。この文句の問題となる点は、団体の活動としてということが一つ、それから暴力主義的破壞活動という、この特異な活動の定義が一つ、それからこの特異な活動を行なつた団体ということであろうと思います。そこでこの條文を受けて来て第三條の定義を見ると、この一号のイにおいて刑法の七十七條、七十八條、七十九條に規定する行為をなすこと、これが破壞活動を行なつたことなります。ところがこの刑法に定めた、この第三條に定められた行為をしなくとも、この行為をせようと言つて教唆し、若しくは扇動した場合には、この教唆扇動だけがもうこの暴力主義的破壞活動を行なつたということになるわけです。この條文によりますと、これに相違ないかと思うのですが、この点如何ですか。
  154. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問の通りであります。教唆、扇動も又破壞活動の中に含めております。
  155. 片岡文重

    ○片岡文重君 そこで例えど私が上野の駅前でも、新橋の駅の前にでも立つて、今日の政府はけしからん、而もこういう状態が長く続くであろう。選挙が目前に迫つておるけれども、これ又與党の勢力によつて大多数を占められるだろう。もはや民主的な行動ではとても我々勤労者の生活は安定いたしませんということになると、これは恐らく普通の意味ではない。とても民主的な方法では諸君、駄目ですよと言うて私が演説をする。これは先ほどの御説明で参りますると、不特定又は多数の人々を目の前にして演説を行なつたのですから、これは扇動の中に入る。これは明らかにこの刑法の七十七條に定める行為でもない。又七十八條の行為でもない。七十九條の行為について、群衆が立上つたわけでもない。或いはその群衆の中には、きやついつの間にやら気が狂つたらしいと言つてつておるかも知れない。けれども実害があるなしにかかわらず、これは扇動罪として罪を私は背負わなければならんということになつて来ると、今後うかつに、まさしく我々は街頭に立つて内乱をおやりなさいというようなことは申しませんけれども、その感情の激する場合、或いは街頭デモの場合、或いは争議行為等において、争議行為が長延いたというようなときにはどういうことを言うかも知れません。殊に私が今思い起すのは、たしか昭和二十四年の暮だつたと記憶するのですが、国鉄の労働組合の諸君が年末の手当を何とかして欲しいという要求を掲げて、大蔵大臣、労働大臣、運輸大臣、各所管の大臣に対してお願いをしたけれども、どうしても駄目だとおつしやる。止むを得ないから内閣総理大臣吉田さんにお目にかかつて、この組合の窮状を聞いて下さい。そうして私どもは、少くとも七十余歳の御老齢でもあるし、一国の総理大臣としての吉田さんにお目にかかるのですから、誰と誰と来いと言えば、その者だけが参ります。どこそこへ来い、何分間だけだということならば、お指示通り従つて、必ずその長上に対する乱を盡しますから、どうか五分でもいいから会つて下さいと言つてお願いをいたしました。けれども遂にその要請は聞かれませんでした。国会では忙しい。官邸でも忙しい。私邸ではなお更だということで、遂に大磯の別邸にお帰りになつた。仕方がないから私どもは、組合員の窮状を見るに見かねて、当時私は組合の役員の一人でありましたが、中闘の諸君と共に、泣きつかれるままに大磯の別邸にお伺いして、別邸ではお前らには会わんのだとおつしやいましたけれども、何とか一言、こういう情勢で君たちも苦しいだろうが俺たちも辛いのだから、我慢をせよということを、一言言つて下さつたら、組合員の諸君も納得をしたでしようけれども、その通りには聞かれない。垣根越しに見れば、総理大臣は悠々とお寛ぎになつておられるようである。この姿を見て、而も遂にあの自動車の織るような箱根街道の夜真夜中を押して、頭から霜を浴びて私どもはあのコンクリートの道の上に、師走の半ばを越えた、正月に近いあの寒空に夜を明かにしたことがある。そうして而も会つて頂けないので、失望の涙に暮れながら帰つて来たのです。その帰る道々に、これほど我我が礼儀を盡し、窮状を訴えて、なお且つ聞いてくれないということならば、俺たちは俺たちだけが犠牲になつたらいいじやないか。共産党の言う通りやろうじやないかという声が、一人や二人じやない、若い諸君の中に出て来ます。こういう場合に幸いにして私は、まあまあ君たち、そうは言うけれどもということで、抑えて帰つて参りましたけれども、これは幸いにしてこの破壞活動防止法というものがなかつたからいいのですけれども、若しこの法律が施行されて、その場合にとにかく帰つたらやつつけようじやないか、こんなことじや駄目だということになつて、悲憤の言葉を交わしながら帰つて来たときに、たまたま公安庁の係官が我々のあとについて来られた場合、霜の中に夜を徹した諸君が、一網打盡に引つくくられて、これは教唆罪になるか、扇動罪になるか、或は謀議になるか、当然引つくくられなければならない事態に陷るのではないかと思うのです。こういう場合は少くともその後しばしば私どもは繰返されておる。そうして街頭演説等においても、場合によれば過激な言葉も出るでありましよう。そういう場合に実効は一つも上つておらない。今申上げました、その大磯に私どもは総理大臣のお寛ぎになつて悠々たるお姿を垣間見ながら、涙を流して帰つて来た場合、帰りの道々に過激な言葉が吐かれました。若い者は一つやれ、もはやもう我々は四十の人生に達した者が犠牲になろう、少くとも五十を過ぎておる俺たちが一つ犠牲になろう、よしやつつけろということで、過激な言葉が出ましたけれども、幸いにして実行に移らなかつた。併しこれは今の御説明を以てするなら、明らかに扇動になる、教唆になると私は思う。特にこの場合、特定の人です。組合の幹部です。一緒に行つておるのは……。従つてこれは不特定の者ではない、特定な人ですから教唆になる。こういう場合も今後はうかつには口はきけないということになつて来るのですが、それほどまでにこれを窮屈に縛らなければならないのですか。これは由々しい問題だと思いますので、そういう御答弁を得るならば、是非ともこの字句については削除してもらわなければ、私は絶対に賛成するわけには行かないし、これを削除することができないということであるならば、今のような事態に対して、どういうふうに救済をするのか、どういうふうにこれをよけられるのか。そういう点について一つ具体的に教えて頂きたいと思います。
  156. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。上野の駅の演説の例を出されたのでありますが、これは扇動にも教唆にも当りません。内乱の扇動でもなく騒擾の扇動でもない。ただ駄目ですよというだけでありまして、多衆が集つて暴動を起すというような扇動、教唆ではないと考えております。又総理の官邸訪問のお話が出ましたが、具体的な事情はよくわかりません。併し恐らくそれは非常に興奮されて、一時の犯意ともつかない、真実その犯罪を実行するという決意もないような問題ではなかつたろうか。従いまして、そういうような犯意を表示されたにとどまるような……、仮に犯意がありましても、犯意を表示されたにとどまるたうな場合ではなかろうかと考えております。
  157. 片岡文重

    ○片岡文重君 御答弁は大変甘く見ておられるようですがね。上野の駅前に立つて、もはや民主的な方法では駄目です。政治が惡いことは勿論のこと、こういう政策が続いてはいかん。而も今後は当分は與党の勢力が多くを占め、今日の内閣はなお永続するでありましよう。我々勤労者の生活はこのような状態では到底選挙によつてもかちとれないとするならば、我々は他の方法をやらなければならん。諸君の奮起を要望する。民主的な方法では駄目ですよということを強く繰返し主張します。そうして我々の敵はあそこですよと言つて、議事堂を指して御覧なさい。これはただ駄目ですよの域では私はないと思う。更にあのメーデーの後に起つたところの人民広場の事件、或いは岩の坂交番の事件、或いは早大その他において起つた学生事件等を、少くとも昨今アカハタ等に掲載されておるような立場に立つてこれを主張された場合に、これが扇動でないとはつきり断言することができましようか。
  158. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問のような場合はむしろ内乱の宣伝だろうと思つております。扇動とはやはり犯罪を実行する決意を想像させ、又は既存の決意を助長するような勢いを有する刺戟を與える、実行の決意に直接作用するような言動でなければならないと考えております。
  159. 片岡文重

    ○片岡文重君 それでは更に細かくなりますが、曾つて濱口雄幸先生が東京駅頭で刺殺をせられました。たしか佐郷屋留雄という青年であつたと思うのですが、あの佐郷屋青年が時の宰相濱口さんを刺された。そのときにたしか山手線の大塚駅の運転係か助役さんであつたろうと思うのですが、このかたが起訴されたか不起訴になつたかは確かに記憶しておりませんが、たしか教唆罪というものに引つかかりました。それはどういうことをしたかと聞きますと、ストーブに当りながら政府を攻撃してとにかくああいう政府は続けておつてはいかん、やつつけなくちやいかんというような話がなされたということを聞き、そこで佐郷屋青年は、よろしい、そういう国民を思わないやつならばということで、決意を固めて、遂に東京駅頭の惨劇が演ぜられたと聞いております。こういう場合にたまたまこれは実行に移されたからその教唆が成り立つたでありましようけれども、若しこの場合に佐郷屋青年にあらずして、ほかの者は何にも聞いておらない、けれども一つ、今の内閣ではいかん、誰か犠牲になる者が出なければいかんのだと言つて一つ井上日昭のようなかたが出て、言葉巧みに歴史の上から説いて来て説明をされた場合に、その殺人という事態は起らなくとも、この第二号のヌの項に「教唆又はせん動」ということになつてつて、刑法第百六條以下の罪が掲げられておる。このヌ項の教唆、扇動も、この今申上げておる教唆、扇動も、扇動としての罪を構成することについては変りないはずでありますから、今のような事態には、なおこれは教唆にもならない扇動にもならないと言い得るかどうか、この点を一つ
  160. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 佐郷屋氏の濱口雄幸総理暗殺の事件でありますが、これはもう教唆がどういう言動を以つてなされたか、ここで材料がございませんので、私御答弁いたしかねる次第であります。やはり裁判所が認定する以上は、新たに犯罪実行の決意を生じさせるに足る行為をなくしたものに違いないと考えておるわけであります。
  161. 片岡文重

    ○片岡文重君 いやですからその場合に佐郷屋青年は不幸にして兇刃を振うに至つたからそういうことになつたのだが、今日の場合今の青年諸君は極めて理智的であるから、そういう非民主的なこと、暴力的なことは、たとえ激越な口調を以て扇動されても容易に動かないのでありましよう。でありましようけれども、尋常一様の手段ではいけない、とにかく誰か犠牲にならなくちやいかん、勤労者大衆の犠牲になるべきであると真に考え、そうしてその青年にそれを訴えたといたした場合には、いろいろの手段がとられ、今日社会革命をなすためにはいろいろな手段はとられるけれども、差し当つてはこういうことも止むを得ないということで、その青年に訴えたということになつたら、併しながらその青年も、いや、そういう非民主的なことはできないということで犯行はしなかつた。兇刃は振うに至らなかつた。併しこの場合にこの教唆という罪が今の御答弁では私成立すると思うのですけれども、この点如何でしようか。
  162. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 教唆又は扇動いたしました相手方の者がさような決意を生じまして、犯罪実行にとりかかることを要件としないで、独立罪として教唆又は扇動を規定いたしました理由は、現下の事態に鑑みまして、かような内乱その他、政治目的を以てする殺人、放火等の行為につきましては、これを扇動或いは教唆するその行為自体が社会的に違法なものであり、危險なものであるという考えに基いておるのでありまして、自体今日におきましてはかような扇動や教唆によりまして終局の目的を達成しよう、多くの大衆を駆り立てまして、終局の目的を達成しようということを組織的に計画的に推進しつつある団体がある。而もなおその行為は個人的にこれを見ても、而も非常に危險な行為であるという観点から、教唆又は扇動を独立罪として刑罰規定を構成した次第であります。
  163. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういたしますと、私の質問申上げておる設例が、個人的な感じを多分に受けますので、今のような御答弁だと思いますが、例えば過日御当局からお配りして頂いたいろいろな本法案の資料の中に、球根裁培法であるとか、いろいろなものが入つておりました。ああいう資料を以て暴力が行われておる、如何にそれを推進しておる団体があるかということを物語つておられるのですけれども、そういう場合に、多衆集合しておる場合において、そういう扇動をしなくとも明らかにそういう資料を頒布しているからには、そういう資料によつて作られた製品を使うべきことが目的であるに違いないということになれば、そういう団体に属しておる極く少数の者でも、たとえ相手は二人であつても、一人であつても、一室において、どうだお前一つやらんかというようなことは、そのやらんかという人は一人でもあつても、明らかに団体の一員としてでありますから、而もその団体がそういう資料を頒布して、その行動に入るべきことを指示しておると認定される以上は、たとえその一人の人間が教唆をしても、それは団体の行動としてみなさるべきだと私は考えるのですが、そういう場合にもこの教唆若しくは扇動に入らんのですか。そういたしますと……。
  164. 關之

    政府委員(關之君) この法案の団体の活動と申しますのは、何回も御説朗いたしましたが、団体意思決定に基きまして、その意思実現として役職員構成員がこれを行う活動ということに相成るわけであります。そこでその団体におきまして、今お話の例は、この団体が他に対しまして、或いは内乱の教唆をするか、或いは扇動をやるというような意思を決定いたしまして、そうしてその実現としの役職員、構成員のかたが他に向つてそういうことをやるということになりますと、やはり団体の活動としてさような暴力主義的破壞活動をなしたものであるということに相成るものであると考うるのであります。
  165. 片岡文重

    ○片岡文重君 いや、そういたしますると、この団体に入つておる者が結局その相手方の数を問わないわけですね、相手方の数は問わない、そうしてこの指示に従つてなつたという場合には、今の御説明を、まあ専門的なお言葉で御説明があつたのですけれども、わかりやすく言えば、これは教唆罪になるということですね、その点どうですか。
  166. 關之

    政府委員(關之君) 私が前に御説明いたしたような、そういう経過において団体の役職員又は構成員によつて、他に対してここに規定するような破壞活動の実害的行為の教唆又は扇動が行われますならば、団体としてやはりここの第三條に掲げる暴力主義的破壞活動をなしたものであるということに相成るのであります。
  167. 片岡文重

    ○片岡文重君 そこで今度は、その団体という定義でありますが、昨日のお話を伺いますと、この団体とは特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体である。而もそれは長期に亘ることを必ずしも必要とするものではないというお説を伺つたわけであります。そこで例えば総理大臣なら総理大臣の官邸へ行つてつて来るときに、これではいかんということになつて、その行つた同行の諸君が一団となつて一つのフラクを結成する。そうしてこれではいけないということでその話合いに基いて、とにかくこれは民主的な方法でいかんということになつて先ほど申上げましたような一つお前やれというようなことになつた場合には、これは団体の活動としてそうして破壞活動を行なつたことになる。而もその破壞活動というのは、教唆と同時に扇動であると私は考えられるのですけれども、この点如何です。
  168. 關之

    政府委員(關之君) お尋ねの実例の問題でありまするが、たまたま途中において一人が言つたというような問題につきましては、先ほど特審局長からお答え申上げたごとくに、単純な犯意の表示、乃至は個人的な全く純粋な問題だろうと思うのであります。そこでフラクがお話のように、それじや我々同志がというような問題に展開いたしたといたしまして、そのフラクがここに言う第三條第二項に掲げてありまする「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」と言えるか。これが一番の問題になるわけであります。その多数人の継続的な結合体の実情、フラク内の各種のいろいろなどういうことが行われておるかというような問題によりまして、それがこの法案に言う団体に当るかどうか。お話のような段階におきましては單純なる全体の組合なら組合の或る臨時的な一つの推進的なものになるというような、数人の任意の寄り集りというようにも見られるわけでありまして、まだこの法案に言うところの「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」という段階までは行かないのではないかというふうにも考えられるのであります。
  169. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういたしますと、昨日伺つた御答弁とは私ちよつと違うように考えられるのですが特審局長如何ですか。
  170. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) フラクという言葉が適当な言葉であるかどうかよくわかりませんが、とにかくそこへ多数人がまあ或る人物を訪問して面会を求めた。ところが会えなかつた、とても尋常一様な方法では自分らの目的は貫徹できない。何か目的がございまして、これは飽くまであらゆる非民主的な方法も使つてこの目的を貫徹しようというような議論が提唱されまして、そこにお集りの多数人のかたがたが、じや一つ一緒にやろう、この目的のためにお互いに手をとつて今後活動しようというようなことに相成りますと、そこに結合が生れて来る。その方法としてどういうふうにやろうか、全員協議してやろうという場合も考えられるし、実行委員を選んでその機関の決定で方法を決定してやろうというようないろいろな場合も考えられると思うのであります。団体の結成されまする場合は、何も屋内で結成大会を開かなくても結成されるのでありまして、そこに共同の目的を達成するために団体意思を決定しで、その意思決定に基いて皆が動こうというような結合関係が生れまして、それが社会的に見て相当期間存続すべきものとなりますれば、そこに団体ありと考えて差支えないじやないかと思います。
  171. 片岡文重

    ○片岡文重君 昨日の御答弁では、私から継続的結合体ということは時間的な意味を持つておるのではないかという御質問を申上げたのに対して、必ずしもそうではないという御答弁があつたと私は記憶いたしておりますが、今のような場合にこの長い間一つの団体として規約、或いは綱領、或いは代表機関等というような形式的な形を整えることなくとも、少くとも共同の目的を以て多数の人が継続的に集つたということだけでそれは団体であるということで、極めて広い意味に昨日の御答弁は私は伺つたのであります。その点それでは一つの昨らかにしておきたいと存じますから、もう一遍御答弁頂きたいと思うのですが、その団体というのはそうしたはつきりとしたものなのか、或いは先ほどの御答弁のように、とにかく時間的には極めて短くとも、多数の人たちが共同の目的のために集つたというだけであれば、その規約、綱領等形式的な條件は何一つなくてもこれは青空で発会式をやろうがやるまいが、そういうことには関係なしに、集つただけで団体とみなすことができるか、できないのか、その点は如何ですか。
  172. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 昨日団体の継続性でございますかにつきまして、これはやはり具体的な事実に即しまして社会通念に照して合理的に判断されなければならない。ここで団体は多衆の合意を基にしまして結合される共同の目的を定めまして、その目的を達成するために団体意思を決定して動こう。結成直後にそれが相当……或る一つの政治団体が結成された直後に、それが問題になつてから何時間も経過していないでも、これはとにかく団体であります。相当期間継続すべき、社会的にも相当期間存続すべきものであります。これは合理的に判断されるだろうと考えております。ところ一つの集会が行われて、集会後散会するというような場合に、これが朝から晩まで集会が合われたからと申しまして、それが二十四時間かかつたから団体だというふうには参らないのじやなかろうか。やはりそこには合理的に、大ざつぱに申せば、常識を以てそういう結合体が相当期間社会的に存続すべきものであるかどうかということが具体的に判断されなければならないのではなかろうかと考えておるわけであります。
  173. 片岡文重

    ○片岡文重君 或いはこれは私の記憶違いか何かわかりませんけれども、昨日の御答弁では、そういう場合に集団として寄り集つただけでも一つの団体として認められるというような御答弁があつたように私記憶しておるのですが、その点もう一遍重ねて一つ……。
  174. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 昨日御質問の中に、結局継続性が取上げられ論議されました。この問題につきましてはその結合体が一時的なものではいけない。社会的に相当期間存続すべきものと認められなければならない。それが継続性であるというようなお答えをしたはずでございます。
  175. 片岡文重

    ○片岡文重君 いや、それでは只今の御答弁を以て伺つておきます。それで継続性がなければならないということになりますと、これは継続する期間はどうかということになると、成るほど昨日のお話では、社会通念に従つて判断すべきであるというお言葉でございました。従つてそういうことになりますと、例えば今日只今ここに団体が結成される。而もその結成は必ずしも形式的な要件は整わないが、とにかく例えば大磯から帰りに、これではとてもいかん、一つ我々同志が一体となつて、この窮状を打開するために何とかやろうということになつて、別に内乱を起そうとか、暴動をやろうとか、殺人をやろうとかということでそういう目的を達するわけではない。目的は、飽くまでも民主的な方法で一つ社会改革、革命をやつて行こうということで、一つの同志的な結合体を作る。これは併しながら今日今作られたばかりでありますけれども、将来に向つての発展をその構成員誰もが考えておるのですから、これは明かに団体として認めて頂けると思うのですが、こういう場合、そうしてその直後に仮にこの法案に該当する事態が起つた場合には、それは団体として認められるかとどうか、この点を一つ……。
  176. 關之

    政府委員(關之君) この継続的というのは、現実的に継続し、又は継続すべき……、その団体の構成の中に当然継続されることが社会に予定されるというものを当然含まれているのであります。
  177. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういたしますと、ではその場合に、これからやつて行こうということですから、これは継続し得るものとお認め頂けると思いますが、明らかに団体というその定義の中に入つて来る。で、而もこの団体は暴力的な目的を持つて作られた団体ではない。けれどもたまたま大磯に行つて来た、或いは首相官邸に行つて来たら、どうもこれではいかんということで、その場合にそれらの一団の団体が、その感情に激する余り、街頭に立つて、かかる内閣は暴力によつてでも倒すべきだという扇動を、その国会の前で行なつたといたしましたら、これは明らかに団体の活動として、目的じやありません、目的ではないがですよ。その団体本来の目的ではないが、その団体が一体となつておるときに、異議なく行なわれたのですから、これは団体の活動たることにおいては異議がないと思います。そうしてその街頭に立つて、これでいかんという……、たとえそれは感情の激するところであつても、自然にその條件がかもされるならば、それが一団となつてそれらの者が或いは殺人が行われかも知れない。首相官邸に、警備内に突入するかも知れない。十分なる犯意を持つて通行人に向つて激越な口調で演説をしたとかいつた場合に、どういうことになりますか
  178. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さような活動に出ることを団体の意思として決定して、それらのかたがたが行なつた場合は、やはり団体の活動としてさような行為がなされたということに相成るものと考えております。
  179. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうすると団体の活動として、暴力主義的破壞活動がなされたと断定をされるならば、それは明らかに教唆、若しくは扇動ということで、これは自分が行なつたのではなく、その街頭に立つて通行人に呼びかけたということになるから、これは実害は起つて来なくても、明確に教唆罪、若しくは教唆罪にはならんでしよう。先ほどのお話によりますと……。扇動罪というものがここに成立をする、そういうふうに考えてよろしうございますか。
  180. 關之

    政府委員(關之君) お尋ねの、なした言動が第三條の第一項のこの具体的な事実に対する教唆、扇動でありまするならば、さようなことに相成ると思うのであります。
  181. 片岡文重

    ○片岡文重君 そういうことになつて参りますと、これはこの何ですか、理屈の上で推し進めて参りますれば、そういう明確な線も出て来ようかと思いますけれども、実際問題として労働組合、或いは現に先だつてこの参議院会館で開かれました中小企業者の危機突破大会における挨拶、激励等を伺つておりましても、今日勤労者階級の生活が窮況に追込まれれば追込まれるほど、逼迫すれば逼迫するほど人心が不安定になつて動揺いたして参ります。而もこれは昨日この法案の立法の精神についてお伺いいたしましたときに、日本の民主化というものは極めて低いということを政府当局みずからおつしやつておられる。そういう情勢の中にあつて、団体が活動する場合に、犯意なくしてたまたまその何らかの動機に駆られて、激越な口調で以て演説が行われた。その演説に感奮して行動がなされたというようなこともなしとしない。そういうことになつて来ると、犯意があつたかないかということは、これは極めて認定困難だと私は思う。動機に駆られてやつたのだからその犯意がないという善意な解釈のみが下されるとは言い切れない。常々このような事態ではいけないということを十分肚に深く畳み込んでおる人たちが、予測せざる事態を惹起することがあり得るかも知れない。そういう場合にもやはり教唆若しくは扇動としての罪に陷らなければならない。而もこういう推測と申しますか、そういう推定は容易に今日の組合運動の段階には私はあり得ると思う。この労働組合の諸君、或いは中小企業の諸君、それから新聞人、文化人等がまさに戰慄禁じ得ずとして、この教唆扇動の字句に懸命の努力を傾けて研究し、そしてこれらの字句の排除方についてまさに骨を削るような苦労を重ねておるということは、誠に当然なことだと私は考えます。で今あなたがたは当然そういう場合にはこの法律規定するところの破壞活動として規制をせられるのだということをおつしやつた。そのおつしやられるまでの過程において、私の申上げた設例というものは、これはそういう明らかな場合になれば、そうして而もその取調べの衝に当る係官が極めて善意の場合においても、なお且つそういう断定が下し得るような設例で私は申上げたけれども、実際問題としてはそういうことばかりではなくして、往々犯意のありやなしやが問題となる。或いはその事態の原因の究明が極めて困難な場合もしばしばあろうかと思うのですが、そういう事態に対するこの教唆、若しくは扇動の定義というものは、ここでは極めて不明確であるし、これに対して類推判断が、而も横張判断がなされる危険が極めて多いと考えるのですけれども、そういう場合にこの直接取調べの衝に当り、又は審議の衝に当る公安調査庁の、或いは審査委員会等におけるところの教唆若しくは扇動の擴大解釈の危險をどうして政府は防ぐのか。どうしてそういう場合の擴大解釈の危險を防止しようとされるのか。この点について、この防止する方策について、教唆若しくは扇動という擴大解釈の被害というものをどのようにして政府は防止しようとしておられるのか、その点一つ明確に教えて頂きたい。
  182. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問の筋は、警察官、又は公安調査官の末端におきまして、教唆又は扇動の概念を極めて十分に認識せずに、ちよつとしたこともすぐに疑いを持つて調査したり捜査の対象にしたりというような危險はないかという御質問であろうと思うのでありますが、この点につきましては、先ず第一に私どもといたしまして、教唆、扇動というものの概念をはつきりと教え込むということが一番大切じやないだろうかと考えておる次第であります。これは公安調査官は任意調査でありますから、そう無茶な強制をするわけにも行かないのでありますが、警察官につきましては、検事を通じまして、又直接自警、国警につきましてもこの教唆扇動の意義を十分周知徹底させて行きたい。特に検事や裁判官にお願いいたしますが……、につきましても嚴格にこれを運用されるように十分に御理解願いたいということを政府としてもお願いするつもりでありまして、それにつきましては十分な努力を拂いたいと考えております。
  183. 内村清次

    ○内村清次君 いや、先ほどから政府委員の答弁を聞いておりますると、一松委員政府に対する質問は、これはもう極めて社会的にも、知識のどちらかと申しますると高い人でないようなかたでもよく呑込めたこれは解釈です。又この解釈が恐らく只今特審局長が言われたようなことで基本になつて調査官や或いは警察官あたり一つの基準として教示もしようし、こういう通用範囲だということを明確されるでありましよう。併しながら片岡君が言いましたこの事例に対しましての答弁は、これは非常に私たちが聞きましても又この前私の宇部窒素の問題に関連した答弁にいたしましても、これは今日まで約一カ月間ばかりの審議の過程におきましても、政府委員の答弁がまちまちで、委員自体でさえも判定に苦しむ。実例を挙げれば、そういうようなことはこの法律にはかかりません、こういうようなことが大体言葉においては多いように私たちは速記録を見ましても判定されておるのです。そういうようなことは、先ほどのようなことは、これは恐らくあなたがたが、特審局長が、あとで教示の場合のときにおいて或いは調査官一つ答えてごらんなさい。これは一体どの基準に合うものと思うか合わないものと思うか、こういうようなことを答えられたなら、私は過半数の人が、やはり扇動になるのだ、これは教唆になるのだ、こういうようなことをやつぱりその人たちは言われるような事例ですよ、これは……。それをここではそうじやないのだ、こういつておられる。これはこの重要法案がどうして国民の人たちが心配しておるかということはここです。又委員もそういうようなことで本当に判定に苦しむような答弁をなさつて、ただこの法案とかして通過するといいのだ、こういうような考え方でやつておられては、これは重大なあなたがたの責任であると思うのです。こういうことはよく注意をして、これは会期も長いことじやないのですからして、それから又先に答弁の責任から考えますると、これは特審局が最後までやつぱり答弁しなくちやならん。そういうように又次長が答弁をして、そうして異なつところの答弁をやつておる。こういうようなことは、責任の点からもしたら、一貫した筋においては一貫した人がやつて行くということをやつてもらいたい。もう一つは、これはそういう事件ができたときにおいては、これは三十九條の問題で扇動、教唆だけでも三年以下の本人は懲役というものが、実刑というものが待ちかまえておるのですね。その実刑の判定を下すものは最高裁判所その他にありましようが、その本人になつてごらんなさい。本人は社会的地位は全く喪失してしまうのです。而も先ほどお話のような問題がこの実刑によつてされるとするならば一生頭が上らない。そういう点を考えましたならば、答弁はこうだつたからというようなことで私たちは安心しておられないのですよ。だからして、前段においては、答弁の責任者は、この実例に対しましても、的確な、本当に的確な答弁をしてもらうごとと、それから同時に又一貫したやはり責任あるところの人が変らずに、指名したときには別でございますけれども、変らずに一貫した答弁で一つの質問に対しては、一つの事例の質問に対しましては、最後まで責任を持つて答弁をしてもらいたい、こういうことを私は意見を申上げておきます。
  184. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この破防法の審議がだんだん進んで来て重大な疑義が幾つか出て来た。最初から首相の出席を要求しているのですが、未だにお見えにならない。私は首相はまさかこの破防法というものが基本的人権を侵害する重大な法律案であるということを了解しておられないということは信じたくない。どうか近い機会において出席せられるように委員長のほうからお取計らいを願いたいと思います。
  185. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 承知いたしました。
  186. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから簡單にさつきの一松委員からの御質問に対する政府の答弁に対して今一応納得しがたいので伺つておきたいのですが、これは關次長並びに刑政長官同じような御意見で言つておられますが、流血の惨事は見たくない、これは誰でも見たくないです。併しながら扇動が行われて流血の惨事が起るまでの間に、法よりほかに何にも拠るべきものがないというお考えかどうか、それを伺つておきたい。この行政府の役人のお考えだと、法律がなかつたら手放しだ、それで扇動が行われれば、放つておけばそのまま流血の惨事が起てしまうというようなお考えじやないか。それともその間には他のいろいろな別に役人にお伺いしないでも民間においてさまざまに処置できることがあるのじやないか、この点が第一。そういうことをどうお認めになるか。それは法律のみで防げるのだというふうに思つておるか、それとも法律よりも遙かにもつと有効な方法がほかにあるということにお気付きになつていないのかどうか。これは非常に重要な点で、それであるために扇動ということを一松さんがあれほど言われても、これを除けば差支えがあるかのごとき御答弁だ。併しながら扇動が行われれば反対の扇動も行われるのです。あなたがた調査官その他の政府官吏が取締るよりも遥かに有効な宣伝が行われる。一つの新聞の論説に対しては、他の新聞の論説というものも行われる。従つて扇動も行われて、そうして流血の惨事を見るまで放つておくわけにはいかないという御答弁ではまだ不足だということが、一つ例を挙げておわかりだろうと思います。この点について、この扇動が行われて流血の惨事に至るまで放つておくことはできないという御答弁は、余り正直な、オネストな答弁でないです。だれが放つて置くと言いますか。その間に、その場で、その志もそれを阻止するでしようし、いろいろな方法があるでしようから、その点はお考えになつて下さい。  それからもう一つ刑政長官のほうですが、さつき刑法改正の草案などについてお話があつたのですが、最近の犯罪が暴力行為が多く、集団的な行為であるということはおつしやる通りです。ここでこういう点はお考えにならないかどうか。最近は一言で言えば、原子爆弾時代というふうな言い方の意味において大衆の時代なんです。従つて大衆的な方法がさまざまに発達しているのです。だから破壞活動のほうも発達していますが、それを防止する大衆的ないろいろな活動も発達しているのです。ですから大衆の行う破壞活動というものを大衆以前の時代考え方でお考えになりますと、これはただ一層危険なものにだけ見え、重く罰し、厳格にこれを取締るということしかお考えにならないのじやないかと思います。併し現在は大衆的なさまざまな方法が発達しております。これはさつき片岡さんの御質問がなかなかつぼに……、政府のほうでおわかりにならないのは、——片岡さんは最近の労働運動をやつておられて、いろいろな方法があることをお考えになつておる。ところ政府のほうではこれは無理です。事実そういう大衆活動をなさつた御経験が少いから……。だから大衆による破壞活動というものが最近の非常な危険である、政府のごときは絶えず危険中の危険と言つておるのだから。併しそれがために、危険中の危険である近代的な犯罪というものを、近代的に大衆的に防ぐ方法があるのだというような点もお考えになつて、それで先ほどの御答弁になつているのか、或いはそういう点についてはなお考慮せられる余地があるというふうにお考えなのか。  それから最後にあなたのおつしやつておる、繰返して宣伝をやることによつてそれで麻痛した状態に入つてそこで宣伝が扇動に移つて行く場合についてのお話がありました。これも…、今申上げた二点ですね……、その繰返し行われる宣伝に対しては、他の宣伝もこれはあり得るのであります。それから麻痺した状態に入つて行くというようなことなんですが、これは大変危険の御答弁じやないかと思う。といいますのは、それがあるからこそ、各大学総長のや学長や又新聞関係者が危険を感ずるのです。新聞関係者、新聞記者の諸君は宣伝だ、或いは扇動だと言つてもいいというようにまでおつしやつておるのは、決して誤解とばかりお考えにならないで、教育というものは或る意味において、繰返すことによつて麻痺させて、それで基本的人権という考え方が立派に頭に入つて来て、活動にもなつて来るんです。ですからそれは有害な場合と、そうして有効な場合とすれすれのところで行われるものであつて、昔の箱入娘の教育のように、いいことばかり教えているという教育は、もはや進んだ方法としては有効でない。ですからああいうふうな御説明をなさいますと、繰返して麻痺した状態に入るというものをも取締るというお考えだと、これは教育にかなり関係して来る。それは取締りによつてではない、教育によつて或いは右に行き、或いは左のほうへ是正されてしまうということもお考えになつて、その点十分、私は明日から改めて御質問しますからお答え願いたいと思う。  それから次に、ちよつと失礼のようなんですけれども、最近非常に問題になつているカミユという人の異邦人という小説があります。これは破防法と直接関係はないけれども、併し私ども近代の青年の心理というふうなものを理解される意味において、刑政長官は一つ読んでおいて頂きたい。というのは、今の片岡さんに対する吉河君なり闘君の答弁を伺つておると、私はふと異邦人を思い出し、そうしてこの犯罪というものの教唆、扇動というものは随分遠くから始つて来る。母親が死んだ、恋人に会つた、海岸に行つた、陽にやけたというようなところからその犯罪に対する関係が起つて来る。カミユのこの小説はそういう意味でフアシズムに対して実に痛烈な響きを含んでいる。如何にフアシズムが人間というものを全く孤独にしてしまうかということを現わしておる。これはさつきの御答弁を伺つておると、全く私はここで異邦人のような気がして来る。ですからそういうような近代の心理というものについてもう少しお考え願いたい。  最後にこれも常に私自身が伺いたいと思つているのですが、アジテーシヨン、宣伝、或いは扇動というものが、いわゆるこの独裁政治なり専制政治なりに対する唯一の手段である場合があるんです。従つてこの扇動なり宣伝なりをできるだけ取締つて行こうというお考えは、いつの間にか本法の言う民主主義を守るんではなくて、専制主義を守るための法律になつてしまう虞れがある。ですからその点をよくお考えになつて、殊に闘さんなどは何とかしてあらゆる有害な扇動を取締れるようにしておこうというお考えで先から先と考えておるのではつきりしたお答えができない。一松さんが言われたように一般の人が聞いても殆んどわからない。いわんや地方の調査官などは、ああいうようにこの議会で答弁したつて、頭がぐらぐらになつてくるようなお考えでは、吉河さんが幾ら調査官を集めて周知徹底すると言つても無理だろうと思う。だからその限界をはつきり頭の中で立てて我々に答弁して頂きたい。で殊にその限界というのは、一種の扇動なり教唆なりというものが独裁者に対して脅威を考える行為である場合があるのです。内乱を起すという意味ではないんです。独裁者が内乱を起すと言つておる連中があるというので反省をするのです。そこでそういうことがなければ政治上の動きというものは動かない場合があるんです。あなたがたはそういう点において逆に繰返し繰返しして麻毎されてしまつたところがあるのではないかと思う。世論はこれほど反対しているのに少しも反省しない、むしろ逆にますます自分の立場を固執して、堂々たる専門的な反対論を誤解だと言つているのは、逆のほうに麻ましてしまつているのではないかというふうに思うのです。だから内乱を主張するというのは、必ずしも内乱を決行するのが目的ではなく、内乱を行うぞということを以て専制的な、独裁者に対しては反省を促す、そういう一種の正当なる政治的な恐喝という言葉が当るか当らないか、或いは誤解を招くかも知れませんが、そういう場合もあり得るのじやないか、これについて……。  それから最後に内乱というものがやすやすと起るように闘さんなり、吉河さんなり考えていられるようです。扇動なんかやれば忽ち流血になる、それだから扇動をぴしやりと抑えよう。ところが内乱というものは私も起したことはないけれども、あなたがたも起したことはないでしようが、(笑声)なかなか起るものではないのですよ、ですからいつの間にか内乱が起つたら大変だというのが、公務員執行妨害をやられるのも大変だというようにおつしやつてしまう。だから一松さんのさつき言われたことに対する政府の今日の答弁というものは、いずれも私は脇から伺つてつて私納得できないのです。今度は私のほうの問題も伺いますので、そのときには今日のような答弁でない御答弁を用意しておいて頂きたいと思います。    〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕
  187. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) 羽仁さん改めて明日から御質疑をいたされるそうですが、簡單にこの際お答え申上げたいと思います。法律を以てすべての犯罪を処罰することはどうかというお尋が第一点でございましたが、私ども無論治安維持につきまして法律のみを以て足るものとは断じて考えてないのでございます。国民生活の安定、その他種々の施策を以て共に進んで行かなければならないことは申上げるまでもないのでありますが、併し最小限度本法に規定しておるような範囲につきまして、これを立法的措置によつて取締る必要は止むを得ざる措置である、現下の事態に鑑みまして止むを得ざる措置であろうかと考えておるのでございます。  なお第二点といたしまして最近は大衆的の行動が多いから、その点についての感覚を持つておるのか、そういうお尋のようでございましたが、勿論その点は考えておりますが、民主主義の下におきまして、つまり憲法及びその下における法律、更に国会を中心とする民主主義政治の下におきまして、大衆がその大衆の力により暴力的行動に出るということが最も危險なものではないか。でありますから大衆的犯罪で且つ暴力活動によつて法案所定のような犯罪を起そう、それに対しては勿論これに対し必要最小限度の取締りを加えるということは止むを得ないことではなろうか、かように考えておるのでございます。
  188. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その今の最小限度という原則がすでに守られておるかどうかという点なんです。でそれが今のような点が常に念頭にあれば、このその他の方法によつてもこれは防ぎ得るという場合にはその法の取締はそこにまで立入らなくてもいいということが、又立入るべきでないという答弁を願えるはずじやないか。一松さんの扇動範囲もそうでしよう、犯行も生じないものをその扇動でやらなければならないというのは、果して今おつしやる最小限度という点と一致しておるかどうか。それから公務員に対する公務執行妨害を特に重く破壞活動というふうにレツテルを付けるということが果して最小限度ということであるかどうか。このような点についてもう少し考えて頂く必要があると思います
  189. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 本日はこの程度で散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。羽仁委員の御質疑を願います。    午後四時五十八分散会