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吉田法晴君
法務総裁が一時に立ちたいというのをお願いして三十分お残りを願
つた。再びおいでな願うということは非常に困難だ、殆んど見込薄のようでありますから
法務総裁に申上げたい点を一、二点だけ申上げて
答弁はこれは或いは願わなくともかまいませんから申上げておきたいと思います。この三
法律案の一番
中心は何であるかと言いますと、昨日も申上げましたけれども
治安警察という制度を復活することである。名前は何
とつけましようと
治安警察を復活することにあることは間違いございません。そうすると
破壊活動防止法というのは、公安調査庁という、
治安警察或いは
思想警察という
言葉を用いるとお嫌いになるかも知れませんけれどもそういうものを作る、或いは活動のこれは根拠法規としてしか私は動かないように思うのであります。問題は司法権じやなくて
行政権でありますから、
警察権でありますから、そのことを特に申上げるわけであります。
それからなお従来私どもが知りましたところでも、
東大事件の全体の当否は暫らくおきまして、あの
東大事件を通じて私どもが知り得ましたところの特高的な活動が始ま
つておるということであります。私が郷里に帰りまして、
破壊活動防止法について反対の労働者大会がございましてそれに
出席いたしました。そのときに社会党員、これは製鉄所の従業員でありますが、それが党員の一人として
発言をいたしました。その内容は別に私は、言われるような、或いはこの法條で言うような
破壊活動を扇動するものではなか
つたと
考えまするけれども、その男は家庭に或いは職場に調査をせられております。その結果は職場において解雇等の危険が迫
つておるかのように申して参
つたのであります。これは自治体
警察の中に、
国家警察のこれは捜査二課というのでありますか知りませんが、入
つておる実情であります。或いは街頭録音の場合に起りました東京の
事件は御
承知であろうと思います。実は公安調査庁ができますならば、これらの活動がこれは合法化され、そして公安調査庁との連絡の下に今後行われて参るでありましよう。明らかに特高
警察の復活が合法的にこれからなされるということになると
考えられる。そしてその実際の活動については、これは法文に現われておるところではその三條の或いは一号、二号でありましようけれども、その三條一号、三号でも或いはハ、ヌ等の教唆、扇動等が先ず表面に出て参ります、社会に出て参ります
行動としては最初の調査の対象になる、これは間違いないと思います。先ほど
法務総裁は、やあ行政機関であるけれども調査官にやらせないで審査
委員会にやらせるという制度をと
つたことは、これは極めて特筆すべきであ
つて自慢になるのだとおつしやいましたけれども、併し実際の社会における活動の一番重大な点は、その審査
委員会の活動の前の調査活動であります。これには或いは尾行、追随等もなされるということがここで
お話等が出ております。或いはあとで
質問をして参りますけれども、検閲制度に相当するようなことが復活するのではないかと私どもは
心配をしておるわけであります。その基本になりますのは、何とい
つても
思想に対して
思想、
言論に対して
言論ではなくして、
一つの
国家権力で介入するという
態度をとられるところから出て来るのだと私どもは
考えるのでございます。
民主主義を言われますけれども
民主主義の
一つの大きな要件をここでふみ外そうとせられるかどうかと、こういう危険にかか
つて参ります。或いはこれは
民主主義、自由
主義の基礎になります自由、博愛、平等の
原則からいいますならば、或いは自由、博愛の項目については
治安維持という名目の下に捨て去ろうとせられるのではないか、こう私どもは
考えるのであります。その点について時間をとりませんが、もとの「法曹界雑誌」の復刊であります「法曹時報」の再刊の辞の中にはこういうことが書いてございます。「リンカーンが、南部の一狂漢の凶彈に倒れる一カ月前、第二回目の
大統領就任に際し次のような演説をした。「何人に対してもうらみを抱かず、すべての人に対して慈愛の心をも
つて、神の示したまう正義にかたく立ち、願わくはわれらの仕事の完成のために、飽くまで努め続けよう。わが
国民の傷を包み、戰争の重荷を負う人々とその寡婦、孤児をねぎらう道を講じ〃正義〃にかなうとこしえの平和をわが国に、また世界にもたらし維持させるような一切のことを盡すために努め続けよう。」これは法曹人としての
法務総裁としては従来持
つて来られた観念かと思うのです。この「法曹時報」の再刊の辞に述べられました精神は、私は法曹界の意見も代表しておるものと思います。ところがそのリンカーンの
言葉を引かれた中における何と申しますか博愛と申しますか自由と申しますか、そういう点について或いは寛容の精神というものは、この
法律によ
つてはふみ外されようとしている。成るほど出て参ります
破壊活動のこの根源について、御
心配になる国際的な
関連云々ということは、これは
法務総裁述べられたところでありますけれども、実際に私どもが見聞きいたします
破壊活動、この点について例えば朝鮮人の諸君の問題でありますが、私は出入国管理令を含めます外務省
関係の諸
法律を審議しましたときに、あの出入国管理令の中には従来
日本人であ
つた朝鮮人の諸君も、何と申しますかやつばり民族的な蔑視観念も含めて人間的な取扱をしないで強制送還しようとする
思想が入
つておることを感じました。或いは現在長崎その他でも問題が起
つておるようでありますけれども、ささいな事由からして強制送還され、或いは帰
つたならば戰線に送られ、或いは生命の危険さえも感ずるというときに、弱い者として団結しそしてああいう
行動が起
つて来ることについては、私は一片の同情を以て見るべきものがあると
考えるのであります。過去において私ども戰争中においても経驗をして参りました非合理な
理由なき
暴力に対して
自分を守るための集団
行動がなされて参りました。併し私はその集団
行動をとがめるか、或いはその前の非合理な
日本人からの
暴力というものをとがめるべきであるか、これは大きな問題だ
つたと思うのです。今日においてもその点は言い得ると思うのであります。時間がございませんから、この点について
民主主義を擁護しよう、こういう御決意はございましようけれども、その
民主主義の
法務総裁の
言葉の中からい言ますならば
一つ重大なものが欠けようとしておられる。そこに問題があり、そしてそれが先ほど私が申上げましたような
内乱への事態を招来するものではないか。これは
国民の
民主主義を擁護しようという決意については、
法務総裁といえどもこれは御了解にな
つておると思うのであります。
政治の面の欠如或いは私ども
納得しがたい点の救済を
破壊活動防止法という力でも
つて、或いは行政
行為でも
つて、
警察行為で押して行くということはこれは極めて危險性があるということを申上げて、
法務総裁の御意思の中から
一つのとにかく欠けようとするものを回復せられて、
民主主義擁護のためにお盡し下されんことを切望いたしまして、あなたの時間もございますので一應御
質問を終りたいと思います。