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1952-05-22 第13回国会 参議院 法務委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十二日(木曜日)    午前十時二十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            一松 定吉君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            片岡 文重君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君   政府委員    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    法務政務次官  龍野喜一郎君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正巳君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     関   之君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○破壊活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これより委員会を開きます。  昨日に引続き破壊活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、以上三案を便宜一括して議題に供します。羽仁君の質疑を継続いたします。
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 昨日からの問題、第三でありますが、第三に法務総裁に伺つておかなければならないのは、この法案は広い意味においての警察権力というものを拡大するものであることはお認めになると思うのです。そこでそれが政策と均衡をとつているかどうかという問題です。それでこれは法務総裁も御同感下さると思うのでありますが、日本では過去からポリシイとポリスとを混同しておるふうが強い。即ち政治の問題と、それから取締警察の問題、検察の問題というものを混同しておるふうが非常に多い。これは御同感下さることと思いますが如何でしようか。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はこの法律によつて警察権力の増大を図るというようなことは考えていないのであります。又実際方面から言いましても警察力をこの法律によつて強行されたり、強大なものになるというようなことは私は考えておりません。而して今お説の実際の警察と、而して検察の行き方というようなことにつきましては、これは御承知通り検察はすでに現われた犯罪について主として如何にこれを処分するかということでありまして、勿論犯罪についての捜査はやりまするが、警察力のほうにおいては実際の運用において、犯罪の予防ということに、先ず私は主力を置くべきものであると考えております。これが両両相待つて初めて国家治安の全きを期するということであります。車の両輪のようなものであると私は考えております。勿論大局的にこれをどう調整するかということは、これはいわゆる政治であります。その国家政治によりまして運営面においての十分なる調整を図つて行きたい、こう考えておる次第であります。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この法案によつていわゆる狭い意味警察が拡大するとか、そういうことを申上げているのじやないのです。取締というものが厳重になつて来る、或いは拡大される、或いは刑罰が重くなつて来る、そういうことはお認めになるかどうか、それで今伺つておりましたのは、日本に従来この政治の問題と、それからいわゆる治安維持の問題とを混同しておるところがあるのじやないか、これは昨日佐藤意見長官のような素養のあるかたでも、伊藤委員に対するお答えの中に政策政治というものによつて第一に治安維持するという考え方伊藤委員によつて逆指摘されて、その政治こそ治安維持根本であるという点を指摘されておつたのですが、佐藤君のようなかたでさえそういう考え方がある。昨日の本法案の第二十四条の二項で、伊藤委員総理大臣がその間に入つて来るということは許されない、特にこの場合には許されないのじやないかというときに、治安維持政府責任だ、行政権責任だというふうに言われる。こういう場合に明らかに指摘されるのは、この治安維持ということが主として取締によつて行われるようなお考え方がそこにあるのだろうと思う。而も佐藤君もそういう考え方が殆んど自明の理であるかのごとくに伊藤委員お答えになつて伊藤委員からあべこべにそうでない考え方こそ我々のとるべき考え方だと思う、政治的、経済的、社会的な政策によつてこそ真実治安というものは得られるのだと思うという考え方指摘せられておる。この問答をお聞きになつてどなたもお感じになると思うのですが、いわゆる末端じやない、巡査部長級とか、或いは警部補級とかいうような人にそういう問題がわからないばかりじやない。法務総裁は昨日この法案のみによつて治安維持しようとは考えていないというふうにお答えになりましたが、併しこの法案によつてその職務を委託される人々は、これは日本に過去からあります強い伝統で、いわゆる職務に熱心の余り、これは恐らく伊藤委員からしばしば指摘せられた従来の特審あり方吉河特審局長の従来のあり方というようなものも恐らくは褒めれば職務に熱心である、その余りいわゆるこの法案によつて治安維持ができるかのごとく考え、或いはもう少し広く言えば取締りによつて治安維持ができるかのように考えて来た考え方があることはお認めになるだろうと思う。で昔からの諺に、良吏は虎より恐い、日本の過去の官僚にしましても、軍人にしましても、その国を思い、国を憂え、職務に忠実なことにおいてはこれは私といえども疑いはないのです。併しそ官吏職務に忠実の余り軍人がその職務に忠実の余り常に国民を苦しめ、犯罪戦争に導き、そうして国を亡してしまうということになつたことは法務総裁もお認めになるだろうと思う。これはこういうふうな考え方は、この政治とそれから取締りと混同し、治安維持ということが主として取締りにあるかのごとき考え方から来ている。こういう考え方が、今日一掃されているというふうに法務総裁はお考えにならないだろうと思う。こういう考え方は他面においては、この政府というものができるだけ強い権力を持ちたい、そういう考え方に繋つて来るのではないか、日本ではとかく、これは吉田首相が折にふれて述べられるのを聞いても、強力なる政府というものが理想であるかのようにお考えになつておる。私はこれは非常な疑問だろうと思う。で昨日も引用しました民主主義の父といわれるジエファーソンがマディソンに書いた手紙の中に、自分は如何なる意味においてもイナーマスな、勢力的な政府の友ではない、強力なる政府というものは常に必ず抑圧的である、これは民主主義にとつて根本的な原則であります。さればこそ民主主義においては政府が替わる、交替するということを前提としておる。ですからいわゆる多数の政党、自由党だけでなく、改進党、社会党、或いは共産党と、いろいろの政党があることは、政府が交替するということが原則なんです。ところが治安維持ということを取締りの面ばかりで考えておる人は、パーマネントな、自分常雇い公務員だものだから、政府というものも不変の政府というものを考えやすいんです。でこれは政府の交替ばかりではありません。憲法が変えられるということも御承知のように不可能なことではないんです。むしろそれを前提としているんです。そうして更に広く法務総裁もお考えになれば、今日の社会制度資本主義制度というものが永遠のものでないということは法務総裁といえどもお認めになるだろうと思う。そして歴史の示すところにおいて資本主義制度から社会主義制度へ世界が現在動いているということは、これは意見長官といえどもお認めになるだろうと思う。これを否定することはできません。これは政党政派、或いはそれぞれの立場に立つとかして、如何なる見方をしても変えることはできない事実です。こういうように政府は替わるものである、替るべきものである、憲法も場合によつては変るべきものである、社会制度というものも変るべきものである。これは今日の民主主義認めておる原則であり、且つ又何人もこれは否定することのできない事実です。そうしてこの変化を如何に平和に行うかという点が結局何人にとつても問題だと思う。我々にとつても問題なんです。ところでそれがどういう場合に平和でなく暴力を伴うに至るか、これは暴力の伴うことを私も勿論法務総裁同様増むべきことだ、悲しむべきことだと思う。併しこれがいいか悪いかではない、事実問題としてどういう場合にその政治上の変化というものが暴力を伴うという事実を発生させるかということをよく考えて頂きたいのです。でその根本考えないで、そこに出て来たものだけを取締りによつて刑罰によつて、或いは解散即ち組織の解散などによつてなさそうとしても、即ちこの法律案によつてそういうことをしようとしても、破壊暴力活動というものは根絶できるものでないということはお認めになるだろうと思うんです。却つて昨日から申上げておるように、その際に処置を誤ると、暴力的な活動が、或いは非合法的なますます複雑な暴力的な活動が発生して来る。そうして現われて来た場合にはこれはどうしても例えば昨日この法律案によつて例えば共産党なら共産党、その政治上の主義主張というものに基いて、場合によつて暴力的な行動というものに移ろうと思つておる方々が納得するとは法務総裁としては期待していないというふうにおつしやいましたが、これはその人々が納得しないばかりでなく、社会の良識ある人がこれに納得しない場合が起つて来る。重ねて引用しますが、例えばトーマス・ジエファーソンのような民主主義の父と言われている人が、政治叛乱に対して、一つの国に十年に一度ぐらいはこうした叛乱が起ることが政治にとつては必要だ、イギリスにおいては六年に一遍ぐらい叛乱が起つておる、そのときジエフアーソンパリから手紙を書いているのですが、それは自分は今パリにいるが、パリに来て三年間に三回叛乱が起つておる、これらの叛乱によつて政府の独裁、専制ということは防がれておるのである。そのあとにジエフアーソンのような人が人民をして武器をとらしめよということを言つております。これは本法律案立案者などが聞いたらば怖じけを振うような言葉であるかも知れない、人民をして武器をとらしめよ、自由の木は人民の手によつてでなければ育たないのだということを言つておられる、ジユフアーソンは決して共産党員でもなければいわゆる破壊的な人物でもない、民主主義の父と言われる高潔な人格を誰一人疑うことのできない人です。こういう関係がどうしてできて来るかということがさつきお尋ねしたこの取締りというものと政策というものがバランスのとれない場合にはこういう関係が起つて来る。この法律案考えておるように、破壊活動防止ということを取締りによつて、いわゆる刑罰によつて防止するということをなさらうとするならば、それに匹敵してそれにバランスのとれる社会政策の上において十分の確信がおありなのかどうか。このバランスがとれていないときにはこの法案によつて取締られる人が確信を動かすことができないばかりではない、社会の有識者がそれに同調せざるを得ない。そうなると、本法案というものはその所期の目的を達成し得ないばかりではなく、却つて憂うべき状態を発生すると思いますが、この点については法務総裁はどうお考えになつておられますか。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は警察を以て政治の全部とは考えておりません。政治の一部であります。あらゆる施策を講じて国民の安定を図るということが政治要諦であると確信して疑いません。警察のみを以て治安を全部維持しようというような考えは、これは御同様全く考え方が誤つておると思います。我々もこの法案自体を以て全部の治安維持しようというような考えは毛頭ないのであります。昨日も申上げました通り政治の一部として、即ち日本治安を守る一端としてこの法案を提出したゆえんであります。我々はどこまでも民主政治建前をとつて行かなければ相成らんと考えております。いわゆる国民意思議会を通じて反映せしめる、これが議会政治要諦であり、民主政治要諦であると考えておるのであります。今ジエフアーソンの話が出ましたが、ジエフアーソンはさような言葉を用いたかも知れません、私ははつきりと記憶はないのであります。併し仮にさような言葉を用いたといたしましても、ジエフアーソン時代と今の時代とは全くその様相を異にしておることを銘記しなければならんと考えます。現在においてはいわゆる民主政治が確立しでおるのであります。民主思想普及徹底ということはまだおぼつかないといたしましても、制度の上において日本はすでに議会政治建前をとつておるのであります。議会を通じて政治をする、これがいわゆるデモクラシー政治の本義だろうと考えておるのであります。その議会政治暴力を以て破壊するというようなことにいたしますると、これはどこまでも政府責任として規制して行かなければならん、この法案の狙いは、政治主義主張はどこまでも議会を通じてやるべし、暴力を以てやるべきではない、いやしくも暴力を以て自己の政権の遂行を図るようなことがあつて議会政治の否定であるから、これは規制して行かなければならんという建前をとつておるのであります。要するにこの法案はどこまでも民主政治建前根拠といたしまして、そうしてさような民主政治暴力によつて破壊せんとするような団体を規制して行きたい、こう考えておる次第であります。
  7. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今法務総裁は現在日本においては民主主義が確立しておるというふうに窺えるようなお言葉がございましたが、これは勿論お言葉のお間違いだろうと思います。日本民主主義が確立していないということはなん人も指摘するところであり、いわゆる十二歳程度の民主主義だというように言われている。又昨日は法務総裁も私に向つて官僚独善を許しているのは、汝ら国会議員責任だという激しいお叱りもあつた。その通り、我々国会議員がまだ官僚を抑えることはできやしない。そこで今の問題と関連して伺つておきたいのは、これは伊藤委員の御質問に対してもはつきりお答えになることがおできにならなかつたようですが、日本民主主義がまだ非常に弱い。これは意見長官もお認めになるだろうと思う。そこにこういう種類の法律案というものに耐えることができるだろうか。伊藤委員も切々として言われたが、或いは先進民主主義国においては、このような法律或いはこのような制度というものが行われても、基本的人権が蹂躙される虞れはない。法務総裁が重ね重ね我々に向つてお答えになつておられるように、濫用の虞れはない。基本的人権蹂躙の虞れはない。言論、集会、結社の自由を蹂躙する虞れはない。政党が役へに監督してもらうようになる虞れはない……、それは民主主義が確立しておる国においてならそうかも知れない。併し日本のこの若い、この弱い民主主義、これは法務総裁も虚心坦懐にお考えになつてみれば、日本民主主義がもう実に立派にびくともしない、相当のことをやつたつて大丈夫だというふうには自信はおありにならないだろうと思う。そうしてそれに対して法務総裁伊藤委員に対しては、日本民主主義が若い。弱い。弱いからこそそれを守るためにこういう法律を必要とするのだ。意見長官もそういう御意見を持つておられるようだが、詭弁も甚だしい。これは剣の上に彫刻せられた法律だと言われていますよ。成長した、確立した民主主義なら、剣の上に彫刻せられた法律というものも誤りなく運用することができるかも知れない。併し十二歳の民主主義が剣の上に彫刻せられた法律に耐えられますか。これはうか今申上げたような逃げ口上をここでお述べにならないで、法務総裁政治家としての高邁な識見から或いはこのような強力な法律というものは日本のまだ若い弱い民主主義には耐えられないのではないかという点、お考えにならないでしようか。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の申したのは、こういう趣旨であります。日本においてはまだ民主主義思想徹底していない。成るほどアメリカその他の先進国から比べますると、民主主義国民の間に普及徹底はいたしておりません。その事実は認めるのであります。併しながら制度としての民主政治は一応確立されておるのであります。そこでこの未熟な民主主義国民に対してどうあるべきか。これは我々といたしましてはどこまでも普及徹底をせしめなければならんと考えておるのでありますが、未熟なれば未熟なるほどこそ危険があるのであります。いわゆる民主政治制度というものは一応確立された。それに対して国民はマッチできない。マッチできない過程において民主主義を否定するような行動が行われるのであります。これが危険なんであります。今日問題になるのは、いわゆる議会政治を否認するというような言論がたまたま行われる。又実際行動においても議会政治を否認するがごとき行動が現われておる。これが我々一番心配するのであります。我々はどこまでも議会政治を擁護する建前において、さような暴力によつて議会政治を否定せしめようというようなことは、これは将来の国家を思う者として断じて許すことはできないと考えておるのであります。未熟なれば未熟なるほど、これは啓蒙すると同時に、さような行過ぎな行為は政府としては取締つて行かなければならん。要するにこの法案建前といたしましては、議会政治を否認する、これを暴力によつて実行するというようなことがあつては、日本民主政治の将来寒心に堪えない。政府当路者といたしましては、どこまでもさような団体はこれを規制して行かなければならんという精神から出たのにほかならないのであります。
  9. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法務総裁も御就任以来、特審局あたりで作成しておつたこのいわゆる現在の名前では破壊活動防止法案というものになつておるこの法律案というものを、できるだけしぼるという御努力をして下すつたことは、非常に感謝している点であります。併しそのできるだけしぼろうという努力をなさつたときのお気持というものは、私がさつきから申上げているような気持じやないかと思うのです。特審局あたりではできるだけ広い権限を持つて、そうしてできるだけ自由に取締りをしたいというようにお考えになる。法務総裁としてはそれは取締にはよかろうが、併し日本の現在で、日本官吏のレベルにおいてそれだけの権限を与えると必ず濫用するであろう。さればこそこういうふうにここまでしぼつて下さつたのではないかと私は思うのです。従つて今のお答えとそのお気持とは、私は少し違つておる。併し私は今の御言葉によらないで、こういうふうにしぼつて下さつた気持のほうが真実のお気持だろうと私は思うのです。そこで、私の伺つておきたいと思うことは、もつとしぼる、場合によつては、これは勿論我々昨日から伺つておりますし、又伊藤委員の御質疑の御趣旨もそこにありますが、この法律案で企図しておることは、他の今まである法律でもやれることである。そしてこの法律案によつて却つてその法律案目的としておるところは実現できない。そしてこれが人権蹂躙、その他恐るべき点があるという点にあるのですが、併し法務総裁が今までしぼつて下さつた努力というものを今後も私はお続けになる必要がある。法務総裁もお認めなつた場合には、これは是非お続け願わなければならないと思うのですが、もうここまでしぼつてあれば大丈夫だというお考えは、私はいささかドグマテイックではないか。伊藤委員から各条項についての御質疑をお聞きになりまして、成るほどまだ重大な危険があつたというようにお考えになつておるかも知れない。どうか、その点についてのお答えを頂いて置きたい。昨日も申上げましたが、政治家が万策尽きてそうして武器をとるということは、これは政治家から御覧になれば、法務総裁から御覧になれば、そこに同情せざるを得ない点があるのです。併し関次長のようなかたからおつしやれば、これは全く危険中の危険というふうにしかお考えにならない。この法律案の御説明の際に絶えず危険中の危険という言葉を使つておられた。これはいわゆる公務員というか、常雇いの役人という立場からお考えになれば、これは危険中の危険としか考えられない。併し政治家としてお考えになれば、政治家の万策尽きて武器をとるという場合に、一掬の涙なきを得ないであろう。そういうところに私は政治と或いは政策というものと、それから取締りというものとの間に、それこそはつきり引いておかなければならない一線があると思うのです。そこでその一線を越えてまで、即ちこの法律案の最も主要な点であり、伊藤委員からもたびたび指摘をせられましたこの第三条の第二項に、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対するため、」という言葉がこの法律の中に入つて来ておる。そうしてこの法律官僚の手に渡され、そしてその官僚は、繰返して申上げておるように、いわゆる取締り政治だというように誤つておる伝統は決して払拭されていない。そして又国民の側から言えば法務総裁が御指摘なつたように、残念ながら長いものには巻かれろ、官吏の前には頭が上らない。まだ検事とか検察官というものが声を怒らして呶鳴れば恐れ入るよりしようがないような国民なんです。制度の上では立派にできておるかも知れませんが、実質においてはその点について私は法務総裁政治家として政治的責任においてお考えになるべき点があるのではないかと思うが、如何ですか。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この法律案作成に当りましては、たびたび申上げました通り憲法所定基本的人権をいやしくも侵害するようなことあつてはいけないという観点から考慮払つたのでありまして、殊に我々といたしましては、このいわゆる調査官強制権を持たせなかつたという点であります。御承知通り治安維持法施行当時におきましては、いわゆるこれに、調査官に当るべき者が、強制権を持つてつたのであります。司法処分をみずからなし得る権利を持つてつた、そういうようなことがあつてはならないというので、これは強制調査権限を持たせない、こういう仕組みにしたのであります。この点に当つて苦心をどうぞお察しを願いたい。従いましてこの法案施行に当りましては、さような観点からと同時に、極めて厳密にこの規制の対象を限定したことであります。この規定の範囲が広まれば広まるほど、この運用においてなかなか容易ならん点が出て来ます。対象を極めて限定したということに苦心をしたのであります。殊に今問題になりました第三条第二項の点であります。これについても相当考慮払つたのであります。私の考えといたしましては、先刻も申上げました通り日本ではどうしてもこの政治というものは議会を通じて行わなくちやならないと思うのです。いわゆる大衆の意思議会に反映せしめて、議会によつて日本政治は将来なすべきであるという建前から、この議会根拠となるべきその基盤を、暴力によつてこれを否定し、これを破壊せんとするような団体というものは、これは民主政治において許すことができない、こういうものこそ規制して行かなくちやならんという考えを以ちまして、この法案が作成されたゆえんであります。どこまでも我々といたしましては、民主政治を擁護するという一面からこの規定を挿入したのでありまして、決して国民基本的人権を阻害するというような気持は毛頭ないのであるということを御了承願いたいのであります。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 議会を通じて民主主義が実現せられるということに全力を挙げるということは、私も全く同感なんです。又そのためにこそ今こうして質疑を重ねておるのであります。法務総裁がさまざま御苦心をなすつてしぼつて下さいましたこの法律案というものが、原則において、目的においては、どういう原則目的の上に立つていたかは法務総裁もお認めにならざるを得ないと思うのです。如何にこの枝を伐り、葉を除き、根を縮めても、その根幹をなすものは一体何であるか。この点でこの形をとつております破壊活動防止法案というものの特色、その本来の目的、その原則というものは昨年八月大橋君の名前によつて発表され、日本の天下を挙げて戦慄せしめたあの法律案に現われておる精神、その精神が、この法案の背後に隠れておるのです。法務総裁の非常な御努力によつてそれをできるだけしぼつて頂いたのですが、併しこのしぼつたという事実が何よりも明らかにこの法律案立案者は何を目的としていたかということを示しておると、これは法務総裁もお認めにならざるを得ないと思うのでありますが、若しそうでないとするならば、何故に昨年の八月でありましたか、九月でありましたか、ああいうものを出したか、アドバルーンを揚げたのです。恐らくそうでないだろう。現在のこの法律案立案者は、問うに落ちず語るに落ちて、あの時に現われておる。それを多大の御尽力によつてここまでしぼつた。併しそのことは、現在こうした形をとつて現れておる法律案というものの根本的な精神というものは、最初に発表されたような恐るべき法律案にあつたということを示しておる。ですから、今法務総裁の御努力、議員各位の御努力によつてこの法律案が法文の上において明らかに更にしぼられ、それから又その解釈において更にしぼられて、そして或いはその対象は極限せられ、その方法は極めて厳格にせられるところまで持つてつて法律になりまして、そのあとにおきましてどういうことが起つて来るかということを法務総裁もお考え頂きたいと思います。そうなると、この法律をどういうふうにして使うかと言いますと、その最小限にしぼつて議会の門をくぐり抜けて、その翌日からこの法律案は最大限に日々に解釈されて行きます。これは私自身の経験から申上げても、そういうことははつきり言えるのですが、例えば必ずこの公安調査官といいますか、いわゆる思想検事でしよう、昔の……。それはこういうことを言うだろうと思うのです。あなたはこういう政策上の主義を持つている。現在それは実行できない。合法的に或いは議会に出ようと思つても、合法政党としては否認されている。そうすればあなたがまさか堂々たる政治家としてその主義主張を捨てるということは考えられない。ところで非合法化され、解散されておる。ですからこの法律案で言いますと、最初はいわゆる行政措置というようなものから来るのですが、併しこれは佐藤さんもよく聞いて頂きたいですが、最初は、或いはあなたもたびたび御説明になるような、行政権責任に属するようなことから始まつて来るのです。併しこの法律目的としているところは、最後必ず解散まで行き、そして必ず刑罰まで行かなければならないようになつている。なぜそうかといえば、解散された、或いは最後の六カ月の停止というような処置を受けて、これに本人としても納得されるはずがないし、又恐らくは公安調査庁におかれましても、あれに六カ月停止したらおとなしく六カ月停止しているだろうとは予想されない。そこでいわゆるこの取締の官憲というものは、あなたが政治上の信念を持ち、主義主張を持つている以上は、これを実現するというためには、手段を選ばない。即ち破壊的暴力というものも考えているのだろう。集団的な破壊的暴力というものも考えているのだろうというように解釈をされて行くのです。これはこの法律によつてしぼりしぼつてつて議会を通つたあらゆる法案が、議会を通つた翌日から一歩々々拡大されておるすべての例をここに出して御説明するまでもないと思います。有名な刑事訴訟法の場合でもその通りじやありませんか。拘留を重ねるということは日本においてその当時、大正十何年でありましたか、絶対にそういうことはあり得ないことだ。そうして議会をお通しになつて国会議員はそれを信じてそれを通過した。翌日からその拘留というものはどんどん延長されて、遂には五年、六年というような拘留が行われておる。こういうことを私から法務総裁に申上げるのは、釈迦に説法のようで甚だ恐縮ですが、法務総裁もよく御承知になつておることだろうと思う。ですからこの、折角こういうふうにしぼつて頂いた法律案、その御努力は実に多とするものでありますが、更に一歩進めてお考えになつてみれば、ここまでしぼつてみたが、併しこの法律案原則目的とはどういうものであつたかということを考え御覧になり、従つてこれが国会を通つた後に、そうして忽ち日に日に一歩々々拡大されて行くのじやないか。その間にはそれは五年、十年の年月を要するかも知れません。或いは二十年の年月を要するかも知れない。併しこれが第一歩となつて国民が沈黙を強制されるようになるのじやないか。そして官僚の独裁というものに対して一指も触れることができないようになつてしまうのじやないか。或いは河合栄治郎とか、或いは美濃部達吉とか、或いは金森徳次郎とかいうようなかたがたさえ沈黙せざるを得ないようなところまで……、決してこの法案が通つた翌日には勿論なりませんよ。併しそれは数年の後、或いは五年、十年の後なつて行くのじやないか。或いは吉河君も現在ではそういうことは考えていないかも知れない。併し治安維持法が通過したときもその通りです。これは治安維持法通過の際の国会における当時の若槻内相の説明や、或いは答弁というものも法務総裁も目をお通しになりましたでしよう。又よく御記憶のことであろうと思います。決してこの治安維持法というものは、思想や言論や新聞などの圧迫をするものではない。丁度今ここで法務総裁がこの破壊活動防止法案は決して一般の思想を取締つたり、言論取締つたり、或いはいわんや新聞などを取締るものにはならない。日本男子として絶対にそういうことはさせないというふうにおつしやつておられる。これは治安維持法を通過の際の若槻内相のお答えと全く同じです。そして若槻内相というかたが実に優れた人格者であつたということは、現在の法務総裁に決して劣られないかたである。我々から見て実に立派なかたである。決して嘘をおつしやつているのじやなかつた。又御努力をなさらなかつたのでもない。然るにそれがなぜ五年、十年ののちにあの恐るべき状態を導いたか。時代が違つている。又いろいろな点で治安維持法とこれとは違つているというふうにおつしやるでしようが、併し果して当時の状況が今日一掃されておりますか。果して治安維持法とこの法律案との根本的な点における同一性というものを否定することができるでしようか。この点があればこそ各新聞が挙つてこれに対して反対の意向を表明し、今朝の朝日新聞の漫画を見ましても、吉田さんが、反対という竹林、すべての竹に反対と書いてある、その中を鬼の持つような棒を何とかして押し通そうとして苦心している。あの漫画家は決して一党一派に偏してあの漫画を書いたのじやない。現在の事実、世論が挙げてこれに反対している。そして野党は挙げてこれに反対している。学者は挙げてこれに反対しているというところに御反省の余地がないのでしようか。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この法案の構想は、大橋君が曾つて構想されたものとは相違をしておるのであります。先刻私が申上げました通り、この法案建前は、又原則は、どこまでも日本民主政治維持して行きたい。暴力を以て日本議会政治を否認したりするような団体を規制して行くというのであります。およそ構想は私は違うと考えるのであります。これの法案の実施についての御懸念は、しばしばの御質問でわかりました。先刻来私も答弁いたしましたように、できるだけそういうような危惧の念を一掃いたしたいという考えを以て構想を練つたのであります。治安維持法とはおよそこの法案の構想において相違しておる。本質的に変つているということは申すまでもないところであります。昨日来政府委員から十分御説明申上げた通りであります。要するにこの法案というものはどこまでも民主政治維持して行く、それに緊急止むを得ない法案であるということを申上げたいのであります。我々といたしましてはさような気持からこの法案を作つたということであります。民衆のお話が出ましたが、この法案の必要性は私は国民一般は認めておると考えております。この運用の如何によつて、或いは日本国民基本的人権を侵害する虞れあるのじやないかというところに危惧があるのである。今日の日本治安の情勢において、かくのごとき法案の必要な情勢ということは私は認めておると思う。昨日の日本タイムスの社説においても、十分その点は述べられておるのであります。この運用実施についての危惧であります。その点については我我は十分に考慮して、万遺憾のないことを期したいということを考えておる次第であります。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 日本タイムスの社説をお挙げになつたのは、まさに盲亀の浮木というか、各新聞がその社説を以て反対しておる中に、如何にも昨日日本タイムスだけがこういう法律案が必要ということを書かれております。而してそれを御覧になつても、日本語で書いてある新聞は皆反対しており、英文で書いてある、日本で発行されておる或いは外務省の機関紙じやないかと思われるものだけである。これによると、この破壊活動というものが若しありとするならば、この法律案こそ最初の破壊活動ではないか、憲法を破壊する最初の破壊活動ではないか、この法律案が成立するならば、逆に先ず第一にこの法律案そのものを取締るべきじやないかと思われるほどの法律案というものが支持されておるのは、今まさにその例としてお取上げになつたように、日本タイムスただ一つでしよう。さればこそさつきの漫画家もああいう漫画を書いておる、これは法務総裁が十分にお考えになつて、さつきも申上げておりますように、暴力的な、破壊的な活動というものは刑法によつて取締られる、それを政治上の主義若しくは施策を推進し支持し、或いは反対するためにやるというのは、これは政治活動です。ですから政治活動に対しては政治活動を以て堂々と対処するのが唯一の有効な方法ではないか、これは新聞においても同様です。新聞の上で例えば暴力破壊活動を扇動しておるこの新聞を解散することによつて戦えないのです。法務総裁はスポーツマンでおられるからよく御承知でしよう。相手がそこに出て来ないで、どうして戦えますか。ですから新聞が破壊活動を扇動しておる、然らば他の新聞を以て破壊活動を扇動することが、如何に誤つておるかということを論破して、それを国民の前に明らかに示して、この政治上の活動に対しては政治上の活動を以て、新聞に対しては新聞を以て、言論に対しては言論を以て、思想に対しては思想を以て戦うことが唯一の戦う方法であり、又唯一つの有効な方法である。それは民主主義原則であり、又憲法の命じておるところである。ところがこの法律案はそれをさせないで、それに対して、政党として、新聞として相対するのではなくて、その政党、その新聞を解散をしてしまう、それが全体主義です、ナチスの思想が現われておる。そういう意味においてこれはいわゆる共産主義の全体主義というものを防ぐのだと言いながら、実は自分みずからはナチス、或いはフアシズムの全体主義を築こうとしている。法務総裁がその節を汚さるべきでないばかりじやない、佐藤意見長官のような学識あり、青春に富んでおるかたがその節を汚されるということは悲しむべきことだ。僅かに日本の新聞紙の中で英文で書かれておる外務省の機関紙じやないか。外務省の官吏は今日盛んに政治活動をやつておる、法務総裁のお目にとまらないかも知れないが、新聞で、輿論で問題になつておる、平和を唱えるのは共産党だということまで言つておる。そういう状態が今日すでに発生しておるのです。何故に政治上の主義を以て暴力を行わんとするものに対しては、政治上の主義を持つ他の政党が、そうした政党を圧倒することができないのでしようか。そういう新聞が若しあつた場合には、他の新聞がこれを圧倒することができないのでしようか。又それよりほかに方法があるとお考えでしようか。どうでしようか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は羽仁委員の今のお考え相当ギヤツプがあるのじやないかと、こう考えます。政治については政治言論については言論、おのおの相対立せしめて主義主張を貫かせよう、これは民主政治建前であります。私も同感であります。これでなくては日本民主政治というものは行われないのであります。我々はそれを希つておるのであります。その建前はどこまでも堅持いたしたい。ところが自分主義主張暴力によつてこれを貫こうという団体を、これを許すことができましようか。これこそ議会政治の否認であり、民主政治の否認であると我々は考えておる。どこまでも言論言論主義主義、それで相対抗して初めて民主政治というものが行われるのであります。それを自分主義主張暴力によつてこれを遂行しようというような団体ありとすれば、これは民主政治の破壊であります。我々としてはさような団体は規制せざるを得ない。新聞においてもそうであります。新聞において堂々主義主張を掲げるべし、政府政策に対しては批判論難すべし、同感であります。併しながら新聞といえども内乱を扇動したり、内乱を教唆したりするようなことがありますると、これはどうなるでしようか。これこそ私は議会政治の否認であり、破壊であると考えております。自分主義主張は堂々と私はこれはすべきであると考えておりますが、暴力を以てさようなことを遂行し、又暴力を以てこれを扇動するというようなことでありましては、議会政治の否認であり、又我々は治安の確保の面から見て、さようなことは捨てておけない、取締らざるを得ないと、こう考えております。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法務総裁は私の論理にギヤツプがあると指摘せられましたが、その点については私も考えておりますが、法務総裁の今のお言葉にもギヤツプがあるのじやないかと思うのです。で、或る一つの政党政党政党という争いにおいて問題を解決しようとしないで、暴力に訴えた場合、これは刑法によつて勿論処罰されます。そうして又刑法によつてこれを予防することもできます。その陰謀或いは計画というものが明らかであり、その危険が眼前に明白である場合は、これを除くことができる。今日の刑法というものは決して間抜けな人々がこしらえたものではない。十分の経験、十分の学問上の根拠を以て刑法ができておる。法務総裁は刑法では団体取締れないから、或いは今の刑法ではできないからということをおつしやるが、併し現在の刑法というものがそうでたらめにできておるものじやない、なし得ることでそうしてなすべきことはすべてなしておるのです。私は佐藤意見長官法律の悪魔というふうに申上げたのは、なし得ることならばすべてなしていい。法律上できることならばすべてやつていいのだという考え方法律の悪魔だと言う。法律上なし得ることでもなさないことがある、私はその点について法務総裁がおつしやるのは、この政治上の団体或いは労働組合或いは新聞というものがその主義主張の上において如何なることを主張しようともそれはまだ主張です。それに対しては、主張に対しては他の主張を以て救済することができるのであるし、又それよりほかに方法がないのです。それが暴力の実行に移り又は実行に移らんとしておる危険というものは、今日の刑法において十分これを防ぐことができるのです。そうしてこれを、その危険を差迫つてから防ぐのでは遅い。従つてよほど早くから防ぎたい、そうしてそれを法律上できるようにしたいという考え方は、法律上の悪魔の考え方である。いわゆるプライオル・レストレインというか、あらかじめまだ起つてもいないことを防ぐということを許すならば、これは今日の憲法或いは刑法の、或いは基本的人権の保障というものはすべて崩れてしまう。いわゆる日本の封建時代からの官吏考え方には、いわゆる急迫厭うべき心理があります。これは法務総裁もお認めになるだろうと思う。実に性急にそうして言論なり政党なりを通じて解決されるのを待ち切れない。そんなことをしておつて若し内乱が起つたらどうするのだ、或いは自分の首が飛ぶじやないかというような気持からも来るかも知れない。要するにそうした急迫厭うべき心理から、これをあらかじめ防ぎたい、あらかじめ防ぐには限度がある。その限度は刑法の原則において与えられている。それを昨日、一昨日も伊藤議員からも各条項について指摘せられておる。その限度を安々と突破して行く、そうしてそのものは直ちにいわゆるプライオル・レストレイントというものになつていないかも知れないが、それに向つての一歩を踏み出して行く、ここに問題があるので、法務総裁のお考えにギヤツプがあると申上げるのは、正当なる労働組合なり、新聞なりが暴力行動に移る、或いは暴力行動を予備する、暴力行動を主張すると、こういうことは本当はあり得ないことなんです。これは法務総裁も認識しておられると思うが、堂々たる政党や堂々たる新聞、堂々たる労働組合が今日の民主主義社会において輿論の支持を受けて行かなければ何事もなし得ないことは認識しておる。それが不法な破壊活動をなすことを主張するということはあり得ない。だから結局二つの場合しかないのです。一つは、官僚はそういうふうにこじつけるか、いわゆるフレーム・アツプ、でつち上げる、或いはプロボークする、挑発する、そういう場合にそういうことが起るか、そうでなければ、よくよくの場にジエフアーソンが言つたように武器をとれと、ジエフアーソンが言つたかどうかということは法務総裁は御疑念があるようですが、念のために申上げておきますが、「ラ・マルセイエーズ」という歌がありますが、この「ラ・マルセイエーズ」の中で何と言つておるかというと、市民よ武器をとれと言つております。「ラ・マルセイエーズ」という歌を法務総裁承知ないはずはないと思う。その中にオーザルム・シユトワイエン、市民よ武器をとれと書いてある。戦争中のことですから余談になりますが、伊沢多喜男さんと信時潔さんと会つたことがある。そのときに伊沢さんが信時潔さんに向つて、この頃日本でできる歌は鄭声だ、鄭声の講釈は法務総裁にするまでもない。「海行かば」、「愛国行進曲」、あれは皆鄭声だと伊沢多喜男さんが言うのです。僕が言うのではないのです。「とんこ節」や「愛して頂戴よ」ばかりが鄭声ではないのです。「海行かば」、「愛国行進曲」が鄭声なんです。国が滅びる音楽なんです。そのときに信時潔さんが伊沢さんに向つて、それではどういうものが国を興す音楽かと質問したのです。そのときに伊沢さんが、「ラ・マルセイエーズ」こそ国を興す音楽だと言つたのです。然らばこの法律案ができるならば、どうかすれば国民が集会の席上で、或いは集団行進の途上で「ラ・マルセイエーズ」を歌つたら、立派な破壊活動として取上げられ、或いは解散せられ、或いは刑罰に付せられることがあり得るじやないでしようか、あり得ないというふうにお考えになりますか。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申上げましよう。刑法で団体の規制は賄い得ないのです。而してこの法案第四条において明白に規定しております新公安審査委員会は、団体活動として暴力主義破壊活動を行つた団体に対して、当該団体が継続又は反覆して将来更に団体活動として暴力主義破壊活動を行う明らかな虞れがありと認める十分な理由がある団体、これであります。すでに破壊活動を一たび行なつて、更に将来継続反覆して行う虞れがあると認められる十分理由のある団体を規制して行く。ただむやみやたらに虞れありとして団体を規制するわけではありません。もうすでに実績があるのであります。その実績のある団体が更に将来反覆継続して破壊活動を行うという虞れあると認められる十分理由のある団体を規制して行く、ここで我々はしぼつておるのであります。決してむやみやたらに団体を規制して行くという考え方は毛頭ないということを申上げたいのであります。而してかような団体を規制して行くということは、日本の刑法では賄い得ないということを御了承願いたいと思います。我々はかような意味を以ちまして、慎重にこの法案を作成したゆえんであります。殊に世間では往々にして、労働組合、或いは新聞がこの法案によつて規制されるのではないかというような危惧を抱いておる向きもあるのであります。さようなことは絶対にない。この法案を十分に御審議下さいますれば、明瞭にその点はなろうと考えております。殊に今羽仁委員の仰せになりました、叛乱をやろうとか何とかいうことを言つただけでこの法案に引つかかるのではないかというようなことでありますが、さようなことは毛頭ないのであります。いわゆる現実にこの叛乱を計画してそれを扇動したりするような場合において何するのであります。議論としてさようなことを言うような場合には、これは私は該当しないと考えます。実際において叛乱を起すということについての扇動、教唆することについてのこの法案は賄いになつておるのであります。ただ漠然としてそういうような議論をしたところでこの法案対象となるものでないということを申上げておきます。
  17. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法務総裁はそういうふうにお考えになつておるのだろうと思います。併し法律は別のことを考えております。又この法律を用いようとしておる人は別のことを考えております。この法律から見ますれば、例えば集団行進の途上において公務執行妨害があつた。これは先ず破壊活動の行為として取上げられて来る。そういうようなことが幾つか重なつて来る場合において、今法務総裁がおつしやつておるような破壊活動をすでに実行し又繰返して行う虞れがあるという認定が下されるのです。そうして法務総裁が決して公安調査庁の長官におなりになるわけでもないし、又調査官におなりになるわけでもない。又永久に法務総裁をなさるわけでもないのです。それで今朝からだんだん申上げておるような、現在までの日本官僚的な官僚独善、官僚独裁の空気の中で、今法務総裁のお考えなつたこととは全く逆のことをこの法律考え、この法律を使つて行くことができるのです。そういう点は今制限されておる時間の中で一一申上げませんが、一昨日、昨日伊藤委員からの御質疑をお聞き下さいまして、私の今申したことが根拠がないとはお考えにならんと思います。  時間の制限がありますので、第四の点に移らして頂きますが、第四の点について法務総裁に伺つておかなければならないのは、事実この法律案の背後に何があるかということを法務総裁としてもお考え頂きたいと思うのです。この法律案の正面から出ておるものと、それからその背後に何があるのだろうかということであります。で法務総裁も繰返して御説明下さいますように、それから又我々も繰返して申上げまするように、一体この法律が言つておるような、さつきも申上げましたが、破壊活動というものをなすところの団体というものはあり得ようかということであります。これはいわゆる内乱という事実そのものを取上げても、さつき言うように、英国においては六年に一遍、或る意味においては内乱の事実そのものでさえも滅多に起ることはないのです。よくよくの場合でなければ起るものではないのです。ですから、この法律がそういうものを取締ろうとしておる対象についての規定があいまいだという輿論及び学者の指摘は、決して理由なしとは言えないのです。ないものを規定しようとしているのですから、それはあいまいにならざるを得ない。これはこの法律規定しておる取締り対象となるものがあいまいを極めて、輿論に非常な不安を与え、学者はこうしたあいまいな規定の持つ危険を指摘せられるのは、この法律取締ろうとしておる破壊活動というものはあろうはずがないのです。ある破壊活動、あり得る破壊活動というものは刑法で取締られているのです。あり得ない破壊活動というものを刑法で取締れないのは当り前ですよ。そこでさつき申上げたように、そこには二つの場合しかあり得なくなつて来る。これはどうか法務総裁も十分考えて頂きたいのですが、日本の過去の官僚がそういうことを一回もやつたことはない、そういう習慣は全くないというのならば、私はちつとも心配しない。併し事実においては、日本の過去の官僚は、それから又日本の現在の官僚が以てよりどころとし、或いはその助けとしているかも知れないアメリカにおいても、フレーム・アツプ、でつち上げ、或いは挑発ということは、これはもう誰が見ても実に厭うべきそういう習慣がございます。福沢諭吉は、日本には正月の初捕りということがあつたと、江戸時代にはいわゆる岡つ引というのですか、目明しというのですか、正月の二日に仕事始めといつて江戸の市中を徘徊する、正月の二日だか元日だか知りませんが、別に悪いことをする人があるはずはありません。併しその日は何も仕事がなくて役所へ帰つて来ては甚だ縁起が悪いというのです。どうしても縁起に仕事をしなくちやならんわけで、人相がちよつとおかしいとか、或いは風附がどうもちよつとおかしいという人を捕えて来て、とにかくその日の仕事始めとする、正月の初捕りという言葉日本にあるくらいです。そうしてこれは封建時代言葉です。福沢諭吉はそういうことを心配したかも知れないが、今日はもうないとは先生もおつしやらないと思うが、如何でしよう。そういう伝統があるのです。フレーム・アツプ、この間も海野普吉さんがラジオを通じても言つておられました。その如何にいわゆる情報屋の情報というものによつて日本の情報警察といいますか、祕密警察といいますか、そういうものが動いているかという一つの例を挙げておられる。我々の聞いたところによれば、特審局長の犬が毒殺せられたと、これは成るほど破壊分子がそういうところまで行つているのかと、僕は吉河君に非常に同情した、さぞかし気持が悪いであろう、あとから聞けばそれは肺炎で死んだのだという話であります。(笑声)これは恐らくは噂話に過ぎないでしよう。併し私は笑えないものがあるのです。法務総裁もおありになるだろうと思います。労働組合のメンバー、或いは政党のメンバーでありましても、若い人もおりますよ。随分思慮の足りない人もある。その人に向つて挑発いたしますれば、それは瓶の中にガソリンくらい入れて火をつけて投げるくらいのことはやるかも知れない。そういうことをやつてフレーム・アツプをやり、或いは挑発をやるというふうにして起る場合に、成るほど或る政治団体なり労働組合なり何なりが、ここに言うところの破壊活動というものをなすかも知れない。然らざる場合には、さつき申上げたようなよくよくの場合、政治家が手段尽きて、而もその信念のために武器をとるという場合しかあり得ないのです。そうでないとするならば、今度第二の場合ですが、一定の団体を包括的な認定によつてそういう破壊的団体であるとすることなんです。この包括的な認定がこの法律案の主体をなしており、これが如何に問題であるということは伊藤委員が各条項について指摘された通りです。そうして、想像するところによれば、恐らくは共産党解散せられ、或いは「アカハタ」が発行停止をされるのです。そうして、仮にこの目的を達して共産党が全く絶滅せられたと、根絶せられたという場合に、公安調査庁は潔く解散せられるでしようか、消滅するでしようか、これは法務総裁もよく考えて頂きたい。決して解散しないと思います。日本官僚伝統の上に立つこの公安調査庁は決して解散しません。その次の仕事を探しますよ。正月の初捕りを始めるのです。その次に何をやるかといいますと、必ず社会党をやります。或いは我我をやります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これは過去において行われたことであり、決して今後行われないとは限らない。そうして、今ノーノーと言つておられる自由党にまで最後には及んだことは、決して過去のそんなに遠い、一世紀も二世紀も遠い話ではありません。特高警察共産党をやり、社会党をやり、そうしてそのあとにやがて元の政友会、民政党にまで及んで、遂に大政翼賛会を作つた。これは論理的にそうならざるを得ない。官吏自分のやつておる仕事がなくなつたと、これは大変喜ばしいと、今度自分は八百屋か魚屋か正業について一生を送ろうというふうには思わないのです。そうではなくて、これは次に仕事を探さなければならない。これは決して現在の官吏の個人を侮辱しようと思つているのではない。法務総裁も御同感であつた通り、どうかしてこの官僚主義から脱却したいという唯一の動機から、唯一の憂慮からこの際申上げておるのです。お笑い下さるようなことであるならば、私は実に嬉しいのです。併しながらそうでないからこの点を申上げておる。そうして、今申上げたように破壊活動というものはあり得ないのですから、これをでつち上げるか、挑発するか、そうでなければ次々と拡大して行く。この拡大することのもう一つの必然性には、先ほども申上げましたように、共産党なら共産党を圧迫すれば非合法になる、非合法になれば秘密活動になる、秘密活動になればどこへ行くのかわからない。そうしてこれはアメリカの場合にも最近起つておることですが、その共産党なり、或いは禁止された団体なりが、或いはそれと類似の団体が印刷物を出して、そうしてそれを郵便によつて送りつける場合があります。法務総裁のお手許などにもそういう郵便が来るかも知れない。それから又そういう郵便の宛先のリストがそういう団体にあるかも知れない。そこでそういう団体を尾行し、或いは張込みを行う、或いはそこに乗込んでそういうリストを公安調査庁が手に入れられれば、そのリストに載つておる名前は、左藤義詮君のような政治家のところにも必ずそういう新聞は来るだろうと思う。そういう人々の名前は、そういうリストの上から公安調査庁の重要な資料として、その上に調査が行われるのです。そうして恐らくは左藤君なり何なりの場合には、これはそういう疑いの全然ない人だということが調査の結果わかるでしよう。併しわかるまでの間は、あなたの人格は侮辱されるのです。こういうことが起り得ないということを、法務総裁は良心に基き、政治責任に基き、国会における証言の責任においておつしやる、とができましようか。而もそういうことが起る虞れが多分にあつて、或いは多分と申さなくてもよろしいです、多少なりともあつて而もその破壊活動というものは実際ない。或いはあるとしても、これを絶滅することはできない。こういう法律案がどうして堂々たる法務総裁によつて国会に提案され、国会を通過することができるのでしようか。今申上げたことが間違つておるのでありましたら、どうか教えて頂きたい。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 本案に規定いたしましたような暴力的破壊団体の私はないことを希います。併しながら遺憾ながらそういう危惧の念を抱かざるを得ない事実があるのでありまするから、この法案を提出した次第であります。  只今官吏のことを縷々お述べになりました。私はこういう考えを持つておるのです。官吏といえども人であります。人である以上は神様でないのであります。神様でない以上は過ちもありましよう。これはお互いに寛容の態度を以て臨まなくちやならん。私はこれは民主政治根本をなすものだと考えております。お互いに寛容の態度を以て臨む。お互いに一つの欠点があれば、それを突つき出してこれを攻撃するというようなことでありますれば、決して平和の社会は私は作られることはできんと考えておる。官吏であろうと誰であろうと、お互いに寛容の態度を持つて行きたい。私は民主政治根本をなすものだと、断じて疑わないのであります。これは余談になりますが、今日学生と警察官の対立、非常に私は歎かわしいことであると思う。なぜもう少しお互いに寛容の態度を示すことができないのであろうか。お互いに日本人であります。いや世界の人類であります。人類がお互いに手を取り合つて平和の社会を建設することがどうしてできないでありましようか。この寛容の態度を失つてこそ、私は今日日本治安が乱れて来るのじやないかと私はそう考えておる。実に歎かわしい、徒らに攻撃することはおやめ下さい。我々も官吏の悪いところは十分これを是正して行きたいと考えております。これこそ本当に私は手を繋いでやるべき事柄だと考えております。寛容の態度でお互いに許し合う態度、欠点があつたならばお互いに気持よく許して、そうして手をとり合おう、これが我々の気持であります。我々が官吏の監督において行届かないという点もありましよう。併し我々はこれは誤まらしめないように最大の努力を今後払つて行くつもりであります。どうかさような気持において今後この法案の実施について十分我々も最高責任者として万遺漏のないように、併し神ならぬ人間でありますから、欠点もありましよう。許すことの頂ける過失は許して頂きたい。どうかさような気持で以てこの法案の実施を見て頂きたいと、こう考えております。
  19. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法務総裁の只今おつしやるお気持はよくわかります。そうして私個人としては官吏諸君に対して感謝こそすれ、一つの恩怨を抱いておるものではない。過去において私自身が警察において糾問を受けた、場合によつては拷問を受けた人々に対しましても、その人が正業につかんとする場合に、私はそれを援助しております。今おつしやる点については、その点全く同感であります。併し法務総裁は私の質問にはお答えになつておりません。それから又国会議員行政権を信じて、そうしてこれにいろいろなものを持たせるということは、職務の怠慢とならざるを得ません。この点は法務総裁も御了解下さつているのだろうと思います。只今のお諭しは有難く頂戴いたしますが、併し我々の職務の上から申上げなければならないことはよくお聞取り下すつてお答え下さるようにお願いをいたします。私は個々の条文については重ねて伊藤委員に対して政府側から正式の御答弁があるのだろうと思つておりますから、重要な点についてでありますけれども、私からその点について質問をすることはこの際避けます。どうか早く伊藤委員指摘せられた点で、委員ことごとくでありましよう、非常な不安を感じている点については、政府意見を統一せられて、早くこれらについて答弁をなさるべきであろうと思います。今申上げる点は法務総裁お答えにならないのは、或いは大変失礼かも知れないが、悲鳴をお上げになつているのじやないかというふうにも窺えるのです。さつき申上げましたような破壊活動というものはあり得ない。若しそれがありとすればこれを作るのである。法務総裁乃至その他のかたがたも、よく毎日の新聞に報道せられておるガソリン壜の投込みだとか、或いは何であるか、一ああいう破壊活動を放置していていいのかということをよくおつしやいます。私はそれに対しては、法務総裁として二つのことを考えて頂きたい。一つは新聞に報道せられるようないわゆる破壊活動というものの中に、たとえ一つでもいわゆる挑発によつてつたもの、或いはでつち上げによつてつたもの、これは過去の日本においてはよくそういうようなことがありました。法務総裁も御承知でしよう。政府が或る一つの法律案を国会に出して、それを通そうと思うときには、如何にもそういう法律案が必要であるようなことを新聞に書いてもらう。そういう。プレスキヤンペインをやる。そうすると国会議員はそれを読んで、成るほどこういうことがある、これは大変だ、それじや成るほどこういう法律案が必要だということを感じた事実は法務総裁もお気付きになつているのだろうと思います。又そういう事実はまだ一遍も聞いたことはないとはおつしやるまいと思います。現在この破壊活動防止法案に対して、その直前にしばしば新聞に報道せられ、我々の心を痛ましめたようなああいう事件のたとえ一つでも、挑発によつてつたものかある、或いはフレームアップによつてつたものがある、或いは今申上げたようにこの法律案を通すために国会議員の認識を誤まらしめるためにそういうものを新聞紙上に掲げたものがあるということかあつたら、これは大変なことです。この点は法務総裁も十分お考えを頂きたいと思うのが第一です。  それから第二にお考えを頂きたいと思いますのは、これは五月十八日でしたかのサンデー毎日にカリシヤアという外国の通信員が書いております言葉に、日本警察国家になるよりも煉瓦の二つや三つが飛んで来ても自由な国であることのほうが我々には喜ばしいというように考える。これは外国の人にとつて喜ばしいばかりじやないのです。我々日本国民にとつて日本警察国家になるよりも、煉瓦の三つや四つ飛んで来ても自由な国であるほうが有難い。法務総裁もこれは御同感だろうと思う。煉瓦が二つや三つ飛んで来たからといつて自由を制限し、直ちに警察国家ができるとは言いませんが、それに向つて第一歩を踏み出すというようなことは政治家としてとるべきじやないと思いますが、今の二点については法務総裁はどうお考えになりましようか、そういう点についても考えておるというお答えでしようか。いやそういうことは全然ないというお答えでしようか。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々は警察国家の再現は許すべからざるものと考えております。さようなことがあつてはいかんと思います。私も煉瓦の二つや三つ、ピストルの二つや三つならば驚きません。さようなことで日本国民も驚くべきものじやないと確信して疑いません。さようなことについてのこの法案ではない。私の一番心配しているのは、要するに暴力を以て日本民主主義政治を破壊せんとする、さような団体について憂うるのであります。又さような行為について憂うるのであります。先ほど羽仁委員から共産党が撲滅すれば社会党が又この法案に引つかかる、社会党が撲滅すれば改進党がこの法案に引つかかる、改進党が撲滅すれば自由党が引つかかつて来る……。私はさようなことは毛頭考えておりません。社会党だつて堂々たる政党であり、改進党も堂々たる政党であり、自由党も同様である。お互いに民主政治を行うことに努力しておる政党であります。その政党がこの暴力破壊活動をやろうなんということは夢にも思いません。さようなことがあつてはならん、決してさようなことはあり得ないと私は断じて疑わないのであります。ただただ暴力によつて民主政治を破壊するという団体があることを我我は懸念しておる、それが日本民主政治建前からいつて許すことのできない、これはどこまでも規制して行かなければならん、この一念であります。どうぞ誤解のないようにして頂きたいと考えております。ただこの法案運用につきましては、いろいろの御疑念もありましよう。併しその点については我々はこの法案自体からしぼるだけしぼつて、さような憂いのないように努力したつもりであるのであります。又実施の暁におきましても我々はその点について十分の考慮を払いたい、こう考えております。
  21. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 どうか今最後におつしやいました運用の上において我々が抱いておる心配に対する同情それを法文の上において現わして頂きたい。運用に任せるということは国会議員としてできるだけ避けなければならないことで、運用上の心配があるということを御同情下さるならば、そういう心配を防ぐために、法文の上において現わして頂きたい。どれどれの条項がそうであるかということは伊藤委員からすでに指摘せられております。この改進党或いは自由党が破壊活動法案に引つかかるようなことは絶対にないということは、いささかお言い過ごしじやないかと思います。私も勿論予言をするつもりはございません。併し例えば仮に、来るべき総選挙において自由党が再び絶対多数を得られる、そうして再び現在と同じ政策を続けて行かれる、それはいいでしよう。それから又四年経つて又総選挙が行われて再び絶対多数を得られて同じ政権を続けられて行く、私はそういうことを希望するのですが、併し反対党のかたがたが若しも同一政権が余りに長く政権を維持して行くために、国民が苦しんでいる、何とかこれを救わなければならない。今のはちよつと例が悪いかも知れませんが、戦争前の東条内閣のようなものが続いているというときには、法務総裁が御同情を寄せられるであろうような政党といえども、この東条内閣を倒して国民を救わなければならない。そのためには一身の危害というものを顧みない、武器をとつて起たなければならないかも知れないということは、私はあり得ることであろうと思うのです。これはそういうことは絶対にないということは私はないと思う。この点について重ねて御答弁を頂くのではないが、さつきの点についてお答えを頂いておきたいと思いますが、如何でしよう。運用の点について我々の心配があることを御同情下さつておるその点を、どうかこの法の条文の上においてそうした御心配を除くように御努力を願いたい。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 十分に御審議をお願いいたしたいと考えております。
  23. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この法案の背後に何が隠れておるかということについては、もうすでに大体申上げたのですが、その背後に隠れておる最も恐ろしいものは、昨日も申上げましたが政治上の責任をとらない力が政治上の支配を行うということです。その片鱗の一つが例えばこの法律によりまして、破壊活動があつたものとして解散をせられて、それに対する裁判に、後日無罪というふうになつた場合にも、その前にとられた行政処分というものは有効であるというふうに関次長からお答えがございました。恐らくこれは政府の見解だろうと思う。これは一体その場合には、その先はどうなるでありましようか。その点を伺つておきたいと思います。
  24. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その先は二つあるわけであります。一つはこの規制処分自身についての訴訟が又裁判所に出るわけでありますが、それに対する訴訟により、或いは違法の処分として取消しが行われる、或いはその反対の場合もありましよう。そういうことが一つあります。もう一つは、これは国会その他国会を背景として国会を通じての、或いは又直接の国民の輿論と申しましようか、その方面からの政治的の批判の問題、この二つであろうと思います。
  25. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はそういうことを伺つているのじやない、法律の専門家でありませんから、法律上の問題を細かくどうとかいうのではないので、実際の問題としまして、これは法務総裁考えて頂きたいのですが、或る一つの政治団体、或いは或る一つの労働組合を作る。これは伊藤委員からも法務総裁に重ねて御発言がありましたが、或る一つの政党を作り、労働組合を作り、一つの団体を作るということは容易ならんことです。非常に苦心をして宣伝をし、活動して、それこそ山野を跋渉してその政党を作る、或いは労働組合の一つの組織というものも容易ならない苦労です。そうしてできましたところの団体或いは新聞の場合でも同様です。朝日新聞といい、読売新聞といい、毎日新聞といい、その名前を以て発行されて来るところの新聞、同じ意味においてアカハタでもそうです、アカハタという名前を以て発行されて来る新聞、それが一定の読者を得るまでにはなみなみならない努力がなされているのです。それが六カ月の活動停止になり、或いは解散をせられるということについては、法律上は今佐藤意見長官のおつしやる通りです。併しそれに対する政治上の責任はどうなる。これは伊藤委員からもこの間御発言がございましたが、例えば特審局という政治上の責任を負うことのできない、いわゆるパーマネント・ビユーロー・クラツトの判断によつて国会議員がその不法なる行為があつたものとして追放される。これは法務総裁よく考えて頂きたい。国会議員というものは伊藤委員のお言葉を繰返すまでもなく、国民の投票によつて主権在民の原則によつて国会に選出されておる人です。それを政治上何らの責任をとることのない、いわゆる常雇いの小役人、その判断によつて追放してしまう。それはあとで裁判か或いは検察当局においてさえ有罪とは考えない。それでそのあとは今そのままになつておる。私はこういうようなことが法務総裁政治的責任において、又御良心において、あつていいことだとお考えになつておるのでしようか、如何でしようか。
  26. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今労働組合の問題が出ましたが、労働組合を結成するについてはなみなみならぬ苦心もありましよう。容易ならんことは私はお察しいたします。併しながら労働組合がこの法規によつて規制されるというようなことは、私は思いも寄らんことだと考えております。断じてさようなことはないと考えております。この法案対象となるべきものはもうしばしば繰返しましたように、要するに日本政治組織を破壊したり、或いは政治上の自分意見を推進するために暴力を以てやる。議会を通じてでなく、暴力を以てやる。こういう組織団体を規制しようとするのである。即ち労働組合なんかはこの対象にならんということを申上げたいのです。若し仮に労働組合の名を使つておるものがありとすれば、それは本来の労働組合ではないのです。ただ名を使つておるだけに過ぎない。本来の労働組合はかようなことをなすというようなことは、想像だに私はしていないのであります。従つて法案対象となるべきものじやないと思う。要は日本民主政治を破壊しようとするような、さような暴力的破壊団体を規制するということにあるのであります。仮に今さような団体が規制にかかつて、そうしてその結果そういう団体じやなかつたという場合における政治責任はどうか。それはその当該取扱者については政治上の責任がないとは言えない。その如何にして政治上の責任をとるかということが、具体的の事象に当つて考慮すべき問題であろうと、こう考えております。
  27. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の申上げておるのはその官吏をどうこうするというのじやない。そういう体系ですね、そういうシステム、それはナチスのシステムだつたということを申上げておる。関次長の御説明の中にこの公安審査委員会でありますか、この委員会が決定したことは、あとで裁判して無罪になるなんということはあり得ないという御説明がありました。又これは必ずしも関君の言い間違いばかりではないでしよう。法務総裁も大体そういうふうにお考えになつておるだろうと思うのです。それだから今のようなことは起り得ないということだろうと思う。で、一昨日、昨日伊藤委員からの御質疑に対して、佐藤意見長官からもしばしばお答えになつておるのですが、行政権責任を負うべきことは行政権責任をとるべきで、それを司法権に委ぬべきことじやないということをお答えをしていらつしやるようですが、それを今一々言いませんが、これを引つくるめて法務総裁考えて頂きたいのですが、成るほど行政権責任を負うべきものはあります。そんなものはないというのではない。併しながらナチスは一体どういうことをやつて来たかということも、我々が十分考えてみなければならない。その一つは二つの方法で大体ナチスの体制というものはできた。その一つは、この行政の責任というものを、これは或る意味においてヒトラー自身といえども、又ナチスの党員といえども、愛国の至誠から職務に熱心から、佐藤意見長官と同じように、法律上できることはことごとく尽してやつて治安維持したいという誠心誠意から来たのかも知れない。そうしてこの行政権が次第に司法権の中にまで入つて行く。その入つて行く場合には司法処分ではない、行政処分だ、或いは犯罪を直ちに検挙するというのではない、予防するのである。或いはそれを取締るのじやない、任意調査をやるのであるというような形から行政権が次第に司法権の中に入つて来る。それでもドイツにおいては、さすがに我々が現在努力している以上に、当時のドイツの裁判所や、ドイツの国会議員や、或いは学者はこのナチスのこうした努力に抵抗したことは佐藤さんもよく御承知通りです。そうしてできるだけ司法処分に持つて行くという、丁度一昨日、昨日伊藤さんが言われたような議論を以てこれに抵抗して行つた。それでナチスの場合には、止むなく残つて司法処分に行つた者に対しては今度はどういうことをしたか。よく御承知でしよう、裁判官の中にナチスの党員を入れて行つたのです。そして裁判官の中にナチスの党員が多数を占めるような法制を講じて、これによつて政治上の反対者というものを断罪して行つた行政権が次第に司法権の中に入つてつたことが一つと、いま一つは行政権が立法権を強制して、……私の言葉は専門的にはおかしいかも知れないが、言つていることはどうか了解して頂きたいと思うのです、強制して立法によつて罪を作つて行く。で、刑法というものは別に罪を作つてそしてそれを罰するものではない。社会がこれを犯罪とみなし、従つてそれによつて罰せられた場合には納得する。それに対する刑罰を私は規定しているものだろうと思う。ところがこのナチスのやつたやり方はそうではなくて、新らしい罪を立法によつて作らせる、そういう方法によつてつて来た。で、この破壊活動防止法案というものの中に、私は同じことが、その第一歩が、或いは法務総裁なり意見長官なりは決してその第一歩じやないというふうにおつしやるかも知れませんが、それならばそれに幾分でも似ているようなことが行われていないでしようか。即ち一つは行政権が司法権の中に入つて行く。これを意見長官はなかなかお上手に、反対だ、司法権に対して行政のなすべきことをなさするはこれ即ち三権分立の崩壊であるとか、或いは三人か四人の裁判官に治安責任を負わせることはこれは適当でないとか、これも三権分立の破壊であるとかいうことをおつしやつているが、これは私は法律上そういうことは言えるのかも知れない。併し僕はあなたと法律論をしようと思いませんが、私は良心ある国会議員として、この法律案に現われているようなそういう傾向に非常な不安を抱く。又輿論もそれあればこそ不安を抱く。法務総裁は、労働組合はこの法律では絶対にひつかからない。そんな虞れはないとおつしやつている。これはどうか労働組合の気持考えて頂きたい。労働組合のことは労働組合が一とうよく知つております。この法律についてはあなたが一とうよく……政府がよく御承知かも知れない。併しながら労働組合なり、或いは政治団体なり、或いは新聞なりが、法務総裁はまさか単なる誤解によつて反対をしているというふうに御判断なさるべきじやないでしよう。今日の日本の新聞、今日の日本の労働組合、今日の日本のさまざまの政治団体、或いは日本学術会議、或いは日本弁護士会、こういうようなかたがたが、全くこの法律がよくわからない、誤解して、それで無益な心配をしているのだというように法務総裁はお考えでしようか。まさかそういうことはおつしやるまいと思う。労働組合のことは労働組合が一とうよく知つています。又新聞のことは新聞が一とうよく知つている。そういうことを申上げたくありませんが、労働組合で多年苦労して来た人、新聞で多年苦労して来た人が抱いておるところの心配に対しては、法務総裁は堂々とそれに対して反省なさるべきじやないでしようか。この二つの点については法務総裁並びに佐藤意見長官はどうお考えになつておられるか。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は十分この法案の内容、又狙つておるところは何かということを理解されれば、さような危惧の念は一掃されるものと考えております。まだ十分の我々の努力が足らない、こう考えておるのであります。この法案の狙いは、もう繰返して申上げました通り、全く日本民主政治を破壊しようとするような暴力主義団体を規制し、それに附随しての刑罰補整であります。これはおよそ正常なる組合活動や新聞活動を規制して行こうという意図はないのであります。それらの点については十分私は理解でき得られるものと考えておるのであります。
  29. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の先般来伊藤委員お答え申しました筋は、行政権と司法権との関連に関する考え方はナチの場合と違いまして、私はナチの場合は、あれはあるべき憲法の姿を歪曲した姿でありますから、変則のことだろうと思います。私の申しますのは、今日本憲法のある、本来の日本憲法の姿を前提にしてこれに基いて申上げておるわけでありまして、その意味でこの行政権と司法権の限界ははつきりしておる。司法権というものの独立は、これは私自身飽くまでも尊重し且つそれを護持して行かなければならないと思います。その場合にこの政治上の責任を批判され追及されるような種類の仕事を司法権に負わせるということは、結局今お触れになりましたように、政治上の問題でありますから、だんだん世の中が変つて、或いは内閣が変つて参りますというと、自分の思うような政治的処分をやつてもらうために、人の入替えもやりたいという欲望を生じて来るだろうと思います。又国会としてもそういう点について批判をしなければならないというわけで、裁判所に対する国会の一種の批判権というものを主張されることになると思います。そうなつて来ると結局落ちついて来るところは司法権の独立が失われることになりはしないか。それを抑えて、今の憲法ではそこのけじめを私ははつきりときめておるのだろうと思います。
  30. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法律で罪をこしらえる、立法によつて罪を規定してもらうということはどうでしよう。
  31. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今のお話はよくわかりませんでしたが、過去に行われた行為について新たに罪を規定してそれを遡及して処罰するということに仮に御趣旨があるならば、これは今の日本憲法においては明らかに明文を以て禁止しておるところであります。
  32. 伊藤修

    伊藤修君 そういう意味じやないのです。そうじやなくて法律によつて新らしい罪を創造して行く、そういうことはやるべきではない……。
  33. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは法律を以てそのときそのときの事態に即応して、どうしてもこれは罪として処断しなければならない、これは国会が立法機関として御認定になる場合はその法律によつて処罰の処置を設けたり、又その必要がなくなつたと御判定になればその廃止の措置をおとりになる、これは当然の措置だろうと思います。
  34. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の質疑に対する法務総裁並びに意見長官の御答弁については各委員並びに輿論の判断に委せます。であとの時間は……。
  35. 小野義夫

    委員長小野義夫君) もう大体時間のようです。まだ十分ぐらいありますな。
  36. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは以上私は要するに、決して破壊活動をなそうとする団体を擁護しようと思つて政府の反省を求めているのではないのです。ただ一つ憲法を守つて行かなければならないと思うからであります。基本的人権を守つて行かなければならないからであります。どうか法務総裁はこの破壊活動をなすかも知れないところの団体というものに対する御心配、又煉瓦が三つや四つ飛んで来ても、ピストルが二、三発鳴つても驚かないという気持だということをおつしやつて下さつたので私は安心しましたが、そのお気持において、眼前に起つて来る二、三の問題ということだけに局限せられて基本的人権の制限、いわんや政治活動の自由、新聞の自由、労働組合の自由というものに対して重大な脅威を、おびやかしを与えるものではないかというようにそれらの団体が深く憂慮しておる法律案について更に御反省を願いたいと思うのであります。  なお以上の点に続きまして、私は先日本会議において続いて二つの問題を質疑をしておきましたが、それについて法務総裁からお答えをまだ頂いておりませんので、それについて更に重ねてここで申上げておきたいと思う。で一つは、いわゆる団体取締ることができるかどうかという問題です。でこれは伊藤委員からもこの点について本会議で御質疑がございましたが、今時間がございませんから詳しく申上げられません。そして又お答えは恐らくこれは団体刑罰をしようとするものではないのだ、いわゆる行政権内で許されることを取締りをしようとしているのだというようにお答えになるでしようけれども、私そういう点を法務総裁考えて頂きたいと思うのではないので、もつと根本的にこういう法律案というものに、団体取締るという考え方の第一歩が出て来るのじやないか。即ち全体主義の第一歩が出て来るのじやないか。専門家に逆に説法をしませんが、佐藤君もよく御承知のように、犯罪というものは個人的なものであるということは、近代憲法原則であります。パーソナル・インデビジユアルなもの、さればこそこの間本会議でも申上げましたが、先ほどのニユールンベルグの国際法廷においても、日本国とかドイツ国とかという団体を規制しようという考え方はとられない、そこにおける個人の責任がとられた。ところが政府は又いろいろ株式会社とかそういうほうでこの団体解散ができるとか何とかいうことを以て御説明になるようですが、これは法務総裁佐藤意見長官も、国会でそういう御答弁をおとりになる、これは速記にも残ることですから、世論が判断をし後世が判断することですから、それは似たような問題ではないということをどうかお考え下さつてその点を考えて頂きたい。  続いて時間がないから申上げますが、私はこれは哲学的に申上げるようなことになるのですが、個人の思想というものは取締れない。これは法務総裁よく御承認下さる、或る意味において団体というものは社会の思想のごときものだと私は思うのです。個人の頭の中に入つて行くことができないように、社会において団体の中に入つて行くことはできない、事実。これは詳しく論拠を申上げませんが、その点についていやそんなことはないとか、お前の言うことは筋が通つていないということはどうかお考え下さらないで、成るほどそんなこともあるかも知れないというふうに考えて頂きたい。  それからもう一つは、従つてこの団体の後継団体とか或いは後継紙というものを取締るという考え方は、私の一個の人間としての考えから考えまして実に残酷な考えですよ。これは個人の場合に比較しますれば、親を死刑にし、そして同じ目的でその親から生れて来る子を死刑にするということです。アカハタの後継紙だからとい、つて特審局はぞくぞく発行される新聞を次から次へといつまでやるつもりか。これはよくよく考えてみれば私は親を死刑にし、罪なき子をも死刑にするものだ。後継紙がどういうことをするかということは暫く見ておつたらいいじやないか、その子がどういうことをするか。これは法務総裁もよく御承知だが、レーニンはその兄が無政府主義者として死刑にせられ、そしてその弟として成長し、そして遂にあのロシア革命というものを成功した。私はこの法的になし得ることならやつてもいいのだという考え方ですね、そうして今法律案に現われているような考え方は、丁度ロシア革命前におけるロシアがやつていることで、これは皆さんもよく御承知かも知れないが似ているのではないか。特審局、公安調査庁という模範はアメリカに求めるよりも帝政時代のロシアにお求めになつたほうがよろしい、そういうものをお作りになりたいなら……。併しそういうものをお作りになつた結果はどうなるのか。団体の自由な活動、新聞の自由な活動ということのみによつて救われるものであるのに、それが救われなくなる結果は、実は革命がそこに発生して来るのではないか。これは日本新聞協会から頂載した資料の一つに、これはホルムス及びプランダイス氏の意見に、秩序はその破壊に対する刑罰のみでは確保されない、革命によつて独立を克ち得た米国民は臆病者ではない、救済手段は言論であり、沈黙の強制ではないということを述べておられる。これらの、今この法律案の通過を熱心に希望せられる政府といえども反省せらるべき点があるのではないかと私は思うのです。  それから最後の第三の点は、この法律案が濫用せられる虞れがあるという程度では私はないと思う。私の考えが間違つておれば幸いであるが、私がこの法律案を研究しました結果から得た結論は、この法律は必らず濫用される必然性を持つている。(「その通り」と呼ぶ者あり)その理由は、法律が濫用されないための保障が幾つかございます。その保障をこの法律案は全部取払つてしまつているからです。夜家の戸閉りをこぢあけて家の中に入つて来た人は、それから泥棒を始める慣れがあるのではない、戸閉りを外して中へ中つて来た人は、泥棒を始める必然性がある。これは法が濫用されないために民主主義の基本において立てられておるところの幾つかの原則がある、その原則を実に一つ一つ外して、そしてこの法律案をお作りになつた、従つてこの法律案は濫用される倶れがあるのではない、必らず濫用される、その保障とはそもそも何であるかと言えば、第一には三権分立の根本原則である。これは刑罰でないから、行政権だからといつて逆にこれこそ三権分立を守るものだという意見長官の御意見は、法律は悪魔の言葉としかそれは聞こえません。本質的にこの法律案は三権分立を紊すものである、而も三権分立の根本たる主権在民を紊すものです。国民のなすところの政治活動国民のなすところの言論活動国民の発行するところの新聞、それに誤ちがあつた場合にこれを直すものは同じ政治団体、労働組合……、法務総裁は、労働組合にあらざる仮面を被つた労働組合は罰していいんだ……。そうじやないんです、そういう労働組合はほかの労働組合が消滅させるという方法しかないのです。そういうことをさせず、そうしてそういう文書を所持しておるということにまで立至つて国民がそういうさまざまの問題についての十分の情報を得ることをも妨げる、国民に十分の知識を与えない、国民が最後に判断をするのだということを、意見長官法律的に最後にはそうなるから心配するなというお考えのようですが、それは併しながらそれを私は了承しません。この法律案は形式的にそうなつたかも知れませんが、併しながら要するに官吏国民のなすところについてこれが善である、これが悪である、こちらに来たる者は生活さしてやる、そちらに行く者は生活させないという考えです。福沢諭吉が言つたように、どうして我々国民は税金を出して官吏を雇つて、その官吏に我々は如何に生くべきかを判断してもらわなければならないのか、その点です。第二に、第一のこの保障が取払われてしまうならば法律は必ず濫用されます。いわんや官民のそのバランス法務総裁もお認めになつておるようにまだ健全なるバランスがとられていないんです。第二に濫用されないための保障というものは、その法の規定するところが極めて明白でなければならない、包括的な認定というようなものを許してはならない、官吏に認定というものを委せるということがあつちやならないということは、これは近代の法の命ずる原則であり、これを外してしまうならばこれは必ず濫用される。第三に眼前に明白な危険が迫つているのでなければならない。今日日新聞に載つている火焔瓶を投げたりするのがその危険だというのが法務総裁意見だが、煉瓦の三つ四つ飛んで来たり、ピストルが二、三発ぶつ放されることが眼前の危険だとは考えていない。そうでなくして、この政治団体として、或いは労働組合として、或いは言論機関として破壊活動をなそうということが眼前の明白な危険として迫つているのではない、それがないのに基本的人権を制限しようとしている。これは明白に民主主義根本原則の破壊である、以上三つだけを挙げましてもすでにおわかりのように、そうして而もそれらに附随して一つ一つの条項において、例えば伊藤委員がすでに縷々述べられましたように、個々の条項においても、至るところ主権在民の原則を覆えし、官吏国民を支配する、而もこれは祕密の支配をする、そういうことを可能ならしめておる。こうした民主主義的な原則、法が濫用されないための一つ一つの掛金というものを悉く外してここに立上ろうとしておるところの権力は、濫用される虞れがあるのではなくして、必ず濫用される。私は後世がこれを判断すると思います。併し今国会議員として、これは各党各派を問わず、法律的良心、政治的責任というものを感ずる人々は、こうした法律案というものに賛成を躊躇せられることが当然だと私は考えます。治安根本的な原因というものは要するに貧乏と病気にある。トルーマンもそう言つているし、我々もそう思いますよ。政治家として先ず第一になすべきことは、貧乏と病気とをなくすることです。日本にもう貧乏で働こうと思つても働けない人が一人もない、病気で病院に入れない人は一人もない、それでも破壊活動をしようとする人があれば、世人もそれを憎むでしようし、その法律を納得するでしようし、その法律も適正に行われるでしよう。併し法務総裁も、私は決して何もそうした社会政策社会保障というものの完璧を希望しているのではありませんが、併し輿論の見るところから見ても、現在の政府がその点について或いはいま少し努力をされることによつて真実治安維持できるのではないかと考えていることも、法務総裁はお認めに相成るのじやないかと思います。これらの点について法務総裁は十分お考え下さいましようか、如何でしようか。
  37. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 羽仁委員はいわゆる日本憲法の擁護という建前から議論するのだという前提に立つております。我々も日本憲法を護るためにこの法案を提出した次第であります。勿論思想には思想を以て対処しなければならんということはお説の通りであります。団体は或る思想を表明しておるものであるという御議論も、誠に然りであります。私もそう思います。併し或る思想の実現において、暴力的にこれを実現させようということになりますると、これは問題であろうと考えます。私はどこまでも民主国家においては、暴力を否定するものであります。先刻も申上げました通り言論については言論、思想については思想で相対しまして、ここに一つの妥協点を見出して行くということが民主政治あり方であろうと存じます。言論に対して暴力、思想に対して暴力というふうなことは、絶対に民主国家においては否定せざるを得ないのであります。この意味において、我々は暴力を排撃しなければいかんと考えております。一つの政治主義を主張するについても、これは大いに言論或いは出版においてこれを主張すべきである。もつと手取り早く申せば、根本的に議会を通じてこれを推進し遂行すべきであると思つております。いやしくも政治上の主義主張暴力によつて遂行するというようなことは民主政治あり方において絶対に否定しなければならないということは、確信して疑いません。我々はどこまでも平和論者であります。この地上から暴力を絶対に取り払いたいというのが念願であります。この意味においてこの法案の狙いがあるのであります。背後に何らの狙いはないということを申上げたいのであります。ただこの法案についての運用にやや御疑念の点がございます。いわゆる三権分立論を承わりましたが、佐藤長官の意見は私はもとより同感であります。これは日本治安維持は行政政府がこれは律して行くべきであるし、その責任を負わされておるのであります。第一次的に行政政府がさような処置をすべきである。これが争いになつた場合に初めて三権分立の建前において裁判所が処理する。或る団体解散させるかしないかということをいきなり裁判所でやるということは、これこそ三権分立の精神に違反すると思います。我々は三権分立を擁護する意味において、先ず第一次的に日本治安維持責任に当るべき政府が先ず措置をする、その行政措置に対して不服がある場合に初めて裁判所がこれに対して適宜の処置をとる、これが三権分立の建前であるということを確信しておるのであります。この意味において、佐藤長官の意見は全く同感であります。佐藤長官は決して法律の悪魔でなく、私は善魔であると考えております。(笑声)
  38. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 時間がありませんから、簡単にお願いいたします。
  39. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のお答えでは、私のお伺いした私の心配する点についてのお答えではないので、非常に残念に思うのでありますが、政府治安維持責任というものは、これは佐藤さんにもよく聞いて頂きたいのでありますが、政府警察力を用いて治安維持するということでは私はないと思うのであります。治安維持責任は、国民をして楽しく幸福に平和に暮させる責任だと思うのでありまして、そのうちの一部分にその警察的な治安維持ということがあるのだろうと思う。併し曾つて治安維持法というものは、治安維持とは即ち人を引張ることだと、人をひつくくることだという考え方ですね。今の法務総裁のお言葉の中にもあつた暴力というものを憎むというお考え方は、私も同感なんです。併しその起る波立ちというものを全くなしに、これは福沢諭吉も言つておりますが、政府のやろうとしていることは、あたかも国民を箱の中に入れて空気の流通を断つて、それで傍らから窺つて、まだ生きているだろうかどうだろうかと言つて見ているようなもんじやないか。そういう意味において治安維持ということを了解されるならば、この法律案は実に立派な法律案でしよう。この法律案が通つた後には、日本はこれが完全に効果を発生するならば静かなること死のごとくになるでしよう。それを以て治安維持と言われるのですか、私はそうじやないと思う。政府治安維持責任というものは、国民をして食わせるということだろうと思う。その点について法務総裁意見長官、十分お考えを頂かなければならんのじやないか。私はそのために今まで御質問申上げて来たのです。勿論最近戦争が我々の心持を甚しく下劣にしました。併しながら政治上の敵というものは、法務総裁もよく御了解下さると思いますが、政治上の敵というものは政治上の方法を以て争うべきものです。政敵というものを縛り上げるということは、近代政治家のなすべきことじやないです。どういう立場であろうとも、政敵に対するには政敵の途を以てしなければ、真実治安維持ということはできないどころか、革命を誘発するだけです。こうして手をひしぎ足をひしがれた反対党は、最後に合法的に国会議員として国会で活動することもできない、新聞も発行することはできない、それならば残つている唯一の途は革命じやないか。そういう状態を導く法律案を出すよりも、こんな法律案まで出してでなければ治安維持ができない政府は、潔よくみずから退陣すべきです。日本政党は多くないかも知れないが、立派に交替してこんな法律案がなくても治安維持ができると考えておられる政党があるのです。こんな法律案まで出して、それで治安維持しなければならんというような政府は、みずから退陣すべきです。政府の交替ということは民主主義原則です。こういう法律案まで出して政権を維持しようとする政党自身のために、私は深く悲しみます。又法務総裁法律案まで出してでなければ法務総裁責任が果せないということでおありになるならば、むしろ節を汚されることなく、潔よくこういう法律案を否認せられて拒否せられることに遙かに敬意を感ぜざるを得ません。トーマス・ペインも言つている通りに、我々は我々の敵に自由を認めることをやめるということをしてはならない。敵に自由を認めることをやめることは、即ち自分に自由を認めることをやめる第一歩なんです。このトーマス・ペインの言葉は、決してもう時代が変つているとか何とかいう程度のものではございません。千古の金言です。敵の自由を制限する者は、即ち自己の自由を制限するものである。これらの点が法務総裁が今お答えなつたようなことで納得できないということは、御同情下さるだろうと思います。なお次の機会に、これらの総括的な原則に基いて個々の問題について伺つて行きたいと思います。昨日、本日申上げましたことをどうか軽々しくお聞き流し下さいませんで、十分お考え下さいまして後日の質疑お答えを下さるようにお願いをいたします。涙とともにパンを噛みしめたことのない人が、治安であるとか、政治であるとか、立法であるとかいうことを考えることは、私はできないと思う……、
  40. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  41. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて下さい。本日午前中はこれで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩    —————・—————    午後二時七分開会
  42. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を再開いたします。午前の委員会の決定により伊藤君に質疑を願います。
  43. 伊藤修

    伊藤修君 破防法につきましてはあとでお尋ねすることといたしまして、この際公安調査庁設置法案について二、三点お伺いしておきます。  この法案を拝見いたしますと、第十四条に「公安調査庁に、長官及び次長の外、公安調査官その他所要の職員を置く。」と、ここで初めて公安調査庁に長官があるということがわかつて来るのです。他の設置法の立法例を調べさせましたところが、例えば宮内庁法第二条によりますれば、同法において長官を置くと規定している。特別調達庁設置法第二条第二項においても水産庁設置法第一条第二項においてもやはり長官を置く。中小企業庁設置法第二条においても長官を置くと明示してある。只今の海上保安庁法第十条においても長官を一人置く。大蔵省設置法第二十七条第二項においても、国税庁の場合においては長官を置く、こういうふうに明示してある。然るに本法に限つては長官を置くという明示がない。或いはこれにつきましていわゆる国家行政組織法第六条の後段にあるところの長を以て当てるというような考え方とすれば私は立法体制として甚だ好ましくないあり方だと思うのです。すべてこの国家行政組織法第六条によつて、かような明示をしないというならば、いずれの法律にも明示しないほうがいいと思います。或る法律には明示し、或る法律には明示しないと、そういうまちまちな統制のとれない立法例はよくないと思う。その点如何ですか。
  44. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 誠に敬服いたしました。御指摘通りでございまして、現在は行政組織法の六条にさようなことがございますので、今日我々の立案いたしております設置法におきましては、只今御審議願つておりますこの公安調査庁と同じ形にいたしております。恐らく私どもはお挙げになりました違う例というので全部が全部と言い切る自信はございませんが、その大部分が今の行政組織法上の六条の条文がない前に出たものと信じております。従いましてあとの問題は、然らばこの際既存の、前に出たいろいろな設置法の書き方を統一したらどうかというお話になろうと存じますけれども、これは我々としては機会のあるごとに修させて頂きたいという建前でおるわけであります。
  45. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると最近の法律、海上保安庁の場合においてはどうですか。
  46. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 只今はたしか保安庁法という法案で御審議を煩らわしていると存じますが、それは恐らくこの形になつているはずでございます。
  47. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたは法案に眼を通していない証拠ですね。ちやんとこの形でなくして、長官を置くとはつきり書いてあるのです。あなたともあろう人が法案に眼を通さないのはよくない。
  48. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それはよく取調べまして、お答えいたします。
  49. 伊藤修

    伊藤修君 すぐ探して下さい。
  50. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) いずれにしましても、この形のほうが行政組織法との関連においてはよろしいように考えております。
  51. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの形のほうがよいという政府考え方が、立法体制として統一的なものがあるとするならば、海上保安庁のほうは政府みずから修正しますが、こちらが修正しますか、どちらでしますか。
  52. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) とにかく間違いではございません。でありますから私は強いて修正を……。
  53. 伊藤修

    伊藤修君 私は間違いとは言つていない。およそ国家法律というものは形を整えるべきであるというのです。あなたもかねがねそのくらいのことは常に御持論だと思うのです。そのときの思つきだけで法律を作つてはいけないのです。
  54. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) よくわかりました。結局字句の統一が不足ではないかということにつきましては、それは字句の統一上よろしくないという批評は免れないと存じます。併しながら私の申しかけましたのは、これは間違いではないと伊藤委員もおつしやつて下さるのでございますから、致命的な欠陥にはなり得ないと思うのであります。
  55. 伊藤修

    伊藤修君 致命的な欠陥というのではなくして、法律根拠というものは少くともかような重大なる庁の長官の権限基礎というものがどこから出て来るのかという根本的な争いも仮にあつた場合に、行政組織法上に基いて出るのか、或いは本法によつて出るのかということの観念がはつきりしないといけないと思うのです。行政組織法の六条の後段の表現を見ますれば、この表現だけで果して置くということが言えるかどうかということも問題ですよ。そういう疑義もあると思うのです。でありますから、行政組織法によつて、よるというならその解釈によつて一本に統一すべきであるし、そうでないなら各特別法において特別な設置法において置くということを表現するなら、それによるべきである。いずれかにしないと、どこに法律上の根拠を置いて、権限を持つか、持つところの長官が存在するのかという基本的な争いが出る場合があり得ると思う。よりどころを明確にする必要があると思うのです。
  56. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 間違いでないと申上げましたのは、実は今おつしやいます点に該当するわけでございまして、要するに国家行政組織法に「庁の長は、長官とする。」ということがございますから、第十四条の書き方としましても勿論間違いが生ずることはございませんし、今御指摘のような書き方の例によりましても、念のため長官を置くということが規定してあるのでございますから、疑問の生ずる余地はないと存じます。
  57. 伊藤修

    伊藤修君 今の問題は将来もあることでありますから、各法律に今のなお……。最近特にいろいろな法律が出ております、まちまちに出ておる。殊に議員立法と政府立法の間において非常な矛盾がある。こういう点は将来国会においても気を付けますけれども、政府においても政府みずから出される法律において矛盾齟齬のないように改めて頂きたい。これはかねがね御指摘申上げておつたのです。この法律によりますと、法務総裁が指揮監督する権限がこの法律自体は出て来ないのですか、一般法から出て来るという考え方ですか、その根拠を伺いたい。
  58. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは行政組織法の一般の原理から参るわけであります。又法務府設置法にもあると思います。外局として置くことが恐らく出ることになりますから、そのほうからも当然のことでございます。
  59. 伊藤修

    伊藤修君 法務府設置法には直接に本法に適用するようなごときことが命令系統の権限が明確になつていないのですよ。だから一般的法務総裁職務権限の内容として出て来るという考え方か、その点を明らかにして頂きたい。
  60. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは当然本省と申しますか、本府と申しますか、それと外局との関連において権限か、その原則が適用されるわけでございます。
  61. 伊藤修

    伊藤修君 本部において調査部第一部、第二部とこういうふうに区別されておりますが、いわゆる第一部、第二部の職務権限内容というものが明確でない、その点はどうですか。
  62. 関之

    政府委員(関之君) 調査第一部、調査第二部の分担事務内容は、第八条と第九条に規定してあるのであります。第八条によりまして調査第一部のほうは「破壊活動防止法第三条第一項第一号に掲げる暴力主義破壊活動を行つた団体に関する事務をつかさどる。」こう扱うことになります。第二部のほうは、「破壊活動防止法第三条第一項第二号に掲げる暴力主義破壊活動を行つた団体に関する調査に関する事務をつかさどる。」かようなことに相成つておるのであります。
  63. 伊藤修

    伊藤修君 法案の上ではそういうふうに分けられると思いますが、併し実際問題としていわゆる破壊活動があつたとき一連の事項として取扱われることは当然なことだと思うのですが、それを第一部、第二部に区別されては事務の渋滞ということもあり得る。むしろこれは第一部、第二部というものを設けずして、調査部ということだけで事足りると思うのです。却つてそのほうが便利じやないですか。徒らに機構を殖やして厖大な機構を持つて置こうという考えから出て来るのではないですか。
  64. 関之

    政府委員(関之君) そのお尋ねの点につきましては、各調査部は長官、次長の下におきましてそれぞれの部長が責任を以て所定の事務を指揮監督統率するのであります。そこで部長一人の統率権限の範囲その可能性というような点を考慮いたしまして全体の調査の事務をこの破壊活動の二つの号によつてこれを分けて担任させるのが最も能率的であり、責任の所在を明らかにする意味におきましてこれは合理的であると考えまして、かような組織にいたしたわけであります。お尋ねのごとく、もとより破壊活動が相互に関連することがあるのでありますが、これは各部長間の相互の調整によつて円滑なる運営を期したいと考えておる次第であります。
  65. 伊藤修

    伊藤修君 本法中に公安調査局と地方公安調査局とこういうふうに区別されておるのですが、この職務権限の内容はどうなんですか。
  66. 関之

    政府委員(関之君) 公安調査局は二つの事務を持つているわけであります。一つといたしましては、その公安調査局が置かれましたその都道府県内における調査の事務を直接みずから担任するのであります。そして又同時にその管内における地方公安調査局の調査の事務を指揮監督いたすのであります。各地方公安調査局におきましては、その置かれた府県なり、県内の調査の事務を遂行する、かようなことに相成るのであります。
  67. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると公安調査局と、地方公安調査局というものは同じ職務内容であるのですか。例えば地方検察庁と高検というような形になつているのですか。
  68. 関之

    政府委員(関之君) 現にありまする官庁組織の立法例から比べますと、高等検察庁と地方検察庁の関係とはやや違つておりまして、これに似寄つた官庁システムは法務府におきますれば法務局と地方法務局の関係がこれに類似していると思うのであります。
  69. 伊藤修

    伊藤修君 さように屋上屋を重ねるように幾多の同様な内容を持つところの調査局というものを設ける必要がどこにあるのですか。
  70. 関之

    政府委員(関之君) その点につきましては、一人の監督官における公正厳重なるところの監督をなすその権能の範囲その他を考慮いたしまして、かようなシステムにいたしますのが公正厳重に所掌事務を遂行し得るものであると考えましてかかるシステムをとつた次第であります。
  71. 伊藤修

    伊藤修君 幾つかたくさん屋上屋を重ねて、三段階にも四段階にもなるほど、それは慎重にできるでしようが、ことは敏速に運ばなくちやならない。同じような内容のものを同一地方に、例えば名古屋なら名古屋に地方公安調査局を置き、そうして名古屋に公安調査局を置くというような幾つもの段階を経て行わなくちやならんほどの事項ではないと思うのです。これは破壊活動という具体的事実問題をとらえてそれを剔決してそれを断罪にしようというだけのことなんですから……。そういうシステムを必要とするのですか。公安調査局というのはそこにおいてすべてのことを断定できるのですか。そこはただ調査するだけじやないのですか。
  72. 関之

    政府委員(関之君) 今のお尋ねの中に名古屋に、公安調査局があつて、又名古屋に地方公安調査局があるというようなふうにお伺いいたしましたが、その点は名古屋にはただ公安調査局だけがありまして、その名古屋、愛知県内における直接の調査事務と、そうしてここで申しますと、中部の公安調査局の範囲内における地方公安調査局の調査事務を指揮統率する、かようなシステムに相成つておるわけであります。この公安調査局及び地方公安調査局の調査の事務は、勿論団体規制の終局的な請求事務はそこでは扱わないのでありまするが、請求事務の補佐、その第一段階におけるところの証拠、資料の収集というようなことでありまして、やはりかようなシステムにいたしますのが責任の所在を明らかにし、公正的確に事務を処理するものと考えまして、かようなシステムをとつた次第であります。
  73. 伊藤修

    伊藤修君 そうするというと、名古屋というのは例を以ていたしたのですが、いわゆる仮に名古屋に置くというところの公安調査局というものは、どこの管内になりますか知りませんが、いわゆる中部方面全体の幾つかの県を管轄することになるのですが、その下に地方公安調査局というものを置くと、こういうあり方なんですか、そうですね。
  74. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの通りであります。
  75. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、その公安調査局というものが地方公安調査局から調査して来たものを再調べして、そうして中央にこれを送り込むという組織になるのか。或いは二重に同様な調査のみを行うということになるのか。私は先ほど例を以てわかりやすいように地方検察庁と高検というふうに申上げたのですが、そういう形になつているのか。それとも同じ仕事を両方とも取扱うのですか。
  76. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの点につきましては、例えば今例を申しましたから、この名古屋の例でありまするが、名古屋には中部公安調査局というものを置くのであります。それから中部公安調査局の所掌事務は、愛知県内におきましてはこれは直接調査の事務を行うのであります。その管内には三重、静岡、岐阜、福井、富山、石川が置かれるのであります。この各県にはそれぞれ、例えば三重地方公安調査局という名称を持つた地方公安調査局が置かれるのであります。そこでこの地方公安調査局に関しましては、その事務の指揮監督をするわけであります。そこで管内についての直接の調査事務は中部の公安調査局は行わないのでありまして、三重におきまする直接の調査事務は三重の地方公安調査局が行う。そうしてそれが中部の名古屋にあります公安調査局に報告を送る。そうして中部の公安調査局におきましてはそれを指揮監督し、それが管内に関連の事項もありましようから、それぞれの管内の地方公安調査局を指揮して、全体の調査の完遂、調整を図りまして、そうしてそれを更に東京の公安調査庁に送り込む。そのような構成に相成つておるのであります。
  77. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると中部なら中部の公安調査局というものは、その管内の指揮監督をすると、こういう行き方なんですか。直接ここではやらないのですか。
  78. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの通りであります。
  79. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、この公安調査局には調査員というものは置かないのですか。
  80. 関之

    政府委員(関之君) 公安調査局は愛知県だけにつきましては、愛知県地方公安調査局は置かないので、中部の公安調査局に愛知県内における第一線の調査事務を扱わせる。そこで公安調査局は愛知県内だけにつきましては各府県における地方公安調査局と同じ任務を扱うのであります。併しその管内の地方公安調査局に対しては指揮監督の事務を扱うというシステムになるのであります。これは丁度法務局と、地方法務局との関係が丁度そのようなことに相成つておるのであります。
  81. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、中部若しくは大阪というところにできるところの、ブロツクごとにできる公安調査局というものは、その所在の管内だけは両方兼ねるわけなんですね。
  82. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの通りであります。
  83. 伊藤修

    伊藤修君 その場合においては公安調査局長、そうして地方公安局長と両方二人とも置くのですか、兼任ですか。
  84. 関之

    政府委員(関之君) 二つは置かないのであります。ただ一つの中部公安調査局というものだけを置くのであります。その点が検察庁のシステムとは変つておるのであります。
  85. 伊藤修

    伊藤修君 このブロツクごとに置くところの公安調査局長の資格程度ですね。この地方公安調査局の長たる人の資格はどのくらいの程度の者を置くつもりですか。
  86. 関之

    政府委員(関之君) この中間の公安調査局長の階級は、一般公務員の階級で申しますと十二級程度と考えるのであります。地方公安調査局長の階級は十一級前後と考えているのであります。
  87. 伊藤修

    伊藤修君 検察庁で言うとどの程度になるのですか。
  88. 関之

    政府委員(関之君) 検察庁から申しますと俸給その他が大分開きがございますから、例えて申しますならば、学校を卒業して何年というような点から考えてみますと、大学卒業後、今の検察庁で申しますと、十五、六年程度経つた者がさような職に就いてもらうことになると思うのであります。
  89. 伊藤修

    伊藤修君 さような者に就いてもらうというのは、どつちのほうに就いてもらうのですか。公安調査局のほうに就いてもらうのですか、地方公安調査局のほうに就いてもらうのですか。
  90. 関之

    政府委員(関之君) 中央の公安調査局長と地方の公安調査局長との階級の差は一級前後でありまするから、そこは一か二年の差に相成ると思うのであります。従いまして、十五、六年前後のかたがこの両方の局長の地位に就いて頂くことに相成ると思うのであります。
  91. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、地方検察庁で言うと四席か五席程度ですね。
  92. 関之

    政府委員(関之君) その点は各地方検察庁におきまして、一概に申上げられませんが、大体号俸から申しますと、検事の三号俸とか四号俸を取つておるかたがたに相当るのではないかと思うのであります。
  93. 伊藤修

    伊藤修君 三、四号を以て当てるのですか。
  94. 関之

    政府委員(関之君) 当てると申しますか、その程度のかたがたと同じ大学卒業以来の経歴を経ておるかたに相成ろうかと思うのであります。
  95. 伊藤修

    伊藤修君 三、四号というと相当高い程度になつて来ますが、果してこれでそういう人を賄い得ますか。
  96. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答え申上げます。判事や検事は特別な任用資格がありまして、その職務の性質上非常に号俸が一般の官吏に比べまして御承知のように高くなつておるのであります。ここには一般の行政官として任用し、これを訓練して行きたい、従いまして月給の点から行くとかなり判事、検事に比べましては開きが出るのではなかろうか。併しこの点につきましては、法務総裁もその待遇を改善してでき得る限り立派な優秀な人材を迎えたいという御方針の下に御努力されておるところでございまして、只今関次長からお答えいたしましたところは、一般の行政官を基準といたしまして、大体大学を卒業してから何年程度の者というようなところでお答えした次第でございます。
  97. 伊藤修

    伊藤修君 俸給が違うとか、俸給の高い、安いを聞いておるのではなくして、どのくらいの程度の人をしてかような重要な職に当らしめるかという政府の構想を聞いておるわけです。従つてさような高い地位の人をこういうところに迎えると、例えば地方公安調査局の全員を満すためには、少くともブロツク八つを抜いて以外でも三十数名、とにかく四十数名の人を要するのですが、こういう人をどこから賄うというつもりか。警察官から転用するというつもりか、或いは一般官公吏からこれを抜擢するつもりなのですか、どういうつもりですか。
  98. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの公安調査局長及び地方公安調査局長の人的資源の給源と申しましようか、さような点につきましては、私どもも折々もう少し安心というか……、安心しておるわけではございませんが、各方面にいろいろお願いをいたしまして、人材をここに集めることに全幅的な努力を捧げたいと、かように考えておる次第であります。
  99. 伊藤修

    伊藤修君 抽象論はそれはわかりますよ。誰でもそのくらいのことは考えますよ。誰を持つて来るか、どういうところにあなたの言う人的資源を求めるか、客易にこういうような仕事にタツチする人を適格者を求めるということはできないのです。ここにあるところの練習所ですか、教習所ですか、そこで以て養つて教育してから出すなんということは手遅いのです。又、さような人材では賄い切れないと思うのです。不適当だと思うのです。据えて以て直ちに仕事のできるような人でなければ、法務総裁の企図するような仕事はできないと思うのです。そういう人を賄うには、勢い検察官若しくは警察署長の古手をここに任用せざるを得ないと思うのです。私は検察官についてここでとやかく申しませんが、警察官の古手を持つて来てここに充てるというやり方は非常に好ましくないと思うのです。今日特審局のあり方はどうですか。今日調査官と言つておるか何と言つておるか知らないけれども、地方駐在の特審局の係員というものは、従来の特高の皆忌避された人がこれに任用されているじやないですか。これが一つのボス化しているのです。彼等の忌諱に触れれば直ちに解散を命ぜられているのです。殊に好ましくない、警察で以て懲戒その他の事由で以て解雇された人間が特審局の輩下となつて、そうして思想を取締つておるというのが現状じやないですか。結局は、手が足らなくなるというと、そういうことに陥るのですよ。それでお聞きしているのですよ。本法の運用は非常に大切なんだから、若し本法が公布されるということになりますれば、この人の配置によつてこそ法務総裁が理想とせられるところのよい運用ができるのです。人を得なかつたならば、羽仁さんが言われる悪法の上に又悪法とならざるを得ないのです。気違いに刃物を持たすようなものです。だから、その点を私は憂えてお聞きしているのです。
  100. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 誠に御尤もな御意見と承わります。申すまでもなく、この機構の運営に当るのは人でありまして、人によつて如何ようにでも運営がされる。御心配の点は、我々も十分了承しております。私も心配しております。そこでどういうところから人を選ぶか、これも大問題であります。昔のいわゆる特高に従事した人たちをこの重要なポストに据えるというようなことについての御心配、御尤も至極くだと存じます。私の今の構想といたしましては、十分にこの人たちに働いてもらうためには相当な給与も出さなくちやならん、少くとも人的に十分とは行きませんが、信頼をかち得るんでなければならんと、こう考えます。なかなかむずかしい問題でありまするが、できる限りにおいて私は在野法曹あたりの人たちにお願いいたしたい、こう考えております。又検事の中にも相当働きかけて、優秀な人を犠牲的にこの地位に坐つてもらいたいというような考えを持つております。その方面においての努力は十分に私はして行きたいとこう考えております。
  101. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁の御希望なり御抱負なりは結構だと思います。それから法務総裁も御承知通り、在野法曹から求めることは先ず不可能でありましよう。何となれば、待遇が今日の検察官、裁判官以上の待遇となることは到底考えられないのです。一般行政官としての待遇以上には出ないと思うのです。特別な機密費をこれに給与いたしましたところが、到底在野法曹が今日生活を営んでおる程度のものを賄い得るほどの待遇は与え得られないことは、これは明らかです。してみますれば、在野法曹から求めるということは、先ず一人もあり得ないと思うのです。若しそれでも在野法曹から来るという人ならば、それは何とかその人をむしろ忌避しなければならんというような人が来ることしかあり得ないと思うのです。これは法務総裁においても十分御承知のことと思います。又これを検察官から求めるといたしますれば、検察官を兼職の立場に置くと、検察官という職責を持つたままここに異動して来るならば、これは別です。現在法務庁でおやりになつておるように、各事務官の人に検事兼何々とこういう資格においていたしますれば賄い得ると思うのです。若しそうでなかつたならば、一般俸給の十一級、十二級の程度の者では到底検察官は大分大きな減俸になりますから、それはきまりません。私はそういうところに大きな障害があると思うのです。法務総裁としてそういう実情を御存じであるかないか存じませんが、私はそれでは到底賄えんと思いますが、そのほかにどういうお考えをお持ちでしようか。
  102. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 結局私は待遇の問題と、もう一つはその人の国家的福祉の考え方だ、こう考えております。只今在野法曹の来る人がないだろうという御議論でありましたが、私は必ずしもそうは考えておりません。相当優秀な若い人、勿論多年弁護士職務に従事して相当に地盤を作つた人はこれは得がたいでありましよう、併しながら若い人たちは、相当考え方を持つた人は、必ずしもなきにあらず。いよいよこの法案が実施の暁においては、我々もできる限りにおいてそういう方面に勧誘して、犠牲的になつて頂きたいとこう考えるのであります。
  103. 伊藤修

    伊藤修君 それは理想は結構ですけれども、私は不可能だと思います。若しそういう若い人で、権力を行使してみたいと、権力欲に燃えた人が、たまたまこういうところに来るとすれば、それは恐るべき人であると思うのです。少くとも国民の基本人権を擁護しようという職責に立つて働こうとして、孜々営々として学問を研究した人が、こういう権力の地位に、直ちに在野法曹から飛込むということは考えられないと思うのです。若しあるとしてもそれは寥々たるものでしよう。若しあるとすればその人の考え方というものは、非常に権力欲に燃えた人だとこう言わざるを得ないと思います。これは過去におけるところの在野法曹からなつた各長官の実例においてもよく示しているところです。在野法曹がたまたま権力の地位に立ちますと、いわゆる子飼いからなつた長官以上に、権力を振つているということが事実を示しております。そういう弊害も伴うと思うのです。私の憂えるのはそういうところでもつて賄いきれればいいのですよ、これだけの重要の地位の人を多数賄えない場合には、結局私は特高警察の古手か、或いは警察署長の古手をここへ持つてきて任用するにきまつているのです、現在そうだから……。現在特審局はそれをやつているのです。私は名前を指摘しませんけれども、警察において懲戒される人が、懲戒されるのは気の毒だというので、懲戒にせず依願免職にしてやつたその人を拾つてですよ、その人を拾つて現に特審局で使つている、その人は自分の家内にパンパンをやらしている。町の暴力団を自分の目の下に抱えて、暴力の町の帝王としているのです。彼の目に触れますれば何らの事実もなくすぐ解散を命ぜられている、これは事実です。問題を指摘しろと言うならば私は事実を挙げて指摘します。名前も指摘します。そういうあり方が現在ですから、私は非常に心配するのです。折角法務総裁が高い理想の下に、これを国民の権利を保護するために、こうした法案を通そうというのだが、結局はこれの運用の上において、崩壊してしまう、私は心配をするからその点を重ねてお伺いしているのです。だから人材を求めるには、甚だ法務総裁は簡単にお考えになつているが、そうは人は得られるものじやないのです、いい人は……。してみますると、勢いそういうところに陥つて来るのじやないかと思います。その他にどこか抱負がありますですか。
  104. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御尤なる御議論であります。これはいずれの社会に行きましても、そういう欠点のある人間はいるのですり(「冗談じやないよ」と呼ぶ者あり)併しこういう特別に重要な機関において働く者については、できるだけの考慮を払わなければならないということは全く御同感です。そこで私らの構想といたしましては、これは一挙にそういうような立派な人材は、これは求めようといつたつて求められない。これはいずれの社会へ行つても同じことだろうと私は考えております。これは逐次改善して行かなければならない。併しこの機構を動かすについては、そう長くかかつてはいけないのでありまするから、できるだけ早急に立派な人材を集めて、十分なる機能を発揮させたい、これが研修所というものを設けるゆえんです。この研修所においてできる限りの人間的にも修養をもさせて、そうしてこの法案趣旨を十分理解させまして、いやしくも基本的人権を害するようなことのないようにと、これは私は努めております。人材を求める点につきましても、十分な努力を払つて、御期待に背かないようにいたしたいと、こう考えます。
  105. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁のそのお考え方は非常に私は結構です。不幸にして事実はそれに副うて来ないのです。この際私は法務総裁に申上げておきたい。如何に人を得ることに窮しても、過去の特高警察の上がり、若しくは警察署長の上がりを採用せざること。この基本法だけは打立てて頂きたいと思う。純真無垢な人格者を得ることに最善の御努力を願いたい、こう思うのです。その点如何ですか。
  106. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 誠に御尤な御意見であります。その趣旨に基きまして、考慮いたしたいと、こう考えます。
  107. 伊藤修

    伊藤修君 私は法務総裁の今の御誓約を信じて疑いませんから、将来においてそういうことのないようにぜひお願いしておきたい。  次にこの公安審査委員会設置法案について二、三点お伺いしておきます。この本法の立て方を見ますと、この委員長委員の互選とすべきじやないかと思うのです。これは国家公安委員会の場合においても、互選の方法をとつているのです。本法の場合もこれと同様に互選の方法をとつて委員各位の間において、信頼の高い人が委員長に就任するあり方のほうが民主的じやないですか。いわゆる政府が特定の人間を指定して、委員長に定める天降り式の任命をする。こういうあり方は私は好ましくないのじやないかと思う。国会にこの委員の選任に対して同意を求められるというのならば、なお更やはり国家公安委員会と同じような建前あり方をおとりになつたほうが、適切じやないかと思います。如何ですか。
  108. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやる通り国家公安委員会等の例もございます。この例もございますが、これはどちらかと申しますと、これでなければならんという性質の問題ではないと思います。ただ問題の基準、考え方の基準になりますのは、この委員会そのものの意思を尊重して互選に持つて行くか、この同意をお与えになるかたの、両議院のかたの立場を尊重して、政府としてはこの人を委員長にしたいのでございますということを国会に明らかにして、そうして委員長としてこの人がよろしいという御判定を、両議院にお願いするのがいいのか、そこのことは、両方の判断ができるわけでございまして、これは誠に各位の御判断におまかせしていい事柄であると私は思います。ただけじめとしては、そういうことがあるわけでございます。
  109. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと国会にお諮りになる場合におきましては、誰それを委員長にし、誰それを委員にするという、具体的に指名してお諮りになりますか。
  110. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そのつもりでおります。
  111. 伊藤修

    伊藤修君 ではそのお言葉を私は銘記しておきます。お忘れなく一つ……。  この第五条の委員長及び委員を任命する資格について、ただここに抽象的に羅列されておるのですが、「人格が高潔であつて団体の規制に関し公正な判断をすることができ、且つ、法律又は社会に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、法務総裁が任命する。」と、こういうふうに明らかにしているのです。第七条を拝見いたしますと、ここに欠格条項が定められておる。そうすると任命資格というものが現われて来ないですね。若し第七条のごとき欠格条項が任命資格の場合にあつた場合には、これは私は当然任命されないと思うのですが、勿論任命する場合においてこれはお調べになつてすることと存じます。併しここに第七条で欠格条項を明らかにするくらいならば、第五条において第七項の第一号、第二号、第三号に該当せざるということを入れるか何かしないというとおかしいじやないですか。まあここに人格高潔という言葉の中に、そういうことは当然除外されるというならそれも何をか言わんやですけれども、第七条で明らかに欠格条項を入れているのです。任命に対するところの資格条件というものもやはり明記する必要があるのじやないですか。その但書にでも第七条の一項を準用するというような形をとるべきじやないですか。
  112. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 伊藤委員立場がちよつと逆になりましたが、法律的にはまさにおつしやる通りだと存じます。ただ今例にお挙げになりましたような形で、この第五条の中にそういう欠格条項が加わりましたその後のでき上りを眺めました場合において、人格が高潔であつて云々と今お引きになりました言葉が、如何にも低級なほうに引きずられて行つてしまやしないかということで、これはおつしやる通り当然のことでありますからして、わざわざこの七条のごときものを謳わずに、むしろこの人格の高潔というものは、よほどの高潔を狙つておるものだという気分を出したほうがよろしいと考えるわけでございます。
  113. 伊藤修

    伊藤修君 勿論第五条をお書きになるときの御配慮はよくわかるのです。少くともかようなお仕事をやつて行こうと思つて任命される場合において、その人の人格を傷つけるごときことを法文に明らかにされるということをお願いになつたこととは存じます。併し法律としてはやはり明らかにすべきが本来じやないかと思うのです。それで当然そういう場合において、任命される場合において、第七条というものは勘案されることは相違ないと思います。併し法文の立て方としてどうも私は納得できない。若し国会に承認を求められる場合において、この第七条の非難事項があつた場合においては国会は拒否することが当然だと思いますが、如何でございますか。
  114. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは申すまでもないところで、おつしやる通りだと思います。
  115. 伊藤修

    伊藤修君 然らば第七条の三号ですか、この「非行」ということはどこまで含むか問題ですよ、これは……。その場合に、国会がこれを審議する場合において、こういうあいまいな言葉を使つておりますしするので、私は今前段に資格条件というものをお聞きしたわけです、定めるほうがいいじやないかというふうに……。国会で審議する場合にこの第七条の三号の「非行」という文字によつて相当広い範囲において審議の対象になつて来ると思われるのですが、非行の意義を一つお伺いいたしましよう、どの程度まで入るか……。
  116. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 正面から定義を申上げることはむずかしいことでございますが、要するに委員長若しくは委員たるに適しない行動というのはたくさんあるわけであります。その中で社会的非難に価するものというものをここで狙つておると考えておるのであります。
  117. 伊藤修

    伊藤修君 ちよつと言葉が少いですね。社会的非行というだけですか、個人的非行或いは……、非行が、これは何らの制約を設けてないのです、すべて含まれるのじやないですか。
  118. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の使いました言葉社会的非難の対象になるような非行、私の非行というものも当然入るつもりで申上げたのであります。
  119. 伊藤修

    伊藤修君 社会に公知の事実となつていなくても、たまたま知られるような祕密な非行においてもやはり包含されると思うのですが、どうですか。
  120. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) わからなければこれは止むを得ませんけれども、わかつた場合には当然社会的に非難されるということであれば、これに勿論該当するものと考えます。
  121. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの人は思想的に過去において或る団体の顧問をしておつたとか或いはそこの参与をしておつたとか、或いはシンパであるとか、ここまで至らなくても、好意を持つてつて寄附をしたとか、或いはそういうような団体の発行する印刷物に投書をしたというような場合には、非行になるのかならないのか。
  122. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この第七条は申すまでもなく現在委員長或いは委員である者をやめさせる場合の規定でございます。従いましてその現在委員長若しくは委員たるに適しない非行というものであれば、恐らく割合に新しい非行であろうと存じます。今お尋ねの点は、恐らくこの第五条で新たに任命をする場合に昔の非行がどうだという御趣旨だろうと存じますが、これはこの任命の際においてこの判定がなされるのでありまして、今後委員長及び委員としてその人の経歴がずつと昔には仮に疵がありましても、すつかり人柄が変つてしまつておるという人でありますれば、もとより委員への適格性は持つておるということにならざるを得ないと考えております。
  123. 伊藤修

    伊藤修君 私は前段においてお尋ねしたことは、結局資格条件としないという趣旨は、そういう人格高潔な人という中に含まれると思う。従つて資格条件には当然この欠格条件が包含されて謳われているのだという御説明だから、資格条件として国会が審議する場合においては当然七条のこの欠格条件の内容を審議することになると思うのです。その場合に非行ということが問題になつた場合に、その非行の中に過去におけるところのそうしたその人の個人的社会的いろいろな非行は勿論、そうでなくして、本法において企図するところの破壊活動防止すというのには、思想的な問題が主たるものである。そういうことがやはり非行として数えられるかどうか。そういう過去の経験があればなお更結構だ、共産党に好意を持つている人なら結構だといつて承認ができるかどうか。そういう条項がたまたまあつて、その他は全部好ましい人であるという場合において、それだけで以て拒否ができるかどうかということを聞いているわけです。
  124. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 抽象的なことになりますので……。
  125. 伊藤修

    伊藤修君 いや具体的に私は申上げておる。具体的にシンパしたとか寄附したとか、好意を持つたとか、そこの団体の発行する文書に投書したとか、そういうところの顧問をしたとか参与をしたとか、そういうような事例があつた場合において、それが非行として取上げられるかどうか、非行の中に含むかどうかということを聞いているわけです。
  126. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) そういうことは、私はこの任命の際におけるいわゆる非行の基準というものにはならないように考えております。
  127. 伊藤修

    伊藤修君 任命の際の非行の基準にならなければ、欠格条件としては基準に、なるのですか。
  128. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど触れましたように、現に委員長或いは委員なつた後において、その仕事を継続して行かれるに適しないような非行ということでありますから、恐らく新らしい現実に近い非行であるということにおのずからなると考えておるわけであります。非常に昔のことは恐らく出て来ないだろうと思います。
  129. 伊藤修

    伊藤修君 いや、この第七条の書き方から言いますれば、たまたま任命当時はわからなかつたけれども、後日において……、任命以前においてそういう非行があれば当然私は罷免されるものと思います。いわゆる任命後に生じた非行でなくても、その以前の非行にも遡ると、これは別に区別しておりませんから当然適用があると思います。従つて第五条による任命の当時においても、従前のことをやはり問題にせられることは当然のことです。私の解釈は誤りないと思うのです。ただ問題は非行が……、そういう具体的事実をお示しして、それが非行となるかならんか、含むか含まんかということを聞いておるわけです。必ずこれは問題になつて来ますから……。
  130. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) どうもおつしやる趣旨がわからないのでありますが、或る種の思想を持つてつたというだけのことで、一体社会的の非難に値するものかどうか、先ほど触れました言葉で結局判断するほかないと存じますが、それだけのことで社会的非難には当らないものだと思います。従いましてそれだけの限りにおいて、ここにいう非行の中には入らないのじやないかというふうに考えるわけであります。
  131. 伊藤修

    伊藤修君 そういう思想を持つてつたというだけでなくして、そういう団体のシンパであつたとか、参与をしたとか顧問をしておつたとか、その団体の発行する印刷物に書いたとかいうようなことがあつた場合には、まさにそれらは共産党にくみする人だという認定をも、その官庁自体が認定する立場にあるんじやないですか、そういう人も含むのか。極端に言えば共産党の人でもできるのかと、こういうことです。そこまで言えば共産党の人は好ましくないと、こう言うでしよう。その程度に至らない、共産党の党員だという程度に至らなくても、その範疇に属する人だ、若しそれに桃色程度だというような人の場合においてどういうふうになつて来るかということを聞いておるのであります。
  132. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 任命の際の基準として考えまするというと、要するに欠格条項としては人格が高潔でない者、それから団体の規制に関し公正の判断をすることができない者というのが欠格条項だと、私は考えるわけでございます。結局今の御指摘の例は、その人の過去の行動につきまして、人格の高潔であるか、或いは現在においてそうである者、或いは団体の規制に関して公正な判断をすることができる人であるか人でないのかというのが、結局任命の際の判断であるという工合に考えるわけであります。
  133. 伊藤修

    伊藤修君 だから一番初めに聞いているのじやないですか、七条の欠格条項は、任命の際の任命資格と同様に解釈されるのじやないか、そうだとおつしやつたのじやないですか。人格高潔の中に当然含まれるのだ、従つてそういう七条のような欠格条項のある人は任命の際に任命しない、しない場合にはいいが、たまたまその場合においてはこれを捉えて以て国会はこれを排除することができるか、できるとおつしやつたのでしよう。そこまではいいのです。それは一、二、三号までです。その末項の場合へ行つて非行という抽象的文字があるから、広い言葉があるから、あなたが不用意によろしいと言つてしまつたものだから抜き差しならなくなり、非行ということが最初の任命の場合に問題になつた場合にどうするか、こう聞いておるのです。
  134. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この非行という問題は、私は今の社会的非難という点からいつて相当よろしくないことを言つておるのだろうと思います。従つて任命の際の基準としては、そういう非行に該当するような人の問題は、よほどこれはこの人格高潔の場合、公正な判断云々ということには遠いものでありまして、問題にならんのじやないが、任命の際の基準というものは、もつともつと高くなつているということを申上げたいのであります。
  135. 伊藤修

    伊藤修君 従つて高くなつているのだから、非行のあるような人は任命しないのでしよう、どうですか。非行はあつても任命するのですか。
  136. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 非行の、非行に該当するような行為がありまして、而も現にその悪性が除かれておらないというようなものは、当然もう五条の資格には触れないことになるわけであります。
  137. 伊藤修

    伊藤修君 それだから結局は第七条の列記された各事項というものは、任命の際に考慮さるべき事項であるということは、任命の際の欠格事項であるということになるわけですね。それには誤りないのでしようね。だからその非行というものの内容を聞いているのです。私はその今の思想的な立場の人を国会が排除できるかどうかということを、具体的に起つて来るからこの際お聞きしておきたい。自分が作つた法律自分がわからんのでは困る。あなたも自分が書いたのだから……。あなたがお書きになつたのじやないでしようけれども、書いたということを責任を負つておるから書いたことである。だからあなたが書いた人として、どういう気持でこの非行ということを書いたのですか。私が具体的に申上げた事項は、非行の中に入るのか入らないのかどつちですか。
  138. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私は思想的立場のみの問題はここに言う非行の問題には当然入らないと思います。併しながら先ほど触れましたように、五条の任命の際の非行は、ずつと基準が高くなつておりまして、団体の規制に関して公正の判断をすることができるかできないか、そういうふるいで、枠で問題になるかも知れませんということであります。
  139. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこういうふうに結論を伺つておきます。結局その人の持つところの思想的なあり方というものに対しては問題にならん。但しそれは公正な判断ができるかどうかということにおいて初めてそこで検討するということになるのですね。
  140. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その通りでございます。
  141. 伊藤修

    伊藤修君 してみますれば、人格の高潔の人で、学者であつて進歩的な意見を持つておるという人でも、それが公正な判断ができるというようなお方なら当然国会は承認しても差支えないわけですね。こういうことになるわけですね。
  142. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 勿論のこととと存じます。
  143. 伊藤修

    伊藤修君 この第八条は衆議院で修正しておりますが、法務総裁から内閣総理大臣に任命権が移つたのですが、この任命する場合において国会の同意を経るのですが、これは国民意思を尊重するという意味において、殊にこの種の事案に対するところの最後的、最終的と言つても差支えないでしよう。最終は裁判所ですから、最終的に重要な事項について判断を下す公正な人を選ぶという意味において、この人の選び方については、本法の生殺与奪の権をば委ねると言つても過言ではないと思いますが、かように重要な人事であればこそ内閣総理大臣が国会の承認を経て任命する。然るに罷免の場合、これは国会の承認を経ずして罷免してしまうのですね。これは国会の意思を無視することになりはしないか。任命するときだけ国会の承認を求めておいて、国民責任を分けておいて、罷免するときには勝手にいつのまにかやめさしてしまうというあり方は私はちよつと矛盾しておると思います。このことはほかの罷免の場合、例えば国家公安委員の任免の場合においても、勿論この場合は国会の承認を経ることになつておるのです。任命する場合において国会の承認を経るならば、罷免する場合においても国会の承認を経べきが私は理の当然だと思います。これはどういうようなお考えでかような片手落ちのことをやつたのですか。
  144. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これも考え方の問題としてはおつしやる通りに罷免の際にも一々国会の同意を得るということは成り立ち得ることだろうと思います。ただこの場合におきましては、ここに御覧になりますように、罷免事項としては相当はつきりしたものが挙げられておりますから、罷免については政府責任において行う。これは当然後任者の任命というものを伴います。後任者の任命については、これは勿論両院の又御同意を得なければなりませんから、仮に前の罷免行為が非常に不当な罷免行為であつたという場合には、十分その際にお叱りを受ける機会がここで保障されておるわけでありますが、従いまして濫用はいたしません。濫用はないというふうに考えるわけであります。
  145. 伊藤修

    伊藤修君 これをやつてしまつてあとからお叱りを受けたつて何もならんですよ。ぶんなぐつて、あとから済まなかつたと言つても仕方がないですよ。ぶんなぐらん前にどうだということを聞く機会を国民に与える必要がある。成るほど人を任命する場合に同意を得ることは当然です。だからと言つて前のやつがいいとか悪いとか言つたつて始らないじやないですか、そうすると政府は、この公安委員政府の思う通り行動しない、政府の思つた通り活動しないと言つて、難癖つけて列記した事項ですね、お手のものですから、公安調査庁で以つて調査は個人生活を洗い立て、そうして罷免の理由にぱつと掲げて罷免してしまう。そうして自分の意に従うような人を任命する、こういうこともできるのじやないですか、悪く考えれば……、そんなことはあり得ないでしようけれども……。それはそういう余地を残して置くということはよくない。やはり公正に、同様に罷免の場合にも国会の同意を経るということのほうが、私は国家公安委員の場合にはそうしているのだから、この場合だけ罷免に対しては国会の像を容れさせないのだ、おれが勝手に罷免するのだということになつてしまう。それは一号、二号、三号だけならいいですよ。先ほどからお聞きした、非行ということは非常に広いから、これを捉えて、以てこれが非行だと、こうやられたら、その人は人格を傷つけられ、非常に迷惑するのですよ。だからそういうことを保障しておかなければいかんですよ。いわゆる身分の保障を私は委員に与えておかなくちやいかんと思うのですが、いつでも首切られるというような尻の坐らん委員ではこんな重大な事項は審議できませんよ。
  146. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今のお言葉に触れて何でございますが、新らしい委員に勝手な人を任命しようということは、これはもとより国会のほうでチエツクなさいますからそういうことはない、そういう保障はあるわけであります。それからもう一つ、この非行の問題等につきましても、一応は委員会が、まあこれは身近な仲間のことでありますから、委員会でその判定をしてもらうということで、委員会の判定があれば罷免される、なぜ国会へ持つて来なかつたか、さつきの話と違うじやないかとおつしやるかも知れませんが、これは仲間同士のことでありますから、委員会で判定してもらつたらよかろうということで、罷免についても何ら制限がないということではございません。
  147. 伊藤修

    伊藤修君 制限がないということじやないけれども、いわゆる政府の意のままに罷免ができるというあり方、先ほどからくどく申します一、二、三と、はつきりしたことはいいのですよ。ここにおいてかようなとつて以てその人を糾弾しようというのならどの範囲までも拡げることのできる非行というこの文字の中へ叩き込んで、そうして首切るということができるという、こういう幅の広い書き方はちよつと困るじやないかと言うのです。して見るとこういうふうに書かれるならば、国会の審議を求めるほうがいいのじやないかと思うのです。ほかの法律においてもそうしておるのだから、この場合だけこういう抜け道を作つておられることはよくないと思います。
  148. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) いや、お説誠に御尤もでありますが、考え方において勿論委員を不法な理由で以て政府がやめてもらうというようなことは考えていないのであります。やめてもらうときには委員のかたがたの協議を経て、その人に先ず以て私たち実際は勧告することであろうと思います。それを国会で承認を経るということになりますると、これはその理由が国会で明らかになつて、その人に対してむしろ将来に悪い影響を与えるということを考えて見ますると、十分その事情を各委員のうちで述べて、その人の了解を得てやるほうが、考え方としては穏かじやないか、こう考えるのであります。併しほかの公安委員について皆国会の同意を得ておるじやないか、これは一つの御議論であります。実際の取扱といたしましては、私は今申上げたように委員会で以て相談の結果その人の了解を得てやめてもらうというのが穏かじやないか、こう考えております。
  149. 伊藤修

    伊藤修君 これはお考え方で、今法務総裁もおつしやつたように、その人の人格を傷つけるということになりますれば、罷免されること自体で、内閣が罷免すること自体で当然人格が傷つけられる、国会で論議するまでもない。又内閣で罷免されますれば国会で問題になつて追及される、やはりその人の人格はすべて明るみにおいて討議されるということになるのです。結局そうなるのです。それならば初めから罷免に対しまして国会の承認を経るという立て方をなさつたほうがいいと思います。又それが無理がないと思います。それを強いてこういうふうにお立てになるということは、結局政府の意のままに動く人を成るべく包容したいという考え方というふうに悪く解釈するのです、私のほうで……。
  150. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは考え方でして、政府がいきなりそれを罷免するということになりますと、お説の通りその人の人格を無視した甚だ気の毒な状態に立ち至るわけでありますが、実際問題としましては、委員会で以てきめて要するに勧告するような状態になるのじやなかろうか、こう考えております。そこでそれがその人のために私は望ましいことじやないか、これは考え方によりまするが、それのほうが穏かでいい、委員会の決議で以てそうしてその人に勧告して、稔かに退いてもらうというような取計らいをすることがむしろ望ましいのじやないか。国会で以てこれこれの非行があるからやめさせるのだというようなことよりも穏かでいいのじやないか、こう考えております。
  151. 伊藤修

    伊藤修君 それじやまあその問題はその程度にしまして、本法中において、衆議院がいわゆる公安審査委員会ですかの権限を拡大しておるのです。にもかかわらず、本法の修正が、その点に対する修正がなされてないのです。調査権限認めた以上、本法において調査する場合をやはり考えなくちやならんです。その場合におけるところの機構について何ら修正されていないのです。そうすると基本法の破防法においては調査権限を与えられたけれども、この設置法においては何らそれを賄うに足るところの機構が少しも与えられていないという欠点があるわけです。そうすると委員は折角破防法において調査権限を与えられても、実際それを行使できないのです。運営できないのです。委員みずからが日本全国を駈けずり廻らなければならん、委員みずからが直接調査に当らなければならんという結果を招来するのじやないかと思うのです。これに対するところの、少くとも政府考え方のような狭義の調査の権限などと言つても、なおこれでは足らんと思うのです。又我々の考えのごとく衆議院が幅の広い、実体を把握するために調査の権限を与えたんだという場合においてはなお更、この機構ではそれに対して特別な機構を置いてないのです。当然それらの事務に携わるところの権威ある事務局長なり総長なり部長なりを置かなくちやならんと思うのです。又そういう部局を設けなくちや賄い得ないと思うのです。この点に対してどうですか。
  152. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 我々といたしましては、この原案でもすでに委員補佐が三人あるわけでありますが、衆議院の御修正によつて、事務局も作ることになりましたので、機構のほうとしてはこれで十分ではあるまいかと考えております。
  153. 伊藤修

    伊藤修君 事務局といつて事務局はどのぐらいの程度置くつもりか知れませんが、そういう責任の地位に立つて事を行うのに、従来の事務というのは、議案を作るときには、そんなようなことは考えていないじやないですか。ただ委員が集つて書面審理するに直接必要な人員程度しか考えていないのですよ。それを衆議院があの言葉の広い重要な事項について修正した以上は、それに対応するところの機構を設けることは当然考えるべきですよ。それをあなたは無責任ですよ。あなたは自分がやるんじやないから、言い放しだけれども、やる身になつて御覧なさい、できやしませんよ。
  154. 関之

    政府委員(関之君) 衆議院の御修正によりまして、公安審査委員会には委員長委員委員補佐のほかに十人の事務局を加えることにいたしたのであります。
  155. 伊藤修

    伊藤修君 まあそんなことでできるということをお考えになつておれば、結局昨日から法務総裁が懇切に力をこめておつしやつて、いわゆる司法権を侵すものじやないと、行政権の範囲においてこのような重大事項は決定すると、併しそれは国民の同意を得て任命した委員会において決定するのだから安心していいじやないかと、こうおつしやつておることが安心できなくなるんですよ。ここを充実してこそ正に法務総裁がおつしやる点に安心感を我々は得られるんですよ。それをなおざりにして、調査のほうだけ一生懸命努力することにあなたたちは努めておるけれども、それほど批判されるところの委員会の機構を不十分なものにしておいて以て足れりだなんという考えはあなたたちの考え方でしようが、親切でないということです。法案の最終のこれは目途じやないですか、最終の機構をさような不十分なものにして置いて事足れりとおつしやつたのでは、私は法務総裁の一昨日からおつしやることが信用できないですよ。法務総裁は如何でしようか。
  156. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御説御尤もであります。その点については私は考慮いたして行くつもりであります。
  157. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁考慮して下さるというならばいいけれども、関君がそれでいいなんて言うからこれはどうも承知できない。それでは両案につきましてはその程度にいたしておきます。  破防法の問題について二、三補足しておきたいのですが、御承知通り最近の捜査のあり方というものは非常に又乱れつつある。終戦後GHQの監督下におかれておつた当時においては非常に厳格であつたのですけれども、最近遺憾ながらあらゆる手を以て捜査の目的を達しようとする、従つてそれによつて基本人権というものは非常に制約される例が多々あるのです。で、本法においてはこの調査官が司法警察官の協力を得てこういう事項を調査するということになりまして、例えばその調査官が非常に過激な意見を持つている労働組合或いは団体の構成員に対しましてその意に合うような意見を述べて、それらの過激の意見を釣り出す、そうしておいてそれをとつてつて糾弾するという、この誘い手をなされることが恐らく今後においては多いと思うのです。戦時中においてそれによつてひつかかつた人は相当あります。まあ現に横浜において、又全国的にでございますが、法務総裁も御承知通り、麻薬の摘発はすべてその手です。全国に何百件、何千件あるか存じませんが、麻薬取締法違反で今日縲絏の辱を受けている人々は多くはこれです。中にはそうでない人もありますが、多くはこれによつて摘発して処罰されている。本法の場合においてもそれは恐らく行われることが予想にかたくないと思う。そういうものに対するいわゆる取締というものがここに少しも規定されていないのです。この点はどうですか。
  158. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えします。公安調査官が本法に規定されているような犯罪を挑発するということは絶対に許されない行為である。ましてや本法に規定されているような犯罪に関与するというようなことは以てのほかであると考えておる次第でございます。
  159. 伊藤修

    伊藤修君 その以てのほかのことをやるのですよ。以てのほかのことをやつて検察庁はその以てのほかのことをやつた人を少しも処罰せずに、勿論囮りですから、処罰しない、自分が使つた人ですから処罰していない。そうしておいて相手方を処罰しておる。要するに相手方の犯罪行為を誘導して引上げて行くというのが今日のあり方です。又あなたたちが立法する場合においてはそういうことはあり得ないという意図の下に立法されておりますが、あり得るのですから、そういう場合を想像して法律にそれを規定しておかなくてはいけない。法律を作る場合において最善を期さなくてはいけないと思う。
  160. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 公務員として又公安調査官としてもなすべからざることでありまして、    〔委員長退席、理事一松定吉君委員長席に着く〕 かようなことをなしました場合には懲戒の問題も起き、又場合によりましては刑法所定の職権濫用罪の規定もございます。なお又刑罰に触れるような場合もあるかと存ずるのでございます。
  161. 伊藤修

    伊藤修君 職権濫用罪にはなりませんよ。そういう場合には。それは強いて言えば違法行為でありますけれども、併し刑罰を科するわけではない。相手方に財産上の利得を目的としているわけでもありませんから、詐欺にもなりませんよ。それは懲戒があると言つたつて今日の懲戒において、又仮に懲戒権が発動して懲戒されたところが、それによつてこうむるところの被害のほうが大きいのですよ。事は懲戒で済まされるような問題ではないのです。そういうことがあり得ることは予想されるのです。公務員は神様ではないのですから……。あなたたちの正しい考え方というものは末端の機構には到達しないのです。又それに携わる人が人格高潔な識見の高い人ばかりが携わるわけじやないのですから、そういうものの違反行為に対しまして一方も取締つて行かなくちやならん、国民のみを取締らずしてそういう携わる人に対しても取締規定を設けておくことが正しいのじやないかというのです。そういたしますれば我々が心配する点は、そういう点でたとえ一つでも除去されて行くのです。如何ですか。
  162. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの点につきましては、若しそれが刑法百九十三条の職権濫用罪に当りますれば、これは当然それによつて処断いたさなければならないのでありますが、それまでに当らないいろいろの不法なる活動がありはしないかというようなお尋ねでありまするが、それはこの公安調査庁の調査官の一般の任務の調査に関連した問題であると考えるのであります。私どもとしましては公正的確にこれを、この法案目的の範囲において厳に調査の事務を遂行さしたい。又そのようにいたさなければならんと考えておりまして、そのためには先ずこの調査庁設置法にも設けてありまする訓練研修の機関によりまして厳重な訓練教養を施すと共に、又この調査の準則を調査庁の庁例で以て明確にきめまして、その線を確実に厳守さしたいと、かように考えているわけであります。又そのほかに庁におきましても監察事務を厳重にいたしまして、いやしくもさような世の非難をこうむることのないように厳重なる方法によつて職員の調査の事務を規正し統制して行きたいと、かように考えている次第であります。
  163. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたの御答弁は規格品ですよ。(笑声)型にはまつたことなんですよ。正にその通りですよ。人を殺してはならないということは規格ですよ。併し人を殺す人があるから死刑に処すという刑法を定めなくちやならんのです。いいですか、人間社会において人を殺すということは最大の罪悪です。そんなことはあり得べからざることです。我々の常識以外のことです。然るにその常識を外す人があるから刑法において死刑を以てこれに臨むと、こう規定しているわけなんです。およそ官公吏にはさようなことはあつてはならないのです。あるべきはずがないのです。併し実際にあり得るのです。又あつたのです。そういう場合におけるところの手当をすべきじやないかというのです。あなたの言うのは、もうそんなことは絶対にあり得ないのだというのです。そんな保証ができますか。私はあなたとここで賭をしても差支えない。必ず起るのです。そんなことはあなた神様でない以上言えるはずはないです。(「特審局の独善だよ」と呼ぶ者あり)千七百人の調査官一人一人に尾行してあなたがついて指導するわけじやないのです。野放しにして全国に網を張らせるわけなんです。その人たちが何をやるかということが、現に私が捉えている事実一つでもあなたたちは監督していないのです。私が持つている事実一つだけだつてあなたは監督していない、現にそうじやないですか。それで多くの善良な市民が迷惑しているのです。それだから私は言うのです。そういう考え方は改めなさい。(笑声)自分たちにも過ちがある、過ちがあつた場合にはこうするのだというふうにお考えになるなら我々も納得しますよ。ないのだと言い切ることはそれは過言だと思います。
  164. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御質問にお答えいたします。従来までにおきましても、只今伊藤委員が仰せになつたように特別審査局の職員につきましては極めて厳重な監督をしておるつもりでありますが、そういたしまして職務を遂行するに適しないような非行のある者は逐次これを粛正いたしております。(笑声)どうかさような具体的な事実がございましたら容赦なく御申告賜わりまして、私のほうといたしましても責任を持つて調査いたしまして、事実を明らかにしたいと考えております。犯罪を使嗾したり、挑撥するというようなことは、これは公務員として許さるべきことではないのみならず、それは犯罪でございますので、かような場合におきましては当然刑事上の問題にもなり得るものと考えております。なお今後とも厳重に監督は励行して行くつもりでございますから、どうか御了承願いたいと思います。
  165. 伊藤修

    伊藤修君 了承はいたします。了承はいたしますが、了承だけでは国民が納得できないのです。私は了承しても国民が安心できないのです。だから法の上においてそういうことがなきように取計うということが、立法者としての最善の考え方ではないかと思う。殊に政府の当局としてもそういうような考慮をめぐらすべきであるのですよ。この点に対しては私は政府の反省を促しておきたい。今後ともいえども、戦時中にあなたたちも我々も経験しておるのですよ。いわゆるスパイによつて我々がひつかかることが多く見受けられたところの事例ですよ。戦後においても行われておるのですから、いわんや今後この法律ができた場合においては当然そういうことが行われることは予見し得ることなんです。捜査のために、捜査に急にして功名を争わんとするところの官吏の常道からいたしまして、手段を選ばずしていろいろな端緒を握ろうとすることは当然のあり方なんです。その人の悪意じやなくても、職務に忠実な余りそういうような手段をお選びになることはあり得ることは想像にかたくないのです。そういう場合におけるところの取締というものは十分この法において保障しておかなくちやならないと思うのです。
  166. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの点は結局特審局の職員が、現行法律上の制度の下におきまして特審局職員が非行をいたした場合に各種の制裁の制度があるわけであります。この制裁の制度は勿論そういう非行を予防する意味において作られたことは申すまでもない点であります。結局それ以外に何らか新しい制度考えなければならないじやないかというような御趣旨と拝承いたしますが、その点にしましては、先ほど申上げたごとく、公安調査庁といたしましては新たなる研修機関を特にお願いして設けまして、そこで厳重なる教養訓練を施すこと、庁内におきましてはその職務の遂行について特別なる監察組織を作り、これを厳重に統轄いたしたい。更に職務執行の基準を明確に定めまして、それらを励行し、その通りにやつているかどうかということを具体的に監察し、自分のところでありまするが、さようなふうにして考慮いたしたいと、かように考えている次第であります。  そのほかに一般の例えば刑法の問題があるとか、或いは懲戒制度の拡充であるとかいうような点につきましては、現行の公務員法その他の一般の例に則つてこれを考えて行くのが全体として相当ではないと、このように考えてこのようなシステムをとつているような次第であります。
  167. 伊藤修

    伊藤修君 研修において基本的に教養し、それから監察によつて常にこれを監督し、その他懲戒その他によつて指導して行くというあり方は、それはまさに公務員として当然のあり方です。結構なことです。特にこの場合のみじやないのです。一般公務員として当然なあり方です。併しこの場合はですよ、非行じやないのです。むしろそれは職務に忠実だとあなたたちは賞与を提供すべき事柄ですよ。捜査方法としてそういうスパイ的捜査方法をとつた場合に、それにたまたま引つかかつて来る者があり得るのです。それを捕えて以てすぐこれをいわゆる裁きをするというあり方が行われ勝ちです。その点を言つているのです。そういうものにつきましてはそれは罪にならないんだ、それは取上げることはできないんだと、こういうふうに規定するとか、或いはそういう行為をした者は云云とか処罰する、こういうふうにここに書かなかつたならば、そういう手段によつてこの種の捜査というものは、調査というものは行われると言うのです、そういうものが一番有効適切な捜査方法なんですから。
  168. 関之

    政府委員(関之君) お答えいたします。相手方の犯罪行為を誘発するというようなことは、これはむしろみずから犯罪を犯すようなことに相成つているわけでありまして、公安調査庁における調査としては厳に慎しむべきことであろうと考えておるのであります。それらの点は若し文字通りお尋ねの点の相手方の犯罪を挑発するというようなことに相成りますと、これはむしろすでに刑法上の問題にまでなつているわけでありまして、それはそのことにおいてすでに私は法で咎むべき、そういう意味において咎むべきことであつて、そういう意味合いにおいて又責任を追及すべき問題であると思うのであります。もとよりさようなことにつきましては、個々の条文においてそういうことを書くよりも、すでにさようなことは一般の刑法上の原則としていけないことになつているわけでありますから、書くまでもないことだろうと考えているわけであります。むしろ私どもといたしましては、そういうようなことのまあ世の非難をこうむると、一般のかたがたにどうも無理なことをすると、非常な迷惑なことをするというようなことをどのようにして調整して世の非難を避ける、その点に対して実は苦心している点でありまして、さような点はこの法案というよりは、むしろ今申上げたような内部の調査の準則を厳重に定め、更に特別な独自な、独自なと申しましようか、機関として別に監察的なものを設けて厳重に監察して行つて、そうして自粛的に部内で統制して、公正なるところの調査、世の非難を受けないような調査を遂行したいと、かように考えている次第であります。
  169. 伊藤修

    伊藤修君 私はあなたが輝々と今御説明になつ官吏の分限令の内容について指摘しているわけじやないです。それはそういう非行がありますれば官吏の分限令によつて処断すればよろしいのです。正にあなたたちがなすべき仕事です。そうではなくして、誘発行為をして犯罪を剔抉するという場合におけるところのスパイ活動、いわゆる官吏のスパイ活動の場合を指摘しているのです。それを現在の刑法において賄えるという、どうして賄えますか。現に横浜の地方裁判所においてそれを無罪にした。検事は控訴している。そうして上級審に行つて今年の末か来年判例が出るでしよう。そうした事案があるのです。現に検察庁でもそれは適法行為として認めて、それに基いて起訴しているのじやないですか。たまたま裁判所がとつて以てそれはそういう誘発行為は罪を構成しないのだ。意思行為を誘導して表現せしめた犯罪行為であると、こういう点において無罪を認定しているのじやないですか。これはあなたアメリカにおいてもその事例はたくさんあるじやないですか。それは直ちに法律で以て処断されるということは言い切れませんよ。それを私は恐れているから、今日まで繰返された、特高警察時代に繰返されているから、恐らく今後もそれを繰返されるだろうと、こう思うのですよ。それはあなたは、例を引いて悪いか知れませんけれども、飯田七三氏あたりに向つて、どうだ、今日の政府のやり方はよくないじやないか、一つ政府顛覆をやろうじやないか、よしやろう、それですぐ顛覆の内乱を企図していると言つて引張つてしまうのです。その報告書に基いてすぐ引張つてしまう。又その人が証人に出て来て、これはいつ幾日どこどこにおいて私にそういうことを言いました。聞いた調査官甲という者は何も処罰されんじやないですか。みずから訴えて出たのだから法律で免除されるのです。この法律によつて相手方はひつかかる、内乱罪として、この法律自体に、そこに免除するようにできておるのですから……、そうでしよう。又そんなことは、免除するとかしないとか、恐らくそれは問題にならんでしようけれども、仮に正論で行つても、その人は法律上免除されることが本法によつて定められておるのです。そういうことになるのじやないですか。それからいろいろな例を挙げて、あなたたちに例をたくさん挙げて御説明申上げるまでもなく、よく御了承のことなんだから、そういう場合におけるところの国民の納得の行くような保障を、規定を本法に設くべきじやないか。又本法に設けなければ、他にどういう方法を以てそれを保障するかということをここで明言して頂きたい。
  170. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 今御設例が出ましたが、ここに政府顛覆をやろうじやないかというようなことを、まあ真剣な問題としてさようなことを公安調査官が申しまして、相手方がよし一緒にやろうじやないかというようなことを申しますと、これは刑法上の問題じやなかろうかと考えておるのでありまして、そういうことは絶対に公安調査官としても許される行為ではないと思います。
  171. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) なお一言、只今御指摘のいわゆる囮捜査につきまして話が出ましたので、検務局の立場から一言附加えて申上げます。  あの横浜で問題になりました囮捜査の麻薬の事件は、麻薬を実際に売つておる者に対して、取締官のほうから話を持ちかけて、結局今お話のようなことになつたという事件でございまして、一審において御指摘通り無罪になりました。控訴審におきまして、必ずしも今のような場合は、証拠的にはこれを無効とする、直ちに無効とするには当らないというので、差戻しになつて、目下更に横浜のほうで調べ直しておるような状況であります。なお附加えて申上げますと、麻薬に関する限りは、麻薬取締法の五十三条に、麻薬に関する違反の捜査に当り、麻薬取締官はこの法律規定にかかわらず、何人からも麻薬を譲り受けることができるという条文がございますので、本件に直ちに適切でないだろうというふうなことでございます。
  172. 関之

    政府委員(関之君) これはお尋ねにお答えするまでもないことかと思うのでありまするが、念のために申上げたい点であります。  それは今設例の、或る人に対して公安調査官が、おいやろう内乱を……、そのために一つ大いに暴動でも起そう、こういうふうなそれだけの話に限定いたしますならば、もとよりこの法案において許される条文は一つも書いてありませんし、又問題は刑法三十五条の「法令又ハ正当ノ業務ニ因リ」、正当の業務というようなことに相成るのではなかろうかと思うのでありますが、勿論それにも当らんのでありまして、お尋ねの通りの事実としますれば、これは刑法上、そういう行為の調査なり何なりに該当する行為であるものと考えるのであります。
  173. 伊藤修

    伊藤修君 岡原君のさつきの御説明は、私が聞いておるのは、囮捜査そのものを聞いておるのです。麻薬の犯罪の内容を、ここで以てそのことを聞いておるのじやないのです。囮捜査そのもののあり方というものが今後繰返されるのじやないか。従来の経験に徴しましても、そういうことがあり得るのです。本来そういうような立場にある人、そういうような意思を内蔵しておる人が、たまたまそういう誘導に対して意思を外界に表示する。表示すれば本法によつて処罰されるのです。その人が黙して語らなければ問題はありません。そういう誘導があれば、かくのごとき意思を持つておる人にそういう水を向けますれば、ついそういう言葉が誘導されて出て来るのです。出て来た場合には直ちに本法によつて処断されるのです。刑法の本則の正当の業務行為によつて云々、こういうことはここに当てはまらないのです。それは相手方のしやべつた人は正当の業務ではない。併しあなたの言うのは、調査官のほうを言うのでしようが、調査官のほうは処罰されないのは当然ですよ。仮に処罰されると純理論を立てましても、本法によつて、事前に申告したのだから免責されるということが本法に謳われておるのです。だから本法の立て方からいつてもそういうことは容易になし得る。囮捜査の非であるということは恐らく岡原君でもお認めになると思うのですが、いいとはおつしやらない。それは判例の上においてどうなるかは存じませんが、少くともアメリカではそれはいけないという判決は確定しておるのです。日本の判例はどうなるかわかりませんけれども、そういう行為によつてなされることはこの際固く禁止すべき方法を考えなくちやいかん。だから本法を改正しろという今意見を申上げているわけじやない。政府は本法で賄うか、賄わなきや如何なる手段によつてそれを防ぎとめるか。公明正大に、あなたたちの企図するところの職務行為を正々堂々と一般の方法によつてなし得ることが期待されるのです。さような非合法というのですか、相手方も非合法だからこつちも非合法ということになれば別問題だけれども、非合法ということが容認されるということはいけないと思う。それに対して厳に慎しむ方法をお考え願いたいと思うのです。あなたがたのいろいろなあれを、弁解を聞いておるのじやなく、具体的なはつきりしたものを伺つたほうかいいのです。
  174. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 重ねてお答えいたしますが、犯罪を挑発したりするような行為は絶対になすべからざる行為でありまして、只今そういうような行動に出る虞れがある、末端の公安調査官がそういうような行動に出る虞れがある、こういうようなことについては厳重にそれを防止する必要があるのではないかという御指摘でございます。御尤もであると考えるのでありますが、これは内部規律といたしましても、職務規範その他のものを作りまして、厳重にさような行動のないような措置を講じたいと考えております。
  175. 伊藤修

    伊藤修君 私はこの際そう長く繰返しても仕方ありませんが、ないことを期待しておるだけじやいけませんから、どうしたらばそういうことが防ぎ得るか、私の指摘するようなことを杞憂されることは、私のみならず一般の人も……、あなたたちも静かにお考えになれば十分おわかりになられると思う。どうすれば防ぎ得るかということをお考え下さい。
  176. 関之

    政府委員(関之君) 今申上げたような、そのほかに、特にこれは私どもとして、そのようなことの有力なる一つの直截な御意見になると思うのでありまするが、法務府には人権擁護委員というものが全国にこれは現在において約二千、それが完了いたしますれば一万余の人権擁護委員が設置されるのであります。これは在朝、在野の各地方における有識なかたがたがなられているのであります。而もその種類は、在朝の法曹のかたがこれに多くなられておるのであります。それでこれらのかたがたにも特にこの法案運用について率直なるお叱り、御意見を承わり、人権擁護委員立場から厳重監視して頂くように実はお願いする予定であります。それらのこともありますれば、職員の非行につきましても直ちに私のほうに反映いたしまして、適切の処置をとつて行きたい、かようなふうに、私も有力なる一つの非行の是正の方法であろうと考えておるわけであります。
  177. 伊藤修

    伊藤修君 余り長くなりますから、そろそろこれで打切りたいと思いますが、今のお考え方も一つの方法でしよう。併し法務府は、あなたの指摘される人権擁護局を課に下げようと言つておる。縮小しようと言つておる。反対の方向に持つて行くのです。そうすると、これと関連するとますます以てそういうことに熱意がないということになる、そういうことも指摘できます。私の言うのは、それも一つの方法でしよう。併しそうでなく、みずからこれに対して反省して、それに対する適切な処置を講ずることを次の機会までにお考え下さい。  それからもう少し……。この第三条ですが、今朝羽仁さんのお言葉を伺つておりますと、幾つかお尋ねしなければならんことがありますけれども、先ず一つだけお伺いしておきたいと思うのですが、今朝たびたび羽仁さんが引用されましたジエフアーソンの理論ですね。いわゆるこの理論は、本法が公布されますれば、まさに第三条の修正されましたハの号に適合すると思うのですが、どうですか。
  178. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。ジエフアーソンのお説が羽仁委員から出たのでございますが、ここで規定いたしておりまする八号は、現実に日本において内乱が行われ、又は行うことを容易ならしめる目的を以ちましてさような内乱が現実に行われることの正しいこと、或いは必要なことを主張した文書ということに相成つておるのでありますから、ジエフアーソンの事例が直ちにこれに該当するものとは考えていないのであります。
  179. 伊藤修

    伊藤修君 第三条は、現実に内乱罪が起つていなければ、第三条のハは活用しないのですか。
  180. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 現実に内乱が行われ、又は行うことの正しいこと、将来の問題でありますが、或いはその必要なことを主張する文書ということになつております。
  181. 伊藤修

    伊藤修君 従つて前段は別としまして、中段、後段に至りますれば、将来内乱が行われることを希求して、そうしてこれこれのこの実現の正当性又は必要性を主張した文書、いわゆる革命しなければならん、血を以て購わなければならん、こういう強い主張がありますれば、これはまさにこれに適合するのじやないか、そういうことは差支ないというのですか。
  182. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。そういう行為がこれに該当する、政府といたしましては、御見解に相違があるかも知れませんが、今そういう行為を取締る必要がある、かように考えておる次第であります。
  183. 伊藤修

    伊藤修君 だから私は言うのです。そういう言質はまさに第三条の八号に該当するということになるのじやないですか。こう言うのです。
  184. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 日本において、将来現実に内乱が行われ、又は行うことを容易ならしめる目的で、只今申上げたような文書の印刷、頒布をやるという行為は、社会的に違法なものであり、且つ危険なものであると、かように考えておる次第であります。
  185. 伊藤修

    伊藤修君 だからこの法文の解釈上、今の設例のごとき場合は、将来そういうことを希求するということのために、そういう言質が吐かれますれば、当然そういうことはこれに適用されるのじやないか、こう言つておるのです。
  186. 関之

    政府委員(関之君) 今局長お答えしたごとく、日本において革命がなされることを容易ならしめるためにその実現の正当性、必要性を主張した、さような文書を作りますと、これに当るわけであります。それでジエフアーソンが現実に使つた言葉を私もここで了承しておりませんからわかりませんが、仮に日本におきましてここに該当することがあれば、それはこの法案に当ると、かように申上げるよりほか方法はないわけであります。
  187. 伊藤修

    伊藤修君 だから抽象的に申せば、具体的な事案に適合する場合においては、私は今のような言質はまさにこれに適合すると考えられるのですが、どうですか。
  188. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 只今伊藤委員から御指摘になりました通り、将来日本において革命、内乱が現実に行われ、又は行うことを容易ならしめる目的を以ちまして、その内乱が行われること或いは行うことの正しいこと、或いは必要なことを主張した文書の印刷、頒布はこれに該当するものと考えております。
  189. 伊藤修

    伊藤修君 それは文字の説明ばかりです。私は具体的事実を挙げてお尋ねしておるのです。革命しろ、武器を持つて起て、血を以て購え、こう言つておるのですから、そうすると内乱、そのほかにそういう言質をなすその人自身が内乱を企図しておるという意思さえあれば、まさにこれに適合するのじやないですか。
  190. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 日本において現在さような文書を印刷、頒布する行為はハに該当するものと考えております。
  191. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、他の例を以ていたしますが、昨日も私は触れましたが、いわゆるレーニン、マルクス、こういうような主義、主張というものが公然国民の間にどんどん頒布、流布されまして、だから日本政治は変更しなくちやならん、若しくは革命しなくちやならん、手段は暴力によつてもあえてこれを厭わないとか、こういう言質をなせば、当然これには含むわけですね。
  192. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) マルクス、レーニンに限らず、ブランキでも、他の言説を引用いたしまして、現実に日本において革命が行われ、又は行うことの正しいこと、或いは必要なことを主張した文書を印刷、頒布した場合におきましては該当いたします。
  193. 伊藤修

    伊藤修君 問題は、指摘したマルクスとかレーニンとか、或いは先ほどの羽仁さんが引用された大統領の意見とか、こういうものはそれ自体なら問題はないですよ。そういう文書、図画を頒布した者が内乱の意図があるかどうかということ、そこが問題になつて来るのですね。そうでしよう。その意図があるかどうかということは、その人の属しておる団体あり方、常の言説、行動、そういうものからあなたがたが認定するということになるのですね、いいですね。認定して破壊活動者だ、こうなつて来るのですね。そういう結果になる。刑事犯のほうは別として、あなたがたのほうの仕事としては、そういう行為をしておる人の意思の問題ですね。その意思をあなたがたによつて認定されるのです。その意思がたまたま内乱の意思があるのだという認定を下すと、その認定とそれらの文書、図画を連結せしめて、そうして内乱の罪としてこの三条の一号のハに適合することになる。そうすると意思の認定にかかつてしまう。その重大なポイントをあなたがたの認定によつてつかむ。あなたなら結構ですけれども、あなた以下の巡査部長程度の人間が認定して、そうしてとつて以て調査官として報告する。その資料に基いて委員会が決定する。こういう点において本法はいわゆる言論の抑圧になる。新らしい革新的意見の思想、政策、そういうものに対するところの非常な抑制になつて来る、こういう点が問題になるのですね。わかりますか、それに対してそこまで本法は及ぶ危険があるのです。法務総裁は、現になされつつあるところの、我々の否定してやまないところの暴力行為ということのみを前面に押出して、そういう団体があることは好ましくない、そういう学者があることは好ましくない、これはもう当然のことであります。併し暴力行為を現実にしなくてもそういう思想の綾、そういう事実の認定、それだけで以て直ちに本法に言う破壊活動者として認定されるのです。それが破壊活動として本法によつて取締られる。だから本法は主として暴力活動を大袈裟にやるという者には適用がない。そうでなくてこうした微妙な点にひつかかる人が多く出て来る。かように治安維持法によつて有名人が多くの被害を受けているのであります。それと同様の結果を受けるから法案の適用に心配しているのであります。あなたたちは品を開けば破壊活動だとか暴力行為だとか、そういつた団体は我々は否定しなくちやならん、それは正にその通りでありますが、そういう団体に本法が適用されることは先ず少いと思うのであります。そうでなくてこうした思想の動き方、行動というものが直ちにとつて以て破壊活動として処断される虞れがある。これが大きな問題だと言うのであります。或いは調査官及び司法警察官、検察官、これらに対しまして、市街の行進が散会されて、その散会後これらに対して衝突した。その体にちよつと手を触れれば普通の公務執行妨害じやなくて、本法に言う公務執行妨害者としての取扱を受けることは必然であります。その場合に体に手を触れた妨害者は直ちに以て破壊活動者となり、そういう人間があればその組合は破壊活動団体になり、直ちにそれで以てその団体解散せよと命令する、こういうことになつてしまう。そういう危険性を多分に含んでいるのであります。だから本法に言うがごとき狙い、大なる破壊活動のみに本法が適用するのじやなくして、そういう枝葉末端において取締まられることは火を見るよりも明らかであります。故に我々はこの点に対する本法のいわゆるあいまいさ、漠然性、こういうところの危険を感じてかように質疑を繰返しているのであります。あなたたちは品を開けば破壊活動をやるのだと、破壊活動だけできれば結構です。それならばこういう規定を全部外せば私は賛成いたします。こういうようなあいまいな規定を外すならば、現実の暴力行為、破壊活動に、ここに立法を変えますのならば私は双手を挙げて賛成いたします。そうでなく味噌もくそも引掻き集めてこれを規制しようとするところにここに無理がある。そういう思想行動が恐ろしいならば共産党的素因を持つた破壊活動はどうか、そういう思想活動はどうか、そういつたものに対する規制方法を出したらどうか。憲法違反の疑いがあつても堂々と出してごらんなさい、そのほうがすつきりしていいのです。そうでなくして狙いが共産党にあつて共産党と言い切れないところに、憲法上言い切れない、だからこういうふうな抽象的な漠然とした基礎の下にこういう法律を作り上げた。従つて本当の狙いというところにはこれが適用しない。そうでなくて枝葉末端の組合活動をする人、学識経験者、こういう人に多く本法が適用されることは明らかだ。それを憂えるためにあなたたちにこういう点を御質問申上げるのであります。今の御説明によりますれば結局そういうことになつてしまうが、如何でありますか。
  194. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの点はこの法案の立て方、第三条などの規定の仕方の根本関係する問題でありまして、この点につきましてはすでに今までにおきましても政府におきまする基本的な考えは御説明申上げていた点であります。法務総裁におかれましてもお答えいたした点でありまするが、改めて政府におきまする基本的な考え方を申上げてみたいと思うのであります。  この暴力主義破壊活動は、私どもといたしましてはこの破壊活動の内容は極めて明確に規定してある、かように考えているわけであります。それは曾つて治安維持法などにおきましては団体を変革し私有財産を否定するという、そういう目的、それは一つのいわば思想でありまして、それを目的とする結社を組織乃至はその目的遂行の行為という広汎な規定の立て方をとつているのであります。私どもといたしましては、憲法の下におきましては思想の自由ということはこれはもう絶対的である。人間の内面におけるところの思想の自由は絶対的なものでありまして、如何なることがあつてもこれを侵してはならない。かようなことは憲法の下においては厳に堅持しなくちやならない点だと思つております。そうして結局今日の憲法下におきましては、外面的な行為において各人は責任を負わなければならない。何人も外に出した社会関係を生じた行為については責任を負わなければならない。かようなふうに考えておるわけであります。かように考えまして、法案の立て方としても、とかく曾つて治安維持法のごとく思想の内面まで追求されるような虞れのある立法の仕方は最も危険なものである。かようなふうに治安維持法を反省いたしまして、第三条におきましては特にいろいろの規定の仕方も考えられるのでありまするが、すべて刑法に規定するかような危険な活動、行為に限定しまして、そうしてその教唆、扇動、予備、陰謀というふうに、すでにもう刑法において規定されている、或いは従来法律中において用いられている言葉を以てやるのが最も確実であり、又いわゆる拡張解釈的な点もこれも防げられる。こういうような点からかかる規定を設けたのであります。そういたしましてこれらの破壊活動の認定も、勿論第一線におきましては団体規制の面に関する限り公安調査庁において行うのであります。そうしましてそれが委員において認定され、更に裁判所において又訴訟問題として認定されるわけであります。これは結果から申上げまして変なことになるわけでありまするが、裁判所において御承認願えないというような認定を委員会においてやることはもとよりいけない。本旨に副わないことであり、又調査庁におきましても、これを裁判所に持つてつて認められるというような確信の下においてすべての証拠を出さなければならないことは、法案全体の建前から見て、私はさようなことになつていると考えておるわけであります。従いまして裁判所に持出しても、もうこれは認められなければならないというその線に沿つてこれらの認定ということが行われなければならないのでありますからして、その線も司法裁判所の再審査という線におきまして、その司法上の構成の線に沿つて調査庁の認定も行われるということに相成ると思うのであります。お尋ねの単にマルクス・レーニン、或いは外国のそういうようなこれと同じような学者の言説を紹介し、或いはそういう一つの歴史的事実を紹介するというようなことは何らこの法案に該当するものではないのであります。又只今伊藤委員のお話の中には例えばこの三条の二号のリの公務執行妨害の罪におきまして、検察官にちよつと手を触れただけですぐ法案にかかるのではないかというふうなお話があつたのでありますが、この法案の、これはくどいようでありますが、第四条、第六条を見て頂けばわかるのでありまするが、決してさようなことはないのであります。さような過去において暴力主義破壊活動をなした団体が継続又は反覆してこのような活動をなしたその団体だけが規制になるのでありまして、かようなことは、結局そのような性格を持つた団体、そのような暴力主義破壊活動のようなことをなすことが性格化した団体、さようなものが規制の対象ということに相成るのでありますから、又そこで問題になりましたが、たまたま行つた或る一人の者が検察官或いは警察官に手を出したと申しましても、恐らくそれは団体活動ということに認定することは困難だろうと思うのであります。そこに行つた参加者の一人がたまたまやつたということになりますと、それはその人の個人的な問題であつて団体的な活動としてやつたという認定は恐らく不可能のものと私は思うのであります。
  195. 伊藤修

    伊藤修君 今、検察官の公務執行妨害は、第三条の二号のリに規定されている、まさに破壊活動の定義のうちに入つているでしよう。これ即ち破壊活動ですか、破壊活動ではないのですか。定義中に含まれておれば当然破壊活動として認定されることは当然じやありませんか。それは私が手に触れたということは一つの設例ですよ。当然その背後には、団体というものが背後にあることは説明を要しないことです。個人の一人が、私が個人の巡査に手を触れたと言つても、それは極く単純に公務執行妨害としての刑法上の罪を受けるに過ぎない。団体を背景にして、例えばこの間のメーデーのように、宮城前広場において集団的になされた場合に、その一人がその警備するところの巡査といさかいをいたしますれば、手を触れるか頭が触れるか、棒で叩き合うか、いずれにしたつてそれはすべてこの破壊活動に含まれるのじやないか。こういうような顕著なことは問題がないですよ。私から見ても問題がない。別にあれはいい行為であるとは言いません。刑法上においても当然処断さるべきことである。併しそうでなくして、神戸にこの間我々が行つて聞きましたが、集会をいたしまして、なだれ出て来る、どちらが誘発したか知りませんが、実際の問題は、彼らはあらかじめ用意しておつたというのです。そういう用意をしておつたことは当事者において知らない、幹部は知つておるでしよう。押し流されて出て来て巡査と衝突したという場合、やはりその団体の一員としてこれは処断されることはこれは当然なことです。その場合において、それは、お前は団体以外の個人の行為だとは認定されません。これはあなたは裁判に携つているからよく御存じのことです。その場合の集団的な行為というものに一括包容されまして、団体活動の一部として認定されることは容易なことです。そういう場合においても破壊活動と認定されるのではないでしようか、それを言つているのです。それからあなたが先ほど縷々御説明になりましたけれども、いわゆる破壊活動そのものを取締ることは差支えありませんけれども、それに便乗いたしましてかような末梢の点まで、思想まで立入つて取締るということは、この運用によつては非常な弊害を生ずると、こういうことを言つているのです。それから治安維持法においては非常に不明確な厖大な用語が用いられておつたというけれども、或る意味においては本法の書き方のほうが非常な不明確な厖大な言葉を使われておるのであります。例えば「政治上の主義若しくは施策を推進し、」これほどひどい言葉がありますか。治安維持法の冒頭に書かれた文字よりこれはまだひどいですよ。この中にどれだけ含むのですか。あらゆるすべてが含まれる、これらのこの中に包容されないものがありますか。又第三条の第一号、修正されたハのこの規定によりましても、「その実現の正当性」、何を以て正当性とするか、あんたたち自身だつてこれはわかりますまい。こういう抽象的な言葉を使つている。まさに最高裁判所の判例による以外に方法はない。又は必要性と、こういう言葉も非常にお考えになつて苦心惨憺されたとは思いますけれども、これ以上には出て来なかつたのでしよう。併しこういう抽象的な巾の広い言葉を使つて治安維持法よりは非常に改善されているという御説明は私は当を得ていないと思う。治安維持法のほうがまだわかりやすいですよ。又「行為の実現を容易ならしめる」、どの程度容易ならしめるか。これも巾の広いことです。ここに書かれた、そういうふうな目的だという認定はあなたたちの手に握られている。それは規制するだけだからいいと言うが、一面においては破壊活動として刑事責任を負う扇動、教唆、陰謀、予備、それらが中に入つて来るじやないですか、両面に責任を負つて来るのですよ。刑法上の責任、行政上の、この第四条による行政実体規定によるところの責任、二つの責任を負つて来るのですよ。あんたが説明するようなかるがるしいものではない。受ける国民の迷惑は甚だしい。(「その通り」と呼ぶ者あり)あなたの御説明では私は納得が行かない。
  196. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 先輩でありまする伊藤委員のお言葉を返すようでありますが、政府として御質問の点につきまして簡単に意見を申上げたいと思います。この法案におきまして団体が規制される場合におきましては、団体の役職員又は構成員がその団体意思決定に基きまして、その意思の実現のためにする行動として、第三条列記するがごとき行為を行なつた場合にその団体が規制されるのでありまして、団体の構成員又は役職員が団体と離れて個人としてかような行為を行なつた場合におきましては、団体が規制されるわけではございません。このことは証拠によつて立証されなければならない建前になつておるのであります。又第二に、政治上の目的云々は大変広汎ではないか、治安維持法に比べましてそれ以上に更に広汎ではないかという御指摘でございます。成るほどこの政治上の目的云々は、それ自体としては広汎であります。併しながらその目的を以て第三条第一項の二号に列記しましたごとき重大な犯罪を行うことが暴力主義破壊活動となつておるのであります。で治安維持法におきましては、御承知通り結社犯の構成を持つておりまして、而もその結社犯は非常に広汎な目的犯として規定されております。その目的の内容に国体の変革或いは私有財産制度の否認という事項を入れているのであります。で、結社犯及び目的遂行犯の違法性は、すべてこの目的の中から流れ出て来るという建前になつておるのでありますが、この法案におきましては政治上の目的を以て殺人、放火、騒擾のごとき重大なる犯罪を行うということが暴力主義破壊活動の実体となつておるわけでございます。更に進みまして内乱を準備と推進するような言論まで抑えるのは行過ぎじやないか、これは内乱が起きたら内乱の予備、陰謀なり、そういうものとして刑法に規定されているものを取締ればよいのではないかという御指摘でございますが、政府といたしましては、ここに掲げてありますような行為が、即ち教唆なり扇動、更には内乱の実現の正当性、若しくは必要性を主張した文書を、内乱の実現を容易ならしめる目的を以て印刷頒布する行為、それが現下の事態におきましては危険且つ違法な行為である、それを取締らなければならないというような確固たる見解を持つているのでありまして、このことにつきましては、先般アメリカにおきまして十一人の共産党幹部がスミス法違反で有罪の判決を受けまして、これに対しましてアメリカの最高裁判所がこのスミス法並びにその当該事件につきまして合憲の判決を下しました。このことにつきましてヴインスン裁判所長官は、かような言動こそ拱手してこれを傍観すべきではない、現在かく明白なる危険あるものとして、これに対してスミス法を適用することは絶対に必要且つ合憲的であるというような言説を述べておられるのでございます。
  197. 伊藤修

    伊藤修君 時間も少いですから簡単に一つ願います。成るほど本法の第三条の二に列記されるところのいわゆる犯罪事実というものはこれは好ましくないのです。これをなす者に対しましては厳刑を以て処断することはこれは何も厭うところではないのです。だからそれは刑法において賄えば差支えないじやないですか、現在の刑法で賄い得ないというならばこれに加重刑を一カ条設ければ何でもないことです。刑法に一カ条を追加することによつて十分賄い得ることです。これを枠を拡げまして、これを予備、陰謀、扇動まで及ぼすというところの必要性、それから殊に第一号の内乱の場合においてはこういう思想の点まで含まれて来るというこのあり方、こういう構成のあり方余りにも神経質過ぎるのです。世の非難を受けるのはここにあるのです。何も放火する、殺人する、あなたたちは口を開けば放火、殺人、強盗、強盗は入つていませんけれども、(笑声)顛覆だとか、そういうような兇悪な犯罪をぱつと表へ出して、そうして国民を眩惑してしまつて国民はそんな犯罪は恐ろしいのだからまさにそれは必要であろう……。豈図らんや刑法のほうでちやんと処罰しているのだ。特段に本法においてこういうことを麗々しく掲げて、以てこれで先ず国民に危険性を指摘しようというふうに図つたとも考えられるのです。その必要毫末もない、そんなことは言うを待たない、恐らくここに列席されている人はさような行為を是認する人は一人もあり得ない。(「その通り」と呼ぶ者あり)ただそれに附加えて扇動とか文書、図画、そういうようなことをすべて賄おうとするところに無理があるのです。ですから率直に破壊活動、好ましくない暴力活動というものを除去しようというなら、それに対するところの厳罰を以てすべきだ、それを死刑にするといつても差支えない、好ましくなければ、輿論がそれを支持ずるならば、それで事足りるじやないですか。そうしてそういうような団体が存在するというならば、それに対する特段の手当をすればいいのです。又捜査方面においても十分それは賄える。そういうようなことを考えるが故に私はその点を指摘しているのです。特審局の、又政府考え方というものはその点に根本の誤りがある。ただ汲々として共産党撲滅のために本法を何とか一つというようなお考え方でこういうような至れり尽せりというような法律を編み出したのでしようけれども、それによつてとうむるところの大多数の国民という者の迷惑さを取上げなければならんと思う。恐らく私がここで申上げるまでもなく、日を経ずしてその危険は現われて来る。実際問題、実際好ましくない事案はそつちのけで、現にこの間御質問申上げたときにも非公開の集会は少しもこれを禁止しないのだと言う。実際の被害は、弊害は非公開の場合に多いのです。この間も申上げた通り公開の席上で以てかような犯罪を企図したり犯罪を扇動したりする馬鹿はない。非公開の場合においてこそそれはなされる。それには本法を適用しないと言つている。本法は却つてそういうものこそ危険だから取締らなければならん。非公開といえどもこれを許さんというならまだ筋は通る。それはあなたがたの手に負えないのだ。大体本法によつてあなたがたの捜査が現在以上な機能を発揮できると思うのですか。現在ですらできないじやないですか。五百人やそこら殖やして表面に現われた犯罪事実の影に隠れたこの地下の活動というものがあなたたちの手に握れると思うのですか。神業ですよ。この神業を(「団体等規正令のほうがずつと強い法律じやないか」と呼ぶ者あり)この法律だけで賄おうという考え方は以てのほかだ。従つてそういうことはできないでしよう。できないと折角こういう法律を作つて死法にしてしまうことは社会の面目上堪えられない。特審局は大きな予算を取つて堂々と店開きをしたけれども仕事は少しもない。先ほどの羽仁さんのお言葉ではないけれども、結局仕事を作るために、あれがこう言つた、誰がこう言つた、あの学者はこういうものを書いた、内乱の意図があるのじやないか、こういうようなことを根掘り葉掘りして、遂にそれを認定して、破壊活動者という極印を捺してしまうことになる。そうしてその団体解散する。そうすればその人間は今度刑事犯のほうではそれに基いて重く処罰されることは必然の結果だ。思つても身の毛のよだつような法律と言わなければならない。こういう点は少くとも反省して頂きたい。本日は時間もありませんので、この次御質問申上げます。八点まだ質問の御答弁が留保されております。これは本日これからやりますと相当時間がかかりますから、一日以後でよろしうございますから、詳細にその一点々々お答え願います。本日はそれをやつておりますと二時間くらいかかりますから、八点一日以後において御回答願いたいと思います。それに対して重ねて質問申上げます。なお本日羽仁さんが御質問になつたいわゆる確信犯に対する問題、それから国民の抵抗権に関する問題、これは私はなお掘下げて質問を申上げたいと思います。あらかじめ申上げておきます。
  198. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 先ほど罰則の立て方につきまして、これを未然の段階において手当をするのは行き過ぎではないかという御質問がございました。昨日お答えいたしましたときには、若干時間がございませんので意を尽さなかつたのでございますが、法律の立て方といたしまして、この一つの犯罪事実或いは実害が発生した場合に、これに対して只今お話のような死刑を以て臨むという建前もないではないのでございます。さりながらこの重大なる犯罪につきましては、極く重大なる犯罪だけに、これは本人の悪性が非常に強いという点からいたしまして、この而も実害が非常に大きいという点からいたしまして、これを未然の段階において防止するということが……、先ず未然の考え方でございます。そうしてそれに対しまして更に共犯のたくさんのいろいろなものを持つて参りまして、これと併行して参るのでございます。ところで現下の情勢に鑑み現在の刑法を以てしては未だこの治安維持に全きものではないというので、昨日も申しました通り特に犯罪の重き者に対し、又その影響の重大なる者だけに対しまして、先ほどお話のような例えば殺人とか放火とか、強盗も入つておりますが、強盗とか爆発物取締罰則といつたような非常に重い者だけにつきまして予備、陰謀といつたような拡張の形式も一方ございます。つまり実害が発生して、これを死刑に処するよりは、その実害を発生すべき程度の本人に悪性が認められた段階においてこれを事前にチエツクすることが、本人に対しても親切であるのみならず、社会全般の公共の福祉にも合するというがうな考え方でございます。
  199. 伊藤修

    伊藤修君 ちよつとあなたの今おつしやつたことに矛盾がありますから、ちよつと言います。  あなたはそうおつしやるけれども、法務総裁は昨日羽仁さんの御質問に対しまして、いわゆる本法の目的確信犯に対しては、これらに対しては何らの考え方は持つていないと、これは止むを得ないのだと、こう言つておるのです。およそ刑の目的というものは、いわゆる教育を目的とするか、一般予防を目的とするか、乃至はその人の個性の改善を目的としなくちやならん。併し本法の企図するものは、そうしたものはこの刑の本質に入つていないのです。何となればかような犯罪を犯す者は確信的にこれをなされておる。その刑の高い低いによつて本人の性質を改善せしめることは不可能であるし、又そういう行為を阻止することも不可能であるし、如何なる刑罰があろうと如何なる制約があろうと、それを突破してこそなそうという強い信念の下に行われるのであります。でありますから刑の如何なる最高刑を以てしてもこれを阻止することはできないのです。してみますれば、本法においてそうでないいろいろな理由によつて、今あなたが御説明になるような目的で以て、刑を、量刑を定めたとすれば、昨日の法務総裁お答えとは少し違つて参ります。
  200. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) いわゆる確信犯に対する処遇の問題につきましては、刑法上の学説が分れておることは伊藤委員も御承知だろうと思います。そこでいわゆる純粋なる確信犯人という者は、その改善不能なる限度において確信犯と言われると、まあ普通は定義するのでございまするが、いわゆる確信犯に対しましても、まあ権衡という問題もございますし、いろいろなことを転機といたしまして本人が考えを変えるということは、これ又当然あり得ることでございます。まあその問題は一つの問題でございまするが、私が死刑と申上げました、極刑を以てこれに臨むと申しましたのは、伊藤さんが、さような実際の犯罪が起きたら刑法の罰条を高めて、極刑を以て臨むことも異存はないというふうなお言葉に私拝聴いたしましたので、実は少し受けて余計なことを申しましたのでございまするが、別に私はさような者を死刑を以て臨むのが本筋だということを是認しておる議論ではないのでございます。これは勿論でございまするが、さような重い犯罪につきましては、やはり本人に悪性の強いものがあり、その悪性が事前段階において相当顕著に現われて来る、従つてその場合においてこれを排除するのが社会公共のためでもあろう、こういうふうの意味でございます。
  201. 伊藤修

    伊藤修君 長くなりますから、この確信犯の問題については後日改めて追及することにいたします。
  202. 一松定吉

    ○理事(一松定吉君) 速記とめて。    〔速記中止〕
  203. 一松定吉

    ○理事(一松定吉君) 速記始めて。本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時から続開いたします。    午後四時三十四分散会