○羽仁五郎君 然るべきかたがたの
意見を非公式にお聞きにな
つたというお
言葉でありましたが、どういう然るべきかたがたの御
意見をお聞きにな
つたのか、この点をお差支えなければ伺
つておきたいと思います。併しそれよりも、何よりも両院の公聴会において然るべきかたがた、これは而も両院の法規
委員会において、これは日本のこういう問題についての最高の権威に属するというふうにお
考えにな
つてお呼びになるかたがた、それらのかたがたがどういう
意見をお述べにな
つておるか、これらを
法務総裁は尊重なさる、勿論尊重なさることだろうと思います。又それ以上のことは余りタツチしますから申上げませんが、公聴会において、最近然るべきかたがたが、公聴会に出席しても無駄だと、我々は折角忙しい中を出て行
つて意見を述べても、
政府の通す
法律はいずれも反対だ、だから公聴会には出ないということをおつしやるかたさえあります。これが折角公聴会
制度を作り、民主的な
制度を作り、これを育てて行くという上には非常に恐るべき点じやないかと思います。
従つて法務総裁は公聴会において、参議院にも間もなく公聴会が行われますが、それらにおいて然るべきかたがた、牧野英一、瀧川幸辰、それらのかたがたの御
意見も開陳されることだろう。これらのかたがたの
意見を鎧袖一触しようとまさかなさるお
気持はないでしようが、これはわざわざお答えを頂くまでもありませんが、そうだろうと思います。で念のために申上げます。
私今思い出すのでありますが、戦争中に私が牧野伸顯伯と申しますか、昔の伯爵にお招きを受けたことがありますが、その際に、すぐ直後に幣原さんにお目にかかるということがあ
つた。そのときに、勿論牧野さんや幣原さんの家にも電話があります。
ところが牧野さんは電話をお使いにならない。そして電話をかけることはできない、私から使いを出すから、その使いが向うに着く頃を見計
つて幣原さんの所に行
つてくれというお話があ
つた。私はそれを聞いたとき涙が出ました。
法務総裁もそれは御同感だと思います。涙が出ました。一体誰がこれらの尊敬すべき老齢の政治家をこのような監視の下に置いているんだろう。私は日本の国を亡ぼすものは官僚だ。日本の国を亡ぼすものは隠密だということは、
法務総裁も虚心坦懷にお認めにな
つているだろうと思います。でこの
法律案は、或る意味において過去の
治安維持法なり或いは軍機保護法、国防保安法なるものよりも近代的にできているだけ或いは恐るべきものであるかも知れない。これは
伊藤委員からの
質疑の過程においても我々も特にこのことを痛感しました。併しこれらの点について要点は、要するに我々が、
国民が税金を出して、そして雇
つて置く
ところの
官吏に、我々自身が破壊的であるか、破壊的でないかということを
判断してもらうという必要がどこにあるのですか。勿論破壊活動は憎むべきです。併し破壊活動に向
つて最も有効なる手段は、この破壊活動をなす
ところの政党なり組合に向
つて、他の政党或いは他の組合が、堂々と政党の活動を以て、組合の活動を以て対抗する以外に
方法はありません。
法務総裁はそれくらいのことはおわかりだろうと思う。福澤諭吉がこういうことを言
つておる。銭を出して
官吏を雇
つて、その
官吏に我々が如何に生くべきかを教えてもらわなければならない、そんな
国民かと、日本
国民は……。この
公安調査庁長官に、あなたは一体どういう人を任命するつもりですか。例えば
吉河君のような人を任命なさるつもりですか。堂々たる天下の政治家や労働組合の指導者をその管轄の下に置こうというお
考えですか。あなたはこの公安審査
委員会というものに節操あり
性格のある立派な紳士が一人でも入
つておいでになるとお
考えになりますか。
伊藤委員からの御質問の間にもよくおわかりのように、この審査
委員会というものはフエイクですよ、偽善ですよ。何らの識見もない、事実上においていわゆる
公安調査庁というものから與えられた資料だけで以て
判断する。これに一人でも紳士らしい紳士が就任を承諾するとあなたはお
考えにな
つているか。例えば衆議院の公聴会において阿部眞之助君がややこの
法案の必要を認めたと言
つて、鬼の首を取
つたように自由党のかたがたも言
つておられるが、併し阿部眞之助君に対しこの
委員会の
委員にな
つてくれと言
つて、彼が
承知すると思いますか。勿論断わりますよ。特審の手先にな
つて、まあ甚だ失礼であ
つて、或いは取消すべきであるかも知れませんが、岡つ引の手先になるのだ、いやしくも紳士が、節操あり信念のある人がこの
委員会に一人でも入るとお
考えにな
つたら、これはできてからのお手並みではつきりわかることです。私は一人も入る人はあるまいと思う。そういうことで本当にこの
法律を
国会を通過させたいとお
考えにな
つているかどうか。
大統領トルーマンはアメリカの国内安全保障法に署名を拒絶しているではありませんか。あなたも立派な御人格、政治家であられるのなら、堂々と自分はこんな
法律を
国会に出すことはできない、
法務総裁をおやめになるということのほうがどれくらい私は本当の意味における真実の尊敬をかち得られるゆえんであるかわからない。トルーマンが国内安全保障法に署名を拒絶したのは、決してトルーマンがアメリカにおいて起る
ところの暴力活動というものを容認しようというのじやないのですよ。これはおわかりになるだろうと思います。破壊活動というものは一片の
法律によ
つて防止できるものではない。それよりも政党に対しては政党、堂々たる政党はその政策というものを以て誤まてる政党というものと戰い、
国民の支持のない政党や
国民の支持のない労働組合が汽車をひつくり返えそうと人を殺そうとした
つて、そんなものを
国民は支持しますか。又そういうことができるはずはありませんよ。又いやしくも政党なり労働組合なりが、今日の
民主主義社会において世論の支持を得ていなければ何事もできないということはよく知
つている。それが好んで人を殺したり火つけたというようなことをやることがあり得ますか。私は今の点についてどうか
法務総裁が、そう申上げては失礼かも知れませんが、私
どもから拝見すれば、高齢のその節を汚されることがないということを希望申上げても決して失礼ではないと思いますが、如何ですか。