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羽仁五郎君 具体的に申上げますと、恐らく今
法務総裁のおつしやつたような、その後の政令として生きておるもの、その中の最も問題になるのは例えば警察予備隊令であると思う。それでこの警察予備隊令というものは、言うまでもなく
国会の
審議を経たものではありません。そうして又警察予備隊令について
政府が発表せられた見解を、
国民は決してこれが
国会における適法なる
審議を経て発表せられた見解であるとは受取
つてはおりません。ところが御
承知のように、警察予備隊というものは新らしい
意味における
日本の防衛力として今日は
考えられておる。で、この防衛という問題について私は
法務総裁も恐らく御
同感だろうと思うのでありますが、
日本に最悪の防衛機構というようなものが発生することは飽くまで避けなければならない。我々としては最善の防衛力というものが発生することを唯一の目的としなければならない。ところが
只今申上げたような
関係で警察予備隊令というものが最悪の状況の下に発せられておる。
従つて今日警察予備隊というものに対する
国民の支持というものは、明朗なものではないということは、
政府も認識しておられるだろうと思うのです。で、防衛力というような極めて重大な、そうしてデリケートな
関係を含むものが、
国民の明朗な支持を受けて発展して行くか、それともそういうようなものが、あいまいなものがあ
つて、それがそのまま大きくな
つて行くということについては重大な問題があると思うのであります。近来
国会において討議されておりまする戦力等に関する思想も、その出発において、
国会において民主主義的な討議の結果出発せられたものであるならば、今日のような苦境に
政府が立たれることもないと思う。これをこのまま今後もや
つて行かれるということが如何に最悪の防衛機構が成立してしまう慮れがあるかということは、
法務総裁も私はひそかに御心配にな
つておることではないかと思うのであります。第一歩がすべてを決定するのであるということは今更申上げるまでもないのであります。私はそうした
内容的な、而も今申上げるように、
日本が過去において非常な過ちをおかし、そうしてその過ちが
日本国民を欺いて、そうして最大の不幸に陥れたような、そういう力
関係というものがなお不幸にして一掃されておるという確信を一般に与えていない今日、新らしい民主主義的な防衛力を建設されるという重大な使命を持
つておられる
政府、こういう問題とも関連をして、決して単に親は死んでおるけれども、子は生きておるというような譬え話で解決せられる問題ではない。理想的に、最も理想的に
日本が未だ曾
つて民族の上に経験したことのない敗戦と、そうして
占領、それから出発して、いわばしばしば繰返されましたように、全く新らしい民主主義的な出発をするのでありますから、その点において第一に、
原則的に
占領の終結、完全なる独立、第二には、適法に
日本国
憲法の命ずるところに
従つて国会において適法なる
審議を受けていないものをそのまま存置するというような態度をおとりになることなく、第三には、飽くまで
国会の
審議を鄭重に
考えて、民主主義に対する
国民の信頼を高めて行くという
意味において、この
ポツダム宣言の
受諾に伴い発する
命令に関する件はすべて消滅したものとして新らしい立法を以て
国会に諮られる意思はないのか。若しないとするならば、今の申上げた三点につきまして
政府はどういう態度をおとりになるのか、
占領は終結したのだ、独立したのだという御判断は私もよく了承するのでありますけれども、併しそれが事実の上において現わされない限りは、
国民の間に不幸な臆測が残ることを恐れますので、重ねて以上三点について
法務総裁の
所見を伺わして頂きたいと思うのであります。