○羽仁五郎君
恩赦の
関係について
法務総裁に原則的な
考え方を伺
つておきたいと思うのでありますが、繰返して同じ問題について御
意見を伺うことは避けたいと思うのでありますが、すでに先ほど来各
委員から、
伊藤委員からも
法務総裁の御
意見を伺
つてある、いわゆる普通に世間で言われておる
政令三百二十五号違反、
占領政策違反という事件、そしてその中には
共産党関係の事件も
相当に含まれておる。この問題でありますが、この問題についての
法務総裁のお
考えは、前々回の本
委員会のときに私から
お尋ねをいたしました際に、
法務総裁が私の申上げましたような点を十分
考慮されるということを
お答え下さ
つておるので、重ねて伺うことは大変本意ではないのでありますが、ただその点について伺
つておきたいのは、
法務総裁は、私としては
法務総裁に期待する
ところは、この法の尊嚴というものを飽くまでお守り下さるということを期待しておるのであります。で、先に検事会同において訓示なさいました御趣旨もその点にありましたわけで、法の尊嚴というものが堕されてしまうと、事態は
民主主義において收拾すべからざるものになる。従
つて今回行われます
恩赦の場合にも、飽くまでも法の尊嚴というものの見地から
考慮されて行かれるものだと思います。勿論、現在政党内閣制度をと
つておられるのでありますから、その政党の政見というものがそこに働かれることは十分でありますが、併しいやしくも政党の政治上の見解というものが法の尊嚴をも侵しで行くような事態があるならば、これは
法務総裁として立派に法を守
つて頂くものと思います。で、私は今思い出すのでありますが、大正の末年でありましたか、
昭和の初年でありましたか、
法務総裁よく御
承知の当時の学連事件、大学の学生諸君の中に、共産主義的の宣伝活動がありまして、これが当時、共産主義の宣伝をも直ちに破壊活動と見るような
考え方から検挙され、処罰され、それに対して美濃部先生が專門家として批評せられて、たとえ共産党の諸君が、法廷を階級闘争の場と
考えることがあ
つても、裁判所が法廷を階級闘争の場と
考えるようにな
つてしまうならば、
民主主義的な法の権威というものは地に堕ちてしまうのだということを述べておられたのを、当時私は読んで深い感銘を受けたことがあるのですが、最近私
法務委員として地方に派遣せられ、裁判所或いは検察庁において、検事正或いは裁判所長のお
考えを伺
つております時にも、とかく共産党というものに対しては法の
保護が及ばないというように誤解されるのではないかと思えるお
考えを伺
つて、ひそかに心を痛めております。私は念のために申上げておきますが、共産主義者ではないのであります。併し飽くまでこの法の
保護というものの上に立
つて行きたい、飽くまで
民主主義の確信の上に立
つて行きたい。従
つて我々は
民主主義への確信の上に立つならば、
法務総裁も訓示せられましたように、共産主義というものは恐れるに足りないという確信を持
つております。併し自分自身のほうで法の尊嚴というものを崩すならば、これはまさに共産主義は恐るべきものとなるでしよう。共産主義以外にも右翼の活動も恐るべきものになる。法の確信さえあるならば、それらのものは恐るべきに足りないのだと思います。従
つてこの三百二十五号等に
関係するような問題等についても、私はこれらの事件に
関係して生じました或いは殺害であるとか、その他の刑法によ
つて当然その責任を追及されなければならない
犯罪が、それから発生しておるものがあると思います。これも本来
考えてみれば、実はその際にこの
政令三百二十五号なり、或いは
占領政策によ
つて、
日本憲法において保障されておる
ところの言論なり、出版、新聞の自由というものが
占領軍によ
つて制限されたということは、直ちに納得しにくい場合もあ
つたということは、我々として
考えなければならないと思います。一方では新聞の自由を保障しておる。併し他方で
占領軍の武力を以て新聞を検閲される。これに対する反抗心というものが
国民の間にあることは、その理由のあることは
法務総裁も御了解になるだろうと思います。
国民が何も反抗しないようにな
つてしまうほど恐ろしいものはないのであります。或る意味において
国民が反抗心を持
つておるということは、
日本国民未だ亡びずと言わなければならん点もあるのであります。従
つて私は
国民が或いはその判断を誤
つている場合もあるかも知れませんが、
日本国民がみずからこれは正しいことではないのじやないかと思う場合には、十分反抗するそれだけの気力を持つ
国民であることを将来永久に希望するものです。併しその際とかく権力者、或いは
占領軍、或いは
占領軍と協力する
日本側の官憲、又更に憎むべきは
占領軍の威を借りて自己の官僚主義的な権力をほしいままにしようとする官憲が不幸にして今日まだ
日本にあとを絶
つていないことも、
法務総裁もよく御
承知の
通りであります。そういう意味で私は特にこの三百二十五号
関係において明白に或いは人を殺し、或いは人を傷け、或いはものを盗むというようなことに
関係しているものについては、これについても多少の
考えなければならない点があるとは思いますが、そういう点については暫らく措いて、それ自身いわゆる
占領政策違反というものについて実際上においてはそうした政治上、或いは思想上、或いはその政策に
関係して、
占領期間中のそうした特殊の
事情によ
つて発生し、検挙され、起訴され、或いは刑を受けておるというような人々に対しては、この際に
恩典を及ぼすということが私は理論上正しいのであり、そして又これが法の権威を共産主義者の人々にも痛感せしめる、感銘せしめる最大の
方法であるというように思いますが、
法務総裁はどうお
考えにな
つておられましようか。前回の質疑と重複しておる点があることを大変恐縮に思いますが、お
考えを伺
つておきたいと思います。