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1952-03-06 第13回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月六日(木曜日)    午後一時十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君    委員            左藤 義詮君            鈴木 安孝君            長谷山行毅君            岡部  常君            吉田 法晴君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   証人    本富士警察署長 野口  議君    警視庁巡査   柴  義輝君    警視庁巡査   茅根  隆君    警視庁巡査   里村 光治君   ————————————— ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (東大事件に関する件)  (右件に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を開きます。  本日は東大事件につきまして、別に御出席証人各位より証言をお聞きいたします。なお本日は逐次各証人証言を聴取いたしまして、各人別に質疑を行いたいと思いますが、如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小野義夫

    委員長小野義夫君) さよういたしたいと思います。今証人諸君が入つて来たらば、宣誓ののもに柴巡査から一人々々逐次証言を聞いて、各質問をいたして、その後は各証人が自由に御退散になつていいということにいたしたいと思います。  では証人のかた入つて頂きます。  証人各位に御挨拶を申上げますが、公務御多忙の際わざわざ御出席を頂きまして、誠に有難うございます。御承知東大事件につきまして、これから証言を求めます次第でありますが、その前に宣誓をお願い申上げます。なお念のために申上げますが、証人には偽証その他の罰則がございますので、よく御承知のことと思いまするから、詳細のことは申上げませんが、この点御注意申上げます。  それでは宣誓をお願い申上げます。全員起立をお願い申上げます。    〔総員起立証人は次のように宣誓行なつた。〕    宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 野口  議    宣誓書   良必従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 柴  義輝    宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。          証人 茅根  隆    宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。          証人 里村 光治
  4. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御着席を願います。  それでは柴巡査を除きまして他の証人各位は別室で結構ですが、お待ちを願います。
  5. 野口議

    証人野口議君) ちよつと私委員長様にお願いがございますが、よろしうございますか……。一昨日御答弁申上げましたうちで、ちよつと違つた点だけをただ一点……あとでよろしうございますか。
  6. 小野義夫

    委員長小野義夫君) あとであなたの順のときに御提出の書類について、なおあなたから概略の御説明を頂けば結構と思います。あとで結構です。  それではこれより柴証人証言を聴取いたします。お尋ねのおありのかたは御発言を願います。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 あなた柴さんですね。
  8. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい、そうでございます。
  9. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは警察官におなりになつたのはいつ頃ですか。
  10. 柴義輝

    証人柴義輝君) 昭和二十一年十一月十日であります。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 それで証人は現在お勤めをなさつておる職務内容は。
  12. 柴義輝

    証人柴義輝君) 本冨士警察署警備係勤務であります。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 警備係という職務内容は。
  14. 柴義輝

    証人柴義輝君) 治安維持のため必要な事項調査し、又取締りをすることを職責としておる勤務であります。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、文字に現われておる單に警備ということでなくして、いわゆる予防警察に入るわけですか、それが本質になるのですか。
  16. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、警備係というものは、そういう予防警察本質を持つものを言うのですか、それとも他の純然たる警備というものもあるんですか。
  18. 柴義輝

    証人柴義輝君) 予防警察を建前としますが、それに発生した事件に当るという場合もございます。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、あなたはそれがあなたの持つところの職責でありますね。
  20. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうであります。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、問題になつ警察手帳ですね、警察手帳に書かれておることは、結局あなたの職務行為遂行上書かれたものであるんですか。
  22. 柴義輝

    証人柴義輝君) 職務上参考として記入したものであります。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 職務遂行されるためにですね。
  24. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 検分したことをメモされておつたんですね。
  26. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると職務内容ですね。
  28. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 いつ頃から今のような事実上のそういうような職務行為をやつていらつしやるのですか。
  30. 柴義輝

    証人柴義輝君) 警備係となりましたのが二十六年の五月三十日からであります。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 そのときから始終そういうふうにやつていらつしやるんですね。
  32. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうであります。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 それは前任者の引継ぎですか、上司からのそういう職務行為遂行指示があつたわけですか。それともあなた單独にそれは考えておやりになつたことですか。
  34. 柴義輝

    証人柴義輝君) これは上司の命によつて勤務を命ぜられたのであります。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 上司というとどういうおかたですか。あなたがおつしやる上司というのは、どういうおかたを指すのですか。
  36. 柴義輝

    証人柴義輝君) 警察署長であり、総監であろうと思います。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 総監からの命令があつて、それであなたのほうの署長命令があつて、そうして署長からあなたに命令があつたわけですか。
  38. 柴義輝

    証人柴義輝君) その系統については私ははつきりしません。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 だから系統はわからんにしても、あなたの言う上司というのは、誰からそういう指揮があつたわけですか。あなたが任官されて職務遂行する場合において、お前はこういうことをやれという命令があるわけですね、その命令に基いておやりになつたと、こうおつしやるのですが。
  40. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 その命令されたのはどういう人ですかと聞いているんです。
  42. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 警備係を命ぜられたのは誰から命ぜられたかと聞いているんです。
  43. 柴義輝

    証人柴義輝君) 署長でございます。
  44. 伊藤修

    伊藤修君 署長から……。それは警備係の任命は警視総監からでしよう、それも署長からですか。
  45. 柴義輝

    証人柴義輝君) 我々は辞令を頂いてその勤務をするのでありまして、辞令署長殿から頂きました。
  46. 伊藤修

    伊藤修君 辞令を頂くと、その職務内容についても指示を受けるわけですね、警備係としてお前を任命する、従つて警備係職務はこういうことだから、この面について仕事遂行しろと、こういう指示を受けるわけですね。
  47. 柴義輝

    証人柴義輝君) 受けます。
  48. 伊藤修

    伊藤修君 その指示従つてこれをおやりになつたわけですね。
  49. 柴義輝

    証人柴義輝君) 我々は上司命令ばかりでもなく、警備係として、職責上必要があると認めた場合は個々の場合でも行います。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 それは併し個々の場合であるということは、結局警備係として與えられた職務行為の範囲内においておやりになるわけでありますね。
  51. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、そればかりではありません。やはり警察官たる以上は他に各種犯罪が行われた場合は、それに携わらなくちやなりませんから……。
  52. 伊藤修

    伊藤修君 それはわかつていますよ。殺人があれば警察官としてその現場にほかの警備の係りでも行かれることもあり得るでしよう。それをお聞きしているわけじやないのです。あなたがこの仕事を、警察手帳に書いてあるような仕事をおやりになつたことは、そういう指示があつておやりになつたか、警備係としての職務行為の当然の内容と心得ておるから、その職務遂行をしたのかと、これを聞いておるわけです。
  53. 柴義輝

    証人柴義輝君) 個々の場合でやつた場合もありますし、上司の命によつてつた場合もございます。
  54. 伊藤修

    伊藤修君 個々の場合においてもそれは当然職務行為内容だと、こう心得ているわけですね。
  55. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい、そうです。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 そういう職務遂行された始末ですね、遂行された結果ですね、結果は上司報告なさるのですか、なさらないのですか。
  57. 柴義輝

    証人柴義輝君) 必要な事項については報告いたします。
  58. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、具体的に今度お尋ねしますと、警察手帳に書かれてあるうちで、あなたが必要と認められた事項上司報告されるわけですね。
  59. 柴義輝

    証人柴義輝君) いたします。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの報告するその上司は誰ですか。
  61. 柴義輝

    証人柴義輝君) 署長でございます。
  62. 伊藤修

    伊藤修君 署長に直接具申するわけですね。
  63. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、それは警備主任を通じてから……。我々は警備主任のほうにします。
  64. 伊藤修

    伊藤修君 警備主任を通じて署長報告するわけですね。
  65. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい、そうです。
  66. 伊藤修

    伊藤修君 警備主任という人はどういう人ですか、あなたのほうの警備主任は何と言う人ですか。
  67. 柴義輝

    証人柴義輝君) 藤原警備主任です。
  68. 伊藤修

    伊藤修君 藤原何とおつしやいますか。
  69. 柴義輝

    証人柴義輝君) ちよつと思い出せません。
  70. 伊藤修

    伊藤修君 それは部長ですか、警備補ですか。
  71. 柴義輝

    証人柴義輝君) 藤原警部補です。
  72. 伊藤修

    伊藤修君 藤原警部補、その人が警備主任ですか、その警部補報告するわけですね。すべてあなたたち日常活動の結果をその人に報告するわけですね、あなたたちがそう思つた事項については……。
  73. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  74. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、警備主任署長にそれを報告されるわけですね。
  75. 柴義輝

    証人柴義輝君) いたされると思います。
  76. 伊藤修

    伊藤修君 あなたたち直接に署長報告したことがありますか。
  77. 柴義輝

    証人柴義輝君) ございません。
  78. 伊藤修

    伊藤修君 常に警備主任を通じて報告しておるわけですね。
  79. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  80. 伊藤修

    伊藤修君 それについて警備主任若しくは署長から何か報告の結果に基いて、改めて今度指示を受けるようなことがありますか。
  81. 柴義輝

    証人柴義輝君) ございます。
  82. 伊藤修

    伊藤修君 ありますね。あなたたち報告したことについて、それについて改めてこういうふうにしろというような指示を受けることがありますね。
  83. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  84. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、尾行するとか、或いは教室へ行つて傍聴されるとか、身分調査をするとかいうことはあなたたちの独断の考えでおやりになつたんですか、それは指示もあつておやりになつたんですか。
  85. 柴義輝

    証人柴義輝君) 教室に入つて傍聴したというようなことは一度もございませんです。尾行張込等については上司の命によつてやる場合もございますが、我々職責上の判断としまして、一般犯罪捜査、内偵、又は防止のために必要と認めた場合尾行張込をやります。これも尾行張込をやつたがために、その個人に対して身体の自由を奪うとか、又は名誉を築けるようなことをしない限度において行います。
  86. 伊藤修

    伊藤修君 そういう尾行張込身許調査は、いわゆる刑事訴訟法の百九十何條ですかに言う任意捜査の範疇に属することでしようね。
  87. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。任意調査でありますから、身許調査においては……。
  88. 伊藤修

    伊藤修君 身許調査調査に相違ないけれども、その他の尾行とか、張込とかいうことは、それは捜査上必要なことであるのでしようね。いわゆる任意捜査と称せられるものですね。そうですね。
  89. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  90. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとそれには何かの目的がなくてはならんですね。
  91. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  92. 伊藤修

    伊藤修君 それはどういう目的でおやりになつたのですか。
  93. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学生新聞とか、学内に張られますビラ等によつて張込尾行行なつております。
  94. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、学生新聞とか、ビラというものがどういう犯罪になるのです。
  95. 柴義輝

    証人柴義輝君) 結局どこかで無届集会が持たれるのではないかと思われるようなビラ内容も出てございますから、それらについて注意いたしております。
  96. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、無届集会、いわゆる公安條例違反事件のために捜査するというのですか。
  97. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学内におきましては、殆んどそういう方面の捜査をやつております。
  98. 伊藤修

    伊藤修君 お断わりしておきますけれども、私の今お尋ねしているのは、東大学内においてあなたがたが職務遂行なさつておることについてお尋ねしておるのですから、それ以外の市中でおやりになつていることをお尋ねしているわけではないのですから、それを基本に置いて頂きたいと思います。
  99. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  100. 伊藤修

    伊藤修君 学内において捜査をなさつておるのは、公安條例違反容疑があると思うから捜査をなさつておられたのですね。
  101. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  102. 伊藤修

    伊藤修君 それ以外には目的はないのですね。
  103. 柴義輝

    証人柴義輝君) 思い出せません。
  104. 伊藤修

    伊藤修君 思い出せないじやない。あなたたちは長い間信念を持つて国家のために警察権を行使されておつたのですから、思い出せないような仕事をなさつておるはずがないのです。而も東大という大きな対象を持つて仕事をなさつておるのですから、そこであなたがたは日常警察活動をなさつておるのですから、その目的が思い出せなくて職務遂行をなさつておるはずがない。政令三百二十五号違反があつたとか、或いはその他の治安撹乱の兆があるとか、何かの目的があつたと思うのですが、それは率直におつしやつて頂いていいのですよ。何の目的があるからいけないというのではないので、あなたたちがどういう目的を持つて職務を忠実にお果しなさつたかということをお聞きしているのです。そのことで何もあなたを究明する意味じやない。この委員会は事実をお聞きして判断の資料に供したいと思うだけなんですから、事実を率直におつしやつて下さい。
  105. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学内におきましては、そういうような不穏ビラが毎日のように撒かれておりますものですから、そちらのほうの公安條例違反に該当するのではないかと思われるような集会については、張込又は尾行行なつております。
  106. 伊藤修

    伊藤修君 公安條例違反だけで張込尾行なんかを行うということはちよつと考えられませんがね。そうじやないですか。無届集会というようなものについて貴重なあなたたち職務を割くということをするのですかね。ほかに何か……。
  107. 柴義輝

    証人柴義輝君) 無届集会と言いますのは、結局法に違反しておる集会でございますから……。
  108. 伊藤修

    伊藤修君 それはわかつておりますよ、條例に違反するのですから……。それも一つの容疑でしよう。併しそれだけでは余りに仰々しいじやないですか。無届集会なんというのはやればすぐわかりますから、集会しているのですから、尾行しなくたつて張込みしなくたつて、そんなことはすぐわかるじやないですか。集会があるということはすぐわかりますから、それですぐ解散を命ずればよいのでしよう。だからそんなことにあなたたち尾行したり張込みしたりする必要はない。
  109. 柴義輝

    証人柴義輝君) 我々がやりますのは、そういういつどういうことについて大会を持つ、集会を開くということに対して、場所等はなかなか発見できないのであります。
  110. 伊藤修

    伊藤修君 発見できないといつて、それは大学構内に限ることですから、大学構内以外のことは別問題ですから……、そんなことは別に張込みしなくたつてわかることです。大学構内のどこの教室でやるかということは、すぐわかることです。張込みしたり、尾行までせんでも……。
  111. 柴義輝

    証人柴義輝君) 大学構内だけでやるとは限りませんです。
  112. 伊藤修

    伊藤修君 それは外に持出すこともあり得ることも考えられますね。
  113. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  114. 伊藤修

    伊藤修君 そういうことのために張込みしているのですか。
  115. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  116. 伊藤修

    伊藤修君 それは考えられないですよ。何かはかに治安撹乱の兆があるとか、或いはあなたが先ほどちよつと片言漏らされたように、いわゆる不穏文書を撒かれる、よつて以てそれは国内治安に重大な影響があるのだというように考えて、治安保持目的を以て、そういう兆があるかどうかということを内偵していらつしやるのではないですか。これは国家のために率直におつしやつて頂いたほうがよろしいですよ。
  117. 柴義輝

    証人柴義輝君) もう一度おつしやつて下さい。
  118. 伊藤修

    伊藤修君 あなたが警察手帳に書かれておるような御熱心な職務行為の御遂行をなさつていらつしやるその姿というものは、その目的というものは、いわゆる何かの犯罪容疑があつて任意捜査をなさつておると、その方法としては張込であるとか、尾行であるとかいうことをしておると、こうおつしやるので、然らばその目的は何かと言つておるのです。ところがあなたはさつきから、公安條例違反だけだと、こういうふうに考えておるので、そうじやないのではないか、もつと基本的に大きなものがあるのではないかと、こう聞いているのです。具体的に言えば、共産党細胞活動がどうしておるかということを捜査するにあるのではないかと、こう聞いているのです。
  119. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうであります。
  120. 伊藤修

    伊藤修君 それが主たる目的でしよう。
  121. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  122. 伊藤修

    伊藤修君 そういうふうに率直におつしやつて頂けばわかりやすいのです。それで、共産党活動が思想的の活動なら、これは許されたことです。それが非合法化して行くかどうかということをあなたたちは常に内偵しておると、こういう意味なんですね。
  123. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、そうじやありません。学内で撒かれておりますところのビラは、東大細胞と名を打つておるのが相当ありまして、東大細胞は二十五年の五月の十日、多分解散届を出しておると思いますのですが、まだそういう活動行なつておりますものですから、その実体をつかみたいと思つてつております。
  124. 伊藤修

    伊藤修君 それはまさにお知りになりたいことですから、結構です。そういう目的のためにも狙いがあるわけですね。
  125. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  126. 伊藤修

    伊藤修君 次にまあそういう結果、ときどきよく学内においていわゆる不穏文書というものが、まああなたたちからお考えになればいろいろな見方もありましようが、不穏文書というものが撒かれておる、こういうことはあつたのですね。ありますですね。
  127. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありました。
  128. 伊藤修

    伊藤修君 それはそういう撒かれたいわゆる文書を勿論入手なさつたでしようが、その撒いた団体若しくは物、人というものを御調査なさつたことがありますか。
  129. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  130. 伊藤修

    伊藤修君 ありますか。それであなたたち職務上の観点から見て、いわゆる不穏文書と思われるような文書がしばしば撒かれるということについて、大学側に絶えずかようなことをなさらないように、いわゆる取締つてもらいたいというようなことを大学側に申入れたことがありますか。
  131. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  132. 伊藤修

    伊藤修君 誰に申入れたですか、学校当局のどういうところに申出ましたか。
  133. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学生課のほうだつたと思います。
  134. 伊藤修

    伊藤修君 学生課のその担位の、主任ですね。
  135. 柴義輝

    証人柴義輝君) お名前はわかりません。
  136. 伊藤修

    伊藤修君 学生取締つておる人に申入れた。
  137. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  138. 伊藤修

    伊藤修君 そうしてその結果、効果があつたですか。
  139. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  140. 伊藤修

    伊藤修君 爾後いわゆる取締つて、そういうものが撒布されるようなことがなかつたというような効果はなかつたですか。
  141. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  142. 伊藤修

    伊藤修君 依然として撒布されましたか。
  143. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  144. 伊藤修

    伊藤修君 二月二十日のこのポポロ劇ですね。いらつしやつたですね。
  145. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行きました。
  146. 伊藤修

    伊藤修君 それは先ほどお伺いしたが、あなたはいわゆる警備職務内容としていらしたのですね。
  147. 柴義輝

    証人柴義輝君) 二月の十四口の学生新聞であつたと思いますが、二月二十日反植民地闘争デーの一環として、東大においては劇団ポポロ松川事件を主題にしたところの劇をやるというような新聞を見ましたものですから、一応どんな様子か見てみようと思つて行きました。
  148. 伊藤修

    伊藤修君 私のお尋ねしておるのは、おいでなつたことは事実ですか。
  149. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行きました。
  150. 伊藤修

    伊藤修君 おいでなつ目的は、先ほど前提としてお伺いした、あなたの職務行為としていらしたのですね。職務遂行のためにいらしたわけですね。
  151. 柴義輝

    証人柴義輝君) 遂行というよりも……。
  152. 伊藤修

    伊藤修君 そういう堅苦しい言葉を使つてはおかしいけれども、それにいわゆる尾行したり、張込みしたり、内偵したりする目的のためにいらしたわけですね。
  153. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、そうではありません。
  154. 伊藤修

    伊藤修君 勿論学内集会ですから、学生又は学校の職員の人なんかだけの集会であるということは聞いておりましたのですけれども、新聞でも見ましたように、反植民地闘争デー云々というようなことも出ておりましたものですから、一応外部のものがそれに出入りをしないかと思いまして、外の様子を見に行きましたのです。そうしましたところが、一般人が入つて行きましたものですから、まあ自分も演劇を見てみようと、中の様子を見てみようと思つて中へ入つて行きました。
  155. 伊藤修

    伊藤修君 私のお尋ねするのは、あなたが個人で芝居が見たいから入場したというのではなくて、その催しがどういうものであるかということを職務上知つておきたいという意味において入られたのですか。
  156. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい、そうです。
  157. 伊藤修

    伊藤修君 だからして、見れば、それはまさにあなたの司るところの警備というものの職務内容ではないのですかと、こう聞いておるのです。従つてその劇の途中において、今日の催しは異常ないという中間報告をなさつておるのですから、そういうところから考え併せましても、あなたが単なる物好きで観劇に行つたというふうには考えられないのですが、どうですか。
  158. 柴義輝

    証人柴義輝君) 職責上一応様子を見に行こうと思つて行きました。
  159. 伊藤修

    伊藤修君 そうでしようね。それが本当でしよう。若しあなたが一個人として観劇するために行くのなら、勤務時間中に遊んでおるということになつて曠職の護りを免かれないですからね。そうしてその結果はどうなんですか。いわゆる異常なかつたということなんですか、演劇内容は。その会場の内容は。
  160. 柴義輝

    証人柴義輝君) 異常なかつた中間報告をした私は事実はございません。
  161. 伊藤修

    伊藤修君 今日の催しは異常はないというような報告をなすつておるのじやないですか。
  162. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、やつておりません。
  163. 伊藤修

    伊藤修君 誰かほかの同僚の人がおやりになつたのではないですか。
  164. 柴義輝

    証人柴義輝君) それは知りませんです。
  165. 伊藤修

    伊藤修君 その演劇あと先の模様はどうですか。あなたたち職務上から見た感じは。
  166. 柴義輝

    証人柴義輝君) 一応入りましたときに松川事件のことについて何か話しておりましたようですけれども、マイクが悪くて一番最後部のほうにおりましたものですから、話の内容は聞き取れませんでしたけれども、演劇鑑賞会であれば、そういう演劇は勿論学校側としても注意したほうがいいのではないかと思います。
  167. 伊藤修

    伊藤修君 だけれども、その松川事件内容の解説か、報告か知りませんが、それがあなたがマイクが悪くて聞き取れなかつたというのであれば、その内容はおわかりにならなかつたわけですね。
  168. 柴義輝

    証人柴義輝君) わかりませんでした。
  169. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、その催し内容というものが危険であるか、危険でないか、或いは不穏であるか、不穏でないかということは判断付かないわけですね。
  170. 柴義輝

    証人柴義輝君) 劇そのものについては不穏というようなことはございませんです。演説については全然内容についてはわかりません。
  171. 伊藤修

    伊藤修君 わからない。
  172. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  173. 伊藤修

    伊藤修君 その他には何かあなたたちの神経を尖らすようなことはないのですか。ないですね。
  174. 柴義輝

    証人柴義輝君) 別にございませんです。
  175. 伊藤修

    伊藤修君 異状はなかつたのですね。つ
  176. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  177. 伊藤修

    伊藤修君 そのあなたたちが入場していらつしやる間において、いわゆる私服の人がいると言つてあなたたちを演壇か、舞台の前に連れて行つたという話ですね。
  178. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  179. 伊藤修

    伊藤修君 そのときの模様は聞いて知つておりますが、そのときに手帳をとられたという話ですね。
  180. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  181. 伊藤修

    伊藤修君 それは手帳はいつもどこにお持ちなんですか。
  182. 柴義輝

    証人柴義輝君) ここに入れております。
  183. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたたちが自分でお出しになつたのですか。又は向うが手を入れてとつたのですか。
  184. 柴義輝

    証人柴義輝君) 両手をうしろに組みまして襟首をつかんで自由を縛つて、強引にとれとれという彼らが声を吐きまして、そのうちの一人が自由を拘束したままとつたのであります。
  185. 伊藤修

    伊藤修君 とれとれということは、警察手帳をとれということですか。
  186. 柴義輝

    証人柴義輝君) 手帳をとれと言うのです。
  187. 伊藤修

    伊藤修君 手帳を持つておるということは知つておるのですか。
  188. 柴義輝

    証人柴義輝君) 私が一番初めにつかまりましたのですけれども、舞台の所に引出されましたときに手帳を見せろと言いましたから、手帳を持つていないと答えましたが、持つていないはずはないはずだというので、私のオーバーの襟をつかんだので、それでボタンを切りましたのですが、それでもなおポケツトに手を入れようとするものですから、とられるよりもこれを見せたほうがいいだろうと思いまして、手帳を見せました。
  189. 伊藤修

    伊藤修君 すると、あなたがお出しになつたのですか。
  190. 柴義輝

    証人柴義輝君) 見せまして、又しまいました。
  191. 伊藤修

    伊藤修君 しまつて……。
  192. 柴義輝

    証人柴義輝君) しまいまして、それから写真をとられましたです。それから今度は演劇はまだ残つておるから、舞台のかただつたと思いますが、演劇が残つておるから外のほうへ行つてくれというわけで今度は喫煙室のほうへ連れて行かれまして、それからです、手帳を取られましたのは……。
  193. 伊藤修

    伊藤修君 その手帳を取られたというのは、向うの行為によつて取られたのですか。それともあなたが提出なさつたのですか。
  194. 柴義輝

    証人柴義輝君) 強制的に強奪…。
  195. 伊藤修

    伊藤修君 強制的に強奪というような飛躍した言葉を使つてはいかん。私は事実を聞いておるのですから。あなたがお出しになつて向うが受取つたのか、その点はわかりませんよ。それは違反行為であるか、強奪したか、それは別問題として、その模様は、あなたがお出しになつて向うが取つたのか、向うが手を入れて取つたのですか。
  196. 柴義輝

    証人柴義輝君) 向うが手を入れてとりました。
  197. 伊藤修

    伊藤修君 先にあなたがお出しになつたときになぜ取らなかつたのですか。先にあなた一遍お出しになつたでしよう。取ろうと思えばそのときに取れるじやないですか。
  198. 柴義輝

    証人柴義輝君) そのときなぜ取らなかつたか、それは向うのことでありまして……。
  199. 伊藤修

    伊藤修君 わかりませんか。
  200. 柴義輝

    証人柴義輝君) ええ。
  201. 伊藤修

    伊藤修君 あとのときにとられた、こういうのですね、あとのときに強奪されたと……。
  202. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  203. 伊藤修

    伊藤修君 そのときに何か証文をお書きになつたそうですね。
  204. 柴義輝

    証人柴義輝君) 書きました。
  205. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたのほうの自発的意思によつて書いつたのですか。向うがこういうものを書けと言つたのですか。
  206. 柴義輝

    証人柴義輝君) 強引に書け書けと……。
  207. 伊藤修

    伊藤修君 強引という言葉は……。
  208. 柴義輝

    証人柴義輝君) 向うが書けと、こう再三言いましたのですが、こちらは書きませんでした。そうしましたところが、東大の厚生部長が参りまして、手帳は明日の一時までには返すようにするから、今夜は遅いから帰つてくれと言われましたので、帰りましたのです。
  209. 伊藤修

    伊藤修君 そういう意味でお書きになつたのですね。
  210. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  211. 伊藤修

    伊藤修君 そのときに暴行を受けたと言いますのは、あなたも怪我していらつしやるのですか。
  212. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  213. 伊藤修

    伊藤修君 どこを怪我されたのですか。
  214. 柴義輝

    証人柴義輝君) 後頭部と喉頸、それからまだ傷の痕があるだろうと思いますけれども、一番先につかまりましたときに、それからつかまつて舞台前に引出されるまで暴行を受け通しだつたのです。
  215. 伊藤修

    伊藤修君 擦過傷ですね、俗に言えば……。
  216. 柴義輝

    証人柴義輝君) 打撲傷です。
  217. 伊藤修

    伊藤修君 それから翌日、逮捕にいらつしやつたのですね。
  218. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行きませんでした、私は。
  219. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは行かなかつたですか。
  220. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  221. 伊藤修

    伊藤修君 逮捕に行つたときあなたは誘導して行つたのじやないですか。
  222. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行きませんです。
  223. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは誘導して行かなかつた
  224. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行きません。
  225. 伊藤修

    伊藤修君 あなたはどこにいらつしやつた
  226. 柴義輝

    証人柴義輝君) 役所で休んでおりましたです。
  227. 伊藤修

    伊藤修君 逮捕されて来てから神井を御覧になつたですか。
  228. 柴義輝

    証人柴義輝君) 見ませんです。
  229. 伊藤修

    伊藤修君 どうして……。あなたなら係のほうの事件じやないですか。
  230. 柴義輝

    証人柴義輝君) 医者のほうにも行つたりしまして休んでおりましたですから。その晩一晩休みませんでしたものですから。
  231. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、その後におけるところの署内のそり事件に対するところの取扱については御存じありませんですか。
  232. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  233. 左藤義詮

    左藤義詮君 証人にお尋ねしますが、最初発見せられて、相当の暴行を受けた、打撲傷を受けた、その打撲傷というのは、何で加えられたのか。蹴るとか、何か相当のものを持つてつたのか。
  234. 柴義輝

    証人柴義輝君) 手であります。
  235. 左藤義詮

    左藤義詮君 殴られた。
  236. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  237. 左藤義詮

    左藤義詮君 こずかれたのですか、殴られたのですか。
  238. 柴義輝

    証人柴義輝君) 殴られたのです。
  239. 左藤義詮

    左藤義詮君 それから後に手帳を取られたというのですが、両方の手を後ろへねじ上げて自由を奪つておいて取つたのですか。
  240. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  241. 左藤義詮

    左藤義詮君 そのときあなたは手帳を渡すことを拒もうとしたのですね。
  242. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  243. 左藤義詮

    左藤義詮君 出すのは嫌だと言つているのを、無理に両方の手をねじ上げて何者かが強奪した、こういうことですか。
  244. 柴義輝

    証人柴義輝君) 取つた者の名前はわかりますが、ここではちよつと控えさして頂きたいと思います。
  245. 左藤義詮

    左藤義詮君 手をねじ上げたり、或いはそれを奪取した者の顔なり、名前なりはあなた知つておるのですね。
  246. 柴義輝

    証人柴義輝君) 知つております。手をねじ上げたのは知りませんが、奪取したのだけは覚えております。
  247. 左藤義詮

    左藤義詮君 その名前はここでは言いたくないというのですね。職務上のことですから言わなくてもいいのですが、言いたくない。
  248. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  249. 左藤義詮

    左藤義詮君 それから厚生部長がそこへ駈けつけて来て、厚生部長の前では暴行は受けなかつたですね。
  250. 柴義輝

    証人柴義輝君) 受けておりません。
  251. 左藤義詮

    左藤義詮君 奪取されたのは厚生部長の来る前ですね。
  252. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  253. 左藤義詮

    左藤義詮君 そのときには厚生部長はいなくて、学校のほうで巡視とか、そういう責任者がおりましたか。
  254. 柴義輝

    証人柴義輝君) 巡視が私の目で四、五人。奪取されましたときには気が付きませんでした。
  255. 左藤義詮

    左藤義詮君 その巡視は、あなたが発見せられて舞台で吊し上げられたり、或いは奪取せられるまでは、それまでは何ら制止することなく見ておりましたか。学生を制止しようとしましたか。
  256. 柴義輝

    証人柴義輝君) 巡視の姿は暴行を受けて奪取されるまでは気が付きませんでした。
  257. 左藤義詮

    左藤義詮君 五、六人いたというのはどういうとき。
  258. 柴義輝

    証人柴義輝君) 始末書を書け書けと、こう言つておるときに、厚生部長の来られる前ですね、手帳を取られまして始末書を書けと強制しておるそのとき参りましたです。
  259. 左藤義詮

    左藤義詮君 厚生部長及び巡視が相当の数おつて、その前であなたが始末書を書かされた。
  260. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  261. 左藤義詮

    左藤義詮君 あなたが書かないと言つたら、部長が明日一時に返すから書けと、こう申した。
  262. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  263. 左藤義詮

    左藤義詮君 その始末書はあなたが書いたのじやなしに、誰か書いたものを持つて来て署名さしたのですね。
  264. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  265. 左藤義詮

    左藤義詮君 それを持つて来た者もよくわかつておるね。
  266. 柴義輝

    証人柴義輝君) 名前はよくわかりませんですが、顔には記憶がございます。
  267. 左藤義詮

    左藤義詮君 そうすると、それはあなたがそのときに署名をせられたのは、厚生部長がそういうことを、明日一時に返すという條件を言つたから、あなたの自由意思でやつたのか、それともあなたが自由を拘束されて、その場の情勢から止むを得ずしたのか、どうです。
  268. 柴義輝

    証人柴義輝君) 始末書を書く必要はございませんので、相当長いこと拒んでおりましたのですが、厚生部長さんがそういうことをおつしやいましたので、厚生部長さんにも悪いと思いまして書きましたのです。
  269. 左藤義詮

    左藤義詮君 書かななければ又暴行されるとか、そういう危險を感じて書いたのじやないですね。
  270. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうではありません。
  271. 左藤義詮

    左藤義詮君 部長の顔を立てるために書いた。
  272. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  273. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私どもの手許に先ほどよりのお話の強奪された手帳というのですか、その手帳の中味を頂いておるのですが、その中にはあなたの手帳として、「十月二十日全国労働者ケツキ大会アーケード中島、淡路」、こういうふうに書いてあるのですが、これにあなたのお書きになつたものですか。或いは記憶が薄れておるかも知れませんが、ちよつと意味がわからんのでお尋ねをするのですが、別なところで、例えば身許調査をされて住所を控えてあるようですが、日本の「日」という字が書いて海野文雄、桐野三郎、云々、それから「J」と書いて佐伯文雄云々と書いてありますが、こういう「日」とか「J」とかいうのはりこれは何かの記号だろうと思うのですが、これは何ですか。
  274. 柴義輝

    証人柴義輝君) 調査内容については記憶でございませんが、「J」というのは法学部でございます。
  275. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから「日」というのは何ですか。
  276. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶にありません。
  277. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 或いはその他のものを見ておりまして、先ほどお話の、何と言いますか、共産党なら共産党といつたような記号もこの中にあるかと思うのですが、それはどういう記号をされたのか、御記憶はありませんか。
  278. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありませんです。
  279. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 例えばこういうことが書いてございます。十月三十一日の分ですが、「本庁警備ヒニ係より電話、全官夜間デモにつき学校側に注意、東大においては三役の動向に注意すること(?)「インタルゲーシヨン・マークが付いておる。三役というのはこれはこの東大学生組織の三役だろうと思うのですが。その次には、「之らの情報の蒐集千代田区神田須田町三の七二葉屋印刷所」、こういうことが書いてありますが、これはどういう意味なんでしようか。御記憶ありませんか。
  280. 柴義輝

    証人柴義輝君) 覚えておりませんです。
  281. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 三役というのは何ですか。
  282. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶にありません。
  283. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは方々に出てくるのですが、AGというのは何ですか。これは十一月十四日の分ですが「都学連大会代議員選出、新人会、考えさせられる三つの事柄に要求のビラ都学連大会をめぐるAGの対立以上関係方面に報告す」とあるのですが、これはどういうことですか。証人柴義輝君)内容についてはわかりませんです。
  284. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではこの手帳に書かれました問題につきましては、これは指摘のしようが悪いのかも知れませんが、記憶は全然ございませんか。
  285. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶にありませんです。
  286. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それからこれもほかの書類、皆さんに配られましたものの中に出て来ると思うのですが、警備係のほかに、特捜という言葉が出て来ておりますが、そういう任務、皆さんのような警備係のほかに特捜という名前の付く仕事警察署の中にあるのですか。
  287. 柴義輝

    証人柴義輝君) 別に特捜係という係はございませんです。
  288. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから、それでは一緒に行かれました三名、あなたを含めて三名のかたたちについて警備係ということですか、その上司藤原警部補ですか、これは同じ仕事をしておられたわけですね。
  289. 柴義輝

    証人柴義輝君) 三名ですか。
  290. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ええ。
  291. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  292. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 その藤原主任の下に何人おられるのですか。同じ仕事だと言われるが。
  293. 柴義輝

    証人柴義輝君) 五名です。
  294. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 五名のかたは同じように、例えば管轄と申しますか、受持というか、そういうものが若干分れておるのでしようか。それとも皆同じですか。
  295. 柴義輝

    証人柴義輝君) 同じです。
  296. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 例えば受持区域についても同じですか。
  297. 柴義輝

    証人柴義輝君) 区域は本富士の管内全部でございます。
  298. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 五人とも。
  299. 柴義輝

    証人柴義輝君) 皆そうです。
  300. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、例えば三人一緒に行くこともあり、五人一緒に行くこともある。はらはらに、場合によつては分れて行動することもあるのですか。
  301. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  302. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この手帳なりを見ておりますと、殆んど毎日東大の中には入られたように、構内に入られたようにあるのですが、そうでしようか。大体毎日その東大構内には入つておられたのですか。
  303. 柴義輝

    証人柴義輝君) 東大ばかりではございません。
  304. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは東大ばかりでないということもわかるのですが、一日一回ぐらいは東大の中に大抵お入りになつたということでしようか。
  305. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、そうではありません。
  306. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 入ることも入らないこともある……。そうすると、入るとき先ほどのお話ですと、学生新聞なら学生新聞を見て、何か催しがある、行動がある、行事があるというときにおいでになつたのですか。
  307. 柴義輝

    証人柴義輝君) あそこは一般の人も通れますものですから、当然我々であつても通れるものですから、学校のほうに行つております。
  308. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは自由に出入できることはわかつております。自由に入られたと思いますが、毎日の仕事として東大の中に入られることが、毎日定例であつたかということを……。
  309. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、そうではありません。
  310. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうではない。
  311. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  312. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは先ほど向うさんのお尋ねのように、公安條例違反容疑だけでなく、東大細胞活動の、何と申しますか、内偵という言葉を使われましたが、そういうことのために随時お入りになられたというわけですね。
  313. 柴義輝

    証人柴義輝君) 職責上は入つております、そういう場合には。
  314. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それが何と言いますか、東大に入られる目的が、東大細胞活動と、その他内偵のために東大に入られたのは、それ以外には殆んどなかつたということでしようか。
  315. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、あります。近道をするために病院から正門のほうに通ることがございます。
  316. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 勿論ですよ。そういうことをお尋ねしておるわけじやない。東大職務警備係なら警備係として職務上入られる任務は、先ほどのお話でいうと、東大細胞活動なり、何なりを見る主目的で入られたのでしよう。
  317. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  318. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、例えば東大外についても、先ほどのお話によりますと、東大外に出ることもあると、こういうことで東大外に本冨士管内で行かれる場合にも、例えば共産党なら共産党活動が、主な内偵と申しますか、主目的であつたのでしようか、お仕事の中心ですか。
  319. 柴義輝

    証人柴義輝君) それは共産党活動だけではなく、如何なるものでも無届の不法な集会が持たれると思つた場合には、それについて仕事をやつております。
  320. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうしますと、無届集会というのが一つ出て参りましたが、そのほかについてはどういう仕事をされたのですか。実際に……。というのは、署長証言によりますと、パトロールが二組毎日二名ずつ四名は入つてつたという話です。それは東大の中に泥棒もあつた、それは病院の中では顯微鏡をとられておるようなこともあつた、こういうことです。それは一般的な任務だと思うのです。そのほかに皆さんたち東大の中にも入られた。その東大の中に入られる任務の主なものを手帳によつて拝見するところによると、先ほどの答弁ではございませんが、東大の中で少くとも共産党活動について内偵、調査されるのが主な仕事であつた。こういうように考えられますが、そうですかというのです。
  321. 柴義輝

    証人柴義輝君) 捜査の面からそういう一般犯罪、まあ、窃盗といいますか、そういう捜査の面にも学校の中へ入りますけれども、別に犯人を検挙すれば、勿論参考として手帳に記入いたしますが、そうでないような場合は記入することはございませんです。それでそういうために学内を歩いておりますといろいろなビラがありますと、それを参考に記入しておるのであります。
  322. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると今のお話の中に出ましたパトロールの二組二人ずつの仕事と、それから皆さんたち仕事とは一応仕事は分れておると、こういう工合に了解してかまいませんか。意味はわかりますか。
  323. 柴義輝

    証人柴義輝君) 警察仕事については警察官としては分れて仕事をする、これは勤務上係りは分れておりますが、警察官としての職責においては区別することはないと思います。
  324. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 一般警察官としてはないでしよう。ないでしようが、パトロールをやつて東大の中に入られた人たちと、それから皆さんなり、それから他の見に行かれたほうの人たちとの仕事の間に、どうも話を聞いておつても任務が違うんじやないか、こういう疑問を持つわけなんですが、その辺はどうなんですか。
  325. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 任務は別かというんでしよう。
  326. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうです。
  327. 柴義輝

    証人柴義輝君) 別です。
  328. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 任務はどういう工合に違うんです。あなたの理解せられるところ、実際に違つたところを一つお話を頂きたいと思います。
  329. 柴義輝

    証人柴義輝君) パトロールは一般犯罪の予防検挙という方面をやつておりますし、私なんかも治安維持上必要と思うことについては、職責上その責任において仕事をやつておりますものですから。
  330. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 その治安維持上と申しますが、その治安維持上の内容が先ほどの伊藤委員からの質問に答えられたところでは、東大の中では東大細胞活動についての内偵その他が中心、こういうことですか、今の治安維持上必要な行動というのは。
  331. 柴義輝

    証人柴義輝君) それだけに限つておりませんですけれども、一般犯罪のほうもあれば、そこで仕事をするのは当然だと思います。
  332. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いや、パトロールのほうは一般犯罪の予防検挙をする、勿論警察官のことですから目の前で現行犯と申しますか、泥棒があつた云々ということであれば警察官の任務を発揮されることは私も疑うわけではありませんけれども、任務の違いとして一般犯罪の予防検挙をなすパトロールと、治安維持上の任務を果す警察官との間に任務が違うというならば、もう少しあなたたち仕事の違いを明らかにして頂きたいと思います。治安維持上云々と言われましたのをもう少し具体的に御説明を頂きたい。
  333. 小野義夫

    委員長小野義夫君) あなたむずかしく考えるところはないんですが、今の治安維持ということの中に、承わつているとそういうような東大細胞活動ということもそれも一つでありましようけれども、例えば無届で集会するとか、或いは何かひそひそ会議をやるというようなこと、あらゆる意味のものも、もう治安関係のことについては警備の任に当る者は包括的に非常に広い意味で責任を持つているんじやないですか。特定の目的もその中に起つて来る、今日はこの目的ということはありましよう。けれども警備というものの性質は、いわゆる治安、公安に関するようなこともあるだろうし、それから今のように乱暴者が、ボスが非常に跳梁するというようなこともあるだろうし、いろいろな大きな意味じやないんですか。ですから目的を限局して、或る時、或る日について目的を限局して入る場合もあるでしようけれども、常時の勤務としては一般的な広い意味での任務を受けているわけじやないんですか。
  334. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  335. 小野義夫

    委員長小野義夫君) そのことをあなたが考えて、むずかしく固くなるから答えがすらすら行かないんですが、そういうことで聞いているんじやないんですから、頭に反映したものをすつすつとお出しになつて結構だと思います。
  336. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると警備係として任命せられたときに任務を與えられておられるだろうと思いますが、お前はこういう仕事をするんだということですね、それを一つ思い出してお話頂きたいと思います。警備係としてお前は何をするんだ、こういうお話があつた、それは言葉のはしはしは違つているかも知れませんけれども、その任務を今までやつて来られたんですから。
  337. 柴義輝

    証人柴義輝君) ……。
  338. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 答えられない。答えられないのは事実じやないですか。
  339. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 答えられないところは答えられないということで……。
  340. 伊藤修

    伊藤修君 今のはさつき答弁されたんです。
  341. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 重複は成るべく避けて……。
  342. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではもう一つ、これはあなたの手帳の中にあつたと書かれておつたという事柄ですが、「二月一日身元調査、松本幸久、二十四年三月M卒業、スクールバス」こういうことが書いてあります。これはどういうことなんでしようか。これは割合に近いほうですから記憶に残つていると思いますが。
  343. 柴義輝

    証人柴義輝君) 身元調査犯罪捜査上又は行政警察の立場から参考のために、行政警察土参考として秘密裡にそれを調査するのでありまして、その手帳の、それは記憶はありませんが、若しも手帳の内容のことが、これが公表された場合は、公表した事態がまあ個人の名誉毀損に関連する問題でありますから、その点はちよつと答えられないのです。
  344. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじやね、お尋ねしているのはそういうことじやなくて、例えば、この名前が出て来る人たちについて、先ほど来言われておるような関連のある人として、ここに名前が出て来ている、ここに書いてある名前はこれでいい。そういうものとして調査しておられるのだ。それをその時、二月一日なら二月一日書いた、こういうことですね。
  345. 柴義輝

    証人柴義輝君) 参考のために書いたものだと思いますが、詳しくは知りません。
  346. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 記憶にない……。
  347. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最初に伺つておきたいのですが、言うまでもなく先ほど宣誓なさつての御証言ですから、偽りをおつしやると大変なことになると思うのであります。その点十分御承知だと思うのであります。最初に伺いたいのは、あなたの経歴を伺いたいのですが。
  348. 柴義輝

    証人柴義輝君) 中学校卒業です。
  349. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その次に伺いたいのは現在も警察には何かいわゆる、昔の警察にあつたそうですが、点取りというふうなものはあるのですか。
  350. 柴義輝

    証人柴義輝君) 聞いておりませんです。
  351. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 聞いてない……。そうすると点取りに類するものはないんですね。
  352. 柴義輝

    証人柴義輝君) 何も聞いておりませんです。
  353. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなた御自身の知る限りにはない。
  354. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  355. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからさつきから各委員からも御質問があつたのですが、あなたの主な任務に警備ということがあるわけですね。
  356. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  357. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その警備ということについて、さつきからあなたは余りはつきりお答えにならないのですが、余りはつきりしていないのですか。例えば任務をあなたに命ぜられるときに、これこれのことが主な任務であるというふうに紙に書いて、或いは口ではつきり言われたことはないのですか。
  358. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  359. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ない。
  360. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  361. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 明示されたことがないわけですね。
  362. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  363. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでさつきからのように漠然とお考えなつているのですね。あなた自身の判断警備目的判断しておるわけですね。
  364. 柴義輝

    証人柴義輝君) まあ大きく治安維持を保持するというのは警備仕事だろうと思います。
  365. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 治安の維持ということの内容については明示されたことがありますか、或いは何を読めとか。
  366. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  367. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ないね。治安維持内容も明示されない。  それから第三に伺いたいのは、あなたの言う治安維持とか警備とかいうことは、かなりそれに限らず、警察権というものは、警察権の発動の対象となる国民の人権と密接な関係がありますか、ありませんか。
  368. 柴義輝

    証人柴義輝君) もう一度。
  369. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 警察官が国民に接せられる場合あなたの職務内容ですね、あなたが職務遂行せられる場合に、その相手方になる国民ですね、我々ですよつまり。それの基本的人権というものと関係は非常にありますか。大してありませんか。
  370. 柴義輝

    証人柴義輝君) 関係はあります。
  371. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 非常にありますか。それほどじやないのですか。
  372. 柴義輝

    証人柴義輝君) 憲法にも基本的人権は保章されておりますけれども、これも公共の福祉に反しない限り、その限度において我々の仕事をやるべきが当然であろうと思います。
  373. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは、昔の憲法に法律の範囲内で人権は保障されるということがありますが、それと現在今おつしやる公共の福祉に反しない限りというものは同じですか、大体。
  374. 柴義輝

    証人柴義輝君) 昔の憲法を研究はまだしておりませんです。
  375. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 同じか、同じでないかわからんですか。
  376. 柴義輝

    証人柴義輝君) はつきりしません。
  377. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 はつきりしない。それから公共の福祉に反しない限りというのはどういうことなんですか。その公共の福祉というのは、あなたが判断なさるのですか。……それもはつきりしないですか。大体公共の福祉は制限していいというだけを御承知なんですね。……いやおわかりにならなければ、わからないで結構です。別にあなたをいじめようというのじやないですから。  じや先ほどのお答えだけで、基本的人権というものは憲法で保障されてあるけれども、それは公共の福祉によつて制限される。そうですが。
  378. 柴義輝

    証人柴義輝君) 制限……まあ公共の福祉に反しない限りの、公共の福祉に反しない限りにおいて、基本的人権は尊重されるべきものだと思います。
  379. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは基本的人権というものは尊重しなければならないというふうにお考えなつているのですね。
  380. 柴義輝

    証人柴義輝君) なつております。
  381. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ところがそれが公共の福祉に反すれば、尊重できないというわけですね。
  382. 柴義輝

    証人柴義輝君) 尊重できない、その場合は我々の仕事としても、それ相当のことはやらなければならないと思います。
  383. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると大切な基本的人権というものが、それが制限されるのですから、どういう場合には制限されてもいいかということはつきりしていないと困るのじやないですか、あなた御自身で。それで迷うことがあるでしよう。基本的人権を尊重するということばかり言つておれば、何も調査も取調もできない。そうでしよう。或いは調査、取調のときには、基本的人権は関係ないですか。
  384. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  385. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ありますね。そうすると、それを侵してはならないのですから、どういう場合には侵していい、はつきりしないですね、侵していいということはないが、どういう場合にはそれを制限して、人権に関係することをあなたの職権としてなし得るか。こういう場合、こういう場合ということがはつきりしていない。  それから次に伺いたいのは、あなたの職務のようなものが昔の特高のようなものだというふうに言われたことを耳にされたことがありますか。あるかないかだけでいいのです。
  386. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  387. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あります。
  388. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。ですけれども……。
  389. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いやいや、あるかないかということだけでいいです。あるね。
  390. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  391. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あると喜ばしいことですか、喜ばしくないことですか。
  392. 柴義輝

    証人柴義輝君) 喜ばしくないことです。
  393. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 喜ばしくない。そうするとどこが違いますか。違うのだ、違うのだとばつかり威張つていてもしようがないですね。はつきり違うのだ、こういうふうに違うのだと。
  394. 柴義輝

    証人柴義輝君) 特高警察は思想を統制し、又は特定の思想自体を犯罪の対象としてそれを捜査する警察活動であるのですけれども、現在はそういう思想統制というのもございませんし、又特定の思想を犯罪の対象とする法規もございませんので、特高警察でないということは明らかでございます。
  395. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、それだけで明らかかどうかは別として、そういう点で違うとおつしやるのですね。
  396. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  397. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、あなたがスパイだというふうに言われたことはありませんか、耳に。
  398. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  399. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あります。それは喜ばしいことでしようか、喜ばしくないことでしようか。
  400. 柴義輝

    証人柴義輝君) 喜ばしくないことです。
  401. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 喜ばしくない。そうするとあなたはスパイじやない。どこが違いますか。スパイとあなたの職務と。
  402. 柴義輝

    証人柴義輝君) スパイとは身を隠して……。スパイでないということは、我々が職務遂行上、人が自由に出入りしているところに対して勿論合法的に出入りしているだけでありまして、別に身を隠して入り込むというようなことはございませんです。
  403. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次に伺いたいのは、東大に立入られるということについて次官通牒というものがあるということは御承知つたでしようか。
  404. 柴義輝

    証人柴義輝君) 知つております。
  405. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、立入についてはどういう点を絶えず留意しておられましたか。
  406. 柴義輝

    証人柴義輝君) 次官通達は文部次官と警視総監の協定で、それは公安條例の解釈適用についてだけの協定であつて、治安上犯罪の予防又は防止のために一般人が出入りしている箇所に対しては出入りするのは当然のことで、又職責の一つであると思います。
  407. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次官通達は何の目的のためにああいう申合せが行われた。
  408. 柴義輝

    証人柴義輝君) あれは詳しいことは知りませんが、不法行為が行われた場合当局として警察の集団的な力がほしいというような場合を予想しての協定ではないかと思います。
  409. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次官通達にはそれ以外には学校側から要請がなければ警察権学内に入らないという申合せがあることを御承知ですか。或いは学校と連絡してでなければ。御承知ない。
  410. 柴義輝

    証人柴義輝君) それは個々の場合でございますか。もう一度その意味を。
  411. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その次官通達ね、次官通達というのは御覧になつたことはありますか。
  412. 柴義輝

    証人柴義輝君) 読んだことはあります。
  413. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 よく覚えていますか。覚えていませんか。
  414. 柴義輝

    証人柴義輝君) はつきりとは覚えておりませんです。
  415. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、その次官通達の内容として原則的に、大学の中へ警察権が入つて行くときには、大学と連絡するか、或いは大学側から求められた場合に限つてつて行く、一般的には入らないということは御承知でしようか、御承知でないか。
  416. 柴義輝

    証人柴義輝君) 東大構内、あれは一般人も自由に出入りしているのですから別にそれには関係ないと思います。
  417. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いやね、次官通達、学校の中で催される集会とかそういうものですね、それで学校が許可し、学校が責任を以て公認している団体、そういうものの集会というものには入らない、学校が責任を持つている問題についてはね。通行については学校は責任を持つていないから、それは勿論……。
  418. 柴義輝

    証人柴義輝君) 入つておりませんです。
  419. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 入つていないというのは、そういう学校の公認した団体の学校の許可した集会には警察官としては立入らない。
  420. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。入つておりません。
  421. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは。
  422. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  423. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一回も入つたことはない。
  424. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、集会でも一般人が入つて行くような場合は入つて行きます。これは出入りしても何ら差支ないと思います。
  425. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一般人が入るのか主であるか主でないかね、一人も一般の人が入つているか入つていないかということもなかなかむずかしいから、だから今伺つているのは、その集会の性質がね、学内の公認の団体であつて学校が許可した集会、それには入つておりませんか。
  426. 柴義輝

    証人柴義輝君) 入つていません。
  427. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、それは何のためにそういうことはあるのでしようか。なぜ入らない。入つてもいいじやないですか。なぜ入らないのですか。
  428. 柴義輝

    証人柴義輝君) それはやはり学校の研究として催されておりますのでしようから、我々はそれについて何ら干渉するあれもございませんから入つておりません。
  429. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはいかゆる大学の自由を尊重してということですね。
  430. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  431. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、その次に伺いたいのは、今日ここへおいでになりますときに三人の方は署長さんと何かお打合せになつたことはありますか。
  432. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありませんです。
  433. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この問題になつている警察手帳ですが、この内容についてはなるべくおつしやらないという方針ですか、そういうこともないですか。
  434. 柴義輝

    証人柴義輝君) 何でしようか、もう一度。
  435. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 問題になつているあなた方の手帳ですね。今あなた方お持ちになつていないのでしようが、その今問題になつている手帳ですね、その内容については現在なるべく言いたくないというお考でしようか、それとも……。
  436. 柴義輝

    証人柴義輝君) それは公表するものじやありません。ですからそれに対しては全然口は出せませんです。
  437. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからこの東大内の警備係、或いはそうでなくてもいいかも知れない、本富士署のあなたの同僚でしようが、当日そのいわゆるポポロ劇団の劇が行われている所へお入りになつたかたは何名でしようか。あなたの御承知なつている限りで結構です。何名か。
  438. 柴義輝

    証人柴義輝君) 三名だろうと思います。
  439. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あとの……。
  440. 柴義輝

    証人柴義輝君) あとのことについては全然存じませんです。
  441. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 三名というのはあなたを含めて、含めないで。
  442. 柴義輝

    証人柴義輝君) 入れてです。
  443. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたを含めて。
  444. 柴義輝

    証人柴義輝君) ええ。
  445. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからあなたは大学の教授について身元調査をしたことがありますか。
  446. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶にありません。
  447. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 記憶にありません。
  448. 柴義輝

    証人柴義輝君) はあ。
  449. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それで身元調査を企てたことはありますか、計画したことは。
  450. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありませんです。
  451. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 計画したこともない、身元調査を。
  452. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  453. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、仮にどこかでそういうことをあなた御自身でお聞きになつた場合はありませんか。これはさつき申上げたのですが偽証になると大変ですから。
  454. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶にありません。
  455. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 記憶にない。
  456. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  457. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 少くとも身元調査をしたことはありませんね。あると大変なことになりますよ。さつきないとおつしやつたのですから。
  458. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶にありません。
  459. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 記憶にない。
  460. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  461. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは身元調査をしようとしたことはありますか。
  462. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  463. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あります。
  464. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  465. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、身元調査はその人の人権に関係ありますか。
  466. 柴義輝

    証人柴義輝君) ございます。
  467. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、さつきの話で、それは公共の福祉を害しない限りそういうことをしてはならんわけですね。
  468. 柴義輝

    証人柴義輝君) ですけれども、身元調査はやはり犯罪捜査……。
  469. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ……の必要があればするとおつしやる。
  470. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  471. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると今あなたが東大の教授に対して身元調査を行おうとした場合、どういう犯罪があつたのですか。
  472. 柴義輝

    証人柴義輝君) 東大の教授について身元調査を行おうとした場合は記憶にございませんです。
  473. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これはかなり重大な問題になつていますね、御承知のように現在。御承知ありませんか。それでは東大の教授の身元調査をするということは重大なことですか、重大でないと思いますか。
  474. 柴義輝

    証人柴義輝君) その身元調査自体の内容がはつきりしないうちはちよつとわかりませんです。
  475. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、一般の東大の教授の身元調査をするということは相当のことか、大したことじやないですか。東大の教授に限らずこれは誰に対してもそうでしようが、人に対して国民の誰かに対して警察官が身元調査をしようかしまいか、或いはしたかしないかということは重要なことですか、重要でないことですか、職務内容上。
  476. 柴義輝

    証人柴義輝君) 職務上必要であれば調査をしてもそれは差支えないと思います。
  477. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 職務上必要があればやつてもいいとそういうことを聞いているのではない。職務上の必要で以てそういう調査をすることは重要な、大したことではない、大なる意義を持つているものじやないか、それとも相当慎重にしなければならないか、軽々しくやつていいことですか。
  478. 柴義輝

    証人柴義輝君) いやそうではありません。
  479. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 相当重々しいことですね。
  480. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  481. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、それについて記憶しているとか、していないとか極く軽々しいことならば何でもあなたは記憶しているということは私も勿論考えませんが、軽々しいことまでは記憶していない。けれども相当重要な問題であれば、それについて、而も職務上の問題ですからね、プライベートな、個人の、私の問題ではないのですから、それについて記憶しているとか記憶をしていないとかさつきのお答えでしたが、それでいいでしようか。本当に記憶していないならば、勿論それで結構ですよ。もう一遍念のために伺いますが、大学教授に対して身元調査をしたことがあるかないか。さつき最初はないとおつしやつた、その次に記憶していないというふうにおつしやつた、結論的にはどうですか。
  482. 柴義輝

    証人柴義輝君) 覚えておりませんです。
  483. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その大学教授に対して身元調査をした、しようとしたことはあるのかないのか。
  484. 柴義輝

    証人柴義輝君) はつきり覚えておりません。
  485. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは学生の顔と名前とをかなりよく御承知のようですね。さつきおつしやつた中に手帳を取つた学生の顔と名前、それは御承知のようにおつしやいましたね。そういうこの学生の顔と名前とを御承知なのはどういう理由なんですか。
  486. 柴義輝

    証人柴義輝君) 同僚に教わりましたものですから。
  487. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その場で、あとから。
  488. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、その場じやないです。前にです。
  489. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 前に。そうすると、学生の顔と名前とをあなたが非常によく知つているのでなくて、同僚の中に非常によく知つているかたがあるのですね。あなたも相当御承知のほうですか。何人ぐらい御承知ですか、ざつと。二、三人ですか。それとも。
  490. 柴義輝

    証人柴義輝君) 二、三人の者です。
  491. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 二、三人ね、あなたは。それから東大学生の中に、あなたがたの東大における、いわゆる警備上ですかの活動治安保持という活動学生の中にあなたがたが協力を求めておられるかたがありますか。
  492. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありませんです。
  493. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ありませんです、一人もいない。
  494. 柴義輝

    証人柴義輝君) おりません。
  495. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから福井駿平君というかたは、あなたが名前とお顔とをよく知つているかたですか。
  496. 柴義輝

    証人柴義輝君) 知つております。
  497. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どういう理由でよく知つているのですか。
  498. 柴義輝

    証人柴義輝君) よく知つております。というのは最初同僚が教えてくれたわけです。
  499. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その同僚とおつしやるのはどなたですか。
  500. 柴義輝

    証人柴義輝君) あのパトーロルの巡査ですけれども、名前は私まだ署内においてもわかりませんですが。
  501. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 パトロールの巡査に。
  502. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  503. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからあなたは…。
  504. 柴義輝

    証人柴義輝君) ちよつと待つて下さい。今の福井君だけがパトロールの巡査に教わつたのであります。
  505. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつきのかたはどなたですか。
  506. 柴義輝

    証人柴義輝君) あれは茅根巡査です。
  507. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 茅根巡査ですね。現在今まであなが東大の中で持つておられた職務及びその職務を行うやり方ですね、それは今後も変化なく行われる御予定でしようか。
  508. 柴義輝

    証人柴義輝君) 警備上必要であれば職務の執行は行います。
  509. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは今までもそういうお考えつたのですね。
  510. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  511. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると今後も考えは少しも変らない、今までと同じようにやるのですか。
  512. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  513. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。
  514. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 一、二点伺いますが、あなたさつき伊藤委員のお問に対しまして政令三百二十五号違反容疑ビラなどがまかれていることがあるというふうなことを証言されましたが、どんなふうな場所でどんなふうにしてまかれているか。あなたの今までの体験で知つている模様を話して頂きたい。
  515. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学校の正門前、校内のハスの停留所、それからアーケードの附近、それからいちよう並木から教室に入るところあたりでまいておりました。
  516. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 ときどきそういうことはありますか。
  517. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  518. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 それにはいろいろな文書があると思うのですが、日本共産党東大再建細胞とか、或いは東大細胞というふうな名義のビラが資料として私どもの手許にもありますが、こういうふうなビラがまかれておつた場合に、これを学校学生取締と申しますか、そういうことをやつている厚生部ですね、そういう所にそれを届けたりしたことはありますか。こういうものがまかれておるがということでそういう所に持つてつて見せたりしたことはありますか。
  519. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  520. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そういう場合に大学の厚生部ではどんな措置をとりますか。それをただ見つばなしでいるのですか。
  521. 柴義輝

    証人柴義輝君) 一応それを停止させるために出て行かれるようですけれども。
  522. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そしてその結果、例えば三百二十五号違反のような文書もあるわけですね。容疑が明らかなような文書があるわけですが、そういう場合にそれを取調べた結果を警察のほうと何か連絡をとるようなことはありますか、取調べた結果を。
  523. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学校側としては何らそういうあれははつきりしませんが、私こうこうであつたというようなことを聞いたことはございませんから。
  524. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 あなたがたがどこそこでこういうものがまかれておると、或いは学生の手によつてまかれておるということを学校大学当局に届けるでしよう。
  525. 柴義輝

    証人柴義輝君) 注意します。
  526. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 注意はするでしよう。それに対しまして厚生部で更に取調か何かそれについての調査をされておる模様があるのですか。
  527. 柴義輝

    証人柴義輝君) ないようです。
  528. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 あなたがたの話を聞きつぱなしですか。そうあなたが考えられますか。
  529. 柴義輝

    証人柴義輝君) ええ。
  530. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そういうことについて大学内部で大学の力によつてそれを取調べて、そうして警察に連絡する、その結果を。或いは大学自体でその事件を然るべく処理するというふうなことをやつておるかどうかわかりませんか。
  531. 柴義輝

    証人柴義輝君) はつきりとわかりませんが、恐らくそれを調べているというようなことはないのじやないか、依然としてまかれておりますところを見ますとそう考えられます。
  532. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 学校の校内ですね。
  533. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  534. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 校内でまかれますね。あなたがたはまいたその人物が学生と見受けられたことが多いのですか、学生でない人だと、一般人と思われることが多いのですか。
  535. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学生と見受けられることが多い。
  536. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 それでそういう不穏ビラがあれば、それを又持つて来て署に報告するわけですね。
  537. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  538. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そういうことで三百二十五号違反として検挙せられて処罰を受けたような例もありますか、あなたの知つている限り。
  539. 柴義輝

    証人柴義輝君) 私がこちらに来てからございませんです。
  540. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そうですが。その外にあなたがたが考えて、共産党の党活動として校内で行われているような場面を何か見たことがありますか。
  541. 柴義輝

    証人柴義輝君) 去年の春か夏だつたですか、東大の二職におきまして文教平和の会とかというのがありましたが、そのときに職安の人たちが参りまして演説をやつたり、朝鮮の子供たちビラをまいたりしたようなことが一回ありました。
  542. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 あなたがたがそういうものを一つの党活動思つて学校当局に注意することもあるのですね。
  543. 柴義輝

    証人柴義輝君) あります。
  544. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 それに対して学校当局のあなたがたに対する返事なり或いは大学当局の態度はどうなんですか。
  545. 柴義輝

    証人柴義輝君) その場合はすぐ学校当局で以て解散をさせましたけれども、その後ちよつと覚えはございませんです。
  546. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そういう場合にあなたがたが注意すると、学校当局では喜んでその注意なり報告なりを受けるような態度ですか、あなたの感じでよろしうございます。
  547. 柴義輝

    証人柴義輝君) そのとき注意しましたのは私でございませんから。
  548. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そのときでなくとも、ビラの問題であろうが、そういう場合の学校当局の態度がどうであるか。
  549. 柴義輝

    証人柴義輝君) 受ける人によつてまちまちですが、はつきりわかりませんです。
  550. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 あなたが不穏ビラを持つて行つた場合に、その内容等について学校当局があなたがたといろいろ話合つて、これはこうだとか何とか非常に協力的な態度でそういうことのないようにしようとする態度が大学側にありますか。
  551. 柴義輝

    証人柴義輝君) まあ、やや協力的というところでしよう。
  552. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 併しそれからその文書があなた方の考えでははつきりと政令三百二十五号違反だと思われることについて、それを大学自体の手で調べて、それを警察に対してこういう事実があるというふうな告発の形と申しますか、或いはそういうことを抗議したような例がありますか。
  553. 柴義輝

    証人柴義輝君) そういう疑いのあるようなビラは、学校にも注意しますと同時に、すぐ上司のほうにも報告しまして、あと上司のかたがまあ検討なされてなされるんでしようけれども。
  554. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 大学からそういう申入があつたことはあなたは記憶しておりませんか。
  555. 柴義輝

    証人柴義輝君) おりません。
  556. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 よろしい。
  557. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 一、二点をちよつとお尋ねしたいのですが、あなた都学連の大会というのにはよくおいでになりましたか。どうなんですか。都学連の大会に行かれたことありますか。
  558. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行つたようにまあ記憶しております。
  559. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 南原総長の送別会には列席されたといいますか、おいでなつたことありますか。
  560. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  561. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから法学部の学生大会がありますときには。
  562. 柴義輝

    証人柴義輝君) 入りませんです。
  563. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 入らなかつた。例えば都学連なり都学連の大会においでになるときにはやはりその姿でおいでになるわけですね、私服で。
  564. 柴義輝

    証人柴義輝君) 行きますというと、そういうまあ大会に臨席するかという意味でございますか。
  565. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうです。
  566. 柴義輝

    証人柴義輝君) そういうことはございませんです。
  567. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ない、そうするとそういうことがあつたということ、或いはあるということを学生から聞かれるわけですか。
  568. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや新聞やらビラでまあ知るわけです。
  569. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 学校の中の。
  570. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  571. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから東大細胞などについていろいろな調査をされるようです、それから特定の人についてもよく顔を覚えておられるようですが、共産党東大細胞についてどの程度に御存じですか、御調査が行届いておりますか。例えばこれは何といいますか、学校の中の組織の緑会だとかそれぞれの幹部の名前だとか顔だとかいうことは御存じでしようが、共産党についてこういう人達がおつて或いはあれは党員だといつたようなことを御存じなのですか。
  572. 柴義輝

    証人柴義輝君) 知りませんです。
  573. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それで例えば顔を覚えておるというような人達は、どういう人達について覚えているわけでございますか。
  574. 柴義輝

    証人柴義輝君) その顔を覚えておる人の名前でございますか。
  575. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いや、名前はまあどういう人によつてつたかということですね。
  576. 柴義輝

    証人柴義輝君) 同僚です。
  577. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いや、まあ例えば緑会の委員長だとか、或いは何々委員の誰それだということで覚えておるわけですか。
  578. 柴義輝

    証人柴義輝君) 顔は全然知りませんですが、名前はときどきビラなんかで見ますから。
  579. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると学生について名前は多少知つておるけれども、顔と名前とたくさん知つておるというわけではないと、こういうことですか。
  580. 柴義輝

    証人柴義輝君) ええ、そうです。
  581. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それからもう一つ伺いますが、これは皆さんの給與のことについてお尋ねして失礼ですが、警察官の給料については給與に関する法律がありますし別表もありますから、大体わかつておるわけです、私どもは。そういうほかに例えば警察なら警察活動されるについて、費用を見るというようなことはございますか。
  582. 柴義輝

    証人柴義輝君) ありません。
  583. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ありません。例えばポポロ劇ならポポロ劇を見に行く、例えばこれはいくらだつたかわかりませんが、三十円だかいくらか出されたというわけですね。そういう金なんかについても自分で出されるわけですか、それとも警察から出ますか。
  584. 柴義輝

    証人柴義輝君) 自分で出します。
  585. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 自分で出す。それじやそれから時間外ということになるのかどうか知りませんが、遅くなつてそういう仕事をされるについて全然給與はないわけですか。
  586. 柴義輝

    証人柴義輝君) もう一度ちよつとその……。
  587. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 超過勤務というか、時間外に勤務をするということについて何かの給與はあるかということです。
  588. 柴義輝

    証人柴義輝君) 時間外は、それは超過勤務手当というのはこれは出ます。
  589. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 出ます。
  590. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  591. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、例えばポポロ劇ならポポロ劇を見に行かれたのはこれは時間外ですか。どういうことになります。
  592. 柴義輝

    証人柴義輝君) これは私は丁度宿直でありまして。
  593. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ああそうですが。例えば時間外なら時間外に行つたというときにおいては、そういうときには費用は出るというわけですね。
  594. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや、そういうわけじやなくて超過勤務というものは一ヵ月総括して出るんですから、私のほうではわかりません。
  595. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと補足して、伺い漏れがあるので、二、三お伺いします。あなたは昨年の五月頃東洋文庫に行かれたことがありますか。東洋文庫で中国学術協会の会合があつた
  596. 柴義輝

    証人柴義輝君) 東洋文庫、どこにあるのかはつきりしません。
  597. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 覚えてない。
  598. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  599. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから仁井田陸という教授がおられるのを御承知ですか、東大に。
  600. 柴義輝

    証人柴義輝君) 知りません。
  601. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 渡邊一夫教授の名前は。
  602. 柴義輝

    証人柴義輝君) 知りませんです。
  603. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 知らない。東洋文化研究所員の小口偉一君の名前は。
  604. 柴義輝

    証人柴義輝君) わかりません。
  605. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大塚署に川島部長というかたはおられますか。
  606. 柴義輝

    証人柴義輝君) 記憶ないですね。
  607. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 都学連に対する東大からの代講員の選出という会合は、学外の人が出席印する会合でしようか。
  608. 柴義輝

    証人柴義輝君) 会合については全然知りませんです。会については全然わかりません。
  609. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あらゆる会について。
  610. 柴義輝

    証人柴義輝君) 会の内容については知りませんです。誰が参加するのか、そういうことは全然わかりません。
  611. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、さつきあなたは次官通牒によつて学内の公認団体の公認会合には警察官は立入つてはならない、立入つてないとお答えになりましたね、そうするとその会合は学内の公認団体の公認会合であるかどうかわからない、それに立入つていいのか悪いのか……。
  612. 柴義輝

    証人柴義輝君) 一般人の者が入つて行くのには一向差支えないと思います。一般人が入つて行くのを現にその場で見た場合それは差支えないと思います。
  613. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その一般人と学校関係者との区別はどこで以てするのですか。
  614. 柴義輝

    証人柴義輝君) 丁度私が行入てつきましたとき中学生の子供を三十五、六の男の人が連れて入つて行きましたものですから……。
  615. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは大学のほうで会合が、公認団体の公認会合が行われるときに、学生職員の家族が入場されることが一般に黙認されているということは御存じないですか。
  616. 柴義輝

    証人柴義輝君) 学生並びに職員と聞いておりました。
  617. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その家族ということは聞いていない……。
  618. 柴義輝

    証人柴義輝君) 聞いておりません。
  619. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一般の人か、そうすると大学の中でいわゆるあなたが職務を行われる場合に見て、それでこれは学生、職員でないということは、さつきの場合は中学生ですか。
  620. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  621. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 年令で区別するのですか、大学生にしては少し若い……。
  622. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや年令もですが、帽子をかぶつておりましたようですから、丸い帽子ですね。
  623. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 教授の服装は一般人と違いませんね。
  624. 柴義輝

    証人柴義輝君) 違いません。
  625. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 違いませんね、そうすると次官通牒を尊重する建前から言えば公認団体の公認会合というのは、大学のほうでもこれは学内の会合だと、部外者の会合じやないということを認めて公認して行われる会合ですから……。
  626. 柴義輝

    証人柴義輝君) そういう映画とか演劇の場合ですね、映画なんかは観に行きたいという外部の人がたくさんいます。表で切符を売つておりますから。
  627. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 おろうとおるまいと、それは教授なり或いは職員かも知れませんね。
  628. 柴義輝

    証人柴義輝君) いや教授、職員でないかた、一般の人ですね。
  629. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうしてわかりますか。
  630. 柴義輝

    証人柴義輝君) 見に行きましたというかたもおられます。
  631. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう証人を出せますか。
  632. 柴義輝

    証人柴義輝君) この間学校に映画があつたから見に行きましたというかたがおられます。
  633. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことが仮にあるかないか、そういうことは別にいたしまして、さつきの次官通牒を尊重しよう、公認団体の公認会合には警察官は入つてはならない、そうでしよ。成るべくもぐつて入りたいという気持ですか。
  634. 柴義輝

    証人柴義輝君) そういう気持は毛頭ありません。
  635. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、一般人も入つておるんじやないかというその理由によつて入るという気持ですか。
  636. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。一般人も金を出して自由に入つておるから我々も当然入れると思つて金を出して入つたのです。
  637. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 学内の公認団体の公認の会合でも……即ち次官通達によつてそれには警察官の出入りは許されないという会合でも。
  638. 柴義輝

    証人柴義輝君) そういう会合はあれですけれども、殆んどまあそういう入場券を出して一般の者が入れる映画とか演劇が殆んどらしいです。
  639. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや私の伺つておるのは、学校の公認団体の公認会合、学校が許した会合には警察官は入れない、都條例に対する例外的な措置が謳つてあるわけですね、そうでしよ。
  640. 柴義輝

    証人柴義輝君) 入つておりません。
  641. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたさつき入らん、さつき入らんとおつしやいましたね。そうすると一般の人が入るようであるから入るというお考えですかと言うのです。
  642. 柴義輝

    証人柴義輝君) 一般の人が入れば当然我々が入つても差支えないと思いますから入ります。
  643. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、あなたは公認団体の公認会合に立入つてはならない、自分は立入つたことはないというふうにおつしやいましたが、そのことはどうなんです。一般の人が入ろうと入るまいと、それは学内公認団体の公認の会合ですね、即ち警察官が入つてはならないもの、それに立入つたことはないとさつきおつしやつたのは嘘ですか。
  644. 柴義輝

    証人柴義輝君) 立入つたことはございません。併し一般の人が自由に入場券を買つてつて行くものには、これは我々が入つてつても当然悪くないだろうと思います。
  645. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや次官通達によつて大学の中で公認の団体がなすところの、そして学校が許可した会合には警察官は入れないということになつているんです、それは御承知ですね。それを立入つたことはないとあなたおつしやつた……。
  646. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  647. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうでしよ、おつしやいまたしね。
  648. 柴義輝

    証人柴義輝君) ええ、言いました。
  649. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。質問を終ります。
  650. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは大分長時間でありますから……柴証人にまだどなたか新しい質問がございましようか。    〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  651. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 新らしい御質問がなければ、それでは柴さんはこれでよろしうございます。有難うございました。   —————————————
  652. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に茅根隆君。
  653. 伊藤修

    伊藤修君 お尋ねしますが、あなたは警察官にいつおなりになられました。
  654. 茅根隆

    証人茅根隆君) 昭和二十四年の五月の九日であります。
  655. 伊藤修

    伊藤修君 それからどういう職務を拝命されました。
  656. 茅根隆

    証人茅根隆君) 約十ヵ月ほど警邏係をやりまして、それから捜査係を同じく十ヵ月ぐらい行いました。昭和二十五年の七月三十日から警備係を拝命しております。
  657. 伊藤修

    伊藤修君 それで本富士署にいらつしやつたのはいつ頃です。
  658. 茅根隆

    証人茅根隆君) 拝命しまして、警察学校を卒業しましてから本富士署に参りました。
  659. 伊藤修

    伊藤修君 警備係主任というのはどなたですか。
  660. 茅根隆

    証人茅根隆君) 藤原主任であります。
  661. 伊藤修

    伊藤修君 その下でお働きになつたのですか。
  662. 茅根隆

    証人茅根隆君) は……。
  663. 伊藤修

    伊藤修君 その下で働いたのですね。
  664. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、そうです。
  665. 伊藤修

    伊藤修君 警備という職務内容というものはどういうものですか。
  666. 茅根隆

    証人茅根隆君) 警備と言いますと、治安に関しまして調査をしたり或いは取締行なつたりしております。
  667. 伊藤修

    伊藤修君 それは学校で教えられたのですか。或いは警視総監から教えられたのですか。或いは上司から教えられたのですか。
  668. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことは教えられませんですけれども、自分の職務として行なつていることで知りました。
  669. 伊藤修

    伊藤修君 いや、それはどうして知つたのですか。
  670. 茅根隆

    証人茅根隆君) やはりそういう一つの職務行なつておりますので、その関係で……。
  671. 伊藤修

    伊藤修君 行なつているから知つたというわけじやないのです、それはあなた。教育を受けたときに知つたのか、或いはお前の任務はこういう職務に任命するからこういう仕事をしろという命令があつたのですか。
  672. 茅根隆

    証人茅根隆君) 命令はありませんけれども、やはり自分の行なつておる職務を総合的に判断しまして……。
  673. 伊藤修

    伊藤修君 あなた自身の話ではないですか、職務内容というのは法律で、規則できまつておるのでしようから、警備係を拝命すれば、警備係職務というものはこういうものだということは警察学校でそういう教育を受けるか、どこかでそういうことを知らなければならんでしよう。
  674. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことは具体的には教わりませんでしたけれども、警察学校で……。
  675. 伊藤修

    伊藤修君 警備係を拝命すれば、警備係職務内容というものはこういうものだということは、あらかじめ御承知なんですね。
  676. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう、ほぼ学校警備とはこういうものであるということを聞いておりますので、わかつております。
  677. 伊藤修

    伊藤修君 そういう警備係仕事として、あなたは日常どういう方面をなさつておられるのですか。
  678. 茅根隆

    証人茅根隆君) 管内における、そういう一切の警備職務行なつております。
  679. 伊藤修

    伊藤修君 管内全般について……。
  680. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  681. 伊藤修

    伊藤修君 これからお尋ねすることは、東大構内におけるところのあなたの職務の執行についてお尋ねするのですから、その範囲においてお答え下さい。あなたはその職責遂行するために、東大構内へ始終いわゆる警備にいらつしやつたのですね。
  682. 茅根隆

    証人茅根隆君) 東大構内のみとは限つておりません。
  683. 伊藤修

    伊藤修君 ほかのことを聞いているんではない、東大構内行つたかどうかということを前提で聞いているのです。いらつしやつたのですね。
  684. 茅根隆

    証人茅根隆君) 行きました。
  685. 伊藤修

    伊藤修君 主としてそれは東大のほうを多く受持つていらつしやるのですか。
  686. 茅根隆

    証人茅根隆君) 東大だけではありません。
  687. 伊藤修

    伊藤修君 「主として」とこう言つています。主として東大のほうを多く受持つておるのですか。
  688. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。
  689. 伊藤修

    伊藤修君 東大のほうはどのくらい一ヵ月の間に行かれるのですか。
  690. 茅根隆

    証人茅根隆君) 一ヵ月のうち十日から十五日くらい。
  691. 伊藤修

    伊藤修君 半月も行けば「主として」じやないですか。それだから「主として」と聞いているのです、ほかの仕事もあるでしようけれども。……そうすると、東大へいらつしやつて警備の具体的仕事としてはどんなことをなさつていらつしやいますか。
  692. 茅根隆

    証人茅根隆君) 一般の犯罪捜査とか予防或いは検挙、そういうようなことをしております。
  693. 伊藤修

    伊藤修君 それは抽象論ですね。その方法としては、具体的にあなたの行動として、方法としてはどういう方法をとつていらつしやる。
  694. 茅根隆

    証人茅根隆君) 学内を一般人の自由に出入りできる範囲内において職務行なつております。
  695. 伊藤修

    伊藤修君 いや、それはあなたが尾行するとか、或いはその他内偵するとかいうような方法をとつたことについて伺つているのです。どういう方法で警備をなさつていらつしやるか……。
  696. 茅根隆

    証人茅根隆君) 必要がありました場合にはそういうようなことも行なつております。
  697. 伊藤修

    伊藤修君 尾行もやつていらつしやるのですね。
  698. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことについてははつきり記憶はありません。
  699. 伊藤修

    伊藤修君 自分のやつた仕事について記憶がないということはないですよ。あなたはそれが毎日の仕事ですよ、あなたの仕事を聞いているのですよ。そんなことを記憶ないと言つたら、あなた、あなたとしてはそれは言えませんよ。それはあなたがどういう仕事をなさつていらつしやるかということを聞いているのですからね。
  700. 茅根隆

    証人茅根隆君) 犯罪のあつた場合には、そういうことをしたことも記憶しております。
  701. 伊藤修

    伊藤修君 それでは月のうちに十日も十五日もいらつしやるのですが、どういう犯罪があつたのですかね。
  702. 茅根隆

    証人茅根隆君) 窃盗犯とか或いはそれ以外の犯罪もありました。
  703. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、あなたが東大へいらつしやるのは刑事犯ですね。刑事犯の捜査のためにいらつしやつたのですか。
  704. 茅根隆

    証人茅根隆君) 刑事犯のみではありません。
  705. 伊藤修

    伊藤修君 それじや何です。
  706. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以外のいわゆる警備職務とする治安関係についても行なつております。
  707. 伊藤修

    伊藤修君 あなたが捜査のために取調べするということは何か犯罪があつて目的があつて、それで捜査をなさらなくちやならんことは御存じでしよう。目的なく捜査するということは許されていないのです。ね、その目的事項が、調べんとする事項があるなしは別問題として、何かの目的がなければ法律上は捜査のためにする取調べはできないことになつておりますが、だからどういう目的のためにいらつしやつたのかとこう聞いているのです。それだから、刑事犯のみではないとおつしやつたですね。それ以外の犯罪はどういうことがあるのですか、犯罪と思われるようなことは……。
  708. 茅根隆

    証人茅根隆君) いわゆる治安に関する……。
  709. 伊藤修

    伊藤修君 治安というのはどういうものですか。治安維持法というのがないのですから、どういう犯罪なんですか、治安とおつしやつたのは。
  710. 茅根隆

    証人茅根隆君) 公安條例に関するような……。
  711. 伊藤修

    伊藤修君 公安條例の……公安條例以外は。
  712. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以外にはまあ主たる目的としては行つておりません。
  713. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、公安條例と刑事犯だけの捜査のためにいらつしやつたのですか。
  714. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以外に何か事犯か起きた場合には、当然警察官としての職務遂行します。
  715. 伊藤修

    伊藤修君 それはわかつております。いわゆる一ヵ月に十五日もいらつしやるのはどういう調査目的のためにいらつしやるのかと、こう聞いているのですよ。
  716. 茅根隆

    証人茅根隆君) 主たる目的はそのようなことであります。
  717. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、あなたの警察手帳を拝見いたしますと、書いてあることは、あなたのおつしやる二つの目的以外の目的のほうが大部分を占めておると考えられるのですよ。あなた自身も、これをお書きになつた人自身も御覧になつてもわかることと思いますが、そのほかの目的があるのじやないですか。
  718. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以外の目的はありません。
  719. 伊藤修

    伊藤修君 なければその一つ一つ今ここで煩に堪えませんから、指摘しませんが、書いてあることは別に公安條例違反容疑捜査するに必要欠くべからざる調査目的でもないし、刑事犯の調査とも言えない。例えば教授が窃盗したか、強盗したかという調査をなさつたわけではないでしよう。そうでしよう。教授の調査をする場合においては、教授が公安條例違反を犯すものとして尾行するということもちよつと常識的に考えられませんね。何かはかに目的があるのじやないですか。
  720. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以外の目的はありません。
  721. 伊藤修

    伊藤修君 ないということはおかしいじやありませんか、それは……。教授や何かを尾行なさるのはどういう目的のためですか。
  722. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう尾行をした事実はありません。
  723. 伊藤修

    伊藤修君 ないのですか。
  724. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  725. 伊藤修

    伊藤修君 身許調査をしたこともありませんか。
  726. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことは記憶にありません。
  727. 伊藤修

    伊藤修君 学生身許調査をしたこともありませんか。
  728. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、記憶にありません。
  729. 伊藤修

    伊藤修君 記憶じやない。あるかないかと聞いているのです。今日あなたたちがいらつしやるのに、警察手帳内容に関しては全部記憶にないという申合せをして来たのですか。
  730. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう申合せはしません。
  731. 伊藤修

    伊藤修君 しなければ……言葉が皆一致しますから……。ここでは知つておることをおつしやらなくても偽証になりますよ。あなたも警察官ですから、いいですか、それを御注意申上げておきますよ。知つていることを故意に隠しておつても僞証になるのですよ。あなただつて偽証罪の内容くらいよいよ御存じでしよう。而も自分で手帳に君いているのですから、記憶にないということはちよつとおかしい。だからはつきりどういう……、その目的が誤まつていれば誤まつているでいいですから、あなたたちの行過ぎなら行過ぎでいいですから、それであなたたちをここで糺明す意る味ではないのですから、我々は事実を知りたいだけなんです。それは共産党細胞活動をあらかじめ知つておきたいから調べに行つたのだと率直におつしやつても構わないのですよ。そうではないのですか。
  732. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうではありません。
  733. 伊藤修

    伊藤修君 するとどうもおかしいじやありませんか。あなたのお答えを聞いているというと、どうも必要以上にこの調査というものをなされている。まさにあなたは刑事訴訟法の百九十七條に違反しているのです。そういう権限はないはずですよ。どうですか。
  734. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以外の目的はありませんです。
  735. 伊藤修

    伊藤修君 ない。
  736. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  737. 伊藤修

    伊藤修君 間違いないですね。
  738. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  739. 伊藤修

    伊藤修君 あなたはその言葉に責任を負わなければなりませんよ、よろしいですか。
  740. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  741. 伊藤修

    伊藤修君 そのあなたが調査なさつたことをあなたが自分で肚に一人しまつておくということはないでしようが、御報告なさつたでしようね。
  742. 茅根隆

    証人茅根隆君) 上司への報告は必要ある場合以外はしておりませんです。
  743. 伊藤修

    伊藤修君 あなたが必要と認める事項については必ず報告なさるわけですね。最大漏らさず報告するのですか。必要と認める範囲において報告するのですか。それは報告するのが当り前じやないのですか。遊んでいるわけじやないでしよう。今日は何をやつて来たかということは報告するのは当り前ですよ。そんなことは躊躇する必要ない。
  744. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ必要あつた場合には報告いたします。
  745. 伊藤修

    伊藤修君 そうですが。そうすると報告なさつた結果、上司から更にこういう事項を調べろと命令があるのですね。
  746. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうような具体的な命令はありません。
  747. 伊藤修

    伊藤修君 いつも聞きつ放しですか。
  748. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  749. 伊藤修

    伊藤修君 いつも。(笑声)
  750. 茅根隆

    証人茅根隆君) そのいう個々の具体的な命令はありませんで、必要ありますと私のほうで更にそれを調査するようなこともあります。
  751. 伊藤修

    伊藤修君 いや、上司はあなたの報告を聞きつ放しかと、こう聞いているのです。この事項はもう少し調べてみろとか、これに関連してこういう方面を調べてみろとかいう指示があるのじやないのですか。
  752. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうこともあります。
  753. 伊藤修

    伊藤修君 あるのですか。
  754. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  755. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたの直接の上官、いわゆる先ほどの藤原警部補に言う。で署長には言わないのですか。
  756. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、言いません。
  757. 伊藤修

    伊藤修君 その人からいつも指示があり、報告するわけですね。
  758. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  759. 伊藤修

    伊藤修君 そうことはあれですか、あなたとしては警備内容だとおつしやるのですね。
  760. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、あの報告内容でありますか。
  761. 伊藤修

    伊藤修君 いやそういうあなたの仕事をなさることは昔の特高的な意味ですか、昔の、あなたは昔の警察制度を知つているか知つておらんか知らないけれども、少なくともそういうことは聞いているでしよう。特高的なそういう調査方法というものをあなたの現在の與えられた職務内容だと心得ていらつしやるのですか。
  762. 茅根隆

    証人茅根隆君) それは違います。特高警察というものの内容についてはどういうものであるか……。
  763. 伊藤修

    伊藤修君 いや、特高警察かどうかということを今言つているのじやないです。
  764. 茅根隆

    証人茅根隆君) はつきりわかりませんけれども、そういうようなものではないと思つております。
  765. 伊藤修

    伊藤修君 ないと思つているんですか。じやあなたのそういうふうにやつていらつしやるのは、そういう二つの目的のためにやつていると、こういうのですね。
  766. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  767. 伊藤修

    伊藤修君 そういう二つの目的以外のものは特高警察と言われても仕方がないですね。
  768. 茅根隆

    証人茅根隆君) 併しそれは合法的のものであつたら……。
  769. 伊藤修

    伊藤修君 合法的なものならね、法律に反していればいかんわけですからね。合法的であるかどうかは、あなたは合法的だと思つていらつしやるのでしよう。
  770. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  771. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは大学校内においていわゆるあなたたちから見れば不穏文書だと言われる文書をまあいろいろ撒かれていることを知つているのですか。
  772. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、そういう二とも見ております。
  773. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたがそれに対して捜査したことはあるのですか。
  774. 茅根隆

    証人茅根隆君) 明らかに違反であるような場合は捜査をしました。
  775. 伊藤修

    伊藤修君 違反事件というものは挙つたのですか。
  776. 茅根隆

    証人茅根隆君)  は……。
  777. 伊藤修

    伊藤修君 そういう違反事件というものは挙つたのですか。
  778. 茅根隆

    証人茅根隆君) 非常に巧妙であつたために挙つておりません。
  779. 伊藤修

    伊藤修君 挙らない。文書自体は違反だと心得るのですか。文書自体を見て違反だと思つていらつしやるのですか。
  780. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  781. 伊藤修

    伊藤修君 けれども、その犯罪事実が調べても挙らなかつたというのですね。
  782. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  783. 伊藤修

    伊藤修君 それは勿論報告されたわけですね。それをずつと追及しないのですか。大学や何かに問い合せて追及しないのですか。
  784. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことも行なつたこともあります。
  785. 伊藤修

    伊藤修君 ところが今までは一遍も拳らなかつたわけですね。
  786. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  787. 伊藤修

    伊藤修君 それはいわゆる不穏文書というのはどういう犯罪になるのです。どういう犯罪と心得て捜査なさつたのです。ただ不穏文書として捜査なさつたのですか。
  788. 茅根隆

    証人茅根隆君) 政令三百二十五号違反として……。
  789. 伊藤修

    伊藤修君 政令三百二十五号違反容疑として捜査なさつたのですか。そうですね。
  790. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  791. 伊藤修

    伊藤修君 その証拠物件はいつも本署に持ち帰つているのですね。
  792. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、そういうものは持ち帰つております。
  793. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは二月二十日ポポロ劇にいらつしやつたのですね。
  794. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ参りました。
  795. 伊藤修

    伊藤修君 それもやはり今の警備目的を持つていらつしやつたのですね。
  796. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当日私は非番勤務であつたために、演劇を鑑賞する目的で参りました。
  797. 伊藤修

    伊藤修君 鑑賞する目的、そうするとあなたはそういう新劇に興味を持つていらつしやるのですか。
  798. 茅根隆

    証人茅根隆君) いや別に持つているわけでもありませんですけれども、近くに居住している関係で時折映画とかそういう演劇は見に行つております。
  799. 伊藤修

    伊藤修君 余り面白くないものでしよう。特に入場料を乏しい月給から割いて見に行かなければならんほどの劇じやないでしよう。素人芝居ですから。そうじやないのでしよう、あなたはやつぱり職務に忠実の余り内偵にいらつしやつたのじやないですか。
  800. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうあれじやなかつたです。
  801. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、自分の私生活の範囲において見に行かれた、こういうのですね。
  802. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  803. 伊藤修

    伊藤修君 御覧になつてどうですか。劇場の場内におけるところの感想は。
  804. 茅根隆

    証人茅根隆君) 場内の感想には余り関心を持ちませんでしたけれども、演劇そのもの松川事件に取材したものである、まあこう思いました。
  805. 伊藤修

    伊藤修君 それで職務上どうでした。
  806. 茅根隆

    証人茅根隆君) は……。
  807. 伊藤修

    伊藤修君 職務上あなたの立場から見てどうでしたか。
  808. 茅根隆

    証人茅根隆君) 余り職務意識を働かせて見なかつたので……。(笑声)
  809. 伊藤修

    伊藤修君 そうですが。そうすると無関心にいらつしやつたのですね。劇そのものに関心を持つて職務的には少しも関心は持たなかつたのですね。
  810. 茅根隆

    証人茅根隆君) 多少は持つておりました。(笑声)
  811. 伊藤修

    伊藤修君 それで多少持つたところにおいてどういうように感じられたですか。
  812. 茅根隆

    証人茅根隆君) それにつきましての……。
  813. 伊藤修

    伊藤修君 これは政令三百二十五号違反だとか、これは不穏な劇だとか、何とかお感じになつたですか。
  814. 茅根隆

    証人茅根隆君) 政令三百二十五号違反とは思いませんでした。
  815. 伊藤修

    伊藤修君 それではどういうように思つたのですか。
  816. 茅根隆

    証人茅根隆君) その劇を見て、観衆に松川事件がどういうものであるというようなことを強調しようという意図をもつておるようなことにまあ思いました。
  817. 伊藤修

    伊藤修君 松川事件を観衆に強調しようということはいいけれども、その中に何か狙いがあるのじやないですか。松川事件というものが包蔵するところの思想的傾向とか、そういうものを観衆に透徹させるという狙いがあつたのじやないですか。
  818. 茅根隆

    証人茅根隆君) まあこれについての思想的の批判は許されないだろうと思います。
  819. 伊藤修

    伊藤修君 いや、あなたの感想を聞いておるのですよ。そういう狙いがあつたと思わなかつたかというのです。そういうことは関心なかつたですか。
  820. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。余り関心を持つておりませんでした。
  821. 伊藤修

    伊藤修君 余り関心がない。そうすると無関心で見にいらつしやつたのですか。
  822. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  823. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは中途において警察に今日の演劇は異状ないという報告をなさつたですか。
  824. 茅根隆

    証人茅根隆君) しませんです。
  825. 伊藤修

    伊藤修君 あつたのじやないですか。
  826. 茅根隆

    証人茅根隆君) しませんです。
  827. 伊藤修

    伊藤修君 あなたしたのじやないですか。
  828. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。
  829. 伊藤修

    伊藤修君 誰か同僚の人がしたのですか。
  830. 茅根隆

    証人茅根隆君) 知りませんです。
  831. 伊藤修

    伊藤修君 御存じない。
  832. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  833. 伊藤修

    伊藤修君 誰か電話をかけた人があるのじやないですか。
  834. 茅根隆

    証人茅根隆君) そのときは知りませんでしたけれども、あとでしたように聞いております。
  835. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの同僚の人が。
  836. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  837. 伊藤修

    伊藤修君 もう一人の人ですか、今日いらつしやつた
  838. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうではなかつたと思います。
  839. 伊藤修

    伊藤修君 どなたがなさつたですか、あとでお聞きになつたのは。いや何でもないことですよね。
  840. 茅根隆

    証人茅根隆君) 次に参るかただと思います。
  841. 伊藤修

    伊藤修君 次にここへ来られるかたですね。その人が報告なりさつた
  842. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  843. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、あなたたち三人は結局職務に忠実の余りやはりそういうことも見ておきたい、こういうことじやなかつたのですか。
  844. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。
  845. 伊藤修

    伊藤修君 あなたはその演劇の途中において、私服がいると言つて舞台の際に立たされていろいろ聞かれたそうですね。
  846. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  847. 伊藤修

    伊藤修君 そのときあなたは何か暴行を受けられたですか。
  848. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、受けました。
  849. 伊藤修

    伊藤修君 どこを。
  850. 茅根隆

    証人茅根隆君) 後頭部と両側頸部に暴行を受けました。
  851. 伊藤修

    伊藤修君 殴られたのですか、掴まれたのですか
  852. 茅根隆

    証人茅根隆君) 殴られました。
  853. 伊藤修

    伊藤修君 殴られた。そのとき手帳はどうなさつたのですか。
  854. 茅根隆

    証人茅根隆君) 強奪されました。
  855. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたの懐にあるものを取上げたのですか。
  856. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうです。
  857. 伊藤修

    伊藤修君 手を突込んで……。
  858. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  859. 伊藤修

    伊藤修君 持つていることをどうして知つておるのですか。
  860. 茅根隆

    証人茅根隆君) それはどういうわけか知りませんですけれども、向うで……。
  861. 伊藤修

    伊藤修君 内ポケットに入れて…。
  862. 茅根隆

    証人茅根隆君) 内ポケットに、ワイシヤツの左の内ポケットに入れてあつた……。
  863. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、チヨツキの下にあるのですか。
  864. 茅根隆

    証人茅根隆君) チヨツキは着て器りませんでした。
  865. 伊藤修

    伊藤修君 チヨツキは着てなかつた。いきなり手を突込んで取つた。それは防ぎ得なかつたですか。
  866. 茅根隆

    証人茅根隆君) 両手を押えられておりました。
  867. 伊藤修

    伊藤修君 それでそのままなんですか。その手帳はそのままなんですか。
  868. 茅根隆

    証人茅根隆君) それを直ぐに返して頂きたいとまあ再三言いましたのですけれども、どうしても返して呉れませんで、そうしてその上に始末書を書かされました。
  869. 伊藤修

    伊藤修君 始末書を書いたら返して呉れるということになつたのですか。
  870. 茅根隆

    証人茅根隆君) 始末書に、これも強要して、向うで書いたものに署名だけを強要したわけなんでありまするけれども、私はそれに署名をすることを強引に拒んでおりましたところ、東大の斯波厚生部長さんが参りまして、そうして署名するように、署名したら明日午後一時に学生を連れて手帳を警察のほうへ返還に行くから署名をするように言われましたので、厚生部長さんを信頼しまして、私はそこで署名しました。
  871. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは翌日の二十一日に福井君を逮捕に行かれましたか。
  872. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、行きました。
  873. 伊藤修

    伊藤修君 あなたはそれを案内して行つたわけですね。
  874. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、私は直接暴行を受けた上に、福井君の顔を一番よく知つておりましたので、一緒に行きました。
  875. 伊藤修

    伊藤修君 福井君が暴行したというので、その顔見知りのためにあなたが案内して行つたわけですね、そうですね。
  876. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうです。
  877. 伊藤修

    伊藤修君 どこで遭遇したのです。
  878. 茅根隆

    証人茅根隆君) あれは法文経二号館の学友会の委員室の前です。前の屋外であります。
  879. 伊藤修

    伊藤修君 それで福井君のほかにどれくらいおつたですか、学生が。
  880. 茅根隆

    証人茅根隆君) 学生は、一緒について参りました学生は約二十名ぐらいおりまして、数分しないうちに、学生とか或いは職員、一般の通行人等が三分ぐらいしてもう五、六十名も集まつて参りました。そうして福井君を逮捕しようとしたのを奪還しろと言つて妨害しました。
  881. 伊藤修

    伊藤修君 それはまああとのことですね。あなたが福井君に初めて会つたときには、福井君の周囲に何人ぐらい人がおつたと、こう聞いておるのです。
  882. 茅根隆

    証人茅根隆君) 二十名ぐらいおつたと思います。
  883. 伊藤修

    伊藤修君 それは何かはかに目的があつてたまたま外出しようとしたときですか。
  884. 茅根隆

    証人茅根隆君) 私ですか。
  885. 伊藤修

    伊藤修君 いや、福井君が。
  886. 茅根隆

    証人茅根隆君) 逮捕に向つて、そうして私は私服のかたと離れて行きましたので、そうしてみんないないから帰るといつてつて参りました際に、福井君が、私はアーケードのほうから見ておりましたのですけれども、福井君が二十名ぐらいの学生と一緒になりまして、私服のかたに何かどうして学校内に入るんだとか何とか騒ぎながらあとから一緒に参りました。そうしてそのうちの一人の私服の海老原巡査が職員風の男に掴まりまして、何かそこで言われておりました。そうしてそこを一人残して行くわけには行かないので、私服のかたが返しまして、そうして海老原巡査を連れて帰ろうとしましたときに、私そのとき逮捕に向つた捜査主任さんに、福井君があそこにいるからと言いまして、そうして捜査主任が逮捕しました。
  887. 伊藤修

    伊藤修君 福井君らの一行は、あなたたちが校内に入つて来たから、何しに来たと尋ねておつたわけですね。そこへたまたまあなたが、あそこにいると、こう言つて指摘したわけですね。
  888. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうです。
  889. 伊藤修

    伊藤修君 最初から福井君らの一行はあなたたちと格闘しようとか、争うとかいう意思じやないわけだね、その状況から見ると。
  890. 茅根隆

    証人茅根隆君) まあそういう…。
  891. 伊藤修

    伊藤修君 偶然あなたが発見しなかつたならば、そんな問題も起らなかつた、こういうことになるわけだね。
  892. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうではないと思います。すでに私が福井君を指摘する前に、海老原巡査は一人の者に立塞がれて、そうして何か言われておりました。
  893. 伊藤修

    伊藤修君 それは交渉しておつたわけでしよう。
  894. 茅根隆

    証人茅根隆君) 交渉ではなくて、何か論争しておりました。
  895. 伊藤修

    伊藤修君 論争でも交渉でも、それは言葉のあやですからね。私の言うのは暴力とか何とかいうことはないだろうと、こういうのです。話をしておつたのでしよう。それであなたは引返して福井君があそこにおると捜査主任に言つたのですね。
  896. 茅根隆

    証人茅根隆君) 言いました。
  897. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、いきなり飛びかかつたわけですか。
  898. 茅根隆

    証人茅根隆君) 福井君逮捕状があるぞと、こう捜査主任が言いまして、押えようとしたら、逃げようとしました。そうしましたので、捜査主任は直ちにこれが福井君だ、逮捕状があるから逮捕しろ、こう言いましたときに、二名くらいの傍らにおりました私服員がこれを取押え、逮捕しようとしましたら、非常に力がありますので、二人の者は……。
  899. 伊藤修

    伊藤修君 あとのことはいい。君が指摘したときに福井君と君との間にはどのくらいの間隔がありましたか。
  900. 茅根隆

    証人茅根隆君) 二十メートルくらいありました。
  901. 伊藤修

    伊藤修君 捜査主任はどこにおつたのですか。
  902. 茅根隆

    証人茅根隆君) 捜査主任は私服の一番先頭で帰ろうとしておりましたので、丁度二十メートルくらい離れた所で私は捜査主任と会いましたので、あそこに福井君がおるということを指摘しました。
  903. 伊藤修

    伊藤修君 そこに立つて話をしたわけですか。
  904. 茅根隆

    証人茅根隆君) ええ。
  905. 伊藤修

    伊藤修君 二十メートルも離れて、福井君逮捕状があるぞと言つたのですか。
  906. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。そうしてどれが福井君だと、こう捜査主任が言いましたので、私が一緒に連れて行きまして、あの毛糸の白いようなマフラーをしたのが福井君だ。直ぐそばへ行きまして、そして約一間は離れておりませんでした。一メートルくらいの近距離に行きまして、これが福井君ですと、もう一遍私がはつきり言いました。そうしたら捜査主任が、これが福井君か、そう言いましたので、そうですと言つたら、そうしたら福井君、逮捕状だ、こう言いました。
  907. 伊藤修

    伊藤修君 言葉で言うただけ。逮捕状を見せない。
  908. 茅根隆

    証人茅根隆君) そのときは見せなかつたと思います。
  909. 伊藤修

    伊藤修君 見せなかつた。逮捕状の容疑は言つたのですか。
  910. 茅根隆

    証人茅根隆君) 言いました。
  911. 伊藤修

    伊藤修君 福井君逮捕状だと言つただけなんでしよう。
  912. 茅根隆

    証人茅根隆君) そして直ぐに言いました。
  913. 伊藤修

    伊藤修君 何と。
  914. 茅根隆

    証人茅根隆君) 暴力行為等処罰に関する……。
  915. 伊藤修

    伊藤修君 そんな緊急の場合にそんなことが言えるかね。そんな作つたようなことは言わんことだね。
  916. 茅根隆

    証人茅根隆君) 二人が押えたときに言いました。私服の二人が取押えたときにそのように言いました。
  917. 伊藤修

    伊藤修君 それはちよつとおかしいね。人の手を押えれば逮捕ですよ。いいですか。人の身柄に手を触れれば、すでにこれは憲法に禁止されていることですからね。身柄に手を触れるということ自体が禁止されておるのだから。問題は身柄に手を触れる前にそれだけの手続を履まなければならんということが保障されておるのですね。そうでしよう。刑訴の二百一條にちやんと逮捕状の内容を示して、そうして逮捕しなくちやならんと……。
  918. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当時の海老原巡査が吊し上げといいますか、そういうような表現ですけれども、吊し上げをされておりまして、福井君も非常に興奮しておりましたので、周囲の状況からいたしまして、あそこでゆつくり逮捕するというようなことは到底できないと思います。
  919. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、福井君逮捕状が出ておる、こう言つて逮捕したわけですね。
  920. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうしてそのあとで何か罪名を言いました。
  921. 伊藤修

    伊藤修君 あとで言うた。
  922. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  923. 伊藤修

    伊藤修君 それで暴れたのですか。
  924. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうして非常に力がありますので、取押えた私服二名を両手で倒しまして、同時に福井君もそこへ倒れました。そこへ学生が来まして、奪還しろとか、或いは私服の者がそれを逮捕するとか言いまして、そこで混乱状態になりましたので、私はすぐ現場から少し遠ざかつて見ておりました。
  925. 伊藤修

    伊藤修君 福井君は何も持つていなかつたのでしようね。
  926. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当時は何も持つていなかつたと思います。
  927. 伊藤修

    伊藤修君 ところが福井君は非常に傷をしておるらしいですわ。
  928. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  929. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、それは結局警官が棍棒か何かで殴つたのですね。
  930. 茅根隆

    証人茅根隆君) 棍棒で殴つたようなことはないと思います。
  931. 伊藤修

    伊藤修君 歯が折れたりなんかして、怪我もしているのではないですか。
  932. 茅根隆

    証人茅根隆君) 連行する途中非常に乱暴しまして、そうして全然歩かなくて、横になつて、うつつ伏せになるような形になつたりして、そうして歩かなかつたために、抱きかかえて来ようととたら、人を蹴とばしたり、噛みついたりした。そうして噛みついた際に歯がとれた。
  933. 伊藤修

    伊藤修君 抱きかかえて連行するときに……。
  934. 茅根隆

    証人茅根隆君) ええ。
  935. 伊藤修

    伊藤修君 つまり抱きかえて行つたわけですね。
  936. 茅根隆

    証人茅根隆君) 私は連行する途中は直接の現場から少し遠ざかつて一般の群衆の中におりましたので、はつきりわかりません。
  937. 伊藤修

    伊藤修君 併し連行される福井君の身柄の状態というものは、手枷もしておるし、足枷もしておるのでしよう。
  938. 茅根隆

    証人茅根隆君) それは……。
  939. 伊藤修

    伊藤修君 そんなことはわかるでしよう。
  940. 茅根隆

    証人茅根隆君) 見ませんでした。
  941. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたが誘導して行つた人なんだから、そのくらいのことは見ておるでしよう。
  942. 茅根隆

    証人茅根隆君) 直接の現場から遠ざかつておりましたので……。
  943. 伊藤修

    伊藤修君 手枷、足枷して行つたということは、聞いていて知つておるでしよう。
  944. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  945. 伊藤修

    伊藤修君 その手枷足枷された人が暴行するといつたところが、たかが体をくねらす程度のものであつて、蹴とばすと言つても足枷されておる者が蹴とばしようもないのじやないですか。
  946. 茅根隆

    証人茅根隆君) 蹴とばすので足枷をした。
  947. 伊藤修

    伊藤修君 だから足枷をされてから、歯が折れるほど食い附くということも、乱暴するということも考えられないのじやないかというのです。
  948. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことはあると思います。私はジープに福井君を乗せるときにちよつと見ましたのですけれども、そのときも非常に乱暴をしておりました。
  949. 伊藤修

    伊藤修君 だから手枷足枷しておる人間を傷つけるということは、どうかね。誰か殴らなければそんなことはできないですよ。
  950. 茅根隆

    証人茅根隆君) 恐らくあれは棍棒で殴つたとか、そういうようなあれによつて傷害を受けたのではないと思います。
  951. 伊藤修

    伊藤修君 その傷害を受けておることはあなたもジープの上で見て知つておるのですか。
  952. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  953. 伊藤修

    伊藤修君 警察へ連れて行かれて留置場へ放り込むときに何か手当をしたのですか。
  954. 茅根隆

    証人茅根隆君) それは知りませんでした。
  955. 伊藤修

    伊藤修君 いや、あなたは殆んど副主任みたいなものでしよう。
  956. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。
  957. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは当面の責任者ですから。
  958. 茅根隆

    証人茅根隆君) 暴行を受けたことについては私は直接の被害者でありますけれども、それ以後の留置とか、そういうことについての責任は私にはありません。
  959. 伊藤修

    伊藤修君 被疑者は怪我をしておるから手当をしてやれということはそれは捜査主任なり何なりに進言しなかつたのですか。
  960. 茅根隆

    証人茅根隆君) それ以後におきまして、まだ正門附近において学生が非常に気勢を上げたり、門を鎖したりしておりまして、そういうような状況も多少見ておりましたので、私は直接福井君が留置場に入れられるのは見ておりませんでした。
  961. 伊藤修

    伊藤修君 留置場へのそのまま放り込んじやつたのですね、怪我さしたまま……。
  962. 茅根隆

    証人茅根隆君) それは当然捜査主任さんが取調べをしたと思います。その後に留置場に入れたのだと思います。
  963. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、そういう手当をしなかつたことはどうですかね、あなたたちは犯人を逮捕したときに、格闘の末被疑者が怪我することは往々あると思いますが、そういう場合に手当はしないのですか、あなたたちは。
  964. 茅根隆

    証人茅根隆君) 必要に応じてはいたします。
  965. 伊藤修

    伊藤修君 必要に……。あなたが頸を殴られて擦過傷か、打撲傷か受けたというような診断書が出ているくらい、すぐあなたは手当をなさつておるのに、犯人が歯を折つたり顔面に流血しておるというような被疑者の状態を見て、あなたはそれを職務上手当をせんでいいと思うかね。
  966. 茅根隆

    証人茅根隆君) 私は当面の責任者でなかつたので……。
  967. 伊藤修

    伊藤修君 いや、責任者でないと言つても、あなたはそういうことは始終やつておるのじやないのですか。この事件はあなたが入つたのじやないのですか、当事者でないのですか。
  968. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当時はそこにおりませんでしたので……。
  969. 伊藤修

    伊藤修君 それは無責任じやないか、自分の首玉握られたくらいで痛いとか痒いとか言つてつて、その他の大きな傷を放つて置くということはないじやないですか。それじや基本人権を保障するということは言えないですよ。悪いことをしたかもわかりませんが、判決を見るまではやはり無罪なんだから、判決を見るまでは罪があるとは断定することはできない。して見ればやはり国民として基本人権の保障は認めなければならない。被疑者だから殴つてもいい、怪我さしてもいい、警官だから殴られたものに対して責任をとるという不公平なやり方があつてはならないと思うね。
  970. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  971. 伊藤修

    伊藤修君 これからもよくあることですから、その点少しお気を付けになりたほうがいい。
  972. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、以後気を付けます。
  973. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは逮捕された福井君が医者にかかりたいという要求があつたのですが、それに対してどうしましたか。
  974. 茅根隆

    証人茅根隆君) 聞きませんでした。
  975. 伊藤修

    伊藤修君 聞かない……。何か本人は黙秘権を行使しておるとかという話ですね、それは聞かないですか。
  976. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことについてはちよつ聞きました。
  977. 伊藤修

    伊藤修君 ちよつとですか。黙秘権を行使しておるのでどうしたのですか。
  978. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうような詳しいことについては聞いておりません。
  979. 伊藤修

    伊藤修君 けれどもあなたもこの事件の当面の関係者だから、当然その取調べには立会つていらつしやるはずだから……。
  980. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう方面のことは当時の被害を受けた状況とか、逮捕時の状況については私のほうから知つておる範囲内において、捜査主任さんには申上げますけれども、それ以外のことについては、直接取調べとかそういうことはいたしません。
  981. 伊藤修

    伊藤修君 しないのですか。そうすると、その取調べについてはあなたは少しも立会わないのですね。
  982. 茅根隆

    証人茅根隆君) 今まで取調べをすることに立会つた事実はございません。
  983. 伊藤修

    伊藤修君 黙秘権を行使しておるというので差入れも何も許さないそうですね。
  984. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことについては聞いておりません。
  985. 伊藤修

    伊藤修君 以上です。
  986. 小野義夫

    委員長小野義夫君) どなたかほかに……。
  987. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 二、三点お伺いしたいと思いますが、東大の中にお入りになつて、警備係ですか、警備係仕事を五人ほどでやつておられたということですが、その五人は今日お出でになつておる人たちの間にも分担というものはありますか。    〔委員長退席、理事伊藤修委員長席に着く〕
  988. 茅根隆

    証人茅根隆君) 分担はありません。
  989. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 皆同じようなととを思い思いやつておられたということですか。
  990. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。なおそうしてそれは東大だけに限られておりません。
  991. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは外の所もありましようが、東大なら東大の中で、例えばあなたが職員組合なら職員組合を主にやつておるという、こういつたような分担はありませんね。
  992. 茅根隆

    証人茅根隆君) それはないです。
  993. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから、それでは東大の職組の大会等に調査おいでなつたことはありますか。
  994. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう大会に直接入つたことはありません。
  995. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、それはあつた前後に調査されたというのですか、聞くその他でそういうときの調査はどういう工合にしておられるのですか、調査の具体的な方法は……。
  996. 茅根隆

    証人茅根隆君) ビラによつて掲示された場合はそれを見て参りましたし、或いはビラが配られた場合、それを拾得した場合はそれによつて知ることができます。
  997. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、会合の模様というのはまあビラに書いてない場合もありましよう。それはどういう工合にして調べますか。
  998. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう特定の会場で、学内の特定の会場で行われた場にはわかりません。
  999. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 例えば職組の大会なら大会があつた。どういうことが言われたか、決議されたか、そういつたような調査はどういうふうにして調べられるか。
  1000. 茅根隆

    証人茅根隆君) 大会の内容ですか。
  1001. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうです。
  1002. 茅根隆

    証人茅根隆君) やはりそういうことは大会に行つた人が話している状況を聞いたり、そういうことによつて知ることができます。
  1003. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この日にちは記憶に残つているかどうか知りませんけれども、昨年の暮なら暮、職組の大会があつた。その大会の席上で東大の働く人たちは手を握り合つて闘おうとか、或いは日本の空を飛行機が飛ばぬようにしようとか、こういつたような決定をしたということは御存じですか。
  1004. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ全部についは記憶はありませんですけれども……。
  1005. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 大体そういう内容については調べられたことはありますね。
  1006. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1007. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 すうすると、そういう調査はどういう工合にしてやつておりますか。例えばその場合にはどういうふうにされるのですか。
  1008. 茅根隆

    証人茅根隆君) あの場合は学内でなくて学外において行われたので、そういうようなことが聞えました。
  1009. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、学外で行われたからその会合に出席することもできて調べられたというわけですか。
  1010. 茅根隆

    証人茅根隆君) いや、私は入りませんでしたけれども……。
  1011. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 誰か出席している人に聞かれたというのですか。
  1012. 茅根隆

    証人茅根隆君) 出席した人ではないのです。
  1013. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 どういう人から聞かれましたが。
  1014. 茅根隆

    証人茅根隆君) それについては答えられません。
  1015. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 答えられないというのは記憶なり、調査した方法は実際にはあるけれども、ここでは言えない、こういうわけですか。
  1016. 茅根隆

    証人茅根隆君) 調査というほどではありません。
  1017. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 調査でなくてもいいですが、それを知られた方法はどういういう方法で知られたのですかということを聞いている。例えば誰から聞いたということを聞いているのじやありませんよ。出席した人から聞かれたのでなければ、あなたおいでなつて聞かれたという工合に感ずる以外にないでしよう。
  1018. 茅根隆

    証人茅根隆君) いや、出席した人が第三者に話して、その人が雑談的に話してくれました。
  1019. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 出席した人から聞いた……間接だけれども。
  1020. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、間接に。
  1021. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから先生その他の、教授その他の身許調査をやつておられますが、その身許調査というのはどういう方法で、どの程度のことをしておられるのでしようか。
  1022. 茅根隆

    証人茅根隆君) 身許調査等についてははつきり記憶にありません。
  1023. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これはさつきの質問にも身許調査ということをやられたということはお認めになりましたね。身許調査というのは全然やらんというのですか。
  1024. 茅根隆

    証人茅根隆君) 直接犯罪に関係のあつた場合には行なつたことがあります。
  1025. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 直接犯罪に関係あることについて調査された……それは学生ですか、教員ですか。
  1026. 茅根隆

    証人茅根隆君) それと、それ以外に予備隊の調査行なつたことがあります。
  1027. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これは昨日でしたか、署長かの御証言のときに、笑話になつたのですけれども、教授が警察予備隊の志願をされて、その身許調査に行くということはこれは考えられないね。すると身許調査について、教授なら教授の身許調査をされたことがございますか。
  1028. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことはなかつたと思います。
  1029. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ない……。それでは学生身許調査はやつたのですか。
  1030. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことについてもはつきりした記憶はありません。
  1031. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先ほど身元調査をやつたという証言はあつたと思うのですが、ありませんか。
  1032. 茅根隆

    証人茅根隆君) ですから予備隊の身元調査のようなことはやりました。
  1033. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 警備隊の身元調査のことを聞いているのじやありませんが、予備隊の身元調査以外に、治安に関する取締の一つとして身先調査をやつたことはございませんか。
  1034. 茅根隆

    証人茅根隆君) ありませんです。
  1035. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから二月二十日ですか、ポポロ劇を見に行かれたときに同行の柴巡査ですか、柴巡査は宿直であつたということですが、あなたは。
  1036. 茅根隆

    証人茅根隆君) 私は宿直でありました。
  1037. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先ほどは非番というお話があつたと思いますが。
  1038. 茅根隆

    証人茅根隆君) いや非番でした。
  1039. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、誰が行こうじやないかということで行かれたのですか。
  1040. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当日私は非番で帰りましたので、誰が行こうと言つたかということはわかりません。私は非番で帰りまして、そうしてすぐ近くに住んでいる関係で個人で出て参りました。
  1041. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると三人の間には何らの連絡もなくて行かれたと、こういうわけですか。
  1042. 茅根隆

    証人茅根隆君) それについては、私はおりませんでしたのでわかりません。
  1043. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いや、あなたはその劇を見に行つたのじやありませんか。
  1044. 茅根隆

    証人茅根隆君) 行きました。
  1045. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 見に行つたのは三人行かれたのですね。
  1046. 茅根隆

    証人茅根隆君) それはあとで知りました。
  1047. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 あとで知りましたというのは、柴さんなら柴さんと別々に行かれましたわけですか。
  1048. 茅根隆

    証人茅根隆君) 別々に行きました。
  1049. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは、その警察手帳を取られるときに一緒になつたというだけで、入るとき一緒に入つたわけではないのですか。
  1050. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、別々に入りました。
  1051. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから打撲傷を受けたということで、この打撲傷の診断書についてちよつとわかりにくいのですが、後頭部及び両側頸部と書いてございますが、その程度はあなたの言葉で言えば、表現で言うというとどういう程度の打撲傷を受けたのですか。
  1052. 茅根隆

    証人茅根隆君) 顔を自由に左右することができず、ここが痛くて下も向けませんでした。
  1053. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 手で叩かれただけですか。
  1054. 茅根隆

    証人茅根隆君) 握りこぶしだろうと思います。
  1055. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それからその首の両側というのは。
  1056. 茅根隆

    証人茅根隆君) それもやはり握りこぶしで、専門的な言葉で、ちよつと医者でないとわかりませんが、恐らくここだろうと思いますけれども……。
  1057. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 腫れていましたか。
  1058. 茅根隆

    証人茅根隆君) 腫れてはいない……、自分では見えませんでした。(笑声)
  1059. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それはうしろでは見えぬでしよう。見えぬでしようが、痛いというのに、首を曲げて見たら痛かつたというのはわかりますが、叩かれて痛かつたというのは、手をうしろにやつて見て腫れているか腫れていないかというぐらいはわかりやしませんか。気がつかないというほどのものであつたということですか。
  1060. 茅根隆

    証人茅根隆君) 多少腫れていたように思います。
  1061. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 多少というのは、心持腫れておつたというわけですか。
  1062. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当時余り腫れてもいませんでしたけれども、頸を自由に曲げることが困難でした。
  1063. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 わかりました。それから、その柴さんの場合にしても、あなたの場合にしてもそうですが、誰がなぐつたかということはよく記憶に残つておるわけですか。それは福井君なんですか。
  1064. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうです。
  1065. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 柴さんの場合にも福井君ですか。
  1066. 茅根隆

    証人茅根隆君) 柴さんは誰がなぐつたか私直接見ておりませんでわかりません。
  1067. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 あなたの場合は福井君がなぐつた……。
  1068. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうです。
  1069. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それからうしろからなぐつたのによくわかりましたね。
  1070. 茅根隆

    証人茅根隆君) なぐられて痛いものですから、振返つて見ました。
  1071. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつと、あなたがたのお答えを聞いておるとどうも私のわからないことがある。それはあなたがたの持つてつた手帳を学生諸君が取上げて、そして写真に撮つた。その写真に撮つた中にあることを参議院の事務当局のほうでここに写しをこしらえた。その写しによつて見ると、あなたは茅根巡査ですね。
  1072. 茅根隆

    証人茅根隆君) そうです。
  1073. 一松定吉

    ○一松定吉君 あなたの警察手帳の中に、十二月六日身元調査森有正教授、二十五日身元調査協組塚崎宏、それから二十六日職員の共調査、一月三日紅谷芳弘教授身元調査、それから十七日小笠原良夫教授身元調査、三月一日身元調査J研究生西田昭、四日身元調査東大図書館鵜飼長壽、高倉テルの秘書云々、そういうふうに書いてありますね、委員長ちよつとこれを示していいですか。
  1074. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どうぞ。
  1075. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで、それはあなたが自分で書いたのじやないというなら別だよ、併しあなたが書いたのだということであると、今あなたは身元調査をしたことは覚えぬと言われた。それは先刻から他の委員があなたに申されたように、宣誓をして申されておるのだから偽証罪ということになるとお気の毒なので、それで私は今それをお目にかけるので、それをもう一遍御覧になつて、そういうことがあつたらあつたというふうに訂正して、さつきの覚えぬということは、今これを見せられて考えたら考え出したということの申立をすれば偽証罪にならないのだから、よく一つ考えてそれを一遍見て下さい。あなたがそれを見てもおれが書いたのではない、覚えぬというならこれは別だよ。併しこれはあなたの手帳じやない、他の者の手帳の写しで、おれたちの手帳にはこんなことはないというなら別ですが、あなたの手帳にこれがあるということであれば、身元調査をしたということについて考え出してお答えしたほうがいい。何も身元調査をしたということが、あなたの警察官としての職務執行上、憲法の十二條、十三條によつて、公共の福祉に反する行為であれば、学問の自由とか、思想の自由とかについても制限されつて警察官調査の範囲内に入るので決して悪いことはないのだ。身元調査をしたということがすぐ悪いものと思うような考えを持つておるから、覚えぬとか、したことがない、上司命令じやないというふうに言われるように私には思われる。だから正々堂々、ないことはない、或いは何故どういうことをしたかということを信念を以てここに申立てなければいかんよ。それをよく見てもう一遍答えなさい。
  1076. 茅根隆

    証人茅根隆君) 手帳が奪取されまして、それ以後全然、警察手帳は証拠物件として検察庁当局で領置してありますので、内容をはつきり見ておりませんから、こういうことが書いてあつたかどうかは記憶にありません。
  1077. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこでそれを見て、そういうことがあつたように……あるのかないのか、こういうことはもう手帳に全然書いた覚えはないと言うのか。成るほど今示されたのを見ると、こういうことがあつたようでございますとついうことなら、それでもいいのです。それを見せられても、おれは手帳にこんなことを書いたことはないと断言ができればそれでもいいんだよ。あなたの手帳にそういうことが書いてあつたということが写真にとられておるというのだから、その写真の内容を今写しをこしらえたのだから、それを果してあなたが書いたか書かないかということは私はわからんからお尋ねしているのです。まるつきりおれは調査なんかしたことはないのに、おれの手帳にこんなことを害いてあるはずはないということなら別なんだが、成るほど示されたものによつて見ると、何々教授の身元調査をしたこともあるようだなということで、それを言うたほうが偽証にもならず、それからあなたが何故にそういうことをしたかということについては、あなたの職権の範囲内でやつたということについて、犯罪にも何にもなるわけでもないし、大学の学問の自由を阻害したということにもならん。職務の執行であなたは調査をしたということなら、何も恐れることはないのだ。ありのままのことを正々堂々と言いなさい。それでもそういうことはないのだということならば、私はこれ以上あなたにお尋ねする心要はないのだ。そこをよく見てごらんなさい。そういうことがある以上は、それは一年も前のことじやないよ、今から二月、三月前、いや一月くらい前のことだから、あなたのその年で忘れるはずはないがね。
  1078. 茅根隆

    証人茅根隆君) ないと思います。
  1079. 一松定吉

    ○一松定吉君 ない……、そうするとそういう手帳が出て来て、それに書いてあつたような場合には、あなたはそれはおれが書いたものではないと否認できるかね。どうせその手帳は、場合によれば、裁判所か警視庁にあるのを提出を命ぜられて、ここへ取寄せて調べて、もう一遍あなたに向つて調べなければならん、そういうときに確信があるならばいいが、確信がないことをここで断言をするということはあなたに対して気の毒だから、言うて上げるのだよ、いいかね、それで。
  1080. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、ないと思います。
  1081. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 証人に御注意申上げておきます。今一松さんからも親切に過ちのないように御注意があつたのですから、そうするとその手帳に書いたこともないというのですか。
  1082. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、ないと思います。
  1083. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 手帳に書いたことはないのですか。手帳に書いたことも否認されるのですか。
  1084. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、記憶にありませんです。
  1085. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 記憶じやなく、見せられているのだから記憶じやないです。現物を見せられているのですから、写真を見せてもいいですよ。写真を見せぬでも書いた文字だけでもわかるはずです。今一松さんがおつしやつたように二年も三年も前のことじやないのですから、手帳に書いたことも否認されるのですか。書いたことは書いたけれども、そういう事実は記憶がないと言うのか。
  1086. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、こういうことを書いた事実はないと思います。
  1087. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 書いたこともない……。
  1088. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1089. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) よろしいかね。
  1090. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちよつともう一つ、あなたは先刻から身元調査をしたということは、これは特高のやり方だから、法律で禁止せられておるのだからというように、今委員のかたがお尋ねしたので、あなたはそれで非常に自分が何か法律違反のことでもやつたように思つておるのじやないかね。身許調査をすることはあなたはできるのだよ。職権上大学の学問の自由であろうと、思想の自由であろうと、それが公共の福祉に反するような場合には、警察官としてはそういうことをちやんと調査をして、そうして何どきでも犯罪があれば検挙し、そういう事実があれば上司報告するということはあなたがたの職権だ。だからそういうようなことに向つて何も恐れることはないのだから、本当にあるならあるように、今委員長からも御注意があつたのだから、これは若しこういうことが、あなたの手帳を国会で取寄せて調べた結果、あなたの文字であつて、鑑定でもさしてあなたの筆蹟に相違ないということになつて来ると、あなたはそれで重大な責任を負わなければならんよ。それだから私は注意しているのです。それで今委員長に答えたことや私に答えた通りでいいかね。覚えぬなら覚えぬということでもいいがね。
  1091. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうような記憶はありません。
  1092. 左藤義詮

    左藤義詮君 それは今委員長も一松委員も心配しておられるのですが、現在その手帳は目の前になし、どうも記憶がない、併し或いは書いたかも知れないという程度ですね。絶対に書かないということはここで言わないのですね。
  1093. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1094. 左藤義詮

    左藤義詮君 私もこれはあなたがちよつと書いたからといつて、別に上司の指図でやつたというわけでもないし、あなたは警備の責任上いろんなことをやつて、何を書いたかわからない、こういういろんな問題で非常に動揺している際だから、確実な記憶はない、併し絶対に書いたことはないと否認はしないのですね。記憶がない…。
  1095. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、記憶がありませんです。
  1096. 左藤義詮

    左藤義詮君 わかりました。
  1097. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 今左藤委員からのお尋ねで大分お話の工合が柔らかになつて来たようですが、もう一歩突込んで、これは国会では、若し偽証と認めれば僞証の告発をしなければならないというふうに、国会の証言については、強いその制裁まで謳つてあるのです。そこであなたも警察官として、警察の権威のためにもう少し記憶を喚び起して、その当時の模様をすなおな気持でお話になることは、これは警察の権威のためにもいいし、又国会における本日のこういうした委員会の権威のためにも大変いいことだと思うので、    〔理事伊藤修君退席、委員長着席〕 その点もう少し楽な気持でお考えなつて、書いた記憶があるならあるということをもう少し明瞭に話して、その当時の事情について記憶が薄れたというなら別ですが、あなたの手帳としていろいろ証拠品になつたものをこうしてやつているのですから、大体皆さんが納得するようなことをあなたは言えると思うのです。決してそれであなたを、先ほどから委員のかたがたもおつしやつているように、それでどうこうするというのじやないのですから、そこをもう少しすなおに記憶を喚び起してお話になるほうがいいと思います。
  1098. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 前のを改めても差支えありませんよ。どうですか。
  1099. 左藤義詮

    左藤義詮君 今は記憶がないが、併しもう一度帰つてよく実物も見、或いは筆蹟の写真も見て、よく一先ず考えて或いは思い出すかも知れませんという程度でもいいです。(笑声)今は記憶してないけれども、又落着いて……今あなたはここで絶対に書かないと否認するというと、今大分委員がたが心配しているように僞証問題になるのだから、断言しないでも、人間だから誰でもそういうふうにぼんやりすることもあるのだから、今は記憶してないけれども、併し又落着いて手帳を見て考えて見れば、或いは書いたことがあつたかも知れないということを思い出すかも知れない、そういう余地は残つているのですか、いないのですか。
  1100. 茅根隆

    証人茅根隆君) あります。(笑声)
  1101. 左藤義詮

    左藤義詮君 それをはつきり言いなさい。それではあなたは今ははつきり思い出せないが、このプリントだけではどうも思い出せないし、大分疲れたし、興奮もしているが、実際の手帳を見せられてよく当時のことを回想して見れば、或いは書いておつたかも知れないということは又考え直すかも知れないのですね。
  1102. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1103. 岡部常

    ○岡部常君 これの写真はここに提出してあるのではありませんか。若しありましたらば、写真を見せたら早いのではないですか。それからちよつと証人に私ついでに承わりたいのですが、この警察手帳に書くのは、本当の意味においてメモというこうとなんですか。何かその記載の形式ですね、何か上司からこういうふうに書けとかいうような指示従つて書いておるのでしようか。或いはあなた自身の、個々警察官の心覚えを書きますか、統一した書き方がありますか。
  1104. 茅根隆

    証人茅根隆君) 書く最初の日附とか天候、そういうものについての規定はありますけれども、それ以外の内容に、どういうことを記載しろとかそういうことについてははつきりした規定はありません。
  1105. 岡部常

    ○岡部常君 そうすると柴君が書いたのとあなたが書いたのは同じ文字が書いてあつても必ずしも同じじやないですね。個人々々の勝手に書いている点が多いですね。
  1106. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、そうです。
  1107. 岡部常

    ○岡部常君 ちよつとおかしいのだけれども、非常に個人的のことも書いてありますね、菓子を幾ら買つたとかいうようなことですね、あれはちよつと見ると私事を書いているようにも見えるのですが、又あなたたちの立場を考えると、それを書いておるために、そのときのほかのことも記憶を喚び起すためにも書くのじやないかと、こう私は忖度するのですが、そういうふうな場合もありますか。
  1108. 茅根隆

    証人茅根隆君) メモとして記憶を記載しておく程度であります。
  1109. 岡部常

    ○岡部常君 我々もこういう帳面を持つていますがね、やはりこれにも随分私のことも書きますが、それでそれがあるために却つて公のことも思い出す場合もあるので、そういうふうな意味のこともあるのですか。これにつまり私のことも記憶を喚び出すために書くような場合もあるのですか。そのくらい自由であるかという意味ですね。
  1110. 茅根隆

    証人茅根隆君) 記憶を喚び起すために記載しておくこともあります。
  1111. 岡部常

    ○岡部常君 あなたの場合はどうですか、これはありましたか。まあ仮にここに挙げてある手帳の内容ですね、そういう場合もあり得るのですね。
  1112. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、あります。
  1113. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 各委員から茅根証人証言につきまして、大変御親切な御注意がございました。私も個人を罪に陷し入れる云々ということについては皆さんと同じように考えております。考えておりますが、問題は事態を明らかにする点にあると思うのであります。左藤委員の責任だけは逃すようにしてやろうけれども、事態を明らかにすることはしないというような、この誘導的な御質問については私賛成をいたしかねます。問題はもう少しはつきりさせて頂きたいと思います。
  1114. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私から証人証言をお願いいたします。あなたの手帳を取つたのは福井君ですか。
  1115. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。
  1116. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは福井君の顔と名前とをよく知つておられるのですか。
  1117. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、知つております。
  1118. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはどういう理由でですか。
  1119. 茅根隆

    証人茅根隆君) 以前東大に参りましたときに、たしかあれはダレス氏に対する請願であつたか、その際にアーケードにおいて集会を行いましたのですけれども、その際に福井君であるということを知りました。
  1120. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 誰に教わつたのですか。
  1121. 茅根隆

    証人茅根隆君) 同じ係の者に教わりました。
  1122. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どなたですか。
  1123. 茅根隆

    証人茅根隆君) 誰とはなくこう教わつたように記憶しております。
  1124. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 柴巡査じやないですか。
  1125. 茅根隆

    証人茅根隆君) 違います。
  1126. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとあなたの手帳を取つたのは福井君ではないのですね。
  1127. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい、違います。
  1128. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 別の人ですね。
  1129. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  1130. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その人の名はおわかりですか。
  1131. 茅根隆

    証人茅根隆君) その人についてはまだ逮捕されておりませんので、これは公にすることはできないと思います。
  1132. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは東大学生の顔と名前とをどれくらい知つておられますか。
  1133. 茅根隆

    証人茅根隆君) 十名くらい知つております。
  1134. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 東大学生の中に、東大のいわゆるあなたがたの警備仕事に協力する学生のかたがあるのですか。
  1135. 茅根隆

    証人茅根隆君) おりませんです。
  1136. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは森有正という教授の名前を覚えておられますか。
  1137. 茅根隆

    証人茅根隆君) 薄く記憶にあるような気がします。
  1138. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これについて身元調査を行われたことはありますか。
  1139. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうその身元調査につきましては、捜査上、或いは行政警察上必要があつた場合に秘密に行なつたというようなこともありますから、それを公表したことによつてそれらの名誉が毀損されるような問題が起きたのでは困りますから、お答えはできません。
  1140. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると森教授について身元調査をしたが、答えられないとおつしやるのですか。
  1141. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  1142. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると森教授について身元調査を若し行なつたことがあるとするならば、それは如何なる犯罪容疑かということについては……。
  1143. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことも公表すれば名誉を毀損する虞れがありますのでお答えできません。
  1144. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは東大教室に立入られたことがありますか。
  1145. 茅根隆

    証人茅根隆君) 一般部外者が自由に出入りできる演劇とか、映画とか或いは音楽とか、そういうような催しへは私は入場券を購入して入場したことはございます。
  1146. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 教室の中に立入られたことはございますか。
  1147. 茅根隆

    証人茅根隆君) 講義中とか、或いは純然たる学術研究の場合には教室に立入つたことはありません。
  1148. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると映画、演劇、そういうような一般の人が入る場合にのみ入つたことがある、それ以外は入つたことはありませんか。
  1149. 茅根隆

    証人茅根隆君) ありませんです。
  1150. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そこで講義も行われていないし、学術研究も行われていないが、休憩中とか、そういう場合は教室に入つたことはありますか。
  1151. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういう学生が使用しておらない場合は殆んど鍵がかけてあるので入れません。ですから入つたことはありません。
  1152. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 講義中、又は研究中、又は休憩中に入つたことはない……。
  1153. 茅根隆

    証人茅根隆君) ありません。
  1154. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 休憩中にも……。
  1155. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  1156. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから最後に伺いたいのですが、あなたは大学において、大学の公認する団体の催しで、そうして、大学が許可した集会催し、映画、演劇も含むわけですが、そういうものには警察官大学には連絡しないで立入つてはいけないということは御存じですか。
  1157. 茅根隆

    証人茅根隆君) 知つております。
  1158. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 知つておる……。そういうものに立入つてはならないということは知つておる……。
  1159. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。併し一般部外者が自由に出入りのできる場合には、私も連絡なしで入つております。
  1160. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはどういう意味で。
  1161. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、警察官であるからといつて、身分的にそういう差別を受けることはないと思いますから、一般部外者として私も入つております。
  1162. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると一般部外者として入つておるときには、警察官職務を帶びた人間としてでなく……。
  1163. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1164. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、警察官としての職務をそういう場合には行うことはないのですね。行う意思がないのですね。
  1165. 茅根隆

    証人茅根隆君) 併し何らかそこに突発的な事犯が起きた場合には、当然警察官としての職務の執行は行います。
  1166. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一般部外者とそうでない人とは、大学生なり或いは職員なり教授なり、服装その他でもかなり識別が困難ではありませんか。どこで識別されますか。
  1167. 茅根隆

    証人茅根隆君) 一般部外者であるというようなことは、当然学生でなかつたら、或いは家族でなくて部外者である面識者がそこに入場するような場合がありますから、そういう場合に一般部外者であるということははつきり断定できます。
  1168. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、教職員の家族と部外者とを区別する場合にはその部外者についてあなたの面識のある場合に限るのですか。
  1169. 茅根隆

    証人茅根隆君) 入場する場合ですか。
  1170. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  1171. 茅根隆

    証人茅根隆君) 併しそうたくさん教職員の家族が東大に映画、演劇を見に来るということは常識的に判断でき得ません。
  1172. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつきの次官通達というもので、大学の公認する団体が催す催しで、大学当局の許可した集りには警察官が入つてはならないということはよく御承知なんですね。
  1173. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1174. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからポポロ劇団が催しをしたこの問題の起つた日ですが、この問題の起つた日にお入りになつたのは部外者が入つているからということですか。
  1175. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、そうです。
  1176. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その部外者ということをどういう点で識別されたのですか。
  1177. 茅根隆

    証人茅根隆君) あすこで見ておりましたところ、十歳ぐらいの男の子を連れた三十歳ぐらいの女のかたが入りました。それ以外にもまだ婦人のかた等が入りましたので、一般部外者であると思いまして、そうして私は入場券を購入しましたのですけれども、何らこれについて私を家族であるとか、或いは学生であるとかいうような質問を受けませんでしたので入場しました。
  1178. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとあなたがたは大学の公認団体で、そういう大学の許可した集会であつてもその入口に張り込んで、それで部外者らしき者が入れば入るということをなすつておいでになるのですね。
  1179. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当日のことでありますか、その二十日の。
  1180. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうです。
  1181. 茅根隆

    証人茅根隆君) 当日私は非番でありましたために、そういう職務行つたのではなくて、飽くまでも観劇を目的として行きましたのですから、そこで張り込んだというような証言ちよつとおかしいと思うのです。
  1182. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 勿論あなたが劇を御覧になるということは自由ですが、折角非番のときに、いろいろ家庭上の仕事もなさりたいだろうし、又どうせ御覧になるならもつと面白いものもあるでしよう。然るにそこをわざわざお通りになつて、若し部外者が入れるようならば自分も入ろうというふうにされたわけですね。
  1183. 茅根隆

    証人茅根隆君) 非常に料金が安いために、結局我々の俸給からいうとそういう娯楽を選ぶということであります。
  1184. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の質問を終ります。
  1185. 一松定吉

    ○一松定吉君 今あなた羽仁委員の質問に対して、教授などの身元調査をしたかせんか、その内容は名誉に関係があるからお答えできないと言いましたね。
  1186. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1187. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうするとさつきの身元調査をした覚えがないということとどうなるのかね。私は今森有正教授のことも、それから小笠原教授のことも、名前をちやんと挙げて、これをあなたにお見せして身元調査をしたかどうかとお尋ねしたら、そういうことはないと言つた。今初仁委員の質問に対しては、それはしたように思われもするけれども、その内容等は名誉に関するからお答えできぬという答えをしたが、その答えと、私に言うたあなたの答えど違うよ。だから身元調査をしたそのことは名誉に関しない。ただ身元調査についてどういうわけでしたとか、その内容を言えとかいうことならば、その教授の名誉に関するからお答えせんということは、これは私は立派な答えだと思う。ところが、したことはない。手帳にも書いたことはないということと、今羽仁委員に答えたこととは矛盾するようであるが、どつちが本当かね。
  1188. 茅根隆

    証人茅根隆君) 一松先生のほうへお答えしたのは記憶にないと、こう言いました。
  1189. 一松定吉

    ○一松定吉君 ところが羽仁委員に対しては、そういうことはあるようでありますが、併しその内容等については名誉に関するからお答えの限りではありませんと言つたね。そうすると、記憶にありませんということと、したことがあるようですが、ということは記憶にあることなんです。
  1190. 茅根隆

    証人茅根隆君) おぼろげな記憶であります。
  1191. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならそう答えにやいかんよ。おぼろげながらそういうことはありますけれども、断言はできませんという答えなら、それでいいんだ。けれどもあなたはないと言つた。そこで左藤委員からそういうことはいかんから一つ考えてやつて見なさいと言つて非常に同情あるお言葉があつたわけです。どつちだ。
  1192. 茅根隆

    証人茅根隆君) 記憶にありません。
  1193. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、今羽仁委員に言うたように、どうもおぼろげながらある、おぼろげながらというのと、記憶にありませんというのとどうなる。僕らは君をいじめようとか何とかいう考えじやないんだよ。
  1194. 左藤義詮

    左藤義詮君 議事進行について。大分、午後一時から開かれまして、長く勉強しておりますし、証人もやや少し疲れておるようでもありますし、我々も疲れておるのでありますが、この際証人を残しておりますので、暫時休憩をせられんことの動議を提出いたします。
  1195. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと待つて下さい。
  1196. 一松定吉

    ○一松定吉君 今のこの点だけを明らかにして、それから私はこれと牽連して、休憩する前に柴巡査にも今の点だけ明らかに注意だけしておきたい。それから休憩でもして頂けばいいと思います。
  1197. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 柴君今日は帰りました。
  1198. 一松定吉

    ○一松定吉君 それでは仕方がない……。
  1199. 伊藤修

    伊藤修君 その前にちよつと一言、今一松さんからお尋ねがありました、それから先ほど羽仁委員に対してお答えがあつた人の名誉に関することだから答えられないということです。そういう拒否権はないのですから。いいですか、強いてこちらが聞かぬだけのことであつて、それは誤解のないようにして下さい。それを楯にして証言が拒み得るとかということはないのですから、国会法には……。その意味において念を押しておきたい。あと証人が、そういうことを言えば答えぬでもいいんだとか言つて君が教えるといかんから言つておきます。先ほど柴巡査も向うへ行つて君と何か打合せをしていたらしいが、帰りに向うの証人の所へ寄つて打合しては困ります。
  1200. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 御本人にも申上げたいのですが、どうも一昨日この手帳の問題について聞いておりますと、この手帳は不法に取られ、臟物として領置されているのだから、その内容については言えない、或いは言わないということに警察署長以下皆さんの御相談があつて、そうしてここでは言えないという御方針であるかのような感じがするのです。そこで結局柴さんにお尋ねしてもあなたにお尋ねしても出て来ない、この手帳の内容に関しては……。ところが先ほどお話のように、国会の証人として、宣誓をしてもらつて証言を求める以上、その権威に対してはこれはその権威を守ろうと国会はします。そこでさつきの一松さんのお話じやありませんけれども、どうしてもその辺について証言を拒否される、或いは現物の写しを目の前に差上げても飽くまで拒否されるということになると、或いは現物を取り寄せて、或いは写真もあるのですが、それぞれ持つて来てでも右か左か、とにかくお尋ねする、そうしてその件はこれが証言の途中ならば取消されてもかまいませんけれども、飽くまで知りませんというか、或いはそういう身元調査をしたことはありませんと、こういうことで突つ放されると偽証の問題が出て来るわけです。その点については、誰もあなたをそういう罪に落そうとは希望してはおらんので、この内容を、どういう考え、どういう相談で来られたか知りませんけれども、むしろしまいまで明らかにせられることのほうが、これは私どもも望むし、それから、又国会の権威としても望むことであつて、今か、或いはあとからでもいい、その辺はもう一遍考え直してありのままを証言されることを私は望むし、又一言御注意申上げます。やはり身元調査はやつたことはない、先ほど見られた事項は私が書いたものでないと、或いは記憶はないと、こういうことを言われるのですか。
  1201. 茅根隆

    証人茅根隆君) はつきり、しないということは断定的には言えませんけれども、記憶も遠ざかつておりましてよくわかりません。
  1202. 吉田法晴

    ○吉田法晴君  一昨年とか、一昨々年のことというならそれも通りましよう、問題は二月の問題である。そしてここにこういうことがあります、書いてあるがどうですかと言つて、書いたものをそのままあなたの目の前に出したのであるから……(休憩々々と呼ぶ者あり)
  1203. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それではあなたに対する証人の質問は続行するとして、それでは今休憩いたしますから、あなたも頭をお冷しになつてよく考えて丁さい。(笑声)  それでは十分間休憩いたします。    午後四時五十三分休憩    —————・—————    午後五時二十一分開会
  1204. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それでは休憩前に引続きまして開会いたします。  証人のかたにお尋ねいたしますが、先ほどから問題になつておるあなたの警察手帳は、あなたのものであることは間違いないのですね。
  1205. 茅根隆

    証人茅根隆君) 間違いありません。
  1206. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その手帳に、先ほど一松委員からお示しになつたようなことが書いてあるのですが、書いたことは、あなたがお書きになつたことは間違いないですね。
  1207. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1208. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうですね。
  1209. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1210. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうして、書いたその事項についてはここで説明ができますか。
  1211. 茅根隆

    証人茅根隆君) 事項については、はつきり記憶はありませんので、一々説明ができないと思います。
  1212. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 先ほどから各委員が、あなたに書いてお尋ねしていらつしやるのですがそれについて記憶がない、記憶がないという一点張ですが、身元調査をしたというようなことは、先ほど羽仁委員からお尋ねの際には、したことがあるようにお答えになつたのですからね、そういうようなことは御記憶にあるのじやないですか。
  1213. 茅根隆

    証人茅根隆君) はつきり記憶にはありません。
  1214. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) いや、身元調査したことにはあるのでしよう。
  1215. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうようなことも記憶にあります。
  1216. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あるのですね。又誰と誰と身元調査したということは記憶にありますか。
  1217. 茅根隆

    証人茅根隆君) ありません。
  1218. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その警察手帳の写しを御覧になつて記憶を喚起することはできませんか。
  1219. 茅根隆

    証人茅根隆君) できない思います。
  1220. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) できないと思いますと、そういうようにすつぱりおつしやらずに、一つや二つは覚えがあるのじやないですか。まああなたは覚えておられぬかもわからんけれども、一つや二つは、覚えがあるのじやないですか。たくさんお書きになつているらしいですが……。
  1221. 茅根隆

    証人茅根隆君) それについては、したかどうかにつきましては、多少は記憶にあると思います。
  1222. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) だから、そんなあいまいなことをおつしやらずに、したならしたでいいのですから……、なさつたことはあるのでしよう。そのときの模様をお聞きしようとか、細かいことをお聞きよしうというのじやないのですから、こちらは基本論を聞いているわけですからね、そういうかたがたの身元調査をなさつたわけですね。
  1223. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ、そういうこともあります。
  1224. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうですね。……先ほど来、休憩前にお述べになつたことは只今お述べになつたことと矛盾する点は全部取消して、今お述べになつたことが正しいと、こういうふうに伺つてよろしいですか。
  1225. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1226. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) よろしうございますね。
  1227. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  1228. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたのよく御承知の次官通牒というのは、学問の自由、教育の自由というものを守るために、警察権がそこに余り入つて来ると学問が自由に研究できない、教育が自由にできない、又学内学生活動が自由にできないというために通牒ができていることはよく御承知ですな。
  1229. 茅根隆

    証人茅根隆君) ……
  1230. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつきおつしやつた……。
  1231. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1232. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そこで学生なり或いは教授なりの身元調査をする場合には、何か犯罪が明らかにそこにあつて、そしてその犯罪容疑ということに関係してでなければ許されないということはおわかりですか。
  1233. 茅根隆

    証人茅根隆君) はあ。
  1234. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると学生や教授について、明らかにこういう犯罪ということなくして身許調査が行われれば、それは違法ですね。思想調査というようなことでやると昔の特高と同じことですね、そうですな。それでさつきあなたは名誉に関するからというのですが、大学の教授なり学生なり、あなたがたに身元調査をされるということは、あなたがたはよほど巧妙におやりになつても本人にじきにわかりますですよ、これは。それで本人にとつて、学者や学生にとつて、学者や学生というのは余り度胸の太いような人はまあ少いのですよ。(笑声)森有正なんという教授、渡邊一夫なんという教授、或いはフランス文学の専門家であつたり、或いはクリスチヤンであつたりしてなかなか優しいかたですからね。(笑声)(「羽仁さんのような」)と呼ぶものあり)ですから、そういうかたを身元調査をなさいますと、非常に怖がるのですよ。あなたがたのような警察権というものをお持ちになつたが身元調査をなさると……。
  1235. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 羽仁さん、余り私見をお述べにならんで、お聞きになることをお聞きになるように……。
  1236. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それだけでも学者の自由な思想の発展というものを脅す虞れがあるということをお認めになりますか。
  1237. 茅根隆

    証人茅根隆君) 併しこの身元調査といいますのは、個人の自由を脅したり、或いは個人の名誉を傷つけたりしないように行なつておりますから、そういうことはありませんです。
  1238. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 身元調査内容に、経歴、一、経歴、一、思想、一、動向、一、背後関係、一、交友状況その他というふうにありますね。そうですか。
  1239. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうように調査の対象は規定されておりませんです。
  1240. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それらをも含みますか。
  1241. 茅根隆

    証人茅根隆君) 含んでおることもあります。
  1242. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからもう一つあなたに伺つておきますが、昨年の五月に東洋文庫で中国学術研究会の学術的な会合があつて、それが解散を命じられたようですが、あなたはその会合においでになりましたか。
  1243. 茅根隆

    証人茅根隆君) どこですか。
  1244. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 東洋文庫。
  1245. 茅根隆

    証人茅根隆君) そういうことは全然知つておりません。
  1246. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからもう一つだけ伺つておきますが、先ほどあなたは東大学内で、公認団体が学校の許可を得て行う会合であつても、部外者が入る場合には、自分も差別される理由がないから入るということを言われましたが、それはこの次管通達というものを十分承知の上で、それでこの部外者が入るか入らないかということを、部外者が入れば入るということは、公認団体が大学の許可を得て行なつている会合の前に行つて、そうして部外者が入るのを見れば入る、そういうことをなさるわけですね。これはそういうことをしていることがいいとか悪いとかということじやないのですよ。そういうことを今までなさつているかどうかということなんですよ。私は事実を、つまり大学の中で学問の研究、教育が自由に行われるように望むのです。あなたも望むでしよう。それを妨げるようなことがあれば、今後しないようにすればいいのですから、そういうことに関係して、そういう事実が今まであるかないかということを伺つているのです。今伺つているのは、大学の中に集会がある、あなたがたがお調べになつて、それは、これは公認団体である、大学の許可を得ている、それならば警察は行かないでもいいというふうにしているのか。それともその前くらいに立つて、部外の人が入るようなことであれば、やはり入る、自分も……。どういうふうになさつているのかということを伺つているのです。
  1247. 茅根隆

    証人茅根隆君) 後者であります。
  1248. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 即ち公認団体が大学の許可を得てやつている会合であつても、その前に行つて、部外者が入るかどうか見ておつて、入れば自分も入る、そういうことをやつているとおつしやるのですね。
  1249. 茅根隆

    証人茅根隆君) はい。
  1250. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の質問を終ります。
  1251. 岡部常

    ○岡部常君 ちよつと羽仁さんにお伺いいたしますが、先ほど身元調査の項目をお挙げになりましたね、あれはどこかの……。
  1252. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、ここに出ております。
  1253. 岡部常

    ○岡部常君 それじやそれに関連して証人に聞いておきます。ここにあなたがお書きになつた身元調査というのですね、今羽仁さんが挙げられたことに限るか、或いはそのほかの場合をも指すものであるか。それ以外に、例えばそのほかの結婚調査とか、或いはもつとやわらかいものも含まれているでしようか、どうでしようか。(笑声)広い意味で書いた場合もありますかどうか。これはみんな先ほど羽仁さんが挙げた項目に入るやつでありますか。
  1254. 茅根隆

    証人茅根隆君) ここですか。大体それくらいの範囲であります。
  1255. 岡部常

    ○岡部常君 それより広い場合もありますか。
  1256. 茅根隆

    証人茅根隆君) あります。
  1257. 岡部常

    ○岡部常君 はい、わかりました。
  1258. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 他に御質疑はありませんか。    〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
  1259. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) では証人のかた、長いこと御苦労様でございました。お帰り下さつてよろしうございます。
  1260. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それじや私から主尋問をいたします。あなたは警視庁にいつからお勤めですか。
  1261. 里村光治

    証人(里村光治君) 昭和十六年九月十五日であります。
  1262. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どういう職務を経ていらつしやいますか。
  1263. 里村光治

    証人(里村光治君) 現在ですか。
  1264. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) いや、それからずつとどういう職務を経ておいでになりましたか。
  1265. 里村光治

    証人(里村光治君) 警邏係を二年ばかりやりましたが、会計係を七年、それから警備を一年余り、現在に至つております。
  1266. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 本富士署にいらつしやつたのはいつ頃ですか。
  1267. 里村光治

    証人(里村光治君) 昨年の五月三十日であります。
  1268. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 本冨士署へいらつしやつてからどういう職務をやつておりますか。
  1269. 里村光治

    証人(里村光治君) 警備情報をやつております。
  1270. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 警備専門ですか。
  1271. 里村光治

    証人(里村光治君) そうであります。
  1272. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 警備ということはどういうことですか。
  1273. 里村光治

    証人(里村光治君) 警備は元来の事象に対して、全治安上必要なことをやります。
  1274. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、あなたの担任区域は管内全部ですか。
  1275. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1276. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたは東大を主として廻つていらつしやるのじやないですか。
  1277. 里村光治

    証人(里村光治君) 違います。管内全部をやつております。
  1278. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 東大のほうは、警備のためにどのくらいいらつしやるのですか。月にどのくらいいらつしやるのですか。
  1279. 里村光治

    証人(里村光治君) 月に十五日くらい。
  1280. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 十五日くらい…。
  1281. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1282. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 殆んど東大のために盡しているわけですね。
  1283. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1284. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それでは東大のことについてお尋ねしますが、東大警備上必要なことというのはどういうことなんですか。
  1285. 里村光治

    証人(里村光治君) 東大警備上必要なことは、東大の管内は警備対象として重要なところでありまして、現在東大の中においては、東大細胞が政令三百二十五号違反に該当するようなビラ、その他を頒布してありますから、その捜査上ときどき行つております。
  1286. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、主として政令三百二十五号違反事件容疑警備にいらつしやるわけですね。
  1287. 里村光治

    証人(里村光治君) そういうわけでありません。
  1288. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、ほかのことでも行くのですか。
  1289. 里村光治

    証人(里村光治君) はい、ほかのこともやつております。
  1290. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どういう目的でいらつしやるのですか。
  1291. 里村光治

    証人(里村光治君) 犯罪捜査もやつております。
  1292. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どういう犯罪があるのですか。
  1293. 里村光治

    証人(里村光治君) いろいろ東大においては相当犯罪が行われていると見ております。
  1294. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) るすと東大犯罪の巣窟ですか。(笑声)
  1295. 里村光治

    証人(里村光治君) そういうわけではありません。
  1296. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) いや、月に十五日も行くんですから、一日おきに行つているわけですよ。一日おきにいらつしやるのなら、東大にはいろいろ犯罪があるということになればだね、それは殆んど犯罪の巣窟と言わなくちやならんですよ、我々の常識から考えて……。そういうことは言えますか。……いや、事実をお聞きしているのですからね、そうお考えにならんでもよろしいのですよ。
  1297. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1298. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 気持を楽にお答え下さい。あなたたちがお調べになるときのような調べ方をするわけじやないですから……。(笑声)ですから気持を楽に持つて下さい。お聞きしているだけなんですから、別にあなたをお叱りするわけでも何でもないのですから、どうですかね。……それで私のお尋ねしていることは、あなたが月に十五日も東大にお仕事にいらつしやるのですから、そのお仕事目的は何かとお尋ねしているのです。
  1299. 里村光治

    証人(里村光治君) それは治安の目的、それから犯罪捜査……。
  1300. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) だから治安の目的ということは、政令三百二十五号違反容疑事件、こういうことはわかりましたから、それから犯罪捜査というのはどういう犯罪捜査をなさつておるのかと、こう聞いておるのですよ。
  1301. 里村光治

    証人(里村光治君) 東大においてはいろいろ金具の取外しとか、そのような事件ちよちよい行われております。
  1302. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) ちよちよい行われていると言つても、そんなことにあなたがたが貴重な時間をしよつちゆうお使いになつているわけじやありますまい。二人も三人も始終行つているのですから……。そうでなくしてですね、いわゆる東大において共産党細胞がある。それが解散したといえどもなお且つあとで蠢動しておるとか、動きが見受けられるとか、殊にビラや何か撒布されるというような形も現われているから、そういう点を治安維持目的のためにお調べになりたい、こういう意味で始終いらつしやるのじやないですか。
  1303. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1304. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうでしよう、まあ率直に言つて下さい。そういうふうに……。
  1305. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1306. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それで治安維持目的にとおつしやるのですがね。ここに言う犯罪容疑ということは、どういうものを取上げていらつしやつたのですか。一つ一つの具体的な事件があつたわけじやなく、あらかじめいろいろな動きというものを知るために行かれたと、こういうわけですか。
  1307. 里村光治

    証人(里村光治君) 東大の中においてビラが撒かれたり、いろいろ貼付されて、公然と政令違反行為を行なつておるために、それを調査するために行つております。
  1308. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、主としてそういう思想動向とか、或いは共産党細胞の動き方とか、或いは集会等におけるところの模様とかというものをお調べになりにいらつしやるわけですね。そうですね。
  1309. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1310. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういうことは現在の、現行法の上においてはどういう法律上の根拠がありますか。
  1311. 里村光治

    証人(里村光治君) それは団体等規正令によつて届出を必要とします。
  1312. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、団体等規正令によるところの犯罪捜査をすると、こういうわけですか。
  1313. 里村光治

    証人(里村光治君) そうでございます。当然、法の執行のためにやつております。
  1314. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、そういう個々事件に対して、あなたたちは上官の命令があるのですか。
  1315. 里村光治

    証人(里村光治君) 個々の問題については命令を受けておりません。自分の意思によつてつております。
  1316. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、俗に言う刑事巡査的な仕事をなさつておるわけですか。少くともその面においては……。
  1317. 里村光治

    証人(里村光治君) その実態をつかむために行つておるわけであります。
  1318. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 捜査する場合におきましては、具体的に何か事件がある、若しくはあり得る、そういう目的を以て調査することでなければできないはずですがね。常に警戒しておるというようなあり方はちよつとおかしいですがね。そういうことは御存じないですか。
  1319. 里村光治

    証人(里村光治君) 政令、団規令の第三條違反に該当するようなことを……。
  1320. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) まあそういう事件もあるでしよう。
  1321. 里村光治

    証人(里村光治君) ときどき。
  1322. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういう事件ばかりあるわけじやないでしよう。あなたたちの手帳を見ますと、そういう事件ばかりでないように見えますがね。
  1323. 里村光治

    証人(里村光治君) それから学校側において届け出てない秘密集会がときどき行われますから、そのためにも行きます。
  1324. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) だから私のお尋ねすることは、あなたの、三百二十五号違反事件或いは団規令違反事件、或いは都條例のいろいろ違反事件、こういう容疑のほかに亘つてお調べになつておるように、あなたたちの手帳からは窺われるのですかね。だからなお、ほかにも目的があるのじやないかと、こう聞いておるのです。先ほどおつしやつたように、いわゆる共産党細胞活動状態もやはりお調べになる対象ではないのですか、そういうわけですね。
  1325. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1326. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういうお調べになつたことはやはり上官に報告されるのでしようね。
  1327. 里村光治

    証人(里村光治君) 必要がある場合は報告することもあります。
  1328. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) いろいろな指示を受けるわけですね。指示は勿論あるでしよう。
  1329. 里村光治

    証人(里村光治君) 指示を受ける場合もあります。
  1330. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたたちで單独に行動できるわけではないのですからね、上官があるわけですからね。
  1331. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1332. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、この問題の二月二十二日、二十日ですか、二十日のポポロ劇団ですか、その催しについて、それにいらつしやるのは上官の命令でいらつしやつたのですか。
  1333. 里村光治

    証人(里村光治君) そのときは様子を見るために行きました。
  1334. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それは勿論職務行為ですね。
  1335. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1336. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) ですから、あなたが異状がないと報告なさつたわけですね。今日の催しは異状なしという報告をすなつたわけですね。
  1337. 里村光治

    証人(里村光治君) 別に解散させるような事態もなかつたから一応……。
  1338. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その旨報告したわけですね。
  1339. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1340. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それを異状なしということは、その催し物について何か思想的な動きだとか、或いは不穏な状態があつたわけではなかつたわけですね、……あつたんですか。
  1341. 里村光治

    証人(里村光治君) その掲示されたポポロ劇団の趣旨と違つた内容はありました。
  1342. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) ありましたか。
  1343. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1344. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どういう点が…。
  1345. 里村光治

    証人(里村光治君) そのポポロ劇団の内容松川事件を主材としたものであつて、その資金カンパのために行われたということ……。
  1346. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) え……。
  1347. 里村光治

    証人(里村光治君) その松川事件のために、救済のために資金をカンパするために今晩のポポロ劇団は行われるということでありました。
  1348. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 松川事件の刑事事件遂行に必要なその訴訟費用を賄うために、その催しをしたということはいけないのですか。
  1349. 里村光治

    証人(里村光治君) いけないと思います。
  1350. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どうして……、どうしていけないの……。
  1351. 里村光治

    証人(里村光治君) その届けた趣旨と全然違つておりますから……。
  1352. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 届けの趣旨と違うからいけないというのですか。本質的な内容がいけないというのですか、形式がいけないというのですか。
  1353. 里村光治

    証人(里村光治君) 形式。それから一般人も入つておりました。学内集会とはみなされないと思いました。
  1354. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 形式がいけないわけですね。
  1355. 里村光治

    証人(里村光治君) そうであります。
  1356. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 醵金したことがいけないのですか、どつちですか。どつちもいけないですか。
  1357. 里村光治

    証人(里村光治君) どつちもいけないと思います。
  1358. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういう醵金をすることがいけないという根拠は……。
  1359. 里村光治

    証人(里村光治君) 当然一般人が出入りする集会は公安條例の適用を受けると思います。
  1360. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それは形式の問題、それは催し物ですからね。私の聞いているのは、内容もいけないとおつしやるんですか、醵金したことは、いけないということはおかしいじやないですか。
  1361. 里村光治

    証人(里村光治君) 劇の内容もいけないと思いました。
  1362. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 劇の内容もいけないですか。
  1363. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1364. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どういう点が。
  1365. 里村光治

    証人(里村光治君) その松川事件の法廷において提出された証拠品がことごとくでつち上げの証拠品であつて、それは共産党の彈圧のためにやつていると、こういう……。
  1366. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 事実に反するようなことを仕組んでいるからいけないと、こういうわけですね。
  1367. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1368. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 事実に反しているか、反していないか、まだ判決が確定しているわけじやないですから、ここで断言はできませんけれども、まああなたたちは結局その事実に反しているようなことをやるからいけない、こういう意味ですね。
  1369. 里村光治

    証人(里村光治君) そう考えました。
  1370. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういう意味ですね。
  1371. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1372. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その他には……。
  1373. 里村光治

    証人(里村光治君) それと一般人が出入りしていたことがいけないと思いました。
  1374. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) まあ、聞くところによると学生、職員及びその家族という範囲に限られておつたそうですがね、それが一般人というのは……。
  1375. 里村光治

    証人(里村光治君) 私どもが入る前にその出入りする模様を見てから入りました。
  1376. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 一般人が入つているという……。
  1377. 里村光治

    証人(里村光治君) 何ら提示を求めないで一般人にも入場券を売つておりました。
  1378. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) まあ、そういうルーズなところがあつたかもわかりませんね。あなたたちはそう見たというのですね。
  1379. 里村光治

    証人(里村光治君) 私どもが入場券を買つたときも何らその家族の者かどうかと、そういうことも聞かれなかつたのです。
  1380. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それにもかかわらすだね、あなたが中間報告として異常なしという報告をなさつたというのはどういうわけです。何が異常なかつたのですか。現在はそう思われているのに、異常なしと報告なさつたのでしよう。
  1381. 里村光治

    証人(里村光治君) 解散させるような事態にまで……。
  1382. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) ではないというのですか。
  1383. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1384. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、その異常なしという意味は、その当日の催しは、解散させるほどの程度のものじやないと、その意味におけるところで異常なしと報告をしたと、こういう意味ですね。
  1385. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1386. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたは暴行を受けられた一人ですか。
  1387. 里村光治

    証人(里村光治君) 自分は暴行は受けなかつたですが、手帳を奪取されました。
  1388. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたは暴行は受けられない……。
  1389. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1390. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 手帳は暴力を以て取られたというのですが、そうですが。
  1391. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。手帳は、腕を取られて、それで当日自分は洋服の内ポケツトに入れておりました、そうすると、丁度前ボタンをとめるその紐に手帳の紐を縛りつけておきましたから、その紐の付根から引き抜いて、引き千切つて奪取されました。
  1392. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それで何ですか、その手帳を返してもらうために、何か証文を入れたわけですね。始末書か何か書いたんですね。
  1393. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1394. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたは翌日の逮捕のときに行かれたのですか。
  1395. 里村光治

    証人(里村光治君) 逮捕のときには別に行つておりません。
  1396. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 行かなかつたのですか。
  1397. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1398. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 逮捕には全然関係ないのですか。
  1399. 里村光治

    証人(里村光治君) 関係ございません。
  1400. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 只今証言された中に、一番最初東大に立入られる目的は、警備情報というのですか、警備情報のために、そうおつしやいましたのですか。
  1401. 里村光治

    証人(里村光治君) まあ、警備のために……。
  1402. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 警備情報という言葉を先ほどお使いになつたようですが、それは間違いですか。
  1403. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 警備上でしよう。
  1404. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 警備情報ということはないのですね。
  1405. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1406. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その警備の任務の内容については主な点はどういう点なんですか。特に上司からその警備内容について明示されたことがありますか、それとも大体あなたの制断でなさつているのですか。
  1407. 里村光治

    証人(里村光治君) 明示される場合もあります。
  1408. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 当日このポポロ劇団の芝居に本冨士署のあなたの同僚でお入りになつたのは何人ですか。
  1409. 里村光治

    証人(里村光治君) 同僚で入つたのは三人であります。
  1410. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その三人のかたはあらかじめ申合せてお入りになつたのですか。
  1411. 里村光治

    証人(里村光治君) 別に申合せたことはありません。
  1412. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、三人それぞれ偶然一緒に入つたわけですか。
  1413. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1414. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そのあなたがお入りになりましたのは、上司からの命令によるものですか。
  1415. 里村光治

    証人(里村光治君) 上司から入る命令を受けておりません。
  1416. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 受けていない。
  1417. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。自分で、一般人が入つておりますから当然職務……、そのポポロ劇団というのは十四日の東大新聞に反植民地闘争の一環として行うと、これは当然我々必要と思つて入りました。
  1418. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 で、命令を受けていない、そうして、その途中であなたが上司報告をなすつたわけですね。
  1419. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1420. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはどなたに報告なすつたのですか。
  1421. 里村光治

    証人(里村光治君) それは古屋部長にお話しました。
  1422. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 古屋部長……
  1423. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1424. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからあなたは福井君をよく御承知なんですか。
  1425. 里村光治

    証人(里村光治君) 顔は知つております。
  1426. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうして御承知なんですか、どういう機会にお知りになりましたか。
  1427. 里村光治

    証人(里村光治君) 同僚と東大の中を歩いておりました際に、あれが福井だと教えられました。顔に特徴がありましたから知つておりました。
  1428. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 同僚とおつしやるのはどなたですか。
  1429. 里村光治

    証人(里村光治君) 茅根さんです。
  1430. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そのほかにあなたは東大学生の顔と名前とを大勢知つておりますか。
  1431. 里村光治

    証人(里村光治君) 中には知つております。
  1432. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 何人ぐらい知つておりますか、大よそ……。
  1433. 里村光治

    証人(里村光治君) 四、五人知つております。
  1434. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから次に伺いたいのは、あなたは東大の中の教室に立ち入りますか。
  1435. 里村光治

    証人(里村光治君) 教室には別段入りません。
  1436. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 教室には入らない…。
  1437. 里村光治

    証人(里村光治君) 時には身元調査とか、いろいろ必要な場合には入ります。
  1438. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう場合には大学当局に連絡されてからお入りになりますか。断わりなしに……。
  1439. 里村光治

    証人(里村光治君) それは当然断わつて入ります。
  1440. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 断わつて……。
  1441. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1442. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大学当局に断わつて入ります……。
  1443. 里村光治

    証人(里村光治君) 受付に断わつて入ります。
  1444. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その身元調査の必要があるから入るということを……。
  1445. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1446. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは次官通達というものがあるのを御承知ですか。
  1447. 里村光治

    証人(里村光治君) 知つております。
  1448. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その中に、大学の公認した団体が大学の許可を得て行う集会には連絡なしには警察官は入らないということがあるのを御承知ですか。
  1449. 里村光治

    証人(里村光治君) それは我々は、その通達は文部次官と総監との公安條例の適用の問題で、別に我々が職務遂行上入ることは拘束されないと思つておりました。
  1450. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、そういう通達はあるけれども、あなたは、職務上そういうものに拘束されないというのですね。
  1451. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1452. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それで、ふだん東大であなたの職務遂行なさるためだ、この大学の公認した団体が大学の許可を得て行なつている集会が行われる場合ですね、それをあなたがお知りになつた場合には、その入口で見張つていて部外者が入つて行くようならやはり入るということをなさつているわけですか。
  1453. 里村光治

    証人(里村光治君) 純然たる学問的の研究だつたらまあ殆んど入りません。
  1454. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 純然たる学問的研究であるかないかということは、あなたが判断なさるのですか。
  1455. 里村光治

    証人(里村光治君) そのポポロ劇団……。
  1456. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、ポポロ劇団じやない、一般にです。
  1457. 里村光治

    証人(里村光治君) 我々は一般人が出入りした場合には一応見る必要がありますから入ります。それ以外は入つたことはありません。
  1458. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、その学術研究の目的で行われているかどうかということは、あなたが判断なさるわけですか、それとも大学当局に行つて聞いておられますか。
  1459. 里村光治

    証人(里村光治君) 聞く場合もあります。
  1460. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 聞かない場合もある……。
  1461. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1462. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは東洋文庫というところを御承知ですか。
  1463. 里村光治

    証人(里村光治君) 東洋文庫……知りません。
  1464. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 御承知ない……、私の質問を終ります。どうも有難うございました。
  1465. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 二、三点伺いますが、あなたの、この警察手帳に書かれたと言われるところのものを見ますと、昨年の六月からの記入が、ほかのところと比べて、割合に少いのですが、そうすると、東大の中に入られたけれども、むしろ外のほうを廻られることが多くて、或いは今まで証言された柴、茅根というような人が、主に東大なら東大に入られると、こういうような分担があるわけではありませんか。区域の……。
  1466. 里村光治

    証人(里村光治君) そういうことはありません。
  1467. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ありません……。
  1468. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1469. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから先ほどの御証言の中で、解散させるほどのこともなかつたし、異常なしという連絡をしたということですが、そうすると、そういう会合について、解散させるかどうかということを、一々警察のほうで考えておられるのですか。異常なしという報告をされたと、その異常なしという意味は、解散させるほどのものではなかつた、こういうふうに自分は判断したと、こういうお話ですね。そうすると、会合があつた場合に、一々連絡をして、これは学校のほうで許可した会合だということがわかつてつても、警察のほうでは見て、これが解散させるべきものであるかどうかということを、一々調べ、そうして協議をしておられるということになりますか。
  1470. 里村光治

    証人(里村光治君) いや、協議というようなことはありません。
  1471. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじや、解散させるほどのものでないという御判断の説明を聞かんと納得が行かんのですが、例えば、ただ不審なとか或いは調査を要するというお話でありますが……。解散させるほどのものでなしというのは、あなたの御証言として、少し証言の仕方が、言いようが悪いということなんでしようか。
  1472. 里村光治

    証人(里村光治君) まあ解散させる必要を認めなかつたわけです。
  1473. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 解散させるということがないのに、解散させるほどのものでもなしと考えたのはおかしくありませんか。解散させるか、させないかということが、警察なら警察考えられ或いは相談されるというのでなければ、その説明は、私どもに納得が行かない。まあいいです……。それからポポロ劇団について、一般人が入つてつたということなんですが、そうすると全体のどのくらい入つてつたと見られましたか。
  1474. 里村光治

    証人(里村光治君) 全体の約四割ぐらい。
  1475. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは服装その他でですか。
  1476. 里村光治

    証人(里村光治君) まあ、服装その他から判断して……。
  1477. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから、あなたは職務上と言われたのですが、その日は宿直だつたのですか。それとも家から一人で出て行かれたのですか。
  1478. 里村光治

    証人(里村光治君) 帰りに寄りました。
  1479. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 帰りに……。
  1480. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1481. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ほかの二人のかたと偶然に一緒に行つたというお話ですが、学生新聞で、当日催しがあるということを見たから行つたと、こういう点でほかのかたも同じような理由で見に行つたという、柴さんはそうなんですが、そうしますと柴さんはそのとき当直ということですが、そうすると御一緒に打合されて行かれたように、これは考えられますが、違いますか……。御一緒じやなかつたのですか。
  1482. 里村光治

    証人(里村光治君) 時間は違つております。
  1483. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間は違つてる……。
  1484. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1485. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 同じ柴さんなら柴さんで宿直であつたというのですから、その点はどうなんですか。あなたが帰りであつたとしても、入る時期は知つてつたかも知れんけれども、そういう点から考えますならば、入られる動機、或いはそういう催しがあつたということを知つた、同じ学生新聞から知つたという理由から考えてみても、職務おいでなつたと、こういう工合に判断できますが、どうなんですか。
  1486. 里村光治

    証人(里村光治君) 警察係として職務上当然見ておく必要があると思つて行きました。
  1487. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それから重ねてお尋ねしますが、職務上入場されるときに、劇を見るについて四十円拂われたとして、その四十円なら四十円というようなものは、これは自分でお出しになるのですか、それとも警察のほうから出  してくれるのですか。
  1488. 里村光治

    証人(里村光治君) 自分で出しました。
  1489. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと補足さして下さい。あなたは、東大を卒業された人が東大にいるときの思想動向などの調査をなさつたことがありますか。
  1490. 里村光治

    証人(里村光治君) 東大を卒業した……。
  1491. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  1492. 里村光治

    証人(里村光治君) あります。思想については調査したことはありません。
  1493. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 何について……。
  1494. 里村光治

    証人(里村光治君) 予備隊の志願者とかそういうもの……。
  1495. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると東大を卒業して、これは何か学士でしようね、そういうかたが東大を卒業したあとで社会に出られて、そうしてそういうかたの東大にいる間の調査をすると、それは予備隊志願者である場合……、それ以外にはありませんか。
  1496. 里村光治

    証人(里村光治君) それ以外にはありません。
  1497. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ありません……。
  1498. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1499. 左藤義詮

    左藤義詮君 あなたがポポコ劇団の芝居を見ておられて、若しそれが治安に非常な害がある、或いは法律に反すると判断するときには、それを解散をさせる権限を持つていますか。
  1500. 里村光治

    証人(里村光治君) 権限は持つていません。一応学校当局上司から警告をいたしまして、学校当局でいたします。
  1501. 左藤義詮

    左藤義詮君 若しそれが治安上非常に有害であると認められたときには、学校当局にそのことを注意をすると、こういう意思を持つていたのですね。
  1502. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1503. 左藤義詮

    左藤義詮君 昨年の六月以来ずつと行つていられるのですが、最近特に急迫していると……あなたが警備上いろいろ注意しておつて、非常にこれはだんだん治安上心配なことが植えつつあるという傾向はお認めになつたのですか。
  1504. 里村光治

    証人(里村光治君) 認められます。
  1505. 左藤義詮

    左藤義詮君 どういう点ですか、具体的には。
  1506. 里村光治

    証人(里村光治君) 三百二十五号違反に該当するようなビラの配付、それから東大細胞……。
  1507. 左藤義詮

    左藤義詮君 東大細胞、再建細胞というものが東大の中に非合法に活動しているというようなことについて、何かそういう証拠を警備上得ておられますか。
  1508. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1509. 左藤義詮

    左藤義詮君 あなたは警備の責任を持つて非常に骨を折つておるわけですが、その場合に、あなたが知つている次官通牒で第一の責任は大学が持つているわけですが、大学は厚生部長とか或いはその他の巡視というものが取締るわけです。例えばビラを撒いたときにはすぐそれを差しとめるとか、或いはビラを撒いた、非合法のビラの場合はすぐそれを取らせるとかというようなことについて、相当行届いて東大としてはやつているとお考えになりますか、あなたが外から警備上見ておられて、生ぬるい、これでは非常に危險だと考えられたか、どういうふうに判断されておりますか。
  1510. 里村光治

    証人(里村光治君) 学校当局で取り締りが完全にできないと思います。
  1511. 左藤義詮

    左藤義詮君 そうすると、ビラを撒いて、それが非常に政令違反の疑いあるビラを撒いても殆んど無政府状態というか、ヒラを撒きつぱなしで、それを制止することもなく又差しとめるようなものがないといような事態がありましたか、どうですか。
  1512. 里村光治

    証人(里村光治君) あります。
  1513. 左藤義詮

    左藤義詮君 わかりました。
  1514. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと補足さして頂きます。今お尋ねがあつたような状況については、上司報告されておりますか。
  1515. 里村光治

    証人(里村光治君) 報告しております。
  1516. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大学側に連絡しておりますか。
  1517. 里村光治

    証人(里村光治君) しております。
  1518. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大学側には誰に連絡されましたか。
  1519. 里村光治

    証人(里村光治君) 厚生部長。
  1520. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) ちよつとお伺いしますが、当日ポポロ劇団にお入りになつ警察官の人が三人でございましたか。四人じやありませんか。
  1521. 里村光治

    証人(里村光治君) 自分のほかに三人。
  1522. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたのほかに三人……。
  1523. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1524. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 一人の人は少し騒がしくなつたので逃げて行つた学生側で言えば逃げて行つたというのですね。
  1525. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1526. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) たまたま三人の人は舞台の前に連れて行かれたというわけですね。
  1527. 里村光治

    証人(里村光治君) はあ。
  1528. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 四人ですね。
  1529. 里村光治

    証人(里村光治君) 四人です。
  1530. 一松定吉

    ○一松定吉君 あなたに尋ねるがね、その日のポポロ劇団の松川事件がね、この芝居をあなた初めからしまいまで御覧になつたのですか。
  1531. 里村光治

    証人(里村光治君) 自分は途中で連絡に行きましたから。
  1532. 一松定吉

    ○一松定吉君 どういうような仕組になつておつたの。併しね、この松川事件というのは、福島の裁判所で今裁判を受けてね、それが仙台の高等裁判所に控訴されておる事件だね。それは知つておるね。
  1533. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1534. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうして共産党の人々が吉田内閣の行政整理に対する反対、それから報復、それから警察官の労働運動取締の緩和、そういうようなことをさせるために汽車を顛覆せしめる、こういう計画で線路の釘を抜き取つておいて、線路が動くようにしておいて、そうしてそれがために汽車を顛覆せしめて機関士が一人と助手が二名死んだという事件だね。
  1535. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1536. 一松定吉

    ○一松定吉君 それに対して福島の裁判所では黙秘権を行使して見たり、或いは弁護士が裁判長を忌避して見たりしてやつて、大変、裁判の回数が殆んど百回近く開廷したという事件だ。そういうようなことを芝居に仕組んでどういうことをしておつたの
  1537. 里村光治

    証人(里村光治君) その工夫長がスパナを盗まれた。そのスパナは二十センチぐらいで到底鉄道を破壊することはできない。それにもかかわらず法廷ではそれを証拠品として出している。それはでつち上げであつて共産党を彈圧するものだ……。
  1538. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういうことを役者が出て舞台で話をし合つたのですか。
  1539. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1540. 一松定吉

    ○一松定吉君 こういうことじや、一体これは汽車は顛覆できないのだと、それを顛覆したなんということで検事が起訴したということは、でつち上げた事件だということを役者が言うのか。芝居の筋を聞いておるのだよ。そういうことをしておつたのですか。松川事件を筋にとつて芝居をしたのだろう、あなたが観たときはどういうことをやつてつたか。
  1541. 里村光治

    証人(里村光治君) スパナは二十センチぐらいで到底鉄道線路を破壊することができない……。
  1542. 一松定吉

    ○一松定吉君 二十センチぐらいのものを持つて来て、それは裁判官か検事かに見せるところか何かしたのか。
  1543. 里村光治

    証人(里村光治君) そんなことを……。
  1544. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうして、それに対して裁判官はどういうことをしたか、検事はどういうことをしたが、弁護士はどういうことをしたのか。
  1545. 里村光治

    証人(里村光治君) 細部に亘つては知りませんでした、
  1546. 一松定吉

    ○一松定吉君 裁判だつたら裁判官も弁護士も被告人もそういう仮装をした人が出たのか。
  1547. 里村光治

    証人(里村光治君) それは出ませんでした。
  1548. 一松定吉

    ○一松定吉君 出ません……。
  1549. 里村光治

    証人(里村光治君) 見ていませんでした。
  1550. 一松定吉

    ○一松定吉君 あなたの観た芝居は、どういうところのしぐさを見せたかを聞くのだよ。松川事件を仕組んで芝居をしたので、それを見に行つたのだろう。
  1551. 里村光治

    証人(里村光治君) はい。
  1552. 一松定吉

    ○一松定吉君 こんなもので線路を破壊できないと切り口上で裁判長に食つてかかつたのか、或いは弁護士が立つてどうしたとか、或いは家族が寄つてたかつて、ああいうことをされては困るというような内輪話をしておつたのかという場面を聞くのだよ。
  1553. 里村光治

    証人(里村光治君) 自分は十分ぐらい見ただけです。
  1554. 一松定吉

    ○一松定吉君 その十分間あなたが見たとき、役者はどういうことをしておつたか。例えば或る人が出て来て鍬を担いで来て線路をこうやつたとか或いは釘を抜き取つたとか、或いは裁判長と言つて、裁判長に弁護士が食つてかかろうとしたところ、裁判長は腕を組んで知らん顔をしておつたとか、どういうことをしたか、そこを聞いておるのだ。
  1555. 里村光治

    証人(里村光治君) うなだれて喋つておることを聞きました。
  1556. 一松定吉

    ○一松定吉君 被告に装つた役者が、うなだれて裁判官に向つてつたのか、どういうことを喋つてつたか。
  1557. 里村光治

    証人(里村光治君) 息子に話しておることを聞きました。
  1558. 一松定吉

    ○一松定吉君 裁判所のところでなく、息子に話しておるというところを聞いたのか、裁判に廻された人が裁判にかかる前に、自分の家で自分の子供を寄せて、そこでこういうことを話したというようなことを聞いたのか。
  1559. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1560. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、裁判所のところはなかつたのか、裁判所が調べるところとか……。
  1561. 里村光治

    証人(里村光治君) そこは見ておりません。
  1562. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこは見ていないが、結局これは警察官がでつち上げた事件だということを見ておる人に納得の行くようなふうに所作をして見せたのか。
  1563. 里村光治

    証人(里村光治君) そうです。
  1564. 一松定吉

    ○一松定吉君 よろしうございます。
  1565. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 十分間見られたというなら、松川事件の取材云々ということは、どうも話を聞くと、見られる前に話があつて、それを大体お聞きになつたわけですね、松川事件の解説は聞かれたわけですか。
  1566. 里村光治

    証人(里村光治君) 聞きました。それも丁度一番後方におりましたから別に詳しいことを聞いておりませんでした。最後方におりましたから。
  1567. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それからどの場面を見られたか、十分間ぐらいではわからなかつたということですが、三人共一緒におられたのですか、同じ所に、四人ですか、別々の所に。
  1568. 里村光治

    証人(里村光治君) 別々の所に…。
  1569. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 別々の所でよく発見されたような気がするのですが、そうすると解説も十分聞えなかつた。それから十分ほど舞台を見て、そうして報告に行かれた。そうするとその舞台の場というのは、今のお話ではその裁判の場面でなくて、裁判所の場面でなくて、裁判の前の家庭の場というのですか、そういうものだというお話ですか。どういう場なんですか。
  1570. 左藤義詮

    左藤義詮君 只今証人に……、議事進行ですが、いろいろ東大の劇の内容についてお話があつたのですが、マイクが不十分だとか、後でわからなかつたとか、相当短い時間だつたから、これは必要であるならば大学が公認して許可をしたのですから、大学のほうで責任を以て、その劇の筋書なり、梗概なりを取つて調査すればいいんじやないかと思う。この程度にしたら如何ですか。
  1571. 一松定吉

    ○一松定吉君 さつきの茅根巡査はどうなりましたか。
  1572. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 解決しまして全部認めました。
  1573. 一松定吉

    ○一松定吉君 それじや残つているのは柴巡査だけが残つているのだね。
  1574. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それは又あとで手続いたします。
  1575. 一松定吉

    ○一松定吉君 その松川事件の芝居の筋は、それは是非一つ私は知りたいと思うので、これは大学のほうにあるでしようから……。
  1576. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) こちらから取寄せることにいたします。それじや御苦労様でございました。   —————————————
  1577. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 大変お待たせしました。今日おいで願いましたのは、本日御承知の通りの直接の関係の警官の人三名にお尋ねいたしましたその証言とあなたのこの間の証言と大分食い違つている、細かい点は別として重要な点において相違がありますからそれをお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、三名の警官の方々が及びもう一人何とかいう人があるのですが、これらの人は東大調査のために派遣しているということは、あなたの命令若しくはあなたの部下の命令によつて職務行為として派遣されておるのかということで、あなたはこの間は全然知らない、勝手に行つているんだという供述がありましたが、この点はどうですか。
  1578. 野口議

    証人野口議君) 先ほど最初にお答え申すつもりでありました。で、その一つは二十日に入りましたことが單なる娯楽で入つたと私はお答え申しておつたのでありますが、よく三人に聞いてみますというと、丁度二月の十五日頃東大の正門前附近で東京大学新聞を、これはやはり茅根巡査であつたと思いますが、買いまして、この新聞を見ますとここに再軍備反対署名始まる、反植民地デー、ポポロ発表会など、こういうのがありましたので、これを警備係の部屋においていろいろ係で見ておつたらしいのであります。それでたまたま二十日の日にこれが行われる、二十一日は反植民地デーであるというので、大学で行われるということで、二十日の朝、これは古田というやはり警備係の巡査でありますが、学校の今回のこのポポロ劇の責任者であります法学部に行きまして、菊地事務官に会いまして、そしてこれは新聞に出ておつたが許可してあるだろうかどうかということを尋ねましたところが、それは許可してある、けれども新聞にはこういうふうに出ておるが内容などは大丈夫であろうかということを聞きましたが、まあ大体大丈夫であろうということを聞きまして、朝帰りまして、そして夕方からポポロ劇二十五番教室の下へ行つたのであります。そうして教室前の校庭で、ポポロ劇の女の事務員らしい人と学生の人が切符を売つてつたのでそれを買い、又一般の人も入つておるということを確認して中に入つた。それで結局劇鑑賞ということばかりでなく、この以前の新聞の発表もありますし、これがやはり警備上相当注意しなくちやならんということで、入つたということがはつきりしたのでございます。ただ單なる劇を見に行つたということは、私が今までお答えしておつたのは誤りであります。
  1579. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その点はよろしい。
  1580. 野口議

    証人野口議君) 新聞は……、
  1581. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 新聞はこちらにありますから……  それでは、その点はそういうふうに御訂正になりますが、その他の、常に大学にいろいろ治安上の問題とか或いは政令三百二十五号違反事件容疑とか、或いは都條例違反容疑とか、いろいろな目的を以て大学捜査の必要上調査に行かれていることは、あなたの命令によつて常にを打かれているのではないですか。
  1582. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。いちいちこれに行けということは言いませんけれども……。
  1583. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 総括的に……、
  1584. 野口議

    証人野口議君) かねてやはり東大ビラが出ますし、提出いたしましたようなビラもございますし、団体等規正令違反もございますので、これは非常に注意して行かなくちやならんということはかねて言つております。
  1585. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その点も只今の証言と違いますがね、本日のが正しいのですか、この間の証言が正しいのですか。
  1586. 野口議

    証人野口議君) 今日のが正しいのでございます。
  1587. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) この間どうして固執されたのですか。
  1588. 野口議

    証人野口議君) このポポロ劇の……、
  1589. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) ポポロ劇以外のことでも、自分は知らないということを言つていらつしやつたのですが、当然の職務行為じやないかということを今度は突込んでお聞きしても知らない、命令したこともないのだ、報告受けたこともないとおつしやるのですが……
  1590. 野口議

    証人野口議君) それは今日申上げるのが正しいのです。
  1591. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) この間おつしやつたことは間違いですね。記憶違いですか、故意におつしやつたのですか。
  1592. 野口議

    証人野口議君) 故意じやございません。
  1593. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 記憶違いですか、そうするとその調査の結果の報告はあなたはお聞きになつておるわけですね。
  1594. 野口議

    証人野口議君) 報告はいろいろ、口頭で報告するのもございますが、巡査のほうから私に直接報告するという形はとつていないのでございます。
  1595. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 警備主任の何とか警部補……。
  1596. 野口議

    証人野口議君) 藤原でございます。
  1597. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 藤原警部補を通じてあなたは報告を了承しておるわけですね。
  1598. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。
  1599. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) この間は、それを報告を聞いたことがないとおつしやつたのは、それはどうですか。
  1600. 野口議

    証人野口議君) いや報告は聞いております。
  1601. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) この間のは違うのですね。
  1602. 野口議

    証人野口議君) 違います。
  1603. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 今日の言うことが正しいのですね。
  1604. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。
  1605. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、常に警備の必要上東大にこれらの人を派遣していらつしやることは、あなたが当然御承知のことですね。
  1606. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。
  1607. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どうしてそういうわかり切つたことをこの間は長い時間固執されたのですか。あなたの心境がわからんですね。
  1608. 野口議

    証人野口議君) 私が東大の中に入ることを命令したことは全然ないと申上げたことはないように記憶しますが……。
  1609. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) いやないとおつしやつた
  1610. 野口議

    証人野口議君) そういうふうに申上げたいといたしますならばそれに私の記憶違いでございます。
  1611. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういう報告を受けられたとすれば、従つてそれに基いて大学のほうへあなたからこういう不穏なことがあるとか、こういうような事故があるとかいうことで大学のほうへ御注意になつたことはありますか。
  1612. 野口議

    証人野口議君) あります。
  1613. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その場合どういう返事ですか、大学のほうでは……。
  1614. 野口議

    証人野口議君) 大学のほうではいろいろ団体規正令違反の文書も相当出る、三百二十五号違反も出るというので、これは係りのほうから関係向きに注意を喚起しまして、そしてそれを十分取締つてもらいたいということを、係りのほうから言われております。
  1615. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その結果どうですか、大学のほうに……。
  1616. 野口議

    証人野口議君) その結果取締りをされたこともあります。又昨年八月と記憶いたしますが、職安の者が大学の文化祭という名目の所に入つてつた事実がありましたので、連絡いたしまして解散させた事実はあります。けれどももう僅かの時間でやつてしまつた
  1617. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それはこないだ聞いた。
  1618. 野口議

    証人野口議君) やつてしまつたというので、実際は取締りの完璧といいますか、取締りの徹底を期せられない場合もあります。
  1619. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 今一つは、その問題の警察手帳に書かれておることは私的のことだというような趣旨の御答弁がありましたですが、これはいずれも公務に関係することが主たるものじやないでしようか。
  1620. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。
  1621. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうでしよう。
  1622. 野口議

    証人野口議君) はあ。まあ私的のことが書いてあれば、それはいけない。
  1623. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) たまにはあるでしようが、本来は公務遂行上必要の事項を忘れないようにメモして書きとめておく、こういう意味のものでしよう。書かれたことは公務遂行上必要なことのみ……、たまには例外もあるでしようが、いずれも大体そういうふうに伺つてよろしいですね。
  1624. 野口議

    証人野口議君) さようでございます。
  1625. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その点もこの間は大分否認されておつたのですが、今日はそういうことはお認めになるのですね。
  1626. 野口議

    証人野口議君) さようでございます。
  1627. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その他この間証言なつた中で、真実と相違する点と思われることはありませんか。間違つてつたとか記憶違いの点はありませんか。
  1628. 野口議

    証人野口議君) 逮捕時の状況でございますが、委員長殿から御指摘を受けました。これは私があの場合現場に実際いたわけではないのでございまして、そこに行つた主任から聞いてそれを今御報告したのであります。実はその以前に衆議院で又よばれまして、その翌日でございますし、非常に私も頭がまだはつきりいたさなかつたようなわけで、(笑声)実はちぐはぐな御報告をしたのでございます。この上野警部補というのが私服の十名を連れて、主として福井の逮捕に向つたのであります。これに聞いてみますと、大体はつきりいたすのでございますが、これを読み上げさせて頂きたいと思います。
  1629. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 読み上げんでもいい。要旨だけ言つて下さい。
  1630. 野口議

    証人野口議君) 二月二十一日午後四時十分頃法文経の二号館の一階の事務所に逮捕に向いましたところ、被疑者はいないというので、一応引上げるということで、隊員十各で学友会の地下室附近に来たとき、十五メートルくらい遅れて随いて来た海老原巡査がおおいという声をかけたので、見ると学友会の角の道路の上で年令五十歳くらいの男と押問答をしておる。その周囲に学生が十二、三名くらい同巡査を取り囲んでおることを見ましたので、全員現場に駈けつけるよう上野警部補が命じました。そうして茅根巡査が包囲中の学生を指さして、あそこにおる、大きくて毛糸の襟巻をしておるのが福井ですというので、駈けつけてみますと、福井はほかの学生と共に海老原巡査に対してなにか大声で言つてつた。そこで上野警部補は右手に逮捕状を握つてこれを示して、「福井、暴力行為による逮捕状が出ているから逮捕する」と告げました。「何を」と言つて殴りかかつて来た。そうして逃げ出そうとしたので、上野警部補は全員に対して逮捕しろと命じた、すると石川刑事ほか四、五名が逮捕にかかつたのであります。何分非常に力が強くて撥ね返された。そこへ学生の十二、三名の人が一緒に逮捕を妨害すべく抵抗して来たので、そこに互いに入り乱れて乱闘という形になりました、暫らくは逆に二、三歩引き摺られたという形で奪還されるのではないかと思われるような状態の下にあつたのであります。仕方がなく待機中の私服員が正門外におりましたので、そこに伝令をやつて、そうして制服員に応援を求め、強力な学生の抵抗を受けながら全員十名奪還を防ぎ正門のほうへ進みました。その間にちよつと被疑者が怯む隙に石川刑事が両手に手錠をかけることができました。続いて押寄せて来る学生を排除し、逮捕現場から二十メートルくらい正門に向つて前進した頃、制服の一個小隊が到着して援助の下に同行にかかつたところ、却つて激しい抵抗を受ける状態になつたが、暫くこれを排除しつつ前進し、正門二十メートル附近に至つた隊四、五名の学生によつて正門の扉を締められました。これは締められました状況の写真、それから逮捕の状況はここへ三枚の写真がございますので、御覧願いたいと思います。徒らは時間を要するのみで、そこにおいてただ突破しなくちやならんと考えて、待機中の予備隊の応援を以ちまして、そうして正門に来ました。そうして予備隊が正門を開けなくて、一番正門に、外から向いまして左のほうの門を開けて、そうしてそこから被疑者を同行して同署へ持つて来たのであります。それで手錠をかけたのは先ほど石川刑事と申しましたが、その手錠をかけるときに石川巡査は噛みつかれたので、そうしてそのときは石川巡査は手錠をかけましたが、そうして手錠をかけて同行しようとしたが、すでに集つていた七、八十名の学生によつて押し寄せられ、起すことはできなく、寝て起きなかつた。そのまま担ぎ上げようとしたが押倒され、これを繰返えして十メトールくらい正門に向つて進んだというのは、先ほども申し上げましたことを重複いたしますが、同行途中足に片錠をかけたという状況をここに摘出いたしますと、現状から二十メートルくらい行つたところ福井は両足にて北澤部長、山本、石川刑事を蹴飛ばすので、同行中のこれは制服の高橋巡査が右足に片錠をかけて、そうして又左足にかけようとしましたけれども、足で蹴飛ばして、左の足にはかけられずに右足の足首にかけたまま同行いたしております。かけましたのは右足だけで、左まではどうしてもかけられずに同行して持つて来た。これが最前申しました点とこれが違つておりました。  それから歯のかけたときのことを摘出いたしますと、正門の十五メートル附近に至つた頃、一旦立たせようとしたとき、持上げていた野内巡査の左手の人指し指に噛みついたのであります。噛みつきましたところが、野口巡査が痛いからこう引いたのであります。引いた途端に歯が折れて下へ落ちたということを野内巡査が現認しております。又その横にいた高橋巡査もこれを現認しております。そうして署に来まして、署で取調べましたのは廣川警部補、これは犯罪事実の要旨及び弁護人選任ができる旨を告げて、弁解の機会を與えて供述録取することを告げました。福井は供述に先立ちまして、主任さん、歯が抜けておると言いましたので、廣川警部補はそれでは口を開けてごらんと言つたら口を開けましたので、主任は顔を近ずけて口をのぞき込んで見ました。確かに上の門歯が一本かけていましたが、歯莖がはれてもいないし、そのときはもう血もついていなかつた。で痛むのかと聞きましたら、痛みはしないが、みつともないから入歯を入れてくれ、こういう申出があつたそうであります。このとき主任は注意してみましたがほかには傷のあるところは発見できなかつた。それから間もなく東大生の山田光男君が福井君の差入を持つて来たので受付けた。受付けたのはいろいろございますが、オキシフルそのほか四点、それから薬品でございます。洗面具、靴下、たばこ、それからキヤラメル、牛乳二本、食パン、毛布が二枚を福井君に渡しました。薬があるから痛むところがあつたら手当をしなさいと言いましたところが、福井君は主任の目の前で先ず薬袋を開きまして、赤チンキを出して、手錠の跡が少し痛むのだと言うて赤チンキをつけました。歯は何ともないらしく薬はつけなかつた。それから福井君は差入のものを全部平げて歯の痛むような様子もなかつた。そして最後にみかんを食べるとき、歯にしみないかと主任が聞きましたら何ともないと言つていた、そうしてあとで茶を呑んでも歯が痛まないようなので治療を受けるほどではないと認めたので、このことは署長には報告しなかつた。そうして福井君は食べ終つて、弁解録書を作りましたが、終始黙否権を使つて何も言わなかつた。そして八時頃、留置場に入れることにしたのであります。留置揚の担当の看守は玉置、小笠原両看守で、係り巡査が中に入れましてそうして身体検査をいたしたのであります。身体検査をするからといつたところが、身体検査をする必要はないといつて拒否したけれども、看守係りとしましては、身体検査のこの責任があるから、留置場の監理規定があるからということを説明して、漸く納得して身体検査をいたしました。そのとき着ておつた着物は相当泥に汚れておりましたけれども、体はどこにも異常は認められなかつた。又苦痛なども訴えなかつたという状況でございまして、ただ最後にこのありました歯を入れてくれ、入れ歯をしてくれということを言つたことに対してこれをしてやらなかつた。歯の治療を歯の医者にさせなかつたということは私遺憾に思つておりますが、当日はもうなにしろ陳情はおしかけますし、周りはわいわい騒ぐし、私もここまで手が届かなかつたということは誠に申訳けありませんが、この点は遺憾であります。
  1631. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) よくわかりましたが、あなたが今日それだけのお答えができるのは、その事情は少くとも一昨日おいでになるまでに、署長として当然知つておかなくてはならん事項だと思うんですが、私のほうで指指摘して初めて調査するのでは、署長としての仕事が盡していないと思いますが、知らぬ存ぜぬで一点張りで以て、今日初めてお答えになるのでは困るのですから、そういうような重要な事項はすでに当然お知りにならなければならん事項だと思いますが、まあ逮捕状の問題はこれはあなたの今のお説はお説として伺つておきます。学校側の言うのは又違つておりますが、まあ少くとも逮捕状が出ている限り、逮捕状が出ていない場合はともかくとして、逮捕状が出ている限り、而も携行している場合は、二百一條の規定によつて、当然見せなくてはならん、但したまたま携行していない場合は、同僚の二項によつて、七十三條の三項を準用して、これは持つていなくてもですね、逮捕できるという規定になつていますから、たまたま持つていない場合は仕方がないけれども、少くとも当日は持て行つたのだから、これは呈示して、原則に従つて逮捕すべきである、こう我々は考えるのです。又法律はそう命じているのですから、だからこの間のようなお答えでは満足できない。今日は筋道立つたお答えですから、一応あなたのお答えとして伺つておきます。それが事実か否かは、我々が又調べてからのことですから……。まあその他はありませんですね、御訂正になる分は……。よろしうございますね。
  1632. 野口議

    証人野口議君) はあ。
  1633. 左藤義詮

    左藤義詮君 一昨日はよほどどうかしておられたというのですが、殆んど今日は一昨日の証言を覆えされて、今委員長のお話にもありましたように、当然署長としてそれくらいのことはこれだけ重大な事件で特に知つておらなければならない、特に我々参議院がわざわざ証人に来て頂くのですから、相当この事件に対して私は心がまえしておいでになると思つたところが、全く事を弁じない程度のことであつて、今日初めて、よほど今日は頭がしつかりしておると見えて、お話があつたのでありまして、私ども本富士署に呼ばれて、こんな供述を覆えすと大変なお叱りを受けるだろうと思いますが、その点は警察署長として非常に遺憾に思うのですが、今日併し一通りお調べになつおいでになつたのは、委員長のお話の通り私ども一応了承するのでありますが、一昨日とは違いまして、署長も非常に東大警備の状態を心配して、これに任務上、部下を指揮して注意をしておられた。而もいろいろな兆候があつたときには、東大の当局と連絡した、かようにおつしやるのですが、大学の当局と緊密に連絡するということが、文部次官通牒の一番の趣旨ですが、そういう場合には、どなたが東大のどういう責任者と連絡をしておいでになるのですか。
  1634. 野口議

    証人野口議君) 厚生部の厚生部長、学生課長ですか……。
  1635. 左藤義詮

    左藤義詮君 それは書類でなさいますか。電話その他口頭でなさいますか。
  1636. 野口議

    証人野口議君) 書類でやるのは殆んどないと思います。大体電話。
  1637. 左藤義詮

    左藤義詮君 あなたのほうは誰がなさるのですか。署長みずからですか。
  1638. 野口議

    証人野口議君) 署長が直接やることもたまにはあるのであります。先ほど申上げました解散させなくちやならんというような場合のものであります。少し人数が多いというようなもの、そのほかは大体警備主任に命じてやります。
  1639. 左藤義詮

    左藤義詮君 昨年或いは本年度に何回ぐらい、そういう問題について大学に連絡をし、大学の処置を促されたことがあるのですか。ざつとでいいです。相当の回数ですか。
  1640. 野口議

    証人野口議君) 相当の回数になると思います。
  1641. 左藤義詮

    左藤義詮君 それに対して大学としては、第一次の治安の責任をお任せになつておるあなたがたとして、安心できるような処置をすぐにされましたか。或いはあなたがたとしては、これでは不十分だとお考えなつておるか、如何ですか。連絡したときにはそれが打てば響くように、大学としては、大学内の治安に対して責任を以て善処されたか、如何ですか。
  1642. 野口議

    証人野口議君) 十分ではないと思います。で私は主管の厚生部長、或いは学生課長が、そういう担当の事務といたしましても、それでは各学部関係もございますので、やはり一歩上の総長、まあ総長がいろいろお忙しければ、総長代理のかたから連絡するような方法にしなければいかんのではないかというふうに、私は最近思つてつたのであります。
  1643. 左藤義詮

    左藤義詮君 あなたがそういうふうにお考えになり、あなたが本富士署を管轄せられて、どうも東大の治安の取締が不十分だというふうにお考えになるならば、厚生部長限りでなしに、学長に連絡すべきだ、そういうあなたはあなた自身から学長の注意を促すようなことをされたかどうか。
  1644. 野口議

    証人野口議君) まだやつておりません。
  1645. 左藤義詮

    左藤義詮君 又一方あなた自身としても非常にまあむずかしい、解釈のむずかしい次官通牒を基礎にしてこの問題を、大学の自治をやつているのですが、そういうことがなかなかうまく行かない場合には、あなたの上司である警視総監に、その最近の実情、非常に警備上心配であるが、大学としてはなかなかやつてくれないということについて警視総監報告をして指図を受ける。或いは警視総監大学と連絡されるように、そういう上司に対する適当な処置をせられたことがありますか、ありませんか。
  1646. 野口議

    証人野口議君) 大体今の状態、或いはビラ配布違反がある容疑等については報告をいたしておきましたけれども、まあそれに対する先ほど申上げました学長等との総監からの御連絡等につきまして、私はまた進言したことは遺憾ながらございません。
  1647. 左藤義詮

    左藤義詮君 その点は遺憾ながらとおつしやいますが、私どもも遺憾に思うのであります。一昨日大学当局の証言によると、前署長の時分には非常によく連絡ができて、こういう事態はなかつた。現署長なつてこういう問題をしばしば繰返し、遂にこういう、かくのごとき事態になつたというお話があつたのでありますが、その点については今遺憾ながらとおつしやつたのでありますが、上司にも報告がしてない……。又あなた自身としても大学に対してもう少し大学の特別の立場をよく警察でも認める、警察も併し又治安の点で心配することに対して協力して行く、こういう点においてお互いの連絡、或いは協力が欠けておつたということを今お認めになりますか、如何ですか。
  1648. 野口議

    証人野口議君) 認めます。
  1649. 左藤義詮

    左藤義詮君 終りです。
  1650. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 過去の連絡……、今度の問題につきましては、お話を承わつて了承するところがありますが、今までの問題につきまして、二、三お伺いしたいのであります。この前のときには、この警察手帳の記載事項について御否定になつておりましたが、今日はまあ、大体お認めになつたのであります。そのことにつきまして、この本日にいたしましても、柴巡だけは否定されて、お帰りになつた。茅根巡査以後においては認められましたので、問題は茅根巡査と里村巡査については解決をしたのですが、最初柴巡査がお出でになり、或いは茅根巡査の大半の証言を認めますまでには、この前の署長の態度同様に否認せられて参つておるのでありまして、これらのことについて、今日お出でになりますについて、警察自体として何らかの指示、打合せをして来られたのでございましようか。
  1651. 野口議

    証人野口議君) 打合せというようなことはいたしません。ただ本人は、今日出頭いたします茅根巡査は、年令も若いことでございますし、こういう席に出たことはございませんので、成るべく真実を答申しなくちやいかん、すなおに答申しなくちやいかんということを私は言つただけであります。
  1652. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ところが茅根巡査、里村巡査についてはそういうあれはありませんでしたけれども、柴巡査については問題が残つておりまして、或いは偽証その他の責任を問わなければならないような状態のままで残つておるかのような感じがするのです。その点について柴巡査自身よりも、むしろ署長に責任があつたかのような感じがするのでありますが、これらについてどういうように考えておられますか。署長自身でこの前の証言を取り消されたのでありまして、そうして真実を述べられたと考えられますが、どういう工合に考えておられますか。
  1653. 野口議

    証人野口議君) 柴巡査が否認をしておる事柄は、これはどういう事柄でございましようか。
  1654. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 御発言中ですが、柴巡査は今残しておりますから、今喚んでおりますから……。
  1655. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは今の問題は御本人から伺う機会がありそうですから、署長自身にお尋ねいたしませんが、警察手帳に書いてあります事柄に関してですが、職務警備の巡査の人たち東大へ入られた、そうして治安維持という言葉を使われたのもありますが、或いは教授、学生等の身元調査等をされた。その身元調査等については経歴、思想動向、或いは背後関係、交友状況その他の調査をされた。こういう点が明らかになり、その点も署長においてそういう仕事をさせたという点は、先ほどの御証言でお認めになつたのですね。
  1656. 野口議

    証人野口議君) はい、そうでございます。
  1657. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、これらの活動について、手帳の中にもあるのですが、本庁警備二係よりこういう問題について連絡があり云々ということがございます。本富士署において、警備二係においてそれらの活動がなされるわけであつて、本庁或いはその他にもあつたと思うのですが、こういう行動について本庁その他との連絡があつて警備内容をなす仕事が今までなされて来たということは、これは署長としても御存じであつたのでありましようか。
  1658. 野口議

    証人野口議君) 警備係といわれましたことは、まあどういう……、それがどういうことであつたかということは私はつきりお答えできませんですけれども、重要事項があつて警備対象となるというようなことにつきましては、やはり本庁に報告いたします。
  1659. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ここに私が承知をし得る具体的な事例については御存じでなかつたかも知れないと思います。それは本庁警備二係より電話があつて、全官の夜間デモがあるから、学校側に注意しろ、東大においては左翼の動向に注意することという電話があつたと、こういうことなんです。その具体的なことについてあなたが知つておられたかということをお尋ねしておるのではないので、こういう警備活動については本庁との連絡があり、それからそういう警備活動については、本庁その他とも連絡があつてずつとやつて来られたことであるという点は御存じかということです。
  1660. 野口議

    証人野口議君) 重要な警備事項につきましては、連絡は、報告はいたします。
  1661. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そういたしますと、これは本庁それから更にそれ以上について連絡があるというように想像してもかまいませんか。その点はどういう工合にお考えになるのですか。
  1662. 野口議

    証人野口議君) 今申上げましたように、これが署限りのもので終るものである。警備の対象でも署限りで大体これが警備力を以て処理することができるというものにつきましては、署限りでいたします。それ以上、又警備の関係で必要だ、広い範囲に警備をしなくてはならんという場合は、本庁に連絡をいたします。
  1663. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そういう一般的のことをお尋ねしているのではなく、例えば身元調査されておる、身元調査内容は経歴、或いは思想、動向、背後関係、交友状況、その他というものを調査になる。その他この警備係のいたします活動報告系統的になされておるということはわかるのですが、それは本庁なら本庁を通じて、ここに出ておりますのは、本庁の警備二係に連絡があるということはわかるのです。更に或いはそれが特審に繋つてこういう調査が継続的に、或いは縦横繋つてなされておるという、こういうように理解をするのですが、そういう点についてはどういう工合にお考えなつておりますか。
  1664. 野口議

    証人野口議君) 特審などの横の連絡のことは、ちよつと私わかりませんでございますが、本庁との連絡はいつもいたします。
  1665. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 わかりました。本庁との連絡はされる、とこれはそれぞれの活動、或いは調査を見ておりますと、各巡査さんの、例えば身元調査なら身元調査という問題につきましても、この間の署長証言のように警察予備隊の云々ということではなくて、或いは思想、動向、背後関係、そういつたような一定のこの形式と申しますか、内容を持つた調査が行われているということが大体知り得るわけです。その点を皆さん認められたわけですから、その点の繋りをお伺いしたわけです。本庁に報告をし、連絡をしているということで満足するよりほかはなかろうかと思います。  その次に例えば……、例えばじやありません、暴力行為等の取締法違反容疑で福井君に令状の交付が求められた。こういうことですが先ほど来二巡査の証言を聞いておりますと、茅根巡査のごときは拳で叩かれたのだと思うが、瘤ができておつたかできておらんか、その点もよく認識をしないと、それで診断書につきましては向後一週間加療を要すると書いてございますけれども、その程度がまあ漠然とした言い方でありますけれども、大したことはないという感じがするのであります。柴巡査についてその点について詳しく承わりませんでしたけれども、十日と一週間の違いはございますけれども、大体似たような打撲傷だという感じがいたしたのであります。そうしますとその暴力行為の内容からいたしまして、余りに大げさにこの動員がせられ、それから又犠牲が拂われているという感じがする。従つて暴力行為等の取締法違反というのが本当の逮捕の目的であるのか、或いは別に何らかの理由があるのかと、こういう想像をいたすのでありますが、これらの点についてはどういう内容でありますか。もう少し折角何と申しまするか、前回と違いまして相当真実が述べられておるように思いますので、向いたいと思います。
  1666. 野口議

    証人野口議君) 茅根、柴、里村の三巡査が受けた傷というものについて今御指摘になりましたその傷は、これは御質問の通り私どもそう重いものとは考えませんが、ただあの二十五番教室で行われたあの暴行は、ただその傷のみによつてこれを、軽重を論ずべきものでもなく、相当あの大衆の前に引出されて、そうして唾を吐きかけられ、警察官が公務の形になつておるにかかわらず、暴行をされて、そうして大事な手帳を奪取されたと、この事件内容個々に見ますると軽いようでありまするけれども、この事件は私といたしましては、警察の威信という問題もございますので、この傷は御指摘になりましたように、私は大きなものではないと思いますけれども、この事件そのものは私といたしましては相当重視して、そうしてやはり追及しなくてはならんというふうに今でも思つております。
  1667. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうしますと、暴力行為等取締法云々ということだけれども、この叩かれた打撲傷の程度というよりも、真相は二十日のポポロ劇団の劇をめぐつて、大衆の面前で警察官吏が殴打或いは警察手帳を強奪された、こういつたような警察の威信保持上まあ断固たる態度をとらなきやならん、こういう御真意でしようか。今のお話はそういう工合に理解していいのですか。
  1668. 野口議

    証人野口議君) 大体の通りであります。
  1669. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 わかりました。もう一つこの三人の巡査の人たちについては非常にまあ至れり盡せりといいますが、診断書がとられておりますが、福井君の負傷については先日の学校側証言、それから署長その他の証言と、今日のお話は若干違つておりますが、併し診断書はとられておらんということだけは明らかなようでありますが、それはどうしてそういう点についてとられなかつたのでしようか、ついでに伺つて置きたいと思います。
  1670. 野口議

    証人野口議君) 先ほど処置について申上げました通り、逮捕のその晩は何と申しますか、非常に抗議もありますし、まわりも非常に押しかけるという喧騒な状態でもありますし、私としてはそこまで眼が届かなかつたということは申上げた通りであります。それでこれを扱いました先ほど申上げました廣川主任もほかに外傷はなし、まあ歯が欠けたから歯を入れてくれということであつたのでありまして、診断書をとるという程度のものではないというふうに認めてとらなかつたのであります。それを故意にとらなかつたということはないと思います。
  1671. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあ本人からの申出がなかつたということが本当ならば、歯が欠けているという事実の認定はあつたようであります。その強く言うべきことじやないかも知れませんけれども、一応この野口ですか、野口巡査について噛まれた、従つて左示指咬傷という診断がとられた、その際に歯が欠けたということはお認めになつた。それに野口巡査の診断書はとられたけれども、福井君の診断書はとられなかつた。これを見ますと、まあこれだけでというわけじやありませんけれども、警察手帳をとられて警察の威信云々ということで、当日警察の皆さんにしても、署長がそうであつたとは申しませんけれども、廣川主任初め皆さん感情的になつて、警察側の診断をとることについては極めて迅速適切であつたけれでも、福井君の問題については忘れたと申しますか、或いはそこまで気がつかなかつたと、こういうような感じがするのですが、そうじやないですか。
  1672. 野口議

    証人野口議君) そういうふうに私ども意識してやつた、感情的にこれは怪我したというけれども、これを診断書をつけるとこつちが不利になるからつけないというような認識でこれをとらなかつたということは、これはもう全然ございません。ただああいう場合非常に忙しかつたと言つても言訳になりませんけれども、黙秘権は行使しておる。又歯だけ欠けたということで別に食事等にも差支えなかつたということで、体に外傷がなければというような感じも、それはあつたかも知れませんが、一方はとつて一方はとらなかつた、事実とつておりませんから御指摘せられてもこれは止むを得ないと思います。その点は故意にとらなかつたということは、私はありません。
  1673. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今の点ちよつと、打撲云々については日にちが違いますから、これはあれですが、今の左示指咬傷、この咬傷にしても、本気で噛み切つたんなら噛み切つたか、或いは傷がついているでしようけれども、咬傷を受けて幾分の腫脹ありと書いてある。そうすると幾らか噛んだ跡が残つているかも知れませんけれども、そこで裂傷があつたというほどまでではない。同じ日に噛まれたほうだけとられているけれども、噛んだというほう、そうして歯がそのためになくなつた、こういうお話について、どうしても同じ日の問題について片方だけとり、片方とらなかつたということについては納得が行かないのですが、これはまあ故意ではなかつた、感情ではなかつたと言われるけれども、片方とつて片方とられなかつた理由についてはやはり納得をいたしかねますが、何か……。
  1674. 野口議

    証人野口議君) 別にその点については、歯もやはり身体の一部でありまして、(笑声)噛まれたほうもやはり身体の一部でございますから、これはやはりとらなかつたことは事実でございますから、まあこれは意識していないことでありますし、故意ではないというのは先ほど申上げた通りでありますが、まあ、とらなかつたことはとらなかつたのでありますから、まあ過失でございましようか、私のほうの……。
  1675. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 多少警察側の手落ちという点は認められますか。
  1676. 野口議

    証人野口議君) 入れ歯をしてくれということで、歯が欠けているという診断書は……、
  1677. 左藤義詮

    左藤義詮君 ちよつと関連して。今診断書で問題になつておるのですが、警察署としてはあとからいろいろ突込まれてはいけないので、自分たちのほうの立場を保全するために診断書をとつた。福井君のほうは本人が相当に傷を受けておるから診断書をとつてくれということを要求して、それをとらなかつたならば、過失だと思うのですが、本人が要求しなかつた場合に、被疑者の診断書を必らず警察がとるべき法的な根挺はないと思うのです。その点吉田委員の質問は無論入歯をしなかつた点については議論があると思うのですが、併し警察がその診断書をそのとき同時にとらなかつたことは法的には問題がないのじやないかと思うのですが、どうですか。
  1678. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 左藤委員と論争すべきであるとも思いませんし、甚だその点恐縮するのですが、一昨日の学校側証言を聞いておりますと、前歯が欠けた。今のお話のように入歯が入れてあつて、無痛で入歯がぽろりと落ちた……、
  1679. 野口議

    証人野口議君) 入歯とは申しませんでした。
  1680. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 というふうには聞きません。そうすると、今のお話のように左示指を噛んだことそれ自身によつて歯が欠けたと、こういうまあ御説明ですが、それに若干の疑問を持つのですけれども、少くとも噛まれたほうをとられたというならば、或いはこの噛まれたということ自身についてのあれもありますが、これは人権擁護の点から申しますならば、当然被害者、被害者といいますか、被疑者の福井君についてもとるのが、主任といいますか、或いは署長の私は自然の責任じやないかとも考える。
  1681. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 問題は結局診断書をとるという根拠もなければ義務もないと思うのですが、併しこの間私も質問しましたが、本人がそういう傷を負うておる場合は、法的の如何にかかわらず医者に見せてやるということはしなければならんのじやないか。被疑者だからどんな傷をしておつても放つておいていいということは、署長として責任を果していないと、こう申上げたのです。だから少くともその義務はあるのじやないか、医者に見せるという義務はあるのじやないか、その結果本人が後日欲すれば、その見た結果を、診断書をとりに来れば、これは與えてやるという親切心はあつてもいいと思うのです。少くとも基本人権を擁護するという警察官の立場としては当然の取扱い方であると、かように信ずるのですが、それを署長さんがなされなかつたことはどうもお手落ではないか、こう申上げたのです。
  1682. 左藤義詮

    左藤義詮君 私もその点全く委員長と同感であります。ただ診断書の問題については、私は本人が何らかの自分の主張するための証拠保全をする場合に、一方をとり、一方をとらなかつたら、これはなんですけれども、そうでなかつたら、そんなに吉田委員のおつしやるほど、この問題は別に警察が差別をしたというふうにとれなかつたので、差出がましいのですが申上げたのです。
  1683. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 吉田さんの言う意味も、私の言うようなお尋ねだろうと思う。診断書を当然とれというような御趣旨じやないと思うのです。
  1684. 左藤義詮

    左藤義詮君 併し今そういうふうに聞こえましたから……。
  1685. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それは大体そういう意味なんです。ところが出て来ておりますものは客観的な証明書が出ておるのでしよう。そうすると福井君の問題については話があるだけで何にも結果というものが出てない。
  1686. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) あなたのお尋ねは今の基本問題をお尋ねで……、診断書についての基本的の問題についてここで論争するということは避けまして……。診断書を要求するという法的根拠はないのですから……。
  1687. 左藤義詮

    左藤義詮君 そう思いますね。本人が要求して、しなかつた場合はあれですけれども。
  1688. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それは当然のことです。吉田さんのお尋ねはそういうことではないと思います。そういうふうに御了承願いたいと思います。
  1689. 一松定吉

    ○一松定吉君 あのね署長、あなたのお答えをじつと冷静に聞いておるとね、あなたが東大内部に共産党細胞が活躍しておるから、それに対して我が国のために取締りをしなければならんという意味で部下を派遣してそういうことをやらしたという点については、私は非常にその労苦を謝して、あなたのやることを決して非難はしませんがね、とにかく次官通牒と、警視庁と大学との間にそういう申合せをしておる以上は、やはり今各委員のかたが心配せられたように、学校内部の了解を得てそういうことをやるほうが、むしろ学生のそういう間違つた思想を是正するに効果的であると私は思うのですがね。そういうことをあなたのほうが、前署長と態度を違えておやりにならなかつたということが、この事件の原因をなすものだと私は見ておるのだが。
  1690. 野口議

    証人野口議君) それはちよつと私から申上げたいのですが、前署長と態度を変えたということは、それは私は否認いたします。これはもう全面的に否認いたしますが、今までの集会には、これはみんな行つてつたのです。集会というか、公開の集会にはもう顔見知りでありますから行つてつたのです。それが今回にこういう問題が起きたというのは、それが殊更に今になつてこういうふうなことになつたというのは、私と前の署長とのやり方がどこが違うかということは私にはわからないのですね。
  1691. 一松定吉

    ○一松定吉君 いや、それはね、あなたお聞きの通り、一昨日の大学側証言のうちにそういう言葉があつたからあなたに聞いておるので、それで今お尋ねするのです。そこで私の考えでは、そういう取締りをなさることについて決して私はあなたのやり方を違法とは思わないが、やはり協定のある以上は或るべく協定に従つて、それでも今あなたの証言なさつたように、大学側に注意しても余り取締りに重大な関心を持つているような状況がない。相変らず共産党細胞が大学内にいろいろな不穏ビラを撒いたりしているというようなことであれば、これは取締らなければなりませんね。そういうときにはやはり正々堂々と取締るということにして、なお且つ次官通牒でどうもこれは思うような、痒い所に手の届くようなことがないというときには、これは一つ関係当局によつてこれらの次官通牒を是正するとか、或いは双方寄つて協議をして万遺憾なきを期するようにするほうが私はいいと思うが、将来一つ、一昨日も申したようにそういう方針で進むお考えがありますか。
  1692. 野口議

    証人野口議君) その次官通牒は警察官取締りに校内に入つて行くという点には関係ないのでございます。学内集会、集団行進に関する取きめでありまして、けれどもその中に書いてあります事項が、事例を挙げているのが非常に誤りやすいのでありまして、一番最後にあります例えば学芸会、校友会、演芸会、そういうような種類のものだと、こういうふうに分けてありますけれども、それがそういう劇、劇というものは、そういうものはもう警察のほうには関係ないのだというふうな皮相的な見方に流れやすいと思うのです、その通牒が。ですから……。
  1693. 一松定吉

    ○一松定吉君 それはわかつた。そこで私の言うのは、今そういうようにあなたのように疑いがある、若しくはあなたのほうと学校側と見解に相違がある、学校側はもう通牒一本でこれで警察官が入ることができないと思つている。あなたのほうは、これは違うと言つて意見の相違があるのだから、そういうことを調整するために将来何かお考えがありますかということを聞くのであります。
  1694. 野口議

    証人野口議君) やはりその通牒の全面的な検討で誤りないように両方非常に……ちよつとこう解釈がむずかしいというのじやないのですけれども、誤りやすいと思うのですから、やはり相当根本的に改正したほうがいいのではないかと私は思つております。
  1695. 一松定吉

    ○一松定吉君 いや、それならばそういう方針をだね、おとりになることが必要であるということは私は一昨日申上げた通りですがね、いま一つ私の考えは、巡査など向うにやるようなときはね、法の根拠をもう巡査の頭に打ち込んでおく必要があると思うがね、今日三人の巡査について聞いて見ると、何が故に我々はこういうことをしていいのか、こういうことはして悪いのかという法の根拠が頭の中に十分入つていない。やはり巡査教習所の教習の範囲がそこまで綿密でなかつたものであろうと思うが、やはり直接任務に従事する部下としては、あなたからやはりそういう訓示を與えて、こういう根拠であるが故にお前がたこういうような取締りをせい、こういうようなことであるが故にこういう取締りをしてはいけないというようなことを、もう少し丁寧親切にやはり御指導なさるほうがいいと思うが、どうでしよう。
  1696. 野口議

    証人野口議君) 御尤であります。その通りでございます。
  1697. 一松定吉

    ○一松定吉君 それからいま一つね、この大学学生がこういう共産思想にかぶれていろいろなことをやるということは私はこれはよくないことだ、私をして言わしめれば、併しながら学生が血気にはやり、又二十歳前後の者だから、これは本当に丁寧親切に、そういう学説の間違つていることも、それを実地に行うことは日本の秩序を紊すというふうなことについては、ただこの間学長が言つたように、彈圧とか警察力を以てしては面白くいかん、やはりこういうことが起ると思うから、そういう点については学校当局と膝を交えて懇談いたして、そういうようなことについて将来これを是正するようなふうな、温和な方法をおとりになつて、なお且つそれでもいけないというときは、法の威信を以てやらなければいかんと思うが、将来そういうお考え取締りをなさるというお考えはどうですか。
  1698. 野口議

    証人野口議君) ございます。
  1699. 一松定吉

    ○一松定吉君 そういう方針で……。
  1700. 野口議

    証人野口議君) 当局とよく相談しまして、又今の次官通牒のよりよき改正、誤りないように改正して頂いて、そうして又それにつきましては詳細に協議の上……。
  1701. 一松定吉

    ○一松定吉君 誤りなきを期すると、結構ですね。そこでね、私は今あなたなりあなたの部下のやつたことをじつと見ると、旧憲法時代、天皇制における当時の警察のやり方が大分残つておるように思う。やはり警察官は新憲法下におけるいわば本当の公僕だから、もう少し丁寧親切におやりになつて、今あなたが、これはどうも手が届かなかつたという、逮捕された人に対する治療の方法とか何とかいうこともやはり丁寧親切にしておけば、国会等で問題にならんで済んだ。どうか一つそういうように態度を改めて、本当に公僕として民衆が警察官に信頼するような方針でおやりになるということを希望するのだか、それについてあなたの御意見はどうです。
  1702. 野口議

    証人野口議君) お尋ねの通り、私も……。
  1703. 一松定吉

    ○一松定吉君 おやり下さる。
  1704. 野口議

    証人野口議君) いたします。
  1705. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は別にあなた方を、一昨日申上げたように、この事件学校にも落度がありあなた方にも落度があるから、将来そういうことのないようにということの意見を申上げたことは変つておりませんが、どうかそういう方針でお進みを願いたいということを申上げて私の質問を終ります。
  1706. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私から簡単に二、三の点についてだけ伺いますが、あなたは警察官としては何年くらいやつておいでになりますか。
  1707. 野口議

    証人野口議君) もう二十六年ちよつと過ぎております。
  1708. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 主に東京ですか。
  1709. 野口議

    証人野口議君) 東京警視庁だけであります。
  1710. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうしてその間主としてどういうお仕事をなさいましたか。
  1711. 野口議

    証人野口議君) 私は一般のことで、普通の特別な専門的な仕事をしたということはございません。いろいろの警察を廻りまして、どの仕事もやつて来ました。
  1712. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 警察官は被疑者の場合もそうですが、一般に国民が憲法で保障されておるような権利を侵すということは犯罪ですか。
  1713. 野口議

    証人野口議君) 憲法に保障されましたことを侵すことは、やはり憲法では規定がなくとも、それから発せられましたものに関連がございますので、やはり、犯罪になると思います。
  1714. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからあなたの部下で今度問題を起された警官のかたがたが、主として東大の中の、職務、任務が警備ということだと言いますが、この警備ということの内容を明らかに、明示なすつたことがあるのですか。
  1715. 野口議

    証人野口議君) 警備ということはいろいろございまして、警備上……。
  1716. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の伺うのは明らかにお示しになつたことがあるかどうか。
  1717. 野口議

    証人野口議君) 警備内容でございますか。
  1718. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  1719. 野口議

    証人野口議君) 警備内容で、具体的に内容を特に私はこれを調べるということに限定して指示したことはないように記憶いたします。
  1720. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 任務、警備内容ですね、あなたを今度警備係にすると、警備係はこれこれこういうことを……。
  1721. 野口議

    証人野口議君) 任務の内容は私が指示いたします。
  1722. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 すると警備内容に伴つて、さつきの人権蹂躙などの点について注意をお與えになりますか。
  1723. 野口議

    証人野口議君) 注意いたします。
  1724. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから次に伺いますが、この問題になつておる次官通達について、あなたの部下の或るかたは、次官通達は都條例の関係だけで、それ以外は自分らの職務はそれによつて拘束されないというふうに考えおいでになるかたがおるのですが、あなたも同じ御意見ですか。
  1725. 野口議

    証人野口議君) それは都條例ばかりではございませんで、やはり基本的人権とか学問の自由とか、学園の自由ということもやはり関連がございますので、都條例にそれがないから直ちに全面的に警察が入ることがいいのだというふうには私は考えておりません。やはり先ほど申上げましたように基本的人権は侵してはいけないと思います。
  1726. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 先ほどあなたの部下のお一人が今のような考え方で、即ち次官通達は都條例の関係だけで、それ以外において自分らの職務に拘束されないというふうにお答えになつたのですが、それと関連しまして、従つて学内で行われておる集会がこの次官通達による会合であるか、即ち警察官の立入つてはならない集会であるかどうか、即ち学術研究及び教育に主として関係のあるそういう集会で、立入ることが次官通達によつて許されない、そういう会合であるか、そうでないか、そうでないというのは、治安警備の関係から立入るべき集会であるかということは、これは判断がなかなかむずかしいですね。
  1727. 野口議

    証人野口議君) はい。
  1728. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その判断警察官が自分で判断されるというふうにお答えになりましたが、これは、正しいでしようか。あなたもそうお考えですか。
  1729. 野口議

    証人野口議君) これはやはり例えば劇、あれはいろいろな名称がございます。学友会とかいろいろな名称はありましても、あらゆる角度から見まして、その内容がいわゆる公安に繋がるものであるということでございますれば、やはり名称の如何にかかわらず、警察の対象になることでございますが「それにつきましてはやはり署長もそうでございますけれども、署長の下にこれには特に警備の警部が上におるのでございまして、それも大体その報告によつていろいろあらゆる角度からこれを検討してみる。それから主任もおります。部長もおりますので、いろいろ検討はしてみまして、学内の自治ということを第一念頭に置きまして、そうしてその集会の名称の如何にかかわらず、あらゆる角度から見て警備に繋がるものであるということから、いろいろ警備係を差向けて情報をとつてみる。重要なものにつきましてはやはり主任がみずから出掛げてみるということをやつております。
  1730. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでよろしいですか、それだけでよろしいですか。
  1731. 野口議

    証人野口議君) はい。
  1732. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その会合が次官通牒によつて警察官の立入ることを許されていない会合であるか、そうでないかという……。
  1733. 野口議

    証人野口議君) それは先ほど申上げた通りですね、学園の自治、学問の自由と自治というようなことがありますので、それはやはり学校当局に連絡をして、そうして話合いの上に学校当局と一緒に行つて見るというやり方が一番妥当なやり方であるということを私はかねて言つております。
  1734. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからその次に伺いたいのは、この福井君に対する令状請求をなすつたのはあなたですね。
  1735. 野口議

    証人野口議君) 私がやります。
  1736. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたですね。
  1737. 野口議

    証人野口議君) はい。
  1738. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その根拠は……。
  1739. 野口議

    証人野口議君) 根拠はこの前申上げました……。
  1740. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) この前暴力行為の犯罪容疑があるからというので……。
  1741. 野口議

    証人野口議君) 大体被害者の現認調書でございます。供述書でございます。
  1742. 一松定吉

    ○一松定吉君 暴力行為取締法の違反現行犯だと、こういうんだ。
  1743. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その暴力行為というのは、吉田委員にお答えになつたのでは、その指に噛みついたり或いは打撲傷を負わせたりしたことですか。
  1744. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 指に噛みついたのは、それはその後の、爾後の、逮捕後の行為のことなんです。打撲傷を負わせたことと多数の面前において脅迫したとかせしめたという意味でしよう。
  1745. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはポポロ劇団のその劇の場で福井君が三人の警官ですか、それを引立て行つたところの一人であるということを確認しているんですね。
  1746. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。被害者が確認いたしております。警邏の巡査が……。
  1747. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その被害者の警官の確認というのは、頭の後頭部を打つた、振返つて見ればそれは福井君だつた、それですか。
  1748. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。
  1749. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それ以外にはないんですか。
  1750. 野口議

    証人野口議君) それ以外には…。
  1751. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたが令状を請求なさるのだからそれには十分な根拠がなくちやならん。
  1752. 野口議

    証人野口議君) 被害者はあと二人おりますが、それの現認、三名の現認でございますね。
  1753. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どういうことを現認しているのですか。
  1754. 野口議

    証人野口議君) いわゆる福井君が暴行を加えておるその事実でございますね。それから、まあ暴力行為でございますから、多数の威力を示したと、まあ多数が寄つてたかつて打つ、蹴る、殴るというようなことをしたということのやはり三人の現認でございます。
  1755. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 福井君がそれをどうしたのですか、打つ、蹴る、殴る、いろいろ一人で暴れたのですか。
  1756. 野口議

    証人野口議君) 一人ばかりではございません。まだほかにございますけれども、それがどうも名前がわからないので……わからない人も大分あると言つておりました。
  1757. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからその次に伺いたいのは、あなたがこの間衆議院でも、それから参議院でも読み上げられた、重要なビラだという、労働者はドスを抜いているという……覚えていらつしやいますね。
  1758. 野口議

    証人野口議君) はあ。
  1759. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これの入手状況についてあなたの署の古田巡査の報告書の写がここに差出されていますが、これは正確ですか。
  1760. 野口議

    証人野口議君) そうでございます。
  1761. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 訂正の必要ありませんか。
  1762. 野口議

    証人野口議君) ございません。
  1763. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 当日、これはあの日にも申上げましたが、日本にとつても、又国際的にも名誉のある大学に対してかなり重要なものとしてあなたが読み上げられる、即ち大学の名誉にも相当の関係があるとあなたが判断されるのは、それが十分の根拠、正確なる調査の上に基かずしてあなたがあのとき証言として読み上げられたということを、遺憾の意を警視総監は表されましたが、あなたも遺憾の意を表されますか。
  1764. 野口議

    証人野口議君) そうでござまいす。
  1765. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから次に伺いますが、次官通達についてあなたは多少大学側と意見の相違している点があることをお認めになりますか。
  1766. 野口議

    証人野口議君) その意見の相違と申しますのは、この通達はどうも誤りやすいから一遍正確にもつとわかりやすくしたいということは、私は係り又本庁関係にも意見を述べたことがあるのでございます。けれども学校側の意向としてはあれでいいじやないかという御解釈でございますけれども、学校側の御解釈も又誤つているのじやないかというふうに私は思つております。
  1767. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その学校側との意見がそういうふうに違つている、多少誤りやすいし、或いは誤つているじやないかということをお気付きになつたのはいつ頃ですか。
  1768. 野口議

    証人野口議君) そうでございますね、昨年の暮、十一月頃から非常に集会が多数持たれるというふうに考えまして、非常にこれは重要であるということで思つておりました。
  1769. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう意見の多少相違があるのじやないかということを気付かれてから……気付くとこれは大変ですがね……、次官通達について自分のほうの考え学校側考え方と違うのじやないかというふうに気付いてから、その点について大学当局と連絡されたことがありますか。
  1770. 野口議

    証人野口議君) 連絡したことはございます。
  1771. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ありますか。
  1772. 野口議

    証人野口議君) はあ。
  1773. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それで意見が一致されたのですか。
  1774. 野口議

    証人野口議君) その点は一致ということを申上げるとどうかと思いますけれども、学校側ではあの通牒によつて学園のすべての会合に入ることは、すべて連絡しなければいかん、こういうようなお考えでございまして、その点は私どものほうではそれはこういう解釈であるということで、私お話ししたこともあります。けれども係りの人がこれを一人でおやりになることもないのでございまして、いろいろ係りの人がたくさんおられますので、これはやはり……。
  1775. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それじや時間も遅いですから簡單に伺いますが、次官通達について見解の相違がある、その見解の相違を解決したいという点について大学側と連絡をしたことはありますか。
  1776. 野口議

    証人野口議君) はい。
  1777. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 誰と連絡をしましたか。
  1778. 野口議

    証人野口議君) これは私のほうの主任の……。
  1779. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたじやないですね。
  1780. 野口議

    証人野口議君) 私じやないです。
  1781. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたの部下。
  1782. 野口議

    証人野口議君) そうです。
  1783. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとあなた自身が連絡したことはないのですね。
  1784. 野口議

    証人野口議君) はあ。
  1785. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大学の相手方も厚生部長だつたか或いはその下におるかたか……大学の者は厚生部長だつたのですか。厚生部長の下におる人だつたのですか。
  1786. 野口議

    証人野口議君) 厚生部長じやなかつたかと思いますが。
  1787. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 厚生部長であろうと思うのですか。
  1788. 野口議

    証人野口議君) はい。
  1789. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その結果についてあなたは詳しい報告を聞いていないのですね。
  1790. 野口議

    証人野口議君) 聞いてないのです。
  1791. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その連絡についての報告は聞いてない。
  1792. 野口議

    証人野口議君) いや、連絡は聞いております。
  1793. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それについて詳しい報告は聞いておらない。誰に連絡して、こういう見解の相違があるということを、誰に聞いたのであるか、その報告を聞いておらないのですか。あちらではこう言うのだという報告を聞いていないのですね。
  1794. 野口議

    証人野口議君) そういう報告は聞いておりません。
  1795. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それで相手方も誰だかわからない、想像では厚生部長。
  1796. 野口議

    証人野口議君) 厚生部の人だということは聞いておりました。
  1797. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 詳しい報告は聞いておらない。
  1798. 野口議

    証人野口議君) 聞いておりません。
  1799. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点について今度のような問題が起る前に、次官通達についてどうも見解の相違があるのじやないかということがお気付になれば、これは大変に大きな問題ですから、警視総監と文部次官とが申合せたことなんだから、それが如何に行われるかということについては、署長御自身が厚生部長或いは更にその上部の大学当局の責任者と直かに連絡して話し合われることが望ましくはないですか。意見の相違があるままで事態が進行して行きますと、そこに紛争が起りますね。
  1800. 野口議

    証人野口議君) はい。
  1801. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ですから、意見の相違がある、而も重大な意見の相違があるということをお気付になつたらば、あなた自身が大学当局の責任者と会われて、その点について懇談される、そういうことが、先日も申上げましたが、あなたの責任を持つておられる地区の中に大学があるのですから、そして又その大学は相当の高い地位を持つておるものなのだから、あなたの任務としてそれは相当重要な任務でしよう。そうでありませんですか。
  1802. 野口議

    証人野口議君) そうであります。
  1803. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとその両者の間に意見の相違があるままで、その意見の相違についての談合はあなたの部下に任せて、そうしてその連絡の大学当局との話合つた詳細の報告も得ないままで来られたということについては遺憾の意を表せられるですか、どうですか。
  1804. 野口議

    証人野口議君) 昨年の暮かと申しましたか、先ほど私がいろいろ検討してみまして、それから今年に入りまして、そうして今年になりましたところが、例のうずら屋殺しというのが湯島にあつたのでございます。それに殆んど、証拠品の捜査までに一ヵ月くらいかかつたのであります。それで晩も遅くまでなりますし……。
  1805. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、御事情を伺わないでもいいのですが、遺憾でありましたね……遺憾であつたか。
  1806. 野口議

    証人野口議君) はい、遺憾でございました。
  1807. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから今後も今までやつておいでなつたように、現在も今後も、東大内におけるいわゆるあなたが部下の活動については変更はないですか。或いは改められる点があるのですか。
  1808. 野口議

    証人野口議君) 部下は、私の考えでは変更したほうがいいと思います。
  1809. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 方針は……。
  1810. 野口議

    証人野口議君) 方針は、あとに命じました者は、十分に学校の認識をさせまして、間違いのないように命じて、他の者をやつたほうがいいと思います。
  1811. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その方針の上で問題があるのではないかと思うときには、大学と連絡をしてそうして活動をするというふうな意味ですか、或いは依然として連絡なしでやつたほうがいいと……。
  1812. 野口議

    証人野口議君) いや、これはやはり学校と連絡をしてやつたほうがいいと思います。
  1813. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 もう一言伺いたいのですが、昨年の五月頃東洋文庫で行われた中国学術研究会という集会解散されたことがありますか、東洋文庫はあなたのところの地域ではないのですか。
  1814. 野口議

    証人野口議君) 東洋文庫ですか。
  1815. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは……。
  1816. 野口議

    証人野口議君) 東洋文庫は私どものほうではございません。
  1817. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 はあそうですが、どうも有難うございました。
  1818. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それではお帰り下すつてもよろしうございます。どうも長時間有難うございました。   —————————————
  1819. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 柴君にお伺いしますが、先ほどあなたにいろいろ各委員からお尋ねがありましたですが、その中で以ていわゆる手帳のことについてのあなたの御証言について、ほかのかたがたの御証言とは非常に食い違つておるのです。だから改めてその点についてあなたの記憶をもう一遍整理して頂きたいと思うのですが、即ち警察手帳はあなたのものですね。
  1820. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうであります。
  1821. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 手帳に書かれておることはあなた自身がお書きになつたのですね。
  1822. 柴義輝

    証人柴義輝君) そうです。
  1823. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 先ほど一松委員ですか、あなたにお見せしなかつたですかね。
  1824. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 いや違います。
  1825. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) お見せしなかつたですか。
  1826. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 はあ。
  1827. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そこにあるあなたの名前の書いてある欄にいろいろ書いてありますね。
  1828. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一遍御覧になるといい。
  1829. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) それはあなたのお書きになつたと思われるその手帳から抜萃したわけですね。
  1830. 柴義輝

    証人柴義輝君) ええ、知つております。
  1831. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そういう事項は御承知ですね。ほかのかたがたは皆それは承知しているとおつしやつているのですが、あなただけはさつき知らないとおつしやつていますが。
  1832. 柴義輝

    証人柴義輝君) 一番最後の名刺のところについては、私は私の官用名刺だけしか入れて置きませんでした。
  1833. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 名刺のことは別にして、その書いてあることは御承知ですね。要するにあなたはさつき知らない知らないとおつしやつたのですが、それをあなたが今お書きになつたとおつしやつたから、お書きになつた以上はその内容のことは御存じですかどこかということを聞いているのです。あなたの先ほどの証言ではすべて否認されておりますが、お認めになるかならんかという……。
  1834. 柴義輝

    証人柴義輝君) 認めます。
  1835. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) その内容のことは先ほど各委員から御質問があつたときに皆知らん知らんとおつしやつたのですけれども、結局内容の事実については御承知のことですね。そう伺つてよろしいか。
  1836. 柴義輝

    証人柴義輝君) 詳細についてはちよつと記憶がありませんですけれども……。
  1837. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) だから一つ一つ記憶を喚び起して一つ一つ述べろというわけじやありませんが、概括的にあなたは了承していられることでしよう。
  1838. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  1839. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると、今なさつた証言が正しくて、先ほどの御証言は誤りがあるということになるのですか。取消されますか、先ほどの証言は……。
  1840. 柴義輝

    証人柴義輝君) 今のに間違いありませんです。
  1841. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) そうすると先ほどの証言は誤つておることになるのですね。
  1842. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい。
  1843. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) どうして誤つたのですか。
  1844. 柴義輝

    証人柴義輝君) はつきり記憶に残つておりませんでした。
  1845. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 記憶に残つていなかつたから先ほどそう申したのだけれども、そのあと考えたらば、先ほどの言葉が違つてつたから、今ここで改めて訂正すると、こういう意味で聞いてよろしいですか。
  1846. 柴義輝

    証人柴義輝君) はい、いいです。
  1847. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  1848. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 速記をつけて。証人のかたに申上げますが、国会に来て証言をなさる場合においては委員長が先ほど御注意申上げた通り、殊更に虚偽のことを申されては困るのです。国会は重要な事項について審議をしているのですから、その判断を誤らせるようなことがあつたならば国民に対して申訳ないですから、真実を述べて頂かなければならんのです。国会としては非常に困惑いたしますから、今後注意して頂きたいです。  それでは爾余の調査の方法等につきましては、理事及び委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  1849. 伊藤修

    ○理事(伊藤修君) 本日はこれで散会いたします。    午後八時七分散会