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1952-05-31 第13回国会 参議院 法務・労働連合委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月三十一日(土曜日)    午前十時二十五分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。   法務委員    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            一松 定吉君    委員            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            内村 清次君            吉田 法晴君            羽仁 五郎君   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事            安井  謙君            波多野林一君            村尾 重雄君    委員            上原 正吉君            九鬼紋十郎君            一松 政二君            菊川 孝夫君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     關   之君    法務特別審査    局次長     吉橋 敏雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件破壊活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提  出、衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より法務労働連合委員会を開きます。  昨日に引続き破壊活動防止法案ほか関係二案につきまして質疑を行います。先ず村尾重雄君に発言を許します。
  3. 村尾重雄

    村尾重雄君 坐つたまま御了解願つておきます。私は労働組合日常活動の面から、労働組合団体活動と、その破防法案即ち暴力主義的破壊活動との意味において又その関連に関してお尋ねいたしたいと、こう思うのであります。御承知のように、この法案立案され、国会に上程されてこれが国民階層に与えるシヨツクというものは甚大なものがあるのであります。なかんずく、わけても労働組合に与えた影響というものは非常にきついのであります。そこで表面的になつた形では、第一波ストとなり、又より規模の大きい第二波ストとなり、なお一層大きな、なお又犠牲を覚悟の上で第三波ストが決行されようとしておるのであります。そこで政府はいろいろこの問題について対策を練られて、提案に先立つて第二章の規制基準において、第二条で労働組合の正当な活動を制限し、又不当に組合活動に介入するものでないという条項を加えた上に、なお更に言葉をすつぱくして、いろいろと組合対象として本案をば作つたものでないということをばたびたび声明されておるのは、よく皆さん御承知通りであります。ところが政府の意図と反して、衆議院並びに参議院における委員会を通しての、この法案審議を通して、組合側に与える法案疑義というもの、恐怖というものはますます増大しておるのであります。そこで私は与えられた時間内において、労働組合日常活動の面において、こうした点においてどうだということをば一つお尋ねしまして、簡潔でよろしうございますからして、当局の明快な答弁を得たいと、こう思うのであります。  先ず最初に、組合団体としての活動と、団体員活動の限度の分野の問題でありまするが、団体活動は、その執行部において決定された事項及び運動方針によつて活動いたすものであります。従つてそれらの規定及び運動方針以外の行動団体責任でないということなんであります。言換えますと、少し具体的に申上げますと、労働組合最高機関大会であり、又その大会に代るべき機関、そこで決定を見なかつた事項団体責任と考えなくていいかということなんであります、この点一つ……。
  4. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。組合大会及び執行部組合という団体意思決定機関でありまして、それ以外には意思決定をする方法がないという建前になつておる場合におきましては当然であります。
  5. 村尾重雄

    村尾重雄君 それじや具体的にもう少し掘下げますが、それなら労働組合団体としての責任はその構成分子の如何なる行動においても責任はないと解してよろしうございますね。
  6. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 団体意思決定に基かない構成員行動団体活動とは認められないものと解しております。
  7. 村尾重雄

    村尾重雄君 そこで、では私は列挙的に申上げて答弁を得たいと思いまするが、暴力主義的団体の、例えばフラク組合の一部に侵入いたします。そのフラク活動において今後いろいろな問題が起るということは想像しなければならんのでありますが、そういうものの責任というものは一切ないと解していいと思うのでありますが、それでよろしいかということが一つ
  8. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 大衆団体内部に他に団体フラク又はグループのような組織が結成されまして、それが活動する場合におきましては、大衆団体それ自体とは関係がないものと解釈しております。
  9. 村尾重雄

    村尾重雄君 御承知のように組合単組々々の性格において、一つ単組組合もあり、それが連合体同盟体を持つておるものもあります。又支部分会等を全国に持つておるものもあるのでありますが、それらの個々の責任というものは、分会及び支部、この連合体のそれぞれの組織、分散された組織、その組織だけの責任として解していいわけですね。
  10. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 大体御質問通りでございまして、支部が単独に意思決定をいたしまして活動する場合には、その支部責任と考えております。
  11. 村尾重雄

    村尾重雄君 それからもう一点お尋ねしたいのは、これからこういう問題が随分起るだろうと思うのでお尋ねしたいのでありまするが、私のこれは杞憂に過ぎないと思いまするが、一つ行政処分なり司法処分を受けた分子が、行政処分を受けた団体構成分子がその工場を追われ、その団体を追われて他の工場に就職し、その労働組合の役員又は構成員なつた場合に、そうした行政処分なり、司法処分を受けた関係分子一つの他の工場、他の組織に入つて参つた場合に、それらのものが工場内部にいるとか、それらのものが労働組合の、別な労働組合の中にいるということで、例えば調査官なり、又今後この法案理由として、それらの労組を特に干渉し、又干渉がましいことを行うというような不当な行為というものは今後大いに生まれて来ると思うのですが、そういうような点は如何でありましよう。
  12. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 解散の指定を受けた団体役職員、又は構成員団体のためにする活動を禁止されておるのであります。併しながらこの団体活動とは全然離れまして、他の団体において、別個な他の団体におきまして、活動をされるということは別に違反ではありません。
  13. 村尾重雄

    村尾重雄君 私の伺つておるのはそうでなくして、そのためにその人が就職した工場労組又は団体が特に不当な圧迫を受けるようなことはあり得ないと解してよろしいですね。
  14. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) その構成員が他の団体に入りまして、本来規制を受けた団体のためにする行動をしておるという疑いのない以上は干渉がましいことはいたしません。
  15. 村尾重雄

    村尾重雄君 これは答弁はよろしいが、これは非常にこれを理由としての他の労働組合に対する私は今後干渉ということは大いに起り得ることだと思うので、こういう点は十分に御注意を煩わさなければならんと思うのであります。進みまするが、次に私は三十八条の「政治上の主義若しくは施策を推進し、」云々のこの範囲を大体どの程度におかれておるかという点について私は少しお尋ねしたいのであります。私は本日は労働組合経済活動がどうとか、又政治活動がどうという問題については他の議員に譲つて、これは触れずして、具体的な問題に特に触れたいと、こう思うのであります。たびたびこれは衆議院においても述べられたことだと思いまするが、労働組合の日頃の日常闘争ということは、単にあなた方がよくお考えになり、述べられておるように、ただ日常労働条件改善のみに制約されるものではないのであります。やはり労働組合はその社会的地位向上なり、労働組合員文化向上教育ということも、これは重要な部門に入つておるのであります。それと労働組合経済活動向上ということは、やはり中央政治においても又地方政治においても政治闘争とは裏と表の紙一重の関係を持つておるのであります。これは多分御承知になつておることと思いまするが、そういう場合に私の疑問に思うことは、単に政治上の主義だとか、施策とかということに対して、どうこうという論を進めるだけでなくして、具体的に中央政治、これと対峙して地方政治に対する問題であります。中央政治問題に論及してのいろいろな議論は伺つておるのでありまするが、例えば地方自治体に対する労組政治闘争であります。これは避けられない一つなのでありまするが、例えば税金闘争においてもそうでありますし、又警察権というものを地方自治体が持つておる以上、それぞれの関連地方自治体との労組闘争というものは今後大きく展開されるのであります。そういう場合に、勿論この法の含んでおるところの要素を含まない以上はこの対象にならないとおつしやるか知れませんが、地方自治体に対する各労組の今後、又今までなされておる、なお今後も激烈となると思うのでありますが、闘争というようなことは、この法の第三十八条の条項というようなものに関連がないものかどうか、お伺いしたいと思います。
  16. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。この「政治上の主義若しくは施策を推進し、」というこの言葉でありますが、これは国家並びに地方公共団体の問題とも関連して解釈さるべきものであると考えておるわけであります。
  17. 村尾重雄

    村尾重雄君 そこで私はもう一度この問題でお伺いしたいのは、この労働組合教育活動の面であります、というのは、たびたび本委員会でも問題になり、又公聴会でも問題になつた問題は学問の自由ということであります。これは例えば革命史内容に論及されようと、又その革命の達成が暴力をば肯定した革命史お話をなさいましようとも、これは学術という点において、学問の自由を尊重するという点において、これは論はないと思います。しばしば疑義を挾むような議論もなおあるように伺つておりますが、大学であるとか、又公けの教育機関においてこういうことがかなり進んだこと、かなり危険だと思われることの論及があり、又それらの公立学校国立学校等の学徒の研究グループ研究題目となつても、これは問題がないと思います。ところが労働組合教育機関というものは労働学校を持つておるところもあります。ところが多くは職場片隅で、而も昼の仕事を外れて夜の薄暗くなつてから、僅かな一つ電燈を頼りに十人、二十人のグループが集まつてそこで研究が行われるのであります。これは日常毎日行われることでありまして、而も又環境だけでなくして、そこで取扱われる問題がやはり生きた学問であります。即ち歴史にも及びましよう。社会科学にも及びましようし、そこで取扱う問題は、非常に今までの論争から聞いておつて、或いはかかるのじやないかというような疑義があるような問題が研究され、又お話になつておるのであります。若しこういうものが、例えばこの施策なりに若しかかるとするならば、今後の労働組合の唯一の教育機関として、又は教育ということを主眼においておる教育活動というものが非常に大きな障碍を来たすと思うのであります。そこで私はこの際明確にお尋ねしておきたいことは、そういう機関があり、そういうことが日常なされておるということを立案者なり、今後この法に関係する人が十分御承知になつておるかどうか。それともう一つは、単に理論上の問題でなくして、戦術上のあらゆる方法もそこで研究されるのであります。それは単にあなた方がこの法案に包含されておるところの内乱であるとか、騒擾であるとかそうした政治上の目的を達するための暴力手段でなくして、組合闘争方法としてのいろいろな戦術も、やはり数人の間においてこれが行われるのであります。そうしてどうしても調査官なり、いわゆる末端かたがたとの摩擦というものは非常に多くなると思うのでありますが、こういうような点はどう御解釈になつておるか。ちよつと私伺つておきたいと思います。
  18. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 組合組合員教育をするために労働学校を作られたり、或いは只今質問のような職場片隅で寸暇を利用して教育活動をされるということは、お話としていろいろな指導者かたがたからも聞いております。併し教育活動本条に触れるものではないと考えておる次第であります。労働組合等におきまして、たまたま革命史をテキストとして教育されましても、それは本条に触れるものではないと考えております。
  19. 村尾重雄

    村尾重雄君 只今答弁、そういう御答弁をそのまま取つてつて間違いが起らないと解されるかどうかと思うのです。というのは、実際に末端の調査官が、それぞれ今後いろいろなものが仕事をする上において、工場内部における実際上のそうした教育活動なり、或いは研究機関なりに対して干渉ということは、相当我々は真剣に考えなければならんと思うので、これはこの法の立案又は施行を考えられるかたがたに対して重十分これは考慮を煩わさなければならない問題だと思います。只今答弁通り、そういう労働組合教育活動というものは、決してこの法の対象にならないものだという立場から、教育目的だけの機関であるならば、我々はどういう話をし、どういうものが議題となり、どういう問題を相談してもかまわないと解して進みたいと思いますが、御異議ございませんな。次に私は時間に関係があるので例挙的に事項を申上げて、それに対して一度に御答弁つて結構だと思います。それは次のような場合、第三条二のリ号及びヌ号規定対象となりますかどうかということでありますが、そのほかの条文が当嵌まる関係があるかも知れませんが、その点は当嵌まれば当嵌まると教えて頂きたいと思うのであります。先ず一つデモストの際に警官隊と揉み合うということは、如何なる場合におきましても想像できるのであります。こういう場合、これはこの対象にならないかどうか。それから、この際に又旗竿プラカードを持つていれば、これは凶器を持つているということになるかどうか。三に、労組集会デモに対し、現在公安条例がありますが、今後成立するかも知れない集団示威取締法案というものがありまするが、これらの法に基いて職権を行うところの、又基かずして警官解散を命ずるようなことがたびたびありまするが、これにその集会している労組が従わなかつた場合、このときはどういうことになるか。それから次に四項として、労組集会において解散命令を下すことなくして警官隊が入つて参りまして、興奮した組合員との間に、そこに乱闘が起つた場合、これはこの適用にはならないかどうか、この四つの御答弁を願いたい。
  20. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。具体的なお尋ねでありまするから、いろいろの条件を限定して問題を考察しなければ、お答えするところに或いは誤解があるかも知れないと思いますから、一応お尋ね趣旨を拝承いたしまして、かようなお尋ね趣旨になるというふうに拝承した線でお答えいたしたいと思います。デモストがありまして、そのデモストをやつた者警官とが操合いをしたというものが、この法案とどういう関係があるかというのが第一問と思うのであります。その点につきましては、これは直ちにこの法案破壊活動というものに当らないことが多かろうと思うのであります。それは若しその警官の職務の執行との摩擦妨害になりまするならば、刑法公務執行妨害の罪がそこに成立するものであろうと考えておるわけであります。次に旗竿プラカードの問題でありますが、これはデモスト旗竿プラカードを持つて行つた場合どうなるかという問題が次の御質問趣旨と拝承するのでございまするが、これはリにおきまして、「凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなす刑法第九十五条に規定する行為」、こういうふうにリに規定があるわけであります。そこで問題になりますのは、これは凶器又は毒劇物を携え、且つ多衆共同してと、多衆が凶器又は毒劇物を携え、そうして多衆が共同してなすというふうに「リ」は解釈いたしておるのであります。そこで旗竿でありまするが、これも結局俗な言葉でありまするが、物によりけりで、凶器に当る場合があるというふうに申上げることができると思うのであります。例えて申しますならば、非常に長大な旗竿の先に槍を付けたようなものは、これは一見して生命に危害を与えるというようなことを誰にも感じを与えるのでありまするから、かようなものは凶器に当るというふうに考えられるのであります。又プラカードのごときも、単純なものはもとよりこの凶器とうものにはならないと思うのでありまするが、それが仮装、変装してあるとか、その先が竹槍のごとくにとがつているというようなことになりますると、やはり一見して何人にも危害感を与えるに十分でありまするからして、やはりこれは凶器に当るものであるというふうに考えられるのであります。次に集団示威運動の場合でありまするが、これはこのリは先ほども御説明いたしましたごとくに、多衆共同してなす公務執行妨害におきまして、単純に、何も持参いたさなければこれには当らないのであります。凶器又は毒劇物を携え、多衆共同してなすということが要件であるわけであります。そこで単純な集会デモというような場合、公安条例のほうの問題になりますのは格別、直ちにこのリのほうに当るというふうには考えていないのであります。次は警察官が解散命令をいたしまして、その場合に乱闘なつたというような事例でありまするが、これもお尋ねの御趣旨で、リは先ほども申上げたごとくに、凶器又は毒劇物を携えてということが一つ要件になつておるわけであります。若しさようなことがなければ、このリに当るということはないものと考えておるわけであります。
  21. 村尾重雄

    村尾重雄君 私の質問いたしましたのは、大体三條の二のイ、ロ、ハからずつと特にこのリという問題にこれは関連するものだという、まあ関連は直接でなくとも、いろいろ事態が次々重なつて問題が起るものだということで質問申上げたのでありますので、そういう点を十分に了解なすつた上で御答弁願いたいと、こう思うのであります。私は次に進みますが、同じように、一つ次も列挙いたしまして、このイ号その他ロに関連して、これは全然関係しないものだと解していかということであります。それは労組大会なり、又他の集会なり、又建物なり、又プラカードとして、吉田ならば吉田内閣打倒とか、又時の政府の重要な政策に反対し、それを粉砕する意思を掲げたものを掲げること自身がこの法案としての関連には関係がないか、これが先ず第一であります。第二に、労組機関新聞に、諸外国労組活動状況、特に世界労連系活動状況というものを詳しく報道した場合に、次に同じく諸外国日本政府を批判し乃至非難した事実及び内容報道すること、多分昨日か一昨日、原委員から御質問があつたこと等に関連する記事なんでありますが、こういうようなことを新聞に掲載することができるかどうかということ。それから四として、共産主義陣営諸国動きなどを自由諸国の通信、外電、出版物等を翻訳して、これを詳しく機関誌を通じて報道するようなこと、その内容は御想像願つていいと思います。それから第五に、これは個人的な具体的な政治問題になりますが、政府部内の枢要な人物等の、例えば収賄事件であるとか、種々なる問題を取上げて非常に大きく報道なんかすること、例えば戦争中における軍民離間という考え方から、軍に関係する人の個人的なことを、事実のことを新聞紙が取上げかけたときに、その新聞が軍から押えられたことがたびたび例を挙げられております。こういうようなことなんかを取上げて報道した場合、以上のような労組機関誌なり新聞なりがそういうものをば持ち上げて、又それを頒布するというようなことがこの政治上の主義政策云々という問題とか、それから第三条の罰則規定なんかに該当するかどうかということをお聞きしたい。列挙ですけれども、どうぞ一つ一つ答弁になつて頂きたい。
  22. 關之

    政府委員關之君) 第一問といたしまして、労組プラカード吉田内閣打倒という標示を掲げて示威運動をする、これが第三条のどこかに当るかというようなお尋ねでありまするが、それだけならば、第三条の或いは御懸念は一項の一号のどこにも当らないのであります。又第二問の世界労連運動などを報道することがどうか、これも第三条のいずこにも当らないと思います。又次に第三問の、外国における日本の各種の報道に対する批判を詳細に報道することはどうか、これもいずれにも当らないと思うのであります。又第四のお尋ね共産主義圏における各国の動きを詳細に報道することが如何かというような点でありまするが、これもいずれにも当らないと思うのであります。又第五問の官公吏収賄事件を特に大きく取上げること、これはどうか、これも勿論いずれにも当らないと思うのであります。
  23. 村尾重雄

    村尾重雄君 現在私の挙げました箇条についての御答弁そのままと我々は解しておきます。そこでこうした問題についての今後の影響というものが非常に重要だということをば十分解して頂きたい、こう思うのであります。そこで私がもう一点、二点お尋ねしたいのは、たびたび本委員会で問題となりました職権濫用の問題であります。これは私は刑罰規定を設けよとか、それから又特別に刑罰規定をきつくかけよと思つて申上げたのではありません。私はここでたびたび申上げたのは、私は簡潔にお伺いしたいのでありますが、それは何が恐ろしいといつても、法案それ自体に対する我々の恐怖なり、今後の法案の運用を思うときに、これを末端濫用する人の意思というものが非常に恐ろしいと、こう思うのであります。そこでこの濫用に対してどうこれを取締られ、どうこれを濫用を防ごうとする意思なのでありますか。昨日も伺つておりますと、刑法第百九十三条とかの刑罰でありますとというような簡単な御答弁つたのでありまするが、私はその刑罰処分であるとか、又それにもう一つ特別規定があるとか、そういうきついものを作れとかいうことではないのです。職権濫用をしたものに対して、それを十分濫用しないようにして、又濫用した者をどう取上げて行くかということなんです。これは日本の過去の歴史を御覧になれば明白なんです。私はその点では何か統計がないかと思つて調べたんでありまするが、昭和六年から昭和十五年までの十年の間に、この職権濫用で第一審の有罪となつた者が僅かに四十九名なんです。いわゆる十年間で職権濫用罪で起訴され、第一審で有罪なつたものが僅かに十年間で四十九名なんです。この昭和六年から十五年の間というものはこれは官憲万能時代と申しまするか、官僚の非常な勢力を持つたこれは時代なんです。その間に職権濫用というものがどれだけあつたかということはもうこれは相当ある。而もそれが僅かに有罪となつた者が四十九名という状態なんです。この点から言つても、私は職権濫用が行われ、それに対してきつい刑罰をば科して特別規定を置くというようなことをなさつても、実際にそれをやられるところの方法というものを考慮しなければ何ら効果はないと、こう思うのであります。私は決算委員を暫らく勤めたことがありまするが、あの決算委員会決算審議を通して我々は見ても、あれほど国民に対して大きな罪を行なつた官吏が僅かに訓戒及び少しばかりの減俸ぐらいの程度で済まされている。官吏の処罰令というものは非常に多いのです。そういうような点から考えて、どんなにきつい濫用に対する刑罰をば規定されてあつても、実際にあなた方が今後仲間のこの濫用に対して、それほど厳重に行われたことも何らなく、ただそういうことをなさないようにやりますということだけでは信用を置けないのですが、こういう濫用に対して一層の取締方法として何ら特別にお考えになることはないか、これをお伺いしたいのです。
  24. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。末端の調査官が濫用する点につきまして、どのような方策を以てこれを防止する用意があるかとの御質問でありまするが、私どもといたしましては、先般来御答弁いたしておりまする通り、この法案の運用につきましては職務規範を作りたい、そして職員が守らなければならない準則を確立したい。それを徹底したい。第二点は職員の研修をいたしまして、十分なる識見を養わしたい。第三点といたしましては公安調査庁内部に監察制度を設けまして、職員の行動につきまして十分な監察を進めて行きたい。第四段といたしましては、公安調査官の監督と責任を明らかにしたい。個々の公安調査官が如何なる調査活動をしているかとどうことにつきまして、その内容を把握いたしまして、十分にこれを監督するというような方法で行きたいと考えておる次第でありますが、更に法務内部の人権擁護当局とも連絡いたしまして、十分に外からも御監視して頂くというようなことの方法を以ちまして、でき得る限り濫用防止に努めたいと考えておる次第であります。
  25. 村尾重雄

    村尾重雄君 なお私は今局長の御答弁にあつたのでありまするが、この問題は非常に重要であります。単に今お答えのあつた末端の人々の濫用を責めているということではなくて、私の言うのは末端も勿論でありますが、中央でこの取締りに関係する人々の濫用をなおもう一層私は危惧を持つのであります。而して私はそういうような点について法務総裁にお考え方を伺いたい、こう思うのであります。
  26. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 末端のことから、これを支配し監督すべき行政の点であります。これは御尤もな点と考えております。法の運用はいずれも人にあるのであります。運用すべき人がしつかりした信念を持つ、国民の基本的人権を維持しなければならんというような考え方を持たなければならんのであります。いずれこの法案が成立いたしますると、公安調査庁なるものができますので、その人的配置の点について極めてそれらに適当なる人を我々は選択いたしたい、こう考えております。
  27. 村尾重雄

    村尾重雄君 最後に法務総裁のお考えを伺つて私は質問を終りたいと思うのでありまするが、この法案が共産党の極左暴力主義活動をば防ごうとしたものであるということは間違いないものと思うのであります。そこで我我も極左的な暴力主義活動行動というものに対しては反対いたすものであります。我々は極力こうしたものを是正しなければならないと常に考え、又こうした活動行動に対しては徹底的に戦う決意をいたしておるのであります。ところがこの破防法を連想いたしますと、我々は身にしみて感じることは治安維持法を思い出すことなのであります。これは私は当時たしか三大悪法案と言われた維持法案が国会に上提されたのは第五十議会と思いますが、その五十議会で若槻総理がこう説明されておるのであります。簡単ですが重要でありますので読上げますが、「世間には、この法律案が労働運動を禁止するためにできている様に誤解している者がある様であります。この法律が制定されますと、労働者が労働運動をするについて何らか拘束を受けると言う様に信じている者がある様であります。かくの如きは甚はだしき誤解であります。労働者が自己の地位を向上せしめるために労働運動をする事は何ら差支えないのみならず、私ども今回当局に当つてこの様な事に依つては何ら拘束を加えると言う考えを持たぬのであります。只この問題は前に申上げた如く、無政府主義共産主義を実行しようとしてはいけないという取締法であります。労働者にして無政府主義を唱うるに非ず、共産主義を唱えるに非ざれば彼等が労働運動をする上に於て、この法律案は何の拘束を与えるものではないのであります。この事は世間に誤解がある様でありますから、この際これを述べて、本案の趣旨を明瞭に致しておきたいと思います。」と、こうおつしやつておられるのであります。ところが労働運動の弾圧法案として今日残つておると言われているこの治安維持法というものは、その後どういう影響を与えたかということは私から今日申上げるまでもないと思います。たびたび衆議院においても述べられたことだと思います。ただ私は、これと同じようなことを木村法務総裁もたびたびお述べになつたように私は聞いておるのであります。そこで私は新たに特に御意思を伺いたいと思いますことは、この法案が丁度可決されましたその年に、やはり労働争議調停法というものが、大正十五年のやはりこの五十議会、五十一議会になりましたか、これ又通過をいたしております。この争議調停法に基いて全国の各府県に、大阪のような大府県には二名の調停官でありますが、ほかの府県には一名の調停官が派せられて、その調停官というものは大体検察官が兼任したものが多い。内務畑の人が多かつたのでありますが、これらの人がその府県の警察官と協議し合つて労働争議に対処する。それから統計上労働争議の率というものはかなり短時日に争議が起らずに円満に解決している状況があるのでありますが、併し警官が資本家と交渉し、又警官労働組合及び争議団、当時は労働組合はあらずして争議団というものが多く存在しておりますが、その争議団と交渉して、そうして警官干渉して、争議が起る前に、起つてからも強制調停の形式で問題が進められておつたのであります。ところがこれがうまく行つた。その理由の大半というものは、実際労働組合には治安維持法が実際はそう過度に適用されなかつたのでありますが、この治安維持法が存在するということが一つの大きな圧迫となり、圧迫となつたということはこれは間違いないのであります。これがだんだん昭和十年となり、十二年となつて、当時の事態を御連想を願つてもおわかりのように、治安維持法というものが労働組合に急速に襲いかかつて参つたのであります。当時ストライキ禁止法案というような法律はありません。ありませんが、併しストライキが起るという徴候があつた場合、又ストライキが起つた場合には、すぐその首謀者なり、その主力の幹部はすぐ治安維持法によつてお前は赤だ、お前は非国民だという名称ですぐこの対象として拉致されたのであります。その数というものを私今日申上げておる時間を持ちませんが、この治安維持法が如何に、昭和十年から戦争末期までのこの弾圧はこれは実に甚大なもので、この治安維持法の体験を受けたものにとつては、生涯忘れられない問題なんであります。そこで私は法務総裁に明確なお考えを伺つておきたいというのは、只今申上げたように、治安維持法、国会に上提に際しての若槻氏の説明があつたように、これは労働組合には何ら干渉するものではない、こうたびたびはつきりおつしやつておられるが、事実この立案者意思とは反してその後その法で律するところの人たちは客観的に法文を、これを悪用して、濫用して、いわゆる労働運動の弾圧となり、その結果があの戦争の起る原因となり、日本の遂に今日の状態となつた大きな要素というものは、やはり含まれておると思うのであります。そこで私はこの法案立案者としての木村さんが、我々は立案意思というものはこうである。特に労働組合の抵抗がきついから、最初の提案に際して第二条に、不当に労働組合運動は制約するものではない。又正当な労働組合運動はこれを制約し、なお又介入するものではないと謳われ、たびたびそれに対してのあなたのお考え方というものをば、労働組合の、了解するようにお話になつておりますが、あなたの意思と反してこの法案審議がだんだん深くなれば深くなるほど、今日の労働組合というものはこの法案に対する疑義というものは非常に深く持つておる。深く持つておるだけではなくして、この法案が成立して後における労働組合の運営に当つているものは、相当な決意を以て今後の労働組合運動の運営に当らなければならないという覚悟を今日いたしておるわけなんであります。そういうことはなお一層我々の杞憂であるかということについて、この際法務総裁にお考えを伺つて私の質問を終りたいと思うのであります。
  28. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 過去の治安維持法において如何に国民が困惑したかということについての、なまなましい事実は私も承知をいたしておるのであります。さような状態を経て今日この法案立案するに当りましては十分考えをいたしたのであります。御承知通り、治安維持法は人の思想の自由にまで立入るのです。これは法案の根本の濫用される基盤になつておると私は考えております。そこでこの破壊活動防止法案におきましては、一切さような点に触れては相成らん。いわゆる個人の基本的人権は十分尊重するという建前におきまして先ず規制すべき団体活動の域を極めて小範囲に限定した。即ち明白に刑法規定されております兇悪犯罪に先ず限定いたしたのであります。これが第一点であります。それから治安維持法におきましては、御承知通り結社を組織することも加入することも、これ又犯罪を構成するごとき建前をとつておるのであります。さようなことは憲法の基本的人権を侵害することはもとよりでありますから、本法案においてはさような点については一切触れておりません。何如なる団体組織しようとも、又如何なる団体に加入しようとも、それは本法案の関知するところではありません。それから御承知通り、治安維持法におきましては、その法案の運用手続過程におきまして重大なる点があります。それは御承知通り、保護検束、それから予防拘禁という制度をとつております。これが廃止されたのであります。本法案におきましては、さような点にについては一切触れておりません。ただただ現下の情勢に鑑みまして、兇悪なる、いわゆる国家の基本秩序を破壊するような破壊活動目的とする団体規制し、又これに必要な刑罰法規を補整しようというに過ぎないのであります。およそ法案の立て方におきましては、治安維持法とは全然その本質を異にしておるものであります。併しながらいろいろこの法案の運用について危惧される向きもありますので、運用につきましては我々は細心の注意を払いまして、万遺憾のないようにいたしたいと考えております。更に申上げたいのは、この労働組合運動、この点につきましては、我々は一切この法案において規制しようというような考えは毛頭もないということを私は断言いたします。我々は今後の日本発展におきまして、労働者の担われておるこの勢いというものは十分に尊重しなければならん、労働組合の発展向上については我々は何を措いてもそれを希うのでありまして、その途上におきまして、労働組合運動を阻止したり、或いは労働組合運動に迷惑をかけるというような気持は毛頭もないのでありまして、ただただ兇悪なる破壊活動をしようという団体規制して行きたいという、その信念の下にこの法案を作成したのであります。
  29. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次は中村正雄君。
  30. 中村正雄

    ○中村正雄君 一応今まで議題となつておりまする法案につきましては、各委員から一般的な問題或いは政治的な問題につきましては殆んど議論されておりますので、私は一般問題につきましては、憲法との関係で一点だけお聞きいたしまして、あとは労働委員長といたしまして、労働組合がやらなければならない労働運動、又やるであろうと考えられまする政治運動を基礎にいたしまして、本法案との限界点につきまして具体的な事実について質問をいたしたいと思います。できるだけ各委員が今まで質問され、政府から答弁されました点と重複を避けたいと思いまして、できるだけ従来の速記録も見たわけでありますけれども、完全に見るだけの時間もありませんので、或る程度重複する点があるかもわかりませんが、その点はあらかじめ御了解願いたいと思います。  総括的に憲法との関係でお聞きいたしたい第一点は結社の自由の点であります。御承知のように占領下にありますれば、占領軍の命令は日本の法律に優り、憲法に優越するものでありまして、従つて占領下におきましては、占領政策遂行のために現在の憲法が制約を受けることも占領の性質上これは止むを得ないわけであります。ところが占領が解除されまして独立いたしました四月二十八日以後におきましては、今まで制約を受けておりました占領下の制限から解放されまして、日本国憲法が本当の意味において適用されなければならない日が参つたわけでありますが、ところが本法案を見ますると、或る場合におきましては、団体に対しまして個人の死刑にも該当するような解散という刑罰を以て本法案が作成されております。従つて今の憲法の二十一条に規定されておりまする結社の自由という基本的の人権はどういう点からこういう制限を受けるのか。勿論旧憲法におきましても、二十九条に結社の自由は謳つておりましたけれども、これは「法律ノ範囲内」という制限が付いておるわけでありますが、旧憲法におきましては、法律でいろいろ制限されることも憲法の当然予想しておつたところであるかもわかりませんが、現在の憲法におきましては、憲法の二十一条で結社の自由というものは保障されております。この結社の自由を制限する本法案がどの点を基礎にされて立案されておるか、この点からお聞きして参りたいと思います。
  31. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。勿論憲法においては結社の自由は認めておるのであります。我々は如何なる結社をも組織することができるのであります。併しその団体が、結社が、国家の公共の福祉に悖るようなことをやるといたしますると、それは権利の濫用という点からいたしまして見ても、国家においてこれを解散し得るものであろうと我々は考えておるのであります。又従来においても、現在においてもさような例はあるのであります。
  32. 中村正雄

    ○中村正雄君 そういたしますと、日本国憲法の二十一条のこの基本的人権というものは公益という面から制限を受けると、こういうふうな御答弁だと思いまするが、そういたしますと、旧憲法の二十九条の法律の範囲内において結社の自由があるということと、日本国憲法二十一条に保障してある結社の自由が公益のために制限を受けるということになりますると、その差異はどこにあるか。言換えれば、法律はたとえこしらえまする意図が、できました法律が非常に不純なものでありましようとも、一応法律は公益のために存するという推定を受けることは御承知通りであります。そういたしますれば、政府或いは国会がこの法律は公益のためなりと認定してこしらえるといたしますれば、日本国憲法二十一条と旧憲法二十九条とどこにも差異が認められない。こういうことになるわけでありますが、法務総裁として日本国憲法二十一条と帝国憲法二十九条との差異というものをどこにお求めになつておるか、御答弁願いたい。
  33. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) もとより憲法に規定されております結社の自由は認めておるのでありまするが、それが公共の福祉という観点からこれを解散するという、かような建前をとつてそれが法律として国会の御承認を得て公布されまする以上は、その法律に基いて当然そういう当該団体解散し得るものと我々は考えております。
  34. 中村正雄

    ○中村正雄君 私の質問は、日本国憲法二十一条の公共の福祉のために制限を受けるということと、旧憲法二十九条の法律によつて制限を受けるということとがどう違うか。言換えれば、旧憲法の認めておりました結社の自由という基本的人権と、現在の憲法の認めております結社の自由という基本的人権とはどこに差異があるか。これをお聞きしておるわけであります。
  35. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私から補足してお答え申上げます。御指摘の通りに、明治憲法におきましては、国民の権利、自由を制限する場合に、法律を以てすれば制限できるということになつておるわけであります。その意味は、その法律で如何なる場合に制限するかということはすべてこの立法に委ねられておるわけでありますから、法律で定める場合においての限界というものは憲法自身には何らなかつたわけであります。この今日の憲法におきましてはさような条文はお述べになりまする通りに全然ございません。ただ公共の福祉による基本的人権の限界というものはあるということになつておるわけであります。従いましてこの個人的の国民の基本的人権を制限する場合においては公共の福祉から来る限界のみにとどまるのであつて、それ以外の制限ということは法律を以てしても許されないという点にはつきり違いがあるわけであります。
  36. 中村正雄

    ○中村正雄君 私のお聞きいたしておりますのは、旧憲法の法律の範囲内というその法律も無制限にできるものとは旧憲法時代でも考えておらなかつたと思うのです。やはり一定の憲法に規定いたしておりまする自由を制限する法律というものは、やはり公共の福祉のためという少くとも国家目的国民目的のやはり推定を受けておると思うわけです。従つてその点になりますれば、現在の憲法におきましても政府のお考えのようであるといたしますれば、政府はやはりこの制限は公共の福祉のためであると考えれば法律で自由にできると、こうなつて来るのでありまして、お考えの基礎に、理論的には現在の憲法の基本におきましては公共の福祉という限界があるに対して、旧憲法においては法律を以てすればどんなことでもできると、こうおつしやいますけれども、旧憲法の下におきましても、法律による制限は無制限に許しておるというふうに旧憲法は解されておつたとは考えられないわけです。やはり法律で制限する限りにおきましては、やはり何らかの理由がなければ法律では制限できない。その理由国民全体の福祉、国家全体のためやはり推定を受けるわけであります。従いまして今おつしやいました言葉の上では差異があるように聞えますけれども、二十一条の結社その他の基本的人権が公共の福祉という名目の下に法律で以て制限され得るといたしますれば、旧憲法のときの基本的人権と何ら差異が認められない。こういう結果になることを恐れるわけなんです。而も国会の承認によるところの法律によつてと言われますけれども、現在のように政党内閣制をとつておりまする日本国の国会の状態におきましては、やはり政権を握つているのは国会の多数党が握つている。従つて政府が、こういう問題は公共の福祉の面から制限しなければいけないと、こういうふうに考えれば、旧憲法と同じように二十一条の基本的人権が侵害されると、こういう危険があることを非常に恐れるわけなんです。この問題につきましては、憲法の理論になりますので、幾ら質問いたしましてもきりがないと思いますので、そういう点を非常に心配しておるということだけ申上げまして、具体的な労働組合運動の面から本法案との限界点につきまして御質問を進めて見たいと思います。  本法案の第二条でありますが、第二条におきましては、いろいろ問題がありまして、最初の政府の原案にはなかつたけれども、こういう条文を追加されたという経過も知つておりますが、この点につきましては、たびたび各委員から質問されていると思いますので、簡単に結論だけ申上げたいと思うわけです。この第二条はやはり訓示的な規定だと、こういうふうに解せられておりますけれども、併しこういう訓示的な規定がありました場合におきまして、特に職権濫用するということを非常に考えるわけでありますが、それに対しまするやはり罰則規定というものも或る程度考えなくちやいけないと思うわけですが、第二条の違反につきましては、現在のところ行政部内におきまする懲戒処分ということが一応考えられる。それ以外にその濫用刑法規定に触れる場合は、やはり刑法刑罰を受けるということは当然でありますが、一応私たち労働組合運動をやつているものに想定されまする具体的な事例というものは、仮に組合集会をやつている、そういうときにこの破防法の暴力主義的破壊活動に該当するということで解散を命ぜられるというようなことがありましようし、或いは団体交渉をやつているときに又この法律に該当するということもありますし、又演説をやつているときに、こういう点に当るというようなことが一応濫用の面においては考えられるわけでありますが、そういう場合におきましては、一応現在の刑法の百九十三条に該当すると、こういうふうに今まで答弁されておるわけなんです。ところがそういう場合におきまして、若しも調査官が進んでこの破防法に該当する犯罪行為の現行犯であるとして調査官が逮捕した場合、こういう職権濫用をやつた場合は、一体どの刑罰の適用を受けるかという点をお尋ねしたいわけなんです。
  37. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。お尋ねの御趣旨の第一点でございますが、組合が或る会議を開いた、或いは団体交渉をした末、引続いて解散の問題が起きるというような点が第一点と拝承いたしましたが、この法案におきましては、決してさようなことが起ることは考えられないと私どもは思つておるのであります。これは第四条と第六条を見て頂きますればわかるのでありますが、団体活動として過去において暴力主義的な破壊活動をいたした団体が、継続して又は反覆して将来同様な活動をなすという虞れがある、かような条件の下にその団体規制いたすということに相成るわけであります。その規制の手続も、第十条以下におきまして、一応疑つて調査庁長官が委員会に請求をいたそうと思いますならば、十分に委員会に対しまして意見弁解を聞く、ただそれだけでありまして、その事前に団体に対して何らの強制措置はできないのであります。又公安調査官は、後の二十六条以下の規定におきまして、公安調査庁長官、調査官の調査権の範囲を規定しておりまするが、それは純粋の任務の調査だけしか権限を持つておらず、いわゆる強制調査権、判事の令状を持つて押収捜索し、或いは逮捕するというような権限は絶対に持つていないのであります。それで調査官に関する限りにおきましては、御心配のような点は全然ないものであると私どもは考えておるわけであります。
  38. 中村正雄

    ○中村正雄君 私のお尋ねしました点と答弁がちよつと違つておると思うわけなんです。私は団体解散という、団体に対する規制を聞いておるわけじやありません。当該の個人ですね、団体の役員であるか、或いは団体構成員であるかわかりませんが、個人に対しまするいわゆる職権濫用、それに対しまして職権濫用をやつたいわゆる調査官につきましての刑罰の適用をお聞きしているわけなんです。従いまして仮に調査官は現在のこの法律を見ますれば逮捕することのできないのは当然わかつております。併し現行犯でありますれば、刑罰規定されております事犯を惹き起した現行犯であれば誰しも逮捕できるわけなんです。従つて調査官もやはり一般の自然人であることに変りないわけでありますから、従つて濫用の場合におきましては、現行犯を逮捕することに法文で規定されております犯罪なりとして逮捕したような職権濫用をやつた場合に、その調査官の職務違反という刑罰は百九十三条になるとちよつとおかしいと思うわけですけれども、百九十四条、百九十五条という関係が考えられると思いますが、その点は如何ですか、こういう点をお聞きしているわけなんです。
  39. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答え申上げます。現行犯につきましては、御承知通り刑事訴訟法に、現行犯は常人もこれを逮捕することができる建前になつているのであります。従いまして公安調査官といえども明確に現行犯である場合におきましては、これを逮捕できるものと考えているわけであります。これを濫用いたしまして、現行犯でもない者を現行犯として逮捕するような場合におきましては、やはり二百二十条の犯罪が成立するものと考えているわけであります。
  40. 中村正雄

    ○中村正雄君 そういたしますると、一般の自然人と同じような犯罪の対象になる、刑罰対象になる、こういう意味でありますか。
  41. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) さようであります。
  42. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると、現在の職権濫用に関しまする刑法の百九十三条と、百九十四条の特定公務員の職権濫用罪、これとの関係におきまして、丁度調査官は逮捕の権限は持つておりませんけれども、実際の職務の内容というものは検察官或いは警察の職務を行うものと大体似たり寄つたりの権限を持つている。逮捕の権能はありませんけれども、そういう場合におきまして、この職権濫用が単に百九十三条の一般公務員的なものであつて、百九十四条乃至百九十五条というような特別の職権濫用の適用がないということになますと、ちよつと釣合いがとれないと考えるわけなんですが、これに対しまして何かお考えはありませんか。
  43. 關之

    政府委員關之君) お尋ねのこの百九十四条以下の規定でありまするが、これは職務構成の要件といたしまして、検察、警察などの職務を行うものがというふうに書いてありまして、法律の規定内容から見まして、当然そのような権限があることを前提といたして規定していると私どもは考えているわけであります。そこで公安調査官におきましては、第二十六条以下の規定におきまして全然強制調査権を持つていないのであります。全く任意の調査でありまして、相手方が嫌だと言つて断われば、それまでしかできないのであります。もとより只今の現行犯の問題も考えられるのでありまするが、公安調査官としては、もとよりこのようなことは正規の警察官のほうに任すべきものであると私どもは考えているわけであります。
  44. 中村正雄

    ○中村正雄君 私のお尋ねしているのは、百九十四条をそのまま適用しろ、こういう意味ではありません。この調査官の権限というものが、一般の国民の申出なり或いは届出によつて仕事をするという行政官と違いまして、やはり強制権はありませんけれども、内容がいわゆる検察官なり或いは警察官と似たり寄つたりの一定の犯罪であるかないかは別にいたしまして、少くとも違反行為の摘発調査ということを職務に持つております関係上、一般の公務員とは性格を異にする。従つて濫用の面におきましても、一般の公務員とは違つた濫用の危険がある。然も濫用されました暁におきましては、国民の基本的人権を侵すことが甚だしいという面においては、警察官や検察官と似たり寄つたりのような内容の、場合によりましては、警察官であれば刑法規定されておりますはつきりした犯罪、従つてこれは一般の人が見てもこの人が殺人犯であるとか、又は強盗であるとかいうものにつきましては、一つの社会悪として一般の人も考えられるような明白な事実に対する権限でありますけれども、この調査官のほうは、やつておる人は、行為している人は、自分の行為は正しいと信じてやつておるのが、いわゆるこの法律のために、公共の福祉という考えから、これは国民生活を危うくするものであるからという関係からやりまして、やること自体につきましては、いろいろ法律なり、或いは職務規範の制約はあるかも知れませんけれども、広汎な範囲におきまして、やはり調査官に認定が任されておる点は、恐らく事実の問題として相当あるわけであります。従つてこういうような危ないような職権濫用の職務を持つておる調査官、而も一たび職権濫用をやるとすれば、国民の重大な権利の侵害になる。こういうものに対して、一般公務員の職務濫用罪だけでなくして、それとは違つた刑罰を考えるのが当然ではないかという意味で、こういう意思があるかないかということをお聞きしておるわけであります。
  45. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。お尋ねの点は御尤もと思うのでありまするが、私どもといたしましては、これを他のいろいろの行政上の調査の制度及びその権限を行使する公務員との比較検討におきまして、さような特別なる新たなる調査官独自の職務執行規定を設けないのが至当であると考えた次第であります。それは例えて申しますならば、大蔵省の税務官であるとか、或いはその他直接に国民の権利義務に一定の強制権を以て各種の調査をなし、或いは証拠書類の収集というような、直接又は間接に強制権を以て強制し得る各種の強制執行官があるわけであります。それらとも比較いたしまして、公安調査官は間接強制の権限すら持つていないのでありまして、全くの任意的な権限しか持つていないのであります。そういうようなほかの一般公務員との比較検討におきまして、百九十四条以下の趣旨に副つた規定を設けるのは相当でない。この程度でよくはないかというふうに考えまして、この程度にとどめた次第でありま申す。
  46. 中村正雄

    ○中村正雄君 同じく第二条におきまして、この訓示的規定におきましては、完全な労働運動その他を阻害してはいけないとこうなつておりますが、それはすべて一番初めに書いてありますように「この法律による規則及び規制のための調査」については、こういう不当な行為があつてはいけないと、こう書いてあるわけでありますが、別に調査官の権限として規定されておりまずる二十六条におきましては、「規制に関し、必要な調査、こういう字句を使つております。第二条で言う「規制のための調査」ということと、二十六条で言つております「規制に関し、必要な調査」ということは同じことを言つておるのか、意味が違うのか、その点を一点お聞きしたいと思います。
  47. 關之

    政府委員關之君) 同じものであります。
  48. 中村正雄

    ○中村正雄君 この条文を見てみますと、今指摘いたしましたのは、こういうことを二条と二十六条に言つておりますが、いろいろ「関し」とか、「ついて」とか、「ために」とか、いろいろな字句を使つておるわけなんです。従つて同じ意味であれば、同じような字句を使つたほうが非常に解釈上又運用上いいのじやないか、かように第二条を見ましても、「規制のたあの調査」というのと、「規制に関し、必要な調査」というのが同じ意味であれば、やはり字句を一応統制するという必要があると思うのですが、只今同じ意味だとおつしやいましたからこれ以上の質問はいたしませんが、私は内容が違つておるのじやないかと思つて、こういう点で違うじやないかという点を指摘しようと思つたわけでありますが、同じものだという御答弁でありましたので、その点は質問は省略いたしますが、そうであれば同じような字句に統制する必要があると認めるので、意見として申添えておきます。  次に第三条、問題になつております第三条の関係でありますが、ここに一応問題になりますのは、教唆、扇動であろうと思うわけでありますが、この第三条に言つておりまする教唆ということと、刑法の六十一条に言つておりまする教唆罪、これとは同じものか、違つておるのか、一応明確にして頂きたいと思います。
  49. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) およそ教唆という文字につきましては、従来の諸般の立法例等によりますと、必ずしも同一に使つておらないことは御承知通りでございます。つまり教唆というものは、もともと刑法第六十一条におきまして、いわゆる共犯の一作用として規定されましたのが、原則的なと申しますか、テイピカルな教唆でございます。ところでその後教唆が一つの独立犯として、つまり本犯がその犯罪を遂行いたしませんでも、教唆は教唆の行為としてこれに処罰を加えるというふうな立法例が漸次出て参りますと共に、この教唆というものが、相手方に対して単に犯意を生ぜしめたというようなこと、或いはそれに基いて本犯が犯罪をなしたということ、それによつて処罰を受けるという、その六十一条の関係と違つた意味が出て参つたのでございます。従いましてこの点は罰則との関係で意味が違つて参つたのでございます。
  50. 中村正雄

    ○中村正雄君 教唆の学説に関しましてはいろいろありますが、その学説の論争をしようとは思つておりません。従つて今の御答弁によりますと、破防法に言つております教唆というものは、本法四十条の罰則規定に対応する意味の内容であつて、即ち相手方、特定の人に対しまして犯意を生ぜしめるということによつて、一応教唆自体一つの罪になる。但し刑法の現在の解釈におきまして、やはり教唆は被教唆者が行為をやらなければ、教唆罪は成立しない、この意味において違つておる。こういうふうに政府はお考えになつておると解釈して差支えありませんか。
  51. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 従来いわゆる教唆の従属犯の理論と独立犯の理論との間に相当の論争がありましたことは御承知通りでございますが、現在の判例は従犯説をとつておるようでございます。但し実際の立法例が独立犯説をとりました関係上、その間に行き違いが生じまして、結局只今申しましたように、それが又学説上争いの因になりまして、独立犯説であるから当然の規定であるという論をなす人と、それから従属犯説であるからして特別にこの規定を置かなければ律せられないのだという、わかりやすく言いますと、その二つの大きな流れがございます。その間に又若干のいろいろな説をなす人がございますけれども、大体私どもといたしましては、この従来の判例のとつた一つの解釈というものが行詰りを来たしたところに、立法的な解決に迫られたというように理解しております。
  52. 中村正雄

    ○中村正雄君 従つて私がお尋ねしましたように政府は解釈して立案しておるというように解釈いたしていいわけでありますか。
  53. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) つまり現在の判例の立場からして必ずしも明らかでございませんので、かような独立罪を認めることによつて、その間の現実の要求に合致させよう、かような趣旨でございます。
  54. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、本法に規定する教唆と、刑法規定する教唆とは、いろいろ学説によつては同じものと考えられるけれども、現在の実情が違つておるように解釈されておるから、この本法の教唆というのは、被教唆者が行為をやらなくても、独立して罪になるとして四十条を設けておる、こういうように解釈していいわけですか。
  55. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 正確に申上げますと、若干違いますが、大体そのようでございます。
  56. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると、教唆と扇動の差異はどこにあるのですか。
  57. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 教唆は只今申上げました通り刑法六十一条で規定されておるところでございまして、その最もテイピカルな形といたしましては、まだ犯意の生じないところの特定の他人に対しまして、或る行為を教唆いたしまして犯意を生ぜしめ、以て決意を起したということが教唆ということに相成つております。ところで扇動のほうは、不特定又は多数の者に対しまして、中正の判断を失わしめるような手段方法を以ちまして、すでに犯意を生じておる者に対しこれを増強し、或いはまだ犯意のない者に対してこの犯意を与えるというような、刺戟を付与する、大体かような判例の解釈になつておるのであります。実際問題といたしまして、この判例の解釈は、殆んど扇動という文字を使つた各立法の実際に対する解決としては一致した解釈はございまするが、これが独立犯として認められた場合に教唆と扇動はどう違うのかという点が御疑問の点だらうと思います。そこでこの両者につきましては只今申上げましたように、その手段方法が根本的に違つているということが一つございます。つまり教唆のほうは相手方に納得させまして、これはこうこうこういうわけで犯意を生ぜさせなければいかんというので、まあ納得ずくめで行く。扇動のほうはちよつと平易な言葉で不正確でございまするが、感情に訴えてその場の空気で中正の判断を失わせしめるというような手段方法が違つている点が一つございます。  なお更に附加えまして、相手方の不特定多数というのが扇動の一つの大きな特徴になつております。
  58. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、まあ組合運動なんかに例をとつて申しますと、仮に委員会があるわけなんですね。そこにおきまして、仮に内乱という刑法七十七条、七十八条等におきましては、内乱は一定の目的と一定の行為とを要件といたしております。そういうものに対して一つのアジ演説をやるということは教唆になるのですか、扇動になるのですか。
  59. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その言つた言葉内容について、つまりそれが七十七条等に該当するということを前提として議論いたしますれば、その場合のしやべつた内容と言いますか、手段方法と申しますか、しやベり方と申しますか、それによつてつて来る場合があるだろうと存じます。
  60. 中村正雄

    ○中村正雄君 じや簡単な例をとりますと、仮に組合委員会に行つて、これはまあ多数人とも言えるし、特定の人とも言えるわけであります。そこに行つて今の吉田内閣は反動だからこれは迚も今国会の審議を待つてつては自分たちの政策は実現できない。暴力打倒しなければならないというアジ演説をやつたときにどもらに該当するか。若し聞いている人が承知するかしないかは別として、中には或る人は犯意を生じたかも知れないし、或る人は犯意を生じないかも知れないという場合にはどちらに属するか。
  61. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) アジ演説という言葉を使いましたので、直ぐアジということを扇動ということにお考えになるだろうと思いますが、それはやはり先ほど申上げました通り具体的にその使つた言葉とか、相手方の意識の程度とか、或いはその話の何と言いますか、実質的な内容とかによつて実際上は違つて来るのじやないかとかように存じております。
  62. 中村正雄

    ○中村正雄君 教唆と扇動とが繰返して行われた場合にはどうなるか。
  63. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 刑法上の議論といたしましては教唆と扇動というものが繰返して行われましたときはそれが一つの機会に、そうして特定のきまつた相手方に対しまして、例えばこの席上ならこの席上におきまして同じく時を違わせずにやつた場合におきましては、これは一つ行為として重きと言いますか、大体において後者のほうがやや重いのじやないかと普通思われますが、そういうようなもので律するということに相成るだろうと思います。これは例えば刑法上似たような議論は、おどしたりすかしたりして物を取つた場合は何になるか。こういうような詐欺と恐喝と、どういうふうに見るかというような議論になるのじやないかと思います。
  64. 中村正雄

    ○中村正雄君 一応この条文を見て参りますと、教唆扇動に対しまする手段方法には制限はないと思うのでありますが、例えば扇動に当るような文書や図画などにつきまして考えますと、この行為の完了ということはいつが行為の完了になるのですか。
  65. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 相手方に了知し得べき程度の状態になされたその時を以て完了と解しております。
  66. 中村正雄

    ○中村正雄君 所持する場合もこれに当つておりますね。文書図画を所持する場合もこれに当つておりますね。それは相手方に示し得る状態じやないかと思いますがどうですか。
  67. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 教唆、扇動の点で御質問でございましたので只今のようにお答えしましたが、所持のほうは第三条一号のロ、ハに関するのでございます。
  68. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に非常にむずかしい言葉を使つてあるわけですが、第三条のロでも、或いは二号のほうにもありますが、いわゆる正当性、必要性という非常に今までにないようなむずかしい言葉を使つてあるわけなんですが、今までも相当説明されていると思うのでありますが、これを一応御説明願いたいと思います。
  69. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。この正当性、必要性という言葉は、日本において内乱が実際に行われ又行うことの正しいこと、或いは必要なことというだけの意味でありまして、これを社会学的な意味から、或いは歴史学的な意味からお解きになる場合もあるだろうと思いますが、要するに正しいこと必要なことというだけの意味でございます。
  70. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に小さいことでございますが、印刷という行為一つあるわけですが、これはやはり相当自筆で多数に文書を出す場合もあるわけですが、印刷の解釈はやはり自筆以外の文書というふうに考えていいのですか、それとも多数出せば自筆のものであつても印刷の範疇に入るのですか。
  71. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。印刷の範囲につきましては、ガリ版程度以上の機械を以て印刷するということに解釈いたしております。自筆のものは入らないと解釈いたしております。
  72. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると労働組合等におきましては相当に人がいるわけなんですが、いわゆる印刷物であればガリ版以上のものでなければ印刷物でないといたしますれば、相当多数人がかかつて同じものを自筆した場合にはロ号に入らない。こう解釈していいのですか。
  73. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 印刷ではございません。
  74. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に頒布とか公然とかという字句が相当あるわけですが、これも相当いろいろに解釈されるわけで、或いは多数とかということがありますが、例をとつて申しますと、仮に労働組合の寮なんかあるわけですね、寮などに参りましてこういう文書を頒布したりした場合、例えば寮には十五、六人いるわけですが、これも多数といううちに入るか、公然といううちに入るか、具体的にどうなりますか。
  75. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 頒布とは有償無償を問わず、特定又は不特定多数人に配ることであります。公然掲示とは、特定又は不特定多数人に見ゆる状態のところに掲示するのであります。御質問の場合は該当すると考えております。
  76. 中村正雄

    ○中村正雄君 それからこの三条の一号のロですね、一号のロは教唆若しくは扇動ということになりますと、これは被教唆者と被扇動者が犯罪の決意を生ぜしめるということが必要になつて来るわけですが、ハの場合においては要しないようになつているわけですね、ここに均衡を失するように思いますが、どうなりますか。
  77. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。検務局長只今お答えいたしましたが、教唆、扇動につきましても、教唆をされた者或いは扇動を受けた者が現実に犯意を新たに生じたり、或いはすでに持つていた犯意を強固にしたという結果を必要としない建前になつております。それから又ハは宣伝、内乱実現のための宣伝行為のための最も典型的な類形を捉えたものでありまして、かような文書の配付を受けたりしたものが、現実にどのような意識的変化を生じたかということは問わないのであります。
  78. 中村正雄

    ○中村正雄君 ちよつと答弁が食い違つておると思うのですが、前のほうの御答弁の教唆につきましては、一応学説はいろいろあるけれども、現在の刑法に関する判例等では、行為は必要でないけれどもやはりこれは現在におきましては、犯意だけは教唆のうちに入る。従つて刑法と違つておるのは、行為は必ずしも必要じやない、こういうふうに書かれておると思うので、犯意まで必要でないようにこの法律の教唆は言つておるわけですか。
  79. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 先ほど申上げましたのは教唆と扇動とが独立罪としてなつた場合にはどうなるか、そこで様相が違つて来るわけでございます。つまりその際に教唆せしめる犯意を起さしめるような程度に或る行為を命ずる、或いは要求するというふうな教唆の態様と、もう一つの扇動のほうは先ほども申上げました相手方に対しまして先ほど申上げましたような手段方法を以て相手方に対して犯意を生ぜしめる程度の、生ぜしめる程度の或いはすでに犯意のあるものに対してはこれを強める程度の刺戟を与える、こう申上げましたのは、要するに具体的にはさような結果が出ませんでも、そういうふうに認められる程度のものであればよろしい、こういうふうな趣旨でございます。
  80. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、本法にいう教唆と、刑法によります教唆とは全然違つておるわけなんですね。本法による教唆は被教唆者が犯意を生ずると、生じまいと関係ないのだ、こういうふうに解釈するわけなんですか。
  81. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) これは教唆の未遂ということで論ぜられる点でございますが、相手方において犯意を生じたということは要件ではない、ただ生ぜしめる程度のことは必要である、かようなことに相成つております。
  82. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に第三条の第一項の第二号のリですね。ここに「補助する者、」という言葉を使つておりますが、これはどういう人を指しておるわけなんですか。
  83. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。これは検察の事務を補助するのは検察事務官がこれに当るわけであります。又警察の職務を補助するのは警察学校の生徒で新任の警察職員がこれに当るものと考えております。
  84. 中村正雄

    ○中村正雄君 同じくリの中に「多衆共同してなす刑法第九十五条」云々と「多衆共同して」ということがあるのですが、例えば労働組合といたしまして示威運動をやることがあるわけなんですね。そのときにおいて運動の途中におきまして、そうした場合に参加者が共同の意思の連絡なくして、各自公務執行妨害を行なつたというような場合はこの項に該当しますかどうですか、意思の連絡ということについてお聴きしたい。
  85. 關之

    政府委員關之君) この要件凶器又は毒劇物を携え、多衆共同するということが一つ要件でありまして、勿論相互においてこのことの認識は必要であるわけであります。従つてばらばらでありますならば、この要件事項には当らないものと考えます。
  86. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、具体的な例でありますが、仮に千人の労働組合員デモをやる、その中の仮に二十人三十人がそれぞれ意思の連絡なくしてこのリに該当するような行為をやつた場合には、実際はこのリにおきましては意思の連絡がないから「多衆共同してなす刑法第九十五条」に該当する行為であるとして行為とは言えない。こう解釈していいわけなんですね。
  87. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 似たような言葉暴力行為取締法においても使われておるのでございますが、それに関する判例といたしまして、只今答弁がありました通り相互の認識が必要である、つまり一緒にやるという認識がございますが、全然ばらばらな場合は入らない、かように御了承願います。
  88. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると相互に相手方が持つておる、又自分以外のものが持つておるという認識があれば意思の連絡が必要でないこういう意味でありますか。
  89. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 認識並びに意思と両万共必要でございますこれが成立するためには。
  90. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると認識と意思といいますと、やはり相互に意思の連絡といいますか、意思の合致といいますか、それを必要とするという御答弁ですか。
  91. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 判例もさように相成つております。
  92. 中村正雄

    ○中村正雄君 次に第四条の関係ですが、これも本会議でも質問がありましたし、又各委員会でも質問があつたと思いますので、簡単に結論だけ御答弁つて結構なんですが、この四条の団体活動の制限の項におきまして、今まで日本の現行刑法等には出ておらない法人自体に犯罪行為能力を認めておるというふうに解釈されるような条文になつておるわけでありますが、一応この法案を拵えまするときにおきまして、新たな形として法人に対しまして犯罪行為能力を認めるという前提の下にお作りになつたかどうか、この点につきまして簡単で結構ですから、勘どころだけお伺いいたしたい。
  93. 關之

    政府委員關之君) この法案におきましては団体に対する犯罪行為能力は認めておりません。
  94. 中村正雄

    ○中村正雄君 それに対しまする見解は相当ありますが、一応時間がありませんので、そのお答えだけを了承して次の質問に移りたいと思うわけでありますが、この第四条に今「団体活動として」ということにつきましては、今まで相当各委員からも質問されておりますし、特に大衆運動をやつておるものといたしますると、やつておる行為団体活動として行われておるかどうかということにつきまして、本法案の適用を受けるかどうかという重要なポイントになるわけなんです。従いまして一応今まで答弁されております点ならば結論だけで結構ですが、一応お答え願いたいと思いますことは、若し仮に労働組合を例にとりまして、前に村尾君からもちよつと質問があつたように思いますが、労働組合大会なり、或いは一定の権限に基きます機関決定として行なつ行為、これが当該団体活動となるということは当然であろうと思いますが、若し仮にその大会決定というものが無効である、定足数の関係、或いはいろいろ規約に照しまして無効である場合がたくさんあると思うのです。そういう無効であつた場合にその無効な決議に基いて行なつ行為について、その団体はこの本法によるところの結果の責任を負うか負わないか、この点をお聴きしたいと思います。
  95. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの点がその団体の規則上全然無効でありますならば、間違つてそのことを本当と思つて組合員がやつたことはその団体責任にならないものと思つております。
  96. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると、団体活動か否かということを判定する基準というものは、やはり団体自身の、いわゆる団体にはそれぞれルールがあるわけでありますから、それに照らして団体決定としてなされた意思に基くか否かということが判定の基準になるわけでありますが、一般の社会常識上考えて、仮に労働組合にいたしましても、大会なり或いは委員会を招集するにつきましては、それぞれ規約に基いて何日前に招集しなければいかんとか、定足数はどうだとか、いろいろ細かい機関の規約があるわけなんであります。従いまして一応そういう規約の欠陥を無視いたしまして一つの決議をやる。而もその何日か或いは何カ月か経つたのちにそれと同じ機関、或いはそれの上級機関によりまして、前の決定は規約に反しておるから取消されるということはどこでもたびたびあるわけであります。そうしますと、次の機関によつて決定される間におきまして、前のいわゆる当然無効ではありますけれども、客観的には有効なものと組合員が信じてやる、その間に行われました行為につきましてもおやはり団体活動としては認められないという結論になると解釈していいのですか。
  97. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。団体はその実態が千差万別でいろいろな団体があることは御承知通りであります。機関を作つて意思決定をするような高度に発達した団体もございますし、機関構成のないような素朴な団体もあると思います。併しながらいやしくも団体として認められておる以上は、その構成員意思に基きまして団体意思がどういうふうに決定されるかということが大体きめられておるものと考えるのであります。非常に高度に発達した団体におきましては複雑な機関構成と、権限の分配というようなことも考えられるのであります。さような場合におきましては、事実の問題として、さような機関によつて決定されたものが団体意思と認められるということも考えられるのでありますが、更に全員の意思に基きまして、その従来規約等においてきめられた意思決定方法と変つた意思決定方法が承認されまして、そういう方法意思決定がなされたという自然的な事実ですね、がある場合におきましては、団体意思決定ありと認めなければならないのではなかろうか。要するに問題は現実の具体的な事情について検討さるべき問題ではなかろうかと考えております。
  98. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると前のかたの答弁とは食い違つておると思うわけなのですが、私はいろいろのあらゆる団体につきまして質問しているわけじやないので、一つ労働組合というものを例にとりまして、それを前提として話をしているわけでありまして、従つて一応労働組合機関決定としてなされましたものがそれの上級機関、或いは同じ機関によりまして、その機関決定が規約に照しまして無効であると判定された場合、そのことに限定してお聞きしているわけです。従つて次の機関におきまして無効であると、これはその前の決定は変更するというのじやなくして、これはルールに照らして無効である、招集手続が間違つてつたとか、定足数がなかつたとかいう規約があると思うのですね。従つて次の機関におきまして、無効なりと判定されます間におきましてやつた行為なのですね。それが団体としての行為になるかどうか、この点をお聞きしているわけです。
  99. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) よくわかりました。お答えいたします。団体意思決定一つ機関決定されるという建前になつておりまして、現実にその機関決定されると言われながらも、実際は実は無効であつた機関意思決定じやないという場合におきましては、その間になされた構成員や、役職員活動団体活動とは認められないと考えております。
  100. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと具体的になるわけでありますが、仮に一つの大きな組合でありますと、年次大会というものは年に一回しかありません。従つて昭和二十六年の年次大会において、一定の方針をきめた、そうしてその決定に基きまして、いわゆるこれに該当する行為があつたといたします。それによつてこの法律の適用を受けている。ところが次の一年後の年次大会において、二十六年度の年次大会は招集手続において、或いは定足数において、これは規約に照らして無効であつたという決定をした場合、その一カ年間におきましてこの行為をやつて、現在審査委員会、或いはその他におきまして審理中であつた場合は、次の機関によりまして、方針の変更ではなくして、無効の決定をした場合には、それに対しまする調査、或いはこれに該当することに対しまするこの調査庁なり、審査委員会の権限はすべてなくなつてしまう。言い換えれば事実が消滅する、こういうふうに解していいわけですか。
  101. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの点につきましては、最初のお尋ねは、例えば或る下部機関がありまして、それが或る意思決定をなす、意思決定をなしたが、併しその意意の決定は直ちに団体意思とはならない。上のほうにおいてこれを承認しなければならないというような条件があつたといたします。そういたしますと、まだ上の承認がないから、団体意思はそこで決定されないわけであります。従つて上の承認がない限り、構成員などがその意思の実行だといつてつた行為は、これは団体責任にはなるまいと思うのであります。併しながら今お尋ねの、この年次大会の二十五年度におきまして、こうやろう、そうしてそれがその通りにおいて団体意思として決定されてやつた、そうしてそれが翌年度においてこれは無効だと、こういう問題が生じたわけです。ところがその問題におきましては、一応とにかくこのときにおける団体の、二十五年度における団体意思団体意思として私は決定されたものであろうと思うのであります。後において又同じ機関がそれをどういうふうに認定するかということは問わないで、一応終局的に団体意思がそこで決定されたものと考えるのであります。そういたしますとやはりその間の意思決定に基く行為団体行為として見るべきものであろうと考えるのであります。
  102. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうすると又御答弁が違つていると思うのでありますが、私のお尋ねするのは、それは労働組合という全国的な大きなケースを想定し、而も年次大会というのは一年に一回しか開かれない。従つて次に開かれる機会は一年後でなければいけないという、非常にまあ最も典型的な大きな場合をとつて質問したから、それでは困るという意味で、又答弁が変つたのではないかと思うのですが、これは全国的なものを考えないでも、仮に私は国鉄に関係しておりますが、国鉄労働組合一つの駅があるわけです。そこが一つ分会になつておりまして、やはり分会にも大会はあります。これも年次大会は一年に一回やります。その分会においての年次大会決定した細目に基いてそうしてそれによつて行動をやつてつた。これがそこで、併し次の年次大会までに組合からいろいろ異議の申請があつて、あの年次大会においては招集手続が間違つてつたとか、或いは定足数がなかつたということによつて、はつきりと次の年次大会では無効だという、あの年次大会できめた決議はすべて組合員を拘束しない、無効であるという決定をした場合に、一カ年間に無効の決議によつて行われた行為は、団体行為と認められるかどうか。これをお聞きしているわけなのです。その場合にも、再度私がお聞きしましたように、当該団体の規約によりまして、ルールによりまして無効であつたものであつても、一般の社会の見解上、客観的に見ていわゆる多数人の意思なりと認められる場合は、たとえ無効であつても、その決議に基いて行なつ行為団体行為として認めるかどうか、これをお聞きしたときに、あなたのほうは認められないという答弁があつた。今になつてそれはやはり認めなければいかんということは、答弁の食い違いと思いますが、いずれが正しいのですか。
  103. 關之

    政府委員關之君) お答えいたします。最初のお尋ねのときに、最初の決議の無効の取消しの問題につきまして問題の御趣旨を私は上の機関においてこれを承認するとか、或いは取消し得るとかいうことが確定してから、それがその団体意思として決定されるというような事例かと考えまして、然らばそのような事例があるならば、まだ団体意思としては決定されていない。上においての確認とか或いは承認ということがなければ団体意思として決定されないのでありますから、その間に団体の者がまだ確認されないものを、自分の団体意思だと思つてつたという場合には、勿論これは団体責任にはならないというふうに答弁申上げたのでありますが、言葉が足らずに大変恐縮、失礼いたしました。  次に今のお尋ねの問題でありますが、これはやはり或る年次の大会におきまして、そのときにおきましてはやはり団体意思として終局的に決定したわけであります。そうして又その後勿論客観的に全体的な団体意思と認められるというようなものでありますならば、もとよりその間のあとの取消しとか、無効とかいう問題とは関係なく、団体の一応行動活動として見るベきものと思うのであります。
  104. 中村正雄

    ○中村正雄君 今例を示されて御答弁なつたことと同じことじやないかと思うのですが、仮に規約によりまして、この機関決定は上級機関の承認を要すると書いてある規約の条件も、その規約におきまして、いわゆる一つ機関を招集するために、何日間か前に告示しなければいかん、それをしなかつたら無効であるということによつて招集して決定したことも、価値としては同じだと思う。従つて下級機関、上級機関、或いは同類の機関、そういうことにつきましては何ら差異は認めないというのでありますから、同じ機関におきまして定足数なり、招集手続等におけるこれは価値については認められない、そういう上級機関の承認というものであれば、これの価値は認めようということは、どうも僕は納得できない。いずれが正しいのですか。
  105. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 只今の御質疑応答を伺いまして、私の考えたところを申上げます。  この大会で決議をしまして、団体意思が一応きまつた形になつた。そうして破壊活動が行われるわけでありますその決議に基いて。そうしますとこの今の審査の手続が一応始まります。そうしますと当事者のかたがたに来て頂いて、いろいろ弁明を聞きます。その場合に恐らく招集手続が規約と違つてつたということであれば、恐らくその際に明らかになることであろうと思います。ですからそうなれば今の問題はもう話はそこで済んでしまう。あとで次の大会がありまして、その決議が行われますについても、やはり招集手続のような場合でありますれば、それによつて無効をむしろ宣言をしたという形になると思います。そういうことで実際上の繋がりは、今申上げたようなことで落着いて行くことと思います。ただあとの大会の決議というものが無効の宣言をしたとか、或いは将来変更しようとか、あの決議を撤回しようとかいうことであれば、これは前の決議の有効性を認めたことになりますからこれは御質問の中には入つておらないと思いますが、無効の場合についてはかようなことになると思います。
  106. 中村正雄

    ○中村正雄君 どうもあいまいな御答弁だと思うのですが、最初言いましたように、次の大会において、同一の機関の下級の機関において或いは上級の機関におきまして、政策の変更とか方針の変更、これを私は言つておるのじやありません。いわゆる団体行動なりとして行なつた決議に価値のあつた場合、定足数とか招集手続とか、従つてそういう場合に無効になつた場合には、その決定団体行動として行われるかどうかということを言つておるわけで、今あなたの御答弁によると一応団体行動なりとして行われて、これに関係する事犯が起きた場合には調査中にわかるとおつしやいますが、労働組合の実情をお知りになれば大体おわかりになると思いますけれども、それぞれ組合においてはいろいろ駈引があるわけであります。従つてこういう決議を通そう、こういう政策を通そうという人が、一応指導権を握つた場合には、いわゆる規約を無視して無理にも通す場合があるわけです。従つて実際にその決議に従つて行動を起す場合は、そういう決議をしようと思つた人が起すわけで、従つてその人が引つ張られた場合に、あの手続は無効であるということは言えないわけです。あの決議が無効であるという異議を申すのは、その政策に反対した側の人が言うわけであります。従つて取調べ中にわかるということは、これは一般の事例については当てはまるかも知れませんが、今言いました、特に組合運動や大衆運動については当てはまらないわけであります。従つてこれは正当な決議なりとして、従つていわゆる審査委員会なり調査庁がこれに該当するとしての一定の処分をしてしまつた後の大会におきまして或いは上級機関におきまして、反対側の人間から価値を挙げて前の決定はこれは無効であるということがあるわけであります。それが処分が済んでしまつた後であれば、これはそのほかの問題になりますが、まだ継続中の問題であつたらどうなるか、これをお聞きしておるわけであります。
  107. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 簡単に申しますと、結局後の大会できめた無効であるという決議は、これはもう先ほども触れましたように客観的に見れば当然宣言的なものである。従いましてこの手続は、すべてその団体意思決定というものを客観的に見まして、これが果して正規の意思決定であるかどうかということの審査をいたしまして、それから処分をいたします。或いは又更に不服があれば裁判の問題にもなりましよう。裁判所においてもやはりその問題になつておる大会の決議が、一体無効のものであるかどうかということを客観的に御審理になるのでありますから、その意味で私は申上げておるわけであります。
  108. 中村正雄

    ○中村正雄君 結論が出ないわけなのです。私のお聞きしておるのは、団体意思なりとして行なつたその意思決定が間違つてつた、無効であつたということになつた。その行動について、団体責任を負うかどうか、これをお聞きしておるわけです。
  109. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 大変むずかしい御質問でありますが、なおよく検討いたしまして、意見をまとめて、後刻お答えいたしたいと思います。
  110. 中村正雄

    ○中村正雄君 じや保留に願います。
  111. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつとお諮りします。中村君どうですか、このへんで十二時十五分ですから、これで普通ならば休憩して、牛後一時三十分から再開したいと思いますが……。速記をとめて。    〔速記中止〕
  112. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をつけて。これで休憩いたします。    午後零時十五分休憩    ―――――・―――――    午後一時二十分開会、
  113. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは只今より連合委員会を再開いたします。午前に引続き中村君の御質疑を願います。
  114. 中村正雄

    ○中村正雄君 何か午前で保留された点について御答弁があればそれを伺つておきたい。
  115. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 午前中に御質問がありました点につきましてお答えいたします。団体としての意思決定があつたか否かということは、客観的に認定される問題であります。御承知通りであります。当該団体意思決定に関する規約とか、機関の構成とか実際に行われた経過等、いろいろな事情を十分に検討して、客観的にその意思決定団体意思決定として行われたものと認められるときには、団体意思決定があつたとなるわけでございます。この法案におきまして、かような認定は御承知通り公安審査委員会において行われまして、更に訴えを待ちまして裁判所において行われる建前となつているのであります。団体の側におきましてこの意思決定があつたか否かというようなことについて争いがあるというような場合におきましては、それらの点はすべて公安審査委員会において十分審査をされる建前になつております。更に裁判所の認定を待つて解決されるようなことになるわけでございます。
  116. 中村正雄

    ○中村正雄君 一応御答弁としては形式的に整つておると思うのですが、一応どういう決定をするかは、審査委員会なり、最後は司法裁判所になると、こういう御答弁でありますが、併しこの条文の解釈としてそういう行為が当該団体行為として認められるかどうかということを聞いているわけで、従つて立案者の御意思はどこにあるのか、私の質問の要点はそこにあるわけです。
  117. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 或る特定の団体につきまして、意思決定が行われたということに関しまして団体内部に争いが起るような場合もあるかと存じます。かような場合におきましては、具体的にその事情を慎重に検討して決定さるべきもので、軽々しく外形的事実を捉えて決定すべき問題ではないと考えておる次第でございます。
  118. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、私の質問は、決定に瑕疵があつて、その瑕疵によつて次の機関によつて取消された場合も団体行為として認められるかどうかということについての最終的御答弁にはなつておらないと思うのですが、それが団体行為として認められるかどうかは、審査委員会なり、或いは最終は司法裁判所が慎重に諸般の情勢を審査してきめると、こういう御答弁だと思うわけですが、裁判所はそれでよろしい、審査委員会はそれでよいかも知れませんが、この法文の意味はどこにあるか、これをお聞きしているわけです。
  119. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 先ほどもお答えいたしました通り、瑕疵が重大な瑕疵で、意思決定があつたとは認められない、名前は別としまして、さような場合におきましては、客観的に団体意思決定ありと認定はできないという建前になると考えております。
  120. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると、仮に労働組合ばかり私は例にとりますが、労働組合は、御承知の法人となつてつて登記いたしているわけですね。規約のうちで必要なものは登記しなくてはいけません。従つて、登記されておりますような事項について、その事項を守らなくて決定したというようなことで、それが瑕疵になつて次の機関で取消されたと、無効の宣言をせられたというような場合ですね、そういう場合であれば、当然その無効の決定に基いて、方針に基いてなされた行為というのは当該団体行為ではないとはつきりと言えると思うのですが、そういう点につきましても、諸般の情勢を考えて委員会なり裁判所がきめると、こういうふうにあいまいな御答弁になるわけですが、如何でしようか。
  121. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 登記事項規定されておるような条項に違反して意思決定がなされた、それが重大な瑕疵というような場合には、意思決定ありとは認定されないものと考えております。
  122. 中村正雄

    ○中村正雄君 もう一つそれに関連してでありますが、御承知のように、現在の労働組合は上部機関から上級機関まで相当段階に分れておるわけなんです。従つて一つ行動をするにいたしましても、仮に全国的な最高の機関におきましての決定というものは、これは抽象的な決定が多いわけなんです。具体的に一々はいたしません。従つて、最上級の機関が本年度の方針として大綱についての運動方針孝きめると、それに従いまして下部機関が一応具体的な方法をきめて行う。その下部機関の行いました具体的な行動が本法案に該当するということになつた場合、その行為責任を負う団体は、下部の下級機関が負うのであるか、上部の団体機関が負うのであるか、而もその下級機関が行う場合も、上部の団体機関の名前によつて行うことは、これは当然であります。従つてそのときに責任を負う団体というものは、上部機関であるか、下級機関であるか。
  123. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。下部機関であります。
  124. 中村正雄

    ○中村正雄君 その場合は、上部機関の名前によつてつてつても、この対象になるものは下級機関であると、こういうように考えていいわけですね。
  125. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) さようであります。
  126. 中村正雄

    ○中村正雄君 それでは時間もありませんので、次の第四条に入つてお聞きしたいと思います。この四条の第一項の第一号に「集団示威運動、集団行進又は公開の集会において行われたもの」というふうに書いてありますが、これはどういう意味であるか、と申しますのは、解釈といたしましては、こういうことを行うほうも行われるほうも含むと解されるわけでありますが、両方を含むのか、或いは一つだけを含むのか、この点をお聞きしておるわけです。
  127. 關之

    政府委員關之君) この第一号でありまするが、当該暴力主義的破壊活動集団示威運動で行われた場合、これは第四条の団体活動としての暴力主義的破壊活動を行なつたと、過去に行なつた、一応そういう形式を取られたのであります。それが或る場合においてそれぞれ集団示威運動というこれに相成りまして、従つてこり一号の事項と四条の本文の書き方からおきまして、最初に集団示威運動によつて暴力主義的破壊活動が行われたという場合におきまして、将来又絶対に集団示威運動によつて破壊活動が行われないというような場合には、その集団示威運動に対しては規制はかけられないというふうに考えておるわけであります。
  128. 中村正雄

    ○中村正雄君 この第一号の制限として、公開の集会を禁止するということがあるわけでありますが、これは破防法の根本の精神にも関係すると思われるわけでありますけれども、こういう破防法に規定されておりますような行為、勿論一般的に考えて社会悪として考えられるものが相当あるわけでありますが、併し一般の刑法に該当するようなものと違つて、これに該当するかも知れないとして行われます行為は、やる人にとつてはこれは非常に正しいものだと信じてやるわけなんです。従つて、強盗であるとか、殺人であるとか、窃盗であるとかいうようなものになれば、これはたとえやる人がいろいろ考え方があつても、やはり社会悪としての認識は持つておると思うのです。ところがこれに関しまするものは、やる人は当然正当なりと、手段がたとえ悪でありましようとも、自分のやるという目的が正当であるということでやることでありますので、この公開の集会を禁止するということになれば、却つて秘密の集会を慫慂するという結果になると思うのですが、こういう点についてはどういうことをお考えになつておるかお聞きしたい。
  129. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この点につきましては、前にもお答えいたしました通り、第四条の一項の一及び二で抑えておりまする行為は、特に一号で抑えております行為は、団体の対外的な活動という面を捉えまして規制したのであります。今日の多くの大衆団体が、かような活動をやるという場合は殆んど考えられないのでありますが、これを公開の集会だけではなくて、団体自身の内部的な集会までも抑えるということになりますと、その団体活動が殆んど停止されるような結果にも相成るというような結果を考えまして、対外的な大衆活動の面を捉えて規定したわけであります。
  130. 中村正雄

    ○中村正雄君 第二号におきまして「機関誌紙」という言葉が使つてありますが、これの意義につきましては相当速記録にも載つておりますので質問を省略いたしますが、若しこの処分を受けました機関誌紙の編集者なり、執筆者、題名等を変えまして、大体内容が類似のものであるという場合には、やつぱり当該機関紙と同一のように見るのか、或いは別のものに見るのか、その点を聞きたいと思います。
  131. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御質問の点につきましては、前に伊藤委員から同一性の点につきまして御質問がございまして、答弁留保になつております。後日明確にお答えいたしたいと考えております。
  132. 中村正雄

    ○中村正雄君 それでは後日に願いまして、一応どういう場合があるかということで御答弁願いたいのですが、機関紙によつて破壊活動が行われた場合に、その行為団体行動として行われることを勿論要すると思うのですが、そういう場合は一体どういう場合か、一遍例示して頂きたい。
  133. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 極めて破壊的な団体が、内乱の実現の正当性をその社説で主張するというようなことをやりました場合には、その機関活動の印刷頒布行為は第三条に該当するようなことに相成つておると考えております。
  134. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると、その機関紙に掲載されておりまする内容従つて、その執筆者が、その団体構成員以外の執筆者でありましようとも、機関自体に掲載されておりまする内容によつて云々すると、こういうふうな御解釈でありますか。
  135. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) ここで機関紙とは、団体がその目的方針主義等を打出しまして、これを通報宣伝する定期的な刊行物ということになつておりますので、その機関紙の編纂権なり、管理権というものは団体が握つておる建前になつているわけでございます。第三者の執筆、論説を利用いたしましても、それを機関紙の社説などとして使う場合におきましては該当するものと考えております。
  136. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると、その機関紙の編集、管理というものは、その団体の代表者自体が握つておる。従つてその機関紙に掲載されておりまする内容自体について、それが誰の執筆であろうと、誰の論説であろうと、すべてそれに載せてあることが、この本法に相当する暴力主義的破壊活動なりと認定される事実であれば、それをやつぱりその機関紙を出しておる団体行動として見ると、こういう意味でありますか。
  137. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 多くの新聞にはいろいろなかたの論説、意見、主張なりを事実の報道として載せる場合もあると思います。ここで問題になつておりますものは、主張としてその機関紙の社説等におきまして載せたような場合が問題になると考えております。
  138. 中村正雄

    ○中村正雄君 ほぼ明らかになつたと思うわけですが、例えば例を取りますと、一つ労働組合機関紙があるわけなんですね。その社説でなくして労働組合機関紙には、ほうぼうの知名人等が寄稿せられるわけなんですね。その中に仮に今政府で考えておるような共産党の相当強力な人が、こうすべきであるという、寄稿したところの文を載せたとこういつた場合はどうなんですか。
  139. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 新聞には御承知通り新聞形式をとる場合におきまして、事実の報道とそれから新聞社の主観的な主張なり、御意見なりが述べられる。事実の報道として、一つの出来事が起きました場合に、これに関するいろいろなかたがたの感想なり、御意見なりをやはり報道として、客観的な事実として載せる場合があると思うのです。ここで問題にしておりますものは、新聞社の主観的な立場において社説なり、論説なりの形を以つて明確に打出して来たような場合におきましては、それはその団体機関紙として問題になると考えております。
  140. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますると、その機関紙に仮に団体決定であるとか或いは団体の主張というものを載せて、それがこの破防法の第三条に該当するということになる場合を意味するのであつて、仮にその機関紙に載つておる、仮にどの人がこういうことを言つておるという、その言つておることが第三条に該当しても、それはこの第二号の適用は受けないと、こういうふうに解釈しても差支えないわけですか。
  141. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) その通りと考えております。具体的な例を考えますと、或る労働組合機関紙にいろいうなかたがたの論文、御意見なんか載せる場合もありますが、客観的な事実の報道としてこういうものはこういうことを言つておるということだけでありますならば、問題はないと思います。
  142. 中村正雄

    ○中村正雄君 たとえそれが第三条に該当する主張であつても構わないわけなんですね。
  143. 關之

    政府委員關之君) ここで、お尋ねに対して最も重要な点は、要するに第三条の恐らくロとかハとかいうような事項機関紙において問題になるだろうと思うのであります。要するにそういうことが機関紙に現われるということにならなければならないのであります。それがために勿論その団体側におきまして、実現を容易ならしめる意図があるとか、或いはイの行為を教唆扇動する意図があるというような、そういろ団体の主観的意思がありまして、そうして実現の正当性を主張した文書等をそこへ掲載すると、いうことに相成りますとこれに当つて来るわけであります。だからそういう、こういうロ、ハに当らない場合ですね、客観的な一つ報道というものは全然これに関係ないわけであります。
  144. 中村正雄

    ○中村正雄君 私の御質問しておりますのは、仮に載せる場合に、その労働組合の主張として、いわゆる組合決定とか、或いは組合全体の主張として社説に載せるのじやなくして、やはり有力なかたの論文を掲載することがたくさんあるわけなんですね。従つてそれが仮に労働運動には右と左とあれば、右の代表者の論文を載せる、左の代表者の論文を載せる、こういうことはたびたびあり得ると思うわけなんです。そのとき載せました論文が、いわゆるはつきりとこの三条に該当するような、仮に内乱を助長するようなところの、非常に具体的な事例を示した論文になる場合もあるかも知れません。そういう場合はその機関誌がこの二号の適用を受けるかどうか。その団体の主張ではなくして、載せておるのは当該、そういう破防法に考えておるような行為を考えている人の論文を載せた場合なんです。その場合どうなるかということをお聞きしているわけなんです。
  145. 關之

    政府委員關之君) それはその当該団体側に、例えて申しまするならば、三条の一項一号の内乱の行為の実現を容易ならしめる意図、そういう主観的な要件が備わらなければ、勿論それだけでは該当いたさないと思うのであります。
  146. 中村正雄

    ○中村正雄君 念のためにお聞きしますが、そうするとその団体意思なり、団体の又代表者の意思なり、機関紙の編集者、若しくは管理者の意思が、そういう仮に内乱罪というのを一つ例に取りますと、内乱に該当するような事実をやろうという主観的な意思がなければ、それは論文の執筆者がそういう意思のために執筆しておつても、その人が別に処罰を受けるのはこれは別でありますが、この機関誌がその事実によつて処罰を受ける懸念は毛頭ない、こう考えていいですか。
  147. 關之

    政府委員關之君) お説の通りであります。
  148. 中村正雄

    ○中村正雄君 それから次の第一項の第三号ですが、「当該暴力主義的破壊活動に関与した」とこうありますが、「関与」という意味はどういうことを意味しておるのか、お伺いしたいと思います。
  149. 關之

    政府委員關之君) この関与はかかる第三条に挙げるような破壊活動団体活動としていたした場合に、その団体活動としてのかかる活動関係いたした、直接なしたものを中心にして、それに関係いたしたものというふうに解釈いたします。
  150. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと関与という言葉は、先の御答弁によれば、一応関与したかどうかの事実の認定はやつぱり委員会なり、最後は司法裁判所の認定に待つ、こういう結果になるわけですか。
  151. 關之

    政府委員關之君) お尋ね通りであります。
  152. 中村正雄

    ○中村正雄君 同じく第三号に「団体のためにする行為」というのがあります。それから第二項に「団体役職員又は構成員として」とこうありますが、「団体のためにする行為」ということと、「役職員又は構成員として」云々という行為とどういう点が違うのか。
  153. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 「団体のためにする行為」と申しますのは、団体役職員又は構成員が直接団体の存続、発展、再建のために行う行為でありまして、これは役職員又は構成員団体意思決定とは離れて、個人として独自の只今申上げたような行為を行う場合も包含されるものと考えております。
  154. 中村正雄

    ○中村正雄君 今の御答弁は、私は「団体のためにする行為」というものと、「役職員又は構成員として、」の行為というものの差異を聞いたのですが、「団体のためにする行為」というのは、その団体の育成、発展のためにする行為であり、「役職員又は構成員として、」というのは、これは団体を離れて個人として行う行為だとこういう御答弁と解釈していいんですか。
  155. 關之

    政府委員關之君) この第三号のほうの「特定の役職員又は構成員に当該団体のためにする行為」というのは、これはこの「当該暴力主義的破壊活動に関与した特定の当該の役職員又は構成員」でありまして、それが「当該団体のためにする」と相成るのであります。そしてその次の二項のほうは、「何人も、当該団体役職員又は構成員として、」ということに相成るわけでありまして、これは勿論団体活動としてやることでありまして、その範囲におきましては、この二号のほうは「何人も、」というふうになつておりまして、その主体的要件が幾らか広いかと存ずるのであります。
  156. 中村正雄

    ○中村正雄君 これに関連して前の関与でありますが、これ又労働組合等いつでも問題が起るわけで、一つ決定をする場合に、やはり構成員の賛否の多数決によつてするわけなんですね。従つて仮に一つ委員会がありまして、その委員会で一定の行動をきめるというときに、全会一致であればすべてが関与することになるのは当然でありますが、やはり賛否が分れまして、多数決によつて決定してその行動を起さなくちやいけない。而もやはり民主主義のルールを守る限りにおきましては、やはり多数できまつた場合は反対した者でも従わなくてはいけない、これは当然のわけですが、従つてその場合に、決定するときには反対したんだけれども、やはりそれの機関決定としてきめた行為については、これは従わなくちやいけない、こうなつた場合に、その採決に反対した役職員も関与した役職員と言えるかどうか、この点はどうなりますか。
  157. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) これは団体の場合に限らず、刑法上の共謀の場合にも問題になると思うのであります。数名の者が集まりましてとにかく多数決でやろうときまつた以上は、いやでもその犯罪は実行しようじやないか、するか否かとにかく多数決できめようというようなことで、相談した結果、多数決で犯罪を実行するという決定が行われて、それに脱退もせずにその実行の形式に従うというような場合におきましては、全員責任を負わなければならないというのと同じ立場ではないかと考えているのであります。
  158. 中村正雄

    ○中村正雄君 ちよつと私、違つていると思いますのは、その犯罪の共謀なんかのときは、多数決でやろうということはこれはまあ当事者の意思表示でやれるわけで、自分の意思に反すればその集団から脱ければいいわけでありますけれども、労働組合その他法律に基いてできております団体は、やはり民主主義がルールであります限りは、やはり決定に反対してもきまつた線については拘束力を受ける、任意の拘束ではないわけなんです。法的な拘束力を受けるわけであります。これは労働組合を例にとりましたが、国会も同じであろうと思うのです。国の政治も同じことだろうと思うのです。従つて決定に対して反対した者も、きまつた線には拘束される、法的に拘束されるわけなんです。そのときに反射した者も関与したうちに入るかどうか、この点をお聞きしているので、今の犯罪の共謀とはちよつと例示が違うと思います。
  159. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) ここで問題になりました暴力主義的な破壊活動は、御承知のように極めて悪質、重大な行為を基礎といたしまして、これに対するこの教唆、扇動、予備、陰謀等の行為を補正いたしているのであります。かような行為につきましては、一般の団体活動とはおのずから意味が異なると考えている次第であります。
  160. 中村正雄

    ○中村正雄君 私はその第三条の解釈を聞いているわけではありませんので、勿論表向きから申しますると、第三条に挙げている行為は一応重大な社会悪として考えられる行為でありましよう。勿論第三条の一号のイなんかは、誰しも考えるわけなんですけれども、二号に入つてヌのそれを、教唆、扇動等これは一般の経済運動政治運動という限界が非常にむずかしい場合があり得るわけなんです。従つていわゆるこれは重大な犯罪だという一言に規定しきれないものも相当含んでいるわけでありまして、従つて現実の労働運動とすれば、やはりこの限界点すれすれの決定も、たびたびなされると思うわけであります。そういう場合を考えて、決定に反対した者も関与したというなかに入るかどうかということをお聞きしているわけなんで、そういう社会悪とかなんとかいうことは考えずに反対しておつても、やはりその団体構成員であれば関与したものだと、委員会構成員であれば関与したものと見るとか、或いは反対したものであればこれには関与したものと見られないとか、イエスかノーかの答弁を聞きさえすればいいわけです。
  161. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この条文の趣旨は申すまでもなく危険性を排除しようという一点に尽きているわけでありますから、この危険な行動の方向に向つて積極的に関与したということで、その反対の側に立つた人というのは私は入らないと思います。その点はこの本文のほうに戻りまして「おそれを除去するために必要且つ相当な限度をこえてはならない。」、その点から言つても当然なことだと考えております。
  162. 中村正雄

    ○中村正雄君 間違いないですか。
  163. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私はそう思います。
  164. 中村正雄

    ○中村正雄君 私が言うのは意見長官として。
  165. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 勿論、そうです。
  166. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) なお念を押しまして私からもお答えしますが、意見長官の御意見と同じであります。「必要且つ相当の限度」において規制しなければならんという立場からすれば、抽象的な理論は別としまして、反対した人まで活動を禁止するという処分はあり得ないと考えております。
  167. 中村正雄

    ○中村正雄君 その点につきましては御解釈が一致したものとして了解いたしておきます。  次に同じくこの第四条でありますが、二項のほうに「構成員として」という字句を使つておりますが、仮にこの構成員が個人として個々メンバーがその団体の名称を使わずにいろいろ行為をすることがあるわけなんですが、この場合は一応団体行為として見られるかどうか。
  168. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 入らないと考えております。
  169. 中村正雄

    ○中村正雄君 それからこれも相当各委員からお聞きになつておるかもわかりませんが、本条によりましての行政処分と、それからもう一つ破壊活動の刑事裁判の結果とが矛盾した場合、その行政処分はどうなります。
  170. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これも先に法務委員会でたしか伊藤委員からお尋ねのあつた点で、詳しい御答弁は保留してあつたと存じますけれども、一般の考え方を一応申上げますと、こういう場面は御承知の営業取締関係の法律あたりにもたくさんございます。例えば営業者がその法律違反の行為があつた場合には営業の許可を取消すとか停止をするとかいうようなことであります。而もその違反行為が別途犯罪事件として問われるという問題があるわけであります。一般論として考えますというと、これらの処分は一方は刑事司法処分であり、一方は行政措置でございますからして、理論上これは別々のことと考えざるを得ない。従いまして必ずしもその犯罪事件の結論と行政処分の結論とが観念上としては一致するか一致しないか、結論は直ちには出て来ないわけであります。而してこの場面におきましては、先ほども申上げましたように、この行政処分の手続といたしましても、細かい真相を如何にして把握するかという点についての手続を重ねておりますから、その点について食い違いはないと思います。けれども理論上はそういうことになるだろうと思います。
  171. 中村正雄

    ○中村正雄君 じや只今のこの今私が申上げました質問の要旨につきましては、いろいろむずかしい問題も起つて答弁を留保されておるけれども、この上に質問して行つてもいいのですか。留保されておるのであれば別な機会にあとで御答弁願うとしてやめたほうがいいのですか、どちらがいいのですか。
  172. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) いろいろ関連する点もございますので。
  173. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 大分多岐多端に亙るようですからあとで。
  174. 中村正雄

    ○中村正雄君 じやずつと飛びまして、第七条についてちよつとお尋ねしたいと思います。第七条で「当該団体役職員又は構成員であつた者」と書いてありますが、これは暴力主義的破壊活動が行われ、処分の効力が生じた間の役職員又は構成員であつた者をいう意味ですか。
  175. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御質問通りであります。
  176. 中村正雄

    ○中村正雄君 それから本条にも団体のためにする行為という言葉を使つてありますが、それと第四条第一項第三号の「団体のためにする行為」ということは同じ意味でありますか、如何ですか。
  177. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御質問通りであります。
  178. 中村正雄

    ○中村正雄君 じや次に第九条についてお尋ねしますが、第九条の二項に「団体」という言葉を使つておりますが、これには法人を含むのですか、含まないのですか。
  179. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) これは広く一般にすべての団体について規定しております。
  180. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、一項は法人だけを規定し、第二項は法人以外の団体ではなくして、法人も含んだ団体と、こういうように解釈するわけですか。
  181. 關之

    政府委員關之君) この第九条におきましては、仮に法人がこの団体規制対象になり得る場合があるかも知れない、こういうふうな考え方もあるわけであります。そういたしますと、そういたした場合に第六条の処分が確定したという場合には、その法人は解散するというふうに規定しているわけであります。第二項におきましてはそれでそのときでは、確定する前までは財産整理については特段な規定は置かないのであります。それで、さように確定いたしまして、二項において確定したときは当該団体は速かに財産を整理するということになりまするから、一項と二項との解釈上、次の当該団体の中にはいわゆる清算的な法人はこの当該団体の中へ入るかと思いますが、清算前の法人は二項の中には入らないものと解釈いたすのであります。
  182. 中村正雄

    ○中村正雄君 そうしますと、第一項のほうは政府解散するまでを規定をし、解散前、いわゆる清算中の法人は第二項の中には当然含まれておる。従つて第三項に関する届出につきましては法人であつたものも、法人でなかつたものも同じように適用を受ける。こういうふうに解釈するのでありますか。
  183. 關之

    政府委員關之君) 御質問通りであります。
  184. 中村正雄

    ○中村正雄君 もう時間がありませんので、あと相当質問したい点もあるわけなんですが、最後に一つだけ公安審査委員会のほうにつきましてお聞きしたいのですが、審査委員会で最後の決定をする、こうなつておりますが、現在法務府でお考えになつておりまするこの審査委員会の事務局の人員はどの程度の人員をお考えになつておるのでありますか。
  185. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この点は衆議院で修正がありまして、公安調査庁設置法の附則の四項に十人ということに相成りました。
  186. 中村正雄

    ○中村正雄君 事務局は大体十名と、こうなつておるわけなんですが、委員の権限は必要な調査ができると、こうなつておりまするが、実際上十人くらいの人員で必要な調査ができるとは考えられないが、必要な調査ができると書いてあるのは一応表面だけであつて、実際審査委員会のやり得るのは調査庁の出しました書類に従う書面審理以外はできないのじやないか。それで公正な審査ができるかということに非常に危惧の念を抱くわけなんですが、そういう点につきましてはどういうふうにお考えになりますか。
  187. 關之

    政府委員關之君) この法案の立て方といたしましては、団体規制の措置はこれは行政の処分である、こういうふうに考えておるのであります。そうしてそれにつきましては公安調査庁長官が先ず全責任を以て一切の証拠資料を収集するということに考えておるのであります。そうしてそれを委員会に提出する、そうしてその審査を待つということになるわけであります。そこで委員会におきましては先ほど申上げました十人のほかに委員が五人、委員補佐が三人おるわけであります。この委員補佐は三人ではありまするが、十一分かような法律事務乃至は審査事務の適格者を得まして、そうしてそれらのかたがたにこれらの提出された各種の書類の審査と、そうしてその審査のために必要な取調をいたしてもらうことになる建前であります。かようなことにいたしますならば十分に委員会におきまして事実の実態につきましての認識、心証の形成に十分なるところの途が講ぜられるものと考えておる次第であります。
  188. 中村正雄

    ○中村正雄君 勿論委員委員補佐もおるわけでありますが、これは御承知の非常勤になつておるわけなんでありますね。従つて実際の事務をなし得るとは私は想像できないのであります。従つて私は人を殖やせという意味を言うわけではありませんが、たびたびこの委員会においてすべて調査庁の調査とは別に独立な権限を以て慎重に審査をするということであらゆる不安が除去されるというふうにあらゆる機会に御説明になつておるわけでありますが、実際委員会においてやり得る審査というものは、今申上げましたように、人の面から言つても、その他の機構の面から言いましても、やはり調査庁の出しましたものを鵜呑みにずる傾向しか一応機構の上では見受けられない。これは非常に心配する点であります。この点につきましては意見に亙りますので省略いたします。  私のお約束しました時間も参りましたのでこの辺で打切りまして、なお法務委員会で御審議のときにおきましては委員長としても発言し得る機会がありますので、別な機会に質問することにして一応これで打切ります。
  189. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 只今質問の点は、前に伊藤委員から公安審査委員会の審査のための必要な取調の範囲如何という御質問が出まして、後日詳細にお答えしたいということになつております。一応ここでは衆議院におきましてさような取調を必要とするについて十人の定員を割きましてここに修正されたような状況になつておるのであります。後日更に詳細に御答弁いたしたいと思います。
  190. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは次に堀君、御発言を願います。
  191. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 昨日の質問に続きまして私は法案内容について二、三の点を質問申上げたいと思います。但し今まで連合委員会なり法務委員会なりにおきまして、殆んど各条に亙つて詳細に質疑が行われたことと思いますので、私は極く大ざつぱなところで御質問いたしたいと思うのであります。この破壊活動防止法案は、各委員からも指摘されておりますように、非常にあいまいであり、不明確である。曾つての治安維持法と殆んど変らんものである。治安維持法が世界の刑事法の中で稀に見る悪法だという批判を受けておつたのでありますが、破壊活動防止法案はそれにも増して悪法ではないか。刑事法上のこれ以上の悪法は殆んど世界には見ることができないのではないかと考えられるのであります。これから御質問いたしますのは、先ず最初に破壊活動の定義の問題であります。詳細に亙りましては、目頭に述べましたように、私は各条項のそれぞれについて質問するわけではありませんが、併しながら非常にあいまいであり、不明確であるということはどうしてもこれを打消すことはできないだろうと思う。教唆や扇動の問題は只今中村君からも質問され、又昨日もそれぞれの委員から質問されておりますので、私はこの問題はここに省きます。併し例えば第三条の第一項、第一号のロのはうの後段の所でございます。「実現を容易ならしめるため」云々と、「この号イに規定する行為の実現を容易ならしめるため」云々、こういう法文が書いてあるのであります。この「実現を容易ならしめるため」という言葉の意味は必ずしも明確ではないのであります。その限界も極めて明確を欠いているのではなかろうかという工合に考えられまするので、この一点を先ずお尋ねをいたしたいと思います。
  192. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。「実現を容易ならしめるため」とは、主観的な要件規定したのでございますが、現実に日本において内乱等が行われ、或いは行うことを容易ならしめるという主観的な要件がなければならない、かような意味で規定した次第でございます。
  193. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 主観的な意図をここに現わされたと申しますが、併しイの号に規定するような行為の実現を容易ならしめるためというのは、それに対して例えば教唆、扇動するとか、或いは図書を印刷し、頒布し云々と掲げられておる行為が、その行為者の主観的な意図においてその行為の実現を容易ならしめることが必要であると同時に、若し法文の明確性をここで保つとするならば、その実現が客観的にも容易ならしめられるという契機がそこに存在しなければ、私は犯罪としては確定することができないのではないかと思いますが、その点に関して御説明をお願いしたいと思います。
  194. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 只今申しました主観的な要件は、これはやはり証拠によつて認定されなければならない問題であると考えておるのであります。かような意図を以ちまして、内乱が日本において実際に行われたり、或いは行うことの正しいこと、或いは必要なことを主張した文書を印刷するという建前でありますから、主観的要件と客観的要件とを併せて十分に厳格な絞りがかけられているものと考えております。
  195. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうしまするというと、その正当性や必要性を主張した文書、図書を印刷、頒布云々することが証拠として客観的に認められる、こういうことに相成るかと思うのでありまするが、この場合に例えばフランス革命の正当性、アメリカの独立の正当性、必要性というようなものを強調し、それが現在の社会にとつてやはり一つの変革の何らかの示唆になるというような場合も考えられると思うのであります。そういう場合についてはどのように御解釈になつているのか、御説明願いたいと思います。
  196. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 私どもが過去の歴史外国の事例を十分に研究しなければならないことは御質問通りであります。ここでは外国革命を或いは内乱を引用いたしまして、そういうような手段方法を以て、日本においても現実にさような内乱が行われたり、行うことの必要性、必要なことや正当なことを主張せられた場合でなければ該当しないものと考えております。
  197. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 この定義が極めてあいまいであり、不明確であるということを先に申したのでありまするが、外国の立法例について見ましても、このようなあいまい、不明確な規定を持つたものは私はないと思うのであります。例えば一九四〇年のスミス法でありますが、スミス法の第二条には、はつきりとそのスミス法によつて、スミス法を適用せらるべきところの破壊活動といものについての明確な規定が行われているのであります。そのほかの法文を見ますと、私は法律の専門家ではありませんので、外国の立法例については余り詳しく知らんのでありますが、特審局から私ども頂いておりまするところのこの資料によつてつて見ましても、ほかの外国の立法例は、スミス法などにおきましては、大体において共産主義或いは共産党の取締法乃至は共産党の非合法化のための法律になつております。そのほうは別としまして、スミス法についてだけ見ましても、極めて明確に破壊活動内容規定されておると思うのでありますが、これと比較しまするというと、この第三条の破壊活動の定義というものは極めてあいまいであり、不明確ではないかという印象を私どもは受けるわけであります。その意味から申しまして、この破壊活動防止法の適用の対象となるべきものが極めて広汎なる範囲に亙るということになり、立法者の意図とは違つた方向に濫用される危険もそこから生じて来るのではないかというふうに考えるのでありますが、その点についてはどのようにお考えでありましようか。
  198. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) スミス法の例が出たのでありますが、スミス法におきましては、御承知通り合衆国又は合衆国政府又は州等の政府に対しまして、暴力又は政府職員の暗殺によりまして、これを顛覆破壊する義務、必要、願望、妥当性というようなものを悪意若しくは故意に唱導、教唆、勧告、教導というような非常に広い打ち出しをしておるのであります。唱導とは、打ち出して広く拡めるというような行為の態様でございます。教導とはこれは相手方に教示、共鳴、同意を求めるような方法を以てこれを説くというような打ち出しになつておるのであります。極めて広い書き方になつております。印刷物につきましても義務、必要、願望、妥当性、唱導若しくは勧告、若しくは教導することを内容とする文書、印刷物の出版、編集、発行、廻覧、販売、頒布、若しくは公示したもの、その未遂というようなまあ打ち出し方をしておるわけであります。なお諸外国の例につきましては、後日なお詳細に申上げたいと思いますが、この法案におきましては、非常にこの第三条第一項、一のロ、ハ、特にハは絞つて……非常にスミス法などに比べまして絞つて規定したのでございます。
  199. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 次に破壊活動規制の問題についてお尋ねいたしたいと思います。第四条の第一項に「当該団体が継続又は反覆して将来さらに団体活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときは」、こういう規定がしてあります。この「明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときは」、この言葉の意義と、それからそれを認定する場合の基準、そういうものが相当問題になると思うのでありまするが、この点についてお尋ねいたしたいと思います。
  200. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。ここに「明らかなおそれ」とは、明白な危険性という、明白な危険という意味でございます。明白な危険とは、これを社会通念に照しましても合理的にその危険ありと判断されるものでなければならない。で、「認めるに足りる十分な理由」とは、一口に申しますると、証拠によつて証明されなければならない。そういうことが証拠によつて証明されなければならないというふうに考えているわけであります。
  201. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 明白な危険というお言葉でこの「明らかなおそれ」というのを説明されたのでありまするが、併しそれを認定するには、明白な証拠によつてこれを証明しなければならん、こういうことで、非常に何かそれだけお話を伺つておりますというとはつきりするように思われるのでありますが、併し実際問題としては、この「明らかなおそれがあると認める」、このことが非常に問題になる。恐らくはいろいろの団体がこの法案に反対しているのも、一つ理由はここにあるだろうと思います。これを認定する認定書が一行政機関であり、その行政機関の認定には勿論行政訴訟の救済の途もありましようし、或いはその他の救済の途もありましようが、一旦こうと認定されてからは、それを覆すこともなかなか容易ではないという事実を我々は過去の歴史において体験して来ている。そのためにこれに対して危惧の念を持つておるわけなんです。御説明によりますと、明白な危険だということの認定でありまするが、この危険の程度であります。これが相当問題になると思うのでありまして、これを具体的にもう少しお話を願いたいと思います。
  202. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この法案におきまして、御承知通り公安調査庁におきましては、調査によつて収集した証拠資料並びにこれによつて認定されるべき事実につきましては、当該団体の代表のかたがたをお招きして、立会人を立てまして、これを公開する。一口に申しますと、手のうちを見せるのであります。そしていろいろこれについて意見弁解をお聞きし、更に反対ならば有利な証拠の御提出も願うであろう、新聞記者のかたも勿論お立会いになりますことでありまして、世論の御批判も受けるわけであります。更にこれを委員会に持込みまして、御承知通り公安審査委員会で御検討を願うわけであります。かような建前になつておりますので、これが行過があるというようなことは万なかろうと考えておる次第でございます。で、「明らかなおそれ」があると認められる場合は、そう滅多やたらにあるものではなかろうとも考えております。
  203. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 重ねてお尋ねいたしますが、将来暴力的な活動を行うだろうという「明らかなおそれ」というと、結局そういう可能性があるという場合もここに含まれるので、可能性の場合が主としてここでは問題になるのじやないかと思う。その可能性を認定する場合に、今おつしやつた新聞記者も入るとか、公開して云々するとかいうことも勿論それを真に決定する場合には必要だと思いますが、それは別といたしまして、それを認定する際に、可能性について大きな問題があるということを実は申上げているわけなんであります。それも真に決定されてどうなるとかこうなるとかいうことよりも、その事前において、可能性だけで以てそれがいろいろの処分を受ける、証拠として処分を受けることの要因になるということになりまするというと、実際問題としてはなかなかかそれの認定も困難であろうし、又それを認定するものの考え一つでは、どういう事態についてもそういう可能性があるということを認定することができることになりますから、そういう点について私どもは心配している。それでも少しこれを具体的にお話を願いたいと思います。
  204. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。御疑問は御尤もと思うのであります。それで先ほどお答えいたしました明白なる危険というその危険は、勿論お言葉通り、将来さような危険な活動をなすところの可能性という問題に相成るかと思うのであります。結局そういう可能性が十分に認められるということになりまして、この規制対象となるのであります。そこでこの認定の問題は、もとより極めて重大な問題でありまするから、この法案におきましては、団体活動として過去において暴力主義的な破壊活動を行なつた、過去において、とにかく一回だけは規制の問題にはならないわけであります。今回、そういう破壊活動を行なつ団体がここにあります、その団体がその過去に行なつ暴力主義的な破壊活動に、継続若しくは反覆して将来団体活動として暴力主義的な破壊活動をなす、こういうふうな絞り方をしているわけであります。そこで、とにかく過去に一回さようなことをしたということに継続又は反覆という橋で以て結びまして、そこの関係におきまして、その将来の危険の可能性ということも十分にこの四条の規定自体から見まして……、全然過去に何もなかつたものを将来の可能性でやるというようなことになりますと、非常に認定上無理なことができるかと思うのでありますが、少なくとも過去においてかようなことをやつてるのであります。やつたものに対しまして継続又は反覆という橋渡しで、将来の可能性を一応法律上認定する条件としているわけであります。そうしてこの可能性は、もとよりこれは現行の立法例におきましては、例えば少年法であるとか、或いは消防法であるとか、或いは精神衛生法であるとか、各種の法案におきまして、やはり将来の危険、将来の可能性というものを前提といたしまして各種の行政措置をとつているのであります。従いまして、それらの立法例を通じて見ましても、その可能性の認定ということは、現行法的にもすでに認められている制度であり、私どもももとよりその現実におきまして各種の事情を総合包括いたしまするならば、可能性の認定、而も第四条にそういうように、行う明らかな可能性というものの認定は可能であろうと考えているわけであります。
  205. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 例えば或る団体が再軍備反対という決議をした、この決議はその団体の正当なる手続によつて行われた。ところでその団体の決議を、例えば何人かの闘争委員であるというものを選びまして実現したという場合が起つて来ると思います。その実現する過程におきまして、この破壊活動防止法案でいうところの破壊活動がたまたま偶然に行われたということがあると思うのです。ところで、その団体です、そういうことを曾つてつた。将来も反覆してやるだろうということが認定される場合が考えられると思うのです。次の大会においてやはり再軍備反対ということを決議した。そして一応闘争委員にその実行を委託したという場合が起ると思うのです。併し最初のときも、それから次のときにも、恐らく破壊活動を行うということは、その団体は勿論でありますが、又闘争委員も必ずしも考えておらなかつたかも知れない。併しながら、勢いの赴くところ、ついたまたまそういうような破壊活動を行なつた。二回目にも同じような決議をやつたという場合がよく見られるのであります。そういう場合には当然可能性あるものとして、この法律によつて規制されるという問題が起つて来ると思うのですが、その点はどうですか。
  206. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御質問のような場合は、根本が崩れておりまして、団体活動として、暴力主義的な破壊活動が行われておりませんので、初めからかからないと考えております。
  207. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 そうすると、今の場合は何ですね、たまたま再軍備反対の闘争のために行われた破壊活動というものは、これは破壊活動防止法の対象にはならん。従つて又第二回目に再軍備反対の決議をしても、それはいわゆるここにいう可能性の中に入らん、こういう意味ですか。
  208. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) さようであります。
  209. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それから団体規制であります。団体規制として、解散、或いはその他の制限をこの法律では認めておるのでありまするが、これも外国の法制を見まするというと、大体私は余り知識がないのでわからんのですが、ないように思うのであります。スミス法ではたしか団体解散することは規定しておるようであります。併しそれは司法裁判所がこれでやることになつております。その他の法律におきましては、これは特審局から頂いた私はこの資料だけを見ておりますので、ほかの資料は知りませんが、例えばマツカラン法によりましては、ただ或る団体が共産主義団体に該当するかどうかということを認定することだけが審査委員会に認められておるわけでありまして、そのマツカラン法によつてその団体が共産主義団体である、それに該当するというために、解散するというようなことはないように思われるのであります。    〔委員長退席、法務委員理事伊藤修君委員長席に着く〕 勿論その他の共産主義団体乃至は共産党を非合法化する法案におきましては、それは勿論その名称の通り共産党を弾圧するわけでありますから、非合法化するということは当然であります。ところがこの破壊活動防止法案においては、団体その他団体活動規制に関する制限がこの第四条乃至第六条によつて行われる、こういうことになつております。非常にこの点も、世界の刑事法上稀に見るような悪法ではないかという印象を私どもは受けるわけであります。そういう点についての御説明をお願いいたしたいと思います。
  210. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) お答えいたします。スミス法では結社犯を禁圧しております。いやしくもさような内乱を目的とする結社を組織し、或いは指導し、或いはこれに情を知つて加入した者は一切犯罪とされておるわけであります。これに附加えまして、マツカラン法ができたのであります。マツカラン法は成るほど解散自体規定しておりません。共産主義行動団体、共産主義戦線団体と認定せられました場合におきましては、御承知通り法文にもあります通り、非常に多面的な制限がその団体活動に加えられて参りまして、手も足も出ないぐらいにまあ絞られて来るというような建前になつておるのであります。私どもといたしましては、その他いろいろな諸外国の立法もございましようが、やはり日本国憲法の下におきまして、今日最も封建的なラインにおきましても、最も危険悪質な団体について必要な最小限度の行政上の規制をかける、具体的な団体を捕えて規制をかけて行くというような立て方をしてこの法案立案したものでございます。
  211. 關之

    政府委員關之君) なお説明を補足して申上げたいのでありまするが、差上げました資料の中で、行政処分によつて破壊的団体解散をいたしておりまするのは、南アフリカの法案におきましては、共産党を非合法として指定し、それからなおそのほかに、当局はその認定によりましてその解散を指定し得るというようなことに相成つているわけであります。そうしまして、これは外国の例でありまするが、そのほかなおオーストラリアの、これは今日そのような一応の立法例はあるわけであります。なお国内的な問題といたしまするならば、各種の法人などの法令におきまして、行政上の処分によりまして、法人を強制的に解散するということが現行法に日本の法令としてあるのであります。
  212. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私がお尋ねしたのは、オーストラリアの共産党解散法とか、南アフリカ連邦の共産主義抑圧であるというような、共産主義団体解散したり抑圧した法律においては、そういうような解散とか何とかいうような規制があると思うのです。併しほかの法制を見ましても、一般的の破壊活動を行なつたということのためにその団体解散するという法制は、スミス法を除いてはないのではないか。マツカラン法においては、おつしやる通りに、団体を相当束縛する結果になると思います。併し日本の場合は、その団体規制法によつて規制される団体の範囲というものは非常に広くなつております。単に共産主義団体とは限らんわけであります。政府の説明によりまするというと、極右の団体についても適用される、こういうお話であります。私どもの見解から申しまするというと、あらゆる団体がこの中に含まれるのじやないか。現に第三条の第二項で、「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」云々とありまするが、一切の団体がこの中に含まれて来ると思うのです。従つて日本の場合は外国の法制に比べて非常に幅が広くなつている。そこを私はお尋ねをいたしておるわけなんです。その点について、じやもう一度御説明を願いたい。
  213. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この法案の立て方は、御質問通り団体一般を第三条第二項で規定しておりますが、これは団体共同の立場に立ちましてさような規定を設けたのであります。而も第三条におきましては、第一項に、その行為行為を基礎として規制するという建前を堅持いたしまして、極めて悪質な行為を基本として規定しておるのであります。かような行為をなす場合に、行政上の規制がかけられるのでありますから、現実の問題といたしましても、法案の適用の問題といたしましても、広く一般の団体がこの法案規制を受けるというようなことはおよそ考えられないかと考えておかます。
  214. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 次に公傷調査庁の設置及び権限についてお尋ねいたしたいと思います。恐らくこの設置や権限については、ほかの委員からも質問が出たと思いますけれども、私まだ議事録も拝見しておりませんので、或いは重なることになるかとも思いますが、お許しを頂きましてお尋ねいたしたいと思います。先ず第一に、この厖大な組織であります。中央地方を通じましてどのくらいの人員がこの公安調査庁の組織の中に盛られるのか。職員の数はどのくらいか。そしてその職員をどのような形において採用されるのか。この点をお尋ねいたしたいと思います。
  215. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) これは附則の第四項に書いてあります通り、公安調査庁の職員は千七百二名となつておるのであります。現在私どもは約千二百名に近い職員を用意しておるわけであります。これに約五百各程度の増員をお願いしたい、かように考えておるわけであります。で、成るほど公安調査庁、或いはその下部組織は名称が非常に、関東公安調査局と言い、それから神奈川地方公安調査局といういかめしい名称だと思つておりますが、人数は絞れるだけ絞りまして、機構の無制限な状態は防いでいるつもりでございます。
  216. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 千二百名というのは、これは特審局がそのまま移動するわけでありますか。
  217. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この法案の、只今申上げた附則第六項には、「この法律の施行の際、法務特別審査局に勤務する職員は、特別の辞令が発せられない限り、そのまま公安調査庁の職員となるものとする。」というふうに謳つておりますので、原則といたしましては公安調査庁に吸収される建前になります。併し幹部の任命とか、或いは公安調査官の指定というものにつきましては厳重な選衡の上に行われるものと考えております。
  218. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 その増員される五百名というのはどういう基準で以て増員されるか。つまりどういう資格、或いはどういうような任用の仕方ですね、採用の仕方で以てこれは増員されるが、それも併せて承わつておきたいと思います。
  219. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) これは一般公務員の任用と同様であります。その待遇につきましては、目下法務総裁におかれましてでき得る限り十分な待遇をしたいというふうに御努力されておるのであります。実際の問題といたしましては、公安調査庁の職員につきましては、採用希望者につきまして身元調査します。いろいろな事情も詳細に調査しまして公正に職務を行い得る人と認められた場合にこれを採用するわけでありますが、その任用につきましては非常に慎重な態度をとつて行きたいと考えております。
  220. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 午前中のどなたかの御質問に答えられた特審局長は、内部に監察制度を設ける、そうして職権濫用のないようにするというお話があつたのでありますが、この監察制度に関する規定も、この公安調査庁設置法案の中に出ておるのでございますか。
  221. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの点は出ていないのであります。それは内部の規律といたしまして長官が制定することに相成るかと思うのであります。
  222. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 補足して申上げますが、公安調査庁の設置法案第七条の七号に「行政の考査及び監察を行うこと。」というふうに謳いまして、その頭は出しております。実際上は厳格に職員を任命いたしましてこれは実行させるつもりであります。
  223. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 又外国の法制を申上げますが、特別にこういうような機関を設けている事例が外国の場合には私はないように思うのでございますが、スミス法でもマツカラン法でも、その他の特審局から頂いた参考のものを見ましても、団体規制するための調査その他のために必要な機関を設けているということは一つも見当らんのでありますが、外国にこういうような機関を設けている所があるんでございますか、その点をお答え願いたいと思います。
  224. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 外国の例は実は余り調べておらんのでありますが、これはソ連等におきましては、もう少し強大な機関が、内務省以上でございますがあるものと考えております。又その国々におきましていろいろ立て方が違うので一概には申上げられませんが、かような調査事務はアメリカにおいてもFBIがその一端として行なりております。
  225. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私はソ連の刑法や、或いはその他をお尋ねしておるのではないので、むしろあなたがたの言う自由主義諸国のそういう事例をお尋ねしておるのでありまして、例えばアメリカではこのマツカラン法によりますと、法務長官が部下に命じて調査をせしめるということになつておりまして、つまり法務府の役人、検察庁その他が団体の調査等を行なつておるのであります。日本の場合においては、公安調査庁という特別な機関を設けて、そうして千七百名の職員を擁してこれを行う、絞つて千七百名にしたというお話でありますが、私は現在の日本の行政機構からいつて、この公安調査庁の役人の数というものは非常に多過ぎはしないか。第一公安調査庁そのものが必要なのかどうかということすら私は考えておるのでありまして、従つてその点について率直なところの御意見を伺つておきたいと思います。
  226. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) アメリカの例が出ましたが、マツカラン法の運用のための行政上の調査はFBIで行う建前になつております。で、検察庁は行なつておりません。公安調査庁の設置は必要かどうかという御質問でございますが、少くともかような規制処分をするにつきましては、できる限り的確な証拠を収集して過なきを期したい、これを現在の検察庁検事が本来の検察事務を行うかたわら行うというようなことは妥当ではない、一面におきましては検察になじまん仕事をお願いすると同時に、権限の集中から言つても妥当ではないというふうに考えておりまして、必要最小限度の職員を定員として御審理を仰いでおる次第でございます。
  227. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 次に公安審査委員会のことについてお尋ねいたしたいと思いますが、この破壊活動防止法案によりますというと、公安審査委員会は公安調査庁の長官の提出した文書に基いて審査決定する、こういうことになつておりまして、直接聴聞の権限がないように思われるのでありますが、併しながら審査の公正、決定の公正を期するためにはどうしても直接聴聞の必要があるのではないかと考えられるのであります。先ほど中村君の質問に対しまして、その点について若干触れておつたようでありますが、私この法案を見まして、どうしてもやはり直接聴聞の権限を公安審査委員会に与えるのでなければ、公正な判断はできないという工合に考えられるのでありますが、何故に直接聴聞の権限を認めなかつたのでありますか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  228. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 先ほども申しましたこの二十一条の審査のため必要な取調の範囲につきましては、伊藤委員の御質問もありまして、後日詳細に御答弁する予定になつておるのであります。公安審査委員会は、必要な場合におきましては呼び出して調べることができるということはこの中に当然含まるものと解釈しております。で、その点の内容、範囲につきましては後日改めて御答弁いたしたい、かように考えております。
  229. 伊藤修

    委員長代理(伊藤修君) ではこの際菊川君の残余の三十分の質問時間がありますから、この際菊川君の発言を許します。……菊川君ちよつと待つて下さい。この際昨日の堀さんの質問についての検務局長の御報告をお願いいたします。
  230. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 昨日堀さんからメーデー事件関連しまして不法に逮捕した疑があるという御質問でございましたが、私のほうでも早速地検のほうに問合わせました結果、大体次のようなことが判明いたしました。事件は、水上警察署におきまして或る巡査がメーデー事件の騒擾に参加したという聞き込みを持つて参りまして、その被疑者であるところの工業技術庁電気試験所芝橋分室、ここの労組員について逮捕状を出す手続をした、かようなことでございます。逮捕状が出るに至りました事情は、その聞き込につきまして具体的に、同じ電気試験所の技術員であります高木という者に調べて当つて見ましたところが、同人の口から相田某、小牧某、松本某、上武某、土井某等の者たちが、メーデーの翌日所内において、広場の乱闘の模様をお互いに話合つてつたという供述を得まして、その調書を作つたのでございます。そうしてこの調書及び報告書を疏明資料といたしまして、東京地方裁判所に対して五月十日逮捕状を請求し、一日遅れてもう一人出ておりますが、逮捕状を得て執行した、かようなことに相成つております。私どもといたしましては、若しそれが何ら根拠のない逮捕状の発行であれば、これは由々しき大事であるというので、地検にも厳重な取調を依頼したのでございますが、幸いにしてと言いますか、根拠なしじやなくて、今の調書が基本になつておるようでございます。なお検事も早速水上署に取調べに参りまして、この被疑者たちに当りました結果、全然関係のない者もあるというので、堀さんからお尋ね通り、即日或いは翌日これを釈放したような次第でございます。拘留者は結局出ませんでございました。さような事情でございました。御了承願います。
  231. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 昨日に引続きまして特審局長並びに次長に一つお尋ねしたいと思いますが、今日は具体的な例を挙げまして、これに対してこういう場合はどうかということについてお尋ねしたいと思いますが、昭和二十四年だつたのでありますが、定員法に関連しまして我々も丁度関与しておつたのでありますが、国鉄の労働組合におきまして、熱海で中央委員会を開きまして、そこで最悪の場合にはストライキもやるという決定をしたのでありますが、その決定は実は公共企業体労働関係法で、業務の正常な運営を阻害してはいかん、それを煽つたり唆かしてはいかんというので、これに違反するというので、衆議院の特別考査委員会にも我我召喚されまして、当時の事情を調べられたのであります。その際に一応どこで引つかげて見ようかということを相当考査委員会で考えられたようでありますが、そのときに刑法百二十五条の汽車、電車等の往来危険、これで引つかけよう、引つかけるといつては語弊があるが、これによつて調べよう、こういう態度に出られたのであります。その当時は予備、陰謀、教唆又は扇動というものがなかつたために、遂にこれは実際の行為にはならなかつたために、問題にならずに、ただ特別考査委員会で調べただけで、司法権の発動とはならなかつたのであります。ところがこの法案が通過いたすということになりますると、ああいう行為が、即ちこの「ヌ」によつてやはり該当することになるのでございましようか。この点について一つ例を挙げて御質問申上げます。
  232. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) お答えいたします。刑法百二十五条は特殊の構成要件を持つておりまするが、それがストライキとして正当な、正常なる活動としてやられた場合におきましてはこれに入らん場合もあり得るわけであります。ただ国鉄につきましては、御承知通りスト禁止のあれがございますので、国鉄に関する限りはその正当性が排除される、かようなことに相成ります。
  233. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 ところがこの公共企業体労働関係法の趣旨をよく読んで見ますると、やつたり煽つたりしてはならないというようにとめてございますけれども、決してそれに対して刑罰をかけるという趣旨は一切ないのでございます。これに違反した者は馘首されるというだけの規定がございますから、刑罰規定というものは伴つておらないのであります。従いましてこれは暴力行為を仮にやつたとしましても、今あなたが法務府でお考えになつておるような暴力主義的破壊活動には私は該当するとはどうしても考えられないのであります。現在の場合に禁じられております。禁じられておつても、普通禁じた行為に対しては多少の過料なり或いは懲役、罰金というものが、軽くてもかかるのでありまして、何らかの刑罰規定がある。この国鉄の争議行為に関しては禁じておる。併しこの違法行為に対しては馘首にされるだけで、本当の行政的処分と言いますか、その程度はありますけれども、司法処分というものは一切ないのだ。従つてこれは暴力主義的破壊活動とは私は言い得ないと思うのでありますが、そういうふうに解釈していいかどうか。こういうふうにこの刑法百二十五条でいつて、こういうことに引つかかる虞れはないと思いますが、この点はつきりして頂きたい。将来若しもどういう……今の組合がそういうことをやるというのじやないが、どういう動きで以てそういうことにならんとも限りません。そのときに適用になるかならんかということを、あとになつて困りますからここではつきりして頂きたい。
  234. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 構成要件に該当する問題と、違法性の問題と分けて考えますと、刑法百二十五条におきましては、「鉄道又ハ其標識ヲ損壊シ又ハ其他ノ方法ヲ以テ汽車又ハ電車ノ往来ノ危険ヲ生セシメタル者」、かような構成要件が書いてございます。なお百二十六条には、その加重規定もございます。この規定趣旨は、要するに特殊な方法を用いまして往来の危険を生ぜしめたという場合を予想しておるのでございまして、単に何と言いますか、職場を離れた、単に離れたという結果として、何かの事が起る可能性がありましても、それはこれに当らん場合も出て来るのじやないか。問題になりますのは、例えば不正常運転をいたしまして、進行の途中に停めてあるために、あとから来た電車或いは汽車とぶつつかる危険性を生じた、かような場合もございます。これは労調法の三十六条に、争議行為をやる場合におきましても、安全に、害のないような方法でやれということがある趣旨から考えましても、やはりそのことは一定の限界というものがおのずからあるものだろう、かように考えております。ただそれを国鉄の場合は只今申上げました通り、罰則はございませんが、一応禁じてございますので、これを正当だとは申上げかねるわけであります。従いまして違法性云々の問題になりますと、これは一応法律に禁じてあるからして、そういうことをしてはいかん、禁じてあるからして、これは罰則にたとえかからんでも、好ましくないことである。従いまして、法の認めざると言いますか、予想せざるところである。併しながら実際の問題として、構成要件から外れる場合が相当あるのでございますから、御心配のようなことは起らんだろう、普通の争議においては起らんだろう、かように考えるのでございます。
  235. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、まあ常識上考えまして、社会通念ということを増田さんがよく言うが、社会通念上考えて、正常なる労働組合の争議行為として行うような場合には、決して破壊活動防止法の適用を受けるというような虞れはない、たとえ禁止されてあつても、これは公共企業体労働関係法の趣旨からいつても、労働組合というものはストライキをやるんだ、併しこれは公益に反するから禁じてあるんだ併しこれは何も刑法を以て処罰するような行為ではないんだ、だからしてその行なつた者責任を負つて馘首される程度で以て、処分をされるような程度で置いておこうというこの趣旨から考えて、何も正常な争議行為であつた場合には、決して破壊活動防止法によつて規制を受けるというような虞れはないもの、こういうふうに了解してよろしうございますね。
  236. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その通りでございます。
  237. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、一切これには関係しないということになりましたら、堂々とやつた場合には安心でありますが、さて次にお尋ねしたいのは、先ほども中村君もちよつと尋ねておりましたけれども、四条の一項の一号、二号、三号、これに該当しましてこういう規制を受けるということになりました場合に、この処分を受けた後も反対、賛成が非常に……この前の熱海の我々の中央委員会のときにも、反対、賛成で二日くらい揉みまして、相当激論の末採決をしてきまつたわけでありますが、こういつた労働組合がこれに引かかる虞れがあるかないかというすれすれのときには、非常に組合内部におきましても議論が闘かわされ、十分討議をされまして、最後に決定することになるだろうと思います。労働組合の規約等におきましては、仮に大会なり中央委員会がそういう決定をいたしたとしましても、これに反対である者はこれに対して対抗手段、一旦決定しましたことに対しましても、不服の場合には中央委員会が三分の一以上の連署を以て要求した場合には再び大会を開いて、先の大会決定はいいかどうかということを判定するというふうに、非常にいろいろ民主的な規定ができておるわけであります。反対の者でも、服従はしなければならんけれども、反対の場合にはこれに対抗してその実施の期限までの間に再び大会を招集いたしまして、そうしてあの決定に対してもう一遍再審議しようというような対抗手段を反対の者はとることができるわけであります。ところがこれが第四条によりまして、一旦十分な理由があるということで処分を受けてしまつた場合に、その団体構成員や役員が処分に従わなければならんことになる。仮にそれが反対な結果が出ればいいですが、出るか出ないかわからんが、反対の結果を出すのだといつて再び招集しようとした場合には、その趣旨に反する行為はしてはならないのであるけれども、反対の行為をやるんだ、結果的にはいやいや又認めるというふうな結果にならんとも限らん、僅かな差で以て。動くときには反対にしようと思つても、これは最後は秘密投票によりまして、一票か二票の差で以て前の決定通りに行こうという決定になつてしまうかも知れないと思うのでありますが、そういう場合には公開の集会を禁止することになつてしまいますが、そうすると、三遍目にもう一遍やろうというような行為をやろうと思つてもやれないことになると思うのでありますが、教唆、扇動なんかにかかつて来ると。そういう点につきましては、何回でも、趣旨が飽くまでもこれに違反する虞れがあるからもう一遍やるんだと言つてやる場合には、禁止条項から除外されてやり得るものであるかどうか。それから公開の集会等をやれるかどうか。この点について、非常な特例でございますけれども、我々もそういう具体的な例にぶつつかつた場合がある、労働組合運動をやつてつた際に。従つてこの点についても労働委員としてお尋ねしておきたいと思うのでありますが、何回でも組合の場合にそういうことはあり得るのでございまして、これは何もないことを仮想的に申上げているのじやないので、我我直接ぶつつかつた経験に鑑みましてお尋ねしているのです。
  238. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 大変御尤もな御質問だと思うのであります。一つ集会が開かれまして、多数決で破壊活動をやるというような決定がなされまして、すでに実行されてしまつた、その破壊活動団体活動として。そういうような場合に大変問題になるのであります。
  239. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 実行されない場合に……。
  240. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 実行されなければ問題は……。
  241. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 教唆、扇動はいいかね。
  242. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 教唆にしても、扇動にしても、すでに行為として行われたというような場合で、決議に基いてさような行為が行われたというような場合相当問題になるのであります。その場合に相当数の招集者がありまして、こういうことではいかん、再び大会をやり直して意思決定を更改したいというような動きのあるような場合におきましては、これは慎重に取扱わなければならんと考えております。さような場合、具体的にそういうような事実が公安審査委員会の審理に十分反映されるような場合におきまして、こういう四条第一号のような規制はかけない。積極的にそういう活動を支持したような連中が排除されるというような点にとどまるのではなかろうかと考えております。
  243. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますると、団体規制するというのではなしに、個人ということになつて、今の特審局長お話つたら、我々熱海のことをすぐ思い出すのでありますけれども、その当時では一部の人はとにかく強硬にやろうと言う。そうすると、やろうと言つてそれを強力に推進した人だけがこれに引かかつて団体そのものは引かからつない、こういうことになるのでございますか、その辺がはつきりしないと思う。
  244. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 団体規制すると申します第四条の立て方は、団体の或る一定の活動を禁止するという立て方でありまして、第一号は御承知通り集団示威運動、集団行進、公開の集会というような対外的な活動を取締つておるのであります。第二号は機関誌紙の発行行為を取締つておるのであります。第三号におきましては、特定の役職員又は構成員がその団体活動をやるという点を規制したというような立て方をしておるのであります。これが当時の具体的な案件につきまして最も妥当とする規制処分が必要且つ相当な限度において行われるものと考えております。
  245. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、先ほどの中村君の質問の「関与した特定の役職員又は構成員」ということになりますると、例えばこういう重要決定になりますると皆無記名の秘密投票によつてやりますから、本人がこの投票には反対側に立つたということを立証しこれを申出た場合には、この規制の「当該団体のためにする行為をさせることを禁止する」というところから除外をさせる、それが公安審査委員会において証人等もあつて認められる場合には、その人だけは排除をされる、反対側に廻つてつて更にもう一遍この決定をやり直そうといつて、こういうふうに善意に動く人については、こういう規制は除外されるものである、こういうふうに解釈してよろしうございますか。
  246. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 具体的な事実認定の問題でありますが、御質問通りだと考えております。
  247. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますると、そういう弁明の……例えば決定いたしてしまいました場合には、なかなか調査しようといつたつても、その中央委員会なり或いは中央執行委員会、いずれにいたしましても、誰が白を投じたか、青を投じたかということは、極めてこれはわかりにくいものでありますが、大体においてわかるものであります。票を読んで見ると、長年のちよつとの経験を活かしますと、この票の構成はこういうふうになつてでき上つたものだということは、幾ら秘密投票をやつても大体においてわかるものでありますが、そういうことを立証した場合におきましては、そういうことを公安審査委員会において十分陳述したり、証拠を提出することは争い得るのでありますか、その点についてお聞きしたいと思います。
  248. 關之

    政府委員關之君) お尋ね通り、一切の真実を明らかにする人証、書証というものが提出されて審査の対象になるものとなるのであります。
  249. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 公安審査委員会において審査をされる場合におきましては、当然本人が、そういう訴えをする連中が証人を呼んでもらいたいというようなときに、これはどうも不利である、審査の過程において不利であるからして、一遍証人を呼んではつきりしてもらいたいというようなことを申請した場合には、そういうこともなし得られるのですか。この点について或る程度……
  250. 關之

    政府委員關之君) お尋ねのことは勿論十分にできるわけであります。これはこの法案の立て方は、第十条以下にその点に関する規定が設けられてあるわけであります。すべてさようなことは公安調査庁における審理官が相手方団体の一切の弁解を聞き、一切の有利な証拠の全部を伺つて、そうしてそれを審査委員会に送り込むということになるわけであります。従つてその手続過程におきまして、さようなことは十分にできるというふうに考えられるのであります。
  251. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますと、この規制を免れた者、いわゆる反対、賛成どちらにいたしましても、反対側に立つた連中でこの規制を免がれた者は、その人たちだけで第二号の機関誌紙の発行等につきましては、これは別に名前を変えなくてもどんどん発行できるのでありますか、その点について……。
  252. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) これは団体活動といたしまして、機関詰紙によつて暴力主義的な破壊活動が行われたという事実、更にそれに継続文は反覆して、将来暴力主義的な破壊活動の虞れがあると認められまして、機関誌紙の発行が禁止されたという場合におきましては、もう団体のその機関誌紙は発行できない立場になつております。それ以外の活動はできるわけです。
  253. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますと、仮に我々ならば、労働委員会ですから労働関係のことを特にお尋ねしたいのですが、一旦こういろ六カ月を超えない期間を定めて禁止を受けましたといたしましても、大会等を開きまして、先ほど申上げましたように、前の大会決定で教唆、扇動等に問われて規制を受けたけれども、併し第二回目に開いたときに、幸にして前の大会決定が覆えされた。従つてもうその処分の必要がなくなつて、今度は機関誌紙も違つた方向で以て、今後は組合運動も進めて行くということになつた場合に、これの解除につきましは、この六カ月の間、最高六カ月でありますが、その期間が過ぎるまでは、これは何ともしようがないものであるか。というのは、何々組合の何々新聞というふうにきまつて長い間やつて来ておる。それは六カ月問発行停止になつておるその期間の過ぎるまでは待つているよりしようがないから、その途中においても、大会決定等があつた場合には訴えまして、そうしてこれはそのときは裁判所に訴えて仮処分等を申請する以外に方法はないのか。公安審査委員会へ再び訴えてこれが解除方を申請するというような行き方は保証されておるかどうか、この点について一つ余り細かいことは、特審局長、僕はあなたにいやがらせの質問をするのじやなしに、私たち具体的にやつて来た場合に、あのときにあつたわけなんだ、実際問題としてあつたから、将来、今ある組合はそういうことがあるというのじやないが、又あつたときはそういう状態にならんとも限らないからお尋ねするのであつて、誤解のないようにはつきりと記録に残しておいて頂きたい。
  254. 關之

    政府委員關之君) 御説明の場合におきましては、勿論この規制の基準といたしましては、「そのおそれを除去するために必要且つ相当の限度をこえてはならない。」ということに、これは四条に、法律に定めた要件になるわけであります。従いまして六カ月を四カ月にするか、或いは二カ月にするかということは、この一つ条件をどういうふうに危険性を評価するかという問題になるわけであります。さような点は裁判所に訴えて十分に審査を求めまして、変更を求め得るものと考えております。
  255. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうすると、もうこれは裁判手続によつてやる以外には、公安審査委員会のほうでもう一遍、こういうふうに決定が違つたのだ、処分を受けたときとはこういうふうに決定が違つたものであるから、更に審査をしてもらいたいとか、或いは調査庁長官のほうでそう申出たような場合、調査庁長官はそういう申請をなし得るものであるか、要求をなし得るものであるか、この請求があつた場合にのみ行うということになつておるか、これは逆の場合に、もうこういうふうに方向は、変つて参つたのだから、再びこれはもう軽く直してやるようにという請求もこの公安調査庁長官がやり得るものかどうか、こういう点を一つお伺いしたい。
  256. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 一応これこそ、私からと申しますか、この問題は先にたしか伊藤委員からも御質疑がありまして、十分研究の上でお答するということのお約束をしておるわけであります。従いまして政府としての意見はきまつておりません。私の、ということをお許し願えるのならば、これは行政処分でございますから、本人の有利の変更は可能ではないかと考えております。併しこれはいづれ結論を集めまして又御答弁申上げます。
  257. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 大体これで。
  258. 伊藤修

    委員長代理(伊藤修君) それではこれで労働委員会の発言の申出では全部終了いたしました。従つて法務並びに労働の連合委員会をこれを以て終了することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 伊藤修

    委員長代理(伊藤修君) では連合委員会はこれを以て終結いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後三時八分散会