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1952-05-10 第13回国会 参議院 法務・内閣・地方行政・労働連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十日(土曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————  委員氏名   法務委員    委員長     小野 義夫君    理事      宮城タマヨ君    理事      伊藤  修君    理事      一松 定吉君            加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            片岡 文重君            鬼丸 義齊君            羽仁 五郎君   内閣委員    委員長     河井 彌八君    理事      山田 佐一君    理事      鈴木 直人君    理事      山花 秀雄君            石原幹市郎君            鈴木 安孝君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            成瀬 幡治君            赤松 常子君            上條 愛一君            栗栖 赳夫君            三好  始君            松原 一彦君   地方行政委員    委員長     西郷吉之助君    理事      堀  末治君    理事      中田 吉雄君    理事      岩木 哲夫君            愛知 揆一君            岩沢 忠恭君            石村 幸作君            高橋進太郎君            岡本 愛祐君            館  哲二君            若木 勝藏君            原  虎一君            吉川末次郎君            林屋亀次郎君            岩男 仁藏君   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事      安井  謙君    理事      波多野林一君    理事      村尾 重雄君            上原 正吉君            大屋 晋三君            九鬼紋十郎君            野田 卯一君            高橋龍太郎君            早川 愼一君            重盛 壽治君            椿  繁夫君            櫻内 辰郎君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   —————————————  出席者は左の通り。   法務委員    委員長     小野 義夫君    理事            伊藤  修君    委員            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            羽仁 五郎君   内閣委員    委員長     河井 彌八君    理事            鈴木 直人君    委員            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            上條 愛一君            松原 一彦君   地方行政委員    委員長     西郷吉之助君    理事            堀  末治君            中田 吉雄君    委員            石村 幸作君            岡本 愛祐君            若木 勝藏君   労働委員    委員長     中村 正雄君    理事            波多野林一君            村尾 重雄君    委員            九鬼紋十郎君            早川 愼一君            重盛 壽治君            堀  眞琴君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君   政府委員    法務政務次官  龍野喜一郎君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局次長     關   之君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川 宏君    常任委員会專門    員       西村 高兄君    常任委員会專門    員       杉田正三郎君    常任委員会專門    員       藤田 友作君    常任委員会專門    員       福永與一郎君    常任委員会專門    員       武井 群嗣君    常任委員会專門    員       磯部  巖君    常任委員会專門    員       高戸義太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○破壊活動防止法案内閣送付)  マル公安調査庁設置法案内閣送  付)  マル公安審査委員会設置法案内閣  送付)   —————————————    〔小野義夫委員長席に着く〕
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より法務内閣地方行政労働連合委員会を開きます。  先例によりまして法務委員長の私が委員長を勤めさして頂きます。当連合委員会の今後の運営につきましては、あとで適当な機会に各委員長の御参集を願つて協議願いたいと思います。本日は破壊活動防止法案公安調査庁設置法案及び公安審査委員会設置法案、以上三件につきまして政府説明を聽取いたすごとにいたします。
  3. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今より御審議を御願いいたします破壊活動防止法案ほか二件につきましてその提案の理由を御説明申上げます。  今や我が国は、平和條約が発効をいたしまして、民主国家として世界の期待に副い得るよう全力を傾注する要あるは申すまでもないところであります。政府におきましても、かねて国民の自由と人権の擁護に努め、これを基礎として民主主義育成強化を図つて参りましたが、今後とも態度を堅持し、いよいよその健全な発達のため邁進する所存であります。  然るに現下国内治安状況を顧みまするに、御承知のごとく或いは集団暴力により、又或いはゲリラ戰法により、警察及び税務署等を襲撃して、放火、殺傷等犯罪をあえてする暴力主義的破壊活動が頻々として各地に行われているのであります。而もこれらの破壊活動の背後には、憲法及びその下に成立した政府武装暴動によつて顛覆することの正当性を主張し、又はその準備的訓練として暴力行使を扇動動する不穏な文事が、組織的に配付されているのであります。かかる事実に徴するとき、これら一連の事犯は、広汎且つ秘密な団体組織によつて指導推進されている疑いを深めざるを得ないのであります。およそ世界いずれの民主国家におきましても、自由権を濫用し、団体組織により、国家社会基本秩序を破壊せんとするかごとき行為は、最も悪質且つ危険なものとして、刑罰又は行政措置によつて結社禁止解散をなし得る等所要法的措置を講じている現状であります。  然るに、我が国におきましては、現行刑法その他の刑罰法令は、いずれも個人犯罪行為対象とするものでありまして、破壊活動をあえてした団体に対しては、たとえその団体自体が如何に危険なものであつても、手を供いて傍観せざるを得ないので、治安確保法令に、警戒すべき空白状態が生じているのであります。かかる理由から、今日この種破壊活動の危険を防止するための最小限度立法が、当面喫緊の課題となるのであります。即ちこの法案は、この要請に応えて、先ず暴力主義的破壊活動を行なつた団体に対し、行政措置を以て所要規制を行い得るものとしたのであります。これは、この種破壊活動の危険を防止するには、その活動がよつて行われる組織自体規制することが、何よりも必要且つ有効であるからであります。  次に、この法案は、暴力主義的破壊活動に関して若干の罰則を補整することとしたのであります。それは、かかる破壊活動のうち、実害的行為は、すべて刑法等により処罰されておりますが、その予備、陰謀、教唆、煽動等行為は、現下の事態に鑑みるとき、極めて危険な行為であるにもかかわらず、現行刑法規定を以てしては決して十分ではないからであります。  申すまでもなく、民主政治は、国民の公正な論議の自由を基礎として成立するものでありますから、いやしくも集団暴力手段として、政治目的を貫徹せんとするがごときは、民主政治基礎を破壊し去るものでありまして、断じて許すべからざるところであります。従つてかかる破壊活動の危険を防止することこそ、即ち民主主義を擁護するゆえんでありまして、これがため必要最小限度法的措置を講ずることは、日本国憲法の精神に合致するものと確信する次第であります。  これを要するに、本法案目的は、専ら団体組織により国家社会基本秩序を破壊する暴力活動の危険を防止することにありまして、およそ自由権の正常な行使や、労働組合運動その他公正な団体活動が、本法による取締対象となるごときは、到底想像し得ないところでありまして、むしろ却つて、かかる暴力活動を排除することによつて、その健全な発達に寄与するものと固く信ずるところであります。  よつてこの法案においては、正常な自由権行使を阻害しないよう、又規制が公正且つ民主的に行われることを方針とし、調査及び規制処分請求をなす機関と、その審査決定をなす機関とを分離して権力の集中を避け、後者に準司法的な独立性を附与して、その判断の自由と公正を担保し、又当該団体に十分な意見弁解を述べる機会を与えろ等法案全体を通じて、常にその運用が本来の目的を案現し得るよう慎重な考慮を払つている次第であります。  以上が本法案を提案した理由であります。  次に、公安調査庁設置法案につきまして御説明を申上げます。  御審議を煩わします破壊活動防止法案におきまして、いわゆる破壊的団体に関する調査及び処分請求事務を所掌せしめる機関といたしまして、公安調査庁を設置すべきことが要請されておるのでありまして、これ炉同法案に関連して本法案の御審議をお願いする理由であります。  即ち本法案におきましては、公安調査庁の任務、権限内部部局研修機関及び職員等について所要規定を設けておりますが、以下簡単にその概略の説明を申上げます。  公安調査庁は、これを法務府の外局として設置することとし、一般国家行政組織法上の権限のほか、破壊的団体規制に関する調査と、これに対する処分請求等権限行使せしめんとするものであります。内部部局としては、総務及び調査一、二部の三部を置き、長官及び次長(一人)の監督の下に、それぞれの事務を分掌せしめるごととし、又その職務性質に鑑みまして、職員の資質の向上を図るため、特に研修所を設けることといたしました。  又、地方支分部局としましては、全国に八つの公安調査局と、四十二の地方公安調査局を設置いたしまして、その事務を分掌せしめることといたすほか、職員に関する所要規定を設けておるのであります。  次に、公安審査委員会設置法案について御説明いたします。  本法案におきましては、公安審査委員会は、法務府の外局として設置することとし、委員長及び委員四八を以て組織し、特定身分保障の下に、独立してその職権を行うことといたしました。これは破壊的団体規制に関する審査及び決定が自由且つ公正に行われることを保障せんとする趣旨に出でたものであります。又、委員長及び委員は、その職務重要性に鑑みまして、人格が高潔であつて団体規制に関し公正な判断をすることができ、且つ法律又は社会に関する学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、法務総裁が任命するものとしておりまして、実際には、労働言論その他社会各界に広くこのような人材を求めようと思つている次第であります。  委員会には、委員長及び委員の外、その補助としまして、委員補佐三人を置くことといたしております。  最後に、附則におきまして、この法律の施行に関連する法務設置法の一部改正等所要規定をいたしておる次第であります。
  4. 關之

    政府委員(關之君) 破壊活動防止法案ほか二法案につきまして逐條の御説明をいたすことにいたします。  先ず、破壊活動防止法案について逐條の御説明をいたします。  この法案の第一章総則について御説明いたします。第一章の総則は、この法案の総則的な規定でありまして、法案目的、運用に関する基準及び基礎的な観念につきまして定義を規定しておるのであります。  第一條について御説明いたします。第一條は、この法案目的揚げたものであります。即ちこの法案目的は、窮極するところは公共の安全の確保に寄与するところにありまするが、そのために団体活動として暴力主義的破壊活動を行なつた団体に対する必要な規制措置を定めると共に、かかる破壊活動に関する刑罰規定を、補整することにあるのであります。従つてこの法安本規定、これを二つに分けることができるのであります。即ち一つは、暴力主義的破壊活動を行なつた団体、即ち破壊的団体に対する必要な規制措置に関する規定でありまして、これは行政処分として行われるものであります。その法的性格は一種の保安処分で曲ると考えているのであります。法案の第一章から第五章までが、これに関する規定であります。二つは、かかる暴力主義的破壊活動に関する現行荊罰規定を補整した規定であります。これは第六十章の罰則の一部がこれに当のであります。もとより公共の安全は、この法案だけで確保されるものでありません。他の法令やその他国家社会の諸般の施策と相待つて維持されるものでありますから、その趣旨を明りかにする意味におきまして、この法案は「公共の安全の確保に寄与」する規定いたしたのでありますが、結局この法案によつて擁護しようとする法益は、公共の安全にほかならないのあります。この立法の目的は、そのままかかる立法の必要の理由ともなるのであります。即ち今日国内には団体組織によつて暴力を手段として国家社会基本秩序を破壊し去ろうとする疑のある活動が行われていますから、公共安全を確保するためには、かかる立法措置が必要と考えるのであります。  次は第二條の説明に移ります。第二條は、この法案による破壊的団体規制及び規制のための調査の基準を定めものであります。第一項は個々の国内の観点から、第二項は団体の観点かつ、規制及び規制のための調査が本来の目的の範囲を逸脱しないよう規定したのであります。この法案の冒頭に付にかかる規定を設けましたのは、法案の持つ性格、使命が国民の自由権に関係するところが多いからでありま、第三條の説明に移ります。第三は、第一項にこの法案暴力主義的破壊活動、第二項にこの法案団体の定義を規定いたしておるのであります。暴力主義的破壊活動団体との観念は、この法案の最も基礎的な観念でありまし、これによつてこの法案の性格が決定されるのであります。即ち法案団体暴力主義的破壊活動をし、将来更にこれを行う虞れがある場合に、その団体に対し必要の規制措置をなすと共に、かかる破壊活動に関する現行刑罰法令を補整するものでありますから、暴力主義的破壊活動を行なつた団体及び暴力主義的破壊活動は、実にこの法案の取締の対象にほかならないのであります。先ず暴力主義的破壊活動観念でありますが、これは純然たる行政上の観念でありまして刑事法上の観念ではありません。即ちそれは破壊的団体規制という行政処分の原因となる事実であります。さて、この暴力主義的破壊活動観念を定めるに当りましては、次のような諸点に考慮を払つた次第であります。一つは、今日行われ、且つ将来行われることを予想される暴力を手段とする破壊活動を取締るに足るものでなければならないことであります。前述のごとく国内には今日団体組織によつて暴力を手段として国家社会基本秩序を破壊し由ろうとする疑のある恐るべき危険な活動が広汎且つ秘密に行われておるのでありまするが、この種の活動は広い意味において政治上の目的を持つものであると考えるのであります。そこで暴力主義的破壊活動観念の焦点は、専らかような危険中な危険な政治的破壊活動のみに集中することといたしたのであります。二つは、すべての政治的信條が法の前に平等であることは憲法によつて保障せられているところでありまするから、特定の主義信條等を特別に扱うことにならないように注意し、専ら具体的な外面的行動を基準としなければならないといたした点であります。三つは、観念の明確なることを期するために、又拡張濫用される等の危険を避けるために、この法案において新たな用語を用いることはできるだけ避け、原則として現行刑法等規定を採用すると兵に、法令慣用語を用いることを建前といたしたのであります。四つは、暴力主義的破壊活動の中に危険な言論、出版等活動を取入れることになりまするが、現に必要最小限度のものにとどめることに注意することにいたしました。かような諸点に考慮を払い、暴力主義的破壊活動観念は、本條第一項に掲げるがごとく定めたのであります。これによつて明らかなごとく、暴力主義的破壊活動の内容は、すべて政治上の目的を持つた活動であつて、而も刑法等の中において最も悪質なものとして規定されておるものを基本としてこれに所要の補整を加えたのであります。その補整した部分は本條第一号のロ、及び第二号のヌの中に規定されておるのであります。かようにして破壊的団体規制という行政処分の原因たる事実となる暴力主義的破壊活動観念を定めたものでありまするが、かかる活動はもとより現実には団体役職員、又は構成員である個人によつて行われるものでありまして、その行為危険性から見てその個人の刑事責任を問う必要があることは言うまでもないことであります。而して前述のごとく暴力主義的破壊活動観念の基本には、刑法等規定を援用してありまするから、その部分については行為者は当然に犯罪として処断されることになるのであります。而してこの基本規定を補整した分につきましては、現行刑罰法令処罰規定が設けられてないものもありまするから、新たにこの法案において所要処罰規定を補整することといたした次第であります。本條第二項は、この法案団体の定義を規定したものであります。この規定に該当する限りこの法案においては団体として取扱うものでありまして、法人格の有無や名称の如何にかかわらないのであります。次に第二章の説明に移ります。第二章は、破壊的団体規制の内容、種類、條件及び効果等規定しているのであります。第四條を御説明いたします。本條は、破壊的団体規制のうち、団体活動制限処分について規定しているのであります。この法案において破壊的団体規制という行政処分を定めましたのは、現下の破壊活動団体組織を通じ、それを基盤として展開されている疑いが深いが、この危険を防止するためには、単に個人に刑罰を科するだけでは有効適切ではありませんから、ここにこの法案によつて行政処分により破壊的団体規制することを定めたのであります。この法案においての破壊的団体規制には、団体活動の制限と、団体解散指定との二つがあつて、これを規定しておるのでありまして、前者が第四條に掲げられ、後者はあとの第六條に規定されているのであります。木條第一項は、団体活動制限処分の内容と條件を定めているのであります。條件は、団体活動として暴力主義的破壊活動を行なつた団体がここに存在いたしまして、その団体が継続又は反覆して、将来更に団体活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかな虞れがあると認めるに足りる十分な理由があるということであります。もとよりこの処分は、その虞れを除去するに必要且つ相当な限度を越えてはならないことになつております。「明らかなおそれ」とは、明らかにそのような破壊活動をする可能性があるということであります。かように規制條件は、或る団体が過去において暴力主義的破壊活動をなし、継続又は反覆して将来更に同様な活動をなす明らかな可能性があるということに相成るわけであります。第一項の各号は、団体活動制限処分の内容を定めているのであります。これは基本的な考え方といたしまして暴力主義的破壊活動の行われる基盤を除去してそのような活動が行われないようにするということでありましてその範囲は各号に明確に定めてあります。又暴力主義的破壊活動の内容は、第三條第一項のいずれの行為であつても差支えないものと解釈いたしておるのであります。この処分はあとで申上げるごとくに公安審査委員会の決定によつて行われ、それは当該団体に対して命令されるのであります。即ち命令を受ける主体は役職員等ではなく、団体自体であると考えている次第であります。本條の第二項は、第一項の処分の履行を確保するために設けた規定であります。前述のごとく規制処分の命令は団体に対して行われるものでありますが、直接その処分当該団体役職員又は構成員を拘束するものか否かにつきましては、法理上必ずしも結論が一定していないのでありますから、特に第二項を設けまして、第一項の処分が効力を生じた後は、何人も当該団体役職員又は構成員としてその処分の趣旨に反する行為をしてはならないと明確に規定いたしまして、処分の履行を確保した次第であります。但し第二項但書、例えばこの法律の定めるところによつて不服の申立てをなし、或いは訴訟行為なす等行為は当然になし得るところであります。なおここで御説明いたしたいのは、本條第一項の処分を受けても団体はその活動の範囲を縮小してそのまま存在を持続していることであります。次に第五條を御説明いたします。本條は、前條の処分の履行を確保するために脱法行為を禁止したものであります。禁止を受ける主体は、当該団体役職員文構成員であります。その主体を団体とせず、その役職員又は構成員といたしましたのは、団体の理論が必ずしも未だ一定されず、受命の主体を明確にすることが必要でありますから、このように第五條に受命の主体を役職員又は構成員と明確化した次第であります。次は第六條について説明いたします。本條は、破壊的団体規制処分のうちの解散指定規定いたしたのであります。解散指定をなし得る條件は、第四條の団体活動制限処分條件に加えました、この制限処分によつてはその虞れを有効に除去することができないと認められる場合に限るということであります。解散団体に対する最後的処分でありまして、かような慎重な條件を定めたのであります。なおここで注意すべきは、本條第一号及び第二号に揚げる以外の暴力主義的破壊活動は、ただそれだけでは、たとい将来暴力主義的破壊活動をなす可能性がありましても、直ちに解散指定をなすことはできなく、更にその団体団体活動として暴力主義的破壊活動を行なつて第四條の第一項の処分を受け、その上に更にこれを行う可能性がある場合のみ解散指定をなすことができると規定いたしたのであります。この分だけが団体活動制限処分の場合より解散指定の場合のほうが條件が過重されているのであります。これはこのような暴力主義的破壊活動の内容、程度に鑑みまして、このように取扱うことが妥当であると考えたからであります。解散指定という行政処分の性質は、一種の確認的行為であると考えておりますが、通俗に考えますならば、解散指定解散というレツテルを当該団体に貼付するということだけなのであります。従つてそれから当然にいろいろの効果は生じないことになるのであります。処分の名称は、一応解散ということにいたしておりまして、あたかも団体解散してしまうその命令のごとく考えられますが、事態はそうでないのであります。解散というのは、団体解散して解消するや否やはこの法律の問うところではないのでありまして、解散という語が当を欠くように思われますが、他に適当な用語がありませんから、このような語をここに用いた次第であります。次に第七條について説明いたします。第七條は、解散指定があつた場合におきまして、当該団体役職員又は構成員の義務を規定したものであります。要するに本條は、団体解散指定され、その処分が効力を生じた後におきましては、当該団体役職員等当該団体のためにする如何なる行為もしてはならないと規定したのであります。これは解散規定処分の中に含まれておる効力ではなく、本條によつて創設された禁止の規定であります。解散団体に対して指定されると本條が適用され、その役職員等当該団体のためにする如何なる行為をもしてはならないことになるのであります。而してこの当該団体役職員等の範囲につきましては、当該処分の原因となつた暴力主義的破壊活動を行われた日以後、当該団体役職員又は構成員であつた者に限定されているのであります。この要件に該当する限り、すでに当該団体を脱退している者でありましてもそれに包含されるのであります。而してこれ以外の者は本條の直接の受命の主体ではありません。従いましてその後に独自に加入した者等はこの受命の主体ではないのであります。かように行為が禁止される当該団体の役職角又は構成員の範囲を限定いたしましたのは、かようにすることが人権を尊重し、憲法の精神を活かし、その意を明確にするゆえんであると考えたからであります。禁止されている行為は、当該団体のためにするすべての行為でありますが、但書によつて処分の効力に関する訴訟又は当該団体の財産若しくは事務の整理に通常されている行為は除外されているのであります。解散指定が効力を生じますと、本原の規定によつて役職員等行為の禁止が行われるが、それ以外に団体自体解散し、解消するや否やというようなことは本條の問うところではないのでありまして、本條によつて役職員等行為の禁止を受けた団体がそこに存在するのである、かように考えておる次第であります。  次に第八條について御説明いたします。本條は、第七條に規定するものの脱法行為を禁止したものであります。第七條の禁止の目的の達成を確保するためであります。第九條について説明いたします。本條は、解散指定処分が訴訟手続によつて、その取消又は変更を求めることができないことが確定されたときの団体に関する規定であります。先ず第一項は、かかる場合にその解散指定を受けた団体が法人であるときは、その法人は解散をするのであります。これはそれぞれの法人に関する各法令に規定する解散の事由のほかに新たに一つの解散の事由が附加えられたものであると考えるのであります。法人の解散はそれぞれ法令の定める手続によつて行われるのであります。この解散と第六條の解散とは異なる概念であるのであります。次に、解散指定が確定した場合には、その団体は速かに財産の整理をして、これが終了したときにはその顛末を安調査庁長官に届出でなければならないこととしてあります。この法案においては財産は国家に沒収する等の措置をとらず、当該団体の自主的な処分に委しているのであります。かように、第六條の解散指定を受けた団体においては、その役職員構成員等は団体のために如何なる行為もできず、又は処分が確定すると財産は整理されることになつているのでありまして、それ以外に団体がその結合自体を実際に解消するか否かはこの法案の関するところではありません。第三章について説明いたします。本章は、第二章に規定する破壊的団体規制についての手続を規定いたしたものであります。第十條について説明いたします。本條は、破壊的団体規制処分は、安調査庁長官から請求があつた場合にのみ行うことを規定したものでありまして、いわば一種の不告不理の原則を明らかにしたものであります。これは規制処分を行う権限を二つに分かち、調査及び処分の請求権を公安調査庁長官に、処分の決定権を公安審査委員会に与えて、これを分離することが権限集中の弊を除去し、民主主義の原則に合致すると考えたからであります。第十一條について説明いたします。本條は、安調査庁長官が処分の請求をしようとするときは、あらかじめ当該団体意見弁解を聞き、有利な証拠の提出を求めなければならないのでありますが、その弁明の期日を相手方に通知する手続等を定めたのであります。通知は官報によつて行い、公示した日から七日を経過したときに通知があつたものとされるのであります。これは更に当該団体の代表者又は主幹者の住所又は居所が知れているときは、前項の規定による公示のほかに、必ずその通知書を送付しなければならないといたしてあります。次は第十二條について説明いたします。本條は、前條第一項の通知を受けた団体が、事件につき代理人を選任することができることを定めたものであります。その代理人は弁護士を初め何人であつてもいいのであります。代理人の選任は公安調査庁長官に届出る等のことは要件ではありません。次は第十三條について説明いたします。本條は、第十一條第一項の通知を受けた団体において、公安調査庁の審理官に事実及び証拠につき意見を述べ、有利な証拠を提出することができるという規定であります。団体側でこれをなし得る者は、その役職員構成員及び代理人を通じて五人以内と限定いたしました。五人以内といたしましたのは、その程度において十分弁解を尽し得るものと考えたからであります。なお、これらの者の身分については、それぞれそれが真実であることを審理官に立証して確認されなければならないのであります。審理官は、公安調査庁長官によつて公安調査庁の職員の中から指定されるのであります。数については法案は制限しておりませんが、審理について必要な人員を指定することに相成るのであります。次は第十四條について説明いたします。本條は、審理の傍聴に閲する規定であります。審理官の審理は完全な公開にするか、又は制限的な公開にするか議論の分れるところでありますが、審理の対象になる事柄に鑑み、本條規定する程度の傍聴を認めることは妥当と考えたのであります。本條により審理を傍聴し得る者は、当該団体より選任された五人以内の立会人と、一般の新聞記者等からなるのであります。これらの者は勿論身分を証明することを要りするは申すまでもありません。又新聞記者等については、必要によつては傍聴券等によつて制限することも差支えないものと考えております。本條第四項は、退去を命ずることができるのでありまして、実力によつて退去を強制することはできません。併し退去を命令された者が退去しない場合には、刑法第百三十條によつて不退去罪が成立してつ、その現行犯としての取扱を受けることになると考えます。次は第十五條について説明いたします。本條は、証拠の取調についての基準を定めたものであります。立法側といたしましては、民事訴訟法第二百五十九條がありますが、而もこの事件が裁判所に提訴された場合においては、原則として民事訴訟法により審判されるのでありますから、この規定を置いたのであります。併しもとよりその不必要と認めることにはすべて合理性がなければならない。審理官はこの規定によつて相手方の権利を不当に制限することがあつてはならないのであります。  次は第十六條について説明いたします。本條は、弁明の期日における調書に関する規定であります。  次は第十七條について説明いたします。本條は、審理官は、当該団体から請求があつたときは、調書及び取調べた証拡書類の謄本各一通をこれに交付しなければならないといたしたのであります。かかる規定を設けましたのは、当該団体の弁解、意見の陳述に十分な保障を与えるためであります。当該団体はすべて公安調査庁に収集された証拠につき、単に提示を受けるのみならず、その謄本の交付を受けて検討し、弁解することができるのであります。これらの交付は一通にとどめ無料といたしたのであります。  次は第十八條について説明いたします。本條は、審理官による取調が当該団体に影響するところが多いのでありますから、若し審理の結果、規制処分の請求をしないと決定いたしましたときは、その旨を当該団体に通知すると共に、官報に公示することといたしたのであります。官報に公示することにいたしましたのは、第十一條の審理の開始の通知が先に官報で行われたからであります。  次は第十九條について説明いたします。第十九條は、規制処分の請求の方式を規定したものであります。第一項の請求の原因たる事実とは、第四條第一項及び第六條に規定するごとく、当該団体が過去において行なつた暴力主義的破壊活動と、将来行う可能性がある暴力主義的破壊活動の両者を含んでおるのであります。請求は、第四條第一項又は第六條の処分を請求することを明記するのであります。第六條は、解散指定のただ一つでありまするから明瞭でありまするが、第四條第一項の処分は三つの種類があるのであります。併しそのいずれの処分を請求するのであるかを具体的に明示することはこの法案は要件としておりません。ただ第四條第一項の処分を求めるだけが要件であります。規則においては、公安調査庁長官は、処分請求書に如何なる具体的処分をなすを相当と思料するかを記載するというふうにいたす予定でありますが、安審査委員会はこの公安調査庁長官の意見に拘束されず、自由独立の判断により各号の処分を選択し得るのであります。これは委員会の判断の自由独立性を保障したものであります。本條において重要な規定はその第三項であります。これによつて公安調査庁長官が、請求の原因たる事集を証すべき証拠として委員会に提出し得るものは、すべて当該団体に意見を述べる機会が与えられたものでなければならないのであります。人の持つておりました証拠を勝手に提出して当該団体が全然知らない証拠によつて或る一つの事実を認定するということは、この法案においては認められないのであります。かような措置をとりましたのは、申すまでもなく人権の擁護からであります。  次は第二十條について御説明いたします。本條は、当該団体の権利を擁護する上において慎重に考慮を払つた規定であります。即ち公安調査庁長官は、当該団体規制処分委員会に請求いたしましたときは、その請求の内容を当該団体に通知しなければならないのであります。当該団体はこの通知を見て更に自己に対する処分の請求の内容につき検討をなしまして、十四日以内に意見害を独自に公安審査委員会に直接提出することができるのであります。公安調査庁の審理官の前において、相当慎重なる手続によつて一切の証拠を提出いたしまして、又手持ちの謄本はすべてこれが要求があります場合に当該団体に交付いたしまし、てその人権の擁護に相当慎重なる手続をとりましたが、更に加えてこれこれの理由によつて、これこれの処分請求するというその内容をあからさまに先方に通知するわけであります。最後に、この通知によりまして当該団体は最後に各種の資料によりまして意見書を作成いたしまして、直接委員会にこの意見書を提出することができるのであります。これも当該団体の権利の擁護に遺憾なからんことを期した慎重な手続と考えるのであります。  次は第二十一條について御説明いたします。これは公安審査委員会の決定に関する規定であります。この規定によつて明らかなことく、委員会の決定は、直接の聴聞によらず、専ら書面の審理によつて行われるのであまりす。かような建前といたしましたのは、すでに前述のごとく、公安調査庁において十分の審理を尽すのほか、当該団体の権利の擁護については慎重な措置がとられでおりまするので、この上重ねて公安審査委員会のごとき小規模な委員会において直接審理を行うのは、人権擁護の上からもそれまでのことを重ねる必要がないのみならず、又事案を迅速に処理しなければならないという観点から見ましても妥当でないと考えたからであります。委員会は直接の聴聞の権限はもとよりありませんが、実際上におきましては処分請求書、意見書等について長官又は当該団体の釈明は求めることができると考えるのであります。本條の第二項は、この規定により公安審査委員会は、公安調査庁長官から、第六條の処分を相当と思料する場合に、その処分をなし得る権限があるのであります。これは解散処分団体にとり最後的な請求であるのでありまして、長官のほうにおきましてこの最後的処分の請求を、いたしましたが、委員会においては必ずしも最後的処分でなくてよろしい、第四條の制限的処分でもよろしい、かように考えた場合には、第四條の制限的処分をなし得る、かようにいたしたのであります。その反対に公安調査庁長官から、第四條第一項の処分の請求を受けた場合には、委員会は第六條の処分をすることができないのであります。これは委員会の決定の独立性団体の権利の擁護との調和を図つたのであります。  第二十二條は、決定の方式を規定したものであります。  第二十三條は委員会の通知及び公示を規定いたしたものであります。  第二十四條第一項は決定の効力の発生の時期を定めているのであります。処分の決定は、前條により官報で公示されたとき効力を生ずるのであります。第二項及び第三項はその決定に関する行政訴訟に関する規定であります。第二項は全くの念のための規定であり、第三項は行政事件訴訟特例法の例外的な規定であります。これはこの種の事件に関する訴訟の促進を図つたものであります。第三項の裁判所とは、それぞれの審級の裁判所を意味していると考えるのであります。  次は第二十五條でありますが、本條公安審査委員会の手続の細則に関する規定であります。  次は第四章調査について説明いたします。本章は、公安調査官の調査について規定しているのであります。公安調査庁の職員に如何なる調査権限を認めるかということは、理論と実際の二つの面からいろいろの問題が考られて来たのでありますが、結局この法案におきましては、公安調査庁の職員には強制調査権は認めないという建前といたしました。従つて公安調査官は、すべて任意の方法によつて調査をするのであります。かかることといたしましたのは、次の理由からであります。即ち理論的には団体規制のために十分な証拠を収集する必要上、公安調査庁の職員に強制調査権を与えなければならないというようなことも考えられるのでありまするが、暴力主義的破壊活動は、一面におきましては、これを行なつた者の個人の犯罪行為として刑事訴訟法の強制捜査の対象となるのでありまして、刑事訴訟法のほかに更にこの法律によりましていま一つの強制調査権を設定することは一般に著しい不安を与えることが考えられると共に、又この法案が強制調査権を持つために不必要虞れを与えることを避けることが必要であるというふうな考慮からでございます。  第は二十六條について御説明します。本條は、公安調査官の任意の調査権について一般的に規定いたしたものであります。公安調査庁長官は、公安調査庁長官により公安調査庁の職員の中から任命され、この法案の定める調査等の事務に従事いたすのであります。  次は第二十七條について説明いたします。本條は、公安調査官が証拠を收集する必要上、関係するところの書類及び証拠物の閲覧を求めることを規定したものであります。その範囲を検察官と司法警察員にとどめ、裁判所を加えなかつたのは、裁判所の持つ司法的な特殊な立場に鑑み、これを尊重して特に規定いたさなかつたのであります。  次は第二十八條について説明いたします。本條は、警察と公安調査庁との情報又は資料の交換を規定いたしたものであります。この交換は双方の義務として規定したのであります。何が交換さるべき情報又は資料であるかは、一般通念によつて双方によつて決定さるべき問題であります。  次は第二十九條について説明いたします。本條は、司法警察員が暴力主義的破壊活動からなる罪に関して行う押收、捜索、検証に公安調査官が立ち会い得ることを規定したものであります。この規定の趣旨は、公安調査官は破壊的団体規制に必要な証拠を收集しなければなりません。それについては証拠收集の現場の実見をなすことは、証拠の価値判断上、極めて必要なことであります。そのために強制調査権のない公安調査官にこの規定を設けたのでありまして、立会い得るのは司法警察員がなす押收、捜索及び検証だけでありまして、又それは文字通り立会い得るだけでありまして、押收、捜索等の実施をなし得ないことは言うまでもありません。法案規定はただこれだけでありまして、司法警察員が押收、捜索及び検証等を公安調査庁に通知する等、本條の運用の問題はすべて両者の緊密なる協力の下に解決さるべき事柄と考えておるのであります。  次は第三十條について説明いたします。本條は、公安調査官のなす物件の領置に関する規定であります。任意の調査におきましても、当事者の提出するものは調査官において領置することができるものでありますから、かような規定を設けた次第であります。  次は第三十一條について御説明いたします。本條は、公安調査官のなす物件の保管に関する規定であります。  次は第三十二條について説明いたします。本條は、領置した物件の還付に関する規定であります。  次は第三十三條について説明いたします。本條は、公安調査官の証票の呈示に関する規定であります。職務を行うに当りましては、関係人から求められたときはその身分を示す証票を呈示しなければならないのであります。  次は第五章雑則について説明いたします。第三十四條を設けた理由は、すでに申上げたことく、公安審査委員会処分の決定は官報で公示するの—であります。この公示に対応いたしまして委員会の決定が裁判所で取り消されましたときは、そのことを官報で公示することは、団体の名誉の保持上当然のことであるからであります。  次は第三十五條について説明いたします。本條は、団体規制の状況は、毎年一回国会へ報告することを規定したものであります。事柄の重要性に鑑みまして国権の最高機関たる国会に報告し、必要ある場合に行う国会の国政の調査に資するものでありまして事後ではありまするが、かかる措置によつて公正な運用を図るのであります。  次は第三十六條について説明いたします。本條は、公安調査庁に関するこの法案実施の細則に関する規定であります。これは法務府令で定めることになるのであります。  次は第六章について説明いたします。本章の罰則の中には、二つの種類があるわけであります。一つは、暴力主義的破壊活動に関する刑罰規定を補整したものでありまして、第三十七條から第四十條までがこれに当ります。他はこの法律に基く処分又は命令の履行を確保するために、その違反に対し所要の罰則を設けたものでありまして、第四十一條から第四十三條までがこれに当ります。第三十七條から第四十條までの規定は、刑法等の現行刑事法令との重複を避ける方針の下に、必要最小限度の罰則を設けたものであります。その意味において、これらの規定現行刑法等刑事法令の特別法たる性格を持つておるのであります。  次は第三十七條つについて説明いたします。本條は、第三條第一項第一号口の規定暴力主義的破壊活動にかかる行為であつて団体が教唆若しくは煽動をなすという純粋に刑法の規定の拡充規定であります。  次は第三十八條について説明いたします。本條は、第三條第一項第二号ヌの規定の一部の暴力主義的破壊活動にかかる行為でありまして、刑法等規定政治上の目的のためという特別の要件を加えておるのであります。放火等の予備の罪が刑法において二年以下の徴役によつて処罰せられておりまするが、本條におきましてはこれらを五年以下としたのであります。政治上の目的のためのこれらの行為に対して刑を加重いたしたのであります。これは公共の安全に危険性が多いと考えたからであります。  次は第三十九條について説明いたします。本條は、第三條第一項第二号ヌの規定の一部の暴力主義的破壊活動に関する行為であります。本刑罰は、他の各條項と比較いたしましてこの程度を以て相当と考えたのであります。  次は第四十條について説明いたします。本條は、この法案において教唆を独立罪としておりますから、刑法の教唆の規定との調整を図つたものであります。即ちこの法案の教唆と刑法総則の教唆の規定が適用せられた場合には重い刑を以て処断せられることにいたしたのであります。  次は第四十一條について説明いたします。引続き第四十二條、第四十三條を一括して御説明いたします。右の各條は、この法案規定による命令又は処分の義務違反に関する所要の罰則であります。  次は附則でありまするが、附則は、この法案の施行期日その他関係法令の整備等の経過規定を定めたものであります。  以上によりまして破壊活動防止法案の逐條の御説明を終つたのであります。  次には、公安調査庁設置法案につき概略的な御説明をいたしたいと思うのであります。  先に法務総裁が提案理由の中において御説明のありましたことく、公安調査庁法務府の外局として設置することといたしたのであります。これは現在の特別審査局の機構をここに移行せしめる予定でございます。その任務は、公共の安全の確保に寄与することを目的とし、破壊活動防止法の規定による破壊的団体規制に関する調査及び処分請求等に関する国の行政事務を一体的に遂行する責任を負う行政機関といたしたのであります。権限は、一般の国家行政組織法上に基く外局としての権限のほかに、この破壊的団体規制に関する調査を行うこと、公安審査委員会に対し破壊的団体に対する処分請求を行うこと、その他法律に基いて公安調査庁に属せられた事項を所掌事務といたすのであります。  内部部局といたしましては、公安調査庁の本庁に総務部、調査第一部、調査第二部、調査第二部の三部局を置くことといたしたのであります。この総務部は総務的な事務と破壊活動防止法の規定による審理及び処分の請求に関する事務その他を扱うことになつておるのであります。調査第一部、調査第二部におきましては、破壊活動防止法による調査の事務をそれぞれ分担所掌するのであります。この三部の下に所要の課を設けて、それぞれその事務を分担するのであります。又公安調査庁にはその長といたしまして長官を置きましてその次に一人の次長を置くのであります。それぞれの部に部長を置きまして、その下に課長を置き、それぞれの事務を分担遂行せしむることといたすのであります。  又公安調査庁には附属機関として特に公安調査庁研修所を設置することといたしました。これはこの法案の持つ性格と使命の重要性に鑑みまして、特に職員に十分なる教養、訓練を施し、法案目的を達成し、その範囲を逸脱しないように運用するため厳重なる訓練、教養を施すために、特にかような施設を設けた次等であります。  公安調庁は地方支分部局を有するのでありまして地方支分部局としましては、現在の高等検察庁所在地に八つの公安調査局を置くことといたします。これは一種の中間監督機関であります。その下に公安調査局のない県に四十二の地方公安調査局を置くのであります。かようにいたしまして中央、地方の組織を整備いたしまして団体調査の事務を遂行いたしたいと考えておるのであります。  職員につきましては、現在の特別審査局の約千二百名の職員をここに移行いたしますと共に、この法案によつて新たに五百名程度の増員をお願いしておる次第であります。そしてこれらの職員を公安調査庁の本庁及びこの各地方支分部局に配置いたしまして所掌事務を遂行いたすことに相成るのであります。公安調査庁には、特に職員の中から公安調査官というものを長官が任命することと相成つておるのであります。この公安調査官は、この附属機関たる公安調査庁研修所におきまして十分なる訓練と教養とを施しまして、本法案の実施につき過ちなきを期するために、特に人物を選択いたしまして、慎重なる試験もなし教養も施して、これを選任して任命いたしたい、かように考えておる次第であります。又公安調査官の職務の内容に鑑みまして、必要があると認めるときは、公安調査官をその勤務地以外の地に駐在させることができるとか、又管轄区域外においての職務の執行もできるというように規定いたしたのであります。これが公安調査庁設置法の概略の御説明でございます。  次は公安審査委員会設置法案の概略を御説明いたします。  公安審査委員会法務府の外局として設置することにいたしました。その権限は、一般の行政組織法上の権限の外に、暴力主義的破壊活動を行なつた団体に対して活動制限の処分を行うこと、暴力主義的破壊活動を行なつた団体に対して解散指定を行うことというようなことであります。この委員会は、委員会制度による行政機関でありまして、この委員会において、かような権限を行使するのであります。委員会は、第三條によりまして、委員会委員長及び委員は、独立してその職務を行うのであります。委員長及び委員は、法務総裁が人格が高潔で団体規制に関し公正な判断をすることができ、且つ法律又は社会に関する学識経験を有する者の中から選任いたしまして、両議院の同意を得て任命することになつておるのであります。この委員法務総裁との関係は、この任命だけでありまして、事務の上につきましては、第三條により全く独立して、指揮命令を受けず、独立してもその職権を行うのであります。かようにいたしましたのは、団体規制の徹底、事務の重要性に鑑みまして独立不羈に判断を行うということが、事柄の正確と公正を確保する意味において必要であると考えたからであります。  第五條各項は、それぞれ任命に関する内部手続或いは制限等を規定いたしたのであります。四項におきましては、委員長及び委員の任命については、そのうちの三人以上が同一の政党に属する者となることとなつてはならないというふうに規定いたしました。これは委員会制度に対する各種の現行立法例を参酌すると共に、かようにすることが団体規制というその事務の実態に鑑みまして必要があると考えたからであります。委員長及び委員の任期は、いずれも四年でありまして補欠の委員長及び委員の任期は前任者の残任期間とすることにいたしたのであります。委員長及び委員は再任されることができるのであります。委員長及び委員は、独立でその職権を行うのでありまして第七條はその実質的な裏付けとしまして第七條の各項に該当する場合に、及び第九條の場合を除いては、在任中その意に反して罷免されることがないという身分保障規定であります。この規定の裏付けによりまして委員長及び委員は独立で自由にその職権を行うのであります。  第八條は委員長又は委員が前條各号の一に該当するときの罷免の規定でありまして、第十九條は先に申上げました第五條第四項の三人以上が同一の政党に属する場合に至つた場合の規定であります。  第十條は、委員長委員会における代表権、第十一條は、会議の開催の方法を規定いたしたのであります。「委員会は、委員長及び二人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない」。「委員会の議事は、出席者の過半数を以て決する。」ことといたしまして、可否同数のときは、委員長の決するところによるのであります。この団体規制の決定は、この第十一條の確認條項において行われるのであります。又委員会には、第十二條によりまして、委員補佐三人を置くことといたしました。これは委員長及び委員公安調査庁長官の提出した証拠、或いは当該団体が提出した意見書等につきまして取調を成すに当りまして、これを補佐せしむるものであります。そのために委員補佐は弁護士その他法律事務に学識経験を有する者の中から適任者を委員長が任命することといたしたのであります。以上の委員長委員及び委員補佐はこの法案におきましてはいずれも非常勤というふうに規定いたしたのであります。事務の分量及び広く各界に適任者を得るという建前から、かような措置が最も妥当であると考えてかかる規定をいたしたのであります。又委員会はこの法律若しくは政令を実施するため、委員会の規則を定めることができるものといたしました。これは第十三に規定してあるのであります。かような次第でありまして、第十四條は委員全の庶務は、法務総裁の官房において掌るということにいたしまして、庶務の事務は全部官房において扱うことといたしました。  以上によりまして公安審査委員会設置法案の逐條の御説明を終ります。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 議事進行について……。私は大分前の法務委員会において、委員会及び委員長を通じて法務府に向つて現在までの、特別審査局の創設以来の活動の状況についての資料の提出を要求しておいたのであります。本日までその特別審査局の誠意を信じて、一回も催促をしなかつたのでありますが、本日までその資料は私の手許に届いていないのであります。それで今公安調査庁設置法案を見ましても、特別審査局がそのまま移行し、且つ拡大するという趣旨説明もありました。我々がこれらの三法案審議する必要上、特別審査局が設置せられて以来今日に至るまで如何なる活動をして来たのか、その審査局長活動も含めて要求していた資料を法務府は提出しないつもりでありますか。提出されるつもりなら、いつまでに提出されるのか、その点は議事進行上必要があると思うので、委員長から法務府に向つてお質しを願いたいと思うのであります。
  6. 小野義夫

    委員長小野義夫君) さよう取計らいます。それでは本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十五分散会