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1952-05-22 第13回国会 参議院 文部委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十二日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員の異動 五月十九日委員中山壽彦君及び白波瀬 米吉君辞任につき、その補欠として加 納金助君及び北村一男君を議長におい て指名した。 五月二十一日委員寺尾豊北村一男君 及び木村守江辞任につき、その補欠 として黒川武雄森田豊壽君及び大屋 晋三君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            黒川 武雄君            石黒 忠篤君            高橋 道男君            山本 勇造君            荒木正三郎君            岩間 正男君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部政務次官  今村 忠助君    文部大臣官房渉   外ユネスコ課長  釘本 久春君    文化財保護委員    会事務局長   森田  孝君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君   説明員    外務省情報文化    局第三課長   戸田 盛国君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○文化財保護法の一部を改正する法律  案(内閣送付) ○ユネスコ活動に関する法律案内閣  提出衆議院送付)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を開きます。  最初文化財保護法の一部を改正する法律案提案理由文部大臣から承わります。
  3. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 只今上程になりました文化財保護法の一部を改正する法律案について、その概要を御説明申上げます。  文化財保護法は、文化財保護の重要なる使金に鑑みまして、昭和二十五年第七国会において国会みずからの御発案によつて通過成立したものでありますが、その任務重要性に照しまして、文化財保護委員会という行政委員会をしてその行政上の責任を負わしめていることは、申上げるまでもないことであります。今回の政府全般を通じる行政機構の改革に当りましても、文化財保護行政特殊性に基きまして、文化財保護委員会は存続することになつたのでありますが、ただ内部的に、この委員会に関し左の諸点について機構簡素化を行うことに相成つた次第であります。  即も、第一に、文化財保護委員会委員の数は現在五人でありますが、これを三人に減少いたしたことであります。第二には、事務局総務部保存部の二部制を廃止して次長制とし、機構簡素化を図ろうとした、次第であります。  第三には、右に伴つて所要規定の整備を行うことでありますが、特に現在の五人の委員は、この法律施行の日において失職することとし、新委員は、新たに任命することといたしたのであります。  以上が、この法律案の要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決下さるよう御願いいたします。   —————————————
  4. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これに対する質疑は次回に延ばしまして、次にユネスコ活動に関する法律案を取上げます。ユネスコ活動に関する法律案について質疑のおありのかたから御質疑を願います。
  5. 岩間正男

    岩間正男君 ユネスコ活動国内におけるところの活動を法文化する、こういうことでありますが、特にこういうふうな文化、いわば一つ文化運動というものでありますが、こういうものを国際的な関連もあるだろうとは思うのでありますが、いわば民間におけるところの活動、そうしてそれを自然に助成するという形は、文化政策としては望ましいと思うのですが、こういうような法案化して、そうして機構を非常に整備する、そういうことによつて、而も又文部省がこの中に相当介入する、こういう形でいろいろ権限規定なんかもあるようであります。そういうことによつて文化活動におけるところの官僚統制という弊害はないかどうか。こういう点はどういうふうに考えられてこのような法案が立法化されるのでありますか。その点根本対策としてお聞きしたい。
  6. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。ユネスコ活動の全国的な文化運動でありまする限り、お説のごとく官僚統制に陥ることは最も顧慮すべきことであると考えるのでございますが、この点は御承知のように、我が国ユネスコ加盟国として受諾しましたユネスコ憲章そのものの中にも明記してあり、種々の場合にそうした注意が払われているのでありまして、従いましてユネスコ憲章に定められておりますところに基きまして作りましたこの法案乃至作ろうと思つております機構につきましては、只今指摘のような懸念は全くないように私ども解しておるわけでございます。
  7. 岩間正男

    岩間正男君 もう少し説明してもらいたいのですが、ないということを原則に、ないからないと言うけれども、そういう関係ではない。日本一つ文化活動としてこれを又法制化してやつて行く、こういうことは何かもうユネスコ憲章などに、これは私まだ十分その点の関連は調べておりませんが、何かこれは国内法規定して、そうしてこういう活動をやらなければならないというようなそういう規定まであるのですか。
  8. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) それは多少くどくなるようで恐縮でございますが、お答え申上げます。国際条約でありますユネスコ憲章を受諾いたしますと、ユネスコ憲章の中に定めております第七条に、資料は先般お届けいたしましたと思いますが、その七条の中に、ユネスコ国内委員会を設置することが要望されておりまして、その国内委員会各国において広く教育、学術、文化に関する主要な団体及び政府代表構成する国内委員会組織を作ることが望ましい。そしてその国内委員会政府に対して助言的な資格で行動し、且つ他国にそれぞれできております国内委員会と或いはユネスコ本部と連絡をとり、世界的にこのユネスコ活動が展開するように、それに役立つようにするということが望ましいという意味のことが書いてあるわけでございまして、事実におきましてもユネスコ加明国、本年の二月現在六十五ヶ国のうち、五十八ヶ国がこのような民主的な組織による国内委員会を作つておりますし、又大部分がかような法律或いは法律に準ずる規定に基いて政府機関として国内委員会を設けておるのでございます。
  9. 岩間正男

    岩間正男君 今参加国の中で国内立法をちやんとしておる国はどのくらいありますか。
  10. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。大部分の国がそうやつておりますが、的確な数字は令すぐ調べます。
  11. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 外務省のかたもおいでになりましたから、御質疑のかたはお願いいたします。総括的な御質疑はございませんか。
  12. 岩間正男

    岩間正男君 このユネスコ委員会で、過般の国連における朝鮮事変ですね、この朝鮮事変国連がああいう態度をとつて国連警察軍朝鮮の問題に介入したあの問題に対しまして、あの態度を支持するというような声明をなされておるように聞いておるのでありますが、こういうことは、この文化活動の面で政治との関連は全然ないなどとは言われないのでありますが、やはり政治的対立が非常にあるときに、こういうような文化活動の問題の領域までそれに関与して行くということによつて文化活動そのもの運動が非常にやはり一方的な性格を帯びて来るというふうに大いに考えられる面があるのですが、こういう点はこれは世界文化を通じての平和を推進するという精神から考えて、これはどういうように考えておられるのですか。この点についてく関係者の意見をお聞きしたいと思います。
  13. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。朝鮮事変関連いたしまして、国連の行き方を支持する態度ユネスコがとりましたことは御承知通りでございますが、これは国連ユネスコとの間の協定に基きまして、ユネスコとしては教育科学文化としての専門機関としての独自の立場に立ち、所定手続をとつてそういう方針とつたのでありまして、なおやろうとしておりますことも、例えば戦後の教育復興について援助するとか、その他まさに教育科学文化機関としてなすべきことをやろうとしておるようでございます。なおその点につきましては、外務省からもお答えするようにいたします。
  14. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) ユネスコ総会の議決は、ユネスコ憲章の定めるところに従いまして多数決で決定した—わけでございます。又ユネスコ朝鮮事変との関係においてなすべき仕事というのは、戦災を受けました朝鮮民衆救済、殊にその文化面からする、又教育その他の面からする救済に主眼を置かれることになつております。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 私のお聞きしておるのは、こういう文化機関というものはそういうような政治的な一つ対立の問題について支持するとか何とかという、そういうような決議のようなものを出すことが、これが世界文化運動並びに文化を通じての平和推進の問題、こういうような問題に対してどういう影響を持つか、こういう点について関係者はどういう見解を持つておるかということをお聞きしておるのです。この点はどうですか。あなたの只今の御答弁でははつきりしないと思います。
  16. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) ユネスコは飽くまでも政治的な立場でなく、憲章の前文にもございますように、政治的経済的な取極による平和だけでは恒久平和は得られないという立場からいたしまして飽くまでも教育科学文化を通じて世界平和の確立に寄与しよう、そういう立場仕事を進めておるわけであります。
  17. 岩間正男

    岩間正男君 だからああいう一つ朝鮮事変のようなものに問題があつたわけでしよう。これは世界が全部安保理事会で満場一致であの問題について意思を決定したわけじやないのですね。そういうような問題について、一方的にこれを国連軍立場というものを支持する、そういうようなことが恐らく決議されたことを我々は記憶しておるわけです。文化機関としてそういうような動きをすることが、今後のそういう運動について果して本当に世界隅々まで滲透するという、こういうような方向に対して有害か、有害でないかどうお考えになつているか、こういう見解をお聞きしておるのですが、どうもお答えがない。
  18. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) ユネスコ国連専門機関といたしまして、ユネスコ自体立場から、又国連との協定に基きまして所定手続を経てこの問題についてとりました態度は、飽くまでも先ほど戸田課長も答えましたように、新鮮の復興再建、特に再建教育文化面から寄与しようとすることでありましてこういう態度文化的な、又教育的な点から言いまして世界平和の上に大いに寄与するところがあると私どもは考えております。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 どうも適当な答弁にならんのですが、私の質問に答えて頂きたい。随分ズレがある。私のお聞きしておるのは、国連軍のそういう行為に対して支持決議をしておる、それがどうだということを私はお聞きしておるのが、それに対するお答えがない。朝鮮のいろいろの戦争によつて、或いは後進国としての状態ですね、文化的、科学的に進めて行く、こういうようなことを私は何も言つているのではなくてああいうふうな政治行動を支持する決議をするということはどうかと、こういうことをすることによつて一体本当に世界文化を広く進めて行く上にどういう一体影響を持つたか、こういう点についてどうお考えになつておるかとお聞きしているんですが、それは尤も事務局としてお答えがむずかしければ私は保留しますが、どうなんですか。それはお答えできないですか。私はこの点非常に重要だと思うんですよ。これは世界文化というものを推進するんだと、そうして飽くまでも世界隅々までそういう精神を徹底させるんだと、そうして平和を希求するんだとこういうことを謳つていながら、どうもああいうような形で対立の或る面を一方的に支持することによつて重実この後にこれはひびが入つて行くんではないですか、運動に。具体的に言うと、ソ連圏国々がこれから脱退するという形が出ていないですか。現在どういうふうな形で進められておりますか。
  20. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) 現在のソ連圏国々とおつしやいましたのはポーランド、チエコスロヴアキア等を指すものと思われますが、これらの国々がこのことによつてユネスコから脱退するというような傾向は、今のところはそういう動きは見えておりません。将来のことはわかりません。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 この決議に対して非難されたとついう事実については、あなたのほうの情報としてつかんでおられますか。こういうようなやはり一方的な動きに対してユネスコ性格としては果して妥当かどうかという問題で相当非難があつただろうと我々見ておるが、こういうことはどうですか。
  22. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) 如何なる決議でも反対論はあり得るわけであります。ユネスコの場合には加盟国の大多数が支持しましたので、その決議通つてユネスコ決議なつたわけであります。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 そこのところがどうもさつきから食い違いがあるのです。大体ユネスコなんというものは、そういうことを支持するかどうかということをやるべき性格のものであるかどうかということが問題になつて来るわけですね。非常に文化交流という面から考えて阻害するのですよ。そういう決議をやつて現実対立しておる問題の中に科学文化を通じて世界平和に寄与しようという精神で進められておるユネスコ活動というものが、いわば政治的なはつきりした対立の或るほうの一方が正しいとか正しくないとかいうことは、これはいろいろ問題のあるところですが、安保理事会決議などというものは、国連軍行動に対してはまあ合法的と言えば合法的でしよう、一応ね。併しまあその当時にはソ連代表などがいなかつた、そういう形できめられて進められておる。而もそれを支持するということにユネスコが出て来れば、やはり世界的な全面的なそういう科学文化推進ずるという方向に私はひびが入る。ひびが入るというようなことが当然起るのではないか。起るような行動を、国連の一機関でありますけれども、文化科学という方面を担当する機関が、そういうような一体政治的な問題の中に入つて行く必要があるのかないのか。それによつて現実的に文化科学の問題に政治性を附与することによつてこのユネスコを設けられたそもそもの精神から違反するような現象が出て来るのである。このことを私は非常に心配しておる。同時にこのことはユネスコの今後の性格を私たちが考え、これについて認識を深めるということについて私は非常に重大だと思うのです。その点をお聞きしておるんですが、さつぱりこの点について肝腎な点に触れてのお答えがないわけですね。
  24. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) 又このことに関してはボデツト事務局長声明を発しておりまして、「朝鮮事変の結果われわれが担当することになつ活動は我々の通常の事業計画の枠に適合するものである。その活動とは我々の最大限の能力を発揮してすでに多くの戦災国復興に貢献して来たように朝鮮再建に参加することである。」というような趣旨を述べております。又この「ユネスコ憲章を読み、フローレンスの総会の記録を読む労をいとわない人なら、これを以てユネスコ態度の変化を意味するものであるとは主張しないであろう。」、こういうように述べております。これがユネスコとしての公式の見解であろうと思います。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 どうも私の質問に対して答えられたとは私は思えないのですがね。決議がなかつたのですか、支持決議のようなことは……。こういう問題は御存じないですか。
  26. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) はあ、何でしようか。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 国連軍に対する支持決議のようなことをユネスコはなされなかつたのですか。そのことが問題なんですよ。
  28. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) 決議をしております。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 どういう決議ですか、今読んだのがそうですか。
  30. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) 只今のその決議に関しての声明であります。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 ちよつと決議を読んで下さい。
  32. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) 決議の内容は、教育科学文化分野において朝鮮民衆窮乏救済すること、集団安全保障に関する教育を行うことを含んでおります。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 それだけですか。国連軍行動に対する、まあその点にちよつと触れておりますけれども、国連軍の当時の行動に対する支持決議というものはないのですか。
  34. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) このユネスコ決議は、今申上げましたように教育科学文化分野において朝鮮民衆窮乏救済すること、それから集団安全保障に関する教育を行う。
  35. 岩間正男

    岩間正男君 集団安全保障に関する……。
  36. 戸田盛国

    説明員戸田盛国君) そうです。集団安全保障に関する教育を行う、それが主となつておつたと理解しますが、只今決議の原文の持ち合せがありませんので、若し何でしたら……。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 そうですな、それを頂いてから……。私もその資料がないものですから、明確に指摘して質問できないので、それじやそれは成べく早く提出して頂きたい。一番私はこの問題を決定する上に基調をなすのはここだと思うのですが、ユネスコ機関が表面謳われておるように行動しておるかどうか、国際的機関として。そうして本当に我々が望むものは、やはり科学文化を通じての世界平和の問題であつて、それが表面ではそういうことを謳つておりながら、行動が一方的な立場をとるということになりますと、これは私は現実にはそういうものを破壊しておる恰好になる。こうついう形で以てこの国内立法が、今後の日本の現在署かれておる一つ立場と結び付いてそうしてどういう役割を持つかといことは、我々としましては、これは今後の動向も予測することが政治的なこれは判断としまして我々の任務なんですよ。そこのところが十分に理解されないと、これは単に国連ユネスコ活動というものは非常に立派な精神と、そうして世界機関としてできておるものだということで、それの形だけでそういうことになつて、実際の行動そのものが今言つたような、本当に世界の平和を推進するのではなくして逆に一方的な、地域的な或いは対立した一方的な文化科学というものの推進というような形で以て、いわばそういうものを政治的な一つの手段にして行くという形に進められれば私は逆効果だと思う。この点が国連の現在の運営そのものとも関連して来るわけであります。国連憲章そのもの精神というものが今日果して十分に行われておるかどうかというところは、朝鮮事変後の大勢を通じて考えて見るというと、非常に検討を要する。日本がまあ国際連合に参加したいというので、そういうふうなこれは決議衆議院のほうは通過しているようでありますけれども、こういう問題とも関連して国連性格というものを本当に最初の、当初設立された目標並びに国連憲章根本精神に沿てついるかどうか、こういう点を十分にこれは判断する必要があるので、これと関連して当然ユネスコに我々が参加してこの役割を積極的に果すがいいか、或いは参加すべきでないというものを決定する大きな私はモーメントをなすのはそこにあると思う。そういう点からお伺いをしているのです。この点やはり今までのユネスコのとつて来た経緯というものを、私はこの点もう少し慎重に検討したい、こういうふうな希望を持つものですから、この点一つ、そういう資料を早速一つ頂きたいと、こう思うのです。
  38. 高橋道男

    高橋道男君 ユネスコ教育科学文化を通じて活動しているということを示してあることは申すまでもありませんが、宗教或いは宗教団体と称するものはこの中に含まれているのかどうか、それをお伺いいたします。
  39. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) この委員会構成の中にどういう団体が、或いはどういう個人のかたが入られるかは、第一回の委員推襌委員が審議し答申して定められるとでありますから、前以てすベてを予測するわけに参りませんけれども、ユネスコは大体宗教に対しましては極めて中立的な立場をとることを方針として活動いたしておるのでございます。と申しますのは、根本方針においては人類の平和、福祉増進ということを目的としておりますだけに、極めて宗教的境地に近いものを持つておりますけれども、実際の宗教にはいろいろな信条と考え方がありますので、それに対して極めて中立的な立場をとるのがユネスコとしてはよい態度だというふうに考えて、ユネスコ活動世界的に進められておるように了承しております。従いまして国内委員会委員にどういう宗教団体のかたが入られるかというふうな点が、これが宗教に対しては中立的立場をとるという根本精神の上で考えられるべきことだというふうに考えております。
  40. 高橋道男

    高橋道男君 ユネスコ宗教に対して中立的であるということの御説明はわかりますが、それは宗教を排除しておるという意味ではないのでございますね、それを念のためにお伺いいたします。
  41. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。宗教の価値や、教育及び文化、或いは又人間生活全般における宗教の高き寄与ということについては、ユネスコはもとよりこれを否定しておるものではございません。ただ現実の様々の流派における宗教に対しては中立的な立場をとる、こういうことでございます。
  42. 高橋道男

    高橋道男君 一つ具体例を以て甚だ妙なことをお伺いいたすのでありますが、一年か一年もつと以前のことでありますが、パリのユネスコ本部出張機関というように伺いましたが、日本におけるその機関から或る宗教団体青年会ユネスコ活動に対して協力を求められたことがあつたのであります。その宗教団体青年会責任者が、その出張機関行つていろいろ話を聞きましたところ、相当強力な、強い意味協力を求められた、それについては役員か何かにでも入つてこの活動協力する意味だろうかというようなふうに考えて、その役員構成などについて質問をしたところが、その当事者の言われるのには、役員構成はすでにきまつておる、而も過半はキリスト教の関係者によつて占められておるので、それ以外の宗教団体関係者がこの役員に加わるということはこれは現在、将来ともに考えられないというような話があつたそうでございます。これは私は自分の今記憶も少しは薄れておりますから、その通りであつたかどうかははつきりいたしませんけれども、若しこういう言辞が、その当時に言われたものだとすれば、一宗一派に偏するような活動機関であるというように考えざるを得ないのでありまするが、そういうようなことについてどういう見解を持つておられるかお伺いをしたいと思います。
  43. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。只今指摘の事実私もつまびらかにつ承知いたしませんので、その事実そのものにつきましては御答弁申上げられないのでございますが、我が国におけるユネスコ活動方針といたしましては、一宗一派に偏することなき態度を堅持すべきものだと私ども考えております。
  44. 高橋道男

    高橋道男君 只今の御見解了承いたします。この法案によつて成立いたしますれば、国内委員会ができるのでありまするから、それと只今文部省にありますユネスコ課との関係でございますが、これはどういうふうになるのか。地方へいろいろ情報その他を流される、或いは活動に関する指令を流されるような場合に、文部省の直接の機関であるユネスコ課から流れるのか、或いはそれは実動機関ではなしに、国内委員会を通じて流されるのか、そういう関係について一つ……。
  45. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。これも少々くどくなるか知れませんので恐縮でございますが、日本ユネスコ国内委員会は、いわば日本におけるユネスコ活動中枢機関としての性格を持つて作られるわけでございますが、これは各国国内委員会と共通した性格を持たせられるわけでございますが、国家行政組織法上はいわゆる八条機関でございまして、関係大臣の諮問に応え、或いは関係大臣に建議することを中心の性格とし、いわゆる行政委員会のごとき執行機関としてのいわゆる三条機関ではございません。従いましてこのユネスコ国内委員会ができましても、広汎なユネスコ活動は、或いは文部省でも或いはその他の関係機関でも行うわけでございますが、ただ普通の諮問、建議機関と違いまして、ユネスコ憲章の定められましたところをできるだけ実現するように国内法規上にも調整を図りまして、企画、連絡、調査又普及事業というふうなことはこの国内委員会でも行える、と申しますより、もむしろ国内委員会に大いに行なつてもらうというふうな考えで、かなり八条機関としては強い執行機関に近い性格を持たせておるわけでございます。で、御質問の現在文部省にございます渉外ユネスコ課のような課と、機構改革いたしますれば又変りますと思いますが、どういう関係になるかという点でございますが、国内委員会が諮問、建議機関でありますだけに、文部大臣の所轄機関でありますけれども、ユネスコ活動についての最終的な責任文部大臣にあるわけでございまするので、文部省内の担当部課が国務大臣の下にありまして、やはりユネスコ活動についての行政上の責任を持つて行動することは申すまでもございません。但し、私どもの心組といたしましては、それは例えばユネスコ活動に関しまする法令案の整備とか、予算案の作成とか、或いは又ユネスコに関しまする法人の許可、認可に関する事務とか、いわば極く普通の意味で何らかの権限を行いまするよろな、いわゆる普通の行政事務にとどめまして、折角の憲章に基いております機関としては、できる限りこの機関ユネスコ活動を行わせたい、そういうふうにいたしたいと思います。
  46. 高橋道男

    高橋道男君 この国内委員会活動体ではない、諮問機関が主であるということを言われながら、一方においては普及活動はするのだという御説でございますが、そういうような点は、これはお説の通りでいいのでありますが、ユネスコ課との関連において事務分担或いはそのけじめがはつきりしていないと、情報、宣伝などが交錯して行われるというような懸念があると思いまするので、その点を私はお伺いしているので、その区別などははつきりと考えてもらついたい。
  47. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) お答え申上げます。誠に御指摘のごとく、その点ははつきりいたさなければなりません。私どもいろいろその間に交葉起りませんよう、法制局その他の関係官庁とも十分打合わせまして、一案を持つておるわけでございますが、それは文部省のほうでユネスコ活動についての行政的の責任を持ちますことは、今御指摘の一種の情報活動とか普及活動というふうなことには殆んど直接にはタツチせずに、先ほど申上げましたユネスコ活動に関しまする法人の許可、認可とか、或いは予算案の作成等とか、極めて内部的な普通の行政事務を行なつて行くという点にとどめたいと考えておるわけでございます。
  48. 高橋道男

    高橋道男君 次にお伺い申したいのは、現在までにたくさんのユネスコ関係団体ができておると思いますが、そういうものは幾つぐらいあるのか。そうしてそれは今後は国内委員会関係におかれるのか、或いはユネスコ課関係におかれるのか、そういう点もお伺いいたしたいと思います。
  49. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) 只今指摘ユネスコ国内団体と仰せられますのは、恐らく普通ユネスコ協力会と言われております全国各地区で、自発的に盛り上つてできた団体のことを御指摘かと思いますが、これは全国で一種の連盟組織を作つておりまして、ユネスコ協会連盟という全国的な連盟組織ができておりますが、それに加盟しておられる各地の団体が約百ばかり、それからそれ以外にまだ全国的な連盟組織に加盟しておられない団体が約百ほどあるというふうに私どもは情報を持つております。なお、併し累次御熱心なかたがたによりまして或いは一般市民のかたの集まり、或いは勤労者のサークル、或いは学生などの間に続々そうした団体ができつつありますので、現在ではもつと数字が殖えているかも知れませんが、本年三月頃までの現在では、大体数字の点についてはさようであります。なお、ユネスコのこうした極めて民主的な自発的な熱意によつてできております団体につきまして国内委員会が成立いたしましてからは、恐らくはユネスコ活動については、国内委員会が緊密な連絡をとるようにするだろうと思います。これはユネスコ憲章の定められたことからいたしましても、又我が国ユネスコ活動の特異性からいたしましても、当然そうなると存じます。但し、法人として設立申請をされるとか、先ほどもお答え申上げました何らかの援助を政府機関から受ける場合のいろいろ手続とかというふうな点につきましては、文部省内のユネスコのことを扱います部課がお世話することになるだろうと思います。純然たる事務的なことにつきまして……。
  50. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 総括質問は他にございませんか。なければ逐条審議に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 先ず前文に対して御質疑はございませんか。……なければ、第一章の第四条までについて御質疑はございませんか。第一章のユネスコ活動です。
  52. 高橋道男

    高橋道男君 四条に「政令」というのが出ておりますが、これはもうすでに準備ができているのでございましようか。
  53. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) まだ完全な成案を得ておりませんが、大体の案はまとめております。
  54. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御質問ございませんか。第二章に移つて、第五条、第六条に御質疑はございませんか。……それでは、その次の第七条に御質疑はございませんか。……それでは次に第八条、第九条。
  55. 高橋道男

    高橋道男君 第九条の一項第五号、六号の両議院から指名した者の数が変るようになつておりますが……。
  56. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これは衆議院で変つていますよ。
  57. 高橋道男

    高橋道男君 それを私頂いておりませんが……。
  58. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 衆議院送付の修正案の第九条の人数を一つお知らせ頂けませんか。
  59. 竹内敏夫

    ○専門員(竹内敏夫君) 第一号の教育活動科学活動及び文化活動の各領域を代表する者十八人、これは原案通りです。その次第二号の教育科学及び文化の普及に関する諸領域を代表する者、これが十五人が十二人になつております。三人減じております。その次第三号の地域的なユネスコ活動の領域を代表する者、これも十五人が十三人に減じられております。その次第四号の学識経験者の六人が、逆に七人に増加して一人これは増になつております。その次第五号の衆議院議員のうちから衆議院の指名した者、これが原案の一人が四人になりまして三人の増になつております。それから第六号の参議院議員のうちから参議院の指名した者、これが原案の一人が三人になりまして二人の増になつております。その次第七号の政府の職員、これは原案通り四人であります。
  60. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 第九条の修正は今のようでありますがおわかりになりましたか。……それでは第十条、第十一条、第十二条、この三条に御質疑はございませんか。……第十四条から第十六条に御質疑はごございませんか。……それでは第十七条から第十九条まで御質疑はございませんか。……それでは附則に移りますが、附則の最初に、衆議院の修正がありますから、ちよつと係りのほうから読んで頂きます。
  61. 竹内敏夫

    ○専門員(竹内敏夫君) 附則の第四項でありますが、「この法律により初めて任命される」云々のそこでございます。それが「第十条第一項の規定にかかわらず、十八人については」というのが「十六人については四年」ということにして、「十八」が「十六」になつております。その次「十八人については三年」という、ここもやはり「十八人」が「十六人については三年」、そこだけ変つております。
  62. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは附則の第一項、第二項、第三項、第四項、第五項、ここまでの間に質疑はございませんか。……では第六項、第七項、第八項に御質疑はございませんか。……終りに第九項、第十項について御質疑はざいませんか。……ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  63. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。
  64. 岩間正男

    岩間正男君 経費はどうなつておりますか。
  65. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) 予算については、甚だまだ不十分でございますが、国内関係の予算といたしまして事業費といたしまして約二千二百万円だけを確保しております。その他にユネスコに加盟いたしました関係上、分担金でございますね、分担金が、これは文部省予算でございませんけれども、約五千万円……。
  66. 岩間正男

    岩間正男君 それはどこなんですか。
  67. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) これは事務的の関係外務省になつております。分担金のほうは外務省でございます。それからユネスコ総会その他の国際会議に出席する旅費が若干ございます。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 これは予算化されておりませんか。
  69. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) 予算化されております。これは余りはつきりはしておりませんが、約一千万円くらいだと了解しております。
  70. 岩間正男

    岩間正男君 それは文部省ですか。
  71. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) それは文部省とは必ずしも限りませんで、出られるかたかたの所に移し替えるわけであります。文部省関係の予算といたしましては人件費その他で二千二百万円であります。それかうちよつと訂正さして頂きますが、本年正度のユネスコに対する分担金と申しますのは一月一日から十二月三十一日まででありますが、五千四百六十三万七千三百二十円であります。
  72. 岩間正男

    岩間正男君 それから事務局文部省内に置くことになるのですか。
  73. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) この機構は先ほど申しましたように所轄機関でございまして、国立教育研究所とかいうようなものと同じように文部省の外に出ておるわけであります。本省内の分局ではござにいません。
  74. 岩間正男

    岩間正男君 外局みたいなものですか。
  75. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) 外局ではないのです。文化財のような外局でなく、国立教育研究所とか、国語研究所、そうしたものと同じように所轄機関でございます。
  76. 岩間正男

    岩間正男君 人数はどれくらいですか。
  77. 釘本久春

    政府委員釘本久春君) これも非常に、まだ定員は文部省関係ではつきりしておりませんけれども、約五十名くらいの程度でございます。但し、それを以ちまして現在文部省ユネスコ課としてやつております定員が減りますから、実際には殆んど殖えないことになります。
  78. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    午前十一時三十七分速記中止    —————・—————    午後零時二分速記開始
  79. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは速記を始めて。それでは他に御質疑はございませんか。本案に対する御質問は終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶものあり〕
  80. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおあつりのかたば賛否を明らかにしてお述べを願います。
  81. 相馬助治

    ○相馬助治君 只今議題と相成りましたユネスコ活動に関する法律案について、私は社会党第二控室を代表して賛成の意思を表明いたします。  御承知のように今日世界における日本の置かれている位置から考えまして、世界平和と人類の福祉に寄与するためにもこのユネスコ活動が果すべき使命というものは実に重いものであろうと存ずるのであります。国際連合に加盟していない日本が、昨年七月正式にユネスコに加盟したということは実に重要なる意味合いを持つものでありまして、その意味合いにおきまして、本法律案を制定いたしまして国内委員会を作り、単にその国内委員会ユネスコ活動に関する助言、企画、連絡及び調査のためにあるというのでなくて、進んではあらゆる種類のこの種の文化活動の基礎をなすものである意味合いにおきまして、国内委員会に対する内外の期待というものは極めて重大であろうと思うのであります。従つてこれらを規定いたしますところの本法律案は是非とも必要であろうと思うのでありまして、その意味合いにおきまして私は本法律案に賛成するものであります。  ただ考えて見なければならない第一点は、国際連合精神に従つてユネスコ活動が行われるということを考えて見まするときに、世界におけるとろの現状であります、二つの大きな思想的な相違、二つの大きな対立した勢力、この間に処しましてややもいたしますればユネスコ活動というものが、日本国内においては単なる反共宣伝の機関に堕したり、或いは又偏狭な政治的な一つ考え方を推し進め、宣伝する機関に堕することあるならば実に重大なる問題を孕みますると共に、基本的には我が国教育科学文化の向上に資するものでなくて、むしろこれに逆行する結果を生むことはおのずから明らかであろうと存ずるのであります。従いましてユネスコ活動は飽くまでも、いわゆる党派的な政治性を超えて存在するものでありまするが故に、それらの点については役員任命その他に当たつても十分なる考慮が払わなれなければならないと思いますると共に、生まれ出ずる国内委員会の、私が以上述べました点が単に杞憂であることを裏書するような活動が望ましいことは申すまでもないと思うのでありましてこれらに対して深甚なる注意を政府みずからが払うべきことを私は要望の第一点としたいと思います。第二点は、このユネスコ活動の性質からいたしまして、この国内委員会の所轄の問題であります。これは各委員の討論のうちにもおのずから明らかになりましたように、外務省に持つて行くことが正しいとか、或いは文部省に置くことが当然であるとか、議論が分れたのでありますが 諸外国の例その他に鑑みて、日本においては文部省が所轄するということに相成つたのでありまするが、ここで一応考えて見なければならないことは、文部省が所轄するこの種の委員会というものは、その活動資金を将来国費から取る場合においては、常に思わん失態を演じて、当然必要とする国費をも割き得ないことが前例に多かつたと思うのであります。逆な言葉を以ていたしますならば、文部省は予算獲得においては甚だその力弱かつたことを訴えざるを得ないのでありまして、文部省が所轄したという以上は、これらの点については十分政府も考慮されて欲しいと思うのでございます。  要しまするに、我が国教育科学文化の向上に努め、且つ国際交流を盛んにいたしまして、諸外国の理解と協力との関係を推し進めることなくしては新日本の建設はあり得ないのであります。その新日本建設の基本的な運動である面を担当いたしまするところのユネスコ活動重要性に鑑みまして、本法律案の趣旨には賛成いたしますると共に、以上二点要望いたしましたことを附け加えまして私は本法案に賛成の意思を表明する次第であります。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 私は本法案に反対であります。  若しも日本が真に国際対立の中におきまして、日本の憲法の精神に徹底し、飽くまでもですね、平和を守り抜くと、こういうような態勢が本当にとられておつて、その中に国際連合精神から発したユネスコ機関というものが設けられたならば、私はそれは賛成するのであります。むしろ進んで賛成するのであります。然るに現在の情勢はどうかと言いますと、全くこういう態勢から反対の方向に動いておることは多くここで指摘する必要はないのです。而もその後にユネスコの運営を見ますと、これが国際連合憲章精神に則つて運営されておると一応調われておりますけれども、運営の実態は、先ほど私が質問の中でもこの点に触れたのでありますけれども、殊に朝鮮事変を契機としまして非常にこれはいわゆる自由国家群というものの機関として傾いて来ておる、こういう性格を持つておるのであります。そういうような形で、現在日本がアメリカのいわば不沈国或いは反共基地として、東亜における反共基地として再編されておることは、これは言うまでもなく両条約並びに行政協定によつて明らかに指摘されるところであります。その中にこのようないわば教育科学文化という精神面の機関をここに作る、こういう形でこの問題がこのような法案化までされまして、法制によりまして上から形作られるということになりますというと、これは日本のいわゆるそういうような反共基地としての態勢を精神的にますます確立するための運動としてこれが推進されるところの危険が十分に存するのであります。そうして又ユネスコのその後の性格の変化から考えまして、現実的な変化から考えまして、こういう感じを私は持つて旧来ると思うのでありまして、相馬君が只今要望点として述べられたことは、実際はこれは恐らく、今言つたように杞憂に終ればいいのでありますけれども、恐らく相愛じやない現実的な姿を私はとつて来るものだと考えます。こういう点から、私はこの法案現実日本の中で果す役割から賛成することはできないのであります。更に、今までユネスコ協力会というようなものが国内にできたのであります。そうしていろいろ運営された実態を見ましても、この杞憂は十分に裏書されて来ると思うのであります。例えば具体的な最も卑近な例を挙げますと、院内におきましてもユネスコ協力会のようなものがあります。国連協力会から発したそういうものがあります。そういう所で例えば映画を見せておる。その映画は一体どういう映画だげ見せておるか。これは今までの傾向を指摘すれば明らかであります。世界のあらゆる文化をあらゆる面から公平にこれを紹介し、あらゆる精神の糧としてこれを消化して行くということろに私はユネスコの本当の精神はあると……。ところが現在選ばれておる映画を見ますというと、非常にこれは一方的な形を持つています。こういう形で進められているのが一つの例でもありますように、国内ユネスコ協力会というものが、口先では成るほどユネスコ憲章に従つて人類の平和と繁栄の方向に向けられなければならない、こういうふうに言つておるのでありますが、それが非常に枠を作つたところの、或る特殊の一つの宣伝機関のような形で進められておるところに私は現状の危険を感ずる。やはり我々が過去に太平洋戰争の前後を通じて陥りましたのは、やはり世界情勢に対しまして馬車馬的に一方の情勢を遮断し、一方の勢だけをこれを最も正しいものとして信じて来たところにあつたのでありまして、この愚を再び我々は繰返してはならない。これが当然ユネスコ精神でなければならないのに、その精神が今日おきまして先ほど申しましたように歪められておる。こういう中で、すでにその下地ができておるところに対しまして、更にこれを法制化して、もつと官僚統制下に置こうとする態勢が出ておる。これがこの法案の狙いで、従いまして私はこういうような国際的な一つの反共機関とも言えば言えるようなものの日本版であるところのこのユネスコ国内における行動に対しましては、非常に私は賛成することができない。  第二の反対点は、これはやはりこの国内委員の任命なんかを通じてよく現われていると思うのでありますが、これが最終的には文部大臣の任命によつて行われる、こういう形になつて来ていることであります。これはやはり私たちは新らしい民主的な文化というものを考えるときに、およそこういうような態勢というものはそぐわないものじやないか、逆行しているんじやないかというように考えます。今度の修正点なんかについて見てもこの構成を見ますというと地域的な代表者を選ぶ場合には、最初に全体の四分の一であつたのでありますが、これを五分の一に減らしておる。そうして中央のそういうような人的構成を非常に強化しておる。こういう形において頭でつかちな足のないところの、いわゆる官僚統制強化という形でこの運営が今後なされるということに対して、この不安に対してこれを是正するところの何らの裏付けがないのであります。こういう点から考えまして、私は今日やはり日本の置かれておる態勢から考えまして、いわば新らしい意味精神総動員的な方向をこのユネスコ運動を通じて行われないという保証がない。こういう点から考えまして、こういうような官僚統制方向で一体一国の科学文化教育というものが非常に上からら、而も国際機関と結び付く形におきましてますます強化される、こういう形は望ましくないと思う。で、一応これは国際機関との関連という形で作られることになるのでありますが、それをどのように消化し、どのようにこれを育てて行くかということは、やはり日本の民主主義そのものが現在どのような段階を辿り、どういうような内容を持つているかということに関連するのでありまして、現状におきましてはまだその試練が非常に浅い、本当に民主的な訓練を経ていない日本の現状におきましては、官僚統制的なものに動かされるという危険を十二分に感ずる。かような点から私は国内立法として時期尚早である。而も非常にむしろ時代の要請の方向に応えて行く、こういう役割を担わされるということを感ずる。こういう点から私はこの法案に対しまして反対するものであります。
  83. 高橋道男

    高橋道男君 私は衆議院で修正議決されて本院に送られました本法案に賛成いたすものでございます。  私どもは世界の平和確立と人類の福祉の増進に貢献することを念願するものでございますが、国際連合なりユネスコはその意義を高く評価して、殊に我が国に対しては平和条約の発効以前にその加盟を認めて来ておるのでございまして、そういう点から考えますると、ユネスコ我が国に対して世界平和の確立と人類の福祉増進に関する精神の発揚と実現に対して深く期待していることを感ぜざるを得ないのでございます。従いまして私どももそういう要請に応える意味において、この運動組織化し、より以上体系付けることの必要を感ずるのでありますが、本法案によりましてその基礎付けられたものが与えられると考えるのでありまして、法案成立後ユネスコ活動の面におきまして大いなる飛躍が期待ができると思うのでございます。  ただ修正されました人員構成の面につきましては若干の議論がないでもございませんし、殊に一つ運動推進する上において人的構成が大きな役割をし、又大きな意義を持つということがございまする上からいたしまして、我我が懸念するようなところは、この任命に関係を持たれる文部大臣なり、関係機関において十分な慎重な措置を講ぜられて万全の策を立てられ、只今岩間委員が述べられましたような懸念のないような活動推進されることを希望して私の賛成といたした次第であります。
  84. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御発言はございませんか。御意見も尽きたようでありますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。衆議院の送付せるユネスコ活動に関する法律案を議題といたします。本案を可決することに賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  86. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 多数でございます。よつてユネスコ活動に関する法律案は多数を以て可決することに決定いたしました。  なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条により、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書について多数意見者の署名を附することになつておりますから、本法案を可決することに賛成されたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     木内キヤウ  相馬 助治     川村 松助  黒川 武雄     荒木正三郎  山本 勇造     高橋 道男  石黒 忠篤
  88. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 本日はこれで散会をいたします。    午後零時二十一分散会