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岩間正男君 私は、日本共産党を代表いたしまして、この
法案に反対するものであります。
反対の理由はいろいろあるのでありますが、これを簡単に要約して申上げたいと思います。
先ず第一に、この商船大学が作られまして、高級船員が増員される、こういうことになるのでありますが、当然これは、現在進められておりますところの吉田
内閣の貿易政策、それに伴いますところの造船計画、そういう形で、これはのつぴきならない関連を持
つて来ることは当然だと思うのであります。そこで現在の貿易政策そのものがどういうことにな
つておるか。これはすでに私の多く指摘する必要もないのでありますけれ
ども、関西の例を見ればわかる。いわゆる最も距離的に近いところの中国と遮断する。或いはソヴエート圏と遮断ずる、こういう形で、最も安い原料と短時間に、安い船賃で入れる。そうして国内の生産をそれによ
つて安いコストにする。
従つて国際貿易のうちに太刀打ちのできる態勢を整えることができる。そういうような条件のあるにもかかわらず、これを遮断して、わざわざ進んで、そういう南方誌地域と結んで、そのために高いところの原料、二倍、三倍に亙るところの高い原料を、又高い船賃で以て押しつける形で以てこれは輸入しておる。こういう政策をと
つておることは、明らかにこれは自然に反すると思う。こういう点につきまして、私
たちは、吉田
内閣の貿易政策そのものに対しまて、しばしばこれは予算
委員会あたりで以てこの点について論及して来たところでありますが、この下請として、このような船員
たちが、今後これは使われるという態勢をとられるのであります。このことは非常に私は重要な問題だと思う。こういうことでなく、むしろ本当に一国の大学、而も恒久的な民族の運命というものに目を置いて、そうして時代の政治的な
影響というものにたやすく動かされないような政策の上に立
つて、国家の
教育がなされるのであ
つたならば、私はこのような貿易政策そのものが直接要求した形で、直ちに具体的に応える。而も卑近的な形で応えるという形でこの大学が設立され、而も先ほどその大学の
教育内容について、私は今までの日本民族の犯した過去の歴史、そうした生々しい記憶を挙げまして、これを如何に具体的に是正するかという問題について質したのでありますが、何ら答えられなか
つたのであります。
責任者において答えられなか
つた。このことがはつきりと端的に物語
つておるように、日本の過去の商船隊が犯したところの、こういうような態勢について、どういうふうに私は新らしい
教育を確立するかということは、とてもこれは保しがたいのであります。こういう中で先ずこの商船大学が作られるということ、このことに私は先ず反対したいと思う。
第二の問題は、第一の問題とも関連するのでありますが、飽くまでも日本の貿易というものは、平和産業の無制限拡大、こういうものを基調としてこれは進められなければならない。然るに日本の現在の産業の構造というものは、これは平和産業とはおよそ似ても似つかぬ
方向に漸次強力に再編されつつある。いわゆる戦争経済中心の産業にこれは再編されています。そうしてその結果、いろいろな面が経済並びに貿易の面にしわ寄せされて来るのであります。従いまして当然日本の
立場としまして、このままの態勢を続けて行けば、これは戦争の下請、殊に行政協定や二条約によりまして、現在日本がとられているところのいわゆる日本列島の不沈空母化という形、その形の中におけるところの役割を果させられることになりますと、いわゆる商船隊というものは戦争協力の態勢に大きく持
つて行かれる。これはすでに朝鮮事変において、日本の商船が如何にあの水域に出動し、そうして又職安あたりを通じまして、この下級船員
たちが如何にこの水域で多くの犠牲を払
つておるか。こういうことはありありとした事実でありまして、今日我々はまざまざとこういう事実を指摘することができる。従いましてこの商船大学が、日本のこういうような国策が徹底的に平和のほうにこれは戻されて、世界のあらゆる国々とこれは経済的な面で以て強力に平和的な貿易を推進する、こういう前提でない、反対の
方向に、そういう目的に奉仕するような形でこの大学の運営がされるというような危険が十分にある。こういう点は、非常に我々としましては、日本の民族の将来の運命から
考えましてこれは警戒せざるを得ない。そういう点が第二の反対点になるわけであります。
更に又神戸にこの大学が作られたということは神戸が国際的なそういう貿易都市、そういう性格を以て立地条件に恵まれている。こういうことを、これはしばしば言われたのでありますけれ
ども、併し神戸において現在必要なものは、果してこういうような商船大学であるかどうか。無論その要求も一部にあるでありましよう。併し多くの神戸市民はどういうふうに
考えているかというと、神戸はむしろ今置かれているところのこの
状態、殊にこの港湾の大部分、八千五百メーターもの港湾が、未だ軍に接收されたまま未解除にな
つている。こういう形で以て貿易を開き、ここで本当に打開しようにも打開することができない、神戸市民は期せずしてこの軍接收の港湾を解除してもらいたいという切実な要求である。この要求に、私
たちは今日において、むしろ先に先ず応えるのが私は政策として非常に重要だと思う。ところがそう、いう問題とはこれは無
関係に、ただ大学だけをでつち上げ
つて行くということて、本当に神戸が将来これは、
一つの貿易都市として隆盛になり得るかどうかわからない。
もう
一つは、先は
ども申述べましたが、これは関西におけるところの殊に貿易港としまして、関西においては、何と言
つてもこれは中小企業というものに基盤を置かなければならない。この関西の財界の
現状を見ますというと、殊に最近ここ二、三年の間にとられましたところのこの米軍の占領下におきますところのいわゆる外貨割当権、或いは貿易管理権というものがすつかり握られている結果におきまして、例えば新三品につきましては、非常にこれは押付輸入が行われている。そうしてつ高いときに物を買わせられる。そのときには外貨の割当を非常に強力にする。そうして二倍、三倍の高い物を買わせる。ところがそのために起
つたゴムとか繊維、皮革、こういうものが、その後国際物価の値下りによ
つて大打撃を受けている。そうしてその損害が正に四、五百億だと言われている。更にその後に起
つた繊維操短の問題、こうした
事情が絡み合いまして、どうしても現在持
つているところの滞貨を新らしい市場に向いまして、平和的な貿易を大きく興さなければならない。こういう態勢は、すでにソヴイエートの国際経済
会議の間における情勢を通じまして、日本の業者としては、つい目の前の市場がまるで遠くのイギリスとかその他の商品によ
つて満たされるということは、これは我慢できない。どうしても中小企業の打開ということが切実に叫ばれている。こういう大勢の中におきまして、こういう問題とは遮断したところの方式で以て、ここに海員を如何に増員してみても、これは根本的な対策にはならない。
現実的な要請には応えることはできない。こういう形で一方で作られて行くのでありますが、その結果当然先ほどから問題になりました地方財政負担が非常に多くなる。こういう形で半額を地方が負担する。神戸の現在の財政
状態を見ますというと、非常にこれは苦しい。そのためには、非常に
公務員の首切りなどということが行われている。これは千名にももう上
つていようとしております。又赤字も相当の額にな
つて、市吏員の給料なんかの支払いにも困
つている。こういうような地方の財政の中におきまして、果して一体五年間に亙る二億以上の負担がなし得られるかどうか。むしろこういうような切実な問題のほうを先に取上げないで、そうしてこれは大学だけを建ててみても話にならんじやないかと、こういうふうに思われる。こういう点について、どうも抽象的に
学校を建てるということではならないと思う。そういう点で
天野文部大臣は、今までの日本の七十二の終戦後にできたところの大学について、大検討を加えなければならんということを常々抗議している。その一方におきましては、このような大学の、どういう政治的
事情があるのか知らんのでありますけれ
ども、一方ではやすやすとこれを増設して、今後こういうことで、どういうふうにこれは統一されたところの一国の
教育、殊に大学
教育の政策として打出すのであるか。私は放漫にこれは伸びたところの
一つの機構というものを収縮する場合には、非常に困難が伴うものだと思うのであります。而も又その大学の内容はどうか。これは言うまでもなく、まだ
学生も教授もアバイトを続けているというような
状態、研究心も非常に不足である。どこも充足されない。私は、重点的にこれはま大学の質を取上げて、そうしてその大学の
現状におきましては、内容の充実を図らなければならない。然るに総花的に数だけ殖やし、そうして日本のこのいわゆる十二歳経済にはとても負担し切れないところの七十二の大つ学を作り、その上に又一校新たにこういうものを作ろうとしておる。こういうことは、我々はどういう点から、どのような一体財政計画と
教育計画によ
つて、このことが
文部省によ
つて容認されているのであるか、甚だ理解に苦しむのであります。こういう
現実の問題とやはり絡み合わせないで、
教育政策を律するなどということは、これは全く架空のことだというふうに
考えられるのであります。
こういうような以上申上げました点からしまして、この神戸商船大学の設立ということは、非常にやはり今後私は問題を生むのじやないかと思うのであります。この大学が設立される経緯について、私はつまびらかにしないのでありますが、一、二耳にした点におきましては、甚だ芳ばしからんところの情勢を私は聞いているのでありまして、もう少しやはり一国の文教政策としましては、堂々と確信のある、そうして堂々とその所信をこれは天下に発表できる形で以て、こういう大学が設置されるのでなければ意味を持たないと思うのであります。
以上申上げましたような点を私は主なる理由としまして、このような大学の設置に対しまして私は反対するものであります。