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矢嶋三義君 私は
只今上程されております本
法案に條件附で、遺憾な点もありますが、賛成の意を表明するものでございます。
その第一点に申上げたい点は、今朝ほど
審議過程において
大臣に
質疑をいたしましたが、昭和二十六
年度実施されたところの
法律第四十九号の
提案のときに
大臣が
提案理由として述べられたものと、本
法案提案に当
つての
提案理由には、昨年の
提案理由に違うところの解釈の下に本
法案が
提案されておる。これは
大臣に指摘したところでありますが、遺憾千万に存じます。昨年の
大臣の
提案理由を拜見いたしますというと、
憲法二十六條の第二項によ
つての
義務教育の
無償というものを推進するという
立場から
法律第四十九号を
提案するのだ、而も
法律第四十九号は公立
学校の
兒童を相手としておるのであるが、これは
憲法の
義務教育の
精神からして更に国立、私立にも拡大して行くべきものである。その
一つの足がかりとして
法律四十九号を
提案し、
国民の
義務教育の
負担の軽減を図るのであるということを最も重点的な
提案理由として述べられておるのでございます。然るにその
提案理由を本
法案提案に当
つて引用して曰く、本
年度から特に
児童の
国家公共心の
涵養を図るために、
新入学兒童に対して国語及び算数の
教科用図書を
給與する
ように昭和二十六
年度から
法律四十九号でやりました。こういう
ように掲げられておるのであります。この点は昨年
法律第四十九号の
法案を
提案したときの
提案理由からして非常に転換を意識して、或いは意識しないでやられたのかも知れませんが、非常に遺憾千万に存ずる次第であります。で、
提案理由並びにこの
質疑応答の段階においてわか
つた点は、昨
年度の
法律第四十九号というものは
先ほど申上げました
ように、
憲法二十六條第二項に基いて
義務教育の推進と
国民の
義務教育負担の軽減という
立場から
提案されたものが、而もそれを
政府当局は各庁の職員並びに学識経験者を以て、組織する
審議会において
義務教育の振興の見地から更に恒久的な
立法をする用意があるという下に
実施しておきながら、本
法案におきましては全く転換いたしまして
児童の
国民としての
自覚を深め
前途を祝福するという、こういう
ような形において第
一條の
目的が記載されておるという点につきましては、同じ
教科書を
給與するのでありますが、
憲法二十六條の具現の
方向に進むという
立場から私は後退しておるという点は遺憾とするところであります。併しながら
文部大臣が
質疑の過程において
義務教育無償の
原理というものは決して揺いでおるのではないということを確言され、更に
義務教育無償の推進という
立場からは
自分は異常な決意を以て義務
教育費国庫負担法の制定のために今
国会において
国会にこの
法案を
提案し、その通過に全力を盡す覚悟であると
大臣が言明されたその点を諒といたし、
大臣がその点について確約の
通り今後善処されんことを強く要望するものでございます。
ただこの
法案についていい点を申上げますならば、昨
年度国と
地方公共団体が折半してお
つたのを、
従つて非常にその運営
実施の
技術面において支障があ
つたのがこのたび
全額国庫負担にな
つたという点は
実施面においては非常に都合がよろしきものになり、更に国立、私立へとこれを拡げた点は私はこれを称讃するにやぶさかでございません。
ただ審議の過程に申上げました
ように、昨
年度義務教育無償と、それから特殊
教育の特殊性という
立場から、盲聾
学校の生徒諸君には、国語、算数のみならず、他の
教科書も
無償給與していたのが、本
法案において削除された点は、特殊
教育の特殊性と、この気の毒な人への
義務教育無償を推進する
立場から、私は遺憾の意を表明するものでございます。要するに、この
法案は、
予算の大蔵当局との交渉過程においてもはつきりいたしております
ように、当時九億一千万円を概算要求したその際は、昨年の
法律四十九号の制定の
趣旨に
則つて、一年生、二年生と逐次に
教科書給與を拡大して行くという
立場から要求したのが、途中からこれが転換しまして、一年生だけに限定され、而も本法の第
一條に書かれてある
目的の
ようにな
つたということは、
大臣が
審議の過程に答弁いたしました
ように、平和條約並びに安保條約の発効に伴うところの国家
予算の厖大なる支出増というものがこういう事態を招来し、当初
大臣がきめられたところの小
学校の六年、更には中
学校の三年まで
教科書を
無償にしてやりたいとい
つた、あの
天野文相の構想というものは、いわゆる再軍備のためにここに挫折せざるを得なか
つたということは、今後の我が国の
方向を示唆するものであり、新
憲法を抱いて文化国家の建設を指向しておる我々としては誠に遺憾千万な事柄でありまして、この点につきましては、
政府に、今後新
憲法を守り、文化国家の再建という我が国の指向する
方向と相違しないところの強力なる、全般的文教政策を確立する
よう、強く要望しまして、若干遺憾の点を表明した
通りに、不満な点もございますけれ
ども賛成の意を表明する次第でございます。