○
衆議院議員(坂田英一君)
只今議題となりました
耕土培養法案につきまして提案の理由を御説明申上げます。
米麦等の食糧を初め各種農産物の生産を増加いたしますことは、経済自立の基本要件でありますとともに、
農家経済安定のため極めて重要な施策であることは今更申上げるまでもないところであります。
農産物の増産を図りますためには先ず以て農産物生産の基盤である農地の土壌、いわゆる耕土の生産力を培養すること、即ち土を作り、土を肥やさなければならないのでありまして、特に我が国のように過小の国土の中に過大の人口を養わねばならない国柄におきましてはその感をいよいよ強くするのであります。
農地の生産
條件を改善するため、すでに
農業土木的手段によ
つて土地改良が行われて来ているのでありますが、これと並行して、耕土特に生産力の低い不良耕土に対して、農地化学的手段によ
つてその化学的性質の改良を図りますことは極めて重要な事柄でありまして、これら両者相ま
つて初めて農地の生産力はその全きを期待し得ると考えられるのであります。
翻
つて我が国耕土の
実情を見ますと、自然的又は人為的の諸原因によりまして、酸性土壌、秋落水田土壤を初めとし、塩害地、泥炭地等各種の低位生産の不良耕土が広い範囲に分布し、更にますます拡大せんとする傾向にありまして、
農業生産を著しく阻害し、農村窮乏の重大な原因をなしているのであります。
従つてかかる不良耕土を改善し、
国家資源としての
土地肥沃度の涵養に努めますことは刻下の急務でありまして、かような
事情に鑑み、ここに一貫した計画のもとにかかる不良耕土の解消を図らんとするのが本
法律案を提出するに至りました理由であります。
以下この
法律案の内容について概略御説明申上げます。
第一は耕土培養地域の指定でありまして、都道府県知事は農林大臣の指定に
従つて、管内の農地についてその土壤の化学的性質、不良の
程度、分布
状況等に関する
調査を行い、耕土培養を実施する必要があると認められる地域について、都道府県
農業委員会の意見を聞き、農林大臣の承認を受けて耕土培養地域として指定することにより、耕土培養事業を集中的且つ効果的に遂行しようとするものであります。
第二は対策
調査でありまして、前に述べましたところによ
つて指定された耕土培養地域を、その区域内に含む市町村の長は、市町村
農業委員会の意見を聞いて、都道府県に対策
調査の実施を請求することとしようとするのであります。ここで対策
調査とは農地について耕土培養の要否及びその具体的な
方法を明らかにするために行う細密な
調査のことを言うのであります。
なお市町村長による対策
調査の請求は、
農業者又は
農業団体が所定の
條件に
従つて請求した場合においても行わなければならないこととしようとするのであります。
第三は耕土培養事業計画の樹立でありまして、市町村長はその請求によ
つて行われた対策
調査の結果、耕土培養を実施する必要がある旨の指示並びに必要な勧告を受けたときは、その勧告に従い、市町村
農業委員会の意見を聞き、且つ
関係者の同意を得て、所定の内容によるその市町村の耕土培養事業の総合的計画を定めて、都道府県知事の承認を受けなければならないこととしようとするのであります。而して耕土培養事業はこの計画に準拠して行われることとなり、事業の施行者は市町村、耕土培養地を耕作する
農業者又は
農業団体となるのであります。
第四は補助金の交付、奨励措置又は指導監督等の
助成でありまして、国は都道府県に対し、耕土培養地域指定のための
調査、対策
調査及び耕土培養事業指導に要する経費、並びに事業施行者が耕土培養において施用する物を購入するために、要する経費に対し、交付する都道府県の補助金に対して、補助金を交付するとともに、事業施行者、及び耕土培養において施用する物又は耕土培養の効果を確保するため施用を必要とする肥料の供給を行う者に対し、
資金の
融通又は斡旋その他の奨励措置を講じ、併せて事業施行に関し必要な指導を行う等諸般の
助成を行うこととせんとするのであります。
第五は
開拓地に対する特例でありまして、
開拓地の
特殊性に鑑みまして、
開拓地に対しては政令によ
つて、地域の指定、対策
調査及び耕土培養事業計画の設定等について特例を設けることができることといたしたのであります。
以上が本
法律案の内容の大要であります。
何とぞ愼重御審議の上速かに御賛成を得られますよう切望する次第であります。