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宮本邦彦君 私は実はこの間
自然休会の間に、宮城県の矢本の飛行場と、それから問題の
王城寺ケ原へ
行つて見て来たのです。
ちよつと私心配になることは、この
現地の
実情というものは、
局長の仰せには、やはり
ちよつと飛行機を降りられて見て来たそうですが、詳細に
現地の
実情を聞いて見ると、この
現地の
実情というのは、もつと細かいのですね、はつきり申上げれば……。それで中央で以て
幹部同士が協議し
合つてそれで了解ができたというようなことじや
解決が付かん問題が大
部分なんです。私その問題が非常にむしろ心配されるのじやないか。
王城寺ケ原で一例を申上げれば、これは元の
部落へ盛んに
流弾が飛んで来る。ところがこれは
日本軍が
演習をしてお
つた時代には、やはり
流弾は飛んだことがあるそうです。けれ
どもその時は
言葉がわかるものだから、
附近の人が
ちよつと飛んで行けばそれでぴたつととまつたそうです。ところが今度は飛んで
行つても
言葉がわからんから手を振
つてもてんで問題にしない。それからしようがないから
渉外の係のほうの、
あすこに
英語のできる
巡査が一人おるんだそうです。それが
色麻村にいるそうですが、この
巡査の駐在しておる所は、私は今言
つている
流弾のよく飛んで来るのは大衝という村ですが、大衝村から
色麻村に行きまして、
英語のわかる
巡査の所に飛んで行くのにどうしても半日ぐらいかかる。そうすると
渉外の
巡査が、これは下手な
英語だそうですが、
行つて交渉して漸く
解決の付いた頃にはその日は一日終
つてしまう。こういうような
状態なんですけれ
ども、ところがそういうようなことが、これが部隊の変るたびに起る。それからもう
一つは最近の、御存じのように焼
夷小銃弾でも、何と言いますか、焼
夷小銃弾と言いますか、あれがやはり実弾の中に入
つているのですね。それが飛んで来るとすぐ
山火事になる。田野という
部落は周囲が
山林だものですから、それが落ちるとみんな村が焼かれる。村の
人たちが
皆山火事を消しに飛んで行く。弾は射たれるし、
山火事は消さなければならない。それでたまらんから、何とかして
あすこに
特設電話を引いてくれ、そうして
渉外の
巡査のほうと早く連絡のとれるようにしてくれということを一年前から請願をしているのだそうです。これが一向実現されない。最近聞きますというと、その
流弾が
農家にもう何発もあた
つているのですね。家に七、八発以上もあた
つている。その
農耕地が二十七
町歩くらいある。その
附近まではしよつちゆう飛んで来る。実はそこらの
部落の
人たちはかんかんにな
つておるのですね。そういつた問題、それからもう
一つは、用水路をやたらとめるのですね。あの
王城寺ケ原の真ん中には御存じのように大きな水路、三百
町歩くらい灌漑している用水路がある。ところがアメリカの軍隊は日本のイリゲーシヨンということが頭にないから、しよつちゆう水はとめてしまう。そういうことを幾ら
説明に
行つてもわからないのですね。それからこれは
農業経営形態が違うのですね。
日本軍当時は話せば、
演習場のうちを軍の了解で以て
演習中でも危くない限りは通らした。今は絶対に
演習中は入場禁止で、入れば処罰される。今度は行政協定でもできて処罰が嚴重になるというと、あれは大きな問題に
なつ来るのじやないかと私は心配するのですが、そういつたように個々のケースが非常に複雑しておる。矢本のほうへ参りますと、これは又完全にケースが変
つてお
つて、あれは再
接收になりましてから、海軍の飛行場が四十二
町歩拡張して
接收された。その
接收当時の離作料もまだ拂
つていない。請求しておるけれ
ども、拂うと言
つても離作料はまだ拂
つていない。中にも四十二
町歩というのは完全にいい耕地なんです。矢本の町の真ん中に海軍の飛行場がある。換地がないものですから、皆最近日雇いなんかをや
つているらしいのです。そうして
あすこにアメリカの飛行隊が一千人ばかりいるのですが、そこへ使
つてもらいたいと思
つて行くのです。ところがアメリカのほうの人はそういうような特別の人を使うというような
関係はちつともないらしいのです。これは使うときには一般の失業者を使う。特にそういうものを使
つてくれと言
つて町から
行つてもそういう考慮は一切拂わない。仕事のあるときは使う。ないときは明日から来なくてもよい。こうしたことをやられるらしいのです。従
つて四十二
町歩取られた
農家の中でも、今日では食えなくな
つて町で以て少し扶助を出しているような
農家もあるらしいのですね。ところがそこが今度は又話を聞くというと、これはどういう
程度の話か知りませんが、五十
町歩ばかり拡張されるのだそうです。矢本の町というのは非常に複雑な
事情があ
つて、これは宮城県の海岸地帶のほうから……元の海軍の飛行場の所です。松島飛行場と言
つておる所です。これは恐らく農林省のほうへはそういつた
事情が知れていないのじやないかと思います。というのは、矢本の町としてはそれは余り言いたくないらしい。というのは、近くに岡があるとか、或いは海岸のほうに林があるとかで、そこへ
警察予備隊を招致するという、一
部分に町に運動があるのです。そのために
農民のほうのそういつたことは成るべく中央に聞こえないようにというので、僕らが
行つても町としては、いいえ、大したことはありませんと、こう言う。
農民に聞くというと、実はこういうわけだ、こういうわけだという具体的な困る
事情がある。私は恐らくこの
演習場の問題については、中央で以て御
折衝にな
つて大体
解決が付いたと考えられるような、こんな
原則的な問題では
解決が付かんのが本当だと私は思
つておる。
局長が一地区ごとにやられるという方針はよいと思う。これは一地区ごとに農林省は直接出かけて
行つて、そうして
対策を立てるという行き方はいいと思うのですが、ただ
現地はそれほど時間的な余裕が恐らくないのじやないかということを私は心配するのです。例えば王城寺の第二地区あたりは、あれは耕作はしてもよろしい。けれ
ども演習には使う。だから
演習中は一切入
つてはいけないと、こういう
制限があ
つて、従
つて演習の
計画がどういう
計画ということがわからなければ、
農業経営
計画というものが完全に立たないということなんです。まあこういつた実に複雑な
実情があるので、これはむしろ県あたりに聞いて見るというと、県はただ農林省のほうで今度や
つてくれろ、自分たちは農林省から通知があれば、その
程度の
調査をやるという、非常に消極的に
なつちや
つているのですね。だからもう少し県あたりを積極的に使
つて、そして早く私は
対策を立てる必要があるのじやないか。そんなふうに考えられて来たわけです。なお私細かいことも
調査して参りました。で、農林省としては、その準備作業班というものの権限とか、或いは仕事の内容とか、それと農林省の行政的な
対策としてどんなふうに今後や
つておいでになる方針か。現在や
つておいでになる内容がどの
程度のものか、それを私はここで承わりたいと思うわけです。