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池田宇右衞門君 第三班(四国班)の
現地調査の結果を御
報告申上げます。
四国班は鈴木
委員御病気のため、松永
委員と私で、香川、徳島の
農業経営の
実情と、
農業協同組合の実態を見て参りました。先ず高松に着き、県庁で
県下農業の
実情と、
農業協同組合の一般的な動向について資料によ
つて説明を聞きました。御
承知のごとく香川県は大阪府に次ぐ面積の狭い県で、
耕地約五万町歩、一戸当りの
耕地面積は水田四反二畝、畑一反三畝、計五反五畝とな
つております。併し県の
経済は
農業を主とし、
農業政策は県政の最も重要な部門とな
つております。香川県
農業の特質は溜池灌漑の多いことで、
全国平均では七〇%が河水を灌漑に利用している
現状にありますが、香川県では七〇%が溜池による灌漑で、僅か一三・八%が川から水をと
つております。従
つて大小溜池の数は極めて多く、大きなもの三万、小さなものを合せると五万と言われております。このため河川洪水による
災害ば少いが、早書には困
つております。この
対策としては、四国総合開発計画の一環として、徳島県の吉野川の水を隧道で引き、発電に用いた水を灌漑用に用いるほか途がなく、目下この計画の実現に努力しておる
状態であります。
県下には開拓の余地がありませんから、これによ
つて水源を得れば溜池を水田化できるし、
耕地の拡張と、二、三男の
対策に資するところ大であると言われ、県ではこの水源開発に力を入れております。このように面積の小さい県ですが、
食糧増産の余地はまだあり、土地改良、病害虫防除
対策に努力しているようであります。特に香川県は
耕地を酷使する結果、秋落田が多く、約一千町歩あり、県ではこの
対策として家畜導入による有機質
肥料の補給に努めておりますが、秋落田
対策のため、積雪寒冷單作地帶振興法のような單独法によ
つて、早急にこれが改善を図ることのできるような立法処置を
要望しておりました。又家畜導入
資金措置についても目下立法中ではありますが、特段の御盡力を賜りたいと申しておりました。
土地改良については、団体経営土地改良の補助対象面積が大き過ぎますので、五町歩、十町歩の線まで引下げ、小規模土地改良にも補助の途を拓いて欲しいとの
要望が強くありました。この点
委員会でも御盡力を特にお願い申上げます。
このように香川県では
地方維持のため畜産を
奬励し、畜産振興三カ年計画を立て、各
地方事務所に畜産技師を置いて、品種改良、和牛の乳牛代替等に努めております。畜産
資金として県費一億を県信連に予託し、家畜購入
資金を融通しているほか、仔母牛の産んだ優良な仔家畜の貸付を行い、その家畜が大きくな
つて産んだ仔を返すというような、家畜貸付予託制度を実行しています。
元来香川県は農村副業として藁工品、特に叺の
生産が盛んですが、
原料たる藁を飼料、
肥料に使用する分が少くなり、この意味で藁の
使用方法が問題にな
つております。
戰後の
農業経営で変つた点は、蔬菜、果樹
生産が盛んと
なつたことであります。京阪神市場に近いので、西日本の新興園芸県としてみかん千五十三町歩、「もも」三百六十六町歩、「かき」三百四十二町歩、「りんご」百七十五町歩、「しろうり」二十町歩、早掘
甘藷二十町歩等が
生産されており、集約的
農業経営が典型的に発達しています。このため県の改良普及
事業は大いに力を入れ、水田三毛作の普及のための水稻晩期栽培の
研究等が行われており、その実現には見るべきものがあるようであります。
県の
農業協同組合は信連と
経済連があり、指導連はありません。農協再建整備の進捗
状況について申上げますと、
奬励金交付対象組合の対象とな
つているものは、総合單位組合百八十三組合のうち十七組合であり、連合会では県
経済連と大川郡畜連の二つであります。再建整備に至つた原因を見ますと、前述十七組合のうち六組合は不正事件によ
つて惹起されたもの、他は不良資産と経営放漫によるものであります。このうち十組合は村内不和、政治的対立が組合経営に惡
影響を及ぼしたものであります。県では再建
資金一億を融資し、再建整備
委員会を組織してこれが指導に当
つておりますが、出資増加は順調で、不正事件、村内村立等も順次解決、妥協を見つつある
実情にあります。
香川県の
経済は
農業が主で、塩が副とされておりますので、坂田市の製塩
事業を視察して参りました。製塩業は
農業と密接な関連を持
つており、製塩労力も
農業と兼業で行われております。併し製塩業は
災害を蒙ることが多いので、固定設備の更新に莫大な
資金が要りますので、国家の特別の融資により斯業の発達と、塩
輸入の軽減、塩価の高騰
防止に盡してもらいたいとの
要望がありました。
次いで
県下の優良組合たる郡家村の
農業協同組合を視察し、農協の振興
発展について種々懇談する機会を得ました。前
農林委員の三好議員も同行され、極めて和やかに農協の当面する諸問題について
研究することができました。同村は戸数七百七十三戸、うち農家六百五十六戸、琴平平野の中央に位する純農村で、組合長は県
会議員を兼ねた新進気鋭の士であります。
全国でも有数な叺
生産地で、叺早織りに優勝した村であります。産業組合時代は不振組合であつたそうです、組合精神の普及徹底に努め、年三、四回の部落懇談会により先ず貯金の増加に努め、大口貯金を殆んど銀行等から回收したことによ
つて組合振興の基を築きました。現在
肥料は一〇〇%組合で購入し、年七十万枚の叺も一〇〇%組合で販売しており、この代金だけでも殆んど農手を利用しなくても済むようであります。組合員の組合理事者に対する信任厚く、理事改選ごとに倉庫かその他の建物が一つ殖えて来ていることもこの組合の誇りとするところであります。ここでの懇談会では、土地改良
事業に対する
補助金の安拂いが甚だしく遅れているから早く届くようにしてもらいたい。農協の固定資産税、法人税の軽減と、農家の固定資産税は再考を要するとの声が高く、
供出の中間
経費が高過ぎる。改良普及員は農協に直結し、組合直営にすることが必要であるというような意見がありました。御一考を煩わしたいと思います。
第二日は、小豆島に渡り有名なオリーブの栽培採油施設等を見学し、再建組合として目下整備中の渕崎農協を視察しました。この組合は半農半商の組合員からなり、
資金需要の多い組合で、昔から信用
事業の発達した組合でありましたが、永年勤続の專務理事が村内の有力者である業者、商人に合計三百九十万円の超過貸付けを行いましたが、回收不能となり合計四百二十万円の欠損金を出したため、
昭和二十二年貯金拂い停止を行い再建組合とな
つたのであります。このため組合は不良貸付担保の獲得、役員の強制義務貯蓄等を実施し、新旧勘定を設けて漸次貯蓄拙い停止を緩和し、着々再建に努力し、再建整備の成績極めて良好な組合とな
つております。この組合の再建整備
状況を見ますと、農協の経営、特に信用
事業は專務理事に任せ切りではいけないということ、回收不能の不良貸付ができた場合も、役員、組合員一体とな
つて冷静沈着、飽くまで組合を信頼して再建に協力することが必要でありまして、このため部落懇談会のような組合員の集会をしばしば開いて再建
状況をよく
了解せしめる必要があることを教えております。幸いこの村は村長初め役職員にも人を得て再建に成功した一例と思われます。なおこの島を西に流れている伝法川に
防災溜池を作り、
災害防止と村内灌漑用水の
確保に費せんとする計画があり、小規模という点で問題とな
つているようですが、これが補助
事業としての認可を
要望しており、又島の航路たる関西汽船の航路補助により渡航回数をもつと増して欲しいという
要望がありました。村にと
つて切実な問題と思われますので、各位の御盡力をお願いしたいと思います。
次いで徳島県を視察いたしました。徳島は
耕地面積四万五千町歩、そのうち水田二万七千町歩、畑一万八千町歩で、農家戸数は八万三千戸でありますから、農家一戸当りの耕作面積は五反四畝であり、香川と同じく集約経営を余儀なくされております。従
つて耕地は適地適産主義でよく利用され、養蚕、茶、こんにやく、筍、煙草、蔬菜、花卉等がとり入れられ、副業としては藁工品が盛んであります。特に阿波大根を漬物に加工して出荷する等
農村工業、農産加工も盛んとな
つて参りました。併しこのような
耕地の集約利用は金肥の過重と相待
つて地方の
減退を来たし、酸性土壌二万七千町歩、秋落水田一万八百町歩に達しております。特に先般の南海震災による地盤沈下は、県南の平坦部海岸寄りの美田を塩害による低位
生産水田とし、これが塩抜き、客土のため大規模な土地改良
事業を必要としており、県
農業振興
対策上の重要問題とな
つております。
徳島県の
農業は気候地勢によ
つて大体三つに区別することができます。雨少く日照時間長く経営規模の比較的大きい吉野川流域の
農業地帶と、雨の多い県南平坦部、雨が少く日照時間も少く、経営規模も小さい北部山間
農業に分つことができ、
農業経営の形態もそれぞれ特色を持
つております。即ち吉野川流域の
農業は一戸当り経営面積が県南の
農業地帶よりやや狭いが、戰後蔬菜、花卉等をとり入れた商的
農業が発達しており、県南では
米麦作を主とし、叺製造等藁工品が盛んで、大根、白楽、筍等の栽培が盛んであります。山間部は平均
耕地四反余、麦、こんにやく、煙草等、畑作
農業を主とし、養蚕や「こうぞ」、「みつまた」、椎茸等林産と結びついた集約経営が行われております。従
つて我々は先ず県南と吉野川流域の農村及びその
農業協同組合を視察することといたしたのであります。
なお
県下の
農業組合の現況と再建整備
状況を見れば、連合会九、單位組合三百六十八で、單位組合のうち半数は健全、半数は不健全と言われ、農協
育成には格段の努力が必要であるとのことであります。このうち再建整備法に基いて
農林省から指定されました整備組合は六十一、連合会は三つとな
つております。併し單位農協に対する
政府の財政的援助は極めて少額で、十万円以上
政府から
奬励金を受ける組合は僅か十七組合に過ぎないといわれ、県から
派遣された特別指導員の一ヵ月分の
経費にも満たない組合も三組合あります。県では單位組合に対し増資
奬励金と同額の増資助成金を交付していますが、なお不十分でありますので、同法十條中の補助率を三倍
程度引上げられたいと
要望していました。再建整備のため役職員の練成、
町村軍協の合併促進等に努力しているが、要は優秀常務役職員の養成が必要であるので、養成費、養成施設費等に対し相当
程度の補助の途を開いて欲しいとの
要望がありました。その他一般農政に関しては、麦の
統制撤廃の場合は麦集荷
資金を十分考えて欲しい。又、自作農
維持資金及び農協に対する
農業会からの引継資産に
長期資金の貸出しを是非や
つてもらいたいとの
要望がありました。
徳島県での第一日は、県南新野町を視察しました。その町は千二百戸ほどの農村町で、農家が七百六十一戸あり、水田四百六十九町歩、九千四百四十七石の米を
生産し、四千二百六十五石を
供出している村で、麦も二千石を
供出しています。町民の七〇%は
農業に従事し、一戸当り平均七反、水田五反二畝弱といわれ、徳島
県下では経営規模は大きいほうであります。大阪市場に近いのと、気候温暖で
作物栽培に適するので、筍の速成栽培、椎茸栽培等のほか、番茶製造、みかん、グリンピース、福神漬等の農産加工もや
つており、観葉、果樹栽培や酪農も盛んであります。このように收入も多
方面から入
つて来ますので、農家の
経済も豊かであり、町も
昭和二十五年町債で新庁舎を建てており、豊かな町のように思われました。筍の速成栽培をや
つている農家を見て参りましたが、竹藪に電熱線を張り、電力で熱を與えており、一月という寒中にも筍が出ておりました。その他改良普及員の技術指導の下に椎茸の速成栽培、百合、チユーリップ等の油紙栽培をや
つておる等、集約的な
農業を営んでおりました。農家は皆立派な瓦屋根の家が多く、
農家経済も豊かに見えました。
この村での
要望を聞いてみますと、
農業共済の掛金が高いから掛金を安くしてもらいたい、
災害のない場合には割戻制度を考えて欲しいという
要望があり、
災害復旧の
補助金の支拂が遅れているから、
補助金の交付はもう少しく早く
町村へ届くようにしてもらいたいという
要望がここでもありました。
第二日は、吉野川下流の藍園村に参りました。この村はその名のごとく昔から藍の産地で、旧家は殆んど藍問屋であつたといわれております。この村は、千二百二十九戸、うち農家七百七十七戸で、有名な阿波たくあんの産地であります。米の作付反別は二百八十八町歩、五千九百七十四石の收穫を挙げております。畑作も盛んで、麦七千九十二石、大根百五十万貫、
甘藷十一万貫を初めとし、豆類、茄子、胡瓜、トマト、西瓜、白菜、煙草、葡萄、夏みかんの
生産が盛んで、戰後阪神市場への出荷が極めて順調でしたが、最近他
地方との競争が激しく、運賃の値上り、
価格の下落等で蔬菜栽培も一つの危機に直面しているといわれております。そのため大根を漬物に加工し、年産二万樽を出荷していますが、本年は大根が不作で一万樽に減産されたが、代りに味噌の
生産に力を入れ好評を得ておりました。この村の一戸当りの耕作面積は、平均七反歩で、畑は三毛作をや
つていますが、蔬菜の
価格に変動があるので、将来は花卉、球根等を栽培し、トマト等の加工業を起し、酪農の
発展に努力しているとのことであります。
農業協同組合には全戸加入し、組合員は二千三百人、出資は八十五万円で、貸出しは、預貯金の三〇%を限度とし、一年以上の長期貸出しはしない等、堅実な経営
方針がとられておりました。
米麦の集荷、
肥料、飼料の共同購入、精米や蔬菜の加工等、いわゆる單協の極めてあり来りの
事業のほかに、特にこの組合の注目すべき点は、蔬菜の阪神市場への共同出荷や漬物味噌等の共同販売を行い、
農業経営の
発展に積極的に組合が利用されている点で、将来の農協の行き方の一つを示していると思われます。畑作が主でありますので、将来自動耕転機百台を導入する計画を立て、差当
つて二十台分の融資を申請中であります。なお当
地方は技術が重要な役割を持
つておりますので、技術指導の統一が必要であり、
地方事務所管内にある十二、三種の技術指導員合せて百五十人が興農連盟を組織し、專任書記を置いて技術指導に当
つております。指導体系を一本化して、技術の普及に努めている一例と思われます。
この村での
要望事項としては、
肥料価格の安定策、飼料
確保対策、特に村内六〇%を占めている秋落田
対策等についてその早急実現方を望んでいました。又米の俵裝と
検査の規格がたびたび変
つて迷惑しているから、
余り変更しないで欲しいという
要望がありました。最後に板西町
農業協同組合を訪れました。戸数一千五百八十八戸中、農家八百五戸という農村町ですが、よい組合で、職員が全部窓口に出て事務をと
つておるという変つた組合であります。この町でも改良普及員は組合に駐在しており、技術指導と共同販売を直結一元化して成績を挙げておりました。
ここでは融資手続を簡素化してもらいたい。自作農
維持資金の融通を早く実現して欲しいという
要望がありました。この組合も不良資産を継承して来ましたが、うまく処理した組合の一つで、再建整備には何とい
つても人を得ることが大切で、中心人物養成費を一組合十万円ぐらい補助してくれたら、大抵の組合は面目を一新するであろうと申しておりました。なお、最近税務署が課税対象の
調査にしばしば組合に来るが、組合
事業に直接
影響するので、この点は特に注意してもらいたいとのこのでありました。
大変長くなりましたが、以上
現地調査の
報告を申上げる次第であります。