○
竹下豐次君 私は本
修正案及び
修正案を除いた部分の
原案に対しまして
賛成の意を表するものであります。
ただ
一つ鉱山保安局のこの後の
運営につきまして
政府に要望申上げたいと思うのであります。鉱山保安局は現在資源庁の一局として存在しておるのでありまするが、
原案によりまするというと、今回通産省の官房の一部にこれを取込んで鉱山保安監というものを置くという
原案にな
つておるのであります。これは私から申上げるまでもなく、曾
つて労働省と通産省との間に所管の争がありまして、どうしても両大臣の間の話合いがつかず、総理大臣の決裁によ
つて通産省の所管にな
つたという歴史があるわけであります。両方とも頻りに自分のほうでやりたいと言
つておられました。私はその当時これは労働省で所管すべき性質のものであろうと思
つてお
つたのでありまするが、私の意思に反しまして通産省の所管になりまして、通産省の所管になりました時の通産省側の主張といたしましては、坑内の技術等と非常に密接不可分の
関係があるからどうしても通産省でやらなければならないのだという一応尤もの
理由が付せられてお
つたのであります。それはその
通りであります。併し又疑
つて見れば、それを労働省で切離して所管されるということにな
つたならば、監督が非常にやかましくな
つて、通産省のほうで採掘のほうの支障になるような場合がないとも限らないという
心配もあ
つたのじやなかろうかと私は想像してお
つたのであります。通産省はどちらかと申しまするというと、直接眼に見える生産のほうに主力を注がれまして、通産省に絶えず出入りしておる人
たち、接触される人
たちが資本主系統の人のみであると言
つてもいいくらいでありまして、現在はこの鉱山保安局というものは資源庁にありましたから、その
関係の人
たちは労働方面の人も出入しておりましようけれ
ども、大多数は資本家側の人
たちでありまして、役人の頭も自然にそのほうに引きずられるという傾向があるということは、これは
疑いもないことであろうと私は見ておるのであります。
従つてこの現在までの
状態におきましても、必ずしも私のひがめではないだろうと思
つておりまするが、鉱山保安局というものがあ
つても、これはちよつと養子に取
つておるのだというような形が続いて来たのじやないか。併し養子も本当に欲しい養子ではなくして、よそに離しておいたならば邪魔になるかもしれないから、家の養子にして置こうというような気持が残
つていやしないか。その現れが今度小さい監というようなものを置いて、官房の一部でその
仕事をするようにまとめようとされたのではないかという、こういう
疑いを一応起したのであります。若し私のこの想像が当らなか
つたら非常に仕合せでありまするが、私は忌憚なく申しますならば、そういう気持がいたしたのであります。今回この
修正案ができまして、鉱山保安局というものを通産省の一局として設けるということに
修正されたのは、誠に時宜を得た立派な
修正であると私は確信しておるのでありまするが、併し通産省の幹部の人初め役人全体の頭は私の想像してお
つたような考えで、この後も又続くというようなことになりましたならば、折角局というものが維持されるということになりましても、又その
運営を誤る危険が非常に多いと思うのであります。私はこの保安の問題につきましては、私自身のことを申上げまして甚だ恐縮でありまするが、別に自慢話ではありませんので、むしろ恥さらしを申上げる次第でありまするから、
簡單に申上ることをお許しを願いたいと思うのであります。それは大正の初め頃日独戰争がありました頃、私は福岡県の警視として保安課長を勤めておりました。その当時福岡県の筑豊炭鉱、三菱の方城炭鉱が爆発いたしまして、一発のガスの爆発で以て六百八十七人という者が即死したのであります。丁度青島戰争のときでありまし、戰争で一年間で死んだ者の数よりも、一発の爆発で死んだ人のほうが多か
つたのであります。職務上私はもとより飛んで参りました。数日というよりも
相当長い間その取片づけ、後の処置に苦心いたしたのでありまするが、そのときの酸鼻の
状態を今考えましても、本当に身ぶるいがするのであります。もとより今日はそういう予防のほうも進んでおりまするし、
相当に役人の頭の切替えもあり、又労働運動も盛んになりましたので、その当時のような失敗を又繰返すようなことはないと確信しておりまするけれ
ども、その後の
状態を私は
相当な関心を持
つて気をつけておりまするが、工場災害にいたしましても、又特に鉱山、そのうちでも石炭山の災害というものは、本当に身ぶるいのするようなことが非常に多いのであります。どうかその点を
政府のほうでもよく頭に置いて頂きまして、折角できまする鉱山保安局の
運営を十分に効果のあるように労働者の立場もお考え下さいまして、
運営をよくして頂きたいのであります。かようなことはこれは社会党のおかたの申上げられるようなことであるのかも知れません。当然そのことは私から申すまでもなく社会党方面から労働
関係の人
たちは私よりも一層痛感しておられるところであろうと思いますが、併しただ直接労働者に
関係のある
国民のみならず、その以外の人におきましても、例えば私みたような者でもこういう
関係についちや深い関心を持
つておる
国民が多数あるということをよくお考えをお願い申上げたいと存ずる次第であります。これだけの
希望を申上げまして、
賛成の意を表します。(拍手)