○上條愛一君 私の最後に申上げたい点は、
大橋国務大臣の申されるように、
海上警備救難部と
海上警備隊と全く別なものでありまして、
海上警備隊は借りるところの六十隻の船を以て佐世保或いは横須賀、旧軍港に平素訓練だけをしてお
つて、十勝沖のような一朝有事の際に出動するというのが、これが
海上警備隊の建前であります。私はそのときに若し真に
海上警備隊というものが、
海上の治安、警備救難の仕事を目的とするならば、これは今ある九つの警備救難の港にこの
借受ける六十隻を配属して、治安、警備救難の仕事に当るのが当然じやないかという主張をいたしたのであります。これは別問題として、とにかく
海上警備隊というものができたわけであります。そこで
海上警備隊は由来警備救難部の補助的の仕事としてできたのでありまするから、これは密接なる関連を持つことは当然のことであります。ただ私の恐れるのは、
海上警備隊というのは、我々から申しまするば、これは戦力に一歩前進する機構であると
考えるのであります。ところが今度はこの機構へ警備救難の仕事に当るべきものを
海上公安局として一歩戦力のほうへこの組織をも持
つて行こうというのが今回の保安庁の機構であると我々は
考えるのであります。そこで私の申上げたい点は、真に平素における
日本の治安、警備救難の仕事を完全にやるということであれば、これは何を目的とするかというと、今運輸省に属している
船舶の警備救難であります。これらのものを以てするというならば、この運輸省と切離しては
海上の警備救難というものは完全に行われないわけであります。
〔理事
中川幸平君退席、
委員長着席〕
例えば船が遭難したという場合には、単に警備救難部の船だけではいけないのであります。そこを通るところの普通の
船舶のやはり力を借りて、協力を待
つて初めてこの海難の救済というものができる。その場合に横須賀や佐世保におる遠くの
海上警備隊の船の出動を待
つては間に合いやしません。例えば密輸船を発見したといたしましても、これらを警戒するためにそんな横須賀や佐世保や舞鶴にあるような遠い
海上警備隊の船の出動を待つようなことではならんのであります。そこで
海上警備ということは、これは運輸省の
船舶を中心にしてやるべきものであるから、一般の
船舶は運輸省が掌握してお
つて、船員も
船舶もすべて運輸省に所属しているのに、その警備救難に当るところのこの
海上公安局というものを
海上警備隊と同じ組織に持
つて行
つて陸上の保安庁にくつつけて、そうして一歩戦力的の組織にしてしま
つて、果して日常の
海上の警備救難ができるかという問題であります。そこに問題がある。
大橋国務大臣は、単に
海上公安局の船と
海上警備隊の船と密接なる
連絡をとらせるために組織を一にするとおつしやるけれども、そのことは当然のことである。
海上警備隊というのは
海上の警備救難部の補助的の任務として作られている以上は、密接な
関係をとるということは当然なことであります。若し真に
日本の
国家の現在において
海上の保安、警備救難ということを主としてお
考えになるならば、むしろ保安庁というものなどを作らずに、
海上警備隊と警備救難部の仕事を一緒にして今
松原さんの言うようにするのが当然だと思う。ただ恐れるところは、
政府のやり方を見ていると、警備救難部の仕事を拡充すればそれで足りるのに、わざわざ
海上警備隊というものを作
つて戦力であるような、貸りた船を旧軍港において平素は訓練だけをしてお
つて一朝有事、これは一年にあるか二年目にあるかわからんような一朝有事のときのみ出動する。こういうようなものを作
つたのが我々はすでに反対である。ところが今回はその上に平素の警備救難部の仕事を
海上公安局というものを作
つて海上警備隊と一緒にして、そしてこれを陸上の
警察予備隊と一緒にして保安庁を作るということは、平素パトロールして
海上の警備救難の任に当らなければならないこの船までも、これを一歩戦力、軍備のほうに持
つて行こうという傾向を強めるのに私どもは反対しているわけでありまして、この点は十分考慮の余地があると我々は
考えるのであります。