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1952-06-17 第13回国会 参議院 内閣委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)    午前十時五十八分開会   —————————————   出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            鈴木 直人君            中川 幸平君            成瀬 幡治君    委員            草葉 隆圓君            楠瀬 常猪君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            和田 博雄君            上條 愛一君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   国務大臣    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    行政管理政務次    官       山口六郎次君    行政管理庁次長 大野木克彦君    行政管理庁管理    部長      中川  融君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    法務人権擁護    局長      戸田 正直君    入国管理庁審判    調査部長    鈴木 政勝君    労働政務次官  溝口 三郎君    経済安定本部総    裁官房長    平井冨三郎君    資源調査会事務    局長      大野 数雄君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君   説明員    法務総裁官房祕    書課長     青木 義人君    労働大臣官房総    務課長    労働大臣官房統    計調査部長   富樫 総一君   —————————————   本日の会議に付した事件法務設置法等の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○労働省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○経済審議庁設置法案内閣提出・衆  議院送付) ○経済安定本部設置法の廃止及びこれ  に伴う関係法令整理等に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○資源調査会設置法案内閣提出・衆  議院送付)   —————————————
  2. 中川幸平

    理事中川幸平君) それでは只今から内閣委員会を開会いたします。法務設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。前回に引続き質疑を続行いたします。
  3. 楠見義男

    ○楠見義男君 法務設置法につきまして私は主として人権擁護局関係のことについてお伺いしたいのでありますが、その前に極く簡単に字句的のことでありますが二、三お伺いしてみたいと思うのであります。それは現在も恐らく法務府所管になつておられると思いますが、皇統譜ですね、今度新らしい法律で行きますと第五条の所管事項の一に掲げてあります「皇統譜副本保管に関する事項」これはどういう理由皇統譜副本法務府で所管になつておられるのか、この御説明ちよつとお伺いしたいと思います。
  4. 青木義人

    説明員青木義人君) お答えいたします。新憲法施行前は御承知のように副本内大臣府で保管されておつたのであります。で、正本宮内大臣府で保管する。新憲法施行と同時に皇室典範が変りまして皇統譜についての政令が出ておるわけでありますが、その際内大臣府がなくなりまして副本所管するところが適当な役所がなくなつた。たまたま法務府、その当時の司法省におきましては戸籍関係所管いたしておりまして、いわば天皇及び皇族についての身分関係を明らかにする性質もあるのでありまして、副本司法大臣保管するのが適当であろうということでその当時から司法大臣保管責任と相成つておるわけであります。
  5. 楠見義男

    ○楠見義男君 その副本保管場所というのは特別の何か装置なんかやつておられるのですか、どういうふうにして保管せられているのですか。
  6. 青木義人

    説明員青木義人君) その副本保管につきましては相当普通の書類保管と異なりまして、災害その他につきましても万全を期せなければならん。従来内大臣府の建物保管してありましたが、まだそこに保管いたしております。責任法務総裁責任としておるわけであります。勿論副本につきまして、取出し持出しのようなときには法務大臣責任において処理をいたします。
  7. 楠見義男

    ○楠見義男君 その保管場所管理と言いますか、そういう関係法務府の法務大臣の今おつしやるように責任の下に保管しておるということなんですから、法務府の所属の官吏と言いますか、そういう人が管理をしておるのですか。
  8. 青木義人

    説明員青木義人君) 法務府の人手も足りませんし、場所が皇居内のものでありますから、事実上の建物周囲管理等宮内庁のほうに御一任いたしてあります。別個に法務府のほうで直接保管いたすためには、相当な倉庫その他の設備特に湿度、温度というようなことを絶えず調節いたして参らなければならん、そういう関係で別個にその倉庫を増設いたしますることは非常なまあ莫大な金額を要しますので、当座の間宮内庁保管することに事実上の場所はしておるわけでございます。
  9. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは或いは意見になるかわりませんが、従来の機構改革とか、或いは人員整理とかいろいろの場合に責任体制確立ということをやかましく政府言つておられるわけです。そこでその具体的の場所について恐らく今は従来の内大臣府のところを保管場所として、完全な保管場所保管せられておると思うんですが、その場所を移せとかなんとかいうことでなしに、そういうことを言つておりませんが、全くひと責任保管をして、最終的責任だけを法務大臣が背負うというのは責任体制確立の上から言つても私はおかしいと思うので、少くともまあ現在はその兼務という制度は認められないでしようが、何らか法務大臣の下における責任のある官吏保管する、そうしてその責任については最終的に法務大臣責任を負うということでないと、責任体制確立の上から言つておかしいのじやないかという気がするのですが、どうですか。
  10. 青木義人

    説明員青木義人君) 御意見御尤もだと思うのでありますが、ただ正本副本はやはり別々に保存して別々の責任者保管して、一方のほうの災害による滅失その他に備えるという立場から、形から申しますと宮内庁正本副本を一緒に保管するということはやはり建前上おかしいのじやないかということでやつておるわけであります。法務府といたしましてもこの点につきましては重大な責任を感じておるのであります。書込みのための持出しその他の際には非常にまあ注意いたしておるわけでございます。
  11. 楠見義男

    ○楠見義男君 いや、私は正本副本が別々の官庁保管しておるということは、責任をその点については結構だと思つておるのであります。ただ申上げておることはその最終的には法務大臣がその責任を持つ、ところが保管についてはひとにお願いをして任せておる。場所のことを言つておるのじやございませんが、管理の機能のことを言つておるんですが、全く他人管理に任せておいて、そうして事があつた場合には最終的に法務大臣責任を負うということがおかしいので、場所は同じ場所であつて、それから責任は今おつしやつたように、正本副本は別々の官庁がやるということも結構なんですが、その自分の最終的の責任を負う副本管理について、全くその他人様任せだというのがおかしいのじやないか、こういうことなんですよ。
  12. 青木義人

    説明員青木義人君) 目下場所的に離れておりますから、その点が我々としても非常に保管責任を事実上果していないのじやないかというような気があるわけであります。この副本につきましては厳重な倉庫が独立いたしておりまして、そのなかに常時保管されまして、それ以外には全然持出しなり倉庫を空けるということはないのであります。従つて普段の保管につきましてはその倉庫周囲をまあ監視するということにあるわけであります。ほかのいろいろな書類がたくさん入つておりまして、その書類の出し入れをするために絶えず倉庫を開けたてしておるということでは、これは我々といたしましても直接やはりそこに事実上の監視の手を打つておかなければならんと思いますが、普段は開けたていたしておりません。ただ単に外部からそれを監視しておるという形になつておるのでありますから、事実上は目下の形でそれほど支障はないと考えております。
  13. 楠見義男

    ○楠見義男君 鍵は法務大臣が持つておるんですか。
  14. 青木義人

    説明員青木義人君) そうであります。
  15. 楠見義男

    ○楠見義男君 次に設置法改正法律案の三十四頁なんですが、地方更正保護委員会委員会構成の問題なんですが、その十五条ですね。「委員長は、地方委員のうちから法務大臣が命ずる。」ということになつておりますが、大体今までその各委員長委員の中から互選をするというのが普通のようですが、特にこの地方委員についてその委員長法務大臣が命ずるということにしておるという理由は、特別の理由はございますか。
  16. 青木義人

    説明員青木義人君) 地方委員会委員長任命につきましては、現在の犯罪者予防更正法第十条第三項におきまして、「委員長は、地方委員の中から法務総裁が命ずる。」となつております。従前規定をそのまま踏襲いたしているわけであります。
  17. 楠見義男

    ○楠見義男君 最近の委員会は昔と違つて、昔は今おつしやるように大体例えば審議委員会各省に設置される審議委員会等においても委員長は直接その各省大臣が当るとか、大臣任命するとかいう制度であつたものを、新憲法施行後はできるだけ民主的にやるという意味で委員長委員互選というふうにだんだんなつている。特にこの地方委員だけそういう特別の制定をする理由があるかどうかということですが、その点を伺つているのですが。
  18. 青木義人

    説明員青木義人君) 中央委員会におきましては互選と或いは大臣任命と両方二種類ありますことは御指摘通りであります。この地方委員会におきましては全国に八カ所ありますし、而もその地方委員会が直接行政事務を担当する行政機関になつているものでございまするから、そういうような点を勘案いたしまして従来の通り建前を踏襲いたしたわけであります。
  19. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は実はそういうことをどうして伺うかといいますと、地方委員会の十五条では地方委員の中から法務総裁が命ずるとあつて、それから九条の中央委員会の場合は委員互選によつて法務総裁が命ずる、同じ委員会中央のほうがむしろ行政官庁的な色彩が強いとすれば逆でなければならないと思うのが、ところが我々の考えとしては逆になつているものですから、そこで特に地方委員会だけこういうふうにして中央と異なつている、その理由が伺いたいのです。
  20. 青木義人

    説明員青木義人君) 中央審査会におきましては、今度の改正案によりますると、特定の決意についての権限のみを与えられまして、今までの中央更正保護委員会のような一般行政事務所管するという形と異なつております。然るに地方委員会におきましては従前通り地方委員会特定のものといたしまして、仮出獄その他の決定をいたしますと同時に、保護観察所事務監督といつたような一般行政事務も担当することになつております。従つてその限りにおきましては法務総裁の直接の指揮もまた受けるという形になりますので、若干そこで差違をつけたわけであります。
  21. 楠見義男

    ○楠見義男君 どうも私納得できないのですが、次にこの十六条ですが、十六条に所定の事項について「地方委員三人で構成する会議体で、その権限を行う。」ということになつておりますが、十三条のほうでは三人以上九人以下の委員組織する。これは恐らく三今三人の会議体でやつて行く、こういうことになると思うのですが、そうしますと十三条の三人以上九人以下というのは三人、六人、九人、こういうふうなことで行くのですか、その構成はどういうふうにお考えになつておりましようか。
  22. 青木義人

    説明員青木義人君) この点は御指摘通り三人で構成して権限を行うことになつております。従つて委員会組織も三人以上九人以下、即ちその会議体一つである委員会もありますし、二つある委員会もありましよう、それは事務の繁閑に応じまして委員任命をいたして参りたい、こういう所存でございます。
  23. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると今の三人、六人というのは三人二つで六人、三つの九人と、こういうふうに三、六、九という行き方なんですか。
  24. 青木義人

    説明員青木義人君) 普通そういうように今後の任命はなつて参りますと思いますが、必ずしもそうなりません場合もあると思います。と申しますのは会議体がその事件々々について会議体ができるわけでございます。一人の委員ダブつて二つ会議体がなつているというような形になりますれば、必ずしも三人、六人、九人というふうにならなくても運用できるわけであります。
  25. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは本論の人権擁護の問題についてお伺いをいたしますが、文部省の新らしい設置法の六条の九号から十二号まで掲げられておるそれぞれの事項について、一応現状の御説明を煩わしたいと思います。
  26. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 九号は人権審判事件調査及び情報収集に関する事項、これは憲法規定されておりまする国民基本的人権侵害されたというような場合に、被害者親告或いは新聞、ラジオ等情報認知、或いは他官省からの移送、これらにつきまして、事件を受理いたしまして調査に着手いたすのでありまして、それから御承知のように日本はまだ封建制度の長い歴史を持つておりますので、いろいろ封建的な残存、或いは弊習というものがまだ各地に残つておりますのて、そういう方面も人権擁護調査し、又情報収集をいたすというのが九号でございます。
  27. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと途中で失礼ですが、そういう情報収集というような場合にどういうような手段、方法を通じて収集するかという実際の動きですね、事柄、事項説明だけでなしに、実際の動き説明して頂きたいと思います。
  28. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) それでは一応御参考までに人権擁護局機構を御説明いたして置きます。  人権擁護局昭和二十三年の二月十五日に当時の法務府にこれは設置されました。人権擁護局には一課、二課、三課という課がございます。その第一課では人権擁護の企画に関する事項、第二は民間における人権擁護運動助長に関する事項、三が人権擁護委員に関する事項、四が他の課の所管に属しない事項、二課においては人権審判事件調査に関する事項、二が人権審判事件に関する情報収集に関する事項、第三課においては人身保護、その他人権に対する侵害の排除及び被害者の救済に関する事項、二が貧困者訴訟援助に関する事項、三が国選弁護人に関する事項、四が自由人権思想啓蒙活動に関する事項、こういつたような一課、二課、三課に所管を分けております。人権擁護局下部組織といたしましては各高等裁判所所在地、これには法務局を置きます。それから地方裁判所所在地地方法務局法務局の中には人権擁護部という部を設け、それから地方法務局の中には人権擁護課というものを置いております。これが簡単な今の機構でありますが、そのほかに補助機関といたしまして全国の各市町村から人格識見の高い、それから広く社会の実情に通じて、而も人権擁護に熱意を持つているというようなかたがたを各市町村長市町村議会の議を経て候補者を推薦いたします。それに対して県知事、弁護士会長、これが意見を附けて、それに対して法務総裁はその推薦された倍数のうちから委員を委嘱するというようなやり方をいたしております。これが只今全国で約二千五百名、そして各法務局ごと人権擁護協議会連合会というものを組織いたしまして全国四十九個所あります。これがあらましのものです。  そこで各地人権侵害事件が発生しましたときに、先ほど申上げたように親告による場合、それから情報認知において移送ができるというような場合に事件を受理いたしまして、調査に着手いたすわけであります。人権擁護局では第二課において侵犯事件調査、或いは情報収集をいたしております。それから下部組織におきましては、先ほど申上げたように法務局地方法務局人権擁護部、或いは人権擁護課職員調査をいたすのでありますが、なお人権擁護委員は又独自の立場において調査或いは情報収集をいたすことができることになつております。ただその場合には法務局、或いは地方法務局連絡をとつて調査するというようなことに相成つております。そこで調査いたしまして人権侵犯事件が明らかにあると認められることになりますと、地方法務局におきましては調査をいたしまして意見を附けて、特に只今説明はいたしておりませんが、公務員或いは特別公務員というような公務員職権外暴行凌辱というような、私のほうで俗に使つております第一種事件、即ち調査をどうしても必要とする事件、第一種事件につきましては地方法務局調査しました意見を附けて、管轄の監督法務局指示を仰ぐということになつております。而してこれらの調査及び調査しました結果、告発する、或いは勧告をするというような必要の生じました場合には同時に法務総裁のほうの承認を得るというような段取に相成つております。大体九号はこの程度でよろしうございますか。  それから十号の民間における人権擁護運動助長に関する事項でありますが、これは今日の日本におきましてはまだ人権思想啓蒙普及時代になお入つていると思います。日本においては自由人権思想普及啓蒙というものは非常に重大な仕事でございます。そこで人権擁護局におきましても、例えば啓蒙普及仕事侵犯事件同様、或いはそれ以上に重点をおきまして、啓蒙普及運動をいたしておるのであります。こうした仕事は到底役所だけではできる仕事でございませんので、民間におけるいろいろの諸機関連絡をとり、又お互いに助け合つて仕事をいたさなければ、なかなかこの人権擁護仕事というものは十分な効果を発揮いたしません。そこで当局の人権擁護運動と同時に、民間における人権擁護運動に対してもでき得る限り協力して、助長して参りたいというのが第十号の規定でございます。  それから十一の人権擁護委員に関する事項、これは先ほど御説明申上げましたが、人権擁護局が新しく設置されまして、御承知の終戦後新らしく設けられた制度でございまして、長い間の封建政治の下に生きて参りました日本国民というものは、まだまだ本当の人権思想というものは体得いたしておりません。そこで法務府内人権擁護局という一役所によつて、この人権擁護という大きな仕事ができ得ませんことは申上げるまでもないのでありまして、どうしてもこの仕事民間と協力して行かなければできない仕事だというような考え方から、先ほど申上げたように広い各全国市町村から有力なかたがた委員にお願いするというようなことから、先ほど申述べたような手続によつて法務総裁人権擁護委員を委嘱申上げることにしておりまして、この人権擁護委員制度というものは御参考までに、多少御質問に外れるのですが、これは日本だけの制度でありまして、いずれの国にもこの制度はございません。従つて外国においても、日本における人権擁護委員制度というものは非常に重視し、又興味を持つて見ているような次第で、先ほど申上げたような全国の二千五百名の人権擁護委員が非常に熱心に無報酬でこの人権擁護運動に御努力を願つております。啓蒙普及等についても非常な効果を挙げている次第でございます。こうした人権擁護委員を委嘱する、又解任するというような事項と、それから各支局には協議会、それから先ほど申上げました地方法務局、又法務局、これには協議会連合会というものを組織いたしまして、これが勧告等のいろいろの世話をいたす事務、これが第十一号でございます。    〔理事中川幸平君退席、委員長着席〕  それから第十二号は人身保護貧困者訴訟援助その他人権擁護に関する事項ということになつておりますが、これは御承知人身保護法によつて新しい法律ができました。不当に人身が拘束されている場合、裁判所に訴えて人身を保護するような法律がございます。これらによつて不当に拘束された人を速やかに救済する。それから正しい権利を持ちながら貧困者であるために訴訟ができないというものを訴訟援助しようというのが貧困者訴訟援助でありますが、ここでちよつとお断わり申上げなければならんのは、この貧困者訴訟援助人権擁護局所管になつておりまするが、従来これは大蔵省に予算を請求いたしておりましたが、これは常に落されております。従つて一つ所管になつておるのでございますが、予算関係上今までこれはいたして参りません。ただ僅かに貧困者訴訟援助を要するものがどのくらいあるかということを各法務局を通じて調査いたしておるという程度で、実際に貧困者訴訟援助をいたしたことはございません。ただ何とかこれもいたしたいというようなことから、これを民間の団体に何とかお願いしたいというようなことを考えておりまして、約二年半くらい前から弁護士会に相談いたしまして、その訴訟援助をするように一つお願いしたいということで、私のほうも側面から協力し又援助いたしまして、先般日本弁護士連合会が中心となつて他の機関と協力いたしまして、財団法人法律扶助協会というものを設立いたしまして、只今着々と訴訟援助の実を挙げておるようであります。従つて私のほうではそのほうと連絡いたしまして、そういう訴訟援助を必要とするものがあれば、そちらのほうへ廻すという程度で、人権擁護局自体といたしましては実際に訴訟援助をいたしておりません、かような状況でございます。その他人権擁護に関する事項といたしまして、今までに含まれない、而も人権擁護を必要とするような事項をいろいろ取扱つておるようなわけでございます。
  29. 楠見義男

    ○楠見義男君 九号から十二号まで一応御説明を伺いましたが、それぞれの号について更にお伺いしたいのでありますが、先ず九号ですが、先ほど御説明頂きましたように人権擁護委員がいろいろ調査をしたものをそれぞれ地方法務局人権擁護課とか或いは人権擁護部へ持つて行つた、それを受理したところでそれぞれ段階を経て案件についての処理について指示をして行くというお話があつたのですが、具体的に例えば人権擁護局が民事局にそういうことを働きかけるとか各行政官庁に働きかけるとか、そういうふうなことをやるわけですか。
  30. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 今の人権擁護委員或いは各地方法務局職員調査いたしまして、人権侵害事件があるということになりますと、何らかの処置をいたさなければならないのでございます。その処置方法を如何にするかということになりますと、これも御参考までにこの機会に申上げたいと思いますが、各法務局職員又は人権擁護委員も、調査又は処置に対する権限を持つております。何らのと申上げたのですが、強制権を持たずして調査し又処置をいたすということに従来いたしております。そこで私のほうで任意の調査をいたしまして、その結果侵害事件が明らかに認められるということになりますると、その事件の軽重によりまして人権擁護局の一番大きい、強い処置方法としましては、先ず告発をいたすことになつております。それからその次が勧告ということをいたすことになつております。その勧告の中には行政処分を求める勧告、それから将来一つ注意をして再び人権侵害のないように注意せられたいというような勧告、即ち一般勧告というものをいたしております。その次に事件は或る程度認められるが、強いて飽くまでも追及するほどのものではないじやないかと思われるような事件、これに対しましては従来不問処理というのをいたしております。これはこの言葉が適当でございませんので今度訂正いたしたいというふうに考えておりますが、これは検察庁でいいますれば丁度起訴猶予に大体該当するものと見てよかろうと思います。将来は処理猶予というような言葉に直しませんと、これは全然事件がなかつたのだというふうにとられる虞れがありますので、これは将来名称を変えたいと思いますが、只今までは不問処理ということにいたしております。それから只今の村八分というような事件、これは飽くまでも追及すると、却つて将来とも感情の対立を来して真の解決にならないというようなことから、でき得る限りそういうことは人権擁護上許されないことだということで納得させて、円満解決させるというような方法をとつておりまして、これは単に村八分だけではございませんが、そうした場合の示談、これも言葉が適当ではありませんので、将来変えたいと思つておりますが、只今では示談処理というようなことをいたしております。それからこれが他の官庁に属するもので、個々の所管ではないというようなことで、所轄庁の移送というような処理をいたしております。それから審判事件として我々が受理いたし、又調査に着手いたしたのでありますが、すでに同じ問題を検察庁においてすでにとり上げたというような場合がございますと、これは同じようなことをいたすことは却つて捜査の妨害になる場合もございますし、又無益な場合もございますので中止いたす場合がございます。こういう場合は中止処分ということになります。それから申告を受け、又受理をいたして調査いたしましたが、針小棒大に訴える。或いは事実無根、摸造の事実を親告して来るというような場合も可なりございます。こういう場合に対しては非該当ということで処理をいたしております。大体従来は今申上げたような方法処理をいたしております。
  31. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お述べになりましたいろいろの処置の中で、例えば告発とか勧告とか、こういう外部に対する意思発表ですね。これは誰の名でやるのですか。
  32. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) これも事件の難易軽重にもよるのですが、地方法務局長名を以て、人権擁護局長の指示に基きというようなことで、法務局長名を以ていたす場合もございますし、それから主に勧告のような場合は人権擁護局長名を以て告発及び勧告等をいたしております。
  33. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると今度改正になると、民事局に属する場合には民事局長指示に基きとかいうことになると、刑事事件みたいなものはどういうことになりましようか。
  34. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) これは実を申しますと、さつきはつきり勧告等には誰の名儀を以てするかということも実はまだきめてないのでございますが、まあ民事局の仕事とこの人権擁護仕事とは多少性質が違いますので、特に一般の不慣れな民事局と申しますと、人権擁護のあれについて民事局長名が適当であるかどうかということは、これは一考を要する問題だと思うのです。或いは人権擁護課長名でいたしたらどうかということも考えられるのですが、今日の日本のような国柄では、課長名ではなかなか他官庁に対して果して、而も権限を持つておるならば、これは私は差支えないと思うのですが、先ほど御説明いたしましたように、何らの権限を持たずして処置をいたすのでありまして、その場合に従来人権擁護局長というまあ一つの敬意と申しますか、信頼と申しますか、そういうことによつて十分の効果を挙げて参つたと思うのであります。権限のないものが、而も課長名で果して十分な一体効果が挙げられるかどうかということも、相当これは考慮しなければならん問題だと思います。人権擁護の性質上は、人権擁護課長名でよろしいのでございますが、そとに対する或いは受ける感じというものは、これはやはり民事局長名を以ていたさなければならないのではなかろうかというふうに考えております。
  35. 楠見義男

    ○楠見義男君 只今お述べになつた点、私どもも実は非常に新しい機構においては問題じやないかと思つておりますが、これはまあ意見になりますから、深く述べませんが、次にこの九号に関連してお伺いしたいのは、私の承知しておるところでは、人権侵犯事件受理件数は昭和二十三年は四十八件、昭和二十四年は五千七十六件、二十五年は六千七百三十三件、二十六年は一万五千五百八十九件、こういうような数字と承知しておるのですが、あなたのほうのお調べで、これと違つておれば正確な数字を聞かして頂きたいと思います。
  36. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 只今御質問の通りで大体例えば私のほうの調査によりましても、同じ件数になつております。只今の御質問の通りの件数に間違いございません。
  37. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは今伺つてもいいのですが、できれば書類でも結構ですが、この二十三年から二十六年に至る各年の件数について、先ほど御説明頂きました告発、勧告、それから不問処理、示談、中止処分、非該当、こういうことに分けてお示し頂きたいと思います。これは印刷で明日にでも。
  38. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 二十六年度分でよろしうございましたら、只今大体わかるようでございますが。
  39. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじや二十六年だけでもあと二十四、二十五、三は書類でも結構ですからあとで、一応今二十六年の分で伺います。
  40. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) それでは二十六年度中のものを、簡単に申上げます。
  41. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからついでにお述べになること、あとで書いたもので皆さんにお配りして頂くといいと思いますから、大体だけでも今ちよつと。
  42. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) それでは書面でのちほどお渡しいたすことにいたしまして、大体のところだけを御説明さして頂きたいと思います。二十六年度中の事件の受理件数が一万五千五百、先ほど八十九件とおつしやいましたが九十件でございます。そのうち特別公務員による職権濫用これが四百九十七件、それから暴行凌辱これが百四十六件、それから致傷致死これが十二件、従つて特別公務員による人権侵害が六百五十五件、これは主として警察官であります。それから一般公務員の職権濫用に属するものが九百三十二件、それから村八分これが百三十九件、人身売買これが百十九件、それからリンチこれは十三件、強制圧迫これが四百十一件、差別待遇これが百七件、それから参政権の侵害、これは選挙権に関してでございますが二十七件、不当解雇百七十二件、それから不法監禁六十二件、その他暴力行為が集団によるものが三十六件、単独による暴力行為が三百三件でございます。まあ主なものは大体今申上げたようなものでございます。これに対してどういう処置をいたしたかということについて簡単に申上げますが、先ほど申上げました特別公務員による人権侵害のうち、職権濫用これに対して勧告いたしましたのは三十四件、それから示談で話のつきましたのが二件、それから不問処理、これは先ほど申しました起訴猶予的なものこれが百件、あとは省略さして頂きます。それから特別公務員による暴行凌辱これが二十二件を勧告いたしました。それから不問処理が三十四件、致傷致死に対して勧告しましたのが二件、不問にいたしましたのが二件、それから一般公務員の職権濫用につきましては勧告をいたしましたのが十四件、それから示談いたしましたのが十四件、不問処理いたしましたのが三十八件、それから村八分につきまして勧告いたしましたのが十五件、それから示談で解決しましたのは六十五件、不問処理いたしましたのが八件、それから人身売買につきまして勧告しましたのが四件、示談が八件、不問処理が二十九件、それからリンチはこれは示談が二件だけであります、不問処理が七件、強制圧迫に対しては十一件勧告しました。示談が六十三件、不問が五十四件、差別待遇、勧告いたしましたのが五件、示談が十八件、不問が九件、それから参政権の侵害は示談が一件、不問が四件、不当解雇が勧告は三件、示談が十八件、不問が十一件、不法監禁に対して勧告したのが三件、示談が二件、不問が十七件、集団暴力行為に対して、示談が五件、不問が七件、単独暴力行為に対して勧告したのが八件、示談が四十二件、不問が三十七件、まあ大体こういうようなことになつております。なお詳細につきましては書面を以てお答えいたしたいと思います。
  43. 楠見義男

    ○楠見義男君 次の十号の点についてお伺いいたしますが、「民間における人権擁護運動助長に関する事項」は、今お述べになつたように官と民が協力して人権擁護運動を展開しなければならないということはその通りだと思いますが、具体的にこの十号の民間における人権擁護運動助長をどういうふうにせられるか、或いは経費をどれだけ予算上組んでおられるか、こういう点について更に詳しい御説明を頂きたいと思います。
  44. 和田博雄

    ○和田博雄君 その前に、九号のやつで、例えば特別公務員の職権濫用に対し勧告が三十四件とありますが、勧告した結果はどうなつておりますか。
  45. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) それを見て頂くとわかります。
  46. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今の点でここの九号ですが、これは個々のものについて調べてあるでしようね、或る具体的の特定事件についてお調べになつたわけですね。
  47. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) ええそうです。
  48. 和田博雄

    ○和田博雄君 勧告した結果はどうなつておるのですか。
  49. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 先ほども申上げました通り勧告権限というものは持つておりませんが、監督をいたしますと従来は人権擁護局を信用……何と申しますか、或いは一応権威を持つておると申しますか、勧告には、素直という言葉は当らないのですが、よく了解して頂きまして、或いは勧告に基いて行政処分をするとか、或いは部下職員を集めて、再び将来かような事件を起してはいけないというふうに注意せられたいというような部下職員に対する訓示等をいたして、かようにいたしましたという結果を私のほうへ報告されておりまして、従来は支障なく行つておるように思つております。
  50. 和田博雄

    ○和田博雄君 例えば勧告する場合、この事件は非常に重大な事件だから、例えば職権濫用をやつた者は或いは懲戒免職にしろとか何とかいうことまで勧告するのですか、そうでなくしてただ適当に処分せられたいという、そういう官庁用語で勧告するのであるかどういうのですかこれは。
  51. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 先ほど申上げましたように、行政処分をする勧告ということを申上げたのですが、これは一律に実はぎまつておりませんので、公務員としてふさわしくない、適当でない、こういう者はよろしく適当な処分をせられたいという程度で、従来はさようにいたしまして処分は大体御一任申上げておる例が大部分であります。併し必ずしもそうするということにはきめておりませんので、場合によつてはこれを罷免しなければならないという勧告も勿論できるのでありまして、或いはそういうことまでいたした例も多少あるかとも実は考えておりますが、別にきめてはおりません。ただ一般に多いのは、公務員として適当でないから適当の処分をせられたいという程度にやつておりますのが従来一番多い例であります。
  52. 和田博雄

    ○和田博雄君 大体人権擁護局のほうとして勧告するときの意思とそれから処分の結果というものは大体一致しておる程度に適当に行われておるのですか。
  53. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 必らずしも一致しておると思われないのがあるのであります。或いは私らから見て、多少軽きに失するのではなかろうかという場合もございますけれども、併し御承知のように処分いたしますのは罷免、懲戒免職、あとは減俸、譴責というのが大体段階がきまつておりますので、罷免というような場合はよくよくでないとなかなかいたしかねるもので、主としてやはり減俸とか、或いは他に転勤させるというようなのが大体に多い。特に悪質なもの、これに対しては罷免、懲戒免職を実際いたしております。ですから、中にはもう少し厳重にされてもいいのではないかと思われる場合もございますけれども、大体私どものほうでは勧告いたしまして、向うから処分結果を受取ります。大体私ども満足はいたしておるような次第であります。
  54. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今のに関連してちよつと。その責任者の処罰の点は今お話しになつたのでよろしいのですが、人権侵犯事件が審判によつて調書が作られた。その調書が裁判中である場合にはよろしいのですが、裁判が或いは確定しておるという場合において、それがどういうような結果になつたかもあわせてお知らせを願つたらば非常に今後の審議のときに助かると思う。もう一度申上げますと、人権侵犯事件によつて作られた調書というものは効果はないものと思うのです。併しそれがまだなお上級の裁判所に控訴中の場合はまだよろしいのですが、更にそれがもう裁判が確定しておる、刑に服しておるというような場合において、それが後にわかつたような場合において、どういうふうな結果がとられておるかというようなことを一つ若しありますならば、合せてお答えを願えれば結構と思います。
  55. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) ちよつと御質問の場合はわかりにくかつたのですが、当該事件が裁判にかかつておる、その場合に裁判が確定した……。
  56. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 確定しておつた、後に至つて侵犯事件がはつきりいたしまして、そういうような場合にどういうような勧告をなさるか、調書を作つた公務員に対しては責任を追及されることはよろしうございますけれども、併し人権擁護はそれだけでは目的を達し得ないのであつて、更にその裁判の効力に影響を与えるのですから、その与うべき影響をどういうふうな措置をとつておられるかというのです。
  57. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 或いは御質問に適切なお答えでないかも知れませんが、ちよつとお答えいたすことにいたします。裁判に今争訟中であるという事件に対しては、人権擁護局としてはなるべく調査をいたしません。すでに裁判によつて公正に判断されておりまする事件に対しては、私のほうでは調査を中止いたしまして、その成行きを監視するという程度で、当該事件が裁判にかかつておるものに対しては私どもは調査いたさない大体方針でおります。  従つてそういう重複するというような場合がちよつと考えられないのでございますが、ただこういう場合があるかと思いますが、例えば殺人事件で裁判にかかつた、ところがその殺人事件を調べるのに拷問を加えて人権侵害した、こういう場合が考えられる。その場合は本件の殺人事件裁判所によつて御審議願つておりますので、勿論これに対しては調査いたしません。ただその殺人事件の取調べに当つて人権侵害、いわゆる拷問があつたとか、いわゆる拷問によつて調書ができ上つたのだというような事件がございますと仮定いたしますと、その場合も裁判の進行中でありますので、成るべく裁判に予断を抱かせたり、裁判の公正な判断を誤らすということは、事件によりましては却つて被告からこれを利用される虞れもございますので、こういう事件は相当慎重にいたしております。併し明らかに人権侵害が行われたんだということになりますと、裁判に影響しないように慎重に人権擁護局ではこれを調査いたします。ただ拷問があつたかないかというような人権侵犯だけについて私のほうでは判断をいたすのでありまして、それ以外の裁判に対しては、勿論人権局の関与いたすところではございませんので、そういうものには勿論支障を来さないように、純粋の人権侵害事件だけを調査するというふうになると思つております。
  58. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私の言うことが徹底しないのですが、そうすると情報収集するということが、民事局、人権擁護局権限でございます。そうすると情報だけを収集されるというと、情報収集して必ず結論を出さねばならんのかどうかということをお尋ねいたしたいと思います。それからもう一つは、私どもで言うことは、裁判が確定した後にいろいろ殺人事件その他において真犯人が出たりして、いろいろ問題があります。その場合に勿論何かの手段をおとりになるようなこともありましようけれども、その段階として情報収集等に助力を与えられることは、却つて人権侵犯をなくし、又助けてやるという意味の趣意に副うものじやないかと思うのですが、そういうような事例があればという意味です。
  59. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 御質問の趣旨よくわかりました。事件を再理いたしました場合に、大体処理をいたす方針でおります。中には先ほど申上げたような中止処分というようなことで処分をいたす場合もございます。それから只今の裁判確定後に人権侵害事件があつたというような事実が現われた場合、こういうような場合には、勿論そういう事実がありますと人権局ではこれを放つておいてよいというようなこともございませんので、やはり一応は調査いたします。そうして、そういう事実があつたと仮定いたしますと、これは御承知のように再審というような方法によつて救済を願うよりほかにちよつと方法がございませんので、そういう再審をするように指示する。その場合に人権擁護局でいろいろ調査いたしましたことが多少の参考資料になるとは存じますけれども、裁判所に対してこれをどうこうというような指示をいたす権限はございませんので、今の場合そういう例もございませんし、ちよつとできないかと存じます。
  60. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そういうような指示をなさらなくても、そういうような事例があつたならば我々は単なる一カ町村にやるというと、非常に釣合いを失するような点がありますからお調べを願いたい、こういう趣旨であります。
  61. 楠見義男

    ○楠見義男君 さつきの十号のお答えを頂く前に、いろいろ合の手が入つたのですが、十号のお答えを願いたい。予算的或いは具体的な……。
  62. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答えいたします。十号には民間における人権擁護局助長に関する事項ということが入つておるのですが、実は従来民間の或いはこういう人権擁護をいたします機関というようなものは、予算面から減少するとかというようなことは従来ございません。これは予算にもそういうものは認められておりませんので、項目はございますが、その通りには実はいたしておりません。ただ先ほど申上げたように、例えば弁護士会人権擁護委員或いは自由人権協会というようなものとの協力、連絡と申しますか、或いは助長というようなことにも多少はなるかもわかりませんが、そういうものと協力し、或いは連絡して、人権擁護運動をいろいろいたすという程度で、特にそれについて助長をするというような具体的な方法は実はいたしておりません。それは予算にも全然認められておりませんので、予算面からはできないと思いますが、ただ協力という程度で、助長関係があるという程度でございます。
  63. 楠見義男

    ○楠見義男君 それで次に十一号の人権擁護委員に関する事項についてお伺いいたしますが、私は実はこの前の委員会のときに、他の委員のかたからお尋ねになつていることから関連しまして、或いは私の聞き間違いかもわかりませんが、人権擁護委員というものは当初全国に二万の定員を予定したところが現在は先ほどもお述べになつたように二千五百人しかいない。これは予算関係からそういうようなことになつたのかと承知しておりましたのでありますが、先ほどの御説明で行くと、人権擁護委員というものは非常に熱心に、又いい人が無報酬でやつてくれてる、こういう御説明であつたわけですが、そうすると定員の問題も、どういう点からそういうふうに今の定員が出て来たのか、ちよつと逆に了解に苦しむようなことになつたのですが、その間の事情はどういうふうなのか、その御説明を伺いたいと思います。
  64. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) 只今の御質問にお答えいたします。  前に昭和二十三年度において人権擁護局が同名おつたかと申しますと六十三名であります。昭和二十四年度におきましては四百九十二名であります。昭和二十五年度におきまして千五百十一名、二十六年度は先ほど申上げた通りでありまして、順次殖えて参つておりますが、人権擁護委員法では二万名を超えない限度に委嘱できることになつております。それは全国の各市町村から選ぶことになつておりますが、例えばわかり易い例をとりますと、東京は特別区としまして各区から二名ずつの人権擁護委員を委嘱しております。それから全国の各市からは、これは定員規則によりまして一率でございませんが、三名とか五名とか、八名。特別区以外は大体五、六名から八名の人権擁護委員を置いております。それから町からは各一名ずつ置くことになつております。それから村から各一名ずつ置くことになつているのでありますが、これを村から各一名ずつを委嘱しますと、全国で約一万一千名をちよつと超えるかと思います。そこで人権擁護委員法では二万名までを委嘱できるということで大体の線をきめただけでございます。で、現実は只今申上げたように二千五百名程度でございます。村はまだ委嘱いたしておりません。これも成るべく早い機会に村に委嘱することになつておりまして、今年度中には約一千名を殖やす予定でおります。が、二万名までの定員を持ちながら非常に少いじやないかということも言われるかと思うのですが、これは予算関係いたしまして、予算上委嘱が実はできないのであります。この機会におついでに申上げたいのですが、先ほど申上げましたように、人権擁護委員には手当はございません。勿論無報酬でございます。現実は自弁を切つて働いておるというのが、実際の実情であります。大変これは従来申訳ないと思つておるのですが、遺憾ながら予算上認められておりませんので、さようなことになつておりますが、人権擁護委員に関してございます予算はただ一項目、これは賠償金という予算項目でございます。これは人権擁護委員人権侵犯事件調査する、いわゆる出張して調べる、或いは講演に行くとか、いろいろ啓蒙宣伝をいたします、そういう場合に立替えて払つてもらつたものをあとで弁償してお払いするというのが賠償金の予算でございますが、これは年間一人千円でありますが、人権擁護委員に関してはこれだけしかございません。立替えてもらつたものに対してお払いできるのが年一人千円というような極めて僅かなものであります。とても十分な調査或いはいろいろな啓蒙宣伝を一年千円の費用でやつて頂くということは、これは実際問題としては困難なことであります。相当自腹を切つてもらつておるのじやないかと考えております。さような程度予算がございませんので、二万名までは、勿論なかなか多くの村の委員までも委嘱するということはずつとできませんので、かような程度になつて参つたのであります。一千名程度の増員は今年度中に何とかいたしたいと、かように存じております。
  65. 楠見義男

    ○楠見義男君 人権擁護関係については大体御説明で大筋はわかつたのでありますが、そこで具体的にこの局を課に縮小することについて、半ば意見も混じるかも知れませんが、御質問して見たいと思うのですが、それは先般龍野政務次官がこの委員会で、人権擁護局縮小のことに関連してこういうことをお述べになつたのであります。それは、現状は三十数名で一局の体裁をなさない、それから又本来人権擁護の問題は政府の力を待たずして、むしろ在野法曹の活動を待つて人権擁護の伸長を図るのが筋だと思う、ただ官庁はその在野法曹の尽力、活動をお世話する程度にしたい、こういうような御説明があつたのであります。このことの当否については随分私は根本的に意見があるし、又議論の存するところだと思いますが、時間もたちますから、その点について意見を申すことは省略いたしますけれども、法務府で一番期待をされておる在野法曹の方面で、この人権擁護局の縮小についてどういうふうに考えておるか、ということは、期待を政府のほうでしておるだけに大きな問題、重要な問題だと私は思うのでありますが、その在野法曹の日本弁護士連合会は、この人権擁護局の縮小については絶対反対を表明をしておるのであります。ここにその印刷物もありますが、我々はできるだけ協力はするけれども、併し政府のその考え方は間違つておる、御免こうむりたい、こういうことを言つておるのであります。一方、破防法その他の関係から言つても、人権擁護の問題が今後ますますその質において、又数において多きを加え、又重要性を加えて参るという際に、むしろ逆に人権擁護の点が縮小されるがごとき感を抱かせることは、非常に政府としてもとるべき問題ではないと思うのでありますか、そこで日本弁護士連合会が三つの点を挙げて反対をし、協力いたしかねるということを申すのであります。一つの点は、これは人権擁護局ができたのはポツダム宣言で、言論、宗教及び思想の自由並びに基本的人権確立さるべきことを要求しておる。そのことに基いて主としてアメリカ合衆国政府司法省内の人権擁護機関の例に倣つたものであるが、併しこれは決して占領目的のために設置されたものでは断じてないので、日本国との平和条約前文において、我が国は国際連合憲章の原則を遵守し、世界人権宣言の目的を実現するために努力することの固い決意の現われであり、これを世界に宣言しておるのだ、こういう際に人権擁護の問題を軽々しく取扱うことについてのむしろ反対であります。これが第一の理由でありますが、第二の点において、欧米諸国のように人権確立の長い苦闘の歴史や伝統を持たん我が国においては、このことは一朝一夕の事業ではなく、民間及び官庁側双方の絶え間のない努力によらなければならない。従つて日本憲法第十二条においても「この憲法国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」こういうように宣言されておるにもかかわらず、人権擁護局が縮小せられ、そうして人権擁護局は従来国家機関の一環として、この人権侵害に対する危険に対し常に監視するという重大なる使命を持つておるのであるから、その機能はますます重大化こそすれ、これを縮小弱化するがごときことは絶対に許されないところである。これを第二の理由に挙げ、第三の点においては、龍野政務次官の答弁に当ることでありますが、本来民間団体に任すべきであるとの論は五十年、百年の将来ならば肯定せらるべきかも知れないが、少くとも現在の段階では到底容認できない議論である。そこでアメリカではトルーマン大統領は大統領人権委員会を設置して、大規模な調査検討の結果、十数項目に亘る人権綱領を定めたが、その中で現在の司法省内の人権擁護機関の飛躍的強化の必要なことを力説しておることは、米国のごとき二百年余の民主主義の伝統を持ち、幾多強力な民間団体の存在する国においてすら、国家機関みずからの力によつて、強力に人権を擁護すべきものとしておる。現在我が国には日本弁護士連合会、自由人権協会等の民間団体が人権擁護に邁進しておるが、一面国の機関たる人権擁護局には、その機能において民間機関に見られざる特殊性を堅持するのである。例えばおよそ人権侵犯事件が惹起すれば直ちにこれが調査を遂げ、証拠を確保する必要があるのであるが、官尊民卑観念の旺盛な我が国においては、民間団体がこれに当つても、往々にして調査に支障を来すことがあり、必要な資料を集めることさえできんことが多い。この点、人権擁護局官庁たる権威により、容易にその目的を産することができる。或いは、この分野には民間人の起用が必要であるが、課になれば在野法曹等の課長就任は望み難く、純然たる官僚の府と化し去る危険もある。こういうような点を挙げて非協力の態度、又反対の態度を示しておるのでありますが、この問題に関連して私は二つお伺いしたいのでありますが、一つは協力を求めんとする弁護士連合会、布野法曹がこういうことを言つているのに対して、政府はどういうふうにお考えになつているかということが一つ、それからもう一つの点は、これは実情の御説明を伺いたいのでありますが、寡聞にしてアメリカの実情を私はよく承知しておりませんので、この第三の理由の中に掲げているアメリカの司法省内における人権擁護機関の状況、それから又それが最近飛躍的強化の方向に向つている、こういうふうに述べられているのでありますが、それらの事情をここであれば御説明を煩わしたいと思います。
  66. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) お答えいたします。御答弁の関係上第二のほうから御答弁させて頂きたいと思います。アメリカにおける実情、形は私つまびらかではございませんが、私の知る範囲ではかように承知いたしております。アメリカの司法省の刑事局の中に人権擁護課というものがございます。職員はたしか七名か、八名の僅かであつたと存じます。これはどういうことをいたしますかと申しますと、アメリカにおける人権擁護仕事はもう日本におけるように啓蒙宣伝の必要はございません。又民間同士の人権侵害という問題もこの課では取扱つておりません。純然たる公務員人権侵害事件、これだけを取上げているようです。そうしてこれらの職員が実際に調査し、又これを起訴することにつきましては、多分これは公安検事と思いましたが、これらの各検事に指揮と申しますか、指示と申しますか、命令と申しますか、司法権を依頼してさせることになつております。従つて実際には検事が動いてこの侵犯事件調査するというような仕組になつているようです。ところが検事がこの公務員侵犯事件調査するということはアメリカにおいても非常に困難があるようです。何か自分の身内というか、関係方面はどうもやはりひいきをしたがる。アメリカにおいてすらなかなか十分なことができておらないように聞いております。そこでこの課ではいけないというので、これを何とか強化拡充しなければならないというようなことから、司法省内に何か局に昇格させる、拡充をするというような方針に行つているというふうに承わつております。まだなりましたかどうかわかりませんが、とにかくこの課を大きくして部なり局にするという方針で、すでに計画されているというふうに承わつております。  それから先ほどの第一の御質問、弁護士会からの御意見、先ほど承わつておりまして大変御尤もな御意見だと考えております。この人権擁護局を課にすることがどうかという御質問でありまして、これは実は私は局の一応長の立場においてはこの御答弁は非常にしにくいのでありますが……。
  67. 楠見義男

    ○楠見義男君 ちよつと……。私はあなたは政府官僚だから局長立場で御説明困難なことはよくわかりますから、その困難なことをあえて言つて頂きたいという、そういうことじやなしに、協力を求めようとする相手方が非協力の態度を示している場合に、併し一方人権擁護の問題は非常に大事だ、だから在野法曹に期待をかけるかけると言うけれども、日本だけがこういう状態であるときに、政府として人権擁護をどういうふうに伸長して行こうかということさえ言つて頂ければ、局を大きくする小さくするということは、あなたの立場からは言えば非協力官吏のようなことになつては気の毒だと思うので、そういうことは求めていないのです。
  68. 戸田正直

    政府委員戸田正直君) それではお答えいたします。  その前に龍野政務次官が答弁された中に多少間違いがございますので、御訂正を願いたいと思います。人権擁護局職員が現在局長を入れまして十四名でございます。この十四名の中には給仕からタイピストを入れて、これは先ほど申しました三課に分けてございます。これは三十何名というのは間違いでございますので、十四名に御訂正を願いたいと思います。  それからついでに予算ちよつと申上げたいと思いますが、地方の四十九カ所ございます法務局予算上認められた職員は六十五名でございます。実際には百六十名くらいになるかと思いますが、予算上認められた定員は四十九の法務局において六十五名という数でございまして、そこで人権擁護局予算、これは御参考までに申上げますと、全部で五百六十六万七千四百円、これには人件費を含んでおりますから、人件費が二百九十九万、残りの二百何万が行政事務費、啓蒙宣伝費、審判事件調査費、それから委員関係費というような予算になつております。極めて僅かな予算でございます。  それから法務局及び地方法務局予算が、これは四十九カ所で一千八百三十六万九千円という予算、この中には人件費も全部含んでおりますが、人件費等を引きますと、大体一局当りが年間二十万足らずかと存じます。この中には人権擁護委員、先ほど申上げた一人千円の分も全部入つて年間は二十万円を多少欠ける、平均いたしますと、欠けるというような極く僅かな予算でございます。それで先ほど申上げたように、事件が増加いたしますと、約一万六千件くらい受理いたします。それからこの点も御参考までに申上げますと、啓蒙宣伝はどういうことをしておるかと申しますと、人権擁護局及び各法務局で二十六年度にいたしました啓蒙活動の状況を申しますと、講演がこれが三百五十回いたしました。それから学校講演、これが三百三十三回、座談会、これが二百三十八回、それから人権相談所の開設、これが六百三十一回、それからニユース・カーによつて宣言を宣伝して歩くというニユース・カーでいたしましたのが三十六回、ラジオ放送は二百二回、それからパンフレツトを発行いたしましたのが二十六回、ポスターが三十七回、ちらしを行いましたのが六十二回、リーフレツト十二回というような啓蒙活動をいたしております。非常に僅かな予算でございますので、これだけ辛うじて啓蒙活動をいたして参りました。そこで御承知憲法にもございますが、この基本的人権というのは、公共の福祉に反しない限り立法その他国政の面において最大の措置を必要とするということになつておりまして、新らしい近代の民主国家におきましては、国家みずからが進んで積極的に国民基本的人権を擁護しなければならんというのは、今日世界の傾向でございます。これはいずれの民主国家においてもとつておりまするのでございまして、そういう意味からも、日本におきまして法務府の中に人権擁護局というものを設置いたしたのでございます。先ほど来申上げているように、日本におきましては、まだ人権思想が十分に行渡つておりませんので、まだまだ日本においては啓蒙活動の段階でございます。人権擁護仕事というのは極めて前途遼遠であり、又いたします仕事もまだはつきり申上げると体系立つておりません。果してどこまでを人権侵犯事件として取上げるかということすら、この限界すら実を申上げますと、まだ研究が十分足りておりませんで、十分な形をなしてはおりません。ただ四年間の間におきまして、次第に形を整えて来てどうやらやつと軌道に乗つて来た、これから漸く仕事ができるというふうに考えております。そこで勿論この人権擁護仕事というものは、政府においてもこれは重要な仕事として重視いたしておりますし、又いたさなければならないものでございます。この仕事役所だけでできることでございませんので、民間と共に密接に協力して両々補い合つて初めてこの人権擁護仕事ができるものと考えております。そこで政府といたしましては、人権擁護仕事は重視はいたしておりますが、いろいろのほうに、機構の簡素化、合理化というような面から局を課にするというような方針になつたのでございますが、先ほど申上げたように侵犯事件、特に公務員侵犯事件というものは年々増加しております。又最近の傾向においてもますます増加するのではなかろうか。従つてこの仕事はますます大きくしなければならないことは言うまでもございませんで、ただ今度局が課になりましたけれども、予算上はこれは減少いたしません。又職員の数もこれ以上は勿論減らされるわけではございませんので、減りませんが、ただ局長一名はこれは廃官ということで縮小する。これは制度上止むを得ないと思いますが、他の職員及び予算においては変更はないと考えております。併し今も申上げたように、人権擁護仕事というものはますますこれは重要性を増して参ります。機構の如何は別といたしましても、機能は飽くまでもこれは拡充し、強化しなければならないものと、かように考えております。
  69. 楠見義男

    ○楠見義男君 私の聞いているのはそういうことでなしに、協力を求める在野法曹がそつぽを向いている。それは官民両方一生懸命やらなければならないという点において、うまく行かんじやないか。それをどうするかということなのであります。
  70. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私から申上げたいと思いますが、二つばかり申上げたいと思います。一つ公務員民間に対する関係におきます人権の侵犯というもの、これにつきましては、今後の行政監察、行政監察におきましても、こういつたような点については十分注意して参りたいと存じております。行政監察は他方面に亘りまして、公務員人権を蹂躙するような行政の国の方針に反する運営をやるということは適切な行政でないと思いますので、十分監視してやつて行きたいと、こういうように考えております。第二点は、今のお尋ねは局長ちよつとお答えしにくいかと思うのでありますが、在野法曹の反対の意見もありますが、在野法曹は人権擁護というものを政府では軽視するであろうというお考え方から出て来ているのです。併し我我といたしましては、人権擁護というものはどこまでもやらなければならん、行政監察においてもそういう点に重点をおいてやつて行くわけです。それは単に国会のみならず、官民協力してこの問題は推進して行く、こういうように考えております。その点を十分お話をし、且つ十分実効を以てこれを示して行けば、必ず私どもは誤解が解けまして、全幅的な信頼が得られるものと、政府はこういうように信じております。
  71. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点がこれは議論になりますけれども、例えば二十三年に法律ができたときに、全国に二万の委員を置いて人権擁護をせんければならんということを言つている際に、現実はやつと今二千五百人だ、それから費用弁償のほうも年間千円だということだから、それでは政府人権擁護の体制をますます強化するということを言つているけれども、実際はそうじやない。その通りには動いておらないだろう。そうして又形の上ではそれと逆コースのような、或る局の課への縮小ということになるもんだから、今野田大臣からお述べになつたのは、民間はとれといつたつてとれないのじやないですか、これは議論ですから、それ以上申しませんが、そこで最後に一点だけお伺いしたいのは、局としては例えば十数名というようなものでは局の体裁をなさん、こういうふうな意見もあるわけなんですが、私は局は百名であろうと、或いは五百名であろうと、十名であろうと、そういうことは数は問題じやないと思つておりますが、一面そういう議論をする人もあるのです。そこで今一つ考え方として、これはまあこの法案には直接的には関係はないようでありますけれども、そういうふうに見る向きもあるので、これを局という恰好でなしに別の恰好にしたらどうか、具体的に言いますと、この法務府の中で人権擁護局という仮に局として存置しても、或いは民事局或いは刑事局、こういつた方面に対する勧告なり、或いはその他のことも起るだろう。従つて同一政府部内における一つの局というよりも、独立した行政委員会的な機能を発揮して、そうして人権擁護仕事に携わるという行き方はどうであろうか、一般的には行政委員会的なものは整理するという方針ではあるようでありますけれども、この点については、むしろ局というよりも人権擁護委員会という行政機関的なものにしたらどうであろうか。こういう意見が、この内閣委員の中でも話合いとしては出て来ておるのでありますが、その点に対するお考えはどうですか。
  72. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私は只今の楠見委員の御意見御尤もと思う点があるのであります。私はどういういきさつ……いろいろあるでしようが、人権擁護局というものを作つて課員十四名、給仕も小使いも入れて十四人では、働く人は五、六人じやないかと思うのであります。そういうものを一体局というふうにして、行政官庁や他の部局と並んでやるということがいいのかどうか。私はその点に非常に再検討を、行政組織として検討がいるのじやないか、恐らく日本中に十四人という局はどこを探したつてない、或いは十四人の課というものは滅多にないようであります。そういうようなことを、ただ実施するために局の名前を付けるということになると、局の名前の濫用になり、組織論から発達しなければならん。ただやつていそうな顔をするために局という名前を付けるということは邪道じやないか、それにはそれにふさわしい形をきめて作るべきもので、この次の行政機構改革に対して十分検討したい。かように考えております。
  73. 三好始

    ○三好始君 只今楠見委員から出た人権擁護委員会という形をとるのがいいのじやないかということを、私も先般そういう意見を出した一人でありますから、この際お尋ねいたしたいのでありますが、人数が十四人で局の体裁をなさないから課に格下げするのだということは、言葉は悪いかも知れませんが、あまり芸がなさ過ぎると思います。楠見先生がよくお使いになる言葉で、事務官的な感覚からすれば、十四人で局というのはおかしいから課に下げようということに或いはなるかも知れませんけれども、むしろこれは問題の性質と重要性から考えまして、相当しつかりした委員を、例えば国会の承認を得て委員任命して、事務局として適当な人数をそれに付けて人権擁護仕事をさせて行く、これが性質から言つて適当なんじやないか。人権擁護局仕事の性質は、どちらかと言えば審判的な性質も持つているわけであります。むしろそのほうがいいのではないかと思いますが、こういう形が参議院の内閣委員会の意向として出て来れば、これに対して野田長官はどういうふうにお考えになりますか。
  74. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私はこの問題につきましては、機構改革を検討いたします初めから、非常に問題と考えておるわけです。これは将来どうするかということにつきましては、御承知のように今回の機構改革によりまして、行政審議会というものを設けまして、行政審議会でそういう問題を取上げて審議するということになつておりまして、その審議会において十分検討して頂きまして、立派なものを作りたい。その際勿論参議院で三好委員、楠見委員がそういう意見を持つておられるということは非常な有力なる参考になるというふうに考えております。
  75. 和田博雄

    ○和田博雄君 多少意見になるので恐縮ですが、どうも私は今の野田君の話を聞いていますと、行政機構の改革に非常に疑問を持つて来るのです。というのは、ただ現状が十四人であるから、これは課にしなければならないとか、或いは現状が十四人であるから、又別の委員会でやつたら適当ではないかという意見ですが、私はちよつとこれはおかしいと思うのです。というのは、結局行政機構改革の根本は政府が一体どういうことに主眼を置いて今後の政治をやつて行くか、行政をやつて行くかということです。今までの御議論を聞いておりますと、人権擁護は非常に大切だということを盛んに言つておられる。それと同時に事実を見れば極めて件数はどんどん殖えておる。やはり今の現状から言つて見ても、官庁の中にこういう一つ人権擁護に対するいわば法務府的な仕事に対する批判的な仕事をする役所があつて、それが十分活躍できるようにむしろして行くことのほうが実情に合つたものじやないかと思う。そうして見ると私はこれは局でもよいと思う。むしろ局でもよいのであつて、要はそれを裏付ける予算もなし、人間も少い。それで今政府委員の話を聞いておれば事件はどんどん殖えて行つておるが、本当に取扱つた件数というものは極く僅かである。積極的にこちらからやろうとしても十四人では私はむしろやれないのが実情だと思う。政府人権擁護をやるやると言つておりながら、実際上は人員も何も殖やしていない。委員の数だつて二万名予定しておるにかかわらず、僅か二千人、二千五百名なんです。この件数を見てみると、特別公務員に対する件数は相当多い。恐らく僕は人権擁護局が取上げたこれ以上のものが実際には私はあつたのだろうと思う。併しそれが取上げられずにある分が私は非常に多いと思う。今の政府委員のお話でも、日本が相当まだ封建的だと言われておりますが、確かにそうなんです。そうなつて来ると人権擁護を本当に政府がやろうと思えば、そうして仕事をやろうと思えば私は幾らでもできたと思う。人権擁護局にしても予算はない。殆んど僅かな金でやつておるという状態であつて、僅か今度の今の予算で言えば人権擁護局ですら五百六十六万円の予算です。これで八千五百万の人間の人権を擁護して行こう。こうなんです。これはなかなか仕事ができなかつたことが当り前であつて、これで大いにやつたらこれは却つて僕は不思議だつたと思う。そういう状態であるし、事件がどんどん進んで行く時には、むしろ人権擁護局というものを存置して、本当に人権を擁護して行こうと思うならば予算的な裏付けもし、又人員についても配置を考え政府がやつて行くべきことであつて、この機構を或いは課にするとか、委員会にするとかいつたような形で、この行政機構の改革をやられることは私はこれは失礼な言分だが、ちよつと間違つているのではないか、こう思う。併しこれは議論になりますが、もう一遍僕はお伺いしたいのですが、政府委員のかたにお伺いしたいのですが、野田君でもよいのです。今度の法務府の何を見ると、保護局というものが新らしくできている。保護局でやる仕事人権擁護局でやる仕事とを見ると、私はやはり人権擁護局のほうが本当にやれば仕事は却つて多いのではないかと思う。保護局の仕事を並べてあるのと、人権擁護局仕事とを見ると、今後どつちが重要性を持つているかと言えば、人権擁護局仕事のほうが実際上重要性を持つて来るし、なかなか仕事も今のような政府の政策をとつて行つた場合、却つて忙しくなつて来るのではないかと私は観察するのですが、如何でございましようか。
  76. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) ちよつと私の申上げたことを誤解があつたようですが、人権擁護局仕事の範囲ですが、これを八千五百万人を人権擁護局人権を擁護するという考え方は非常にむずかしいことだと思うのです。例えば国会それ自体が人権擁護機関だと思う。政府の各デパートがあります。これは皆人権擁護とも言えるでしようし、民間のいろいろなものも人権擁護でして、こういうものが集つて人権擁護というものはでき上つて来る。憲法自体も人権擁護だと思う。ですから人権擁護というものは非常に大きなもので、大き過ぎるほど大きなものです。でありますから、それだけの局を作ること自体が非常にむずかしい。ですから仮に一つの行政庁で経済全体を守つて行くことがむずかしいのと同じような意味合でむずかしいので、そういう点から言つて、どうしてやつて行くかということは各省関係する、国会にも皆関係するのであります。これをどう持つて行くかということは非常にむずかしいから、行政機構としても十分検討しなければならない、こういうことを考えておるわけで、非常に大きな仕事をやらせようというのは無理だと思う。税金のこともやはり大蔵省が税金を無茶な取立てをしないで、人権擁護をするというふうに必要でありましよう。それぞれの役所がそれぞれやらんと人権擁護ができない。その辺のちよつと私の説明が足りないところもあつたようですから補つておきます。
  77. 和田博雄

    ○和田博雄君 それは私はおかしいと思う。そういうことをおつしやれば、あなたの所管の行政管理庁でも、これは各省でそういうことをそれぞれやらなければならない。そこに行政管理庁という今度は大きな組織を作つて、そうして行政管理をやるということは各省がそれぞれやらなければならないけれども、行政管理というのはそれは重要なことであるからこそ政府はわざわざ行政管理庁を作り、人員を殖やしておやりになる。人権擁護ということもこれはなかなか個人で……、権力を握つておる者が人権を擁護するように注意をしてやらなければならんことは、これは当り前のことです。併しそれがそう行かないからこそ人権擁護という局を作つて、これを一つの行政として取上げて人権擁護仕事をやつて来ておる。そうすればやはり対象はそれはどの問題だつて全部人権関係するものです。各部門に関係して来ることです。併しそれをやはり人権擁護という一つ立場に立つて、そうして行政としてもその行政を、各官庁ではやれない行政をやつて行こうとする、こういうことでこの局ができたんだと思う。そういう仕事の必要性が今後ますます殖えて行くものであり、そうして又現に殖えて来つつあるときに、今現在が十四人であつて、今まで余り大した仕事もなかつたから減して行くのだという考え方であつて、それからあなたの御説明になつておるように全部が全部に関係するからということでは、これは私は理窟にならんと思う。だからその点で僕もやはり人権擁護という仕事を本当に政府が、政府機構としてやつて行くのかどうかという、ここに私は根本の問題があると思う。やつて行くのだ、やつて行くのだと言つて口では言つてつても、現実には過去四年の間何をやつたかと言えば、ちつとも人権擁護についての実は挙つていない。それなら人権擁護をすべき事件がなかつたかと言えば、殖えておつて、而もなお表面に出た事件が殖えておるのであつて、背後に隠れて行政の面に出て来ない事件は相当たくさんあると思う。そういうように考えて来ると、むしろ人権擁護局というものは局なら局、外局でおくなら、むしろ楠見君の委員会意見を取入れれば外局として、むしろこれを数は十四人を多少殖やすなりして、大きくむしろ政府として取上げて行つたほうが、一方において非常に人権をどう言いますか、圧迫するようないろいろな法案を今政府は出そうとされておるときにおいて、私はそれでないと筋がむしろ通らんと思うのですが、どんなものでしようか。
  78. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 例えば私は実際問題として申上げますのですが、人権擁護という問題は余りにも大きな問題なんです。ですから一部局作つてやるという、そこに集中するということは非常に、とてもむずかしいし、私どものほうの行政監査ということももつと大きな、基本的問題だと思う。ですからアメリカでも今御説明がありましたように、七人でやつている。これはアメリカくらい人権擁護のやかましい、ずつとやつて来た先進国であるのでございます。人権擁護についてアメリカが七人でやつて来たということは、自分で行政運営をやり、行政機構考えているものとして、当然考えられるところであろうと思います。そこで要するに余りに多過ぎるから、そこで集めるということに非常に無理がある。アメリカの人に聞けばよくわかると思うのです。これは執行上の問題として国民全体の人権擁護、この性格は非常に積極的にやることはなかなかむずかしい点であるのであります。でありますから、そういう点は行政機構を各方面から検討し、各国の例等を十分調べて、そうして又日本の実情にふさわしいものを又考えなければならんのじやないか、そういうふうに考えているのであります。
  79. 和田博雄

    ○和田博雄君 議論はしたくありませんが、アメリカの例をすぐ日本に持つて来られることはどうかと思うのですよ。アメリカと日本では民主主義については歴史が相当違つている。アメリカは相当長い間民主主義の確立人権擁護については歴史を持つているのです。日本はそんなものは持つておりませんよ。僅かの歴史しか持つていない。而もアメリカの例はですよ。人権擁護局は今七人か知らんが、とにかくこれは多くしようという何もあるし、それから背後にアメリカじや相当今までは、まあ日本で言えば元の地方機関が発達して行つて、アメリカ自身もそういう意味では人権擁護という点はますます必要になつて来つつあるのが今のアメリカの情勢なんです。で、私は日本の場合にはこれは非常に私は悲しいことだと思いますが、まだ私は役所の力が強いと思います。そのときにですよ、その役所の中から人権擁護という、あなたの言う非常に大きな問題を取扱うところのものを、まだ民間にそれだけの力の出ていないときに、それを非常に小さなものにして、政府人権擁護の重要性を叫びながらも、実際の行政としてはむしろ縮小して、何にも組んで行かないという状態にしてしまう。この行き方は人権擁護になるのじやなくして、むしろ人権の蹂躙を招来する結果になると私は思う。やはり政府も、あなたたち自身でも民間と協力をしてやつて行かなければならないということを言つている。その民間の協力を誘い出すために、政府自体本腰を入れて一つ機構を持つてやることが必要な常識だと私は思うのです。ですからただ問題が大きいのだからというだけの理由で、今あなたの言われるようなことでは、これは併し私は行政組織問題としては理窟にならんと思う。各個人が人権の尊さを自覚し、それから個人が人権の擁護をして行くためのそれぞれの機関であるということは当り前のことです。これはやりますよ。併しやるけれども、一つの権力を握つている権力者自体の一つの行政組織として、その人権擁護についてどれだけの一体本腰を入れた行政をやれるかということが、やはり政府人権擁護の上に大きな重要性を持つていると思う。ですからどうして課にするか、理由がどうも私にはよくわからない。法務府に保護課の一課か、二課くらいあれば、課だけで十分できるような仕事を、而もその仕事たるや、そう大してむずかしい仕事じやなくして、余り勇気を要する仕事でもないようなものは局にして、人権擁護といつたような、非常にこれは役所組織内にあつても、その局に当る人が勇気と、識見とを要する仕事については、而も国民の基本的な権利に関するものについては、何だかその点について非常に削減して行くという行き方が、これは今までのどうも政府委員や、あなたの説明によつては私は納得行きません。併しこれ以上は議論でありますから、この点でやめておきます。
  80. 松原一彦

    ○松原一彦君 野田長官にお聞きするのですが、私どもの机の上に毎日破防法絶対反対といつたような葉書が無数に参つておりますが、この人たちの言うところは、政府は労働法規を改め、破防法のごときものを出して、自由を奪うということを頻りに叫ぶのです。相当の誤解も私はあると思う。私は破防法必ずしも絶対否認するものじやありませんから、誤解も相当ありますけれどもね。一方においては特高警察、若しくは治安維持法が再現するであろう非常な危惧を人民に感ぜさせつつ、一方に人権擁護局をばなくしてしまうのじやないかという、局という名がなくなつて課に落ちるということになりますと、如何にも世間への響きは、現内閣は危険な人権を無視するような立法をして、一方においては人権を擁護する方面には大きな関心を払わんというふうに響くのであります。私は政府考えられていることが決してそうではないと思うし、今度の機構改革によつて得るものは局長一人だけの官僚に過ぎない。政治のテクニックとしましても、それでは私は失うところが多くして得るところが少いのじやないか。むしろ但るところがないのじやないか。失うところが余りに大き過ぎる。人心に与える影響であります。政府の意図するところは、課が小さいから、これをば行政機構として見れば局にするに足らんものにしても、同じだとお考えになつても、国民はそうとらない。これは私は政治上の技術的の問題であつて、それは損だと思う。そういうことをしては国会は一体何をしているかという我々にもこれはかかつて来る問題であります。得るところが少くして失うところ多いような、かような措置をおとりになることは、私はどうしても賛成できかねるのでありますが、これは局に残してはならない理由が何かありましようか。積極的に今の現状を維持したのでは困る。どうしてもこれは課にしなければならんという、何か必然というか、当然の御要求がありましようか。それは経費の面においてか、或いはその機構の対象によつてか。何かどうしても課にせねばならんという理由がありますならば我々も考えますが、失うところが大き過ぎると思いますので、あたかも酷評すれば、政府は耳を蔽て鈴を盗むようなことをやつているのじやないかということすらも思われるものがあります。感じですよ、これは……。でありますから、そういう感じを与えることはよくないのではないかと私は思う。これについて、どうしてもせにやならない理由があるかどうかを伺いたい。
  81. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 非常に松原委員のおつしやることは行政機構全体の問題でありますが、どうしても、こうしてもしなければならんといつたような窮迫した事態という、そういうふうにも考えることは非常にむずかしい点があると思うのです。これはすべて相対的な問題でありまして、現に日本程度としてはどの程度が適当であるか。こういう諸般の情勢を勘案してきめて行くという方針でやつているわけであります。各省の内部機構をよく見まして、そうして成るべく御承知のように国家行政機構が簡素化されたほうがいいのだ、そうしてすつきりしたほうがいいんだと、こういうことは国民の輿論でもあり、又その方向に行くべきだと、そこで各省検討をいたしますと、局の中に他の局と合併ということになるわけでありますが、合併をしてやつてもやつて行けると認められるところがある。こういうところは成るべく合併をしてやる。小さくしてやつて行くのです。各実際の実情に応じまして、簡素化を図り、又やつて行けるところは小さくして行きますが、能率化を図り、又責任関係を明確ならしめる。これはむしろ責任関係というよりは、むしろ局と局を一つに直してやつて行けるという観点から、そういたしているのでありまして、あたかもこれがために人権擁護人権擁護をしないのじやないかという誤解が出るかも知れませんが、そういう点につきましては政府として、そうでないということはいろいろな事実によつて国民の理解を求めて行くということにいたさなければならんというふうに考えている次第であります。
  82. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 二時まで休憩いたします。これにて休憩いたします。    午後一時五十九分休憩    —————・—————    午後二時三十一分開会
  83. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 休憩前に引続いて内閣委員会を開会いたします。  労働省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  84. 上條愛一

    ○上條愛一君 この前もちよつと御質問申上げたので、簡略に御質問申上げたいと思いますが、一つは現在国際労働機関にも復帰し、独立国家となりまして、労働関係は国際的に重要性を加えて来ると思うのですが、そのうちで、日本の労働問題のうちで国際的の問題になつておりますのは、繊維産業その他を通じてテープ・レーパー、低賃金ということと、ソーシアル・ダンピングの問題が頻りにイギリスあたりの経営者側から問題になりつつあるのでありますが、そこで日本の現在の労働問題のうちで重要な一つは、最低賃金制を確立するということにあると思うのですが、この問題について政府としては準備をしなければならない時期に到達していると考えられるのでありますが、最低賃金制の確立について必要な労働統計というものは準備しつつあるかどうかということをお伺いしたい。
  85. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 最低賃金につきましては、御承知通り一昨年から労働省に労使、中立三者構成の賃金審議会におきまして鋭意審議中でございます。昨年の秋より或る程度の方針を定めまして、それに基いて具体的に実情調査の段階に今日入つております。ここに一々材料を持つて参りませんでしたが、委員会におきまして、この業種、この部門というようなものについて調査が必要であるという結論に達したものにつきましては、それぞれ事務当局におきまして全国的な調査をし、その材料を審議会において更に検討し、又最近におきましては専門委員をも設けまして検討する。こういうように漸次具体化して、割合に近い機会に相当の結論が出るのではないかという段階であります。勿論お話の通り、これにつきましては、正確にして且つ厖大な統計を基礎にしてやつておることは申すまでもございません。
  86. 上條愛一

    ○上條愛一君 それは労働省は最低賃金制の確立に要する資料の調査統計を準備しつつある、こういうふうに解してよろしうございますか。
  87. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) さようでございます。
  88. 上條愛一

    ○上條愛一君 もう一つお伺いしたいのは、日本の現在の賃金制度を見まするときに非常に複雑多岐であると思います。例えば繊維産業におきましては、厚生施設というようなものに経営者側は相当に努力をして参つておるのでありますが、テープ・レーバーの問題が国際的な問題になりましたときに、日本の経営者側の反駁の理由一つといたしまして、名目賃金は日本においては低廉であるかも知れんけれども、厚生施設について相当な金を費しておるから、この方面もやはり賃金問題を論ずるときには考慮を払うべきであるということを主張されて参つておるわけであります。これは単に繊維だけではないのでありまして、日本は従来恩恵的と申しますか、そういう純粋なる賃金制でなくして、いろいろなる名目の下に労働を奨励するというような意味で、年末手当であるとか、退職手当であるとか、いろいろなる複雑な賃金に関連した施設があるのでありますが、日本の現在の最低賃金を確立する上においては、これらの複雑した賃金制度というものの実情を調査して、これを整理する必要があると我々は考えるのでありますが、こういう方面に対する労働省としては準備を進められておりますかどうかということを承わつておきたい。
  89. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) お話の通り日本の全般的な賃金体系と申しますか、賃金計算方法は非常に複雑でございます。特に繊維産業におきましては、主として女工さんが郷里から遠く離れて勤務いたしまして、寄宿舎から勤務するというようなことからいたしまして、寄宿舎の寮費或いは食事、衣食住その他の生活を、家庭生活から切離して生活する関係上、会社がこれの面倒を見るというようなことで、実物給与或いは寮費或いは食費等をよほど実費よりも安い金額に換算するというようなことなどがいろいろと行われておるわけであります。併しそれが又一方におきましては、ソーシアル・ダンピングにからむいろいろな論議の種になる、或いは又弊害の種になるというような非難もあるわけでありまして、漸次近代化して行くべき筋合のものと考えるのでございます。御承知通り、現在の労働基準法におきましては、現物給与というものを原則として禁止しておりまして、賃金は通貨を以て直接払うという原則を定めまして、ただ例外として労働組合と協定できた場合においてのみ、不当に亘らざる限度におきまして実物給与等を認めろ、こういうことにいたしております。なお更に突込みまして、賃金体系、賃金形態につきまして、政府が積極的にこれに関与するということになりますと、これは各工場、各産業のいろいろな実情なり、伝統なりございまして、どの程度まで関与していいか、その関与の仕方が行き過ぎになるというようなこともありまして、この点につきましては相当慎重な態度をとりまして、国内におけるいろいろな賃金体系の解説、その他民間におきまする給与の研究会等におきまする相互啓発というようなことに、労働省として、できるだけのサービスをするということで、目下その方向に準ずるように努力しておる次第でございます。
  90. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は決して政府に、賃金問題に対して関与せよということを毛頭考えておらないわけであります。ただ具体的に現在の複雑したる賃金制度調査いたして、いつでも国内のいろいろな賃金問題に、問題となつて参ります際において、具体的の調査統計というものを示して、これらの紛争に正しき基礎を与えるということが必要であると考えるので、その点をお伺いしたわけです。殊に国際的に申しましても、今後国際労働機関に復帰いたしました日本としては、やはりチープ・レーバーの問題のみならず、いろいろな労働条約の問題でですね、具体的に日本の実情を示して行かなければならんことが多くなると思うのでありますが、そういう場合においては十分なるやはり資料、統計というものを準備いたして、国際的に日本の労働事情というものを正しく認識せしめるという努力が今後必要になつて来るのではないかと考える。それから殊に日本の労働運動の欠点は、今日まで具体的の事実に基いて労使共問題を進めるということでなしに、ただ目分量、或いは感情的にですね、労使の紛争が繁かつたという欠陥を有しておるわけでありまして、これに対しては政府は十分に各方面の労働問題に対する調査を正確にして、これらの紛争に対して基礎的の材料を提供するということが最も必要なことではないかと、こう考えるわけであります。そこでお伺いいたしたい問題は、このような今日労働省の任務の一つといたしまして、労働調査統計というものが重要度を加えつつあると思うわけであります。然るに今度の改正案によりますというと、労働統計調査部長を廃して、まあ監にしたことがいいか悪いかというような問題は、これは別といたしまして、これらの実情からすれば、むしろこの際に労働省としては労働統計調査部のごときは、これを局にすべきであるというふうに我々は考えるのですが、労働省としては今日の労働統計調査部を局にしようというようなお考えがあるかどうかということを承わりたいのであります。
  91. 溝口三郎

    政府委員(溝口三郎君) 労働賃金のことにつきまして、イギリス等において低賃金の問題がしばしば出て参り、国際的にもこういう賃金等については、実態をできるだけ正確なものを収集して、これを提供する。なおこういう賃金等について実態を把握して、正確な統計を羅針板にして労使の紛争等にこれを利用するようなふうにせよという上條さんの御意見でございますが、労働省におきましても、労働統計は労働行政の本質的なものとしまして、できるだけ労働統計の資料に正確なものを作り上げたいというので努力しておるのでございますが、現状におきましては、まだその人員等につきましても、やはり私どもから考えましても貧弱な程度でございまして、思うような資料もできないのでございますが、内容の充実等につきましては、是非とも皆様の御協力を得て、できるだけ強化拡充いたすようにいたしたいと考えておるのでございます。なお附加えて申上げたいのでございますが、イギリス等において低賃金のことがしばしば言われておりますが、このことに関しましては、日本国民生活の水準が低いのだ、従つてそれに関連して賃金も非常に低いのだということもあるようでございますが、根本は国民生活の水準をできるだけ引上げて行く。そうして賃金も殖やして行きたいということになるべきだと考えているのでございます。なお繊維工場等において福利施設等を非常に大きくやつているから、賃金のほうがそのために低くなるのじやないかというようなことも私も聞いているのでございますが、これはイギリスのかたがたの視察に来られたきに、たまたまそういうようなことを言われたようにも聞いているのでございますが、なお小さな工場等においては、これは労働基準法等に従つて、できるだけの福利施設等もこれは考慮してやつてもらいたいのでございますが、そういうところにおいては、その福利施設を拡充する余力もないような工場もあるのでございまして、一遂にこの福利施設のために費用を投ずるような余裕があつて、そのために低賃金になるというようなかどもないのでございます。なお最近に統計調査部長が更迭になりましたが、前の統計調査部長がイギリスの大使館の一等書記官になりまして、近いうちに赴任をいたすことになるのですが、労働省におきましては、イギリスの大使館ともなお一層緊密な連絡をとる、できるだけ最近の資料を集めて随時イギリスに送つて、この誤解等を解くような方法を講じたいと考えておるような次第でございまして、この労働統計調査分析ということについては、これは労働省におきましては、非常に重要なものであるのでございまして、二十四年頃までは労働統計調査局になつたのを、そのときの行政整理で統計調査部に格下げになつたのであります。今度はこれが統計調査監というようなことに行政機構の改革でなることでございますが、先ほど申述べまするように、内容の充実強化については是非とも将来ともやつて行きたい。統計調査部を廃止するということは、これは政府の共通した方針であるから、これに従つて行くよりか方法はないのでございますが、なおこの統計調査、これの一般事業をやつておりますその統計調査仕事は、これは統一的であり、そうして一貫性を持つてやらなければ、これを各局に分散するというようなことは、これは私どもは一つ考えていないのでございますから、差当りのところは現在と同じ程度の業務がやれることになると考えておるのでございます。
  92. 上條愛一

    ○上條愛一君 私のお尋ねしたい点は、結論を申上げますれば、現在の労働省の労働調査統計では不十分である、こう考えております。例えば中小企業の労働賃金のごときは、正当なる賃金に非ずして、盆暮に現物給与の反物をやるとか、製品をやるとかいうようなことで、いろいろからくりが多いわけであります。そこで労働省としては、こういう方面に正確なる調査をして、日本の現在の賃金制度というものが如何に不合理であるかというようなことは、これは現実の調査統計によつて示して行かなければならないのではないかと思いますので、そこでお聞きしたいのは、現在の労働省は労働調査統計に満足されておるのか、これでは、このようなことでは日本の将来の労働政策の完璧は期せられないと、こういうふうに考えておられるのか、その点を先ずお聞きしたいのであります。
  93. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 率直に申上げまして、先ほど申上げましたように、最近代つたばかりで具体的に細かいことを申上げかねますが、現状で満足しておるかということにつきましては、率直に申しまして、今後ますます充実すべきものであるということに考えております。例えば一般的な賃金調査、毎月調査し、発表しておりまする賃金調査におきましては、例えば三十人以上の事業場についての調査であります。ソーシアル・ダンピングなどの非難に応えまするためには、むしろそれより小規模の事業場についても調査すべきものでありまするが、現存のところそこまで手が廻つておりませんので、できるだけ今後調査面を拡充して行きたいと考えております。又労働紛争議の合理的解決の資料とすべき統計調査分析といたしましては、これは詳細正確であると同時に且つ迅速でなければならないのでありますが、まだまだその要請に十分に応えておるという自信も持つておるわけでございませんので、今後の努力に待つというふうに考えております。
  94. 上條愛一

    ○上條愛一君 最後に一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、それならば何故に従来は局であつたのが部になり、今日はその部が廃されて、これは国家行政組織法に基いて政府が画一的に部を廃されるというので課になつたのでありますが、この際に局にこれを、労働統計調査部のごとき重要なる機関は労働省としては少くとも局にこの際して、十分充実するのが至当であると私どもは考えるけれども、労働省においては今日大臣がおらんのは遺憾でありますが、そういうお考えがあるかどうかということをお尋ねいたしたいと思います。
  95. 溝口三郎

    政府委員(溝口三郎君) 只今上條さんから御質問でございますが、これは先ほど来申しましたように、できるならば労働統計調査局というようなことで、本当に充実した仕事をやりたいということは念願をいたしておるのでございますが、全般的の政府の方針として労働統計調査部は各省に亘つて部を廃止するという方針がきまつた以上は、この方針に基きまして、この中で差当りはできるだけの努力をいたして行くべきだと考えております。
  96. 上條愛一

    ○上條愛一君 大臣がおらんので、これ以上申上げませんが、私は十分に必要だと、緊急な必要なものだとするならば、この際に部を廃されるときに監というようなことで満足せずして、この際に局にこれを切り替えて十分現下の労働事情に適応した労働調査を充実するということにすべきである、これは意見でありまするが、申上げまして、大臣がおりませんので、この辺で私終ります。
  97. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 労働統計調査部に関する問題ですが、この調査部に今五つ課があるようですね、そのほかに職業安定局に労働市場調査課というのがあるのですね。労働市場調査課というのは職業安定局にあつて、労働統計調査部の中に雇用統計調査課というのがある、これはどんなふうの仕事上の関連でやつているのですか。
  98. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 統計調査部における雇用統計調査は、いわゆる統計的方法によりまして、全国的な雇用量の変遷というものを定期的に調べるということが中心になつております。府県別、産業別というようなことで雇用量の動きを統計的方法によつて調べるというのが中心でございます。これに対しまして、職業安定局におきまする労働市場調査課は、いわゆる職業安定行政上の業務統計といたしまして、職業安定所におきまして、今日は何人職業紹介の求人申込みがあつたか、或いは求職申込みがあつたか、そうしてそれに対して何パーセントの就職率を示したかというような、いわゆる業務統計を職業安定所を通じて調べる、こういうことになりまして、その間勿論密接な関連がありまするので、双方連繋をとつておることは申すまでもございません。
  99. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 その業務統計というのは、結局求職者と、それから求人数の統計ということだけなんですか。
  100. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 今ここに詳しい材料もございませんし、私もよく覚えておりませんが、その他失業保険などの調査も或る程度いたしておるというように承知しております。
  101. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この労働統計調査の問題は今上條委員の質問にもあつたように非常に重要なことだと思うので、もう少し質問しておきますが、この労働市場調査は労働統計調査部に入れるほうがいいのじやないですか、仕事の上で……。
  102. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) これは労働省が設置された当初におきまして、統計調査部と今の職業安定局の両方につきまして、いろいろ関係者の間に論議があつたように聞いておりますが、やはり統計調査部のほうはいわゆる統計的方法によつてやるということが中心になり、職業安定行政の失業対策その他の日常の仕事をして行く上において必要な業務統計は、みずからの局でやつたほうが便宜である、こういうような意見で、勿論それにつきましては当時GHQなどのアドバイスなどもあつて、こういうふうになつたというふうに承知しております。
  103. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 統計的方法によつてというのは、まあ現われた結果、数字に現われておるところだけをとらえて行く調査なんですね。先ほどから問題になつておるソーシアル・ダンピングなどの問題は、そういう調査では答えられないですよ、現われた数字だけ見て行つたつて何の答も出て来ない。もう少し進んで、その数字の基礎は一体何か、数字の根拠になつておる実体関係は何か、この調査をやらなければ意味はないのだな。それはどこでやつておりますか。
  104. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) よその省のことは存じませんが、労働省の統計調査と申しまするのは、お話のように、いわゆる統計的方法によつて集計された統計そのものに力点があると申しまするよりも、その統計を中心として分析し、その意味を把握するという作業のほうにむしろ仕事の重要性があるとも言えるのであります。例えば今お話のソーシアル・ダンピングに関しまする私のほうの仕事といたしましても、例えば統計調査部に特に労働経済課というのがありまして、これが日本の賃金統計のほかに安本なり、通産省なり、或いは大蔵省なりの国民所得或いは産業構造、貿易関係、諸外国のそれに相当する資料との比較ということを総合して、勿論十分とは申せませんが、そういう分析作業を労働経済課というところでやつている次第でございます。
  105. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この調査部の今の人員の配置を見ていると、定員二百七十一名のうち、いわゆる製表課という、表を作る課でしようね。製表課に百十九人が配置されている。今あなたの言われた、私どもが特にお尋ねしたいのは、労働経済課にはたつた三十四人、表を作るほうに百十九人行つて、そうして一番大事な仕事をやるところには三十四人、こういう配置の仕方で本当に日本の労働行政の基礎になる調査ができるかどうか。
  106. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 私どもといたしましては、仰せのように多々ますます弁ずるわけでございますが、全体としてなかなかさようにも参りません。できるだけ製表関係、製表関係の分の百何人と申しましても、できるだけ作業を機械化いたしまして、このほうに要する人員をこの程度に圧縮しているということで、できるだけ他の課に頭脳的なスタツフを、少数であればあるほど、頭脳的なスタツフを充実するということに努力している、こう申すほかはないわけでございます。
  107. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 どうも甚だ自信がなきそうなので、実際日本の労働行政の基礎になるような調査がここでしつかりなされないと、今の内閣がやつているような妙な労働行政が起きて来るのですよ。この調査部というものの中におけるこの人員配置を見たつて実際まずいというような感じがするのです。製表課の百十九人も殆んど半分じやないですか、全定員の……。そんなものを置いておいて、これこそ機械労働でやつてしまえばやれるのです。機械を使えば人数なんか要りません。そういう設備を充実して、人をもつと労働経済課のほうに充実するということがどうしても必要になつて来る。そうでないと、ただ現われた数字を集めて来て、それを集計したり、計算を出してみたり、そんなことばかりやつているのじや意義がないと思います。そういうことばかりをやつているのならば、これはこういうものは要らんと思います。そうじやない仕事を私は負わされていると思うのであります。そのためにはこれじや駄目だと思うのであります。そういう大事な仕事をやるためには、こんな課の編成の仕方じや駄目だというように思いますが、あなたがた労働調査部が、今度まあ調査部長の代りに監ができて、今までの機構でやつて行く、一体どのような仕事がやれると思つておりますか。日本の労働行政にどれほど貢献できる仕事ができると思つているのですか。ただお座なりの飾り物じやないのですよ。
  108. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 私どもといたしましては、勿論完璧だというような生意気な自信は持つておりませんが、統計調査局設置以来、実質的に五年間、今その統計調査部で出しておりまする成果を、いずれあとで取寄せて御覧に入れてもいいと思いますが、相当の進歩充実を今日まで示しているとは考えております。なお先生の御意見によりまして、実際の課の配置などにつきましては、検討いたしまして、できるだけ改善いたしたいと考えております。
  109. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私一つ注文があるのですが、機構改革についての閣議の決定方針があつて、そうしてそれに従つて今度改革なさる。それによつて仕事をやつて行くよりほかにない。一応それでもいいと思うのだ。そういう考え方でも……。併し行政の局に当つている、現地に当つている人たちが、これでは実際日本の労働行政の上によくないのです。こういう意見を持てば、その意見は出すべきだ。やれるものはやつて行く、お茶を濁して行くということであるとすれば僕は怠慢だと思う。その辺どうなんです。これでまあしようがないからやつて行きましようということでしよう。恐らく……。
  110. 溝口三郎

    政府委員(溝口三郎君) 先ほど来私申上げました通りに、労働行政の本質的な問題につきまして、統計、調査、分析ということについては、内容をできるだけ強化拡充して行きたいという希望は持つているのでございまして、先ほど申しましたように、政府全般の方針として統計調査部を廃止するということは、これは止むを得ないと考えているのでございますが、きまる以前につきましては、できるだけこれは先ほど申上げましたように、従来は局でもあつたのだというから、是非とも局に格上げをしてもらいたいというような希望は、これは労働省の全員も無論希望はいたしておるのでございますが、そういうことを申上げていいかどうかわかりませんが、妨害官吏だというようなことが、この前の行政整理のとき等にはありまして、事務当局の人たちは、これは公けに省議としてやるということは、これはお互いに差控えているような実情であつたのでございます。将来におきましては、波多野さんの御意見のような内容の、人員の配置等につきましても、御指摘の点をよく了解いたすのでございますが、差当りのところ、この内容のことにつきましても検討をいたして、できるだけの成果を挙げるようにいたして行きたいと考えている次第でございます。なお本省の二百数十人のうちで、労働経済課におきまする人員は、僅か三十数名のような極く貧弱なもので、これで労働行政の根本の資料になるかというようなことにつきましては、これはお説の通り、甚だ不備の点も多々あると考えているのでございますが、人は少いのでございますが、私も労働省に参りましたのは極く最近のことでございますが、全く専門以外のことでございますが、いろいろ今までの業務の内容等について実情を聞いておりますが、労働統計の問題については、人は非常に少いのでございますが、この一、二年の間のような改善とか、資料の整理ということについては非常な進歩をして来たのでございます。これはここに従事しているかたがたの努力の結果だと考えているのでございますが、ますますこれを立派なものにするように一層の努力をいたすように、事務当局等を鞭撻いたしたいと考えている次第でございます。
  111. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 僕は妨害官吏を作り出そうと考えているわけじやないので、そういう煽動をやろうとは思つておりません。仕事をやつて行く上において、日本の労働行政ということの重大性をお考えになるなら、恐らく関係大臣にまで、あなたがたの仕事をやる上においての意見というものは出しておられると思うので、そういうお考え大臣まで通じているかどうかということをお聞きしたいのですが、今の御答弁で大臣のほうには行つているというお話ですから、それは了承いたします。
  112. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 社会不安の問題ですが、私いろいろ意見があと思いますが、一つは失業者がどのくらいあるかということも私は大きな問題だと考えております。労働省で何かそういうことについて調査されたというふうに聞いておる。ところがその数字が、発表することはやめたほうがいいといつて、全然出ていないのでありますが、実際は調査していないのですか、調査されたけれども、数字は発表されないのですか。
  113. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 失業者に関する統計と申しますか、そういうものにつきましては、現存内閣統計局におきまして労働力調査というのをやつております。これは失業者の計数をなかなか出すことはむずかしいのでございまして、実態がそのまま映つているかどうかわかりませんが、例えば完全失業者というのと、それから一日の間に二時間、三時間とかしか仕事をしておらずに、追加労働を希望しているものというようなものに分類いたしまして、これは毎月発表になつております。それから労働省におきまして、先ほど申しました統計調査部において調査をいたしましたる雇用統計は、毎月勤労統計ということで発表いたしますし、雇用量事情、調査課におきまする職業安定所の窓口の業務の事情もそれぞれその都度発表いたしまして、その限度におきましては別段隠しているということは全然ございません。
  114. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は失業と言つたが、これは私もよくわからなかつたのでありますが、今聞きますと、何かそれは臨時工の調査をやられた。臨時工の調査をやられて、それを何か棚上げされたという、どつかで何か聞いたのですが、そういうことはないわけですか。
  115. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 臨時工の問題は去年来問題になりまして、民間からもいろいろなにされます。国会でも問題になりまするのですが、それぞれ関係部課におきまして、統計的方法というようなことは性質上非常に困難でありまして、具体的に、サンプル的に、工場なり港湾等におきまして事実調査を部分的にやつておりますが、これを特に政策的観点から祕密にしておるということは私聞いておりませんですが、それぞれ関係の使用者側、労働組合側と話合うときには、そういう材料を基礎にして話合つていると私考えます。
  116. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ただこうした調査がなされておつて発表がないというふうなことしか私は聞いていないのですが、只今そういう問題についてお聞きしますと、それは関係者には出しておる。併し一般には出していないということですが、その点が間違つて響いて来たかも知れませんから、その点はそれで了承いたします。  それからもう一つお聞きしたいのでありますが、集計をやるような場合に、この前の人員整理の場合に、例えばそろばんを使つておれば、人間が少なければ過重労働になるだけであつて、計算器を入れるというようなことをすれば非常にいいのじやないかというような意見があつた。今聞きますと非常に員数のバランスについて、波多野委員から指摘されたのですが、実際労働省にはそれ以後能率を挙げて行くような機械類は入つていないのですか。
  117. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 機械化につきましては、できるだけ努力しておりまして、本年度におきましても、細かい点は承知しておりませんが、やはり幾らかずつ統計機械なんか購入の新規予算が逐次認められて購入するようになつております。よその省との比較はどうか知りませんが、実際に御覧願うとおわかり頂けると思いますが、相当機械化しておるという自信は持つております。
  118. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうするとだんだん機械化してその員数が、例えば製表課が一番多いということですが、これからだんだんそうした員数が調査のほうへ廻つて行くというようなことが言えるのですか。
  119. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 大体製表課の仕事は、極く機械的な仕事をする。何と申しますか、下級職員が減つたからすぐ智能的なスタッフのほうにその定員を廻すということは、予算面の給与単価、定員分類等によりまして、そう右から左へと移管はできないと思いまするが、予算編成に際しましてそういう事情を話しますれば、大蔵省なども了解して漸次そういう方向に持つてつて頂けるものと考えております。
  120. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 統計のやり方とか、とり方とか、或いは何のためにとつてどうするかというような点で、ただ数字をもてあそぶ、私はそういうような何か気がしてならないのですが、これは意見になりますから……。それから少年婦人室を今度地方分局に設けるようですが、今までおつた人をただやるというだけですが。一体地方分局はどれだけの員数がおるのですか。
  121. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) これは平均いたしまして、原則的に各府県に二名ずつでございます。東京、愛知、大阪のような所が四人、その他中間の所が三人、大部分二人、こういうことになつております。
  122. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 平均二名で、東京、大阪、愛知が四名、こういうことですか。
  123. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 全体の総員は百四名でございますから、大体二名、こう申してよいのですが、例外的に東京、大阪、愛知が四人、それから三人の所が数カ所、こういうことでございます。
  124. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 その二名や四名でどんな仕事を大体やつているのですか。
  125. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) 前回一、二の先生からいろいろ御質問を受けたのでありますが……。
  126. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 前に質問があればよろしい。そういうダブルことはやめます。
  127. 楠見義男

    ○楠見義男君 一点だけ行政管理庁に伺いますが、今の労働省の統計調査部が昔は局であつて、それが部になつたと、こういうお話があつたのですが、農林省も確か局であつたのが部になつたと思いますが、そういうものが全体の官庁を通じてどこどこの省でそういうことになつておりますか。
  128. 大野木克彦

    政府委員大野木克彦君) 統計関係では只今仰せになりました農林、労働、通産、それだけでございます。
  129. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 先ほど上條委員の質問の中にあつた、最低賃金の問題ですね、これはいつ頃大体答えが出そうですか。ずつと又一年もかかるものですか。
  130. 富樫総一

    説明員(富樫総一君) これは政府といたしましては、審議会設置以来、問題の性質上徒らに功を焦らず慎重に御審議の上答申願いたい、こういう態度で臨んでおります。併しながら漫然と日を過すべき性質のものでなく、一昨々年より相当事業が進行いたしまして、机上の空論と申しますか、机上の理論的な話から進出をしまして、昨年秋頃からもう具体的な数字の調査などに入りまして、委員かたがたも外国のソーシアル・ダンピングの非難などをも頭に十分入れられまして、できるだけ近い機会に全般的な結論でなくても、部分的な結論でもいいから、できるだけ早目に実現可能性の結論を得たい、こういうことで努力されておりますので、そう遠からず或る程度の結果が出るというふうに期待しております。
  131. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、今あなたがおつしやつたように、最後の結論じやなくて、経過報告みたような中途の報告をされるということは非常にいいことだと思う。できるだけそういうように御努力を一つお願いしたい。それだけです。
  132. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 労働省設置法の一部を改正する法律案のほうは本日はこの程度にとどめておきます。  次に経済審議庁設置法案経済安定本部設置法の廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案及び資源調査会設置法案を議題といたします。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  133. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 速記を始めて。
  134. 楠見義男

    ○楠見義男君 経済審議庁について、先ず基本的な考え方について安本長官の御所見を伺いたいのでありますが、それは現在の経済安定本部長官が経済審議庁長官になられるかどうかわかりませんから、或いはこういう質問は安本長官に対しては当を得ないので、野田管理庁長官にお伺いしたほうがいいかとも思つたのでありますが、併しこの問題は、実は政府を代表して経済審議庁設置法案の提案理由を安本長官がお説明になり、そして先般経済安定委員会内閣委員会との間で連合審査をいたしました際に、私どもが安本長官から伺つた提案理由と、野田管理庁長官がお述べになる説明とが根本的にと申していいぐらい考え方が違いますので、一度お伺いした提案理由をもう一度お伺いし直さなければならんようなことになつて誠に恐縮であるし、又安本長官にはお気の毒だと思うのでありますが、そういう前触を以てお尋ねいたしたいと思います。それは私どもこの経済審議庁の提案理由として伺つたところによりますと、我が国の経済の安定についてはだんだんとその安定の度を加えて来た。併しながらなお今後生活水準の点から言つても未だ戦前の水準には達しないし、それから又鉱工業生産についても同様であり、更に国際収支の問題になつて来ると、最近は一時の特需等でやや復帰が許されておるけれども、併し長期的に見るとドル不足の傾向は否定できない。更に今後自衛力の漸増、賠償、外債の支払い等の新たな経済上の償還が増加して来るのであり、決して楽観を許さない。そこで総合的見地に立つた目標を樹立して、これに基いて総合的経済施策を計画的に推進して行くという必要がある、こういうような考え方に基いて、趣旨に基いて経済に関する重要な政策及び計画の企画、立案、及び総合調整を行う行政機関として新たに経済審議庁を設置いたすこととした、こういう提案の説明であります。私どもは提案の御説明なつたことを文字通りに了解いたしておりましたところ、野田行政管理庁長官は、要約いたしますると、例えば金融についてはこれは餅は餅屋で、大蔵省に任しておいたほうが却つていい考えも出るし又能率も上るのだ、食糧については農林省に任したら同様にいい考えも出、又励みもあり、能率も上るのだ、商工業については又通産省、こういうことで、各省行政機関がそれぞれの任務を最高度にやればそれでいいので、ただそうかといつて全体の経済を動かして行く場合に、各省の間でいろいろの意見の相違があり、或いは調整を要すべきものが出て来る、そこで経済審議庁としては、そういう各省の本来の権限所管に属しないことについてはやるけれども、併し原則としては、それは今申したように各省がやるのであつて、ただその間のいわば問題があつた場合に、お座敷を貸して総合調整をやるということに主力が置かれておるような御説明であつたのであります。従つて半日ほど連合委員会でいろいろ各委員から質疑をいたしたのでありますが、殆んど満足せられるような答弁が得られないということは、質問するほうは経済安定本部長官がお述べになつた趣旨を前提にして質問しておるのに、答えるほうでは今申上げたような考え方で以て答えておるのです。平行線でいつまでたつても質疑が、ピントが合わなかつたのが実情でありました。そこでどうも両大臣の言うところ、考えておるところが違うようだしするから、よく政府の間で意見をまとめて、安本長官が提案理由でお述べになつたほうが正しいのか、或いはそれが間違いで、野田管理庁長官の言われることが正しくて、前の提案理由を御訂正になるのか、そこら辺はよく御相談になつて、改めて提案の理由説明してもらいたい、こういうことであつたのでありますが、相当の日限がたちましたけれども、未だにその機会を得ませんので、この際改めて経済審議庁設置法案の提案の理由について、甚だ恐縮でありますけれども、このことをもう一度御説明を煩わしたい。若し未だに管理庁長官と安本長官との間にそういう点について、お話合いがなかつたとすれば、改めてお話合いをせられた後でも結構でありますが、そういう機会をできるだけ近い機会に作つて頂きたい、こういうことを一つ意見を交えて申上げておきます。
  135. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 行政管理庁長官の野田君がどういうふうに御説明をいたしたか、その場所に私おりませんから存じませんが、あとで聞きました事柄から推測いたしまして、根本的に私の提案理由、述べましたことと相違は私はないと思つておりますが、と申しますのは、私はこの経済審議庁設置法の第三条に掲げてありますように、経済審議庁においては、長期計画について総合的な計画を立案する、こういうことははつきり書いてあります。ただここで特に長期と書きましたのは、一般的に短期といいますか、その年々に起る一つ予算的な組立て方、或いは計画等についても、戦争直後におけるがごとき混乱した時代ではなく、だんだん各省においてもそれぞれの秩序を見せて参りましたので、それぞれの各官庁にその機能を譲つて、そうして立てさせるというような形において、できるだけ重複しておつたところの機能を外すということにいたしておるわけであります。併しながら今日の時代におきまして、提案理由に述べているがごとく、まだ日本の状態としては、その年々における計画というものをそれぞれに立てて行く以外に、その長期にという面が、十年先とか、五年先はなかなか困難ですが、少くとも二、三年先までの見通しの下に計画を立てる必要があるのであつて、それにつきましてはすべての各官庁関係する事柄につきましても、全体的に長期計画を立てるということは、この役所の性格、権能になつております。それをやつて行くことによつて、総合的な長期計画を推進して行くということの意義がはつきり提案理由に出ておるわけであります。而して長期計画を立てるということの任務があるということについては、その当然な、その年々における初年度計画というようなものが、とにかくこれは関連を持つものでありますから、これはその年々の計画というものについて立てられるべき官庁等において案を立てられるについて、当然これは調整をするわけであります。この点は野田君ともよく話してありまして、それは同様な意見を持つておる。その間に処しまして、政策について偏よらず、とにかく調整をとる必要のある場合においては、この第三条の第一号に書いてありますように、総合的な調整をする、こういうことの規定が出ておるのでありまして、ここにその年々における、目前のと言いますか、計画等についてはでき得る限り重複を避けて各官庁に譲り、長期計画に対しては、一つの計画の策定をこの審議庁の機能として認めて行く。私は常に先を先をと考えつつ計画を立てて行つて、その推進をするということになつておるわけでありまして、その点については、別に私の提案理由と行政管理庁長官の説明とに食い違いはないと私は考えております。
  136. 楠見義男

    ○楠見義男君 只今の御説明で大体了承いたしました。そこでその長期経済計画という場合に、これは勿論その総合的な見地に立つた企画立案であつて、その総合的企画立案の下における各個のその内容をなすところの、又各省それぞれの所管に属する個別的の各論と申しますか、各論的のことは、これは各省で経済審議庁のこの指揮推進の下にやることであつて、総合的な経済政策の企画立案は、これはこの経済審議庁でやるものと只今の御説明からしても窺われるのですが、そのように了解していいかどうか。
  137. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 大体お話の通りです。
  138. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうしますと、提案理由の中にもお述べになつておるように、その総合的な経済政策の企画立案ということが、これからも一番大事な事柄であると、こういうことが述べられておる際に、経済審議庁法の第三条の、今お述べになつたように、審議庁の事務として掲げられておることは、そういう点が明確でないと同時に、むしろこの号の配列は必ずしもその事項の、ことの緩急、或いは軽重の差を示しておるものとは思いませんけれども、併し配列から行くと、如何にもさつき申上げたように、各官庁に座敷を貸して、そうしてそれを調整するということが如何にも主なる任務のもののように掲げられており、そうして又一般には総合的見地に立つ経済施策の企画立案というものが、言葉の上でも単に三号で「長期経済計画の策定」というような、余りはつきりせんような言葉で表現されておるのでありますが、その辺の事情はどういうふうに理解すればよろしいのでしようか。
  139. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) この点については、今あなたのお話のように、別に一号と二号、三号というようなことで事の軽重がきめてあるわけではないと私は思います。この立案に関しまして、只今も御説明申上げましたように、常に長期の、先を見通した計画に基いての総合計画というものは、これは別の官庁においてやるということで、「長期経済計画の策定」ということははつきり書いてあります。別にこれについて疑いはないと思います。而して全体的に各官庁同士において立てられる個別的な案が、結局総合的な長期計画にも関係いたしておりますので、その間にでこぼこがあつたり、或いは財政上の立場から、段階的におのおのの立場において主張する計画において無理があるというような面に対して、総合調整をするという機能は第一号ではつきり書いてあります。従つてこの間に一号と三号と順序を変えてあるからといつて、そこに軽重の私は差はないと思つております。
  140. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はどうしてそういうことを文理的な解釈にこだわるようなことを申すかと言えば、三号に「長期経済計画の策定」と、それから二号に「他の行政機関の所掌に属さない総合的経済政策の企画立案」、こういう言葉が掲げられており、そうして一号に「経済に関する基本的な政策の総合調整」、こういうふうになつておるわけなのですね。そこでですね、「長期経済計画の策定」ということと、又「総合的経済政策の企画立案」ということは、違つた観念としてこの審議庁設置法では取扱われておるのじやなかろうか、即ち私の先ほど質問いたしたところ、それから又安本長官がお答えになつたことは、結局長期経済計画の策定と同時にそれは又総合的な経済政策の企画立案である、こういうように私は理解し、又長官の御答弁もそれに近いように受取れたのでありますが、にもかかわらず、総合的経済政策の企画立案ということになつて来ると、二号でわざわざ「他の行政機関の所掌に属さない総合的経済政策の企画立案」、こういうふうになつておるために、提案理由でお述べになり、又只今、本日お述べになつたような趣旨と違つた結果ができて来るのじやないか、そしてこれを我々が了解したところと違つた点に近いような説明が、野田管理庁長官からも先般連合委員会であつた、従つてその経済審議庁で提案理由で狙つておられるところと実際は違い、而も実際は野田管理庁長官がお述べになつたのとほぼ同様のことが文理的にもこの三条の規定から出て来やしないか、それでは経済審議庁を新たに作られるならば、ともかくお述べになつたような提案理由で行くとすれば、そこらはどうも矛盾しやしないだろうかということなんですが、その点はどうですか。
  141. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 御尤もなお尋ねでありますが、私は二と三と比べて頂くと、三は特に「長期経済計画の策定」として「長期」という字がついております。従つて長期に関しては全体的な総合計画と言いますか、先を見通しての調和ある計画がここで立てられるということが私は出て来ると思う。二号については、多少言葉があいまいでございますが、「他の行政機関の所掌に属さない」ということが、広くこれは各般に亘つておるために、どの行政機関ということを特定することができない場合も含むわけでありますが、そういうふうなものについては、短期的なその年々における計画というようなことに読み替えて行けばいいんだと思います。問題は、とにかく戦争終結後何もかも実は経済安定本部でやつておつたし、又その当時はやらなければならんような経済的の情勢であつたと思う。従つて一例を挙げれば、予算的な措置について、公共事業費等について、その年々の予算措置についても、あそこで総合的な計画を立て、そうして各行政機関の要求を勘案しつつ調和さしてこれを立てておつた。又外貨資金の組立て、外貨の割当というようなものについて一例をとりましても、その年々のものについてまでも実はやつておつた。今日の場合、大体終戦後六、七年たちまして、各省がそういうその年々にやるものについては、しつかりと各省に自主的にやらしていい。むしろ考えられるべきことは、長期に亘つての計画については、一つ各省を離れた所で計画を策定して行つて、そうしてそれを個々別々には各省がお立てになるんでしようが、全体的に長期の問題を総合的に見て、妥当な案を推進し、これを各省にやつてもらうというような形に持つて行くことだろうということで、ここで大体その年年の短期のものは外すという行き方であります。ところが二号の中で、他の所掌に属さざる云々と書いてありますが、そうなりましても、その年々のものにつきましても、例えば電源開発の問題にしましても、或いは電源開発と、これに類したほかの委員会のものがありましたが、そういう問題については、これはほかの特に直接所掌すべき官庁というものがないわけです。又或いは各般に跨がつておるというようなものについては、その年々の問題についてもこれは一つ総合的に計画を立てる必要がある、こういうふうな形で特に二号が置かれておると私は考えておるのであります。さように御了承を願いたいと思います。
  142. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは次に只今三号と二号との関係からお尋ねをいたしたのでありますが、私のお尋ねした点が、或いは言葉が足りなかつたかも知れませんから、別の観点から、今度は二号と一号との関係から、総合的経済政策の問題についてお伺いするわけなんでありますが、一号の「経済に関する基本的な政策の総合調整」という場合には、これは野田長官も言われたように、例えば金融について大蔵省がやつておられること、或いは又貿易について通産省がやられること、食糧について農林省がやること、こういうような経済に関するそれぞれの各部門における基本的な政策について、国全体の総合経済的な立場から、そこで調整をする、従つてそこに総合調整という言葉の意味が出て来るわけであります。ところがその二号における「総合的経済政策」、而もそれは「他の行政機関の所掌に属さない」、こういうふうになつておる。この「総合的経済政策」というものはどういうのを言うか、例えば金融なら金融というものについては、その金融ということの立場から総合経済政策、即ち総合的金融政策というふうにここではお述べになつておるのか、国全体の総合的観点からする経済政策というものを、ここで言う「総合的経済政策」であるとすれば、経済審議庁以外にそういつた総合的の経済政策の企画立案官庁というものはないはずだと思うのでありますが、この点は二号で言つておる「総合的経済政策」というものは、具体的に言うとどういうものを言つておられるのでしようか、その点を伺いたいと思います。
  143. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) お話のように、私、一号については、これは短期も長期も共に計画について総合調整機能を認めた規定だと思います。すべて各官庁それぞれ一つの主管があり、それについて長期、短期計画を立てることに機能はあるわけであります。併しその間におきまして、全体を眺めてその間において調整ある政策を国として立てるということにおいて、基本政策についての総合調整機能をこの審議庁がやることになる規定であります。二号と三号の関係においては先ほど申上げたように、短期については大体各官庁のほうに作らせるということになつておりますが、ただ先ほど各官庁に属さざるもの、或いは各般に跨がつておるがためにどれということに特定し得ざるようなものについては、これは初めから短期といえども、これは審議庁のほうでも権能があるということを明ら  かにしておるわけであります。三号において「長期経済計画の策定」ということに対しては、これは各般に亘る審議庁においてその権能を持つておる。又各官庁といえども、それぞれの食糧政策なら食糧政策についての長期計画を考え、その間において両方相談しますが、これについては一号によつて調整しつつ、一つ一つの長期計画を総合的に立てるということがここにはつきり出て来ておるわけであります。
  144. 楠見義男

    ○楠見義男君 それじや又三号と二号との関係に戻りますが、この三号で長期経済計画を策定するということは、裏腹の言葉で言うと、長期的な総合経済政策を策定する。企画立案する、こういうことだろうと思うのですが、そういうことじやないでしようか。
  145. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これはもとより長期に関する計画は、総合的なものでなければならないのであつて、審議庁がばらばらに一つ一つのものを長期計画を立てるという意味ではないのであります。
  146. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうしますと、この長期経済計画の裏腹である総合的経済政策を審議庁がお立てになつて、そうして先ほど申したように、総合的経済政策の各論であるといいますか、経済政策の構成要素であるそれぞれの所管省の仕事は、それぞれの所管省でおやりになる、これは勿論それによつて、これは今お述べになつたような長期の財政金融政策、或いは食糧政策というもの、或いは又短期の食糧政策、或いは財政金融政策というものは、すべてこれは総合経済政策の構成分子と申しましようか、要素であるわけなんですね。従つてその場合には、総合経済政策の構成要素であるけれども、総合的経済政策とは言えないのじやないか、ここに言う総合経済政策というものは、それらのものを、各論を集めた総論的なものを総称しておるのじやなかろうか、従つてその場合に「他の行政機関の所掌に属さない総合的経済政策」という言葉は適当でないと同時に、誤解を生ずるのではなかろうか。若し国全体の立場から、この長期経済計画或いは短期の、一年々々の短期の総合的経済政策というものは、そのことこそ経済審議庁の所掌事項であつて、「他の行政機関の所掌に属さない」云々ということは、本来言葉をなしておらないのではないかと、こういうように思われるのですが、どうでしようか。
  147. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は、多少いろいろな議論がありましようが、そこにはいろいろな意味があるだろうと思います。先ほど例を引きましたように、電気のごときものを見ましても、これは行政各官庁に跨がつておる仕事であります。而もそれは長期も短期も一つの計画として立てなければならない。そういうものについては、初めから電気というものについて、農業関係の問題もありましようし、建設省関係の問題もありましよう。又通産省関係の鉱工業関係に亘つておるものもあるので、それを引つくるめて調整した立場で、この電気を将来どういうように持つて行くかということの計画は、これは長期、短期共に各官庁でやらなければならない。そういうこともここに特に二号に挙げてあるのであります。従つて短期の問題について、今年の米の買上げをどうするかという問題については、これは農林省が案を立てられて、そうして行くのだから、これは他の官庁はやらんということについて、特に二号の他の行政官庁の所掌に属さないものについては、その官庁がすることになるのであります。従つて三号については、長期計画については、勿論この長期計画を策定する場合には、各般に経済政策は亘るでありましようが、おのずからその間において総合的な一つの長期計画が立てられる、その個々のものに当つては、お話のようにそれぞれ各官庁が持つておりますから、その間に両方相互連絡、話合いの上に立つて、各官庁一つの長期計画を立案する、こういうことになつて参ると思います。
  148. 楠見義男

    ○楠見義男君 私はどうも今安本長官のお述べになることは理解できないのですが、例えば電力なら電力というものは、総合的な政策であるということはよくわかるのですが、ところが具体的になつて参りますと、水力、火力両方併せての政策というものが考えられると、文字通り総合的になると思うのです。ところがここでこうなつておりますけれども、具体的に、それではあとのほうでどうなつておるかと言えば、「電源開発に関する基本的な政策及び計画」、こうなりまして、総合的ないわゆる今お述べになつたような全体の電力計画というものをどうするかこうするかという電力需給の関係にいたしましても、そういうことは入つておらない。そこでここで述べられておる言葉の意味と、通常常識的に理解される言葉の意味と、それからお述べになつておること、或いは又具体的にあとから出て来る条項のこと、それから野田管理庁長官の言われたこと、これが少しぼうつとしておるときにはわかりますけれども、頭が正常なときにはわからないのですよ。その点が実は非常に疑問なんですがね。
  149. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 私もちよつと関連して、今の楠見君の質問の一部は、第二号の「他の行政機関の所掌に属さない」という下に「総合的」という文字があるから問題が起きるのですね。ここにある「総合的」というのは、立案者の言う意味では、第一号と対比して、むしろ基本的な経済政策の企画立案、こういうことではないのですか。他の行政機関の所掌に属さない基本的経済政策の企画立案、その他の行政機関のやつは第一号で皆基本的なことはやるのだから、そうでないものは何と言いますか、審議庁ですか、そこでやる。「総合的」という字は基本的なという意味であれば、そういうことであれば、一部は解消すると思います。
  150. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 むしろこれはこういう意味だと思う。「所掌に属さない」というのは、一つ行政官庁に専属しないという意味ではないのですか。そうすると二つ行政官庁に属しておるというような場合に、総合的に立てなければならんということになるのじやないですか。「所掌に属さない」、所掌に専属しないとかいうような意味ではないのですか。そうでないと意味がわからない。
  151. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は先ほども申上げておりますように、ちよつと言葉が足りませんので、それは全然ほかの官庁の所掌に属さないものというものは実はないわけであります。併しそういう場合を予想し、もう一つは、先ほど来…、行政各官庁に跨がつておるためにどれをなにしていいかわからんというようなものについてこれをやる、こういうのが二号の書き方であります。それから楠見さんのお尋ねにお答えいたします。私ちよつと電気について言いましたように、大体電源開発の間においてやる、こういうことです。これはあとの第何条か、四条とも照応させてあるつもりであります。
  152. 楠見義男

    ○楠見義男君 私は只今波多野君から言われた二号の基本的な経済政策、丁度一号に「基本的な政策」という言葉がありますが、二号が基本的総合経済政策というならまだ、事柄のよし悪しは別として、わかるのです。但しわかると同時に、そうなつて来れば、余計に一応提案理由の、総合的見地に立つて経済目標を立て、そうして又これを計画的に推進して行くという、そのことが逆にわからなくなつて来るのです。これは併しわからんということだけわかりましたから、この程度にいたします。  いま一つの問題としてお伺いしたいことは、外貨予算の問題なんですが、これは私は意見を交えて申しまして恐縮なんですが……。
  153. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の問題少し質問させて下さい。関連しておるから。やはり三号の問題ですが、同じことを聞くようなことになると思いますが、別の見地からもう少しはつきりさせて行きたいと思いますから質問いたしますが、経済に関する基本的な政策は大体各省が立てる。各省に任せる。そうして立てて来る。それを審議庁に持つて来る。そうして審議庁の査定を経る。あたかも予算を、各省予算概算書を出す、そうしてそれを大蔵省が査定して、予算に編成して行くというあれのプロセスと同じプロセスをやるのか。それからもう一つは、長期経済計画というものは、あたかも各省予算編成方針というものに当る性格を持つておるのか。この点を一つつておきたい。つまり審議庁というのは必ず各省の計画を立てる場合通さなければならん性質のものなのか。ただ問題が起きたときに中間的な仲裁に入るものなのかその性格をはつきりしておきたい。
  154. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) お答えしますが、その点については、第三条第一号にありますように、経済に関する基本的な政策の総合調整ということにおいて、審議庁においては各官庁が立てる基本的政策の間に矛盾なり、或いは偏重なりの起らんように、日本の国力に副うようにこれを総合調整するという役目をこの役所は持つている。而してこの経済の基本的な政策遂行に当つては、今日の場合長期計画等の一環として、その年々のものが行われる。そういうふうにもつて行くためにはやはり各省から相談を受けるわけです。そこにおいてこの審議庁において積極的に調整をし、進めるという機会を持つことでありまして、各省に委して欠陥が起つたときだけ仲裁に出るというふうな考え方ではないのであります。
  155. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうしますと第三号にある長期経済計画の策定ということが一番基本的な仕事なんですね。その長期計画の一年度分として、例えば各省がいろいろな計画を立てる。それを長期計画の見地から見て総合調整して行く。その総合調整を経なければ各省はその計画を遂行することはできないということは、あたかも予算の査定を大蔵省がやるがごときものであるか、もう一遍はつきり……。
  156. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それは予算の査定のようなものであるかないか、それは今後の問題ですけれども、おのずから今日の場合、各省が別々の所管において立てた事柄は、長期計画の一環として見て行過ぎの場合もありましようし、初年度に、或いは又政府の財政上の立場におしてこれは農林省の予算でありますれば、これだけ土地改良等に進めることもできにくい、河川関係についての修築或いは改修という問題について、或る程度金は廻さなければならんというときに、或る程度のおのおのの基本の政策においての行き方の調整もありましようし、又具体的な基本政策においては誤りないとしても、その年における支出の関係において年限的にこれを延ばさなければならんというような場合もありましよう。そういうふうな調整はおのずから相談を受けてそこに調整をとるということにしてこの役所が働くわけであります。
  157. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは運用上の問題ですよ。私は法律論をやつているので、各省が経済計画を立てる場合に、審議庁の議を経なければならんか、経る義務があるというふうに規定するのか。ただ運用上多分そうなるであろう、審議庁のほうへ持つて来るだろうくらいの話のものかどうかということです。
  158. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これは運用上の問題として、とにかく短期の問題については、短期の政策については調整をとつて行くということになると思います。併し総合長期の計画に至つては、これはこの官庁としての積極的な面として総合長期の政策の策定をやるのですから、それには当然に各省に亘つての働きかけもし、相談もするのです。それに合うように各省の計画が定められて行くようになると思います。
  159. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 長期計画のほうはわかるのです。一つの編成方針から計画立案方針をここできめて行くのです。その編成方針、計画立案方針に副わないような経済計画を立てるようなわけにいかんことはわかる。第一号の総合調整ということをやろうと思つても相談に来ない場合がある。そういう場合にどうするかということです。必ず相談に来なければならんということがどこかに謳つてあるかということです。
  160. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これは特にそういう明文は設けられておらんようですけれども、これは内閣の運用として、そういうふうに持つて行くつもりであります。
  161. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 運営だけでやつて行こうというなら話はそれでおしまいですが、そんなことでは審議庁を作つても浮いてしまうですよ。そんなら意味がなくなる。私は必ず各省が基本的な政策を立てる場合に審議庁の議を経なければならないということがどこか機構上できておればこの審議庁の意味がある。それがなかつたなら意味がないという感じがするものであるから、念をおして聞いておるわけです。
  162. 楠見義男

    ○楠見義男君 今波多野委員からそんなことなら経済審議庁をやめたほうがいいのじやないかという御意見があつたんですが、実はほかの委員からも経済審議庁をやめたほうがいいのじやないかということをお考えになつて意見をお洩らしになつたかたもある。それは今安本長官がお答えになつたようなことだとやめたほうがいいのじやないかということであつたんです。そのやめたほうがいいではないかという御意見に裏打するごとく安本長官が又お答えになつておるようにも思うのです。で、私はそうではないのじやないかと思う、提案理由ではつきりお述べになつておるように。ところが今の御説明を伺つておりますと、その総合調整の問題は運用上の問題であるというようなことでありますが、同時に又そういうことでありますと、長期計画の策定というものはペーパー・プランに陥る虞れがある。ということは、現実に丁度今ここに管理庁長官もおられるが、管理庁長官もそういうことを裏打するごとく言つておられる。私は再々申上げるように、大蔵省は財政金融については一番エキスパートであつて、又自分にその権限を与えられることが張合いがあつて能率的にいい政策ができるゆえんだと、そこでそれらの各省の基本計画が問題になつたときにここへ持出して、お座敷を借りて或いはお座敷を貸して調整をする、こういうようなことを行う、そうすると長期計画自身もペーパー・プランで、何らこれを推進して行く手段方法というものをお持ちになつておらない。ただ運用上の問題、而も運用上の問題も現に今閣内の一大臣がそういうことを説明されておられるのです。若し説明が間違つておられるというか、私の聞き間違いであつたならば直して頂きたい。私はそういうように聞き、又ほかの委員もそういうふうに聞いておられる。そんなことならこの経済審議庁は要らないと思うが、なおここで要るという理由があればお伺いしたい。
  163. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それはどういうようにおとりになつたか知らないが、私先ほどから場合を分けてお話しておるのです。三条一号における基本政策の総合調整については、短期も長期もとにかく計画について立案する上において各関係省における政策の調整をして行くと、こういうことを第一に言つておる。そして第三号の規定と第二号の規定を書き分けたゆえんのものは、長期計画についてはおのおの各省において基本政策を持つていましよう、で、基本政策を離れての長期計画というものはない。それについてはこの官庁がイニシアチブをとつて専属の仕事として計画を立案し、その計画について違つておる点はもとより直して行くという立場に立つわけであります。そこにその一号の関係で調整をしつつ長期計画を立て、策定をするというこの権能があるということであつて、短期について或る程度各省に委せるが、長期計画、先を見通しての長期計画、そういう一つの重要なものについてはそれについてはこの官庁がイニシアチブをとつて計画の策定をし、それについて各省に話をして、各省をしその線に沿うてそれに仕事をさせるという形になつて行くと私は考えております。
  164. 楠見義男

    ○楠見義男君 野田長官にさつき私が申上げたことは、私の理解していたところが間違つておつたとすれば直して頂きたいし、理解していた通りであつたならば御答弁を願いたいと思います。
  165. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私はさつきから安本長官の説明を聞いているのですが、安本長官と私の意見は一致しているわけであります。それから審議庁は要らんじやないかという御意見に対しては、それは少し酷な御意見じやないかと思うのであります。
  166. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それじやちよつと聞いておきますが、政府が出して来る行政機構に関する法律案を、どれを見ておつてももう非常に手の込んだ抜け目のない規定を作つているのです。ところがこの審議庁の法案に関する限り実に手の抜いた変なものなんです。例えば今の第三条第一号が問題ですが、審議庁の店を開いておつて誰も来なかつたらどうなんですか。
  167. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 逆にお尋ねするのですけれども、例えば波多野さんが大臣をやつておられる、審議庁の国務大臣をやつておられる、それで誰も相談に来なかつたら黙つておられないと思うのです。黙つておられるのはおかしいのです。
  168. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 黙つておらんですが、文句を言うかも知れないですよ。
  169. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 更にまあ条文がありますから相互調整の問題で相談に付すべきもので、長期計画をやつておられるのですから、その関係各省は相談に行くべきもので、それを来なかつたら、若し黙つているとすれば波多野さんはがんがん言われてやると思います。
  170. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そういう問題ではなくて、我々が法律を審議している場合には、この機構上の関連がどつかにちやんとはつきり出ているのです。そのことは皆どの法律案を見てもある。この審議庁に関する限りは出ていない。わざと抜いたのですか、それを聞きたい。
  171. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私はそういうふうにとらないのですが、随分詳しく書いてあると思います。而して行政運営の面においては、その運営そのものが法律になつているものもありますし、行政面に任されているものもありますし、例えば会計などというものは、会計法というものがありましてちやんと出ておりますが、法理論もあると思います。法律的にきめていないものもたくさんあると思います。特に新らしい役所についてはそういう場合があると思います。事柄自体が非常に弾力性を持つて運営するという場合は行政運営の面においてやる。それはここで何遍も繰返して記録に残つているわけです。これの立法の精神、これは皆さんの承認を得られるのですから、これがどう運営されるかということはその線に沿つてつて行く、それは間違いなくやられると思います。
  172. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは僕はこう考えるのです。審議庁なるものを設けて経済政策の総合調整をやつたり、長期計画を立ててそれにマッチするような総合調整をやつて行くのでしようが、それなら丁度予算の編成と同じなんだ、そういうふうに規定を作つて置かないと、ややもすると浮いてしまうということなんです。政府はほかの法案を出す場合には常にそういう点に十分なる考慮を払つて面倒くさいほど作つているのであります。これに関する限りさつと簡単に出したところを見ると、なぜわざわざこういうことを抜いたかということが疑問になるのであります。ここの参考資料に配つてあるやつを見ていると、従来安定本部が所管しておつた仕事もあつちこつち奪い合いをやつてつて行つた。一覧表を見ると切取りをして持つて行つたのです。持つてつてそうして残り物を審議庁に置いてある。持つて行つたものは今後の長期計画案、基本計画の立案において審議庁にまあ何らかの相談をしなければならんとか、この議を経てとか何とかということをつけておけば、審議庁を存置する意味が出て来るのですが、これはただ持つて行き放しですね、切取りして持つて行つたのです。
  173. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 各省に持つて行つたものは、比較的各省でやつて適当なもので、実施事務に使うのじやないかと思うのであります。この違う点と言いますか、部面的な仕事というものをそこでやつてもらうというわけでありまして、殊に瑣末な仕事各省事務的にやつてもらうという考え方をいたしております。
  174. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今の波多野さんのおつしやるのはこういう意味じやないかと思うのであります。法制局の今度の法文の、閣議に出る法律案というものは、すべて法制局のところで一応規定から言えば作業を通す、初めから目を通して、閣議できまるということが書いてある。これはそういう条文がこれにはないのじやないか、こう言われるのだと思うのであります。あなたのは、総合という言葉で以て権限が与えられているじやないか、こういう御意見じやないかと思うのであります。その差であるか、それは同じと見るかが相違するところじやないかと、こう思うのですが、波多野さんそういう意味じやありませんか。
  175. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 大体そういう意味なんです。
  176. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私法制局の法律事務を専門家としていぢくるという立場と、それと経済審議庁の経済的なプランというものは違うと思うのであります。それですから各省は、関係のある基本的な政策を立てた場合に、審議庁は長期計画を立て、総合的に判断しておられます立場にありますから、当然相談に行く。必要があれば閣議決定の点におきましても当然守るのであります。又この条文がありますので、国務大臣は必ずそういうことをする、私はその点については何らの疑いもないし、行政運営の実際に当つて考えれば、そういう変なことをする大臣も余りいないだろうと思う。必ず内閣は一体主義でありますから、十分それを守つて行かれる。これは今までそういうようなことはたくさんありますし、今後もそうであろうと考えます。
  177. 三好始

    ○三好始君 野田さんが先ほど来説明せられていることは、どうも法律関係そのものとして説明されているということよりも、事実上のことを主張されているような気がしてしようがないのであります。なぜかと申しますと、波多野さんが経済審議庁の担当国務大臣であれば、総合調整について他の閣僚が来なかつたら黙つておらんだろうとか、或いは閣議で発言するだろうとか、こういうことは事実上の問題であつて法律問題じやないと思うのであります。問題は、ここに規定していることが基礎、法律上のいわば権限として規定しているのかどうか、こういうことになつて来るのじやないかと思うのですが、その点どうなんです。
  178. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 今の波多野さんの御意見は、行政運営でやるということを安本長官が答えられて、行政運営がうまく行かんということを言われたから、それについて行政運営でうまく行くということを申上げたのであります。今の法律問題じやなしに、こういう向うの行政運営の面でうまく行かんとおつしやつたものですから、やつて行きますということを、具体的に波多野さんに、最も卑近な例を引いて申上げたのであります。
  179. 松原一彦

    ○松原一彦君 私も先般長官に、あなたのお説のようであればもう審議庁は不要じやないかと申上げた一人でありますが、今日のお話を聞いておつて、いよいよ私は無用論が高まつて来るのですが、どこか一つ節約して、行政の機構を整理すると言えば、どこかで大臣一人減すというくらいのことがなくては意味をなさんのでありますが、今承わつてもこの前のと同じで、周東さんが来られても一向……、経済の基本的な政策を各省で立てて、それを総合調整をするというが、総合調整するというところの権限は、おのずから調整するだけのことが書いてあるのであつて、いやしくも総合調整する以上は一つの物指が、基準がなくてはならない。その基準によつて計画を立てるということは、即ち他の行政機関の所掌に属せないものだけを総合して、経済政策を企画立案するとあつて、それは基本的なものではない。この審議庁が企画庁の性格を持つものであるならば、初めて基本が立つて、基本という物指のほうからの総合調整である。総合調整は先般のお話のように、お話を聞くという、こういうふうなことはあります。これは斡旋するという程度である。そういうような場合は成るべくないことを希望すると言われたのでありますが、そうすると総合調整といつたような事柄はないのが常例であつて、斡旋するという程度であるならば、私は無用だということをたびたび申上げたのですけれども、調整する以上は何かの基準があつて、これが日本の長期経済計画の基準である。基準に基いて各省がこれをやつておるかやつておらんかを物指に当てて調整する、調整する以上は厳としてここに発言権を持つて、ここを通らなければ各省の案が閣議へ出ないくらいの事柄を書いて置かなければ私は法律的には意味はないと思う。それで私は先般もこれは無用の長物ではないか、若し整理するとするならば、この経済審議庁はやめたほうがよくはないかということを申上げたのです。今日のお話を聞いておつても一向に私には理解できない。ますます疑惑を深くするばかりでありますが、なおこれに対してあなたはどうしてもこれが必要であるという、経済審議庁というものがなくてはならんという御見解をお持ちでしようか。その点重ねて伺いたい。
  180. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私はこの経済審議庁を若しやめるとしますと、ここに書いてある仕事を誰かが必ずやらなければならない。誰かが、どの役所かが必ずやらなければならない仕事だと思うのです。例えて言いますと、長期経済計画の策定、これは長期総合計画のことでありますが、この策定というものをやる役所は今ありません。これは今後の国際情勢に処するために必要でありますから、これはどつかでやらなければならない。それから第四点、第五点も、これもどつかでやらなければならない。やるところをきめなければならん。これでやらなければ委員会を作るなり、或いはその他の役所をきめるなり何なりしなければならない。それから二号にしても、他の行政機関の所掌に属さないようなものが出て来る。そういうものを扱うやつをこれはどつかにきめなければならない。それから一号についても同じような問題があるわけでありまして、どうしてもやめてしまうと言つて仕事をやらなければなりません。仕事は厳として存在するわけでありますから、これを扱うどつかをきめなければならないということになる。それには経済審議庁でこういうことを、一号から五号に至る事柄を総括的に扱うことが、適当ではないか、こういう結論になつたのであります。
  181. 松原一彦

    ○松原一彦君 ところがそれもただ見解の差であつて、一体他の行政の機関の中のどこにも属さない仕事などは私はあり得ないと思う。くつつければどこにでもくつつくのです。
  182. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) これはこういう意味なんです。例えば東南アジア開発なら東南アジア開発という問題が新らしく登場して参ります。そうすると東南アジア開発の仕事というものは、そのこと自体としてはどこの所管ということもなかなか言えない事柄です。これは外務省にも関係しますし、通産省にも関係しますし、農林省にも関係します。大蔵省にも関係します。その他の役所にも関係して来るわけであります。でありますから総合的に関係して来る。こういうものはやはり経済審議庁というようなところで取扱つたらいいのではないか。勿論これがなければそのとき閣議決定でこれはどこどこの役所にやらせるというやり方も勿論ないとは言いません。そういうやり方も勿論できます。併しこういう、例えば長期経済計画とか或いは総合国力の分析、測定とか、或いは内外の経済動向、国民所得云々、こういうことをやる役所があればそこでこういうことをやらせるのが適当ではないか、こういうことでこの審議庁で取扱うことにいたしてあります。
  183. 松原一彦

    ○松原一彦君 いや、私は日本の経済政策面においてかような根本企画をする所があることは当然だと思うのです。だからあつて決して悪いというのではありませんが、あるならあり方があるのです。先般ここで佐々木君が頻りに言つておつたし、ここに書類も出て来たけれども、あるならばもつと積極性を持つたる企画を立てる企画庁であるべきであつて、これは一つの審議をするに過ぎないのです。企画庁ではない。企画というものに対しては決して重きは置いてない。ただ審議をするだけの問題である。企画庁であるならば、一つの立派な企画を持つ権能があつて、その権能の下に予算の編成もさせるし、それから又各省に向つて基本的な政策をこの企画の下に構成せしめる権能も持つ。それならば初めて独立庁を存在せしめ、国務大臣を配置する意味があるのですが、私はあなたの御説明のようなことであり、今日の周東長官のお話を聞いて見ても、それはここに属せなくても他の各省に配置することもでき得るものであり、やるならばもつと積極性を持つた根本企画庁であつて欲しいという私は希望を持つ。これは中途半端なものであつて、総合調整といつたようなことはないのが本当であり、仮にあつた場合においても、基準のない調整というもの、権能のない調整というものはあり得るものではない、こういう見地から私は非常に不徹底なものであるような感じを受ける。何回お聞きしても受けるのですが、私はあつて然るべきもの、あるべきものと思うのです。あるべきものならばあるべきようにもう少し権能のある、企画性のある、権威のあるものであつて欲しい、かような感じを持つているのですが、如何でしようか。
  184. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私は松原委員のお説はよくわかるのでありますが、その意味を以て十分今後考えて行きたいと思つているわけです。というのは、例えば食糧政策なら食糧政策という基本政策は、これは何としても農林省が先ず考えるべきである。こう考えるのです。農林省は今日何万という人員を擁しましてあらゆる資料とあらゆるものを持つているわけです。そこが而も行政の責任官庁です。その責任ある且つ又資料、人材を備えておる農林省が食糧政策を立てる、こういうことは私はそのほうがいいのではないか。併しながらこれはそれが各省にも関係いたしますので、各省とも相談し、勿論長期計画にも関係するから経済審議庁にも相談する、こういうふうにするほうが国家的な能率が上るのではないか。企画というものを何でもかんでも一カ所に集めるというふうにして、そこで全部やるということを言いましても、これは実際上できません。でありますから私は食糧政策ならやはり農林省が中心になつてお立てになつて、そうして経済審議庁及び関係官庁に諮る、こういうほうがいいのではないかと思いますし、又貿易政策でも或いは交通政策でも皆そういうことが言えるのではないか、そのほうが各省に人材が揃つておりますので立派な、国家的に見てそのほうがよりベターな政策ができるのではないか、こういうふうにも思われるのでありまして、この点も十分かれこれ勘案してこういうことになつたのであります。
  185. 松原一彦

    ○松原一彦君 私はそれ以上は意見の分れですから申上げませんが、これは内閣或いは自由党といつたような一つの党の持つ性格から来るものでありましよう。余りこういうことは必要でないということなら軽く扱つて置いてもいいのですが、私は遺憾であるということだけを申上げて質問をやめます。
  186. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 私第一号を読んで見まして、余り実は疑問を起さなかつたのです。「審議庁は、左に掲げる事務をつかさどる」と書いて、そのあとに「経済に関する基本的な政策の総合調整」、つまり基本的な政策の総合調整という仕事は審議庁の権限に第三条によつてきめられておると思うわけです。その裏を考えるというと、ここで総合調整を完全にさせるためには、各省大臣は基本的な政策については審議庁にそれを持つて行かなければならない義務というものをこの半面に私は含んでおると思う。こういうことになる。ただ問題になるのは、基本的な政策であるか否かをきめるのは誰がきめるのか、それもこの総合調整をなさしむる権限を審議庁に与えておる以上は、審議庁が基本的な政策であるか否かを決定する権限を持つているのである。従つて審議庁が、基本的な政策であるからこの問題は農林大臣、こちらのほうに出せと言つた場合には、農林大臣は今の食糧の問題等についての基本的な政策を提供しなければならない、こういう義務がはつきりしている。短期の分はすべて一号に行くし、長期の分は初めから審議庁でやるんだ、こういうふうに私は解釈されると思うのでありますので、さつきからのお話を聞きましてどういうことだろうかと思つて不思議に感じたくらいなんです。
  187. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私は竹下さんのおつしやることよくわかるのであります。そういうふうに我々解釈するのです。それでこの条文に書いてありますから、そういうふうな問題はそうやらなかつたときにどうするんだということになると……。
  188. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 それならばどんな罰則をつけても、やらなかつたときにはどうするんだということは、これは限りのないことです。私はそう思いません。
  189. 楠見義男

    ○楠見義男君 野田さん、これはそういう説明ではなかつたのではないですか。
  190. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) それは基本的な政策を相談に行くというやつを、行つても行かなくてもよいということは言つておらないのです。例えば長期経済政策の設定であるとか、総合国土計画の設定であるとか、そういつたことをやつているわけです。それをやつてつて、いろいろなことを詳しく広く見ておつてつているわけです、そこに基本的な政策が触れて来るということになれば、相談するということは当然考えている。もう一つは、仲裁のことばかり話をしておつたものだから、相談に行くということは我々当然に考えておるものですからあえて言わなかつたわけです。それが少し誤解されておつたかと思います。
  191. 楠見義男

    ○楠見義男君 今言われるように、当然竹下さんがお述べになつたように、何が経済に関する基本的な政策なりや否やということも、これを審議庁がきめ、当然その基本政策については各省は経済審議庁に持出す義務を課せられておる。こういうことがはつきりしておるなら、今僕らがあなたの言われることとして了解していることとは違うので、そうでないように僕らは了解しておる。先ほど例えば波多野君から話があつたように、法制局設置法ではそういうことを明らかにしていると、それではそういうことを入れてもちつとも差支えないじやないか……。
  192. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私たちのほうで、これは政府部内の問題でありますけれども、今のような基本的な政策が何であるかということがわかるとかわからないとかというような問題は余りなかつたのでありますけれども、私としてはこれが基本的な政策かどうかということがわからない、わからないというか、多少怪しげな場合もあり得ると思うのです。そういう場合には閣議できめましようということを提案しておるわけで、それは閣議で了承されておるわけです。それによつて行政運用上はちつとも差支えないように、紛議を起さないようにやるように、今まで話は進めてあります。
  193. 中川幸平

    中川幸平君 政府はこの経済審議庁設置の基本的な説明が落ちておるのではないかと思うのです。と言いますのは、この行政の簡素化の第一歩として、もう経済安定本部を解体しようということでやられて、波多野さんもさつき言うように、各省に分類してやつてしまつた。ところが最も大切なこの一項から第何項までの事柄を、これは放つて置けん問題であるというところで、経済審議庁の設置が立案せられたものだと、こうなるのではないか。お尋ねいたします。
  194. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 只今お話の通りであります。
  195. 中川幸平

    中川幸平君 各省所管に皆移した、移し切れんところの重大な問題が起つて経済審議庁を立案されたと、私これではないかと考えているのですが、やはりそうでありますか。
  196. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) お話の通りに、各省に分けたものは実務に属するような、どちらかというと普通の事務に属するものが大部分であります。こういうような中心的な仕事というものは残して、これは経済審議庁が掌る。経済審議庁は本当のブレーンの役所として働いてもらいたいと、こういう考えであります。
  197. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) ほかの部分について御質疑があつたらどうか……。
  198. 松原一彦

    ○松原一彦君 それではその間にお聞きましよう。第十条に、「審議庁の附属機関として、経済審議会を置く。」とありますが、これはどういうふうな構成になるのでありましようか。こういうものを置いたときには、いつでもその審議会の委員とか、いろいろな構成とかが法律面に現われるのでありますが、ここでは「組織、所掌事業及び委員については、政令で定める。」とあつて、この内容がわかりませんが、この御説明を頂きたいのです。
  199. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 審議会の構成につきましては政令に譲つておるわけでありますが、大体附属機関として置きます審議会につきましては、その構成なり或いは議事の運営なりについては政令に譲つておる例がむしろ普通ではないかと考えておるわけであります。大体只今考えておりますのは、審議会の委員としては、これは民間の有識者を委員に御委嘱申上げるというふうに考えております。それから例えば現在ありますような物資調整に関する審議会、或いは電気に関する審議会というような特定事項についての審議会と申しますよりは、広く経済全般に亘りましての基本的な、且つ総合的な政策の審議をして頂くということを目標にいたしております。従いまして、委員の数も、通常の審議会に見られますような十五人とか二十人とかいうのではなく、七名とか八名とかいう少数の委員の数にいたしたいと、かように考えております。
  200. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 今松原委員の御質問に対しまして、附属機関の審議会といつたような場合の組織とか、所掌事務とか委員とかいうものを政令で定めるのが普通であるのか、多いというのですか。
  201. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) それが普通でございます。
  202. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あなたの今度出されたところの全体の設置法の中で、政令で定めたものはどこにあるのですかね。普通組織であるとか、所掌事務であるとか、委員とかいうようなものについては、大体中に織込んであるように私どもの審議した法案はなつておつたと思いますが、どこにありますか。
  203. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 特に法律構成をきめます場合には、例えば国務大臣委員になるとか、或いは国会議員が委員になるとか、他の国会の承認を受けることを必要とするような事項も兼ねた場合が多いわけであります。普通民間の学識経験者を委員にいたします意味の審議会といたしましては、必ずしも委員の数等について法律規定する必要もないと思います。委員会の性格と言いますか、その委員に選任する方法につきまして、特に国会議員、或いは特別に法律を以て義務付ける必要があるようなものにつきましては、法律を以て謳つておるわけであります。
  204. 松原一彦

    ○松原一彦君 今の継続をお尋ねいたします。これは「附属機関として」とありますからして、恒久的なものだと思うのでありますが、違いましようか、臨時的なものでしようか。
  205. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) この審議会は臨時的なものではございません。審議庁の設置に伴いまして審議庁のある限り継続をされるのであります。只今の御質問でございますが、例えば、手許に通産省の設置法がございますが、通産省の所管にもいろいろ審議会があるわけであります。これは審議会の名称と目的、まあ半行くらいに書いた目的でありまして、それらの必要な事項については政令で定める。法律に別段の定めがないときは政令で定めるということにいたしております。内容等につきましては政令に譲つておるわけであります。
  206. 松原一彦

    ○松原一彦君 その政令で定められる場合のこの任期とか組織或いは委員長をどうするかといつたような事柄も他にはたくさんあるのでありますか、ここには何もないので一向見当がつきませんが、その政令で定める政令案がおできになつておりますならば参考のために資料として御提出願いたいと思います。
  207. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 後刻御配付いたします。
  208. 鈴木直人

    鈴木直人君 私もお聞きしたいのですが、第六条の審議官というものは、国家公務員法中ではこれは一般職ですか、特別職ですか。あと調査官というのもありますが、これはどういうふうなものになつておりますか。
  209. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 審議官は一般職になります。調査官も一般職であります。ただ審議官はここにありますように重要な庁務に参画するということで審議庁の所管いたします事務全体につきまして参画をして行くわけでありまして、一つ特定の業務に囚われずに、審議庁が所管いたします総合的な政策なり、或いは計画なり、或いは調査なり全体にそれぞれ参画して行くという広い動きをいたすわけであります。調査官は専門的事項につきましての調査を行なつて行くというふうに考えております。
  210. 鈴木直人

    鈴木直人君 そうしますと審議官も調査官もこれは常勤ですね。
  211. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 常勤でございます。
  212. 鈴木直人

    鈴木直人君 十一条に「職員の定員は、別に法律で定める。」というので、他に法律があると思うのですが、ちよつと今記憶していないのですが、これはこの職員の中に審議官の十名も調査官の二十名もありまして、そのほかに一般職員が多数いる、こういうことになるわけですね。
  213. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) この定員の中に入るわけであります。
  214. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 何人くらいですか。
  215. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) この審議庁全体の定員は三百七十四名であります。審議官が十名、調査官が二十名。
  216. 鈴木直人

    鈴木直人君 この審議官とか調査官はやはり課長とか部長とかいうような資格を持つものですか。
  217. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 審議官は部長とは別の職務を担当するわけであります。場合によりまして審議官が部長を兼ねる場合もあり得るかと思います。これはそのときの審議官の人選、そのときの状況によつてきめたいと思います。原則としては審議官と部長とは別であります。調査官は原則といたしまして専門的な事項調査審議いたすわけでありますので、必ずしも調査官が部長なり課長なりを兼ねるということではございません。そういう場合もその調査官の任務の内容、調査の内容によりましては考えられますけれども、やはり課長とは一応別に考えるのが、原則的な考えであると考えております。
  218. 鈴木直人

    鈴木直人君 審議官というものの名のつく官吏は他の職員とはやはりこれは性格の違うようなものじやないのですか。
  219. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 審議官を設置いたします現在の安定本部においては局長制度であるわけであります。従いまして財金局長は財政金融の責任ということになつておりますが、審議官につきましてはその審議官の従来の職歴なり、或いは従来の研究課題によりましては或いは財政金融が主になるということもございまするが、もつと一つの局の仕事一つの部の仕事に限定せずに広い視野から見て行くというような人間を出して行くのが審議官じやないかと思います。
  220. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 先ほどちよつとお伺いしましたが、組織とか所掌事務とか、そういうものを政令で定めるというのはどこにあるのですか。例がたくさんあるのですか。一つの例を挙げてもらいたいと思います。
  221. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 通産省の現在の設置法の二十二条にその一例がございます。
  222. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 各省同じような例がずつとついておると思いますが、そうしたら行政管理庁の長官のほうにお願いしますが、一つそういう例をずつと調べて下さい。
  223. 楠瀬常猪

    ○楠瀬常猪君 小さな問題かどうか知りませんが、この第三条の一号でしたか、「経済に関する基本的な政策の総合調整の」政策の中には計画が入つておるのですかどうですか。入つていないのですか。その辺を政府のどなたからか一つ……。
  224. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) もう一度ちよつと……。
  225. 楠瀬常猪

    ○楠瀬常猪君 第三条第一号の「経済に関する基本的な政策の総合調整」とある「基本的な政策」というのは計画が入つておるのですか、入つておらんのですか。
  226. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 政策の中に計画が入るかということでありますが、私は入る場合もあるし、入らん場合もある、具体的な問題に相成ると思います。
  227. 楠瀬常猪

    ○楠瀬常猪君 四条のいろんな書きわけが、計画と政策と別々に書いてある場合と、政策だけを書き出しておる場合とあるのですが、その政策だけを掲げておる場合も計画というものが入る場合と、入らん場合とあるという御解釈ですか。
  228. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) これは経済審議庁で答えてもらつたほうがいいかと思いますが、計画というとちよつとやはり計数的なものが入ると普通に考えられるわけでございます。政策というものはそういうものが入らなくてもいいわけですから恐らく計画については何かこう計画というまとまつた数字的なそういつたようなものが多く伴つて来るもの、こういうふうに考えられます。
  229. 楠瀬常猪

    ○楠瀬常猪君 今の問題はまあ審議庁の権限任務に関する解釈ですから一つその点ははつきりして頂くように御研究願いたいと思います。
  230. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 すでに私はさつきの桶見委員、波多野委員のお尋ねの問題の第三条の一、二、三というような問題が、次には又いろいろな七条のところの十から以降とか、或いは八条というようなところに現われておるのですが、この席でお尋ねしたいのはこういう法案を作るときに一々この法制意見局のほうにも聞いて、言葉使いとかその他が統一されておるのでしようかどうだろうかと思うのですが、この法案は実に乱雑だと思うのですけれども、それでいろいろ疑義を生ずるのだろうと思うのですが……、場合によつたら意見局の長官でも来て一つそこの辺をしつかりしてもらわんと議論がどうも……実に何が多いと思うのですがね。(「粗製濫造だよ」と呼ぶ者あり)これはどうでしようか、時間をかけない意味においてそうしたほうがいいのじやないかと思うのですが……。そうせんと各省にいろいろなことが出おつて、今楠見委員の質問のところ、波多野委員の質問のところ、二頁のところ、それを更に敷衍したと見なければなりませんが、七頁から八頁に亘つて見るというと、これは実に乱雑な言葉を使つていろいろなことが入つたり出たり、入つたり出たりしているのですが、一貫性がないと思うのですが、いろいろ法律案がたくさん出てお困りだろうとは思いますけれども、疑義はこれから生ずるのだろうと思うのです。これはお答えを願わんでもよろしうございますけれども、実際これは……。
  231. 鈴木直人

    鈴木直人君 今のは例えば第四条の十三号とか七条の十一号以下とかいうのは、大体第三条の一号、二号或いは三号というようなものを具体的に例示したものじやないですか。
  232. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 審議庁の事務範囲と申しますか、任務は、三条に規定してございまして、これを各部に振分けまして細かく規定いたしましたのが第七条以下の規定になるわけでございます。
  233. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私の質問はそういう意味じやないのです。例えば総合調整という言葉、この二頁にですね、即ちこの三条の総合調整とか企画立案とか基本的というような言葉が七頁、八頁でいろいろ別な意味にも使われおるし、或いは推進というような言葉が入つて来たり何かしている。或るところでは推進という言葉が入つたり、或るところでは入らない。統一されないということを申上げておるのですが、皆これを御覧になると総合調整、総合調整というもので終りに結んである。併しこれは二頁の「一」のところは明らかにこれは「総合調整」ということがあるが、「二」は「企画立案」ということで置いてあるのです。そこあたりが非常にあいまいなために審議が遅れたり、説明が多岐に亘つたりするのじやないかと思うのですが……。
  234. 鈴木直人

    鈴木直人君 企画立案というのは、他の行政機関に属さない政策については総合調整をする必要はないだろうと思うのですが、この第四条の第三号にあるように関係行政機関事務に亘つている、行政機構に亘つている、多くの行政機関に亘つている事務については、その関係行政機関の間の事務の総合調整を実施するのだ、まあこういうことでそこのところははつきりしているような気がするのです。
  235. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 それじや私例を挙げましよう。例えばこういうことです。二頁の「一」に「経済に関する基本的な政策の総合調整」、これは総合調整をなさることです。ところが企画立案の場合には「他の行政機関の所掌に属さない総合的経済政策の企画立案」、こう書いてある。ところがこちらに来ますと、七頁に行きますと、「企画立案及び推進」という言葉が「十七」にあります。併しこれは「国際経済協力」、こういうもので他に属さないかどうかということは問題があるのです。それから恐らく併し二頁の「二」は八頁の「十八」の後段を指すものだと思うのです。ところが「十八」の後段のところに、終りに「総合調整に関する」と又書いてある。「他の行政機関の所掌に属さない」云々とあつて又出て来ておる。これは結局二頁の「一」と「二」とが定見がないということに落着かざるを得ないことになる。これは字句的の問題、これは安本としてはお考えなつたかも知れんが、法務府のほうの技術の問題からいつてもさつぱりわからないということになる。
  236. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 専門的な事項は法制局からお答えになると思いますが、安定本部といたしまして一応御説明申上げますと、三条は大きく任務として被してあるわけでございます。その任務を具体的に、各部の職務内容及び権限的な事項を細かく書きましたのが第四条以下の規定でございます。只今の経済に関する基本的な政策及び計画でございますか、電源……、国際経済協力の例……、七頁の「十七」でございますか、これについては国際経済協力に関する政策、計画の企画立案、各省でも例えば仮に今新聞で問題になつております。製鉄所を日印合弁で設立するという方針が確定いたしますれば、そういうような一般的な東南アジア開発につきましての計画なり実施事務を推進して参るということをはつきりいたしただけでありまして、字句の不備とも私どもは考えておりません。それから十八号におきましては、一応これは例文でございまして、国際経済協力というものは各省に跨がりまして、どの省が主管するとも言いかねますので、審議庁がこれを主管するのだということを法定し解釈を下したものであります。物価に関する基本的な政策につきましても、各省いずれにも属さないという意味で、物価に関して企画立案という意味を書いております。それから十六号の国民の合理的な生活水準の策定、これも大蔵省、農林省、通産省、厚生省、労働省各省にそれぞれ跨がつており、どの省も関係しておるのでありますが、これを一つの問題として総合的に取上げるものとしては各省に属さないという解釈をとりまして、企画立案というふうに書いておるわけであります。十八号の後段は「前七号に掲げるものの外、」とくくりまして、ここに書いておりませんものでも第三条に該当するものはここに入つておるのだというような、こういうような考えでくくりをつけておる規定です。
  237. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私の言うのはそうじやなしに、それじやもつとはつきり言いましようか。二頁の、これは「経済に関する基本的な政策の総合調整」とあつて、政策の下に計画という言葉はありませんよ。ところがその次には政策及び計画という言葉が皆入つておる。そうすると字句の問題ですよ。そうすると政策というものの中には計画を含めるのかどうかというような問題が乱暴に使われておる、こういうことを言うのですよ。それから今の十八のところは二頁の「二」が使つてありますが、「二」のものと「一」のものとの間に総合調整をするということが出ておるわけですよ。いや、内容は、おつしやることはわかるのですけれども、それが字句の上に乱暴な用語で疑義を招くということを申上げておるわけです。これはもう意見を述べたのです……。
  238. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 周東長官が出席しておりますから御質疑を願います。
  239. 楠見義男

    ○楠見義男君 周東長官に一点外貨予算の問題についてお伺いしたいのですが、その前にもう一遍だけ第三条の一、二、三号についてお伺いしますが、長期経済計画を策定せられ、その下において総合経済政策をお立てになる、その総合経済政策の各論をなすものをそれぞれの各省に命じて作らせる、こういう順序になるのだろうと思いますが、そういう場合の総合的な、各省の各論的な長期計画、或いはその毎年毎年の短期的な各論的な基本的経済政策、こういうものは結局長期経済計画の線に沿つておるかどうかということをはつきりとプレスして行かなければ、折角作つた長期経済計画というものがペーパー・プランになるわけであります。従つてそういうものについては、その各論的な、或いは短期的なものといえども、長期経済計画に基いて策定した各省の基本的経済政策というものは、それぞれ経済審議庁にかけ、そして又全体的にそれを睨んで総合調整をしなければならないという、その各省に対する義務付けは、何ら裏付がないんじやないかということが先ほどから問題になつておるのでありますが、それを義務付けるということはどういうふうにお考えになつているでしようか。
  240. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) お尋ねの点ですが、これが従来の安定本部と違つて来た点であるので、いろいろ事実の問題で違つておりますが、従来でも安定本部というものの関係上、総合計画を立ててここへ持つて来いということは書いてない。少くとも国がこの機関をして長期総合計画を立てさせる、而も個別的にはおのおのの主管事務について計画も勿論立てる、併しその間において、全体の点についでの総合計画も立てるし、相談もし、話も出て、その中に或る一定の計画を立てる、それを或る一定の事務の観点から言えば、審議庁長官が最後をきめて諮るということになる。私どものほうでは、そこにおいて長期計画という点についての策定というものについては、審議庁が企画をし、それの一環をなす短期の、或いは年々の計画というものは、勿論各省がお出しになるが、やはりそれも全体の一環としてある、お互いが相談し合つて、ここにその総合計画を立てると、こういうことです。
  241. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点は従来は安定本部それ自体が企画立案をしておつたのですね。今度は長期計画の策定ということまであいまいになつて、そして具体的な、基本的な計画は、それぞれの各省がやると、こういうふうになつておるものだから、従来とはその趣きが違うのじやないか。同時に手続においても、そういう裏打ちがなければいけないのじやないかということなんですが、それはその程度にしまして、本論の、外貨債の問題についてお伺いしたいのですが、先ほどもちよつと申上げたように、多少意見に亘るようなことになつて、甚だ恐縮なんですが、ここにありますように、長期経済計画を策定せられ、或いは提案理由にあるように、総合的見地に立つて、これに基いて総合的経済政策を計画的に推進して行くという場合に、我が国のこれからのあり方としては、貿易が非常に重要なることは、まあ申上げるまでもないと思いますが、そこで長期経済計画、策定した長期経済計画をしつかりとこの審議庁が握り、又その実行について推進をして行くという場合に、一番大事なことは今申しますように、貿易、又これに関連した外貨予算、こういうふうになるわけです。ところが今回の機構改革で行きますと、最終的には閣僚審議会で御決定になるようでありますけれども、貿易に関することの案の作成は通産省、貿易以外のものは大蔵省がやつて、それを大蔵省で取りまとめて、そうして閣僚審議会に出すと、こういうことになつて、経済審議庁を、一番大事な扇の要である経済審議庁を飛ばして行くような恰好です。私はこれでは提案理由言つておる総合的経済政策を計画的に推進して行くということができないのじやないか、この提案理由の看板に偽わりがあるのではないかということを、外貨予算の面から考えているのですが、なぜ外貨予算についてそれをこの経済審議庁でやらなかつたか、その理由をお伺いしたい。
  242. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 御尤もな御質問ですが、これは私はものの考え方であると思います。外貨予算の編成というものに対して、これは数カ年に亘る外貨予算というものの立て方をしておらない、これはその年々における一年間の計画、従つてその外貨予算の編成に当り、基本となるべき将来の日本の貿易計画をどういうふうに持つて行くか、そうして輸出入関係をこう考えるということによつて、産業の復興計画はどうなるかということは、明らかに審議庁の計画になつて行くのです、総合的の意味で……。その線に沿うてその年における一つの外貨予算をどう組んで行くかということは、その線に沿うてやつて行けばいい。だからそれを従来のように経済審議庁に置いておくかどうかということは、いろいろ議論が立つと思いますけれども、その点において大体貿易上の問題については通産省で、貿易以外のものについては大蔵省で……。その間に恐らく非常にあなたの御心配になつておる点があろうと思う。普通の場合においては農林関係の輸入の物資と、通産関係の輸入の物資の調整ができるときはいい、特に食糧生産の立場から、その年の計画についても小麦のほうを余計に買いたい、併しそれを買つていたのでは、工業原料の買い方に非常に困る場合もあるというようなことが恐らく起つて、争いが起きるというような場合においては、そこに出ます大体の基本ラインに沿うて、その年における外貨予算の編成については一応大蔵省に任し、貿易予算については通産省に任してよかろうと、こういうことです。
  243. 楠見義男

    ○楠見義男君 今安本長官の御答弁の中にもありましたように、外貨予算の問題については、どうも第三条の第一、号の基本的な政策でなさそうですね、今の御答弁によると……。そこで私は余計問題にするのですが、長期経済計画なり、或いは短期でもそうでありますが、総合的な国全体の観点から見た総合的経済政策が、沈みなく動くかどうかということを見るのはどこの官庁でもなく経済審議庁なんです。ところが外貨予算は今おつしやつたように長期でなく、毎四半期でやつておるのですが、これは見解の相違になるかも知れませんが、我々から見れば随分沈んだ外貨予算が組まれておると思います。ところが、従来はこれは安本でやつておられた。ところがそれがなくなつて、安本でない他の官庁がそれをやられる。勿論最終的には閣僚審議会でおやりになるだろうと思いますが、その案を出す準備をするところは、こういうふうに、長期経済計画も策定し、或いは総合的な経済政策も企画立案し、又経済に関する基本的な総合調整もやるというふうな、こういう総合企画庁である審議庁がやるのが私は一番いいと思う。それをなぜここでやらないかということについて私は疑問であると同時に、そういうところを押えなければ本当の長期経済計画なり、総合経済計画なりを沈みなく運行されることを確保することができないし、又提案理由にあるように、総合的経済政策を計画的に推進して行くことはできないと、こう思うのですが、これはまあ意見ですからこれ以上申しません。
  244. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 同じ問題が外資の問題についてもあるのですが、外貨予算の問題も私楠見委員の言われたと同じような疑問を持つのですが、同時に外資の問題についてもあるので、従来の行き方と非常に審議庁というものは違つてつて、単なる調査仕事、そして又仲立役みたいな仕事、これくらいしかやらないので、提案理由にあつたような計画的に推進するというような推進の力というものを持つ根拠がどこにも出て来ない。特に外資の問題なんというものは長期計画を立てる場合に自由党はいつもやかましく言つておる問題なんで、そういう外資に関する権能を審議庁に持たせなければ長期計画は立たんと思うのですが、それはどうなんですか。
  245. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これはまあ意見の相違になると思うのですが、いろいろ御意見のようなこともありますが、飽くまで今後における産業復興計画等についての総合計画というものについては、長期的に計画を立てるのであります。その間に処して一体将来の資金計画の上において、長期の場合に外資をどのくらい輸入することが必要であるかということについては、勿論関係役所が計画を立てるわけであります。それに基いて出た具体的の場合において、主として外資委員会に従来具体的な技術或いは投資というものに対しての許可認可を得るのでありますから、そういう範囲において一つの計画に副うて具体的な場合においてこれを導入することの可否というようなことをきめることは、審議庁がこれを主宰することも一つの行き方でありましようが、この審議庁にそれがなければ全体の計画が齟齬するとも限らないと私は思う。これは外資委員会等に関する問題について大蔵省の所管外になつておりますが、これは私はやつて行けると思う。むしろ外資委員会等に関しては、政府を離れた別の委員会がよかろうとか、いいとかいうような問題はありますけれども、そのものがそういつた官庁であるところの審議庁になければ総合計画は立たんのじやないかというふうには私のほうとしては考えておりません。
  246. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ちよつと飛びますが、先ほどからちよつと問題になつておる審議官及び調査官ですね、これは十人と二十人のようですが、そのほかに職員と申しますか、これが何百人かできるわけなんです。総務部の事務とかその他いろいろ部があつて、その事務ができておりますが、この中で各部に調査官とか審議官というのは、どんなふうに配置されて、どんな仕事をするか、そして一般職員というものはどういうことをやるのか、一般職員調査をやるのですか。
  247. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 審議官は先ほど申上げましたように、従来の研究対象なり、或いは職歴等によりまして主たる任務対象というものはおのずからきまつておるのでありますが、ただ審議官がそれをよりどころにしまして全体的の視野から問題を解決して行くというところに審議官制度の運用の基本を考えておるわけであります。従いまして現在の局長というようなものがややもすればその局所管事務に専念してしまう、現在の安定本部も総合計画機関でございまするので、財政金融局長は財政金融のこと、或いはその見地からのみ見るわけではありませんが、おのずから制度的にそういう傾きが出やすいという欠点がございますので、特に各局長とか部長とかいわずに審議官という意味で広く任用して、広い視野から研究を進めて行くということを狙いとしておるのであります。各部長は経済審議庁設置法にありますような事務責任者として、審議官なり或いは次長なり長官その他の上司の命を受け、或いは指揮によりまして業務を進めて行くわけであります。調査官と申しますのは、特定事項、例えば国民所得に関しまして特に従来研究の深い人を調査官に任命する、或いは資本蓄積の問題につきまして深く研究をしておる人を調査官に任命いたします。専門的な事項につきましての調査を担当するわけであります。これは各部長を補佐し、或いは課長を補佐し、というようなことに相成るものと考えます。
  248. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうすると一般職員というのも、やはりこの調査官なり審議官なりの指導の下に調査事務には携わるわけでしよう。
  249. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) おつしやる通りであります。
  250. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 審議官というものが命を受けて「重要な庁務に参画する。」といつておるが、この「重要な庁務」というのは、調査事務、企画立案の事務が「重要な庁務」じやないですか。そのほかに何かありますか。
  251. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) 第三条に規定しております任務全体を受けております。
  252. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そうすると、審議官というのは、従来ある役割で言うと次官と言いますか、そういうような性格のものですね。全体を見て行くという、次官的なものですね。
  253. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) できるだけそういうような運用にして行きたいと思つております。ただ審議官の従来の職歴によりまして、例えば国土総合開発についてそれに造詣が深いというような審議官もございましようし、或いは産業関係について深い造詣を持つ審議官もあるというようなことで、おのずからその発言の内容なりよりどころというものは審議官によつて違つて参りますが、全体的な視野からものを判断して行くという意味で運用して参りたい。従いまして審議官の待遇につきましても、次長はこれは次官と同じクラスでありますが、次官と局長のまあ中間と言いますか、そういうような待遇にやつて参りたいと、かように考えております。
  254. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 この審議官というのは各部に配属されることはないのですか。
  255. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) ございません。各部長の上に、むしろ上下でいえば上ということであります。
  256. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 上におつてもいいのだが、その部の仕事について、この部に関する重要な庁務についてやるというふうに、部長の上にあつても……、まあ上でしようが、そういうふうに職務上配属されることはないでしようか。
  257. 平井冨三郎

    政府委員平井冨三郎君) そういう場合もあり得るかと思いますが、ただ審議官の運用の基本的な考え方としては、特定の職務を担当するというよりは業務全体について参画するということを基本的な考え方にいたすわけであります。例えば国土開発のようなことをやるという場合に計画部長を指揮するという場合も勿論あります。
  258. 楠見義男

    ○楠見義男君 私もう一点安本長官にお伺いしたいのですが、安本長官が審議庁長官として残るつもりで御答弁なさつて頂きたいのですが、(笑声)例えば外貨予算なんかも、私は審議庁長官としてお残りになるとすれば、ああいう御答弁はないのじやないかと思うのですが、これは別として、もう一点だけ国土総合開発関係についてお伺いしますが、やはり重要総合国策、政策を推進して行くという立場から申しますと、国土総合開発の問題と、それからこの公共事業費との関係は私は極めて密接な関係があつて、丁度先ほどの外貨予算と同じような重要性があるのではないかと、こういうふうに思うのであります。そこで国土総合開発の中で一番大きな、むしろ中心的とも言われる、毎年の公共事業費の調整と言いましようか、こういう問題はやはり外貨予算に際して申上げたと同じように、この経済審議庁でタッチせられることが必要ではないかと思うのでありますが、それが今回は従来と違つて落されておるのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになつておるか。又審議庁長官として引続いでおやりになる場合に、これでやつて行けるのだろうかどうだろうか。この点をお伺いいたしたいと思います。
  259. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) お尋ねの点御尤もでありますが、国土総合開発に関する基本的な政策及び計画を立案するということがこの審議庁の機能になつておりますが、それに関連して同時にその年における公共事業費を従来のように審議庁でやつたらという御意見は御尤もな御意見ですが、一応は今日やはり全体的の国土総合開発計画に関する策を立て、それに対する特定地域の必要な資金計画については、各関係庁の意見を求めて、この役所で、審議庁で調整することに国土総合開発法の改正法案においてその規定を入れてあるわけであります。予算等の措置については特に従来のような関係には今日なつておりません。
  260. 楠見義男

    ○楠見義男君 今お述べになつた趣旨は、予算は従来と違つてどこかほかの官庁でやるけれども、その予算を含めた全体の資金計画は国土総合開発法の定むるところによつて、私は実は国土総合開発法を手許に持つておりませんから内容はわからないのですが、その国土総合開発法において予算も含めた全体の資金計画は経済審議庁でタッチすることになつておるから、予算についてはその必要はないと、こういう意味ですか。
  261. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) さようです。
  262. 楠見義男

    ○楠見義男君 そうすると、当然予算も資金計画の内容としてこの経済審議庁で審議の対象になると、こう了解していいわけですか。
  263. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 大体資金の全体的の計画としてこの審議庁が関与し、計画を立てますれば、この線に沿うて予算的な計画のものは一応総額等について進むわけでありますから、特別に持つておる必要はないかと思います。ただ具体的な個所に、どこに幾らというふうな個別的な割当まで従来やつておつたわけであります、そういう点は各省に任していいということであります。
  264. 楠瀬常猪

    ○楠瀬常猪君 一つ安本長官にお伺いしたいのですが、経済審議庁の附属機関であります経済審議会、これは内閣総理大臣の諮問に応じて重要な政策の調査審議をするということになつておりますが、ところでこの経済審議会はかなり重要な機関であるわけなんですが、わざわざ国務大臣を以て経済審議庁の長官としておるわけです。この経済審議庁の長官がいろいろ総合調整をやつたり或いは計画を立てたりして結局閣議等へも持出すのだろうと思うのでありますが、そういうような重要な国務大臣を以て充てる経済審議庁長官がいわゆる諮問権を放棄して、内閣総理大臣が頭から諮問をしてこの経済審議会を使つて行くという行き方、つまり経済審議庁長官はただ経済審議会の世話を事実問題としてするだけであつて、実際は内閣総理大臣が諮問してこの経済審議会を使つて行くというこの行き方は、どうしてこういうふうにしたのであろうか。国務大臣である経済審議庁長官が堂々と諮問ができるような経済審議会というふうにどうしてしなかつたか。その点について伺いたい。
  265. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) この点は別に特別な理由ということは特にあるわけではないのですが、審議会というものを非常に重く見て、そうして審議会の委員として委嘱すべき人に相当民間関係においてしつかりした人を持つて来るために、内閣総理大臣の諮問機関として置いたということだけであります。この点は従来からその例はあるのでありまして、何もこれが新らしい問題ではなく、例えば農林省の米価審議会というものが内閣総理大臣が諮問して、副会長として農林大臣と大蔵大臣がやつた例もあるのであります。重要な施策について審議庁長官の諮問機関とすることも一つの行き方でしようが、又内閣総理大臣の直属機関として大きくこれを取上げるということで事務上の仕事を審議庁が扱うということも一つの行き方ではありはしないかと私は思います。
  266. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 もう一つだけお尋ねします。先ほどから第三条の総合調整のことが問題になつておりまするが、第七条の総務部の仕事を見ておりますと、一号から十号までは成るほど総務部の仕事らしいことが出ております。十一号以下は例の総合調整だの企画立案だのいろいろ先ほどからもこれも問題になつておる点ですが、出て来ておるこの部の編成を見ておりますと、総合調整ということは、何かやはり世話役的なことだと、総務部の仕事だ、あつちへ行つてかけ廻りこつちへ行つてかけ廻つてまあ仲立ちをして歩いて何とか話はつかんかといつたようなことをやるだけが総合調整だというふうに見えるのですが、これは十号で総務部の仕事に仕切つて、十一号以下は別の部の仕事とか何とかであれば、或いは計画部の仕事の中へ入れておけば先ほど周東長官から答弁されたようなことになるのだと思うのだけれども、総務部の一つ仕事、一部分の仕事だとどうも大して重要な仕事ではないといつたように見えるのですが、どうなんですか。
  267. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それは何も総務部に十九の仕事があつて、十一からになつておるからお添物みたいに見えるというお考えかも知れませんけれども、これはどうもいろいろ人の編成上こうなつておるので、或いは簡素化ということを中心にしたからこういうふうになつておりますが、庶務的なものがありますので別の部を立てるということをやめて、一つここに合したというに過ぎませんが、仕事としては実際上今御指摘の十一以下の仕事が重要な部門として仕事をすることになるわけであります。この点が八条、九条にある計画、調査部と相並んで一つの審議庁としての全体計画を審議庁長官が取りまとめて作つて行くわけであります。
  268. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 だから十一号以下は別の部として立てておけば先ほどの点とやや似て来るのです。やや一致して来るのです。
  269. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 今の点ですが、補足するのですが、経済審議庁という役所は人数が極くハンドフルな、全体から言えば数が少い。従つていろいろ書いてありましても、その仕事がよその省とか何とかいうふうな大きな仕事ではないわけなんです、何百人かの世帯ですから、職員の数にしても何にしてもそう大したことはないのでして、実体は小さいのだということを……。
  270. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 さつきも言いましたが、もう少しはつきりしておかんといかんと思うのです。二頁の「一」ですね。審議庁がなさるのは総合調整だけでしようが、政策を作られることもなさるのでしようか、どうでしようか、そこを先ず……。「経済に関する基本的な政策の総合調整」とあるのですが、総合調整だけをこの審議庁がなさることになるのでしようか、どうでしようか。
  271. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これは先ほどからたびたび申しておりますように、総合調整のほかに二号の短期計画に対する仕事においては、他省の、「他の行政機関の所掌に属さない」問題に対して立案するということもはつきり書いてあります。殊に三号において長期計画の立案策定ということは、七、八条における細部の規定を御覧頂きますとおわかりになるように、計画の立案策定ということが入つております。
  272. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私の言うのは、二号、三号は次に質問を展開しようと思うのですが、一号における審議庁のなさるのは総合調整だけですか、経済に関する基本的な政策もお立てになるかということをこの言葉から引出してお尋ねしているのですが……。
  273. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それは一号の中には総合調整ということに対する機能を規定しただけであります。
  274. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうしますと、二号に入つて、他の行政機関に属さないものについては、政策の企画立案までもなさると、こういうことになるわけですね。
  275. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その通りです。
  276. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうすると七頁の、今、波多野委員から尋ねられました言葉を見ますというと、例えば「財政、通貨及び金融に関する基本的な政策及び計画の総合調整に関すること。」ということを見ますと、これは総合調整だけをなさると、これは財政、通貨或いは金融というのは他の行政機関において所管があるわけだから、そういう意味に並べてあるのじやないか、こう思うのですが、そうですが。
  277. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その通りです。
  278. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうしますと十五号で「物価に関する基本的な政策の企画立案及び総合調整に関すること。」とあるでしよう。物価に関する基本的な政策の場合には企画立案もなさるし、総合調整もなさると、こういうことになる。そうすると物価に関する基本的な政策の政策というものは、この二頁に帰りまして、「二」のほうの「他の行政機関の所掌に属さない」ものだということに落ちて行くのじやないかと思うのですが、どうでございましようか。
  279. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その通りです。
  280. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうするとここに今まで問題がはつきりしなかつたのですが、二頁の「一」はこの他の行政機関所管に属するものについては基本的政策をこの審議庁で立てない、ただ総合調整だけするのだと、他の行政機関の所掌に属さない政策は、これは企画立案もし、更に総合調整もすると、こういう原則が二頁の「一」と「二」の間にできて、区別して作られておるものじやないか、こう解したいと思うのですが、どうですか。
  281. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は先ほどから繰返して申しますように、総合調整ということに対しては政策の短期、長期を問わず、すべて総合調整権を持つているということです。それかう二号の関係においては、他の行政官庁に属せざるという点で、文字は少し不適当でありますが、むしろ物価のごときは他の官庁に属する面がある。米価のごとき、電気料金のごときは他の省に具体的決定については属させて行くわけであります。併しながら全体を通ずる物価の問題についてはどこで所管するというすべもないわけであります。全体の物価傾向というものをどういうふうな目安によつて安定させろかということについてはこれは属しているところがないわけです。そういう面については広く二号の関係において総合調整の立案をやるわけであります。これは短期、長期を問わず……。ところが第三号の関係においては先に飛びますが、問題としては長期計画というものに対してはこの官庁所管するわけであります。長期計画という言葉が三号に出て来るために、その反対解釈において二号等に関するその年々の短期計画については二号を除いて個別的にはおのおの所管省において計画立案をさせる、こういうことに御理解願いたい。
  282. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 今私は次をお尋ねしようと思つておりますうちに、長官が答えられたのですが、そこで私が言うのは、この経済審議庁の長官としての権限は、この他の行政機関に属するもので、而も基本政策を立てるには総合調整だけの権限がある。こう解釈したいと思いますが、この字句の意味で他の行政機関に属さないものには企画立案及び総合調整の権限があるのだと、こう解釈したいと思うのであります。そう解釈しますというと、さつきのこの予算とか或いは外貨に関する予算というようなものについては他の所管がまあ政府原案によるとできるわけでありますから、単に総合調整の場合においては発言し得る権限がある、併しそうでない場合にはないということになつて来ると思うのです。そうすると、この審議庁というものの権限が非常に小さくなつて来て十分の働きができないじやないか。こういうように考えるわけでありますが、そこはどうでしようか。
  283. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これはたびたび申しますように、従来の安定本部というようなものとの幅から見ますると小さくなつております。これは大体先ほどから御指摘になつておる外貨とか外資の関係とかいうような問題、或いは物価の決定に関しましても個別的な物価決定というような問題については皆それぞれの所管に返しております。そういう関係は縮小されたと言えば縮小された……。
  284. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 もう一度私念を押しますけれども、そこで総合調整その他ということがありますから、多少は相談をしなくてもこの長官というのはこの言葉から当然法律上は権限を持つておると解釈してよろしうございますか。企画立案についても同様に解釈してよろしうございますか。
  285. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その通り
  286. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうしてさつきの一番初めの波多野委員、楠見委員の問題のときに混乱しておつたと思うのですが、こういうように解釈して、そうして楠見委員、波多野委員がどういうようなお考えで出られるか、私はここまで問題を明らかにしておきます。
  287. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ちよつと私は今の栗栖君のことはわからないのですが、(笑声)大体問題としては、私は先ほど楠見君に答えたことと大体この企画庁に、審議庁における長期計画の策定というものの中には長期に亘る目標を定めて日本の行くべき経済政策というものの策定が行われる、その中には当然に如何なる方向に基本政策を持つて行き、それに則つて長期計画を立てるということが当然出て来るのであります。これは明らかに三条の三号に書いてある通りです。それを一号、二号の関係から見てちよつと書き方が或いは不十分であつたかと思いますが、一号の問題と三号の問題とは違うと私は思う。一号の関係は主として基本政策をどう持つて行くかというときにおける各省間における調整をやる。ところが片一方の全体的な長期計画を立てるときには、おのずからその長期計画と個別計画との間におけるどういうような調整をして行くかということは当然起るわけであります。それは短期においても長期においての計画共にそうであります。その間における各省と審議庁との間における事実上の連絡、相談というものは行われるわけなんで、政府において調整し最も適合した適当なところへ長期計画を持つて行き、又短期計画におきましても具体的なその年々の計画なり或いは財政的の上に調整を施す、或いは基本施策それ自体の中に調整をなさなければならんという面が出て来る。
  288. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 そうすると又こんがらかるのですが、一号、二号というものは長期計画自体のことにいつちやおらんのです、この法文自体が。そこで長期計画のときにはよく私はわかるのですが、一号、二号の場合の権限問題と、或いは調整せねばならんかという問題がありましたからそこでこれをお尋ねしたのでありますが、長期計画というものについては言うまでもなく、一号の調整、各省の基本計画を総合調整する権限が長官にある、又他の行政機関の所掌に属さない総合的経済政策を企画立案する権限がある、その権限上の行使は自由に長官ができるんじやないか、こういうことをお尋ねしたわけであります。
  289. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 私はものの考え方はそう……、一号と三号の別々のところであるということははつきりしている。一号のところで言つておることは飽くまで総合調整です。総合調整というのは、計画の立案に関して短期、長期伴つて総合調整はあり得ると思う。一号の中に短期と長期と書いてない、二号にも書いていない、而も三号において長期計画の策定ということにはつきりと総合計画の立案策定と書けば済むところを、特に長期計画だけ取出してこれを書いたのは、これについては積極的に権限を持つということを書いておる。それと睨み合して一号、二号を読んで行かなければならんと私は思つておる。
  290. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 この法律論をするのはこのぐらいでおきますけれども、私の言うのは長官が権限がなく、事実上の運営をするとおつしやるよりも、むしろ権限があつてなさると、その場合には総合調整の権限があるのだから割込んでする、或いは他のものに属さん場合には企画立案もする、又他省との関係もあれば、総合調整をする、この権限があるのだということをはつきりおつしやつて頂ければそれでいいんじやないかと思うのです。
  291. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 一号の、大臣が答えられましたが、経済に関する基本的な政策を総合調整するとぎに各省の政策立案のときも総合調整をやりますが、案のときも、今立案についても総合調整をやるという答弁があつたから一つ確かめておきます。
  292. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 勿論それは各省から相談があり、それに関して総合調整するということになる。
  293. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 案もですね。
  294. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その通りです。
  295. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 政策として固まつたものではなくて……。
  296. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これは事実問題ですから相談の過程においては案の相談をして、勿論する場合もありましよう。それで一つの省で以てこれを一つの決定版にしようと思つて相談する場合もありましよう。多くの場合、これは波多野さん御承知通り確定して後の相談か、或いは案のうちの相談かということは、事実問題だと思うのですが……。
  297. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 だからさつき私は最初に聞いたのは予算編成のときと同じようなふうに行くのかどうかと聞いておつたのです。
  298. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は先ほど申上げましたように、事実こういう案を推敲して行くという一つの案を持つて来て、それに対してこちらが意見を述べ、調整する場合もあります。併し各省が別々に意見がまとまらんで、事実対立するというような場合に立つて、初めて調整するという場合がある。私はそれは個々別々の場合のもので違うと思う。
  299. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 その各省意見の対立が起きてやるのじやなくて、長期経済計画は独自に策定されるものでしよう、その長期経済計画に副うかどうかという見地から、常に総合調整をやらなけりやならんと私は思つておる、そうでしよう。
  300. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それはあなたのお気持でわかりますが、多くの場合やはり長期総合計画を策定するその線に沿うて立てられるべきなんです。それは事前に相談があると思う。
  301. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それじやこの一、二、三の規定は、先ほど私の質問した予算編成の場合と事実上同じようにやつて行くと理解していいですね。
  302. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 予算編成の場合と同じということはこれはむずかしいのであつて、会計法上財政にきまつておらなければそうじやない、はつきり申上げます。
  303. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それは法律がないから聞くのであつて、大体ああいう運営をして行けばいいのだと……。
  304. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 予算編成の場合と言いますか、会計法上財政と固定されておる場合そういうような手続は踏まない。それから今のお話のどの段階で相談するかということは、これから案を立てるという場合において案というやつは幾つもできる、第一、第二、第三と変るのですからどの段階で相談に行くのがいいか、相談に行く役所がいろいろありますが、あとから行くのですから経済審議庁に行く場合に、初めに行つた場合にいいこともありましようし、或いは通産省、大蔵、農林に相談に行つた場合と、ほかの場合といろいろあるでしよう、いずれにしても相談に行く場合があります。
  305. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 こういうふうにすればいいのです。経済審議庁が各省の政策の立案及び政策そのものについて必ず調整なり、総合調整と言いますか、長期経済計画の線に沿うての総合調整を必ずやるものだ、そういう職権を持つておるものと解釈すればそれでいいのですがね。そこをごまかされるものでありますから問題が起きる。
  306. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 別に何もごまかしてはおらない。
  307. 栗栖赳夫

    ○栗栖赳夫君 私希望ですがね。私はこう申しましよう、悪いのですけれども、この設置法というものは皆立法なんですね、法律なんです。で、権限問題というものは非常に大事な問題です。どうもこの委員会では法務関係意見を述べるかたがおいでにならんのです。そこを解いてもらつたほうがいいのですが、大臣がぽんぽん言われて権限問題が変に行くと非常に心配でならないのですが、一つこの次から必ず来てもらつて誰か部長か課長でもいい、そうして今のような場合にははつきり……権限問題を皆尋ねておられるのです、権限のないものなら設ける必要がないじやないかということになる。そこははつきりしておるのですから審議を迅速にするために次のときからお願いしたいと思います。
  308. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) それはよろしうございます。
  309. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 野田大臣にお尋ねしますがね。今度の機構改革で松原さん先ほど大臣が減るとか減らんとかいうことがありましたが、そういうことに関しては何もこれは関係はないわけですね。今度の機構改革全体の結論としては……。
  310. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 大臣が減るか減らないかという点では、電通大臣というものがなくなる。電通大臣がなくなります。電通省がなくなりますから。それから安定本部総務長官というのは国務大臣、これもなくなる。その代り別に経済審議庁長官が国務大臣になる。
  311. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 あの全体を通しての話ですけれども、大体部長とか長官というような人は、例えば今度内閣の中に入るので、そういう人は今度やめてもらわなくちやならないというようなそういう予定を立てておられるのか、大体横滑りというような予定でおられるのか、その点はどうですか。
  312. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 私は、例えば経済調査庁なら経済調査庁という役所がありまして、これは今度廃止になります。その代り、行政管理庁で監察部が非点に拡充されるという場合には、上位の人はできるだけいてもらいたいというふうに考えております。
  313. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これはこの前の定員法なんかでずつと関係があるわけですが、定員法なんかでやるときには、下のほうは切られて来たのですね。ところが今度上の人を救うためにいろいろの名前ができて、実質的な出血というものはなく、大体やめになるかたは八割で勇退してやめてもらうといつたようなおかしい辻棲の合わない行政整理が行われるじやないかと思うのですがね。そういうような点について、今度の行政機構改革についてどんなふうに考えておられるか、大体希望で行つてしまうというよりも、むしろ八割があるから、おやめになるかたのほうが、希望退職のほうが多いようなことになつてしまつて、無理に横滑りさせるような、そういうことはないですか。
  314. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) これはこの間やりました整理では、具体的な名前を挙げると問題になりますが、相当に役所では希望退職が多過ぎたというような例がたくさんあるわけです。今度の希望退職の場合は、優先的にそれは斡旋するとか、他にお世話するとか、或いは拡充されるような役所があるというようなことで、できるだけ迷惑をかけないで、お困りさせないで推進したい、こう考えております。
  315. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) ちよつと申上げますが、今の問題は、問題を超越していますが、委員長として希望しますのは、先ずこの範囲に限りたいと思います。それで今現に資源調査設置法というのがまだどなたも御質疑に入つていないですがね。できればこういうほうに進めて頂きたいと思います。成瀬君のお話は他に機会があろうと思います。
  316. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は実は委員長の今日の予定がこれでやられるのかと思つたので……。どちらでやられるのかちよつとわかりませんでしたので……。
  317. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) ですから今挙げた議題の中で願いたい。そのほうが都合がいいと思いますから。あなたの御発言は、そういう機会はまだあると思いますからどうぞ。どうですか、今意見の集中したのは、審議庁設置法案だけなんです。他の二案につきまして……。
  318. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 もう一点だけお尋ねします。これは関係ないとおつしやるならば私も困るのですけれども、自由党でよく自由経済というのをお言いになる。この頃計画性のある自由経済ということをおつしやるのですが、そのときに、安本との関係で、長期的な計画云々というようなことであつて、そうしたものがどうも今度の行政機構改革に現われて来たと了承していいわけですか。
  319. 野田卯一

    ○国務大臣(野田卯一君) 自由党の自由経済というのは自由放任経済ではない。良識による自由経済ということなんです。
  320. 楠見義男

    ○楠見義男君 資源調査会設置法案について若干お伺いしますが、提案の理由説明においても、この調査会は二十二年の十二月に設定されてから、その調査審議の成果は各方面に亘つてつておられて、十の勧告、或いは十三の報告、その他多くの参考資料が出されておる。こういうような御説明があるわけでありますが、私もこの資源調査会が従来非常に大きな役割を果された調査会としてやられたことはよく承知しておりますが、この調査会が折角一生懸命になつて調査研究せられたこと、それが実際の行政の上に、或いは経済の発展の上にどれだけの実際具体的な効果を現わしただろうかということについてお伺いしたいと思います。と申しますことは、先ほども申上げたように、非常に重要な、又貴重な調査をせられておるのでありますが、ところが例えば最近でも折角いい調査ができても、それを印刷に附する費用すら大蔵省のほうでは金をくれないということで、調査会自身が非常にお困りになつておる事例も私は承知しておるのであります、大体これは私は余談でありますが、定員法の改正の際でも申したことでありますが、ややもすると、科学技術の尊重という観念が、口では言つておるけれども、実際の面では非常に軽視されておる。これはひとり自由党内閣だけじやありません。従来の明治政府以来の各代の政府がそうなんであります。それだけに日本が科学技術の面において非常に遅れておる。併しこれからはそうではいけないので、特に科学技術の尊重ということに力を入れてもらわなければならないので、そういう観点から、この内閣委員会でも行政整理、定員法の改正の場合には特に力を入れたのであります。今申上げたように、折角貴重な調査資料ができておつても、それを印刷に附するような費用すら大蔵省はけちけちしておる。こういうことから私ども提案理由にあつたように、従来いろいろの勧告、或いは報告をやつてつても、それが実際の行政面、或いは経済復興の上においてどういうふうに効果を挙げたかということになりますと、私は非常に、今申上げた些細な一つの事例から推しても心細いじやないか、こういうことを危惧せざるを得ないのでありますが、その点から見てお伺いしたいことは、重ねて申上げますが、従来調査せられ、又研究せられた結果による勧告、その勧告、或いは報告が具体的にどういうふうに利用されておるか、この点について概略でようございますが、御説明を煩わしたいと思います。
  321. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 資源調査会の勧告の中で、行政上に現われました成果につきまして説明申上げますが、十の勧告の中で各省に跨がつておる水の行政については御承知通りでありますが、特に洪水などがありますときに、各行政機関に跨がつておりまする水の調査資料を即刻一カ所に集中いたしまして、その予報を迅速に各方面に流すということが必要でありますので、これらの現状、それから将来のあるべき方向を勧告いたしまして、幸いに気象台を中心としてその成果が運用されております。アイオン台風のときもその成果によりまして、見方によりまするが数十億の被害が或いは免かれただろうという計算も一つあります。又これは洪水予報組織という勧告を出しました。又エネルギーの総合的な利用の面につきまして、日本の鉄道は御承知のように石炭によつて運行しておりまするが、これを電力によつて運行するならば、そのエネルギーの効率は三倍に上るだろうということは技術的に明らかでありますので、この勧告をいたしました。これを全面的に実施することは非常なる資金を要し、電力の関係もありますので、勾配の急な所或いは輸送密度の高い所、或は高崎線或いは東海直線の電化がこれによつて促進されたように私どもは考えております。又日本の外貨を支払う一番大きなものとしての食糧に次いで繊維資源でありまするが、我が国内にありまする恐らく数千万トンとも称せられる石灰岩と電気を用いることによつてカーバイド、カーバイドから合成繊維、俗に化学繊維とも言われておりますが、この工業が発達することは、日本的な資源の利用方法として、又外貨の節約からも必要であると考えますので、合成繊維の育成につきまして政府でこれを助成されるような勧告を出しまして、これ又政府におかれてはその時の客観情勢とも睨み合せまして数十億の見返資金その他の投資が行われております。又土地の問題につきましては、日本の土地の面積が統計上一応全面積三千八百万町歩となつておりまするけれども、その中に地積、土地台帳等の不正確がありまして、例えば山林の面積などにつきましては、或る推算では台帳面積と数百万町歩も或いは違うんではないだろうかという点もありまするので、正確な科学的調査に基いた国土の調査が必要であるという勧告も取上げられまして、昨年六月国土調査法が成立いたしましてこれを行政上に移して実施いたしております。その他地下資源、或いは工業と農業との水の点で調整いたすべき工場排水の問題等いろいろ取上げまして、それぞれの行政機関におきましては、これをそのままか、或いは一般行政の中に織込みまして、実施に至るものが多いのであります。ただ、日本の資源の比較的長期の問題につきまして扱つて来ました関係上、直ちに行政施策に現われないものもありまするが、順次取上げております。なおこの資源の問題に関しまして調査審議いたしましたものをば、各省のみならず各民間機関或いは一般かたがたに周知徹底せしむる必要を感じましたので、これにつきましての周知の方法につきましては、まだまだ私どもの努力も足りませんので、経費その他につきまして各位の御援助によりましてなおこの考え方を一般的に普及さすように努めておるのであります。
  322. 楠見義男

    ○楠見義男君 今御説明を頂きまして大体わかりましたが、御説明の中にもあつたように、例えばアイオン台風における洪水予報の問題にしても、お話によるとまあ数十億助かつたのじやないか、こういうことから考えて行くと、こういう科学技術の点においては、政府は極端に言えば惜しみなく金を使つていいんじやないか。それが先ほど申上げましたように、ちよつとした印刷物すら金がないで困つておるというような事情も聞いておるのであります。で、私は最後にお述べになりましたように、この事柄を周知徹底せしめること自体が、又それが延いてこの資源調査会の仕事を活撥にし、そして又それを利用する面が多くなるわけでありまして、そういう観点から見れば、勿論従来も安本長官は主管の大臣として御尽力になつておつたと思うのでありますが、これは希望でありますけれども、なお一層の御努力を煩わしたいと思うのであります。そこで具体的に伺うわけでありますが、現在の資源調査会の予算ですね、これはどの程度予算で、そうして又人員はどの程度の人がこれにタッチしておるのか、それが又昭和二十二年からどういうふうに殖えて来ておるのか、この点をお伺いしたい。
  323. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 現在の予算……端数をちよつと覚えておりませんが、約千五百万円ちよつと切れます。人数は二十七名でございます。若しこの法案を御決定願えれば、今年二十七年の七月一日以降は定員は四十名となり、予算はこの人員増加に伴うものが大蔵省で認められるかと、今折衝中であります。なお資源調査会の創設以来の人員と予算は後刻お手許へお届けいたしたいと思いますが、最初は三十五名くらいから前後で多少の増減がありますが、予算はやはり一千二、三百万円から五百万円くらいの間を大体上下をいたしております。
  324. 楠見義男

    ○楠見義男君 この予算の点でその仕事を批判することは或いは間違いかも知れませんが、昭和二十二年に開設されて、そして現在までに五年もたつて予算は千二百万そこそこということになりますと、殆んどこれでは経費面においては余り力を入れておられないのじやないか、相当急激に上昇されて然るべきだと思うのです。これはまあ意見ですが、従つて私は先ほど申上げたように、こういうことにもう少し力を入れるべきじやないか、こういう意見を持つておるのであります。次にお伺いしたいのは、現在の調査会の委員はたしか三十名以内であつたと思うのですが、それで今回の改正法律で二十名以内と、こうなつておるのですが、これは少くしたほうが能率的であるとか何とかいうことから、それで減員をされたか、その減員の事情をお伺いしたい。
  325. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 現在三十名以内で、現実に委嘱しておる人数は二十三名でございます。二十名といたしましたのは、本来各省で扱つておられまする資源問題を総合的の見地から扱うという目的でありまして、総合的見地の場合におきましては成るべく少数のほうがよりまとまりやすいという考え方を持つております。御承知のごとくに主として科学技術の見地からいたしますと、専門のかたも比較的に多いので、いろいろ専門の数並びに従来の経験から鑑みまして、二十名以内ぐらいのところが能率的にいいのであろうというふうに考えまして、アメリカその他のこういう問題を取扱う事例を見ますと、七人以内が多いのでありまするが、日本の今までの科学技術の従来のあり方から見ますと、広範囲な科学技術を扱うかたが少いので、先ずここらのところが日本での限度かと考えて二十名といたしたのであります。
  326. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは非常に細かいことなんですが、委員は非常勤ということになつておりますね。ところが法律の九条の第三項で行きますと、事務局長委員のうちから内閣総理大臣任命する。こうなつておるのですが、事務局は恐らくこれは常設的な機関だと思うのです。その局の局長というものが非常勤である委員が充てられる。この関係はどういうことなんでしようか。
  327. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 委員としての性格は非常勤でありまするが、事務局長政府職員としての取扱を受けることになりまして、そういう二面の性格になろうかと考えるのです。
  328. 楠見義男

    ○楠見義男君 それからこの調査会と、例えば工業技術庁ですね、こういうものとの連絡関係はどういうふうにつけるわけでしようか。
  329. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 工業技術庁或いは農林省の改良局の研究部、そういつた各省の、そういう主として科学技術を扱う面との関係につきましては、仕事の課題を選定する場合におきまして、実質上の一例を申上げますと、工業技術庁のみの見地から取上げ、又は検討する場合には不適当である、併し工業技術庁は非常に関係が大きい、例えば石炭の、地下資源のことですが、埋蔵量、或いは林野庁において森林資源の調査方法等を樹立する場合におきまして、その考え方の基本的方法が、例えば現在の統計法のどういう方法を使うか、その科学的方法につきまして連絡協議いたしましてこの問題を進めております。それからなお委員につきましては、学識経験者と、今回におきましては行政機関職員の中からも委嘱する予定であります。なお専門委員のほうにおきましては、関係各省のそういう技術に携わるかたがたを依頼申上げまして、現在四百名近くを委嘱して連絡いたしております。それからなお今回の法案につきましては、関係各省との資源に関する連絡会議を持ちまして、我々の成果を各省に滲透するようにお願し、問題の取上げ方等につきましてもこの連絡会議によつて実質上の結び付をとるようにいたして行きたいと思つております。
  330. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは調査会には従来参与という制度があつたのですが、今度はこういうものは設けないのですか。
  331. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 参与につきましては、法制意見局と相談申上げまして、政令に規定するほうがいいだろうということで政令のほうに設けるようにいたします。
  332. 楠見義男

    ○楠見義男君 最後に一点、先ほど御説明頂きました人員の増加、この法律が通つた場合の人員の増加についての予算的増額の問題を御説明頂いたのですが、それは人件費だけの増額ですか、それとも事業的な、或いは啓発的な啓蒙的な、或いは資料を整備する費用だとか、事務費的なそういう費用というものは増額されないのですか。
  333. 大野数雄

    政府委員(大野数雄君) 予算のほうは只今大蔵省の事務のほうと折衝いたしておりまして、まだ見通しがつきませんですが、大体こういう機構改正に伴つて増額するものにつきましては、従来の原則と申しますか、運用から見ますと、人間の増減があればそれに伴う経費と、それから今度は資源調査会は総理府の附属機関になりますので、まあ小さいながら一戸を構えるということになりますが、それに伴う職務的な費用等は加算されるようになつております。大体そういうところに落着くのではないかと今のところ思います。これは勘でございますが……。
  334. 楠見義男

    ○楠見義男君 これは行政管理庁に伺いますが、今の定員の増加の説明が、これは実現しませんけれども、今後の折衝の御説明があつたのですが、そういう場合には定員法の改正ということの必要が起つて来るわけでしようか。
  335. 中川融

    政府委員中川融君) 今回の御審議願つております定員法の一部改正法案にすでに資源調査会の職員四十名を総理府の定員の中に入れて提案しております。
  336. 楠見義男

    ○楠見義男君 それではそれだけです。
  337. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 本案につきまして他に御質疑がありますか。  本日はこの程度にとどめたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  338. 河井彌八

    委員長(河井彌八君) 御異議ないと認めます。それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後六時二十七分散会