○楠見
義男君
人権擁護関係については大体御
説明で大筋はわかつたのでありますが、そこで具体的にこの局を課に縮小することについて、半ば
意見も混じるかも知れませんが、御質問して見たいと思うのですが、それは先般龍野政務次官がこの
委員会で、
人権擁護局縮小のことに関連してこういうことをお述べに
なつたのであります。それは、現状は三十数名で一局の体裁をなさない、それから又本来
人権擁護の問題は
政府の力を待たずして、むしろ在野法曹の活動を待
つて人権擁護の伸長を図るのが筋だと思う、ただ
官庁はその在野法曹の尽力、活動をお世話する
程度にしたい、こういうような御
説明があつたのであります。このことの当否については随分私は根本的に
意見があるし、又議論の存するところだと思いますが、時間もたちますから、その点について
意見を申すことは省略いたしますけれども、
法務府で一番期待をされておる在野法曹の方面で、この
人権擁護局の縮小についてどういうふうに
考えておるか、ということは、期待を
政府のほうでしておるだけに大きな問題、重要な問題だと私は思うのでありますが、その在野法曹の
日本弁護士連合会は、この
人権擁護局の縮小については絶対反対を表明をしておるのであります。ここにその印刷物もありますが、我々はできるだけ協力はするけれども、併し
政府のその
考え方は間
違つておる、御免こうむりたい、こういうことを
言つておるのであります。一方、破防法その他の
関係から
言つても、
人権擁護の問題が今後ますますその質において、又数において多きを加え、又重要性を加えて参るという際に、むしろ逆に
人権擁護の点が縮小されるがごとき感を抱かせることは、非常に
政府としてもとるべき問題ではないと思うのでありますか、そこで
日本弁護士連合会が三つの点を挙げて反対をし、協力いたしかねるということを申すのであります。
一つの点は、これは
人権擁護局ができたのはポツダム宣言で、言論、宗教及び思想の自由並びに
基本的人権が
確立さるべきことを要求しておる。そのことに基いて主としてアメリカ合衆国
政府司法省内の
人権擁護機関の例に倣つたものであるが、併しこれは決して占領目的のために設置されたものでは断じてないので、
日本国との平和条約前文において、我が国は国際連合憲章の原則を遵守し、世界
人権宣言の目的を実現するために努力することの固い決意の現われであり、これを世界に宣言しておるのだ、こういう際に
人権擁護の問題を軽々しく取扱うことについてのむしろ反対であります。これが第一の
理由でありますが、第二の点において、欧米諸国のように
人権確立の長い苦闘の歴史や伝統を持たん我が国においては、このことは一朝一夕の事業ではなく、
民間及び
官庁側双方の絶え間のない努力によらなければならない。
従つて日本国
憲法第十二条においても「この
憲法が
国民に保障する自由及び権利は、
国民の不断の努力によ
つて、これを保持しなければならない。」こういうように宣言されておるにもかかわらず、
人権擁護局が縮小せられ、そうして
人権擁護局は従来国家
機関の一環として、この
人権の
侵害に対する危険に対し常に監視するという重大なる使命を持
つておるのであるから、その機能はますます重大化こそすれ、これを縮小弱化するがごときことは絶対に許されないところである。これを第二の
理由に挙げ、第三の点においては、龍野政務次官の答弁に当ることでありますが、本来
民間団体に任すべきであるとの論は五十年、百年の将来ならば肯定せらるべきかも知れないが、少くとも現在の段階では到底容認できない議論である。そこでアメリカではトルーマン大統領は大統領
人権委員会を設置して、大規模な
調査検討の結果、十数項目に亘る
人権綱領を定めたが、その中で現在の司法省内の
人権擁護機関の飛躍的強化の必要なことを力説しておることは、米国のごとき二百年余の民主主義の伝統を持ち、幾多強力な
民間団体の存在する国においてすら、国家
機関みずからの力によ
つて、強力に
人権を擁護すべきものとしておる。現在我が国には
日本弁護士連合会、自由
人権協会等の
民間団体が
人権擁護に邁進しておるが、一面国の
機関たる
人権擁護局には、その機能において
民間機関に見られざる特殊性を堅持するのである。例えばおよそ
人権侵犯事件が惹起すれば直ちにこれが
調査を遂げ、証拠を確保する必要があるのであるが、官尊民卑観念の旺盛な我が国においては、
民間団体がこれに当
つても、往々にして
調査に支障を来すことがあり、必要な資料を集めることさえできんことが多い。この点、
人権擁護局は
官庁たる権威により、容易にその目的を産することができる。或いは、この分野には
民間人の起用が必要であるが、課になれば在野法曹等の課長就任は望み難く、純然たる官僚の府と化し去る危険もある。こういうような点を挙げて非協力の態度、又反対の態度を示しておるのでありますが、この問題に関連して私は
二つお伺いしたいのでありますが、
一つは協力を求めんとする弁護士連合会、布野法曹がこういうことを
言つているのに対して、
政府はどういうふうにお
考えにな
つているかということが
一つ、それからもう
一つの点は、これは実情の御
説明を伺いたいのでありますが、寡聞にしてアメリカの実情を私はよく
承知しておりませんので、この第三の
理由の中に掲げているアメリカの司法省内における
人権擁護機関の状況、それから又それが最近飛躍的強化の方向に向
つている、こういうふうに述べられているのでありますが、それらの事情をここであれば御
説明を煩わしたいと思います。