○楠見義男君 それでは私は逐條的に伺
つて行きたいと思うのでありますが、先ず最初に第三條の二項であります。二項の終いのほうに、「
長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとする。」、こういう言葉が使われておるのでありますが、私はこの点を伺う前に間違
つておるかもわかりませんが、こういう感じを持
つておるので、その点から伺いたいのであります。それは例えば破壞活動防止
法案等においては、
政府は意識革命というものを非常に重要視されておる。その意識革命が漸次具体的な国民総武装蹶起というような最後の革命段階に来るということを非常に重要視せられて、その観点から、單に教唆、扇動ということにとどまらず、宣伝の部類に至るまで、例え破壞活動防止法の第三條の一号のハでありましたか、こういうようなことまで実は御心配にな
つてや
つておられる。ところが、一方再軍備の問題にな
つて来ると、
政府はむしろ意識革命を助長しておられるのじやないかというような、これは行過ぎかもわかりませんが、憲法で武力の保持は禁止している。又再軍備はできない。これは
経済的の問題もありますが、憲法上禁止されておる。ところが実勢は、警察予備隊というものについても、これは議論があ
つて、現在はすでに
軍隊だというような見方もあるし、私
ども必ずしもまるまるそれに同腹はいたしませんけれ
ども、そういう議論もある。ところが今回更に、又さつき申上げたように、警察予備隊と海上保安庁と従来任務が違
つておる、そういうものも一緒にして、そうして旧陸海軍当時のようにいかめしい幕僚総監部というようなものでや
つて行く。そこに一方では意識革命を恐れて鎮圧することを
考えながら、一方では意識革命を助長するがごとき態勢が逐次とられつつあるのではないかというような感じを持つのであります。旧陸海軍当時には、御
承知のように例えば三
長官が意見が一致しなければ陸軍大臣もきまらなか
つた、すべてものが動かなか
つたと、こういうような時代もあ
つたことは御
承知の
通りなんです。こういうことがだんだん逐次下克上となり、或いは又
政府と独立しての力強い動きとな
つて今次の戰争に引ずり込まれたと、こういうようなことなのでありますが、そこでここにある「
長官の指揮監督は、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとする。」ということは、これは
官庁経験者としては当然常識的なものだと私は思うのですが、例えば大橋
国務大臣が今の
長官とか、
次長を通ぜずに、直接函館の部隊長とか、どこどこの部隊長に命ずるということは、私は
官庁常識上
考えられないことなんです。普通の行政
機関でも、大臣がいろいろなことを次官、局長を通じて命ぜられるということは常識上当然のことであるにかかわらず、特にここに当該幕僚長を通じて行うものとするということが書かれた点が、非常に大きな
意味がそこに蔵せられておるのかどうか、この点が非常に心配にな
つて参るのであります。それは
保安庁法案についての
政府委員の
説明にも、これと同じように、それぞれ当該幕僚長を通じて行うものとしておると、これと同じことを
説明にも
言つておられるのでありますが、この点が特にこういうふうに書かなければならん
理由がどこにあるのか。以下逐次各條について伺いますが、こういう思想がずつとあとのほうまで、例えば十條にも……、あとで伺いますが、そういう思想が出ている、特にこういうものを置かなくてもいいんじやないか。それから現在の予備隊令にはかかる規定はないのです。ところが警察予備際を
運営して行く上において、こういうようなものがなくて非常にお困りに
なつたという例があるのかどうか、これらの点を
一つお伺いしたいと思います