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三好始君
保安庁法案は極めて重大なる内容を含んでおる
法律案でありますので、この
審議に当りまして、私は特に首相、木村
法務総裁、外務大臣を含めて、大橋
国務大臣以外の各大臣からも
関係部分についてお答えを頂きたい問題があるのでありますが、本日は大橋
国務大臣だけしかおいで頂いておりませんので、非常にその点残念に思う次第でありますが、これからお聞きいたします問題は、
予備隊及び
保安庁法に規定されておる保安隊、警備隊の基本的な性格或いはその行動の基準に
関係する問題でありますので、たとえ
法律関係に亘ります問題にしましても、大橋
国務大臣は
予備隊の主管大臣或いは
保安庁法案提出を担当された大臣としての責任と信念の範囲内においてお答えを頂きたいと思うのであります。別に私は
法律專門家でもありませんし、農政專門の私のお尋ねすることでありますので、
国務大臣として、或いは前
法務総裁として十分御答弁できるものと想像いたしますので、
法律又は條約事項についても一応お尋ねをいたしたいと思う次第であります。
警察予備隊或いはそれに続く保安隊、警備隊の問題は、
法律的にも政治的にも極めて重要な意味を持
つておると思うのでありますが、特にこれらが憲法第九條に違反するものであるかどうか、こういう点については、国民の間に、殊に学界その他知識人の間に
相当違憲論が多いだけに、
内閣委員会といたしましても十分に検討しなければいけないと思う次第であります。
政府は勿論合憲性を信じておればこそ、こういう
法律案を提出されたものと思うのでありますが、違憲論はすでに圧倒的な数的比率を示しつつあるものと考えられますのでありまして、多くの人々は、
政府が條理を無視し、憲法を無視して、これを強行しておるというような感じを持
つております。私も実はそういうふうに信じておる一人でありますが、その根拠は、これから質疑を通じて明らかにして参りたいと思
つております。ただ私は
政府に一言いたしておかなければならないと思いますのは、国民の間に最近漲りつつある政治不信の風潮と、法秩序混乱の傾向であります。そのよ
つて来るところは、必ずしも單純ではありませんけれども、
政府みずからが国家の最高法規たる憲法を曲げて憚からないばかりでなく、與党の数の力で條理を無視した政治が行われつつあるのではなかろうか、こういう一般的な認識が
相当大きな原因をなしておることは否定できないと思うのであります。そこで
予備隊がまさに設けられようとする、保安隊、警備隊等に関しまして、
政府は軍に一方的に合憲性を信じ、且つ主張するだけでなくして、国民の間にあるところの違憲の疑いに対して十分納得の行く
説明をする義務があると信ずるのであります。多数の国民を納得させることができないで、国民的な意見の対立がいつまでも続く、こうした問題について国論の分裂状態がいつまでも続く、こういうことであるならば、むしろ
衆議院を解散して国民の意思を問うことが、憲法問題のような重大問題に対する正しい解決の道でありまして、それが民主政治のルールであることは言うまでもありません。更に又
説明によ
つて納得させることができないだけでなくして、逆に
政府のと
つて参りました態度が誤まりであつた、こういうことが判明いたしましたならば、むしろ解散ではなくして、
内閣総辞職によ
つて責任をとることが、政治を公明にするゆえんであると思います。問題は極めて重要でありますので、
政府は、私が以下数項目に亘
つて述べます質疑に対して明確な御答弁をお願いいたしたいのであります。すでに論点を明らかにして、質疑応答が進められるように、月曜日に質疑事項をお渡しいたしてありますので、あらかじめ御検討されたことと思うのでありますが、予算
委員会における質疑事項と一見して同じようなお感じを持たれたかも存じませんが、私はより多角的に且つ掘下げてお聞きいたしたい問題があるわけであります。
先ず第一番に、
保安庁法の
一つの根源をなしたと思われる平和條約との
関係の問題について
政府のお考えをお聞きいたしたいのであります。平和條約第五條第三項にこういうことを規定いたしております。「連合国としては、日本国が主権国として国際連合憲章第五十一條に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」、こういう規定があるのでありますが、この平和條約第五條第三項の規定と憲法第九條とがどういう
関係にあるかは
一つの大きな問題であります。この点に関して先ずお聞きいたしたいのは、今読みました平和條約第五條に引用しております国連憲章第五十一條並びに平和條約第五條は、他国からの武力攻撃の発生を前提にしておるのでありますが、武力攻撃が発生することに対する自衛措置は、通常の場合自衛戰争を意味するものと考えざるを得ないと思うのでありますが、この点についての御見解を承わりたいのであります。