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国務大臣(
岡崎勝男君) 特に
衆議院の本会議の時間をお計り願
つてまとめての御
質問甚だ恐縮であります。今のお話私もお答えできないというよりも、むしろわからない点も随分あるとり思います。が、まあ自分の知
つている限りのことを申上げて見ますると、第一に休戦会談に関しまする見通しでは、私の知る限りでは国連側と言いますか、
アメリカ側、イギリス側その他のほうは休戦を是非実現したいというまじめな希望でや
つておるようであります。しばしば相手方のいろいろのやり方によりまして、何と言いますか堪忍袋の緒が切れるような状況に来たことがあるようでありますが、自分のほうから休戦会談をやめるようにするという責任を負わされることは最も好まないという態度で、隠忍して今日まで話合いを続けて来ておるようであります。結局問題は先方の出方で、共産側のほうが休戦会談を真に望んでおるのかどうか、望んでおるなら必ずできる、こういうことに結論が
なつて来るのでありますが、先方がどう
考えておるかということについては私は勿論わかりませんが、恐らく国連側のその直接
関係している人たちも非常にこの点は把握するのにむずかしい、むしろわからないで困
つておるという状況じやないかと思います。
従つて休戦会談の見通しは共産側がこれに非常に乗気のようであるときは大変よく報道され、又冷淡になると非常に絶望的に言われておりますが、一にかか
つて先方の出方にあり、先方の出方は今のところどうも直接の当事者にもなかなかわからないで困
つておる、こういうことじやないかと思います。
それから一体こういう休戦が仮に成立したとして続くかどうか、これも甚だ常識的な答えで申訳ないのでありますが、結論からいえばわからないというより仕方がありません。これはもう
国際問題の研究者と言いますか、こういう方面の人々の常識的な煮見として共産主義国家といえども
一つの大きな理想を持
つて、少くとも表面には進んでおる。自由主義国家のほうも同じことである。どこが違うのかと申しますと、これは殆んど全部の人の
意見が一致していると思いますが、民主主義国家のほうはそれを実現する手段に合法的なものを選ぶ。ところが共産主義国家のほうは
目的が正しければ手段は選ばない、如何なる嘘をつこうとも如何なる破約をいたそうとも、或いは如何なる卑怯な
行動をいたそうとも自分の
目的を達するためには差支えないのだ、こういう手段において非常な隔りがあるというのが常識的な解釈のようであります。従いまして休戦等におきましても、一方は約束は守る、これはもう
国際道義と
考えておりましようけれども、相手方は果してこれが
一種の手段であるとすれば、この手段を適当でないと認める場合には破棄することもあえて辞するところではないというふうに思うのじやないかと私は
考えております。例えばこれは事情は非常に違い、理窟はいろいろありましようけれども、日ソ中立
条約というものも
最後まで
日本はこれを信じておりましたが、ソ連側ではもうこれは敝履のごとく捨て去つたという事実もあるのでありますが、こういう
事態は敗戦中も非常にたくさん起
つたのでありまして、
従つて先方が道義的な責任を感じていないと仮にしますれば、休戦も仮にできてもその利益が続かないようになれば破棄されるかもわからない、こう見ざるを得ないと私は思
つております。
それから南鮮にも共産化というものが非常に進んでおりはしないかという御
意見でありますが、これは南鮮における統治の仕方等について南鮮の人々の間にもいろいろ不備のあることはこれは私もいろいろの材料から知
つております。併し全体的に見て南鮮の人々が共産化されつつあるかと申しますと事実はここは私は違うと思
つております。現にいろいろの材料を見ましてもこの点は非常にむしろ違
つて、どちらかというと国家主義と言いますかそちらのほうにむしろ
国民の
気持が傾いておるようにも見受けられるのであります。又現に南鮮のみならず北鮮側からも北鮮の共産化を嫌
つて逃亡する人は三十八度線を越えて今なおあとを絶たないという事実もございまするし、又有名な最近問題になりましたコジエ・アイランドと言いますか、巨済島の捕虜収容所におきましても、これは私は確かにはつきり承知しておりますが、北鮮に送り還えされたくないと純真に
考えておる捕虜の連中も相当多くある。これがどうも休戦会談の
一つの躓きに
なつておるわけでありますが、いやがるものを無理に北鮮に送り還すことはないじやないかという議論が非常にあるのは事実
国際連合軍のほうで見て、手を合せんばかりに南鮮に置いておいてくれというのが非常にあることは事実のようであります。
従つて私は北鮮も共産化されたという、これは無論表面はそうでありますが随分事実はこれを好まないでおるものがあるくらいでありますので南鮮では今その当時のやり方について不満であることはこれは無論たくさんあるでしようけれども、それじや共産主義のほうがいいのかということに
なつたら恐らくもう圧到的大多数が共産主義に反対であるということは少くとも
考えられるのであります。
それから
最後の
アメリカが早く手を引いたほうがいいということ、これは私は
アメリカ人としてはやはり一般的な
考えだろうと思います。それでありまするから、この朝鮮事変の前にも
国際連合の監視
委員に任せて、
アメリカの
軍隊は朝鮮から速かに撤退したようなわけでありまするし、今でも名誉とか、威厳とかいろいろの形に言い方はありましようけれども、心配がなければむしろ早く撤退したい。そうしてアジアのことはアジアに任せたい。これはもう
アメリカ人の一般的な
気持だろうと思います。ただ朝鮮事変以来の情勢の変化、元来これは
アメリカの
政府の方針としては朝鮮までがこの本当のアリユーシヤンから来ている防禦線に入
つておつたものかどうか。これは中国白書というものを見ましても、朝鮮はその当時入
つておらなかつたように書いてあります。それが時代の変化に伴いまして、これはどうしても朝鮮の三十八度線は少くとも守らなくてはならんという非常な
決心で出て来たのでありまして、
政府としては将来の心配の種、つまり再び北鮮側が南鮮に南下して来る、そうして共産主義化するというような、こういう心配がない限りにおいてはむしろ速かに撤退ということは
考えておりましよう。又今でもあんなところで戦をしていることを好まないのは人情の然らしむるところと思います。けれども、
政府の方針としてはいやでも仕方ない。これは世界の全体のバランスの大きな狂いになる問題にならないとも限らないという見地から飽くまでも所期の方針は貫徹するということで
政府としては進んでいると確信しております。又この
趣旨のことはトルーマン大統領も言明されておりまするし、アチソン国務長官も言明されているのでありまして、
気持はそうであろうとも、
政府の方針はやはり三十八度線は少くともはつきり守るということで貫いており、
従つて如何にして士気を
維持し、そうして所期の
目的を達成するかということに大いに考慮を払
つている。こう私は
考えます。