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国務大臣(村上義一君) 今回の
海上保安庁法の改正
法律案でその目的とする
範囲が広汎に
なつたじやないかというお説であります。それは正にお説の
通りであります。現在港湾とか或いは沿岸等においての警備に当り、又救難事業に当
つております。併しながら、我が国が
独立いたします。今日までは進駐軍の援助によ
つて力の足りない点を補
つてもらうようにしてお
つたのでありまするが、
独立して参りますると、まあできる限り完全に、完全にはできなくても、自力を以て警察救難の業務に当るべきことはこれは当然だと思うのであります。勿論我が国の経済力も考慮しなければなりません。公海の上において海賊が現われた場合に、これを完全に取締る。或いは又どういう大きい海難が起り、天災が生じて来ても、これを完全に救出するということは、これはおのずから限度がある次第でありますが、併しながら我が国が
独立する以上は、従来の現行の、ごとくただ單に港湾或いは沿岸のみにとどめるということは穏当でないと
考えるのであります。自然その
海上保安庁の活動
範囲を拡めるということはお示しの
通りであります。
なお次にお話になりました、今日すでに
警備救難部というものがあ
つて、これで十分にその使命を果しておるじやないか、更にこの警備隊というものを新たに設ける必要はないじやないかというような御趣旨のお話でありましたが、過日来繰返して申述べておりまするごとく、現在の
海上保安庁におきましては、五十トン以上から七百トンまでの船が僅か百六十杯しかないのであります。而も七百トンの船は四杯、次は四百トン級に相成るのでありまして、とにかく数におきまして、百六十杯の船で一万マイルに亘る沿岸及びその水域をパトロールして、そうして密入国の防止、又密貿易の防止、又漁船の保護、又密漁の取締り、又地震、台風、その他或いは高潮であるとかい
つたような海難に際しまして、
海上保安庁の使命を果して行くということは、実は今日不可能と言うてよい状態にあるのでありまして、百六十杯ありましても、一杯の受持ち区域は大体七十マイルに及ぶというような状態であります。この取締の網の目はかなり広きに実は失しているのであります。そこへ今の特に救難を要する、或いは警備を要するという特別の事態が惹起しました場合には、どうしても一杯ずつパトロールしている船では、而も力の鈍い小さい船でありますから、その使命を果すことができないということは御想像にかたくないと思うのであります。こういう際に、従来でもその周辺にパトロールしております船に助勢をせしめるべく直ちに指令を出すということをや
つているのでありますが、そうしますればその間に又空隙が生ずる。従来警備のパトロールの空間を故意に誘導的に作られて、そうしてその間隙に乘ぜられて遂に違法を遂行せられるという例もあ
つたのであります。そうい
つたような場合にはパトロールの船によらずして、機動隊がそこにあるならば、直ちに時を移さず機動隊が出動するということが望ましいのであります。従来からこういう機動
部隊の編成を切望いたしておりたような次第であります。で今回の
海上保安庁法の改正
法律案におきましては、こういう
警備救難部のパトロールをや
つているというこの
仕事は、平常時の毎日の常務であるのであります。ただ機動的に事が起
つた場合に時を移さず出動できるという隊を編成したものを作りたいというのが、この警備隊を今回作る
法律改正案の趣旨なのであります。従いまして過日来も申述べております
通り、平常時の警察
事務、又警備
事務、救難
事務を補う、機動的に必要ある場合に出動して補うという性質のものであるのであります。その本質はまさに平常
警備救難の
仕事という範疇は出ないのであります。現在の自治警察であります警視庁の
予備隊とか或いは機動隊という性質のものを作らんとする趣旨であるのであります。この点
一つ御了承おきを願いたいと存じます。
なお今日の
閣議で、前刻
大橋国務大臣から御
説明になりましたごとく、他日
総理府の
組織法又は運輸省の
組織法の改正
法律案を又提出して御
審議願うことに相成ると思うのでありますが、それまではこの警備隊の
任務はまさに警察
事務又救難
事務という範疇を一歩も出ないものであるのであります。今
海上保安庁には
警備救難部、
航路啓開部、
水路部、
燈台部、海事検査部、総務部と、こういうものが
機構にあるのであります。今回の改正
法律案で、更に警備隊を設けるということと、それから経理補給部を設けて総務部を二分するということとを御
審議をお願いいたしておるような次第でありまするが、このうちで今朝きまりましたことは、
水路部、
燈台部、海事検査部、これが運輸省に残りまして、そうして
警備救難部と、
航路啓開部と、それから今問題に
なつております警備隊、これが
総理府のほうへ移る、自然現在の総務部を総務部、経理補給部にそれぞれ必要の
程度に分割されて、一部は運輸省に残りますでしようし、その他は
総理府のほうに移る、こういうことになると思うのであります。その際において警備隊の性質はおのずから変
つて来るはずだと私は思
つております。性格が変更せられまするが、それは現在の性格が全然一変するのではなしに、現在の性格の上へ更に或るものがプラスされる、こういうことになると私は思うのであります。
総理府のほうへ
警備救難部が移るということは、これは飽くまで
警備救難部は平常業務であり、この平常業務の力の足りない場合にやはり警備隊が出動する、その力の足らざるところを補
つて海上の治安を保つ、生命財産の保護の
任務を全うするという
仕事はやはりあると思うのであります。ただそれに、
陸上における現在の
警察予備隊のような性質が更にプラスされるということになると私は思
つておるのであります。勿論これにつきましては、
総理府の
組織法改正
法律案に明瞭に起案せられて、
国会で御
審議を願うことに相成ると思うのであります。ついでながら申述べておきます。