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1952-06-14 第13回国会 参議院 内閣・人事連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十四日(土曜日)    午後二時十八分開会   —————————————  委員氏名   内閣委員    委員長     河井 彌八君    理事      中川 幸平君    理事      鈴木 直人君    理事      成瀬 幡治君            楠瀬 常猪君            草葉 隆圓君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            和田 博雄君            赤松 常子君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   人事委員    委員長     カニエ邦彦君    理事      千葉  信君            北村 一男君            工藤 鐵男君            平井 太郎君            溝口 三郎君            村上 義一君            木下 源吾君            小酒井義男君            紅露 みつ君   —————————————  出席者は左の通り。   内閣委員    委員長     河井 彌八君    理事            中川 幸平君            鈴木 直人君    委員            草葉 隆圓君            横尾  龍君            楠見 義男君            竹下 豐次君            赤松 常子君            波多野 鼎君            栗栖 赳夫君            松原 一彦君            三好  始君   人事委員    理事      千葉  信君    委員      紅露 みつ君   国務大臣    建 設 大 臣 野田 卯一君    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    警察予備隊本部    長官官房文書課    長       麻生  茂君    警察予備隊本部    人事局長長官    官房長     加藤 陽三君    警察予備隊本部   人事局人事課長  間狩 信義君    行政管理庁次長 大野木克彦君    行政管理庁官理    部長      中川  融君    海上保安庁次長 三田 一也君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君    常任委員会専門    員       藤田 友作君    常任委員会専門    員       川島 孝彦君    常任委員会専門    員       熊埜御堂定君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○保安庁法案内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣人事委員会連合委員会を開会いたします。  保安庁法案を議題といたします。人事委員の諸君からできるだけ内容を簡単に御質疑を願います。
  3. 千葉信

    千葉信君 野田さんにお尋ねしたいと思いまするが、保安庁法案に関連し、保安庁職員等に対して特別職という職にしなければならなかつたその理由についてお尋ねしたいと思います。その第一の理由は、国家公務員法職員について適用すべき各般の根本基準を樹立することを目的とするものでありまして、その職務特殊性に基いて特例を設ける必要があれば、同法の附則第十三条によつてその特例を設けることができるのであります。従つて任務特殊性から鑑みますると、私ども保安庁職員に対して殊更に特別職にする必要を認めず、若し必要とあれば国家公務員特例法によるべきではなかつたかと思うのでありまするが、この点お尋ねいたします。
  4. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 保安庁特殊性に鑑みまして種々検討の結果、やはり今お話のような特例法で行かないで、職員特別職とするほうが適当だと思いまして、又現在でも特別職の取扱になつておるわけであります。それを併せて考えまして新らしい法律におきましても特別職にした次第であります。
  5. 千葉信

    千葉信君 同法によつて律せられておる一般職警察官又は海上保安庁職員等適用されておる国家公務員法適用が不可能だという見解を持たれた条文は、国家公務員法等のどういう条文であるか、その点を承わりたいと思います。
  6. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 警察予備隊本部只今申しておりますそのほうに例をとつて申上げますと警察予備隊本部只今では二百十一名の定員になつております。それで、その本部職員につきましては、僅か最近までは百名でございました。百名の本部職員が七万五千名の警察官根本的な方針策定に当る、こういう特別な職務を持つておる。ほかの官庁のように多数の職員の上に僅か百人でその基本的な方針策定をやるという点は、一般国家公務員と多少仕事性質が違いまして、時の政府方針に基いて政策的な任務も受け持つ。言葉は適当かどうかわかりませんが、多少政務官的な色彩もあるのではないかというようなことから特別職にする必要があるのではないか、かように思つております。それから保安官及び警備官特別職的色彩はどこにあるかという御質問かと存じまするが、この保安官警備官は、御承知のように二十四時間勤務態勢というものをとらされております。どういう事態が起つても直ちにその緊急の必要に応じ得るような職務態勢をとらなければならない。最も大きな相違点は、大部分の者が同じ営舎に共同生活をする、こういう点が非常に特殊性を持つておるのでございます。そういう意味におきまして、殊に幹部級におきましては異動も相当頻繁にある。それから夜間演習等も盛んに行われる。従いまして、普通の国家公務員に認められておるような超過勤務手当或いは特別地域給というようなものも、この保安官及び警備官適用するということが甚だ理論上おかしいことになるのであります。それらを睨み合せて給与などをきめる必要があるというようないろいろな点から考えまして、特別職にする必要があろうかと、こう存じた次第でございます。
  7. 千葉信

    千葉信君 その場合におきましても特に問題となりますのは、事務官それから技官、教官等であろうと思うのですが、この職員までも特別職にしなければならなかつた理由について……。
  8. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 同じ役所に勤務いたしておりまして、やはり先ほど申上げましたように部隊が行動しなければならんというようなときには、そういう職員までも同じ勤務態勢に入らなければならない場合が多いかと存じます。従いましてそれらが普通の官庁における職員と同じような仕事をしておるように見えますが、全体の機構内部におきまするときには、やはりその他の大部分特別職とその待遇なり勤務条件なりを睨み合しておく必要があろうかと考えまして、特別職範囲をそこまで拡げておる次第でございます。
  9. 千葉信

    千葉信君 それから、この法案については、恐らくまだ総括質問の段階であろうかと存ずるのですが、私ども委員会としての立場から総括質問とそれから逐条質問というような形を区別しないで一応質問したいと思いますが、この点あらかじめ御了承願いたいと思います。そこで、お尋ねしたいのは、本法案における第二十八条等を見ますると「補職」という言葉がありまするが、これは一体どういう意味を指すのか、との点も承わりたいのです。
  10. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 第二十八条に書いておりまする職員任用、休職、復職、退職補職とありまして、補職と申しますのは、或る階級を持つておりまする者を課長の職に補する、或いは大隊長の職に補するというようなことを考えておるのでございます。
  11. 千葉信

    千葉信君 第三十七条に「条件附任用」という条文がございまするが、条件附任用という制度をとらなければならなかつた理由についてこの際承わりたい。
  12. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 条件附任用制度と申しまするのは、一般的な国家公務員につきましても認められておる次第であります。その者が果してその職において適当であるかどうかということを六カ月の期間見て、そうしてその間にその者が適任者であるというときに初めて確定するというような制度を取入れた次第であります。
  13. 千葉信

    千葉信君 それからその次にお尋ねしたいことは、第四十一条に停年制がありまするが、この停年の場合の基準、それから停年退職者退職手当取扱い等について、特に停年である場合の考慮が加えられておるかどうかこの点……。
  14. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) この四十一条の停年の問題につきましては、御承知のように海上警備隊につきましてこういう規定があるのでございます。今回保安庁法案を制定いたしますに際しまして、保安官の場合につきましても海上警備隊と同じような趣旨によつて規定を設けることが必要であると考えた次第でありまして、との具体的な内容につきましては今研究をいたしておるところでございます。退職手当停年のきめ方等につきましては、只今お話のありました通り退職手当の問題、恩給の受給年限等関係でいろいろ考慮しなければならない問題があると思つておりまして、研究いたしておる最中でございます。
  15. 千葉信

    千葉信君 その研究が或る程度の成案を得る時機はこの法案審議中に間に合うという状態でございますか。
  16. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) これは御承知通り只今退職手当に関する法律そのものがまあ臨時措置でございまして、このほうがどういうふうに研究をし制定をされまするかということと併せて考えたいと思いますので、若しそのほうの係のほうと連絡いたしましてできるようでございましたら早速出したいと思います。
  17. 千葉信

    千葉信君 第四十六条等の規定審査請求及び公正審査会の問題がありますが、この公正審査会審査手続或いは請求手続公正審査会組織及び運営等は、殆んどこれは政令に委任せられるということになつておりますが、私ども考えとすればこれらを一切政令に任すべきでない少くともその構成くらいは法律規定すべきではないかという見解を持つておるのでありまするが、一体この問題について政令で定められる公正審査会構成或いは運営等についてどういうお考えを持つておるか。一応この際明らかにされたい。
  18. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) この我々が政令規定しようと思つておりまする事項は、極めて事務的な内容のものばかりでございます。例を申上げますると、何日以内に出さなければならないとか、或いはその公正審査会組織は何人ぐらいがよかろうとか、只今のところ例えば五名くらいの程度考えたいと思つております。そういうふうな事務の進め方について、極めて事務的なものをこの政令に譲ろうといたしておるのでございます。お手許にまだお届けしないかと存じまするが、この政令案要綱につきましては、人事委員会のほうにも御配布申上げたいと思つております。
  19. 千葉信

    千葉信君 特にこの問題となりますことは、処分を受けた職員長官に対してその審査請求することができる。長官は、その前項の審査請求を受けた場合には、公正審査会にこれを付議する、こういう状態になつていまして、公正審査会構成そのものも問題であると同時に、長官に対して審査請求することにせずに、どうして公正審査会に直接に請求することができるようにしなかつたか、その理由をこの際明らかにして頂きたい。
  20. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 先ほどからお話申上げますように、この保安隊乃至警備隊につきましては、その職員特別職という身分を与えておりまするし、その勤務内容も非常に一般国家公務員とは異なつております。従いまして、或る個人職員に対して処分を行いました際に、それが妥当であるかどうかという判断は、むしろ部外者のかたよりは、やはり中におりまする者によつて、而も例えばこれが検察官、保安官或いは警備官について、そういう事例が行われましたような場合には、その委員会構成は、保安庁内部の各局又は官房、つまり制服を着ない職員などが、その委員の大半を占めまして、その立場から保安庁内部に通じて詳細に存じておられ、勤務の態様も知つておる者がこの審査に当るほうが却つて公平な審査ができるのではないか、かように考えます。これが警察予備隊警察官、或いは保安官乃至警備官職務に対しまして、それらの制服職員自体がこういうことについて裁きをするということでは、或いは片寄つた判断が行われるかも知れませんが、保安庁制服でない職員などを加えまして、この審査会を公正に開くならば、むしろ外部のかたにこういうことを依頼するよりは公平な結果が出て来るのではないかと、かように考えまして、これもむしろ現在の状態を踏襲するための法律案でございます。
  21. 千葉信

    千葉信君 それから第五十条によりますと、保安官及警備官は、長官の指定する場所居住しなければならないという条件がありますが、この点は憲法の第二十二条の違反という虞れが出て来やしないかと思います。その点について御見解を承わります。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法の二十二条というのは居住自由権のことかと思いますが、この保安官それから警備官仕事につきましては非常に緊急の際に勤務に就かなければならんというような事柄の性質上、勤務地と住居が極めて近接していることが必要であると考えまして、かような近接の地に住居しておることが任務遂行の上から言つて欠くべからさることと考えられるわけでございます。従いまして、これに対して居住する場所区域を指定するということは、この勤務を認めます以上当然附随することでございまして、これは公益上の必要であると、こう考えておるわけでございます。もとよりこの居住につきましての指定する場所ということは、宿舎と申しますか、部隊の用に供しておりまする共同宿舎が一定の階級の者に対しましては当然そこへ居住するということにされまするし、又隊外から通勤することを許される場合におきましても、その区域につきまして何キロ以内というような指定が行われるわけでございます。で、これは現に海上警備官につきましては、すでに現行法においてもかような規定をいたしておるわけでございます。又警察予備隊におきましても、事実上そういう趣旨で運営いたしておるわけでございます。実際土の必要、即ち公益上の必要から止むを得ざることと考えております。
  23. 千葉信

    千葉信君 この法案を見ますると、職員に対して憲法違反の疑いあるいろいろな拘束が本案に条文となつて現われておりますが、その中でも最も問題になり、更に刑罰の問題にまで関連して参る問題に、隊員職業選択の自由、隊員退職の自由、その自由が認められているのかいないのか、その点をこの際承わつておきたいと思います。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法上の自由権というものは当然これはすべての者にあるわけでございまして、いろいろな公務上の特別な勤務に服する場合におきまして、その勤務に必要な限度におきましてその勤務を続けます以上は、或る制限に服することは、これは止むを得ないことと存じます。これが公益上支障があり、公益上どうしても必要があるという範囲に勿論限定しなければならないのでございまして、その限りにおきましては、憲法違反の問題はないと思つております。もとよりこの勤務に服するという根本は、個人自由意思に基くことは言うまでもないのでございまして自由意思に基いて勤務に服する場合には、もとより法令が規定いたしておりまする勤務上当然の義務というものを了承して自由意思によつてその職に就いたわけでございますからして、これに対して公益上の必要に基く制限ということはこれは憲法違反というべき性質のものじやないというのが私ども考えであります。
  25. 千葉信

    千葉信君 その場合に自由意思によつてその職を選択し、就職した隊員ではあるけれども、併しその就職している職業から、自分退職したいという意思を持つた場合にも退職してはならないという拘束が、果して憲法違反にならないかどうか。この点を承わります。
  26. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 一般幹部職員につきましては、最初から勤務年限などというものが、停年問題は別でございますけれども、なしでその職に就くわけでございます。従いまして特殊の事情によつて退職を願い出る場合には、勿論それは許可されるものと考えております。ただ一般隊員で、例えば保安官で申しますと、下のほうの階級の人で、二年の期間を以て採用された人だと、これらは最初から一年間は勤めますという誓約で入つて来るわけでございます。従いまして特殊の事由がなければ、成るべくやめてもらいたくないのであります。併し事実問題といたしまして例えば親が死んで跡を継がなければならない。或いは母親が病気で手伝いをしなければならないというような、止むに止まれぬ事情がありまする際には、それはやはり我々は認めざるを得ない、かように考えております。実際にそういう場合の制限がありまするのは、出動待機命令が出たような場合、或いは出動命令が出たような場合には、少し厳重に取締ることにいたしておりますが、そうでない場合におきましては、たとえ二年勤めるという約束をして来た者についても、特殊の事情があるならば、認めざるを得ない、かように考えております。只今でも二年間の誓約で入つて来た者につきましても、事由が認められまする場合には、退職をずつと認めて参つておるのでございます。
  27. 千葉信

    千葉信君 勿論私の御質問申上げておる点は、平常の場合というよりも、出動命令若しくは出動待機命令が出た場合の問題が重点であります。只今お話によりますると、そういう場合には特に或る程度拘束を加える、本人から申出があつても、或いは事情があつても、拘束を加える必要がある、こういうお話でございましたが、私はその拘束の加えようにも問題があると思うのです。若しそういう条件が起つた場合に、隊員がその必要に応じてどうしても自分はその命令に従うことができないという意思を表示した場合に、而もなおこの法律によりますると、御承知通り罰則適用、而もそれが体刑適用を受けることになつておるのです。こういうことになりますと、おつしやるような或る程度のそういう自由意思による申出に対する拘束が必要だという程度のものじやないと思うのです。而も一方には第九十二条の罰則等を見ますと、出動命令出動待機命令等の場合正当な理由なくして職場を離れて七日を過ぎた者等については、三年以下の懲役又は禁錮に処する、これらの場合は職務関係より排除するにとどめるべきであるのに、体刑を科するということが一つと、それから、そういう出動命令出動待機命令等があつて隊員がその職を離れることを申出た場合に、その隊員に対して教唆又は幇助した者に対しても体刑を科するという条文になつておる。全くこれは憲法違反、第二十二条の違反の疑いが濃厚でありまするが、そういうことがそれほど公共の利益という問題で厳格な刑罰を科する必要がどこにあるのか、それも承わりたい。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 居住の自由並びに職業選択の自由に関する制限というものは、保安隊又は警備隊というものの根本的な使命に基いておるわけでございまして、この保安隊警備隊の本質というものは、国家非常事態に際しまして、一般警察力を以てしては到底収拾すべからざる治安の混乱を防止するための国といたしましては治安上の最後の実力による守りをこの部隊に期待いたしておるわけでございます。従いまして、そういう際において、この部隊隊員退職によりまして無力になるというようなことは、この部隊を設けておるところの国の本旨を没却することになるわけでございますから、国といたしましては、かような部隊を設けまする以上は、公共福祉を守るための最小限度制限といたしまして、待機命令或いは出動命令中における自由退職最小限度制限する、これも止むを得ざることである、こう考えるわけでございまして、この点は憲法自由権公共福祉に反せざる限り国法上尊重されるという趣旨を逸脱していないというのが、政府の確信なんでございます。
  29. 千葉信

    千葉信君 その場合におきましても、仮に只今国務大臣の御答弁通りであるといたしましても、どうしてその罰則罰金刑というものを考慮しないで、体刑だけに限定したか、その理由も承わりたいと思います。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) この罰則の処罰の程度でございますが、これはいろいろ法務府当局等とも相談をいたして決定をいたしたわけでございまするが、事案の性質から見まして、財産的な刑罰、即ち罰金刑を以て処断すべきものではなくて、自由刑を以て処断するということが適当な、そういう種類のものである、こう考えたわけでございます。即ちこれをいたしました場合のその犯罪の性質として財産刑を科すべきものというよりは、やはり自由刑を科することが適当な種類のものである、こう認めたためでございます。
  31. 河井彌八

    委員長河井彌八君) どなたか御自由に……。
  32. 楠見義男

    ○楠見義男君 それでは私は総括的な点についての若干の質問と、それから逐条的に詳しく伺いたい点が相当ありますので、最初に総括的な点について大橋国務大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、それは保安庁法案提案理由説明を中心としながら伺いたいのでありますが、先ず今回の保安庁の設置に関連いたしまして、その構成をなしておる従来の警察予備隊及び海上保安庁性格、それぞれの性格について変更があるかどうかということを、先般来いろいろ質疑が交わされたのでありますが、それに対しては終始一貫、警察予備隊及び海上保安庁について従来の任務と何ら異なるところがない、こういう御答弁でありました。これについても、この現われた文面から見て従来の警察予備隊国警或い自治体警察の足りないところを補うという程度のものが、大分性格が変つたというような意見を持つておられ、又その点から質疑をされたかたもありますが、それはそれといたしまして、一応政府説明せられたところを前提にしてお伺いをするわけでありますが、そういうふうに警察予備隊海上保安庁が、従来と全く何ら任務の上においても、又性格の上においても変更がない、こういうような御説明であるとすれば、この二つのものをこの一つ保安庁というふうに統合する積極的な理由がどこにあるのか。勿論警察予備隊も或いは海上保安庁も、共に国内治安の確保という点に重点があり、従つてそういう観点からすれば共通的な目的がありますけれども、実際の活動は一方は海であり一方は陸である。そして従来も別々の機構でやつてつたものが今度一緒になるわけでありまして、従つてそこにはそれだけの特に強い積極的な理由がなければならんと思うのであります。そこで提案理由説明を伺いますと、「現在の国力にふさわしい簡素且つ能率的で、民主主義の原則に立脚する行政機構を樹立するため」云々と、その基本構想に基いて今回一緒にしたとこういうような御説明でありますが、この点は今述べました提案理由だけでは、はつきりいたさないのでありまして、もつと積極的に従来それぞれ違つた分野を持つてつた二つのものを一緒にした理由を承わりたい。
  33. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 誠に御尤もな御質問でございます。この機構を一元化いたしたという点につきましては、一応問題を二つに分けて御説明をいたしたいと存ずるのでございます。即ち海上保安庁からこのたび保安庁に統合されまする機構といたしましては御承知海上警備隊というものがございます。これは警備隊として保安庁の一機構に入つて参ります。このほかに海上公安局というものがございます。この海上公安局保安庁附属機関として別途に入つて来ておるわけであります。この二つ関係から申しまするというと、政府保安庁において一元的に統合しようということを先ず考えましたものは、保安隊警備隊一元的運営をしようという機構であつたのでございます。その際におきましては、海上公安局に相成るべき部分、即ち海上警備隊以外の保安庁に入るべき現在の海上保安庁機構というものは、これは先ず別にして考えまして、警察予備隊海上警備隊だけを一つにしよう、こういうことをまあ考えたわけでございます。で、その理由といたしましては、海上警備隊にいたしましても又陸上の警察予備隊にいたしましても、これらは国内治安の面から申しまするというと、いわゆる平常の事態におきまして常時活動するというふうなことを考え組織されたものであるというよりは、むしろそういうふうな平常の事態につきましては一般の警察或いは水上警察、こういつた機関にそうした事態の処理を任せる。それらの警察或いは水上警察の平常的な機関で処置できないような事態になりました場合、即ち非常事態の際に、より強力な実力を以ちまして事態を実力によつて処理しようというのが、これらの部隊任務と相成つておるわけでございます。従いまして、これらの機構は普通の警察から見まするというと、その備えておりまする実力の面において格段の差違があるわけでございまするし、又警察につきましては、いわゆる警察法等によりまして、自治体警察国家地方警察、そしてそれを運用する機関といたしましては公安委員会というような制度があるわけでございまするが、この非常事態に対処する国の実力組織はそうしたものでなく、むしろ国の直接の統制下にこれを置きまして、そしてでき得る限り発動する際にはその実力を十分に発揮をする。そのためには、指揮命令の系統におきましても政府の直接の意図が直ちに全部隊に反映して、一糸乱れざる統制をとつて活動するというようなことが機構上の必要と相成るわけでございます。そうした点におきまして、警察予備隊海上保安庁というものがいずれも同じような性格を持つておるものでございます。そうして又これらの部隊組織は、先ほど来申上げましたごとく実力を以て行動することを任務といたしておるのでございまするから、この実力というものが常に国家の政治というものに完全に駆使されるという状態にあることが必須でございまして、政治と関係なく或いは政治の要請に反した発動をするということは、これは断じて避けなければならんのでございます。この意味におきまして、機構の面においても特に大きな実力を持つておる部隊であるという観点から、特殊な工夫を必要とすると存ずるのでございますが、この点につきましても両者は同じような性質を持つておるわけであります。従いましてかような機構考えまする場合において、これらの部隊を一元的に統制し、そうして双方の部隊が両々相待つて国の非常事態に対処する、治安上の要請に即応するがごとき、そうして又そこに政治の完全なる掌握下にその実力が運営されるという形態を保障する、そういうような機構考えようというのがこの保安庁法案根本精神でございまして、この点において、両者を統一いたしまして、これを統制する一つ機構を作るということが適切であると考えたわけでございます。即ちかような観点から考えまするというと、従来の両者に分属いたしておりましたところの形というものは、これらの実力を一元的に運用する面において欠くるところがありまするし又特に海上保安庁機構は、これらの部隊政府が完全に統制するという上におきましても欠くるところがある。そこで機構を整備する機会にこれを一元化しよう。これが警備隊保安隊を一元的にいたしました理由でございます。而してこれに附随いたしまして海上公安局保安庁附属機関にいたしたのでございまするが、これは、元来陸上において考えますれば、海上公安局仕事というものは平常的な仕事と見るべきものであり、いわば陸上における普通警察の性格を多分に持つていると思うのでございます。これをなぜ保安庁に持つて来たかといろ点に相成りますると、これは全く、船舶が十分にあり、公安局においてそのすべての使命を遂行するだけの船舶を独自に持つている、又海上警備隊においてその使命を遂行できるような船舶を十分に持つているという場合におきましては、これは別々に所属せしめても支障はないと存じまするが、不幸にして現在の実情は十分なる船舶がございませんので、必要の場合には船舶の一元的な運営という面を考えなければならん。そこでさような面から便宜海上保安庁の警備、救難の部分を一応保安庁に付属せしめることにいたした次第であります。従つて保安隊警備隊一つにいたしたということは、これは最初から第一義的に考えた点でありまして、警備救難関係事務をこれに付属機関として所掌せしめたということは、船舶を利用するという面からの便宜的な措置であるとお考えを願いたいのであります。
  34. 楠見義男

    ○楠見義男君 只今大橋国務大臣から説明せられたところはよく了承したのでありますが、実は特に私はこの海上警備隊関係から、先ほど申上げたような疑問を持つて私は質問をいたしたのでありますが、それは、先般この国会でありますが、海上保安庁の増員をする際に、御承知のように海上警備隊というものを設けるために海上保安庁法の改正をやつたのです。その際に、この海上警備隊というものはどういう仕事をするのかということを、この内閣委員会でも随分詳細に検討し、質疑を重ねられたのでありますが、当時の運輸大臣或いは海上保安庁長官その他の政府委員の方々の説明は、たまたま当時起つた十勝沖の震災を引例されました。通常の場合に大きな災害があつた場合には、海難救助その他の出動について常設的に各管区に分属せしめて配置していることが非常に非能率的である。従つて集団的に、部隊的にそういうものをあつちこつちに配置して置いて、そうして、いざというときにはそこの救難に向うのだ。いわば本来の平常業務である海上保安庁業務を完全に運営して行くための機動的なものであるという説明を終始せられたのであります。従つてそういう観点から言つて海上警備隊が常設されたときに、従来の海上保安庁とその任務性格というものには何ら変更はない。たまたま運輸大臣、プラス・アルフアするものがありやせんかと自分は思つているが、その点は大橋国務大臣と話合いした結果はプラス・アルフアするものは何もない。こういうことであつたのであります。従つて、そういうふうに了承して我々内閣委員海上保安庁法の改正については同意を与えたものと私は了解しているのであります。そこで、その海上警備隊が常設された場合においても、従来の平常業務的な海上保安庁任務性格とは変らない。今回においても、保安庁が設置される場合においても、その従来の海上保安庁任務性格が何ら変らないということになると、一方、警察予備隊と結び付けるということが如何にも不自然であり、ここに或いは旧陸海軍省を統合したような国防省の復活であるとか、再軍備の前触れであるとか、いろいろ叫んで疑惑を招いている点も、そういうところから出て来るのではないかと思うのであります。この点は又のちほど具体的に伺うことにいたしたいと思います。  そこで、どうしても感じは、海上保安庁に関する限りは、平常的業務があつて、それに臨時応急的な海上警備隊ができた。そこで本来の船舶一体の上から行けば、従来通り海上公安局が、即ち運輸省の外局としての海上保安庁に統合されて、そうしてそこで一体的に運営せられて然るべきものを、今の大橋国務大臣説明を聞くと、廂を借りた上に母屋を持つて来ちやつて、そうして母屋も一緒に新らしい保安庁にくつ付ける、こういう感じがしてしようがないのでありますが、その点はどうなんですか。
  35. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) その点は私も誠にさように存じまするが、海上公安局保安庁に持つて来るということは、これは船舶を経済的に共通に使おうという、それだけの理由でございます。それ以外にはどうしても保安庁一緒でなければならないという理由はないわけであります。但しその目的というものは、海上警備隊は飽くまでも本来の警備救難の仕事というものを補うためのものでございますから、全然縁のない仕事とは言えないのであります。従つて、そういう点からも一緒にするという理由があろうと思いますが、併しそういう面におきましても、例えば陸上の場合を考えますると、一般警察というものが別途に存置しながら、警察予備隊だけが国の別の直属の組織になつている。従つて海の場合においても、補われるものの二つ組織を、必ず一元的にしなければならんという理由は成立たないと思うのであります。但し、強いて陸の場合と違う点を申しまするならば、陸の場合においては、いわゆる自治体警察というものが原則であり、僻地においては国家地方警察というものがある。こういうわけでありますから、元々自治体の組織と国の組織という点において食い違いがございます。然るに海の場合においては運輸省ということであります。それから仮りに海上警備隊だけを保安庁に持つて来るといたしましたら、これも又国の役所でございますから、そういう点から言いますると、陸上の場合よりは一層親密な関係が両者の間にあるということは言えるわけでございまして、殊に船舶を共通に利用するというような点を考えまするとその親密さは陸上の場合よりも一層多い。これが便宜海上公安局保安庁に附属せしめる理由であるのであります。
  36. 楠見義男

    ○楠見義男君 これはいずれあとで逐条的にお伺いする際に更にこの問題に触れてお伺いしたいと思うのでありますが、要するに私が申上げようと思つていることは、全く違つたものを一緒にする必要がないじやないかということに尽きるわけなんであります。ということは、先ほども申上げたように、一方は警察予備隊令の第一条にありますように、「わが国の平和と秩序を維持し」云々というので、むしろ国内における陸軍的な機能を狙つてつたのでありますが、海上保安庁のほうは海軍的な機能を実は従来持つておらなかつただろうと思います。而も海上警備隊はその平常的な業務の補充として機動的にそれに補充するということで、警察予備隊のような性格とは私は違つた性格のものであつたのではないかと思つておりますから、そこにそういう疑問まで生じたのでありますが、これは後ほどお尋ねいたしたいと思います。  その次は、提案理由の中で述べておられるこの海上保安庁警察予備隊とを一体的な運営を図つて、以て今後いよいよ重要性が予想される治安の確保に万全を期することといたしたい、こういうことを提案理由の中でお述べになつているのでありますが、そのお述べになつておる今後いよいよ重要性を加えるという治安の問題に関する、何と申しますか、具体的な客観情勢というものについて、この際御説明を伺えば非常に仕合せだと思います。
  37. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今治安の問題は直接私の担当でございませんので、詳しいことは申上げかねるわけでございまするが、独立いたしましたということによりまして、従来我が国の治安について、政治的な問題は別といたしまして、法的に第一の責任を担当しておりましたものは何と申しましても占領軍であります。我が国の国内治安機関というものは、占領軍の占領目的に協力し、或いは占領軍から容認された範囲内において自主的に国内治安を担当して来たというような法的な形になつておるのであります。然るに講和独立によりまして、実質的にはもとより、法的にも国内の治安が飽くまでも政府の責任になる。このことは同時に、進駐軍が直接国民に対して治安上において示しておりましたところの圧力と申しますかもとよりこれは法的な根拠がなくなつたということによるところの精神的な圧力でございます。それが解消いたしまして今後駐留軍として駐留をいたしておりまする場合におきましても、その行動は飽くまでも政府意思にかかるわけでございまして、政府の明示の要請がなければ如何なる意味においても我が国内の治安に協力するための行動というものはとり得ない状態になつております。このことは国内治安の維持という上から申しますると、治安維持の実力の事実上の存在ということは変らないわけでございまするが、その発動の方式なり或いは法的な根拠というものが違つたということは、国内治安の上からいつて非常に重大な問題であると考えなければならんと思います。特に従来国内治安維持の面におきましてもいろいろな問題において占領軍の直接の実力行動というものがあつたわけでございまするから、この際このことは一段と国内治安に重大な影響を及ぼす、こう考えるものだと思うわけでございます。その結果であるかどうかは別問題といたしまして、特に独立後の治安上の問題といたしましては、共産党の軍事方針というものを中心にいたしましたいろいろな騒擾事件、こうした事柄はすでに御承知通りでございまして、メーデー以来各所にいろいろな事態が起つて来ております。もとよりこれが直ちに全国的な暴動を起すというような事態であるとは政府も毛頭考えておらんのでございまするが、併しこれらの動きというものは、二つの世界の間の冷たい戦争即ちその一翼を背負つておりまする共産主義というものの世界的な勢力というものを背景にいたした一つの動きであるということを考えますというと、現在の実情において簡単に鎮圧できるからといつて、今後国際情勢の発展によつてこれらの動きが国内においてどうなるかということも十分考える必要があろうと思います。こうした事柄を考えまして、治安関係の機関ができるだけ一元的に連絡協力して目的を達成するための活動ができ得るような状態を準備するこういう意味保安庁に統合すべくいろいろな機構をこの際一元化しよう、これが理由であります。
  38. 楠見義男

    ○楠見義男君 総括的な問題として、最後にもう一点お伺いしたいのは、これは先般警察予備隊令の改正の際に、改めて保安庁設置法に関連して御説明を伺う、又質問したいということをお約束しておつたことなんですが、それは提案理由の中にも書いてありますが、最後のほうに、「今日までの経験等に鑑みて、これらの任務目的の遂行上その規定の十分でなかつたと思われる点を整理し且つ明確にして」云々と、こういうふうにお述べになつておるのでありますが、これは先般の警察予備隊令の改正の際にも、「その任務性格については従来と何ら改めるところがない。但し二カ年間の経験に基いて、従来の任務性格において欠くるところあるものは改めることとしたい。」こういう御答弁があつて、それに対して改めて別の機会に伺うというようなお約束をしておつたのでありますが、ここに書いてある「明確にして」という点は、恐らく先般来御説明になつておる従来の国警或い自治体警察の補完について具体的に六十一条以降でその点を明らかにしたということだろうと思いますが、その前段の、従来の経験等に鑑みて不十分というのを整備したという点の主なるものは一体どういうふうなことですか。これは警察次長でも結構です。
  39. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 現在警察予備隊令によりますと、いわゆる保査長以下の職員は二カ年間の任期を以て採用するということにいたしております。まさに二年の任期がこの秋に近寄ろうとしておるのでありますが、その際いろいろ考えましたことは、二年の任期が来まして七万五千の大部分職員が一時にやめるというふうなことになりましては、特にその際出動待機命令とか或いは出動を決定されなければならないような時期に至りまして大部分の者が退職しなければならないということになりますれば、この治安維持の際の任務としての警察予備隊等の任務を十分に全うすることができないというような欠陥があることを発見いたしましたので、それらを見まして、この法律案が必要な場合には六カ月間延長できるというような規定を設けました点が非常に重大な相違点であろうかと存じます。それから先ほども話が出ましたように、そういう出動命令が出たような場合、或いは出動待機命令が出たような場合に、従前のように任意退職を認めておりましたのでは、この保安庁におきまする保安隊警備隊の活動が十分でなくなりまするので、それを先ほどは少し酷ではないかというような意味の御質問もありましたけれども、やはり公共福祉を完全に保障するという意味から、或る程度罰則を以てそれらの事態に対処しなければならないということを考えた点などが重要な点でありまするし、更に現在までの保安官警備官職務の執行の際におきましては、警察官職務執行法の規定というものを、ただ単純に準用するというふうに規定しておつたのでございます。併しながら警察官職務執行法には相当詳細な規定もありまするし、それを一々当てはめて考えてみますると、この点はもう少し明確にしておいたほうがよかろう、更にそれ以外の、警察官職務執行法で予定されていないような場合においても、この保安隊警備隊としては武器を使用する場合も認めなければならないというようなこともだんだん考慮に置くようになりまして、先ほどお話がありました六十一条以下には、簡単に従前は警察官職務執行法の規定を準用すると、こういうのを、極めてそれを明確に分析し、又足らざるところを補う条文を設けるというような点を考慮いたしまして、この案を提出いたしました。それらの点が非常に変つた点であると考えます。
  40. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと諸君にお諮りいたします。人事委員の木下君から質疑の御通告があつたので、木下君がお見えになりませんから、お出でになるかどうかをお尋ねしたところが、通告は取消すと言われました。千葉君も大体御質疑は終了のように伺いました。他の方々もおありでないということでありますから、そこで連合の必要がなくなつたと、かように考えまして、連合を解こうと思います。併し議題はこの保安庁法をやつておりまするから、これの議題を続行しようと、かように考えますが、御異議ありませんか。    〔「異議な」」と呼ぶ者あり〕
  41. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 御異議ないと認めます。それではさようにいたします。即ち連合委員会はこれを以て終了したものと認めます。これにて散会いたします。    午後三時二十三分散会