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1952-07-22 第13回国会 参議院 電気通信委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月二十二日(火曜日)    午後一時五十三分開会   —————————————   委員の異動 七月九日委員大島定吉辞任につき、 その補欠として工藤鐵男君を議長にお いて指名した。 七月十一日委員工藤鐵男辞任につ き、その補欠として大島定吉君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鈴木 恭一君    理事            山田 節男君    委員            大島 定吉君            新谷寅三郎君            稻垣平太郎君            水橋 藤作君   政府委員    電波監理委員会    委員長     網島  毅君    電波監理長官  長谷 愼一君    電波監理総局法    規経済部長   野村 義男君   事務局側    常任委員会専門    員       後藤 隆吉君    常任委員会専門    員       柏原 榮一君   参考人    日本船主協会理    事       一井 保造君    船舶通信士協会 山縣 忠重君   —————————————   本日の会議に付した事件電波法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)   —————————————
  2. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 只令より委員会を開会いたします。  先ず電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。この内閣提出電波法の一部を改正する法律案は五月十日に予備審査で当委員会に付託せられ、六月十九日に衆議院修正議決の上に本院に送付せられて直ちに正式に付託せられた次第であります。当委員会におきましては右の法律案について五月十三日に提案理由説明聴取、六月二十二日に逐條説明を当局より求め、五月二十六日、六月四日に質疑を行なつて参りました、本日は六月の二十五日の委員会の決定に基きまして参考人おいでを煩わして右法律案について御意見を拝聴することにいたした次第であります。参考人日本船主協会理事一井保造君、船舶通信士協会山縣忠重君の御両名でございます。委員長といたしまして参考人のかたに対して一言御挨拶申上げます。  政府は今回先に一九四八年にロンドンで締結せられました海上における人命の安全のための国際條約に今加入しようとしておるのでございます。この條約は本年の十一月十九日から効力を発生することになつております。船舶安全法が一方において改正せられ、又電波法の一部を改正いたしましてこの條約に即応するような方法を講じようといたしておるのでございます。只今申しましたように本委員会只今審議中でございまするが、特に御関係の深い船主協会或いは日本海員組合並びに日本通信士協会、非常に御関心を持つておられるように拝聴いたしております。或いは書面を似ちまして公式非公式に私のほうに御意見を頂戴いたしておるのでございまするが、直接今回おいでを願いまして御造詣深い、殊に関係の深い御両氏の率直な御意見を伺いまして、私ども審議参考にいたしたいと存じておる次第でございます、御両氏におかれましては非常に御多忙のところを曲げておいでを頂きまして誠に有難うございます。厚く御礼申上げます。お話を伺う時間は大体二十分程度といたしたいと存じております。  なお、委員のかたに申上げますが、御両氏の御意見が開陳せられましたあとに御質問等ございますればお願いいたしたいと存じます。どなたからでもよろしうございまするがお願いいたしたいと存じます。一井さんに一つお願いいたしましようか。
  3. 一井保造

    参考人一井保造君) 私は日本船主協会理事一井保造でございます。電波法改正に関しまして私の意見を申上げます。本件につきましては去る六月十一日に衆議院におきまして電気通信委員会が開催せられまして、参考人及び関係のかたがたの御意見が述べられております。問題の所在を明瞭ならしめ、なお又できるだけ重複した説明を省くために、以下簡單に問題となつております点につきまていろいろの意見を申述べまして私の意見を附加えたいと存じます。  第一の問題の点は戰後朝鮮、琉球、千島、樺太、台湾方面が新たに外国となりました。従来はこの方面では二級通信士通信長としてその職務を行なつておるのでありますが、来年六月から一級通信士の指揮の下でなければその職務を行い得ないということになるという点でございます。この点につきましては国際電気通信條約、この條約におきまして二級通信士といえども国際通信に従事し得るということが規定せられてあります。これは国際電気通信條約の附属無線通信規則第二十五條の五百五十九を参照願いたいと思います。なお二級通信士国際電気通信條約に基き国際通信に必要な国家試験に合格をしています。又実際問題として現在二級通信士でやつておるものを来年の六月から一級通信士に変えなければならない、こういう工合になりますると、人員配置につきましていろいろと困難を感じます。大体以上三つの観点から、今回の電波法改正に当つて、第三級通信士従業範囲を擴張し、これが新らしく外国となりました水域につきましても従業できるようにして頂きたい、これは現行電波法第四十條の修正でございます、なお、この点に関しましてやや違つた見解もございまするが、私といたしましても、是非とも第二級通信士従業区域の擴張を認めて頂きたいと存ずる次第でございます。  第二に、オートアラーム採用とこれが運用執務時間及び聴取時間の改正に関する問題でございます。この聴取時間等の問題は、専門に亘りまして、ちよつとわかりにくい点がございまするが、簡單説明いたしますると、このたびの改正案では次の通りになつておるのでございます、総トン数千六百トン未満五百トン以上の貨物船改正案では旅客船のこともございまするが、説明簡單にいたすたつめに、なお又現在我が国では旅客船は非常に少いので、主としてここでは貨物船について御説明を申上げますと、総トン数千六百トン未満五百トン以上の貨物船公衆通信を取扱わないものについては、従来は法律無線局を設ける義務がございませんでしたが、今後は第三種局甲として、四時間の運用義務時間及び聴取時間を課せられることになりました。六十三條でございます。次に、一現行電波法では、第一種局、これは貨物船では五千五百総トン以上の船でございまするが、この第一種局では二十四時間の聴取義務があり、又第二種局甲、これは千六百トン乃至五千五百総トン貨物船でございます。この第二種局甲では十六時間、乙、これは第一種及び第二種甲域外公衆通信を取扱う貨物船でございます。この乙は八時間の聴取義務がございましたが、改正の結果、第一種局及び第二種局は三十四時間の聴取義務があり、聽覚による聴取時間はオートアラームを備付けた場合は、第一種については二十四時、第二種局甲については十六時間、乙は八時間と相成りました。そのほかいろいろと細かい改正点がございまするが、煩雑でございまするので、これを省きます。以上今回の改正点につきまして、第一の点、即ち第三種局甲に関する新らしい規定につきましては、安全條約では各国政府の取扱いに一任いたしております。これは安全條約第二部第七規則(は)の(2)という規定にございます。第二の点、即ち第一種局及び第二種局の聴取時間につきましては、安全條約では、いずれもオートアラームを付けることを前提といたしまして、第一種局の場合は我が国の二十四時間に対しまして十六時間、第二種局の場合は我が国の十六時間に対しまして八時間といたしております。これは第七規則のい及びはに規定がございます。即ち、修正案では安全條約を時間の上で上廻つておる次第でございます。なお御参考に申上げまするが、現行法による聴取時間は、第一種局は常時、第二種局甲は十六時間、乙は八時間となつております。これは現行法第六十五條規定がございます。船舶に関し、人命、船体、積荷等の安全を図り、危険を防止するために、通信施設について十分なる考慮を拂わねばならんことは勿論であります。この点につきましては、関係者は何人も異存はないと存じます。ただ問題は、海運産業が国際的な性格を持つておる。常に国際的な競争にさらされておること、及び戦争によつて殆んど九割がたの船腹を失いまして、且つ戦前蓄積をしておりました資本の全部を失いました。殆んど再起を危ぶまれました我が国海運が、今漸く復興の途上にあり、昭和二十五年四月長い国家管理の後に漸くいわゆる民営還元が実現いたしまして活動を始めて数年、現在では世界的な海運界の不況のために非常に苦しんでおるという事実を考えまして、この際一挙に理想案を実施することにつきましては、御考慮を願いたいと存ずる次第であります。  現実の問題として、我が国に来航いたしまする外国船について見まするのに、通信士は大体一名でございまして、この点につきましては、我が国の現状では隔りがございます。外国船我が国の船とは、いずれも違つた電波法を持つておるため、ひとしく国際條約の制約を受けながら、かような事実が起つておることと存じます。この点につきましても考慮をせられまして、今回の改正に当りましても、執務及び聴取時間において安全條約を上廻らないように措置を願いたいと存じます。  すでに申上げましたが、船舶航行の安全につきましては、單に私企業の立場ばかりでなく、国家的に考えましても、その重要性を認識しており、且つ又立場々々においていろいろ意見が出ることにつきましても、その事情はわかりまするが、我が国海運を復興せしむるといろ大乗的見地から慎重に考慮を拂われんことを熱望する次第でございます。  なお、オート・アラーム等採用につきましても、又人員配置につきましても、相当の準備を要しまするので、電波法修正案の実施については、経過規定として、二ヵ年の猶余を希望いたす次第であります。  最後に申上げまするが、私は日本海運全般の問題につきまして昭和二十五年四月にいわゆる民営還元をいたしまして、戦争船舶運営会によつて運営せられておつた我が国海運においてこれを引継ぎました際に、その間業種によつて多少の差違はございまするが、戦前等に比較いたしまして人員において過剰なものがあつたということは言い得ると思います。併しながらこの人員の過剰というものは、今や我が国においては海陸を問わず、官民を問わずあらゆる層における問題でございまして、言わば日本の人口問題の最も大きな焦点はそこにあるのであります。多くの人々がお互いに理解し合い、お互に助けて行かなければならないという根本理念においてははつきりとしておるのであります。従つて電波法改正等にきましても、或いは又船員法における定員改正等につきましても、新らしい規定ができましたが、これとは別個に船主協会全日本海員組合と結んでありまする団体協約においては、別個の又協定も結んでおるのであります。これが精神は要するに互いに相助けて急激なる変化、急激なる困難を来たさないという趣旨から出ておると存じます。従つて電波法関係につきましても、我々は外国の例を参照しまして直ちに急激なことを期待はいたしません。又現実人員に対して困難を来すようなことも希望いたしません。併しながら先刻申上げましたが、海運業が国際的な産業であり、事実又非常に困難を感じておるという点から考えまして、この間の考え方において何ほどかこの点を御考慮願いたいと存ずる次第でありまして、最後全般の問題につきまして私の意見を率直に申上げた次第であります。
  4. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 有難うございました。では山縣さんにお願いします。
  5. 山縣忠重

    参考人山縣忠重君) 只今御指名頂きました通信士協会山縣でございます。今議会に政府が提出されました電波法一部改正、このことにつきましては先に私どものほうから船舶無線業務関係のある二点を修正して頂きたいという請願を申上げてあるのでございますが、このことにつきましては只今一井さんから御意見が述べられた中にありますように、衆議院電通委員会におきましても私ども意見を述べさして頂きましたのですが、本委員会におきましてもそれらのことにつきまして私ども意見を述べる機会を與えられましたことを厚くお礼申上げます。  先ず第一点といたしましては、二級通信士就業範囲をもう少し擴げて頂きたいということでございますが、このことにつきましては、只今一井さんから御意見が述べられたように、私どもも大体同様の観点に立つてこの際若干就業範囲擴げて頂きたい、これは私たちといたしましては現に経過規定によりまして二級通信士通信長としてこの法の範囲内でその職責を完全に果しておる。かような観点から私どもの希望いたしまする近海一区という範囲内の無線通信業務というものは、二級通信士資格内容で十分ではないが、かように考えての希望でございます。従つてこれを無制限に擴げて頂きたい、かような意味ではないのでありまして、大体一井さんの御意見と同様でございますので、重複を避けたいと思います。  次に請願の第二は、警急自動受信機に関する件でございます。これは一九四八年ロンドンで締結されました、「海上ニ於ケル人命ノ安全ノ為ノ国際條約」は、新たに旅客船と千六百トン未満五百トン以上の貨物船無線設備をするごとと、それから旅客船と千六百トン以上の貨物船無休聽守義務付けたのでございます。これは無線の常時聽守が船の安全を期する上に極めて重要だという認識の現われだと思うのであります。私たち通信士日本で初めて商船に無線が装備され、定員一人の頃からその業務上の経験を通じて無休聽守でなくてはいけないことを痛感し、三直制による常時執務を強く主張して来たのでございます。そうしてそれが海上危険が増大した戦争直前にほぼ実現したような次第でありまして、このことが国際條約で規定されましたのは何と言つて海上安全にとつて大きな進歩であり、私たち海上労働者としては喜びに堪へないところでございます。この條約に適合するために船舶安全法改正され、又電波法もそれに伴つて改正されることになつたのでございますが、今度の改正法案を見ますると、そうした折角の進歩的な措置を実質的には効果のないものにしてしまうような箇所が見受けられるのでございます。即ち第六十五條の第一項、第二項では五百キロサイクル指定を受けている第一種局、これは総トン数三千以上の旅客船と五千五百トンを越える貨物船船舶無線電信局を指します。及び第二種局、これは甲乙の区別があつて、甲は船舶安全法第四條の船舶総トン数五百トン以上二千トン未満旅客船と、千五百トン以上五千五百トンまでの旅客船以外の船舶無線電信船舶局を指し、第二種局乙、これは第一種局に該当しない旅客船以外の船舶無線電信局公衆通信を取扱うものと、第一種局及び第二種局甲に該当しない旅客船船舶局を指しますが、これらは五百キロサイクルで常時聽守するこことし、更に五百キロサイクル指定を受けている海岸局及び第三種局甲、これは総トン数五百トン以上千六百トン未満旅客船以外の船舶安全法第四條の船舶船舶局公衆通信を取扱わないものを指しますが、これらの義務運用時間は五百キロで聽守することを規定しておりますけれども、第六十五條の第四項におきましては、運用義務時間以外は警急自動受信機による聽守でもよいとしているのでございます。これを裏返せば警急自動受信機を以て通信士に代え得ることであり、通信士を減らしても差支えないのだという規定となるのでございます。成るほど国際條約でも警急自動受信機聽守を認めておりますし、現に外国船ども使用しておりまして、それらの関係からするならば至極く当然のこととお考えになるかと思いますが、実は私たちとしてはそこに大きな問題があると思うのでございます。先ず第一に、警急自動受信機は到底通信士代りにはならないということでございます。この警急自動受信機という機械は、日本でも曾つて大型船に使用されたことがございました。私どももそれを操作した経験がございますけれども毎日所定のテストをして異常のないことを確めた上、執務時間を終えて孰眠前には必ず作動状態に置いたものでございますが、けたたましい警鈴に起されて受信機のスヰツチを入れて見ると何でもなかつたり、朝起きて見ると、寝ている間に遭難船があつたりして、さつぱり役に立たないばかりか、結局は通信士に無用の煩労を加えただけでございました。勿論日進月歩と言われます電波科学の発達によりまして今日の機械性能はその頃のものよりは高くなつていることではございましようが、而もなお或る限界のあるということは否定できません。米国船通信士労働協約では、オートアラームによつて執務時間外に起された場合は、時間外労働として手当を支拂うことを協定しているのでございますが、その場合空電によつて七回以上作動したなら、そのオートアラームは取替えねばならないという條項を設けてあります。これはアメリカでは通信会社通信士機械を供給しているからでございますが、この例によつて見ましても、アメリカ機械ですら空電で作動することがあるのでございます。今後装備しようとする機械は、所定の規格に照らして厳重な性能検査が行われ、それに合格したものとなりますから、当然確度も相当高いものとなるではございましようが、無線機器型式検定規則第十七條の第五項では「空電又は警急信号以外の信号では、動作しないこと。但し、事実上警急信号を構成する場合は、この限りでない。」と規定しておりまして、相重畳する空電がたまたま警急信号を構成したら、結局空電でも動作することになるが、これは仕方がないのだとしているのでございます。私たち科学進歩とその成果というものを否定するつもりではございませんけれども機械性能にはこのようにおのずから或る限界があつて、所詮意思を持たない機械は人間の代りにはならないことを認めないわけには行かないのであります。  第二には、警急信号で動作するこの機械は、その信号を伴わない遭難通信に対しては、全くの聾であるということでございます。警急信号と言いますのは、四秒時長の長点を一秒時間隔で三回以上を以て構成し、これを遭難通信直前に発射することを建前としているのでございますが、遭難通信の発信というものは、その性質上一般に慎重に扱われております結果、警急信号を発射するいとまがないとか、又は余裕があれば、緊急通信遭難の危險をあらかじめ通信し、それに引続いて遭難通信に移るという場合が多いのでございます。従つてそこには警急信号の伴わない遭難通信がままあるのでございますが、それらに対して警急自動受信機は全く用をなさないのでございます。これは遭難通信の実体から来るもので、如何に機械性能をよくしましても解決のできない点でございます。  このように機械性能の限度からしましても、又遭難通信の実情からしましても、極めて不十分なことは明らかでございますが、若しこれが本改正法案通りなつたとしましたら、どんな結果になるでございましようか。昭和二十七年三月一日現在海上保安庁の調査によりますと、五百トン以上の船は八百十九隻で、そのうち第二種局、つまり五千五百トン以下の貨物船と三千トン未満旅客船以下の船は七百四隻を占め、更にこのうち近海に就航するものは五百トン以上四千トン未満として五百四十二隻となりますが、これらの船は船舶局区別によりましてそれぞれ十六時間、八時間或いは四時間の限定執務で、その時間はAC條約附録第十三号C地帯表に基き、東部インド洋、支那海、西部太平洋にあるものは全部同様に定められているのでございますから、それらがいずれも運用義務時間以外を警急自動受信機で聴守するとしますと、この区域内に就航する全船舶警急信号以外には全く聾となる空白の時間が、日本時間で午前で時から一時、午前七時から九時、午後三時から五時、午後七時から九時、午後十一時から十二時と現われて来るのでございます。この時間中は警急信号が正確に発射され、それによつて警急自動機が確実に動作しない限りは、如何なる遭難が起つても、救助したり、されたりすることは全く望めないことになりますので、こういうことを考えますと、実に慄然たる思いがするのでございます。  これは若干古い話になりますが、一九三八年英国大型貨物船アングロ・オーストレーリアン号という船が、大西洋でか地中海でか判明しないのですが、ともかく行方不明になつ事件がございました。これに関して英国通信士のジヨン・エドワード君は英国無線技師協会に寄せた手記の中で次のように言つております。英国船オートアラームを装備し、限定された運用時間以外はそれに聽守を委ねていた。その船も無線装置も又通信士も優秀であつたはずなのに、遭難通信が全く他船にキヤツチされなかつたのは、船主資本家の利益のために採用された不完全なオートアラームのせいである。オートアラームは時々役に立つだけのものであるのに、政府通信士と同じように役に立つものとして愚劣な立法をしたためこの悲惨事は惹き起されたのだ。英国通信士は団結して通信士による二十四時間ウオツチを実施せしめねばならない。このように強調しているのでございます。  特に日本近海はその地形と気象状況等からいたしまして世界的に航海難所とされておりまして、従つて遭難率も高く、昭和二十六年の海難で汽船の全損だけでも二十隻に上つているのでございます。このような危険の多い海域を航海する私ども船員といたしましては、自分自身の生命の安全のためにも、又日本海運発展のためにも、海難を起さないための努力をするのは当然でありまして、遭難時の救助措置もさることながら、海難の防止を第一義として困難な自然現象と闘つているのでございます。ここにおきまして無線船舶の安全なる航海にこそ役立たせねばならないのでございます。現在では無線通報による航海安全のための措置はかなり充実しております。通信士はその当直中、気象航行警報或いは報時その他陸上からの情報は勿論のこと、視界の悪いときは絶えず附近航行船と連絡をとつたり、その動静と状況を把握し、或いは無線方位を測定すると共に、多数の海岸局呼出し等無線電波をそれぞれ瞬間の変化の中で監視しているのでございますが、これを航海中常時継続してこそ初めて無線が安全に役に立つのでございます。この改正法案が実施されますと、船主さんのほうでは早速警急自動受信機を取付けて通信士を減らそうとするでありましようが、五百キロサイクルというただ一つの周波数の而も特定の信号だけにしか作動しない機械を獄て通信士代りにするという考え方は、海上安全に対して実に大きな冒険だと言わざるを得ません。而も船主さんはこの機械を装備して減すだけではなく、全く装備しないで減すこともできるのでございます、第二種局乙は無休聽守義務付けられておりますが、それに該当する船舶局公衆通信を取扱わないものとすれば、第三種局甲になり、常時聽守義務を免れますから、そこに抜け穴ができて、ますます法の精神に合致しない結果となるのでございます。私ども船舶乗組員として警急自動受信機を船に装備すること自体に反対するものではございません。ただこれが通信士を減らす手段に用いられることに反対しているのでございます。レーダーができまして船の安全度は確かに高まりました。併しそれだからといつて当直航海士代りにはならないと同様でありまして、この機械通信士当直の補助として他の通信のために遭難波としての五百キロサイクル聽守できない間作動させて置くことにして頂けば、それこそ完全な常時聴守になり、本当に安全に役立つのでございます。  およそ海上におきましての安全というものは相関的なものでございまして、互いに他船の安全に役立てることがとりもなおさず他船の安全を期するゆえんなのでございます。先ほど申述べました通り日本近海は世界的な航海難所と言われるだけに、海難率は驚くべき数字を示しております。海上保安庁の調査による昭和二十六年の海難は、遭難船隻数三千五十八隻、乗組員二万六千八百三十四名、船価見積り千百七十八億二千二百万円、うち行方不明、沈没の損失は四百十九隻、五万六百七トンで、それにより船価にして三十四億百六十八万円と、千六百二名の尊い人命を失つているのでございます。警急自動受信機を装備して通信士を減らすことの経済的利点と比べると余りにも桁違いのようでございます。何ものにも代えがたい人命は論外としまして、こうした莫大な損害は保険でカバーできるからといつて済むものではございますまい。国全体の経済の上に大きく響くこのような海難を防止するために必要な措置を講ずるのは国自体の務めだと思うのでございます。  以上申述べました通り、極めて特殊な事情の下にある日本近海におきましては、外船と同じようにすることは極めて危険であり且つ不適当でございますから、日本近海就航船の大宗をなす船舶無線局が実質的な無休聽守をなし得るように関係條項第六十五條の第四項を是非とも削除して頂き、同時に運用義務時間は本條規定を最低のものとして特別の措置によつてこれ以下に短縮することのないように第六十三條の但書をも削除して頂きたいのでございます。  なお、先に私どものほうから差上げてあります改正に関する請願書のうちで改正法案第六十三條但書及び第六十五條第一、第二、第三、第四項を削除とありますのは、第六十三條但書及び第六十五條の第四項を削除の誤りでございますから、御訂正下さいますようにお願い申上げます。御清聴を感謝いたします。
  6. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 有難うございました。何か御質問ございますれば……。
  7. 山田節男

    ○山田節男君 電波監理委員会にちよつと質問したいのですが、今参考人二人のお述べになつた中でオートアラームに関する問題ですが、オートアラームというものは、勿論電波科学が非常に発達したから、殆んど完全なものができておるだろうと思うのですが、果してこれが絶対信頼し得べき程度までオートアラームが発達しているのか。殊に日本の現在のメーカーがそういう完全なものを作り得るかどうか、これを一つお聞きしたい。
  8. 長谷愼一

    政府委員(長谷愼一君) お答え申上げます。只今参考人のかたからいろいろ警急自動受信機のことにつきまして御意見を述べられたのでありますが、私ども警急自動受信機のことにつきましては、今回の電波法改正を立案するに当りましても極めて慎重な態度をとつた次第でございます。この警急自動受信機につきましては、電波監理委員会の行う型式検定に合格したものでなければ船舶に付けてはいけない。法に述べてありますところの警急自動受信機というものは、電波監理委員会の型式検定を経たもので初めてそれに該当するものだ、こういう考えをとつておるわけでございます。電波監理委員会で行なつております警急自動受信機の型式検定も、只今いろいろお話になりました点等からいたしまして、その技術的な機能ということに十分の注意を拂つて型式検定を従来も行なつて来ております。又今後もその考えで行なつて行こうという考えでございますが、何分にも警急自動受信機は、先ほど参考人のかたからも例えてお話がございましたように、たまたま空電とかそのほかの混信の信号によつて丁度警急自動受信機の特殊な通信信号と同じような組合せになつた場合にはやはり動作するのでございます。これはいろいろ人工的にこれを試験調査をすることもできますけれども、実際の実地の調査ということがやはり必要であるということも私ども考えております。従いましてこの警急自動受信機と或いは実際に通信士のかたが耳によつて聽守をやる場合とどれだけ事故なしにこれを全く警急自動受信機によりまして代行し得るかどうかということは、実際に運用相当の期間いたしましてこれらの調査をしなければならん、こういうような考えも実は持つておるわけでございます。従いまして今回の電波法改正警急自動受信機によつてもよければ、或いは通信士によつて、今回の改正によりまして言葉を換えて申しますと、今回の海上における人命安全條約に加盟することによりまして、聽守義務時間が延長になりました部分をカバーするのには、通信士によつてそれを行われてもよろしいし、警急自動受信機によつて行われてもよろしい、両建をとつたのは、実はその点にやや私どもといたしましても実地の調査経験をしましてどちらかに判断を下さなければならないという多少の疑問の点、危惧の点がありましたものですから、そういう形にいたしておるわけでございます。  なお、御参考に申上げますが、現在日本におきまして日本製の警急自動受信機は、一社だけの製品が型式検定を合格いたしております。併しこれはまだ長い使用経験を持つておりませんので、実際上に何らかの欠陷があるかどうかということにつきましては、まだはつきり申上げる時期に至つておりません。  なお、重ねて御参考に申上げますが、この警急自動受信機のことにつきましては、電波の監理面ばかりでなしに、運輸、まあ船舶運航のかたがたとも十二分に連絡をいたしまして、今申上げましたようなことの調査、資料の牧集等をいたすべく目下準備をいたしている状態であります。
  9. 山田節男

    ○山田節男君 そうすると、今の長谷長官の御説明だと、オートアラームにはまだ絶対的な信頼性を持つていない。従つてそこに通信士義務的に受信機というものを併用する。こう言つておられるのですが、さつき山縣参考人からも述べられたように、この日本には非常に海難が多いということは、近海気象状況それから救難施設、それからまあ船そのものが非常に質が悪いというような問題があろうと思います。そういうような点から見まして今の御説明だとオートアラームには全面的に信頼していたい。かように私は解釈するのですが、この点に関しては長谷長官はどういうふうに考えますか。
  10. 長谷愼一

    政府委員(長谷愼一君) 只今の件でございますが、私が警急自動受信機につきましてやや危惧の念を持つておりますのは、実際に警急信号が出ていないのに警急自動受信機が働く、こういう場合がしばしば起るのではないかというところに心配をいたしているわけでありまして、それは大体機械的に型式検定の相当精密ないろいろの受信信号の組合せ等をいたしまして、アローアンスの中に入るか否かということの精密な検査をいたしますが、先ほど申上げましたように自然に空電或いはほかの混信のためにどのぐらい瀕繁に、いわゆる疑似、似て非なる警急信号が実際に起きてオートアラームが鳴るかどうかということについて我々多少疑問に思つているのであります。ベルが鳴りまして船員が起されるということが余りにも起るようでは、その効果ということも疑われるわけであります。そういう点について我々は実際の実地の資料というものを今後日本おいで求めなければならないという点で今後も調査をしなければならない、その点を申上げたのであります。
  11. 山田節男

    ○山田節男君 一井さんにお伺いいたしますが、このオートアラームに関して電波監理総局のまあ責任者が説明しているわけでありますが、オートアラームというものが絶対に信頼性がないということになれば、通信士を或る程度まで確保しておかなければならないと思うのでありますが、先ほどのあなたの陳述によると、このオートアラームういうものを備付ければ少くともこの通信士というものが現在の数で余るのじやないか。私はさように解釈するのですが、若しそうであればこのオートアラームの設置によつてどのくらいの通信士が不要になつて来るのか。それから将来海運が戦後の破壊から復旧いたして参りまして、殊に近海航路というものの船舶が殖える、こういつた場合にやはり或る程度の通信士無線通信というものは必要じやないかと思うのであります。あなたとしてはこのオートアラームが絶対に信頼すべきものだ、こういうお考えですか。それからそれによつて一体どのくらいの無線通信士が不要になるか。これは概数でよろしいがおわかりになつておればその数字をお示し願いたいと思います。
  12. 一井保造

    参考人一井保造君) お答えいたします。オートアラーム性能につきましては実は私どもはわからないのであります。又日本船主といたしましても過去においてやはりこれを使用いたした経験が薄い、殆どないと言つてもいいのですから、ここではつきりと申上げかねます。ただ通信士の数につきましては、現行法では第一種局は常時、又第二種局甲は十六時間、第二種局乙は八時間と規定をされております。今度の改正案では、第一種局は常時、これは変りございません。第二種局は、これはオートアラームを付けなければ常時、オートアラームを付けた場合においては十六時間、かようになるわけでございます。従つて現在と比較しますと、これは殖えましても減らないのであります。従つて若しオートアラームを付けなければ常時としての通信士を持つ必要がある。付けた場合においては現状でよろしい。かようになります。従つて通信士は減らないと存じます。それからなおこれは法規上では今申上げたようでありますが、現実には組合等の協約、第二種局におきましては事実は常時としての点数を備えております。従つて若しオートアラームをつけた場合に、十六時間として若干の減少が来るかもわかりません。併しながらそれは現在の法規、現在我々がやつている組合との協定協約というものの両面から考えまして申上げるわけであります。第三種局等につきましては、先ほど山縣さんからお話がございましたが、これは一九二九年のロンドン條約によつて新しく義務が附加するものであります。従つてそれだけ要員が増加する。只今御質問の幾ら減るかということにつきましては、これは減らない、むしろ殖えるのだ、但し現在の労働協約団体協約の面において、それが団体協約が改訂されるならば、法規に従つて措置された場合においては、第二種局の場合においては若干減るということを申上げておきます。
  13. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 一井さんの言われた第一点と、山縣さんの言われた第一点これは大体同じ方向を向いているようです。而も衆議院のほうでこの点について修正をしたようでありますから、このまま通りますれば大体問題はないのですが、第二のオートアラームの問題について少しお伺いしたいのですが、山縣さんに伺いますが、お話を伺つていると、こういうふうにも聞えるのですが、この点御説明願いたいのです。非常に細かい繁雑な規則ですから具体的な問題はやめまして、考え方の問題でありますが、一体海上における人命の安全のための国際條約というものが生まれて、船舶の安全に関する施設を一応歩調を揃えてやつて、そうして船舶人命も保護しよう、こういう心からスタートしていると思うのですが、大体主要国が入つているわけですから、各国が大体この程度の安全施設を持つておれば、常時航海をするのに支障はないだろう、こういう見方で條約ができていると思うのですね。その点に対してお説を伺うと、こういうようなふうに聞えるのですが、オートアラームを付けなくても、やはり無線通信士というのは必要なんだ、仮に機械のやることと人間のやることは違うのだから、やはり無線通信士は減らしちや困る。むしろ殖やしたほうがよいのだ。従つて海上における人命の安全の條約に要求せられていない部分であつても、無線通信士というものは乗せるべきであるというような考えが入つておるのでじやないかと、私はお話を伺つてそういうふうに聞いたのです。  それで私から申上げるのはどうかと思いますが、勿論理想的に言えばこの安全施設もまだまだもつと研究しなければならん。備え付けなければならんというような施設がたくさんあるだろうと思います。併し大体これには普通の海上において起るような、何と言いますか、海難というものについては一応各国とも経験を持つておるので、そういうものを対象にして考えた場合にどうしたらよいかということを條約において取上げておるのですから、條約の規定しておるところは加盟各国に対しては最小限であるが、一応それで十分な施設であるということを條約が認めておるというように考えられます。先ほどのオートアラーム性能のいいとか悪いとか、日本でできるとかできないとかいう問題、一応これは別な問題にいたしまして、海上における人命安全に関する国際條約というものに対する山縣さんの考え方をもう一遍恐縮ですが、お伺いしたいと思います。
  14. 山縣忠重

    参考人山縣忠重君) 只今新谷さんからの御質問の点でありますが、海上の安全ということを第一のと言いますか、根本的な考えとして一応無線というものが今日まで発展して来ておる。これは現在電波法の基本的なものになつておると思うのです。そこでそうした安全というものを確保するためにいろいろな無線業務が起つて参ります。つまり航行安全のための警報とか気象法、方位術、或いは又伝染病情報とか、それから船舶無線方位の測定というようなものが航行安全を目的として設定されたいろいろの業務であります。そういう業務とそれからいわゆる商業通信というものに役立たせるという業務と、これが一応今日の海上無線業務の内容でございますけれども、そうした業務の量から行きまして、電波法並びに運用規則その他の規則で要請する業務を完全に遂行することが、結局今申上げました安全を確保する結果になる、そうしますと、そうした規則が必要という上に立つて立てられており、その規則の命ずるところによつてなさなければならない無線業務というものから考えますと、今日私どもがこのオートアラームが如何に優秀なもので遭難通信に対して的確に作動しましても、そうしたことだけに役立つ機械がそのままそうした無線業務を代行できないということがはつきりしておりながら、通信士代りに当然登場して来る、こういうところから、私たちはそのオートアラーム船舶に装備することを自体に反対しておるのじやない、あらゆる海上の安全についての装置も当然或る経済的な関係から限界はあるでありましようけれども、そうした現実業務というものに大きな支障を来たすということについては、法律で明かに人に代えられるということをここで決定してしまえば、否でも応でもそうした海上の安全のためのものができなくなるということから、私どもオートアラームのこの規定の仕方に対して反対しておるわけがあります。従つて何でもかんでもオートアラームはいけないので、通信士を全部乗せろ、こういう意味ではないのであります。オートアラームを附けて、オートアラーム性能を活かす、或いはそのことによつて肝腎の海上無線業務が遂行できないという状態にならないだけの措置が同時に講ぜられるのでありまするならば、私どもとしては一向差支ない、かように考えております、
  15. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 お話はよくわかりましたが、それを言い換えますとこういうことにやはりなるのじやないでしようか。條約のほうは、そういう勿論無線通信士のやる仕事の中には、あなたのおつしやつたような気象の通報もありましようし、或いは方位測定のための無線通信の仕事もありましよう、いろいろな仕事があると思いますが、そういうことを考えて聽守時間と言いますか、運用義務の時間というものを大体予想しておるのだろうと私は思うのであります。そういうようなことを考えながらやつておる海上における人命の安全のための條約の規定自体、オートアラームを附けたら無線通信士の数を多少でも減らしてもよいというような規定をおいておるのはおかしい。やはり條約自体もそういう点では山縣さんの御意見から行くと、無線技士の労働條件は余りかまわないと言いますか、或いは人命の安全に影響があると言いましようか、或いは両面でしようが、そういう点から困るのだ、こういうような結論になると思うのですが、その点もう一遍恐入りますが……。
  16. 山縣忠重

    参考人山縣忠重君) 私たち現実海上無線業務というものを見てみますと、今日常時執務の第一種局のほかに第二種の甲、乙、或いは第三種甲というのがその他にできたのですが、第二種局の甲、こういうのが近海の大宗を占めておる船舶無線電信局でありますが、そこでやられております実際の無線業務というものを時間的に私たちがこれを出して見ますと、現在そうした船が電波法できめられた運用義務時間以内にやらなければならないものが、第二種局の甲で四時間十五分、それから乙では六時間十五分、こういうふうに明かに義務運用時間だけに盛り切れない仕事の量があるわけであります。そうしてそれをやらないならこれはオートアラームを附けて、そうして十六時間或いは八時間というもので打切つても私どもは一向差支えない。併しながらここに私たちが挙げましたこの時間の仕事の内容というものは、船が走るのに必要な船員決定に絶対必要な時間を調整するということやら、或いはこうした気象状況の入手というような欠くことのできないものがこの時間を占めておるわけであります。そういうことから行きまして今ここで第二種局甲オートアラームを附ける、それで十六時間やればよろしいという態勢ができますと、今日私たち労働協約の面で三名確保しておることによつて、このはみ出る部分を私たちは基準労働時間という上で実行できるわけですけれども、それが若し覆えされるようになりますと、こういう抜くことのできない海上無線業務を必然的にやめなければならん結果になり、そうしてそれを若し我々が自分自身の安全のためにやろうとするならば、これだけの過酷な労働時間というものが明らかに出て来る、こういうような矛盾を私たちは感じまするが故に、今電波法並びに無線規則によつて規定されておる仕事の内容でありますけれども、これは船主さんだけの考えでなくて、海上におる私たちの権利として保障される海上の安全が、そういうもの抜きで保障されるならば、私たちとしてはこのようなオートアラームで、それこそ八時間以下の執務にしましても一向差支えない、かように考えておるわけであります。
  17. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 よくお話の内容はわかるのですが、もう一遍お伺いするのですが、簡單に結論だけで結構でございます。日本通信士とそれから外国通信士との仕事の幅といいますか、受持業務の種類でございますね、それが非常に違うかどうかということ、私も大分船から遠ざかつておるので船の仕事も忘れたのですが、大体に船に乗つている乗組員で甲板部員、機関部員、或いは無線部員はどうするというようなことはきまつておると思うのですが、非常に日本無線通信士外国無線通信士に比して違つた業務をたくさん一応担当させられておるかどうかという実情を、これは外国といつてもいろいろありましようから、これは勿論標準になる点で結構でございます。労働の種類がどうだろうかという点について違つた点があれば教えて頂きたい。  それからもう一つは、先ほど来の御説明でございますが、結局結論としてはこういう御質問をしたほうがいいかと思うのですが、條約で国内法に任せられた部分はこれは別といたしまして、国内法に任せないで、條約にはつきり規定した部分について考えますとその部分についてもあなたの御主張のように條約の規定オートアラームが附けられておれば或る程度人員を減らしてもいい、そういつた條文は無線通信士の労働條件からみて適当とは思わないという結論になるのでございますか、その二点極く簡單で結構でございますから、お伺いします。
  18. 山縣忠重

    参考人山縣忠重君) 只今外国無線通信士日本無線通信士の仕事の差というような、仕事の差といいますのか、任務の、或いは職務の差というようなものは本質的には差異はないのじやいないかと、かように考えます。併し個々のことについて、例えば機器の修理というようなものは、外国では主としてメーカーのほうに機械そのものが所属しておるから、そうしたところで修理する、従つて保守に対する責任の度合というようなものも、日本通信士が現在なつておるのに比べまして若干の差異は当然であり得るのではないか、大体一つの例として申上げたわけですが、そのように若干個々については範囲がおのずから違つておる、かように考えます。  それから第二点の條約が私たちの主張するものより下廻つておるこういうことについての主張は、條約との関係から私たちとして考えておるというわけではないのでありまして、ここで條約そのものが、その主管庁の委任という中で期待しておるものを、主管庁に委任されておるものが、私たちの主張するものを実現し得るものだ、かように理解しておるわけであります。従つて国際條約が私たちの主張と全然問題にならんようなものであるというような、いわゆる国際條約を無視した上に立つての主張をするわけではなくて、そういう点では今日の電波法、それから国際條約というもの範囲の中で私たちの主張するものが実現するのだ、かような理解を持つて請願であるわけでございます。
  19. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 一井さんにお尋ねしたいのですが、私も前に昨年でしたか調べたことがあるのですが、同じような型の外国船日本船舶と比べまして、これは勿論デツキのほうもエンヂンのほうも多少乗組員の相違はありますけれども無線部内の乗組員の相違はたしか中型船の而も貨客船だつたと思いますが、三人に一人くらい違つておつたかと思うのです。外国船は一人でやるのに日本船は三人でやるというようなことになつておるようであります。大体において無線方面外国船との比較において乗組員の数の相違というものは、どういうところに非常に多くて、どういうところは大体同じ程度だということ、それから今度の改正案によりましてこれが非常に変更があるかどうかということを極く大略でいいですから、お答え願います。
  20. 一井保造

    参考人一井保造君) 只今の御質問の数ですね、通信士の数につきましては、これはやはり我々は現行法電波法に制約されております。なおその上に組合との団体協約によつて制約されておる二つの面があるのであります。その点で考える必要があると思います。両方の面から考えまして、やはりこれは第二種局ですね、千六百トン乃至五千五百トンの船です、この辺に比較して多いのでありますが、それ以上につきましても個々に見れば或いは日本船のほうが多いということもあるだろうと思いますが、併しながら的確にはここには資料がございませんので、大体そういうふうに感じております。これはひとり通信士に限らず、定員問題につきましてはかなりむずかしい問題がありまして、例えば先ほど私が概論の末尾に申上げましたが、なかなかむずかしい問題がありまして、それにつきましても随分理解はいたしているつもりであります。まあ時をかけてよくお互いに納得しなければならんと、そういうように考えております。
  21. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 そこで山縣さんにもう一つ伺いたいのは、令のお話のように、私もたしか中型船の貨客船について非常に差があつたと思うのですが、まあ第二種局というとこれは大体近海の船だろうと思います。近海の船、これはまあデツキもエンジンもこれは非常に執務のしにくいところで、非常に航続距離が短いし、港湾の出入が多かつたりして、乗組員としては勤務状況が変るので非常にやりにくいところであらうと思いますけれども無線方面から見ると、この第二種局のごときはあなたの御主張からいつても、もつと乗組員の軽減をしても十分航海には支障なくやつて行けるような空気じやないかと思うのですが、むしろ問題は殊に大洋を航行している最中の大型船にあるかと思いますけれども、第二種局のごときはむしろ逆に外航船よりも非常に多いというのは、これは団体協約なんかの結果かも知れませんけれども、こういう点についてはもつと実情に合つたような配置をしたほうがいいのではないかと思うのです。その点についてお考えは如何でしようか。
  22. 山縣忠重

    参考人山縣忠重君) まあ今の御質問はこの定員の問題になるようで、これは電波法とは直接関係がないと思います。今労働協約で私たちが第二種局というものは実際には三名になつているわけでございます。それを減らしてもいいということについてどう考えるか、こういうことなんですが、今私たちが一番近海で考えねばならんのは、日本近海が安全に対しては最も重視せんければならん海域である、航海時間が比較的短いということは、直接その安全というものには関係なくて、むしろそうした近海を繁く航海するということが危險の機会が特に多いということと私どもは今までの経験から信じているわけですが、そこで行われます安全のための無線業務というものは、私が最初意見として述べさして頂きました中にありますように、今この四月から遅くは八月の初め頃まで、これは北海道は今日でもまだ濃霧のところも多いわけでありますが、そういうところでレーダーというようなものが全部ついてそうして向うから来るものは何でもわかるということになればともかくとしまして、現状では近海を走つている船がやはり同じようなコースで走るというようなところから絶えず私たち無線のいわゆる目、これは耳を似て代行しているわけですが、それらの船との連絡を絶えずとつている、こういうことも一つの例でございますが、そういうようにして初めて正面衝突というようなことが、昔はあつたものがそういうようなこともなくなつている、辛うじてそういうことで安全が保たれているという状態でありまして、その中心になつている型の船がこれ以下に人を減らしたらどうなるか、結局船で電報を発するときにばかり無線を使うこういうことならばそれでいいわけですが、以上申述べましたような安全のための業務はもう四六時中続いておるわけです。そういう中にこれ以上の定員の削減ということは到底海上の安全の上からしても不可能でありますし、なおそれをあえて減らしてやると、こういうことになりますと、そこでは人道を無視した労働強化が当然起つて来る。かように考えておるわけです。従つて第二種局でこれ以下に通信士を減すための運用時間を低下させる、短縮させる、こういうことについては私どもとしては絶対に承服できない、かように考えております。
  23. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 電波監理委員会に質問がありますが、参考人はもう私は結構です。
  24. 山田節男

    ○山田節男君 山縣君にお伺いしますが、さつき船主協会一井さんにお聞きすると、このオートアラームの設置ということに関して通信士人員整理ということはない。それでむしろ今後とも船舶が殖えたりすればより以上不足するくらいだとこういうことを言われておると私は思うのです。間違いありませんか……。そうすると今あなたのおつしやること、要するにオートアラームは飽くまで機械であつて人間に代り得るものじやない。こういうような御意見だと思うのですが、労働協約、海員組合或いは無線通信士協会船主協会との団体協約オートアラームの設置によつて人員は整理されないという、何と言いますか、保障はあるわけですか。この点について現在の今結んでおられる労働協約に基いてその可能性はあるのかないのか伺いたいと思います。
  25. 山縣忠重

    参考人山縣忠重君) お答え申上げます。  第一点の通信士の総体から見て減らされるということ、これは一井さんからも申されたと思いますが、私としてもそういうことは、減らされるということは、こういうことはあり得ない。と言いますのは今度新らたに設備されます千六百トン以下五百トンまでの貨物船、これは電話でもよいということになつておりますが、それと旅客船無線設備、こういうものから、それらについても通信士は一応必要である、こういうところから基きまして総体の数としては通信士がそのために余つて来るというようなことはないのであります。併しながらこれには二年の経過規定がございます。従つてこれもこれからきまることかも知れませんが、あるように私ども存じておるわけですが、第二種局というものがオートアラームによつて減員になるということになれば、それらの人たちの振向けられる職場というものは新たにできる無線局ということになるわけですが、そうしたところの資格者はより資格の低い者でいい、こういうことにもなると思いますので、若干それらに対しての疑義も残るわけであります。なお今日の労働協約の面で定員がそうした変化があつても確保されるか、こういうことにつきましては現に船主協会のほうからは通信士は多いから減らす、こういう御意向がはつきりと示されておるわけでございます。
  26. 山田節男

    ○山田節男君 そうするとさつきの一井さんのおつしやつたこととちよつと違うのですが……。
  27. 一井保造

    参考人一井保造君) 今山縣さんからも話がありましたが、議論の対象になつ労働協約というものを一応外しまして、我々は現在の電波法並びに改正されようとする電波法、その対象に限つて話を一応したほうがはつきりすると思います。現在の電波法によりまして、第二種局は十六時間の聽守時間を課せられておる。改正されようとする電波法においてはひとしく十五時間である。但しこれはオートアラームを附けることを前提とする。附けない場合には常時である、従つて殖えるという現実が起るのであります。なおこれ以外に第三種局以下の増員の問題が起ります。従つて先刻申上げました人員は殖えても減らないというとははつきりしておるのであります。それで団体協約の問題は、これは法規を離れまして船主協会と組合との間に現状に即してそしてお互いに協議をしてきめておるのでありまして、ここでその結果といろいろなことにつきまして議論をするということは筋違いであろうと私は存じます。それで但し御参考に申上げれば、只今山縣さんがおつしやいましたが、若し第二種局においてオートアラームを附けてそして十五時間やつた場合には、現在労働協約において常時の建前から三人を置いておるものが二人に減るという事実は、特定の船については起り得ると思います。併しながらこれは労働協約上の飽くまでも問題であるということをはつきり認識する必要がある。又先方の全体意思として、若しも改正が行われた場合には、他の分野において殖える可能性があるのでありまして、まあ要するにむずかしい定員問題に触れたわけでありますが、実相は先ほど私の申したことと少しも違わない、山縣さんも同じようなことを言われたと思つております。
  28. 山田節男

    ○山田節男君 そうすると第二種の無線局については大体船主としては人件費を節減するという意味からか……、まあ他の理由で、とにかくオートアラームを可及的に普遍的にそれを設置する、こういう御意思なんですね。それならばこれはもう私たちも常識として、殊に日本近海における海難事故は非常に多いので、これは国会でも問題になつておるくらいでありまして、特殊の気象條件なり或いは海難救助、それから船の質が悪い、こういうことから見ればオートアラームが絶対に信頼し得ないものであるということになれば、やはりこの人間で常時ただアラームの信号ばかりでなくて、他の信号を授受することによつて、非常に夥しい数に上つておる海難が減るのじやないか、これは私素人としてそういうふうに考えるのです。今あなたの御説明からすると、第二種無線局というものはこの法律が通れば当然オートアラームが殆んど全般的に設置される、こういうようなお見込ですか。
  29. 一井保造

    参考人一井保造君) 御承知の通り今度改正案が実現いたしましても、法律オートアラームを強制していない、任意であります。従つてオートアラーム採用するかしないかということははつきりわからないのです。或いは採用する人がだんだん出て来るかもわかりませんが、今ここではつきりその点はわかりません。そこで近海海難が多いということもこれは事実であります。又その原因等についてもいろいろと又事情があると思います。この小型船に常時聴取或いはオートアラームを附けた場合に十六時間ということが妥当であるや否やということにつきましては、相当に見解の相違がそこに生ずると思います。それは戦前等の事情を比較いたしまして、いろいろと見解の相違のある問題であります。私の個人的見解を以て言いますれば、近海における小型船において現に相当の数の通信士を得しめておるという一つの大きな理由は、船舶運営会が民営、官営時におきまして、あの特殊な事情下において非常に減つた船舶、そうしてなお過剰を生じた有能な、経験のある社員を如何にしてこれを維持温存するか、それは海運のためであるというふうな考え方がその当時あつて、そうしてそれに組合側の希望と船主側のそういうとに対する考え方、いろいろな点がございまして、必ずしも近海海難が多いからそれだけやつたということだけではありません。私はそういうふうに思います。
  30. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 参考人に対する御質疑よろしうございますか……。お暑いところお忙しいところおいで頂きまして誠に有難うございました。重ねて厚くお礼申上げます。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  31. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 速記を始めて下さい。この際電波法の一部を改正する法律案について電波監理委員会に御質疑がございますればお願いいたします。
  32. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 細かい規定のことはやめて大綱について一、二伺いたいのでありますが、一つはこういうことなんです。これはわかりきつたようなことですが、実は私はわからないのですが、一体オートアラームのようなこういう種類の機械類につきましては、この技術指導というものはどこが一体責任を持つてやるかということなんです。こういう機械類の製造そのものについては通産省が恐らく責任官庁だというかも知れませんが、実際上この電波に関する技術は電波監理委員会が主管をするようになつておる。そこで両方共が権限があるようなないようなので、恐らく非常にやりにくいことになつておると思うのですが、私十数年前からこういう問題にタツチしておりまして、船舶安全法を作つたときにすでにこのオートアーラムの問題が取上げられておるのです。前の安全條約ですね。先ほど話を聞いていると、日本には今日に至つてもなお信頼すべきオートアーラムができていないというような結果になつて、この十数年何をしておつたかということを実は政府に対して言いたいぐらいなんですが、これは併し電波監理委員会が最近できたばかりで、あなたがたに言つてもしようがないことだろうと問いますが、これからの問題もあるのですね。通産省の関係において、あの電波の技術に非常に関係の深い機械類の製作なりその技術指導、製作指導というふうなものについてはどういうことに現在なつておりますか。それから電波監理委員会としてはこれに対して形式承認するということだけでなくして、そのほかにオートアーラムの製作の技術についても、これは官制上の問題は別として、事実上メーカー等にあらゆる指導、援助を與えておるかどうか。この点を明瞭にしして頂きたい。
  33. 網島毅

    政府委員(網島毅君) お答え申上げます。只今新谷委員からのお尋ねの点につきましては、電波法の立案当時におきまして、只今お話のように一応問題が取上げられまして、当時の電気通信省と通商産業省との間でいろいろ折衝が行われたのでありまするが、その当時におきまして勿論私どもといたしましてはそういう実際電波行政の実施に非常に密接な関係のあるような技術指導と申しまするか、そういう行政は電波の主管庁がやるのが最も適当だという主張をしたわけであります。ところがなかなか双方の意見が一致いたしませんで、今のような形になりまして、電波監理委員会といたしましては、その必要を認められるものに対しまして形式承認の試験をするということで落ち着いたわけであります。併し現在形式承認をやつておりまするようないろいろな機械、例えば只今問題になつておりまするところのオートアラームとか、或いは又方向探知機、そういうような種類のものにつきましては、これは人命の保全という面と密接な関係があるものですから、ただメーカーが作つたものをその依頼に応じて形式検定をやるということだけではこれは十分目的は達成でき得ないと考えております。殊にこれはただできた場合にはそれをその場で検査しただけでは実際わからないのでありまして、実際使つてみて、実用したときにどうであるかというようなことを調べてやらなければ意味がありません。従いまして実際面におきましては、私どもの担当の技術官が、メーカーといろいろ接触いたしまして、これは指導したり指導されたりという関係じやなしに、いろいろ双方で研究していいものを作り上げようということで進んでおります。それから又実際船に取付けられたこの方向探知機或いはオートアラームが非常に数が少いのでありますが、そういうものにつきましても、私どもの各港に駐在しておるところの駐在官、駐在技術官を使いまして、その実際の働き振りを見るとか、いろいろそういうことによつてデータを集めまして、それを又メーカーへ提供するというような実際上の連絡はやつております。併しながらこの問題は、いつかやはりこの各行政庁の仕事の分野をはつきりするという、設置法或いはその他の法律で明確にして頂いたほうがいいのではないかと考えておるような次第であります。
  34. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 そうするとやはり今でも大体通産省がメーカー方面の指導をやつておるから、電波監理委員会としては技術的にはその使つた経験等を考えて指導はしておるけれども、あなたがたの十分思う通りにもならないし、結局両方に跨つているような恰好になつておる、こういうことになりますね。
  35. 網島毅

    政府委員(網島毅君) その通りであります。併し私どもから批評してはどうかと思うのでありまするが、なかなかこういう紬かい技術になりますると、通商産業省も専門の技術者をそうたくさん持つているわけじやございませんので、実際メーカーの指導育成、指導という面では相当な困難があるんじやないかと私ども考えておる次第であります。
  36. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 これは愚痴のようになりますけれども、非常にこういつた船全体を通じる問題であり、而も世界各国が相当すでに発達したものを持つているにもかかわらず、日本オートアラームのいいものを持たないために、対外的な競争上、余計な乗組員を置かなければならんというので、非常に不利な立場に置かれているというふうな、大事なものに対する指導監督が十分に行かないので、遅れてしまつたということは、これは何と言つて政府が十分に考慮しなければならん点だと思うのであります。やはりあなたがたもこの点を政府部内で十分話合いをされて、どこかがやはり責任官庁にならないと、恐らく予算も取れないだろうし、十分な指導もできない、どちらでもいいから責任官庁をはつきりとして、ここ数年の間に外国政府に劣らないような性能オートアラームを作られるように、これは是非努力して頂きたいと思うのです。それからもう一つは船のほうの関係で、安全條約とこの法律及び今度の改正案電波法、及び今度の改正案との関係につきまして、先ほどから伺つていると、参考人もちよつと言つておられましたように、或る種のものについては條約以上にやはり出ているところがあるように思うのですが、これは窮極するところは、日本にはオートアラームがいいのができないからということだけではなしに、やはり日本船主無線技術協会とのいろいろの団体交渉とか日体協約とかいうようなものに着目されて、條約以上の規定を置かれておるのですが、その点が私はがむしろオートアラームは信頼できなければ、信頼するものができるまでは、やはり乗組員を乗組ましたほうがいい。これは誰も異存はない。併し信頼のできるオートアラームができた場合には、外国船並みに日本船も負担の軽減をしてやらないと、これは競争はできないと思います。そういう意味で、規定の上ではオートアラームのいいものができればそれによるのである、併しできるまではごうするのだというふうに、條約に書いてある必要最小限度の規定を国内法でもそのまま採用して然るべきじやないかと思うのですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  37. 網島毅

    政府委員(網島毅君) 只今御指摘のように電波法におきましては、従来もそうだつたのですが、條約上の運用時間というものを課しております。この考え方は御承知のように、海上における人命安全條約は、人命、財貨の保全に必要な最小限度の時間を條約できめているわけです。日本といたしましては、昔の無線電信法時代からそうであつたのでありまするが、海上における人命、財貨の保全と、それと同時に公衆通信の疏通を円滑に行わせるということに相当重点を置いて参つたのでありまして、それらの双方から運用義務時間というものをきめておる次第であります。電波法の立案に当りましては、従来の無線電信におけるそういう考え方も一部取入れたのでありまするが、そのときには、この乗組員の無線通信士の人数につきましては、電波法ではこれは原則として言わないことにしております。過去の無線電信法ではこれは省令できめることになつておつたのでありますが、電波法では原則として人数は、これは管海主管庁に任せる。ただこの無線通信運用上、或いは電波監理上必要な運用義務時間だけを電波主管庁ではきめている。それに何人乗組ませるか、何人従事させるかということは、管海主管庁なり船主側と、それから乗組員側の双方の話合いに任せるという原則を立てておる次第であります。従いまして実際の乗組員の数につきましては、私どもは現在直接関與いたしておりません。ただ結果的にそれがアメリカの乗組員の数よりは多くなつておるということもあるわけでありまするが、それは先ほど申上げましたように、一部は公衆通信の円満な疏通というような面を考えて、多少時間の増加があるということ、他面恐らく船主側と組合側との話合の結果だろうと考えております。
  38. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 その通りだと思うのですが、形はですね……。併し運用義務時間をきめるということは、一人で一日に十六時間働けるはずがないのですから、自然にマンニングの問題が起つて来る。マンニングの問題は他の官庁に任してあるとおつしやるけれども運用義務時間から当然出て来る問題だと私は思います。そういう意味ではやはり電波法はマンニングに触れておらないとおつしやるけれども、実際上は定員の問題は非常に関係がある。むしろ基本的な関係を持つておるものと私は考えます。従つてこれは何も私は船主を徒らに保護して、無線通信士を苛酷な労働條件に追いやろうという考えはちつともない。ただあらゆる方法を講じて、今日世界の海運国が今、船の競争をしておるわけであります。その場合に或るものは直接補助をして見たり、或いは間接補助をして見たり、陰に陽に保護を與えておる。その場合に頭から法律で以て、外国の乗組員がやり得るような事柄を、日本の乗組員ではやれないのだ、むしろやつてはいけないのだということを法律で書いておくことが果していいかどうかということは、これは政府全体として海運の対外的な関係考慮した場合に、よほど慎重にお考えになるべき問題であると思うのです。もつと遡つて言えば、若し日本がそういうふうな状態であるとすれば、或いはこの国際電気通信の條約とか、或いは海上人命安全のための條約とか、條約の締結に当つて日本の実情から推して、すべて日本だけでなしに、世界の海運国の無線通信士というものは、そういうことをすれば非常に苛酷な労働條件になる、これはどうしても條件をもつと引上げてやらなければいかんのじやないかということを日本が主張すべき筋合いにあると思うのです。海上人命の安全のための條約は、丁度日本が参加しない間に結ばれたものですから、ここでは問題外としましても、そういう点について今後対外的な日本海運の競争力というものを考えて、あなたがたのほうでも、国際條約に準拠して、日本の国内法で規律して行くというようなお考えが根本にならなければいけないと私は思うのですが、その点は今後といえども日本は飽くまでもこういつた問題については特殊の立場、特殊の主張を堅持せられるつもりであるかどうか、この点は相当重大な問題であると思いますから、この際にお聞きしておきたいのです。
  39. 網島毅

    政府委員(網島毅君) 只今お話のように、この運用義務時間というものが、労働時間或いは勤務員数の基本的なものであるということはその通りでございます。従つてこの電波法におきましては、従来の無線電信法におきましては省令に委任しておつた、そういう事項をわざわざ、と申しましては語弊がありますが、法律に載せまして、国会の御審議を頂いてきめるという方法をとつたわけであります。勿論政府におきまして法案を立案する場合は、関係の主管庁と十分そういう点について連絡をとつておるわけであります。電波法の制定に当つても運輸省と連絡の上、協議の上、そういう時間がきまつた次第であります。先ほど申上げましたように、電波法においてきめられた運用義務時間と言いますのは、ただ單に海上における人命財貨の保全という以外に、電波監理の問題、或いは公衆通信の疏通といういろいろな面からの要求も取入れなければならないのではないかと私ども考えておる次第であります。従つて電波監理面の要求と、それから只今御指摘になつ日本海運振興という面の考え方と両方睨み合せまして、最も妥当な線に落つけるべきではないかと考えております。尤も電波法が制定されまして以来、海上における船舶の運航その他におきましても相当変化がございましたし、又オートアラームその他の出現によりましていろいろな條件が変つて参りまして、私どもは近い将来にと申しますか、できるだけ早い機会に電波法全体に亘つて相当の大幅の改正をしなければならないという見解に現在立至つておるわけでありまして、そういう機会に只今お話の点もよく考慮いたしまして、再検討したいと思います。
  40. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  41. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 速記を始めて下さい。  電波法の一部を改正する法律案について御質疑はほかにございませんか。若しございませんければ本件に関する質疑は終了したものと認めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 御異議ないと認めます。それでは電波法の一部を改正する法律案の質疑は終了いたしました。次回に討論採決をいたしたいと存じます。   —————————————
  43. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 次に電波行政に関する調査に関して御質問等ございますれば、この際お願いいたします。速記をとめて。    午後三時五十五分速記中止    —————・—————    午後四時十五分速記開始
  44. 鈴木恭一

    委員長鈴木恭一君) 速記を始めて。本日はこれにし散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。    午後四時十六分散会