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政府委員(野村義男君) 先ほど副
委員長から申上げました
電波法の
改正は、提案理由の際に申上げておりますように、海上人命安全條約に加入するための
改正と、航空條約に加入をする或いはそれを
施行するための
改正と、もう一つは
電波法制定以来の実績に鑑みましてどうしても
改正をしたほうがいい、こういうような三つの観点から
規定をしておるわけでございます。それにつきまして、今副
委員長から申上げたのは、その
事項別に申上げたので、
條文が飛び飛びであ
つてフオローするのに多少御困難を感ずる、こういうふうにも思われますので、先ほどの例に倣いまして逐條に簡單に申上げて見たいと思います。
逐條のなかで問題は見出のところはとにかくとしまして、三の「
航空法第百二十
七條但書の許可を受けて本邦内の各地間の航空の用に供される
航空機の
無線局」、こういう字が入
つておりますが、現在この
日本国内で
外国の
無線局というものは使えない建前に
なつております。ところで
航空法第百二十
七條では
外国航空機が或る程度
日本国内で航空庁の許可を受ければ使える場合があるということを書いておりますが、そういう場合には、
外国の
航空機も国内を飛んでもいい。丁度
船舶安全法で
外国船舶が沿岸航海をする場合においては
外国船であ
つても船舶は航航行の用に供してもよければ、その上に乗
つておる
無線局を使
つてもいい、こういうことに
なつておりますので、それを
改正するわけであります。その次の三のところで、「左の各号の一に該当する者には、
無線局の
免許を与えないことができる。」第
五條の
改正でございますが、これは現在ではここの一、二に書いてありますような犯罪を犯した者とか、取消処分を受けた者とかいう者はすべて
免許を受ける資格がない、こういうことに
なつているのでありますが、これはややその実績に見まするというと行き過ぎでありまして、例えば一つの会社で二十なり三十なりの
無線局を持
つておる、その中の一つのものがたまたまこの違反
事項を犯したために、
法律の上では全面的にその者が
免許を取消さなければならない、こういうことになるのでは、やや行政の行き過ぎのように考えられまするので、そういう場合には情状その他を見て「
免許を与えないことができる。」、こういうふうに
改正しようとするものであります。それから第六條の第三項というのは、これは現在この船舶
無線電信局、船舶無線電話局とありますが、そのほかにレーダーとか、その他航行援助用の局もありますので、船舶
無線電信局、船舶無線電話局という定義だけでは掴み方が困るので、広く
船舶局、こういうものに変えるつもりであります。第六條は、これは
航空機関係の
規定でありまして、
航空機について
無線局の
免許を受ける場合において何と何を申請書に書かなければならないか、これは
航空法と体裁を合せまして、そういうような
改正をするつもりでございます。その次の第十三條第二項というのは、現在漁業につきまして、占領下時代にマツカーサー・ラインというものがありまして、このマツカーサー・ラインを越えた場合においては、正午時通報とい
つて無線通信を以て漁船が水産庁その他に船舶の位置を通報しなければならない、こういう政令が出ておつたのでありまするが、これは先頃の関連法令におきましてその政令を廃止しましたので、その政令の文句を消すということでございます。もう一つはそれにつきまして
航空機の
無線局というものが出て参りますので、
航空機の
無線局をその中に入れる。これはいずれも
船舶局の
免許の
有効期間の、或いは航空局の
免許の
有効期間のことでございますが、元来
船舶局なり或いは
無線局の
免許というのは一定の
期間を以て、つまり五年、三年というような
期間を以て許しているのでありますが、このような
法律或いは従来の政令のようなもので
無線局の
設備を強制しているものについて
免許の
有効期間をつけるのはどうかというようなことで、
免許の
有効期間を外しておるわけでありますが、そういうものをこの際外すということで、実際的な変りは
航空機の
無線局の
有効期間を定めない、こういうことにいたす
改正でございます。
それからその次の第二十
七條というのは、船舶その他を
外国で取得した場合におきまして、
日本へ回航する場合においては、
電波監理委員会から直接に
免許するわけに行きませんので、簡易な形で
免許をするということに
なつておりますが、
航空機についても同じようなことが言えるので、回航中は簡易な形で
免許をして、目的地に来てから正当な
免許をする、こういうようなやり方になるのでありますが、そういうことについて
航空機を加える、こういうことであります。
それから第三十三條は
船舶安全法に基きまして船内の
無線電信局が船のブリツジその他の間において適当な通信連絡の
機関を持たなければならぬ。船長の命令を伝える、或いは航行の安全に対する資料を伝えるために命令系統がなければならぬ。これは現在でもあるのでありますが、今度安全條約によりまして、それは音声その他を同時に受け、且つ送るような
設備、英語のほうでツー・エー・システムと申しておりますが、このツー・エー・システムを持たなければならぬ。こういうことになりましたので、この
改正を加えるわけであります。それからその次の三十三條の二というのは、これは安全條約
関係でありまして、船舶の
無線電信の位置は外部的な雑音を受けないような所に置いてもらいたい。できるだけ安全な位置に置いて壊れないように、或いは損傷を受けたりして、必要な場合に使えないことがあ
つては困るので、そういうような位置をどこに置くかということをきめたものであります。安全條約に基いた
改正でございます。それからその次の第二項は、或るトン数、千六百トン以下五百トン以上の貨物船は
無線電信に代えて無線電話を附けていいということに
なつておるのでありますが、その位置は成るべく高い所に置いてもらいたい、こういうことであります。
それからその次は三十四條でございますが、これは船舶の主送信の有効通達距離というものをきめてありますのですが、このような有効通達距離その他は非常に技術的なことでもありますので、殊に先ほど新谷
委員等も御発言があつたのでありますが、安全條約の中ではつきり数もきめられておるし、技術的なものが多いということの
関係で、一応その有効通達距離という文句だけを出して、
内容は
郵政省令に譲ろうという考え方でございます。これは一つには
航空機の
関係で、
航空機の
関係は船のごとく單純ではないので、航路によ
つて、飛行機によ
つていろいろ通達距離その他各種のきめ方をしなければならん非常に技術的なものになりますので、
航空機についてもこういうような
規定を省令できめよう、こういうような立て方に変えたわけであります。その均衡上の
関係からも三十四條でおきめに
なつておりますことを委任命令に移そう、こういうことでございます。その次の三十
五條につきましても同様でございまして、これは補助
設備でございますが、補助
設備についても海上安全條約等に詳しい
規定をしておるのでございまして、これについても今申上げました技術的な
條件が非常に多いのと、他との権衡上考えて、三十
五條の
設備についても
設備の
内容は委任命令できめる、こういうふうに
改正をする、こういうつもりのものであります。同様に三十
五條の二も先ほど申上げました或るトン数の船については
無線電信に代えて無線電話をつけていいと、こういうことに
なつておりますが、それについても有効通達距離を省令に譲ろう、こういうつもりであります。同じくその次の三十六條も、
船舶安全法によりまし、船は発動機附の救命艇を持
つておらなければならん、こういうことに
なつておるのでありますが、その救命艇の中に更に有効な
無線設備を持
つていなければならんということを書いたのであります。その
無線設備をどのような
條件のものをつけるかということを
委員会規則或いは
郵政省令できめよう、こういうつもりであります。三十六條の二は先ほど申上げました
航空機、
法律の
規定に従
つて義務として
無線電信局をつけなければならん、それの有効通達距離はやはり
委員会規則できめる、こういうことを書いておるわけであります。その次の三十
七條は、船舶に新たに備え付けなければならない救命艇の携帯
無線電信、
航空機に
施設する
無線設備の機器とかいうものについては、保安上の見地から、その他通信の
法律上の見地から
一般のものを付けられても困るわけであります。この運用につきましては、あらかじめ
電波監理委員会の検定を受ける、こういうことに変えるわけであります。
その次三十九條以下暫らくは無線通信の従事者のことでありますが、三十九條の中で
無線局の
設備を運用するためには、一定の資格を持つた従事者でなければならん。けれども何か航海の途中で適当な従事者の得られない突発事情が起つた場合においては、資格のない者を使うこともこれ又止むを得ないということに
なつておりまするのを、今は船舶だけがそう
なつておるのでありますが、
航空機を入れるについてそういうことに改める、こういうことであります。それから四十條以下の航空従事者の無線通信士の
規定は非常に細かいのでありまして、概略だけ申上げますが、第一級通信士はこれもはつきりこの航空の通信が、或いは
設備の操作ができるということを入れますのと、その他航空用の
無線局の運用ができるということを書いたわけであります。それからその中で主とした
改正は、新しく航空無線通信士というこれは特殊なカテゴリイでありまして、従来の第三級の無線通信士と、電話或いは船舶、漁船等を主としたものでは十分ではないので、新たに航空無線通信士というものを設けることといたしました。それから現在聽守義務というのがありまして、船舶で專ら海上安全の見地から或る特定の時間ウオツチをする場合において、一級、二級、三級というような十分な資格を持つた者でなく、そういう遭難信号等だけをウオツチするための者を主として他の乗組員がや
つておるのでありますが、そのウオツチヤー、聽守員という制度がありましたが、今度の安全條約の結果そういうものがなくなりましたのでこれを削る。併しこれは今
有効期間の免状を持
つておりますので、免状
期間だけはそういうふうな作業をしてもよろしい、こういうことに改めるわけであります。以上申上げましたのは、四十條の表、四十條というところは全部その
関係であります。
それから五十條はこれは船舶その他で通信局或いは
無線電信局の長として仕事に従事されることを書いておるのでありますが、今度
航空機の
関係を書きますので、
航空機の長として乗り込むための資格を書いてあるわけでありますが、その中で一定の時間をそこに書いてありますのは、五十時間以上の通信実務を持つた者でなければならぬ、五十時間というのは大体日米間の航空往復時間を標準としたのでありますが、そういう滞空経験を持
つておらなければならぬというようなことに変えるわけであります。五十
二條の
改正は、
無線局の目的外の使用禁止ということを書いておるのでありますが、
無線局は
免許状に従
つて運用しなければならぬが、或る特定の場合即ち遭難通信とか緊急通信、安全通信とかいうような特殊な通信については、その場合においては
免許状の範囲を超えて運用することも止むを得ないということに
なつておりますが、それについて、
航空機についても同様なことが言えるので、
航空機を入れる、こういうことでございます。その次は六十三條でありますが、今度海上安全條約の結果、千六百未満五百トン以上の旅客船が
無線局を付けなければならないことに
なつておりますので、そういうものについても一定の時間を運用しなければならない、こういうふうにするために六十三條の下に第三種局甲というものを加えたわけでございます。それらの六十三條の二項で、或いは十六時間が八時間、第三種局については四時間、こういうような時間を運用する。時間割は如何なる時間にやるか、合計は四時間であるが、如何なる時間を取るかということは、
委員会規則或いは
郵政省令できめる、こういうようなことにしておりますのでございます。
その次は六十
五條でございますが、これは現在は遭難通信その他のために第一種局で緊急通信、遭難通信がよく行われる所は五百キロ・サイクルで常時聞いてやらなければならぬ。第二種は或る一定の時間聞かなければならぬことに
なつておりますが、今度安全條約の
改正によりまして、第一種、第二種に当るような局は常時五百キロ・サイクルで聞いておらなければならぬ、こういうことになりましたので、それに基いた
改正を加えるわけであります。ただ新たに従来三千トン以下の旅客船或いは五千五百トン未満の貨物船については常時ウオツチの義務がなかつたのでありますが、今度は新たにこれも安全條約の結果常時ウオツチを課される、こういうことになりますので、それにつきまして現在では或る程度ウオツチヤーその他等で行えるように
なつておるのでありますが、今度も或る程度は警急自動受信機を使
つてウオツチをしてもよいというふうに
改正をしようというような点が狙いであります。それから次の第六十三條は三項、四項というふうに、及び第六十
五條二、三、四、六項というように各種書いてございますが、今申上げましたような新らしい義務を生じた船舶のカテゴリーに応じて五百キロ・サイクルの聽守時間を殖やし或いはその時間割を定め、場合によ
つては警急自動受信機をどうこうするということを主として書いてあるのでございます。
第三節、第七十條の
航空機局の運用というのは、先ほど申上げました
電波法の中にはなかつた。航空局というのは地上にあ
つて飛行機と通信をする局、
航空機局というのは
航空機の中にある
無線局でありますが、そういうものの通信
関係を
規定した大体船舶と同じような概念から第三節を書いてございます。これは先ほど副
委員長から申上げたことで十分だと存じております。それから第七十條の六は、先ほど申上げました
航空機につきましては船舶
関係の
規定を
準用する、第七十條の六項が主として航空局の
関係でございます。「第七十
五條中「第
五條」を「第
五條第一項及び第二項」に改める。」と書いてございますが、これは先ほど申上げました第
五條の失格事由、即ち
免許になり得ない欠格事由、
免許になり得ないものの範囲を絶対的なものから相対的なものに直しましたので、その
関係で第
五條第一項、第二項の場合については取消さなければならない、こういうふうに変えて第三項の場合には任意なものであるということを明らかにしたわけであります。第七十六條の第二項は今申上げました任意的な絶対的から相対的に変つたことに関する
免許の取消に関する
改正でございます。第七十六條に一項を加えてございますが、先ほど申上げました第
五條第三項の
関係で
免許を受けたものが持
つている局の他の
無線局の
免許も取消すことができるというような地位を書いたものであります。八十三條第一項というのは、八十三條は聽聞の
規定でありますが、
電波監理委員会がいろいろな規則を作るためには聽聞を経なければならないということに
なつておりますので、今度新らしく
航空機に対していろいろ規則を作るということに
なつておりますので、それについて聽聞を経なければならん、こういうことに
なつているわけであります。その次の九十九條の十一というのは、これは現在
電波法にはないのでありますが、これは船舶
関係の規則を作るための聽聞
関係の
規定でございます。これは行政機構の
改正の結果、
郵政省設置法ですか、これの一部
改正の
法律の中で
電波法を
改正しまして、
電波法の聽聞に関する
規定を
改正して、聽聞の
機関の形を
審議会等に変えるわけでございますが、それは七月一日から九十九條という形に直る
電波法の中に一章長い章が入りまして、九十九條の十一というのができまして、その中に
電波法関係の規則で聽聞を経なければならない規則が列挙してございます。これはこの
法律ができると七月一日には九十九條の十一というものになりますので、こういう
規定が必要なのであります。ということは、この船舶
関係のやつは本年の十一月十九日、即ち海上
事務安全保障條約というものが現在
政府側で
国会の御
承認を経て閣議の
手続を進めておりますが、その効力が発生するのが本年の十一月十九日である。で、この
電波法改正の中にも船舶に関する、
規定の部分は本年の十一月十九日に発効をする、従
つてその発効したときにおいては
電波法の八十三條というものはなく
なつているので、九十九條の十一というふうに変形しておりますから、九十九條の十一に直すというような形にしております。これに反して前條の八十三條の
航空機関係は、これは平和條約の
関係その他で月下他の
委員会で
航空法を御
審議中でございますが、これは公布の日から
施行するということに
なつております。従
つて八十三條その他
航空機関係の
規定は公布の日から
施行する、こういうふうに
なつておりますので、それに平仄を合せて八十三條は即日公布、船舶
関係の九十九條の聽聞
関係の
規定は十一月十九日発効、こういうふうな点から非常にわかりにくいような形に
なつておるわけであります。その次の百三條の二というのは、
外国船舶或いは
航空機に開設した
外国の
無線局の地位を書いたものでありまして、
電波法制定当時においては
外国船舶の地位をどうするのかということは当時の
無線電信法第
五條に書いてあつたのでありますが、当時
外国船その他に法権が及ばない
関係があ
つて、全然この
外国船舶の
日本領海内における地位というものを書いてございません。それを今度平和回復と共に、そういう主権国に
なつて
日本領海内におけるところの船舶或いは
航空機に
日本の法権が及ぶように
なつたので、百三條によりまして
外国船舶の地位を書いた、こういうことでございます。あとはこの百
五條、百六條、百十三條、その他は罰則でありまして遭難通信を、虚偽の遭難通信を発したらどうなるか、これは
航空機の
関係を加えて
航空機について同様なことが言えるわけでありまして、それを加えたというわけでございます。これは
電波法制定当時におきましては、
日本は飛行機を飛ばすことができない、その
関係で
航空機に関する
規定一切
電波法に入
つていないのを、今度改めて各章に
航空機というものを入れることになりました。その結果罰則についてもいろいろ
改正をしなければならん。主として
航空機関係の罰則を
改正するわけであります。附則の一は、先ほど申上げました
航空機関係は即日
施行、その他の部分については海上
事務安全保障條約の発効の日から、即ち十一月十九日から
施行する、そういうことに
なつております。第二項につきましては、先ほど申上げました聽守オペレイターの過渡的な措置を書いたものであります。大体以上であります。