○
証人(
溝上けい君)
テレビジヨンの
標準方式に対しまして、私
どものほうといたしましては先ず基本的に次のようなことを
考えておるわけであります。それは勿論我々のほうといたしましても、送るほうの機械につきましても十分にいろいろ検討いたしておりますが、何と申しましても、第一に
テレビジヨンという文化施設をできるだけ多く利用されるというふうにいたしますために、どうしてもこれを普及させるというようなことから、先ず
受像機の問題を取上げたい、その次にこれはできるだけ少しでも画の質をよくして、番組内容をよくして行きたい、こういうことを
考えているわけです。これは基本的な線でありますが、なお
標準方式に対する
意見をまとめます前提といたしましては、
カラー・
テレビジヨンが一体いつ頃実現するかというような点は多少條件がありますので、これにつきましては
白黒方式が
日本で実施されましても、当然
白黒方式の研究というものはやはり続けたい、これは当然でありますが、併しながらその場合には直ちに更に
カラー・
テレビジヨンのほうの、現在も多少はや
つておりますけれ
ども研究を促進したい、こういうふうに
考えております。実際
アメリカで
カラー・
テレビジヨンを御覧に
なつたかたがたの感じをお伺いいたしますというと、一遍この色のついた
テレビジヨンを見ますというと、或る場合はむしろ
カラーで始めたいと思うくらいに非常に魅力があります。少しでも早くこの
カラー・
テレビジヨンをやりたいというふうに感ずるのは当然でありまして、これは実際私も
自分で非常にそういうふうな感じを抱きました。恐らく
日本でも
実験が始
つて、相当な成績が得られるような状況になりましたならば、勿論その規模の点につきましては相当いろいろ問題があると思いますけれ
ども、案外時期的には早くその機運が来るのじやないか、結局将来は
テレビジヨンはやはり
カラーじやないか、こういうふうに感じております。そこで
標準方式に対する我々
どもの
意見といたしましては、以上申上げましたような見解並びに見通しの下に、
周波数帶域というものについては
聽聞会では七メガを主張いたしたのであります。やはり現在でもそのほうがよいと
考えておるわけでございます。そのほかの点につきましては、これはできるだけ愼重に考慮すべきものとは思いますけれ
ども、現在きめるといたしましたならば、他の点では
アメリカ方式でもいいのじやないかというふうに
考えております。なお一番大きな問題は非同期の問題でありますが、これは非常に重大問題であります。
従つてできればそういうむずかしい方法をとらないで済めばこれに越したことはないと思うのでございまするけれ
ども、これは
日本といたしまして、御
承知の
通り五〇サイクル、六〇サイクルの両地域がありますために、これはどんな苦労をしてもどうしてもこの点は
日本としての特殊な事情にありますために止むを得ないことだこう
考えております。それで大体以上のような
考え方によりまして七メガを希望いたしますが、それをもう少し具体的にいろいろな点、問題の点を二、三我々の
意見を申上げたいと思うのですが、勿論この七メガ、六メガの問題は、一番大きなのは今も
お話がありましたように
カラーテレビジヨンヘの移行の問題が一審基本的な問題だろうと思うのです。併しながらこの
白黒の場合におきましても相当いろいろ問題がありますのが、その二、三につきましてちよつと
考えを申上げたいと思うのです。
先ず第一にこの絵の質、つまり精細度であります。これは
白黒方式の場合について暫らく申上げますが、この場合六メガと七メガを比較いたしますというと、大体縦の方向は勿論これは走査線の数できまりますから同じでありますけれ
ども、横のほうのいわゆる解像力、精密度が大体二五%増すのであります。これは私
どもの事業の内容から見まして、相当将来学校
放送とい
つたような教育
方面に使われるものと予想されるために、できるだけ今も
お話がありましたように余り無理して大きくすることは困難でありますけれ
ども、成るべくは少しでも大きな絵にしたいという点も
考えております。そういう
意味からしても絵の質をできるだけ上げたい、つまり二五%という数はちよつと
考えると大したことはないように思われますけれ
ども、現実に申しますというと、同じ絵を見ます場合に、勿論近くへ行けば行くほど絵のあらが見えて来るわけです。そういう点では大体四分の一くらい近付いても同じくらいの精細度で見える、こういう点が違うのです。又絵の大きさから申しますというと、同じ絵を大体四分の一くらい大きくいたしましてもやはり同じ精細度で見える、こういうふうな点で違いがあります。こう
考えますというと、勿論これだけで
標準方式をきめるわけじやありませんけれ
ども、相当大きなメリツトがあるのじやないかというふうに
考えておるわけであります。この絵の質が一体どれだけあればいいかということは
聽聞会でも非常に
議論になりまして、勿論これだけの絵の精細度があれば、それで完全であるということはなかなか言い切れないのです。併しながら我々としましては少しでもよくしたい、同時にもう
一つ考えられますことは、先ほ
どもお話が出ましたように、大体
アメリカでは十六ミリ
程度を
標準として五百二十五本ときめたというふうな話にな
つておりますけれ
ども、現在十六ミリは大体ピクチヤー・エレメントが二十万こうな
つておりますが、実際に今の話に出ましたが
フインクさんなんかの計算によりましても実際は五百二十五本では無理なのでありまして、最高本には十六万五千であるというようなことも書いてあります。従いましてやはり又実際に現在の
テレビジヨンを見ましても確かに十六ミリよりは小し惡いのです。ここで二五%増しますと、十六万五千で計算の上では二十万になるというようなことで、若干よくなるという点で十六ミリに近付くのじやないかという点も併せまして、六メガと七メガを比較しますと、七メガのほうにしたい、こう
考えるものであります。
それから次に
受像機の価格の問題でありますが、これは勿論絵がよくなるのでありますから、一般的に申しますと若干
値段が上る。これは
値段が高い高いというふうに言われるほど大きな
影響があるのじやないのです。そのことをちよつと御
説明したいと思うのですが、この七メガにすると
受像機が高くなるというその原因は、結局音のほうの場合でも同じでありますが、成るべく広い
周波数の幅を出そう、或いは大きくしようというふうな増幅器におきましては、
周波数の幅が広くなるほどそれに応じて感度が落ちるわけです。従いましてその感度を落ちただけ回復させるためには若干金がかかる、こういうことから七メガにすると
受像機が高くなる、こういうふうに一般的にはなるわけであります。併しながらこの
テレビジヨンの場合につきましては、そう一概に
受像機が七メガにすれば上るということは言えないのでありまして、それは例えば
電波の強い範囲内におきましては、
受像機の感度が少し落ちましてもこれは
受像機の調節の幅は相当ありますから、ただつまり廻すだけで以て感度は上りますからそのままで使えるわけです。ただサービス・エリヤの端のほうに行きますと、ここに感度差によ
つて六メガなら受かり七メガなら受からないという場合が起り得るということが理論的に出て来るわけです。併しながらこの場合でも全部の
受像機が必らず
値段が上るというわけではございませんで、私はこれは
聽聞会でも御
説明いたしましたが、
アメリカと同じ六メガの絵に相当発する精密度で以て我慢するならばちつとも
値段は上らないのです。併しその場合にやはり七メガを一ぱいに、フルに使
つて二五%いい精密度で以て受信をしようとする
受像機につきましては、若干感度が足りないだろう、こういう傾向になるわけであります。それで、併しながらこの
値段が上るということは先ほど申しましたように絵がよくなることの半面でありますから、これは止むを得ないと思います。而もこの
値段が上るというのは一体どれくらい上るかと申しますというと、これは極めて簡單でありまして、要するに
真空管が一個並びにそれに附随した回路を附加えればいい、増幅器の段数を
一つ殖やせばいいのであります。この増幅器の段数を
一つ増しますと各感度が十倍から二十倍ぐらい上りますので、これは上り過ぎるくらい上る、而もそれに対する
値段は幾らかと申しますと、これは材料費しか私
どものほうで計算できませんが、大体二%ぐらいしか上らない、この二%という数はこの前
聽聞会の資料として提出いたしてありまして印刷に
なつた分には入
つておりませんけれ
ども、
聽聞会の資料の三百二十四頁に
審理官が引用されておりますその数であります。このように
考えますと、七メガにした絵の価格の増加ということはまあ
考えなくていいのじやないか、又必要によ
つて一球増すといたしますと、感度が上り過ぎるほど上
つてしまいます。而も価格差は二%くらいのものであります。それによ
つて二五%の絵の質が向上する、こういう点からいたしますというと、
受像機の価格というものはそれほど問題になるということは
考えなくてもいいのじやないかという見解をとるわけです。
次に機械の、これも問題になりましたが、輸出入の問題でありますが、私
どものほうとしてほかの問題を
考えます一番
影響の大きいのは
受像機の輸入の問題であろうというふうに
考えますので、先ずそれについて申上げます。我々はメーカーではございませんが、先ほど申上げましたような普及性という、或いは聽取者の
立場という点から、こういう
受像機の問題についても相当愼重にいろいろ
考えておるわけですが、そういう点で
アメリカから
受像機が輸入されます場合に、七メガの場合には改造しなければならん。
従つて価格が高くなる、こういうこと、これは一応問題になると思います。併しながらこれも少し細かく御
説明申上げますというと、よくおわかりになると思うので、少し時間を割いて御
説明いたしたいのでありますが、先ず
アメリカの
受像機を輸入する場合に一体どこを改造しなければならんかということを
考えてみますと、大体三カ所改造する必要があります。その第一は
アメリカと
日本とでは、
テレビジヨンの
割当周波数が違いますから、どうしても最初の高
周波の部分、或いはオシレーター、ちよつと
技術的なあれになりますけれ
ども、そうい
つた二、三カ所のところを改造する、コイルの巻き替えをするというふうなことをしなければなりません。それからその次に、これは一番大きな問題でありますが、
アメリカでは最初申上げましたように、非同期の問題、
アメリカではシステムとしては同期式であります。これを非同期に直す、こういう必要があります。これはちよつと、余り詳しく調べたわけではありませんが、大体の話では、最近の非常に高いキヤビネツトあたりの高級品、
値段を申しますと四百ドルぐらいのものでありますと、恐らく大体
日本に持
つて来て非同期式のところで働かしても働くのではないかというふうな噂であります。併しながらやはりこの百五十ドル、二百五十ドル
程度の普及型の、つまりテーブル型式のものでありますと、現在
アメリカで売り出されております
受像機は同期式でありまして、
日本に持
つて来たならば非同期の型に変えませんというとうまく働かないのであります。
それからその第三といたしまして、最後に、七メガにすればそのために
アメリカの六メガ式のものを改造しなければならん。この三つの点があるわけです。このうちで第一の問題は、先ほど申しましたように、数カ所に手を入れて、コイルの巻き替えをするというふうなことで相当に手数を要します。手数と申しますか、経費を要するわけです。それから第二の非同期の問題、これは
技術的にも一番大問題でありまして、
アメリカでも現在なお研究されておるわけです。で私
どもの研究所で以て研究してもらいましたところによりますと、電源の変圧器が一番厄介であります。これは出来上
つた受像機でありますと、これを箱から出しましてちよつと遠いところへ離しますと、この非同期で運転できるわけです。つまり電源の変圧器から出る磁力線が邪魔をするわけです。で、そうすればいいのでありますが、
アメリカの
受像機を持
つて来て電源だけ離して横へ置くというわけには行きませんので、元のところへ納めておきますためには、どうしてもかなりいい材料の鉄を以てこの外をくるみましてシールドいたすわけです。従いまして、これは相当な経費がかかります。而も恰好も大きくなりますので、場合によ
つては箱を改造する、キヤビネフトを改造する、こんなことにでもなりますというと相当な
値段がかか
つて来る。この二つの問題は、これは六メガとか七メガとかには全然無関係に、
アメリカの
受像機を輸入いたしました場合に改造しなければならん点であります。これに対しまして、七メガにするためにどれだけの手数を要するかと申しますと、これは要するに中に入
つております増幅器の、いわゆる
周波数の幅を拡げればよろしいわけです。それにはその増幅器の幅を拡げる調整をするか、若しくはちよつとそれが厄介ならば小さい抵抗を幾つかくつつける、その
程度で幅を拡げることは可能であります。これは前二者に比べますと、確かに必要ではありますけれ
ども、
値段並びに手数の点じや遥かに軽微なものであります。これが特に取上げられて
アメリカの
受像機が輸入されるのを阻害するということは万々ないというふうに
考えております。勿論この
放送器機、或いはその他のいろいろな器械類につきましてもこの問題があると思いますが、これらはまあ簡單に
考えますと、恐らく註文すればどういう設計のものでもできるわけでありますから、いわゆる輸入輸出問題はそれほどそれ以外のものにつきましては、数が少ないから大した問題にもなるまい、こういうふうに
考えております。
それからもう
一つ聽聞会で問題になりましたから、ちよつとここで
意見をもう少し附加えたいのですが、大体この
アメリカ方式のもので七メガにすることは世界に例がないので、
ヨーロツパ方式でもなければ
アメリカ方式でもない、こういうことは成るべく避けるべきである、こういう御
意見もお伺しております。で、これに対しまして私
どものほうはまあ次のように
考えるわけですが、それは
標準方式という問題は各国とも事情が共通であるならば勿論これは同じにすることが理想たと思います。併しながら
テレビジヨンに関する限りは各国とも事情が違いますために、できるだけ努力して一致させようと協力はしておりますけれ
ども、未だになかなか各邦でも共にそれぞれ愼重な態度をと
つておるわけです。で、
日本の
テレビジヨンのこの
標準方式といたしましても、実は問題は、もつと大きなところに、例えば非同期の問題、こういう問題などは、これは帶城幅の問題、七メガ、六メガの問題とは比較にならんほど大きな問題だと思うのです。でそれにもかかわらずこうい
つた方式、この非同期の
方式につきましては別に格別の御
意見もなか
つたということは、これは
日本で五十サイクル、六十サイクルの二つの地域がある、そのために、現在
アメリカで行われていないが、而も送受両方において非常な大きな
負担があるということが
はつきりしておるこの非同期の
方式でも止むを得ず採用するということになるわけでありまして、このことから
考えましても、
標準方式というものが、それぞれの特殊事情を反映しておる。簡單に、機械的に何でもかんでも
アメリカのものに合せれば、或いは外国のものに合せればいいというものではないというふうに
考えておるわけです。而も七メガの問題は非常に特別な
方式のようにちよつと
考えられるかも知れませんけれ
ども、これは
アメリカと違うと申しましても差は極く僅かなんです。
技術の内容から、或いは原理的に申しますと、殆んど全部
アメリカのものと同じだと言
つても過言ではないぐらいでありまして、ただ
アメリカで今までの経緯からどうしても避けられなか
つた欠陥だけを
日本では避けたい、こういうふうなむしろ我々としてはこのほうが得策じやないかと思われるのであります。
それから今まで申上げましたことは、大体
白黒式という問題につきまして申上げたのでありますが、この問題は更に
カラー・
テレビジヨンヘの移行という点において、
白黒の場合よりより一層重点であると
考えます。而も前に申上げましたようにう
カラー・
テレビジヨンの実現というものが、必らずしも極めて遠い将来のことではなかろうという見通しもしておりますので、これを重視しておるわけであります。で
アメリカが六メガで以てや
つておりますのは、これはここでも
お話が出ましたように、これは
周波数
割当が増しまして、すでに多数の局に対してきま
つた周波数を與えておる、六メガの
周波数を與えておるということ、これを今更動かすことは困難であります。それから同時に、すでに非常にたくさんの
カラー・
テレビジヨンが始まろうとした時期には現在よりは少か
つたんですけれ
ども、すでに相当たくさんの
受像機が普及しておりまして、これを今更改造することは殆んど不可能である、こういうふうな二点からほかのことはさて措いても、先ずとにかく六メガでやらなければ
アメリカの
カラー・
テレビジヨンができないと、こういうことで六メガというのが先ず第一に條件としてきめられておるわけでありまして、
従つてこの
カラー・
テレビジヨンを六メガの中へ押込むということに非常に苦労しておるわけです。この点は最近頻々といろいろな雑誌にも出ております。事実又話が出ておりますように非常に改善されまして、その研究が進んでおるわけです。従いましてその苦心を、
アメリカで以て六メガの
カラー・
テレビジヨンを作り上げるに苦心をしております人々は、先ほ
どもお話が出ました
ドナルド・
フインクさんのごときも、これは私のほうの
技術研究所長の田辺君に来た
手紙にこういうふうに書いてありますが、これは
チヤンネルの幅が六メガ、七メガのいずれでも同数の
テレビジヨンの局が置けるという前提の下では、
自分としては七メガの
周波数が採用されるようにお勧めしたい。そう強いそうしなければならんというまでには言
つておりませんが、お勧めする。この附加された一メガ幅は水平方向の精密度を少からず増す。又併せてコンバーテイブル、即ち在来の
白黒受像機でこの
カラー・
テレビジヨンを
白黒の
テレビジヨンとして受像できる
方式です。このコンバーテイブルの
カラー・
テレビジヨンが開始される場合には
カラーのサブ・キヤリアー、サブ・キヤリアーと言いますのは
カラーを送るために余分に入
つておる波でありますがサブ・キヤリアーの電送を改善するであろう。こういうふうな
意味であります。なお田辺君がプリンストンのRCAの研究所を訪問して
意見を交換いたしました折にも、そこのこれは
カラー・
テレビジヨンのほうの最高責任者でありますが、G・H・ブラウンという人が、これは個人的にデイスカツシヨンをしたわけでありますが、今新しく
テレビジヨンの
標準方式を作るということについては、
自分としては二つ
意見を持
つておる。そのうち
一つは、これはバンド幅に関係がございませんので省略いたしますが、その
一つはやはり七メガのほうがいいじやないかということを言
つておりましたのでございます。勿論
アメリカは広いですから、その中には
立場の上から六メガ説の人も勿論あると思いますけれ
ども、まあ相当今まで
テレビジヨンの発展に苦労したかたがたにはこういう
意見のかだがかなりあるように思
つております。
カラー・
テレビジヨンの
方式といたしましては、御
承知のようにCBSの
方式とRCAを中心としたNTSCの両方の方法がございますが、これはCBSの
方式は七メガを採用いたしますと、勿論これは殆んどそれに比例して絵がよくなります。同時に
真空管の数も減ります。併し我々といいますか、
技術者の側の
意見といたしましては、この回転板、板を廻す
方式はどうも余り歓迎しないのでありまして何とかもつと研究して、是非電子式を完成したい、それを実用したい、こういうふうに
考えておるわけです。又同時にこのCBSの
方式では相当無理がありますために、七メガにいたしましても勿論絵がよくなりますが、或る限界があるということは
考えられます。それからNTSC
方式のほうで七メガを採用いたしました場合に結局先ほどの
フインクさんのあれにもありますが、一メガというものが非常に有効に使えるわけです。この一メガをどういうふうに使うかという点が問題ですが、これは
一つの方向としては回路を簡單化するということはさておいて、絵をよくするという方向に使うやり方と、それから絵はまあ今の
程度でいいからそれを一メガをフルに活用して、何とか回路をできるだけ簡單にしよう。こういう方法があるわけです。併し勿論いろいろ研究しなければならないことでありますけれ
ども、私といたしましてはまあ
日本の実情から申しましても、先ず以て価格のほうがやはりより重要に
考えたい。こう
考えております。これにつきまして我々のほうの研究所で調べて見ました結果によりましても、大体回路の構成によ
つていろいろありますが、十五乃至二十球くらいは省略できるだろう。
従つてこれは
値段にすれば三、四万円ぐらいに該当いたしますが、こういうふうな
調査をいたしております。併しながらこれが、その
技術が発達しますというと、その六メガの場合でも球の数が減る、こういうことは確かに
ドナルド・
フインクさんが言
つておられます。大体半分、三十二が十六ぐらいに減るだろう、追加される分がです。併しこれは私の
考えではそういう
技術が発達すればやはり六メガでも七メガでも両方に応用できるのでありまして、六メガの場合には
技術の発達がある、七メガの場合は
技術の発達がないということは言えませんから、やはりこのいわゆる絶対値の差額は別かも知れませんけれ
ども、比率はやはり同じように六メガのほうがいつまで経
つても価格が低いのじやないか、こういうふうに
考えるのです。
それからなお
フインクさんの
論文はまだどういう方法によ
つて減らすかということは明らかにされておりませんで、これ又推定でございます。勿論
技術者といたしましては、あらゆる場合に回路を簡單にする、球の数を減らす、
値段を下げることに常に努力しておりますから、勿論今後とも努力して或いはその半分ぐらいに減ることも近き将来にあるかも知れませんが、これ又今のところは具体的には示されていないように私は思
つております。それで同時にその現在の開きはやはりこの比率といたしましては将来とも続くのじやないかと
考えます。この
受像機の価格の問題は非常に大事でありまして、現在のラジオのスーパーの場合にいたしましても、いろいろ研究機関を設けてできるだけ安くていいものを作ろうというふうな目的で進められておるわけです。
カラー・
テレビジヨンにつきましても、この価格がこれだけ違うということがあれば相当重視されなければならない、こういうふうに
考えております。これはこういうふうな点から
カラー・
テレビジヨンヘの移行ということに対しましても、価格が七メガのほうが安いということから是非七メガにして頂きたいとこういうことであります。
なおこの
アメリカにおきます
カラー・
テレビジヨンの研究というものは、本来のつまり
カラー・
テレビジヨンの研究、まあ例えばイメージ・オーシコンの問題、トリ
カラー・チユーブの問題とか、これはまあバンドに関係のない本来の
テレビジヨンの研究と、それからその
テレビジヨンのシグナルを如何にして六メガの中に押込もうかと、こういう研究と大体傾向が二つあるわけなんです。前者に対する、つまり
テレビジヨン本来の研究というものは、これはもう七メガにしようが、幾らにいたしましようが、全部
我が国に取入れ活用、利用できる部面であります。ところがこの現在におきまして
アメリカで行われておる研究の中で、このあとの、何とか六メガに押込みたい、それにはどうしたらいいかという研究が、これがかなり大きな部面を占めております。勿論この二つの問題は関連しておりますから、これはこつちでこれはこつちというふうに言えないところもありますけれ
ども、少くとも七メガにいたしますというと、今から始めるならばしなくてもいい研究というものがかなりあるわけです。併しながらこの六メガに押込むという研究におきましても、勿論その研究の成果は非常に貴重なものでありまして、直接間接に我々の今後の研究に役に立つことはこれはもう疑問がありません。ただ具体的な例えば特許の問題とい
つたような問題になりますというと、七メガにしておきますというと、わざわざ
アメリカのものを使わなくても済むという部面がかなりあるというふうに
考えております。
私
どもといたしましては、今まで申上げましたように、この七メガを希望するということはこれは主として受信機の普及性とか、価格とか、画質という点からこれを希望するわけでありますが、これはたまたま結果から申しますというと、
技術的には極めて比較いたしましてやさしい方向になるわけであります。七メガにするために
日本で特に
アメリカにはないようなものを発明したり何かしなきやならんということは先ず以てそうたくさんはなかろうと思うのであります。で、これは
八木先生のあれではありませんけれ
ども、我々は必ずしも安易な
技術を選ぶということが初めから目的ではございませんで、今申しましたように、ほかの目的からたまたまそうなるのでありますが、併しながらそういう結果になるものをまあ何と申しますか、わざわざ
アメリカの
通りにして特にむずかしく、
値段も高くするということは、そういう必要はないのじやないかとこういうふうに
考えております。まあこれが私
どもの
白黒の場合、並びに
カラー・
テレビジヨンの場合を総合的に
考えて七メガを希望する次第でありますが、併しこれは七メガにすることによりまして六メガよりも
一つの
チヤンネル当りに一メガずつ多くの幅を必要とすることはこれは確かであります。実は七メガのほうがどうしてもこつちがかなり惡いのだという点は実はいろいろ検討しても余りないと思いますけれ
ども、この
周波数
割当の問題だけはこれは確かに非常に強い弱点であるということは認めざるを得ないのであります。併しこの問題につきましては、実は
アメリカでも御
承知の
通り低いほうの
周波数のほうで十二の
チヤンネルを持
つております。又今後恐らく千にも二千にも
放送局が殖えるのじやないかというような見通しがあるわけであります。それにもかかわらず相当活溌な、無線通信が一般に非常に活溌に運用されておるわけであります。それに対しまして、
日本では
テレビジヨン用に一応
割当てられました
チヤンネルは五つであります。又これは
日本を地域的に
考えまして局数が何百にもなるということはちよつと
考えられないわけであります。従いまして、この一メガというものも
アメリカほどの大きな
影響はなかろうというふうに
考えるのでありまして、
日本としては、
日本の国として非常に大事な
テレビジヨンに対して一メガの余裕をどうしても認められないということは
アメリカの事情と比べてちよつと私
どもに理解できないわけであります。一般的に申上げまして
周波数のスペクトラムをできるだけ節約するということはこれは
技術者の責任であるということは申すまでもありません。又これは
一つの
技術の動向であります。但しその点につきまして、
放送というものはちよつと特殊でありまして、非常に多くの大衆を相手とするという点でこれだけは特別に
考えて頂きたいと思うのであります。要するにバランスの問題ではありましようけれ
ども、
放送というものに対しましては、受信機、
受像機の
値段というものはこれを犠牲にしてまで
チヤンネルを無理に押込むということはまあこれは余ほど愼重に
考えなければならんという気がいたします。一般的にこの
周波数を縮めて行くということ、そういうふうに節約して行くというように
技術が進むということは我々
技術者としても最も望むところでありますが、例えば固定通信とかそうい
つた放送でない部面ならば、いわゆるそれぞれの価格というものは、それほど大きな国家的な
影響を持つものではありませんから、そういうふうにせいぜい進歩を図ることは当然その期待もできますし、見通しもあると思います。で、この
テレビジヨンに関する限りは、而もそれを理想的に言えばもつと欲しいところでありますが、一メガだけという点で何とかお許し願いたいとこう思うわけであります。こういうふうな点から申しまして、
日本で
テレビジヨンを始めると決心いたしました以上は、その
重要性を
考えますというと、
周波数
割当上
テレビジヨンに一メガを割くということは絶対にできないとはどうも
考えられません。而もほかの点で七メガより有利であるということも特別重要な点ではなかろうと思うのであります。而も現に一応七メガで五つの
チヤンネルが
割当られておる現在の状況におきまして、この七メガを希望したわけでありまして、そういう
意味で
聽聞会におきましても七メガを主張いたしましたし、現在でも七メガのほうがやはりいいというふうに確信しておる次第であります。