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政府委員(
中島征帆君) この
鉱害賠償制度の根本問題並びに将来に対する
考え方の問題でございますが、
結論的に申しまして、現在あります
特別鉱害復旧法と、今度提出されておりますこの
一般鉱害復旧法案と、これに
鉱業法及び
鉱山保安法を併せまして、現在の
鉱業法体系で、
日本の
鉱害問題が完全に且つ円滑に処理されて行くというふうにはこれは申しかねると思います。
従つてこの問題の
解決のためには、相当な時間と忍耐をかけて、かなり慎重に考慮しなければならん問題が多々あると思うのでありますが、それに対する私の個人的な
考え方といたしましては、第一、問題がどこにあるかということを先ず見究めなければならんと思うのでありますが、特別に
日本の
鉱害問題に関する
特殊性と申しますのは、ほかの国に比べまして非常に人家が密集しており、且つ田畑にしましても水田が多い、これが非常な
鉱害問題を複雑ならしめておる特長であります。こういうふうな非常に悪い
條件の下に強られております
石炭鉱業というものと、それからそれによ
つて被害をこうむる
地上の各物件というものとの
利害関係の
調整をどうするかという点につきましては、
我が国の
資源の
状況、或いは
一般の
住居状態、或いは
農業経営の
状況、
食糧確保の問題、こういうふうな
我が国固有のそれぞれの
條件に応じたこれらの問題を十分
研究いたしまして、それと
地下資源の
採掘というものとの
関係を考慮して
結論を出さなければならんわけでありますが、そういうふうな
特殊性は十分考慮いたしますといたしまして、先ず
スタートになりますのは、それではその両方の対立の
利害がどこで
調整されるか、どこで又対立するか、こういう点であります。その点をはつきりさせるためには、
地下の
採掘行為というものが上にどういうふうな影響を及ぼすかということが明確につかめない限りは、この
利害がどういうふうに対立しておるか、或いはどういうふうに
調整し得るかという
結論も出ないわけでありまして、原因と結果の
関係というものを明確につかむということが、これは必要不可欠の
前提であります。これは一応理論的には、
地下何尺の所で何メーターの高さを掘れば、上にどの
程度の陥落ができるということは
一般的に言われておりますけれ
ども、それが地層の
状態その他いろいろの四国の
状況に応じて、どの
程度正確に言い現わせるかということにつきましては、まだ
日本ではそういうような
データーが全然ないのであります。一番
鉱害問題の深刻な
ドイツやイギリスにおきましては、先ず測量問題を
鉱害対策の
スタートにいたしまして、
地下の
採掘と地表の変動というものとの
因果関係、その
計数を精密につかんでおります。
従つてどういう
條件の下にどういうふうな
採掘をすれば、そこには、
地上にはこういう弊害が起きるということが出て来ておりまして、
従つて石炭の
採掘というものと、それから、それから起ると予想せられる
鉱害というものも、そこで或る
程度の数字的な予想がつくわけでありまするが、そういうことをして、初めて
鉱害問題に対する正確な設計ができるわけであります。遺憾ながら
我が国では、そういうふうな
制度がありません。そういうことをやることが議術的に不可能かと申しますと、決してそれほどむずかしいものではないものでありまして、できるわけでありますけれ
ども、ただそういうふうな
測量制度というようなものが、かなり長い時間をかけて、相当長期に
亘つて、広い
範囲で取材をしなければ
一定の
結論的な
計数が出て来ないのでありまするが、
鉱山測量制度に関しまする
日本の歴史というものが殆んどまだ若いというよりも、なきに等しいような
現況でありますので、それから先ず立て直して
行つて、初めて根本的な
鉱害対策というものが緒につくと思うのであります。ですからそういう点をできるだけ早く固めまして、科学的な
鉱害問題に対するいろいろな
計数をつかむというふうなところへ持
つて行かなければならんわけでありますが、それには勿論今すぐここ一、二年でそういうふうな
結論が出るわけでもありませんので、その
結論を待
つて根本的な
対策を立てるということでは、これは現在当面しております
鉱害をそのまま何年か放擲することになりますので許されない、こういう
状況にあるわけであります。そこでこの
特別鉱害法にいたしましても、現在のこの
鉱害復旧法にいたしましても、これは一応その
スタートで
説明されております
通りに、
臨時に
目前の
鉱害を片付けるというのが第一の問題でありますが、取りあえずまあ不十分な
対策ではありますけれ
ども、できるだけ速かに累積おりしてます
鉱害を処理いたしまして、
日本の
鉱山経営というものを常態に戻すということに
努力しなければならん。又異常に不安にな
つております
炭鉱地帯の住民の心というものをそこで安定せなければならんということ、こういう御
趣旨で
臨時的なものとして扱われておりますが、こういうことをいたしまして、取りあえず
目前の
鉱害を何らかできるだけ
解決の
方法に導くという
努力をしつつ、先ほど申しましたような根本的な問題につきましても準備と
研究を進めることに
よ
つて、その
経過において、どのくらい時間がかかるかわかりませんが、その
経過において結局
鉱害法の問題、
保安法の問題、或いは
鉱害賠償の問題につきまして、もつと具体的な
結論にだんだん近付くことができるのではないかと、こういうふうに
考えておるわけであります。
従つて現在から
地上と
地下との
調整をどの
方向に持
つて行くべきかという目標は決して立ち得ないのでありまして、何かいま一層計画をするには、
結論を導くためには
努力はしなければならん。その
努力をするためにはこういう問題があるというところまでは私
どもも大体感じておりますけれ
ども、それではその
結論がどうなるかということは、これはもうその過程においておのずから出て来る。
従つて現在
鉱業法でとられておる
金銭賠償の
方法が、
差当り我々の
気持につきましては、必ずしも満足すべきものではありませんけれ
ども、或いはいろいろ根本的な
資料等を
研究した結果におきましては、
日本の
現状としてはやはりこれ以上はでき得ないということに
結論がならんとも限りませんし、或いは又
目前の
鉱害が片付いてしま
つて、
鉱業というものが
一般的な正常な
経営状態に戻るということになると、すべての
鉱害が、これは
鉱業権者の
責任で完全に片付き得られるというふうな
結論になるかも知れません。又片付くという
内容につきましても、すべてこれはもう
原状回復主義でや
つて行く、それで十分できるのだという
結論になるかも知れません。その辺のところは今後根本的な
データーから固めて行くことによ
つて正確な
結論は出る。
従つてこれにつきましては、今後かなりの年数をかけて、十分に慎重に
考えて、熱心に
研究すべきもので、これにつきましては、やはり国としても、その
結論を出すためにはできるだけの
努力をしなければならん。これが私の
鉱害問題に対する大体
考え方であります。