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1952-07-05 第13回国会 参議院 通商産業委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月五日(土曜日)    午前十一時三十七分開会   —————————————   委員の異動 七月四日委員泉山三六君及び清澤俊英辞任につき、その補欠として古池信 三君及び栗山良夫君を議長において指 名した。 同日委員栗山良夫辞任につき、その 補欠として吉田法晴君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     竹中 七郎君    理事      結城 安次君    委員            古池 信三君            山本 米治君            加藤 正人君            吉田 法晴君            島   清君            境野 清雄君            西田 隆男君            石川 清一君   政府委員    法務府法制意見    第三局長    西村健次郎君    通商産業政務次    官       本間 俊一君    資源庁炭政局長 中島 征帆君    資源庁開発鉱害    部鉱害第一課長    兼第二課長   大山  隆君   事務局側    常任委員会専門    員       林  誠一君    常任委員会専門    員       山本友太郎君    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君  説明員    農林省農地局管    理部長     谷垣 專一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○臨時石炭鉱害復旧法案   —————————————
  2. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 只今より通商産業委員会を開会いたします。  先ず臨時石炭鉱害復旧法案を議題といたします。委員の各位の御質問を願います。
  3. 石川清一

    石川清一君 相当時間この法律について御審議があつたように聞いていますが、不幸にして出席でき得なかつたので、特に議運に出ておりまして出ていなかつたのですでに御質問があつたと存じますけれども、重複する点がありましても御答弁を願いたいと思います。この法律目的とするところは第一条の私が申すまでもなく「国土の有効な利用及び保金並びに民生の安定」ということがありまして、「あわせて石炭鉱業及び亜炭鉱業の健全な発達」云々と出されておりますが、究極においてこの鉱害復旧負担者は誰であるか、このことがこの法律の中に臨時法であるために流れておりませんようでありますが、究極において誰が負担をするのか、誰が負担をしなければならんのかということと、この法律が恒久的な法案になるためには、どういうところを改正したらいいかという総括的な点について、政府側の御意見を承わりとうございます。
  4. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 石炭鉱害復旧責任者鉱業法上当然鉱業権者でありまして、その原則はこの法律でも変えていないのであります。この法律に基きますと、国の補助或いは地方団体補助ということが考えられておりますが、これは鉱業法上の鉱業権者義務というものを十分に果した上でなお且つ農地造成その他の見地から復旧工事が必要だ、その復旧工事費用鉱業法上の負担以上になる場合にその差額を国で埋める、こういう趣旨で国の補助が出されておりまして、従つて究極における鉱害賠償責任者鉱業権者であるということには間違いないのであります。ただ復旧工事ということになりますというと、この法律によつて改めて鉱害復旧制度をとつておりまして、鉱業法上は金銭賠償原則でありますけれども、原状復旧主義をこの法律原則とつたということのために、鉱業権者としては復旧工事費の一部を負担して、他の部分を国その他で負担して頂く。こういうふうなことになつておりまして、従つてその点が、究極負担者ということについて明確を欠くようでありますけれども、本来的な復旧義務者は、賠償義務者鉱業権者であります。これを二つに分けまして、農地農地以外の公共施設と、こう分けますというと、農地母外公共施設につきましては、初めに復旧をいたしますときに、国の補償考えられておりますけれども、その補償は将来返還させるという趣旨の規定がございます。従つて農地以外の復旧工事につきましては、全部が鉱業権者負担だということが、ここで法律上明確になつて来る。それから農地に関しましては、毎年、年々減収補償をやつておりますが、その減収補償分をまとめて前取りしまして、それに対しまして復旧費と比べて不足する分を国が負担するということになつておりますので、国は飽くまで二次的にここへ出て来るという趣旨でありまして、従つて本来の復旧義務賠償義務というものを完全に鉱業権者に果させました上で、なお且つ国土計画或いは農地造成という意味復旧が必要な場合に、この条文で費用を国が負担する、こういう趣旨でございます。  それから、恒久法としてこれを改正する問題でございますが、この法律は一応前提としては現在の鉱業法を先ず第一原則に置いております。鉱業法原則を壊さないで、それを補完しつつ、原状復旧するということがこの法律狙いでありまして、従つてこの限度における制度を恒久化するということは、これは形式的にはこの法律の施行の期限十年間というものを、更に延長するなり、或いは撤廃すればそれでいいわけであります。併し、原状回復主義というものを完全に本則とするということになりますというと鉱業法賠償原則そのものを変えて行くのが本筋でありまして、従つて第一にこの法律の狙つておりますのは、現在累積しております鉱害を処理するための法律でありますが、将来もこれから起る大きい鉱害につきましても、すべてこういうふうな趣旨復旧工事を行うということになりますというと、やはり鉱業法原則に戻つて、もう一度金銭償主義か、或いは原状回復主義かということを検討の上で、鉱業法から改正するのが至当であろうと、こういううに考えております。
  5. 石川清一

    石川清一君 その場合に問題になるのは、被害者意思或いはこの法律の中に盛られておりますところの被害者の同意ということになると思いますが、現在の金銭賠償の中ではいわゆる特に農業経営という経営の実態の上立つというよりも、経営というところの企業としてその採算制の上に立つた金銭賠償が行われておつたと思う。金銭賠償の場合には、将来いろいろな問題が起きました場合にも、金銭士払額増加云々ということがプラスという形でとられると思うのでありますが、原状復帰という形で行きました場合に、更に一応復帰した土地に新たな天災その他の条件が起きまして、前以上の被害を受けた場合、その場合には根本的な対策を立て直さなければならん、こういうようなことが起きて参ると存じます。このことは現在一切の鉱業の、石灰の採掘が中止しておる場合にはそれで結構でありますが、更に新らしい被害が続々と起きて来る場合には、一応復帰された、回復された土地が、前以上の被害を、即ち所有者の或いは土地を持つておる権利者意思にかかわらず、故意にかかわらず、天災その他が起きた場合のことを考えますというと、現在の法では非常にそれが、土地所有者被害者に不利益でないか、こういう点が想像されますが、この法律はどこまでも鉱業権者究極において負担をするという原則に立てば、相当の疑義があると思うのでありますが、この点については如何ですか。    〔委員長退席理事結城安次委員長席に着く〕
  6. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 只今の点につきましては問題が二点あると思いますが、第一は現在復旧工事をいたしましても、その後に更に地下におきましては、なお石炭鉱業が確保されておりますので、陥没等鉱害が生ずるという場合であります。この場合は勿論当然に鉱業権者責任でありまして、これは新たなる鉱害であります。又当然近い将来において、そういう新たなる鉱害が予想されます場合には、現在ある鉱害は安定しておらないという趣旨で、早急には復旧工事にはかからないわけであります。それが安定して初めて復旧工事をするわけでありますから、従つて新らしい鉱害が生ずるという場合には、現在の工事が一応安定しておる。鉱害が安定しておるという前提の下に行われまして、その後に新らしい鉱害が起りました場合には、更に又新らしい問題としまして、賠償なわ、或いは復旧なりが当然鉱業権者責任において問題となる。それから現在まだ安定していない場合には、安定するまで待つというのがこの法律による復旧工事やり方趣旨であります。  それから第二の点は一応鉱害は安定しておる。そこで復旧をいたしますが、工事費用関係、或いは工事効果というようなことを考えまして、従来ありました水準まで、例えば地盛り等をいたさないで、途中で止める。それを補完するためにポンプ等を備付けて、大体土地効用としては従来通りのものができるという工事をするわけであります。そういう場合におきまして、天災等の場合におきまして、周り土地と比べて、その土地がもともと復旧工事そのものが高さが低かつたために冠水をするというようなこともこれは想像されるわけでありまして、その場合の被害というものは、全然鉱害を受けない土地に比べてやはり災害の期間が長いわけでありますから、それだけ結果は鉱害に基く原因によつて大きな損害が残るということになる。そういう場合の被害について、鉱業権者責任を持たないかと、こういう問題でありますが、これにつきましては、現在ここに出されております衆議院の修正案に基きまして、そういう場合におきましては、国がそれに対しまして特別の助成をすることができる、こういうことになつております。従つてそういうような、天災等に基いてこの鉱害に原因する減収臨時にあつた場合には、国がそれを補助するというふうな仕組になつております。で、この場合におきまして、鉱業権者としては、それでは全然これに対して責任がないかということになるわけでありますが、これはこの法律上は責任はないことになつております。その理由は、鉱業権者は、この復旧工事に対しまして、その農地が受けます減収部分を資本的に換算いたしまして、金額を一時に納めるということになりまして、従つてその鉱害に対しまする金銭賠償額の全額を一応前払いしておるわけであります、従つて鉱業法上の賠償義務ということは、これは完納しておると見ざるを得ないのでありますので、従つてそういう場合においては、若しその工事やり方が不十分なために天然災害等に基いて、なお且つ鉱害に基いて減収が起つた場合には、これはもうすでに鉱業権者としては責任がない、むしろそういう工事をした国自体にあるというような考え方をせざるを得ないのでありまして、そういう意味におきまして、鉱業権者一定納付金を納めれば、すでにその鉱害に対しまする責任は全部なくなる、あと事業団工事を施行し、その施行した工事の結果につきまして、なお不十分の点につきましては事業団補償金を払う、更に天然災害等の場合に、特別の損害があつた場合には国がそれを補償する、こういう三段構えにおきまして、そこで全部の損害が完全に填補されるという仕組になるわけでございます。
  7. 石川清一

    石川清一君 この法律によりますと、事業団復旧工事に当るということが明白になつておりますが、今のような天然災害というものが初めからこれは予定されるのでありまして、事前にわかつておるのでありまして、その天然災害ということがわかつておりながら、現にそういうことがあるということを知つておりながら、一つの限界を引くというようなことはありませんか。
  8. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 毎年起きますようないわゆる風水害等におきましては、これは当然その程度天然災害には耐え得る程度工事をするわけであります。従つて例えば先ほどの例によりますと、工事補備といたしましてポンプ装置をつける、そのポンプの能力というものは通常の出水であれば十分に排水ができるという工事をするのでありますが、何年に一回か参りますような大きな災害につきましては、これは処理できない場合もあります。それを予想いたしまして不必要に大きな施設をするということは、これは不経済でありますので、大体普通の日本の現状におきまして予想されますような通常災害につきましては、十分耐え得るだけの工事をする、こういうことになつております。
  9. 石川清一

    石川清一君 その場合に問題になると思われるのは、いわゆる被害者意思の問題、これが臨時的な天災と見るか、恒常的な、通常起り得る被害天災と見るかということが問題になると思いますが、この事業団議決機関である評議員会の中には、被害者という自由な個人をそのまま通産大臣が任命せずに、都道府県知事という機関を一回通じて、その推薦によつて決定をする、こういう二段構えになつておるようでありますが、この二段構えにいたしましたことが、究極的においては土木工事その他の実権を握つておる府県知事というような、一方的な意思が出るのじやないかと思いますが、こういう点についてはどういうようなお考えの上にきめられましたか。
  10. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 被害者の選定を県知事にいたしましたのは、これは通産大臣評議員を任命いたしますので、市町村長或いは鉱業権者というものは大体わかりますけれども、被害者大衆というものは、やはり現地におります公共団体責任者が一番的確に責任者というものを判断し得る、こういうような考え方からいたしまして、県知事を間に立てたわけであります。それから初めにお話のありましたような、今の天然災害であるかどうかという認定につきましては、これは評議員云でやるのではあリませんで、むしろ農林省でやる。これは比較的簡單にわかる場合が多いのでありまして、例えば先ほどの例で申しますと、従来鉱害をこうむらない地面に比べて五尺陥没した、それを三尺上げ、それにポンプを据える、こういう場合におきまして、異常な災害によりまして全部が水浸しになりますと、これは当然鉱害を受けていないもともとの高さにあるものは、例えば一週間で水が引く、ところが三尺上げたために、以前の高さが二尺低いところの土地につきましては、それが更に一週間なり十日なり水が引けるのが延びるということになりまして、結局その工事をやつた程度というものと、それから鉱害関係ない土地というものと比べますと、これは成るほど鉱害復旧工事やり方によつてこういう結果が生じたのだということは判断がつくわけであります。その場合に、それではそれだけ冠水したおかげでどれだけ減収になるかという、こういう算定は非常にむずかしいことになるのでありますが、単純に周り農地収穫と、それからその鉱害地収穫というものを比較して、その差額だけということになり得ない場合が起るわけであります。それはその農民自体、実際のやり方、その工事やり方、その地味、こういうものがいろいろ関連いたしますので、外的な条件のほかに更に農民の勤惰というものが入りますから、この点の認定は甚だむずかしくなりますが、そこは一番の専門的な機構である農林省の系統においてそれを認定してもらう、こういうようなことになつておりますので、大体公平な判定がそこでつけられるというふうに考えております。
  11. 石川清一

    石川清一君 今のお話を聞いておりますと、原状復帰という、特に原状復帰という土地の問題は土地生産力の問題であつて生産力が、妥当性を持つておる周囲の条件というものはこれは問題ではないのだ、とにかく土地生産力が元へ上参さえすれば、その地表が五尺下つても、一尺でも或いはもつと下でもかまわんのだというように聞えますが、そういうようなお考えに立つておるのですか。
  12. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 工事目的効用回復ということが狙いでありまして、従つて言われます通り生産力回復すれば結局工事目的は達するのだ、こういうような考え方をとつております。
  13. 石川清一

    石川清一君 じや生産力というものは、一定土地の分析が基礎であつて土地生産力回復永久性恒久性という、いわゆる従来の条件を克服するところの恒久性永続性という、農業なら農業永遠性というよ女なことは全然お考えにならないのですか。
  14. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 勿論回復されて生産力永久に続くというふうな趣旨工事を行なつております。
  15. 石川清一

    石川清一君 その場合に鉱業権者はこれはもうこれでいいのだ、こういうような意思があつたに対して、被害を受けた農民が、そうでないのだ、これはどこまでも、例をとりますと、さつきのお話のように、五尺下つたところで、三尺ではこれは恒久的な生産力維持ができない、これはどこまでも五尺なら五尺上げなかつたら、土地回復の恒久的なものは保障できない、我我は同意しがたいのだ、こういうような意思の対立がはつきり出た場合には、この法律はどうしますか。
  16. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) その工事内容をどういうふうにするかというと、これは最終的には農林大臣認可決定いたしますので、従つて鉱業権者意思に押されることもなければ、被害者希望通りに動くということもないわけでありまして、その中間に立つて最も公平に判断をし得る農林大臣が、この工事内容をきめ、更にどの程度その工事の結果によつて回復したかという、そういう判定もするわけであります。
  17. 石川清一

    石川清一君 それではこの場合に、この法律によりまして、鉱害復旧究極責任者鉱業権者だ、そうして被害を受ける農地農業経営しておる農民土地の恒久的な復旧は、この条章のどこで、ここによつて、どこの条項により確約されているというか、あればお示し願いたいと思います。
  18. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 一番明確な点は、第七十三条でありますが、「農林大臣は、第五十六条第一項前段の認可があつた実施計画による農地又は農業用施設復旧目的とする復旧工事が完了したときは、二月以内に、その農地又は農業用施設が本来有していた効用回復されたかどうかについて検査を行わなければならない。」こういうことになつております。農林大臣検査を行いまして、それでそのあとの項にありますように、それが十分まだ回復していないという場合には補助金を支払うというような制度になつておりまして、従つて農地が果して効用回復したかどうかという認定は、農林大臣にあり、それから更にその不足分についての第一次的の損失補償義務事業団が負う、こういうことになつて参ります。
  19. 石川清一

    石川清一君 農林省から誰かお見えになつておりますか。
  20. 結城安次

  21. 石川清一

    石川清一君 それでは農林省管理部長さんにお伺いしますが、私の今までいろいろ聞いた範囲内では、この条項によつて終局的にきめるのは農林大臣であつて土地回復、その効用永続性ということについて、農林省究極的に検査を行うというように言つておりますが、農林省はこの事業団土地回復に対して、最初かち協力をするのですか。それとも究極的においては、最後において検査をしまして、それで事を終りとするのですからその農林省最後検査決定したことが、将来いろいろな問題がきた場合には、農林省はどの程度責任を負うのですか、負わされるのですか。その点をお伺いいたします。
  22. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) その法律案によりますと、最初基本計画が立てられるわけになります。これは事業団が立てまして、最初通産大臣のほうで御認可になる。そこでその基本計画に従いまして、実際の工事に必要な実施計画が、事業を実施いたしまする者から農林大臣宛に提出されます。これはかなり具体的な精密な計画になろうと思います。この実施計画につきましては、農林大臣がこれを認可をいたしまして、その内容について妥当であると認めまして認可をする、或いは又訂正を命ずると、こういうことになろうかと思います。で、この農林大臣が、従いまして認可いたしました実施計画に基きまして、事業を担当いたしております者がそれぞれ事業工事をなすわけであります。その工事が終りました場合に、先ほどお話がありました第七十三条の条項によりまして、    〔理事結城安次退席委員長着席工事がうまくやれておるか、設計通りやれておるかという検査をいたすわけであります。これは一種の竣工検査であろうかと思います。そのときに農林大臣といたしましては、当初から実施計画の際から、大体この工事が行われればどの程度効用回復されるかという目度を取りまして実施計画が謳われておるわけでありまして、それに基いて行われておるその復旧工事が、その施計通りに行われておるかどうかということをここで認定いたします。又そのときに大体の見当といたしましての、どの程度効用回復されるかどうかということも従つて認定ができるわけであります。但しこれはこの農地復旧が完全にどの程度効用回復されたかという認定の問題はこれはなかなか困難な問題であります。例えば陥落した土地についてほかから表土を持つて参りまして、そうして埋立をする、或いは覆土をするというような場合におきましても、その土地が落着いて来まするまでは、本来どの程度効用回復されるかということの見当は、或る程度の時間がかかる。そのために工事が完了いたしました後三年間の余裕をおきまして、その三年間の問においてもう一回検査要求がありました場合に、どの程度効用回復されたかということの認定農林大臣がいたすわけであります。大体三年程度の時間がかかつておりまするならば、当初の設計いたしました工事がどの程度の落着きを持ち、どの程度効用回復をいたして来るかということの見当がほぼついて参ると思います。そこでもう一回これは従来の効用を十分回復しておる、或いは八〇%しか回復していないというような認定を下す。十分に効用回復されていない場合、例えば八割しか効用回復されていないという認定をいたしました場合におきましては、その十分回復されていないという二割分につきましての補償金事業団のほうから被害者のほうに支払う、こういう恰好に相成るわけであります。そういうようなわけで農林大臣としましては、工事実施計画の当初から問題の筋道といたしましてはタツチいたしておる、こういうことになると思います。
  23. 石川清一

    石川清一君 只今お話を聞きますというと、最後的には金銭賠償に頼らざるを得ない、こういうように承わりましたが、その通りですか。
  24. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは工事やり方にならうかと思います。例えばこの陥没いたしましたところに土を盛りまして、前と同じような盛土をするというような工事方式をとりました場合には、これは原状回復になる公算が非常に大きいと思います。併しながら冠水をいたしておりまして、工事方式として排水をやる、排水をやつて行くような場合におきましては、これも所によつて違うかと思いますが、水深が三メートルのところ、或いは二メートルのところ、一メートルのところ、いろいろあるかと思います。その場合に三メートルの水深のあるところについては工事の施工上どうしても完全な排水ができない、と申しますのは、一メートルしか水深のないところは今度は乾き過ぎるというような問題が起きて来るかと思います。従いましてそういうような形式の回復工事をいたしました場合におきましては、止むを得ず原状回復或いは効用回復が完全に行かない地帯ができて参ると思います。そこの問題の地区につきましては、これは先ほど申しましたような認定をいたしまして、そうして十分に効用回復されていない部分につきましては金銭賠償ということが起きて来る、かように考えておるのであります。従いまして工事やり方によりましては、原状回復公算が非常に大きくなる場合があるし、維持管理の必要を生ずるような排水工事の場合には、殊に大面積に亙りますような場合には、その或る部分については金銭賠償が起きて来る、かようなことになります。
  25. 石川清一

    石川清一君 原状回復の困難な場所に対して排水或いはポンプで以てその効用維持するためにとるという措置の合理性は一応わかります。併しながら地表が前のところよりも二尺或いは三尺下つたという、恒久的な地表の変化というものに対しては、普通の土地における排水よりも或いは幅を広くしなければなりません。そういう点に対しては恒久的なそういう措置が天災に対してもとられておらなければならないし、又ポンプを用いるにしてもポンプには機動性、これを持たなければ到底いわゆる地表下つたままの天災に応ずるものがないとしたならば、それは今のお話は論理的に合わないと思う。一応管理の方式の中に排水或いはポンプを置くという私は妥当性は了承します。併しながらそれはやはり二尺下つているという場合に起きて来る天災に対して機動性を私は持つておらなければならんと思う。機動性があるということがどこかここに出ておりますか。
  26. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは工事やり方の問題になつて参るかと思います。例えばポンプを置きます場合に、それの排水能力の問題、これは一時間に何ミリの雨が降る、どのくらい冠水をする、それに対してこのポンプであれば何時間で排水が可能かという一種の能力の算定をやつて参るわけであります。その場合に予想いたしまするキヤパシテイの持ち方が従つて問題になつて来る。通常つて参りますような豪雨その他につきましては、或る程度の余裕力を持つた工事をして参るのであります。ポンプその他についての余裕力を持たして参る。ただそれが非常に異例な洪水或いは豪雨というような場合におきましては、そのポンプの能力で十分にはかせない、或いは又排水の時間が長くかかるこういう場合が、予想し得ない場合が起きて来ることもこれは算定率の問題として、或いは結果論として起きて来るかも知れない。又先ほど御質問になりました管理の一体保証があるかという問題になると思いますが、ポンプにつきましても水路にしましても、これは或る一定の期間が来ますれば破損をいたして参ります。或い能力が落ちてて参ります。そういうものにつきましては、私どもはどうしても管理が行われなければならないのでありまして、従いましてその管理の責任というもの、又管理の機関というものは、こういう工事方式をとります場合にはどうしても永久的に完全な管理がなされていなければいけない。こういう前提がどうしても必要であると思います。若しもそういう前提をとらないとすればあとは盛土の工事をやつて行かざるを得ない、こういうようなことになるかと思います。
  27. 石川清一

    石川清一君 一応只今の御説明はわかるのです。併しわかりやすく素人意見で申上げますと、仮に地表土地回復が五尺のところを二尺、三尺だけか土盛りができなかつた、その場合に洪水があつた、ところがこれが水が四尺上つたところが、その一尺分だけはこれは天災だということができます。併し下つている、下つたところの、三尺なら三尺という上げなかつた部分損害はこれは天災は一体どこが負うかということを私は突きとめているわけです。これがこれだけ上つておれば、もとのところに返つておれば、これは損害が全然起きなかつた、併し一尺だけ、多い部分の一尺分は天災だということはわかる。併し丁度きつちり五尺のところを二尺しか土地が上らんで三尺低かつた。併し三尺だけ水が来て水が乗つた。この場合の損害天災というのか。いわゆる工事の方式が悪かつた。土盛りが足らなかつた、或いは排水の能力がなかつたのかということに私はなると思う。たまたまその洪水によつて六尺、七尺と水が上つた場合には、三尺という低かつた部分も相対的に私は入ると思う。そうして一括に論議されると思います。併しながらそれが三尺きつちりだつた、三尺から一寸も上つてない、丁度三尺であつたという場合には誰がこの負担をするかということがこの中にあるかどうかということをお尋ねしているわけです。
  28. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは原状回復をすれはそういう問題が起きないわけですが、原状回復する場合は相当に事業費が嵩高になる場合が多かろうと思う。従つて三尺陥落したものにつきましてそれの排水をいたす、これはどうしても効用回復するためにやらざるを得ない。それで三尺低いということを勿論前提にした排水能力のポンプなり水路を作るわけでございます。問題は三尺低いということが前提になつておりますので、三尺低いところの水をはかせることは十分できる。でそのほうに、今まで農林省のほうで実施計画をほかの鉱害問題でもやつております場合には、通常例えば十年から二十年の間においてこの地表における効率はこの程度である、従つてこの地表において一時に水が流れて来る程度はこの程度であつて従つて先ず六尺冠水するという場合を予想して見るとこのポンプでどのくらい排水ができる、何時間で排水ができる、何時間というのはその間における農作物の被害というものが被害にならない状況においてはけるということが前提になつておるが、そういうような計算をいたしてポンプ能力、水路の掘盤をいたすわけでございます。問題は非常に異例な豪雨が落ちて来る、つまり通常私たちの設計いたしまする方式の計算以上の雨量がどつと落ちて来た場合にどうなるかという問題が恐らく御質問の点なんであろうと思いますが、これは最初工事方式のときに予想しなかつた以上の能力になるので、その点においては予期したいという状況になつて来るので、それだけの冠水時間、従つて排水時間が長くかかる。これは当然なつて来る。これは原状回復しない以上は当然そういうものが、問題が起きて来る、その安全度をどの程度見るかというところに問題があるかと思います。これは非常に安生度を高く見ればどうしてもこれは大きなポンプが必要になつて参りますが、それだけ事業費はかかつて参る、そういうところが問題ではないかと思います。
  29. 石川清一

    石川清一君 今御質問申したのは表面から見たんですが、今度は結果的に見まするというと、こういうことになるわけです。ポンプの能力には限度がありまして、今までなら異常な大増水の場合には六尺も七尺も上つたと、ところが水の滞留しておる期間の長いほど農作物は被害を受ける。最初の二尺を下げるのは短時間でポンプも故障が起きなかつたということである。ところがあとの六割或いは七割というものはそうたやすく排水はできないわけです。その土地回復が本当に原状回復であつた場合には短時間に二尺なり三尺の水が排水できますけれどもこれは除きますけれども、その下の三尺或いは四尺というものは相当長時間その下にある農作物は被害を受けるので、この点についてはそういうような場合に損害賠償するというような権利、請求をするというような権利があるかないか、これは土地回復ができた場合には全然泣寝入りをしなければならないものかどうか、又その場合には国が負担をすべきものであるか、この点について……。
  30. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) 政府原案におきましては、そういう場合において鉱害を解消したものと認めておるわけですから、政府原案におきましてはその後の救済手段というものは法的になかつたわけでございます。衆議院のほうで法案の修正が一部ございまして、第七十八条であつたかと思いますが、第七十八条に条文の訂正が行われまして、こういう趣旨の訂正が行われております。「国は、農地が、その復旧工事の完了後において、こう水等不測の天災に際し他の一般の農地に比し特別の被害を受けたときは、当該農地所有者又は占有者たる被害者に対し、農林大臣の定める金額の範囲内において特別の助成を行うことができる。」こういうような条文が入つております。工事を施行いたしまする農林省といたしましては、あとあと問題を残したくないという気持もありますし、又農民の立場を考えましても、成るべく確実な原状回復に近い確実度のあることを期待をするのは当然でありまして、私たちも工事の方法については非常に安全度の高い工事をやりたいと考えております。併し今申されておりますような、当初予定しないような場合には、この修正条文によりまして、政府のほうから何らかの助成を得られるような条文に改まつたわけであります。これは勿論農林大臣としましては、この鉱害の問題ですから、通産省のほうでもこういう問題をお取扱いになると思いますが、私どもとしましては、そのときにどの程度被害があるかというような問題について、農林省としては判定をいたし、そういう技術的な判定をいたして協力いたしたい、かようなことに相成つております。
  31. 石川清一

    石川清一君 その場合にいわゆる被害者の、その天災による被害の影響度或いはそのときの情勢というようなものを通じて意思の発表とか、意思の一致というものは、私はあると思う。この中でいわゆる一応復旧している土地に住んでいる被害者の同意或いは意見を聞く、少くとも同意ということがここにあれは私は問題は解決されると思う。ところが、この中に同意ということが私はないように感じているのです。
  32. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは或いは通産省のほうからお答えして頂くほうが筋かと思いますが、農林大臣といたしましては、どの程度被害があつたか、これは私たちの専門でありますから、ほかの農地と比較いたしまして出て来ると思います。従つてそれは金額に換算して、どの程度の額になるか、こういう決定はこの法文によつて農林大臣がいたしたいと思います。あとその手続、その他をどうするかの点につきましては、通産省のほうでも御意見があろうかと思いますが、十分に関係農民の諸君の意向、その他を参酌してきめるのはこれは当然のことと考えております。
  33. 石川清一

    石川清一君 究極においてこの法律はそういうものを目的と言いますか、目途として作られておつて、それが最後までそういう被害者意思というものがはつきりここに出ておらなければならないと、私はこういう考え方に立つておるのです。それは究極的に、金銭賠償でも止むを得ないので、工事の限界がある復旧限界がある、その限界に備えて金銭賠償が行われる、こういうようなことで一応私は認めたとした場合、そういうことが裏付でなければならんと私は思う。
  34. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは鉱業法原則によりますると、被害者と加害者が当事者同士の話合いをいたしまして、そうしてどういうような賠償額をやるか、又或いはどういうような補償やり方をするかということをきめるわけで、政府は外に立つておればよいのでありますが、併し今度のように国が補助金を出しまして、そうしてそれぞれの設計書その他を農林大臣のほうでも認可をいたすというような恰好に相成つて来るわけでありますので、そのあとの締めくくりの場合に、当事者同士の話合いでやり方をきめるという行き方が、この法案ではとれなかつた士けであります。従いまして、そこのところは、鉱業法原則とこれが違つておるのであります。併しこの程度考えておけば、先ず大体におきまして被害者のほうの問題は捌けるのではないか、かように考えております。但し、併し打切られては困る、或いは金銭賠償では困るというその原則論になりますと、これはこの法案自体の基礎的な問題になつて参りまして、いろいろ御意見があろうかとは思いますが、農林省のほうといたしましても、十分農民の納得するだけの補償額、その他が払われるならば、こういうように工事が施行され、そうして完成された場合においては止むを得ないのではないが、かように考えております。
  35. 石川清一

    石川清一君 それではその程度にして、あとでずつと条文に亙つてお尋ねしようと思いますが、いわゆる地上権、特に耕作権というものをめぐりまして、農林省が現在苦労されているいろいろな点をこの中へ、この問題を考えるのと、いわゆる地下における鉱業権、こういうもののバランスと言いますか、コントロールと言いますか、そういうものとこういうようなものが究極的にどつかで一致をすると、政治的に一致をする、こういうことになると思うのですが、その場合に一番有効な働きをする、それはこの法律の中ではどこですか。
  36. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) この鉱害の問題と地上の農民の問題は、これは石炭を掘れば必ず陥落するのでありまして、程度の差があるにいたしましても、必ず陥落をいたします。そこでこの法律には出ておりませんが、実際申しますというと、通産省のほうでやつておられるであろうと思いますが、採掘の方法なり或いは又地上に非常に重要な物件のあるような場合に、その採掘を禁止するなり、そういうような制度がこの法律とは別個に励行されなければならないと存じます。それでないと、極端に言いますれば、石炭はどんどん掘つて行く、そうして地上と関係なしに石炭を掘つて行けば、必ず地上は鉱害を受けるわけでありますから、どんどん石炭がある限り掘つて行くと、上からどんどん陥落して、上の農地が困る。こういうような絶間のない悪循環を繰返して行つて、起きた被害を直して行くというようなことを続けて行くことは、どつかで何かはつきりした目度がつかぬ以上、妙なことと思われるのでありまして、これは当然この法律のほかに前提といたしまして、地上の問題と鉱業の採掘の方法との間にそれの調整をする施工方法が励行されなければならんと考えます。そうしてそのことはこの法律では書いてないので、恐らく通産省のほうでほかの鉱業法なり或いは何かの法で御用意され、励行されていることと思いますが、その問題はそういうふうにせざるを得ないのではないかと思います。それから、併し実際問題として、でき上つた鉱害についてどうするかということになりますれば、外国の例にありますように、鉱業権者が直接被害者と話合いをして、鉱業権者責任被害を完全に補償して行く、或いは損害賠償を、原状回復をやつて行くという責任がありますれば、これは鉱業権者が採掘をいたす場合には十分な考慮が払われる可能性が強いわけであります。併しそれはそれぞれの鉱業のあり方によつて違うことでありまして、この法案ではそれを国が手を出しまして、国が補助をいたして原状回復の線まで持つて行く、止むを得ないものだけは金銭賠償をやつて行くという法案になつておるわけでありまして、その点についてはこれは農民の側におきましても、原状回復されるということに対しては期待をいたしておる、かように考えます。このどこにそこの条文の確約があるかと申しますれば、これは原状回復ということを必ずしも謳つてはおりませんが、実施計画復旧工事というものは、これは大体原状回復若しくは効用回復することを目当てにしてやる工事でありますから、全体的にそれが流れておると思います。ただ若干、工事の今申しましたやれない部分における打切りの問題、これが起つて来るかと思います。この工事の対象になる事業費が非常に高いために工事の対象にならない、或いはいろいろ問題がありますためにこの法案の施行の、この法案が命じております工事の対象にならない地域もやはりあろうかと思います。又不安定で安定していない、陥没が安定しておらんがために今工事に着手することができないような地区もかなりあるわけであります。そういうところにおきましては従来の鉱業法による当事者同士の代償関係補償関係が残置して、残つて行くわけであります。でありますからその点についてはこの法案が持つております原状回復的な性格というものは一つの進歩である、かように考えております。
  37. 石川清一

    石川清一君 只今お話を聞いていますと、原状回復或いは効用回復というものは一応便宜的であると、便宜的な手段より出ないとこういうようにお聞きしたわけです。やはり鉱業問題の解決の鍵というものは原状回復原則が確立をされて、その上で被害者の自由意思によつて金銭賠償その他がとられるべきである。実は私は鉱業権よりも優先して地上における居住権というものが私はあると、こういうように考えておるのですが、農地局の今の部長さん、どういうふうにお考えになりますか。
  38. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは鉱業法のときに非常に議論になつた点だと思います。私たちの考えますところは、現在の鉱業法におきましては鉱業権者の無過失賠償責任というものを規定いたしておりまして、その点はこれは問題ないのでありますが、問題は金銭賠償主義をとつてつて、極く異例の場合にのみ原状回復を認める、こういうところが問題のポイントであろうかと思います。これは現行法そのものを批判することは私たちには余り許されないことかも知れませんが、ただ私たちの立場は何も知らないで地上で住んでおつた農民が知らぬうちに土地が陥没して行く、而も非常に不安定な状況で、いつどのくらい陥没するかわからない。こういう不安定な状況で置かれるということは農民の心理的なほうから言いましても、又経済的なほうから申しましても非常に好ましくないものだと考えております。農民には全くこれは迷惑な話でありまして、どうしてもそれが事業をやつておりまする鉱業権者の手によるなり、或いは又国がそれに力を貸すなりなんかしまして、そういう不安定な状況を一日も早く脱却するようにしなければならん、かように考えます。従いまして率直に私たちの意見を申しますれば、この臨時法に盛られているものをむしろ鉱業法においてしてもらいたい。つまり原状回復原則というものを鉱業法に盛つて頂きたいという希望を私たちは持つております。若しもそういうことになりますれば、今御質問になるような点もきれいになるかと思いますが、何分鉱業法が極く短い、極くこの間成立したような状況でありまするので、今それをやるのはどうかと思いますので、こういうような臨時的な措置となつた、かように了解いたしております。
  39. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 只今の点は制度の根本問題でございまして、私も個人的には原状回復が不可であるというふうな考え方は全然持つておりません。今のお話のように地上の権利、物権というものと、それから地下の採掘による利益というものとの問題をどういうふうに調整するかということは、これは根本的に十分検討して結論を出さなければならん性質のものである、こういうふうに考えております。ただ当面の問題といたしましては、只今管理部長が申しました通り鉱業法がつい一年前に成立して、而もその一番ポイントでありました鉱害賠償問題につきましていろいろ議論の結果、今日のような金銭賠償原則がとられておるという事実に鑑みまして、これを只今直ちにその原則を覆えすような、例えば臨時立法といたしましてもそういう制度はとり得ない。ただ現在各地に、石炭炭鉱地方におきまして累積しております厖大な鉱害を片付けるためには金銭賠償原則一点張りでは到底問題の解決になりませんので、或る程度原状回復の方法をとらざるを得ない。それに対しましては国も或る程度補助をするほうが適当だと、こういうふうな、いわば臨時措置的な考え方からいたしましてこの法律が出ておるわけであります。従つてこの法律によりまして現在目の前にあります厖大な鉱害を片付けましたあとにおきましては、或いは又その過程におきましては、本来の原則をどういうふうに考えて行くかということにつきまして、理論的にも又採掘と鉱害との科学的な関係等につきましても、十分研究の機関がございますので、その上で最も我が国に対しまして適当した結論を出したい、こういうように考えております。
  40. 石川清一

    石川清一君 私は一番先に今の質問をすべきたつたのです。併しいろいろな予想されることを、一応この法を通じてお尋ねをした上で今の質問を申上げたんですが、ドイツや或いはイギリスでは今のような原則の上に立つて積極的に鉱業権者被害者に対する十分な原状回復金銭賠償を行なつておる。こういうように聞いておるのですが、只今の御説明でこの法案の実施を通じ、或いは短期間と言いますか、早急の間に根本的な鉱業法の改正を行う、行わなければならんというように承わつて、これはどこまでも臨時的なものである、こういうふうに了承してよろしいのですか。
  41. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 鉱業法を改正すべきだというふうな結論を申上げたのでなく、その問題も十分今後の根本問題としてこの法律の施行中に考えるべき問題だと、こういうふうに了解願いたいと思います。
  42. 石川清一

    石川清一君 考えるべきだということはやはり相当の不備欠陥がある、或いは生じるであろう生じておるとこういうように了承してよろしいのですか。
  43. 中島征帆

    政府委員中島征帆君) 最終結論はどうなるかは別といたしまして、現在の鉱業法がそれですべての問題を円滑に解決しておるというふうには考えられないということであります。
  44. 石川清一

    石川清一君 農林省の御意向はどうですか。
  45. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) 私たちのほうはこの農民が安定した気持でやつて行けるようにとにかくやつて頂く、それには原状回復責任というものをはつきりさして、そうして先ず初めにはそういう鉱害が起きない採掘の方法をとつて行く。起きた場合には、その止むを得ず起きた場合におきましては、それの責任を明確にして頂いて、そうして一日も早く原状回復の態勢に持つてつて頂く。こういうのが終始一貫した私たちの主張であります。従いましてその立場からこういう関係法令のそれぞれの制定、その他に処しているのでありまして、鉱業法がそういう問題について問題が残つているならば、それを国会のほうの御審議におきましても、そういう点も訂正されて行くことを希望いたしております。
  46. 石川清一

    石川清一君 私は今農林省の意向は非常に弱いと残念に思うのです。このことは、これはですね、今までの農地に対する問題、現在起きている問題、これは進駐軍の演習場として接収せられ、いわゆる好き嫌いなしにきめられた条約、或いはそれの実施に伴う問題と違いまして、自由な鉱工業者、或いは自由な農民が対等の立場で論議される問題であつて、この中にこそ農地局が農地に対する基本的な考え、私は少くもこれに対立する鉱業権者のやはり基本的な問題が一致するものでなければならん、こう思つている。それは農民が生活が安定したらいいんだというようなあいまいな言葉は日本の国のこの農地或いは土地というものが簡單に解決される問題でないということは御承知のはずなんだ。農民の生活が安定したらいいんだということは、どこへ行つてもいいんだというようなお考で、農地という問題と取組んでおられるとしたら、これは大きな誤まりだと思う。戦争以前のように、満州とか、或いはその他の土地に自由に移民のできたときならともかくとして、今日ではもつと深刻な問題がこの中に私はあると思う。これをきめる最後的なケースが、やはり進駐軍の演習地の接収問題その他についてもやはり合理的にはね返す私は力を持つと思うのですが先ほどの御答弁でよろしいのですか。
  47. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) これは石炭のあるところというものというのは、これは最初からきまつているわけであります。石炭を掘るほうがいいか、農地を保護するほうがいいかというよう議論はいろいろあるかと思いますが、私たちとしましては、現在の食糧状況から考え、或いは又農村に非常にたくさんの諸君が生活をしている実情から考えまして、農地の荒廃されることにつきましては、これは根本的に反対の立場を持つていることは変りはないのであります。ただ、今現在すでに一万町歩に近い土地鉱害を受けて苦しんでいるわけであります。その現状そのものをどうするかという問題と、それからそれの基礎になりまするもつと基本的なものの考え方はどうかと、やはり問題といたしましては二つあろうかと思います。現在すでに陥没している地区、そこの問題をどうするかということになりますれば、これはそれの責任を明確にしてそうして一日も早く原状回復、復帰することが、これが私たちがやらなければならん仕事かと存じます。但しそのときに責任のあいまい性が残つたり、或いは又そういうことのために余計濫掘が行われるというようなことがあるとこれは問題でありますが、そうでない以上、現在ある災害は一日も早く原状回復をいたしまして、そうして直して行く、これが私たの考え方であります。併しながら今後新らしく起きて来る鉱害の問題をどう処置するか、この問題につきましては、これは十分な考慮が石炭を掘る場合にも取られて行かなければならんと思うのであります。今までのところは私たちの見るところでは、地上のそういう問題と、地下の採掘との問題におきまして、両方に十分な了解その他ができていないように思います。その点は非常に遺憾なのでありまして、地上の重要な農地、或いは灌漑排水施設、或いは又溜池というようなもの、そういう地区の下を採掘いたしまする場合にはこれを避ける、或いは十分な予防措置が行われるということが地上の諸君と、地下を掘る、石炭を掘る諸君との間の十分な了解が行われて、又そういうことに対して事業の調節が行われることを期待しているわけであります。それは先ほど申しました通りであります。
  48. 石川清一

    石川清一君 まあ現在行われている金銭賠償にしても鉱業権者経営の状況や能力或いは周囲の環境によつて、いわゆる土地原状回復に対する態度というようなものも変ることがあり得ると思う。又経営の状況によつて金銭賠償にやはり差の生じて来ることも企業である限り私はあり得ると思う。そういうようなものにやはり基本的に備える考え方農地に対してなければならん。いわゆる被害者農民個々は金銭賠償によつて自由に農業というものを自分で放棄しようとか、或いは永住しようという意思があると思う。この法律の中にはやはり農地というものを鉱業権に対して守つて行こうという一つの線が加害者の手によつて自由に発言をされ、自由に補償される機会が残されておらなければ私はならんと、こういうように考えている。ところが鉱業権者が積極的に原状回復をするというようなものが法律の中に明記されておらない限りは問題は将来にずつと残つて行くと思う。その場合に農民、いわゆる被害者のこれに対する音思決定、計画に対する積極的な協力或いは不満足としてのサボタージユ、そういうことは起きて来ると思う。その場合に両方の調整をとるのがやはり農地局と言いますか、農林省の基本的な農地に対する基本的な態度、これに信頼する農民、そこに被害者の、協力するほうの利害だと、こういうふうに私は考えているんです。究極的には金銭賠償土地原状回復農業回復ということが永久的に行われる場合にはそういう問題は私は起らない。併しながら事業団の行う事業に制限があつたり、鉱業権者金銭賠償或いは負担が時の情勢によつて変化が起る場合には問題は将来に残ると、かような場合にこの法律によつて採掘を阻止しよう、加害をこの程度で停止しようというようなものがなければ私はならんと思う。ところがこの法律の中では私はそれがないと思うんです。
  49. 谷垣專一

    説明員谷垣專一君) それは御指摘のように、この法律が堆積した鉱害、現在の鉱害を対象にした場合でありますために、今御指摘のように、この原状回復の要点、或いは原状回復に対する加害者の協力と申しますか、或いは賠償責任と申しますか、そういうような問題、或いは鉱害を起すような点についての採掘禁止というような処置はこの法案においてはとられておりません。これは他の法案によりましてそれが行われる以外にはないと思います。これは恐らくこの本法成立の経過から見まして、鉱業法その他関係の法令の改廃というところまで話が進んで行くことでありまして、本法にはそこらのところは触れられていないのであります。
  50. 石川清一

    石川清一君 それはそれで了承します。その点について、法制局では御意見がありませんか……。先ほど私が申上げておることは、この法律はやがて恒久的な法律として、問題の解決を通じて核心を衝いて、いわゆる本法の一番先に謳われておる「国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り、」という前段を生かして行くように発展して行くのにふさわしい法律であるかどうか、地上権と或いは鉱業権との調整を究極的にこれがなし得るものであるか、或いはなし得なくてもなし得る方向に行くかどうか、こういう点を先ほどからお尋ねしておつたのですが、法制局の御意見を承わりたい。
  51. 西村健次郎

    政府委員西村健次郎君) 大変むずかしい御質問でございまして、非常に大きなポリシイーに関連することだと思うのであります。先ほどから、私遅れて参りまして、いろいろ伺つおりまして私が感じたところを申上げますと、要するに農林省谷垣部長のお話も、この法律自体が鉱害の発生を防止するなり、掘るべからざるところを掘らしたり、或いは逆に掘るべからざるところは掘らないようにして、片方の農業生産力の保持を図り、いわば国土の総合利用について遺憾なきを期するというところは、実はこの法律でそこまでは賄えないと、こう思つております。その点につきましては、現在鉱業法なり、或いは鉱業法を実施するための土地調整委員会というものが設けられておりますが、これによりまして或る部分についてはできるようになつております。勿論、現在の鉱業法なり土地調整委員会というものの機能というものが国土の総合利用という点について十分なものであるというふうには決して考えられないと思います。併し、将来の方向としまして、土地調整委員会というものが、或いはそれが適当であるかどうかはわかりませんが、少くともその点の調整を図るということは必要であろうと思つております。それからこの法律は、第一条にあるように、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図るという意味の立法として立派なものであるかというお話でありましたけれども、谷垣部長が先ほど申上げましたように、発生した現在における鉱害についてこれをどう処置するかという場合におきまして、政府としては、通産省なり或いは農林省におかれましては、こういう方法でやつて行くということは結局一番現状に即したものではなかろうか。勿論、これは農民のほうにとれば非常に不満な点もありましようし、或いは逆に鉱業権者にとりましても、場合によつて必ずしも全部の鉱業権者がこれで満足されておるというわけには行かないと思うのです。ただ問題がここに一つあるのは、先ほどもお話がありましたように、鉱業法では金銭賠償を建前にしております。但し旧鉱業法より一歩前進しましたことは、原状回復が著しい多額の金銭を要しないでできる場合においては被害者原状回復の請求をできる請求権を与えているという点が多少昔より進歩した点であります。勿論これについていろいろと議論はございますけれども、ともかく昨年でございますか、一昨年でございますか、国会において相当議論のあつたところで、すべて現状のような金銭賠償の建前が鉱業法でとられておるわけであります。従いまして、この法律を飽くまでそれに対する臨時的な立法であるという意味で、たしか十年でしたか、施行後十年経つて効力を失う、という意味は、十年やればあとは知らんぞという意味では恐らくなかろうと、十年経たないうちにもつと或いは適切な原状回復のほうに行くかも知れません。農業者と鉱業権者との間の利益の調整と国土の総合開発という面についての適切な立法がなされるものであろうと、こういうふうに期待をいたしておる次第であります。
  52. 石川清一

    石川清一君 只今お話は、日本の農民が非常に弱かつたために、当然行われなければならんかつたものが非常に遅れておつた、その尻拭いと言いますか、後始末というような形で、而も臨時的な形で行われておつたということは、今の御言葉三者とも一致しておるようであります。併しながら、それで満足されておらないということも一致しておるようであります。恒久的に非常に両者の納得し行く一つの法律にやがて発展して行かなければならんだろうということは、これも了承します。そこで実は私は……、ちよつと速記をとめて下さい。
  53. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  54. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) 速記を始めて。  では本日はこの程度で散会いたしまして月曜日七日の午前十時から正時間に始めたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 竹中七郎

    委員長竹中七郎君) ではさよう決定いたします。本日はこれを以ちまして散会いたします。    午後一時六分散会