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境野清雄君
只今議題と相成りました自転車競技法中改正法
律案につきまして、提案の
理由を
説明いたします。
現行の自転車競技法は、御
承知の
通り、
昭和二十三年、第二国会に、民自、民主、社会、国協の四党共同提案として提出せられ、通過成立を見たものであります。
その後、この法律による自転車競走、いわゆる競輪は、我が国民大衆の自転車に対する親しみ、並びに勝者投票券、いわゆる車券制度の簡易性等、一言にして申しますると、競輪の持つ大衆性からいたしまして、恐らく本法制定当時何人も予想していなか
つたであろうと思はれるほどの発展を遂げて今日に至
つているのであります。即ち現在におきましては、全国競輪場の数は約六〇個所、一カ月の入場者約一五〇万人、一カ月の車雰売上高は五〇億円に垂んとする盛況を示しているのであります。
この自転車競技法の
目的とするところは、その第一條に
規定しております
通り、自転車産業の振興と地方財政の増收とにあるわけでありますが、右に述べましたような競輪の盛況に伴いまして、直接競走の施行による競走車並びに実用車の改良の他、競輪の收益から自転車産業振興費として支出を見ました金額は、
昭和二十四年度以降昨年度まで合計約七億二千万円に達し、商工中金その他の金融機関を通じての自転車産業に対する貸付金、中小自転車企業の共同施設費、自転重工業研究補助金、或いは自転車の輸出振興費等として、極めて有効に使用せられているのであります。又、競輪施行者としての地方自治体の收益は、
昭和二十六年度までで実に八十億円に達するのでありまして、これらはおのおの地方における住宅又は学校の建設、保健衛生その他の
公共事業に活用せられ、地方財政收入の緩和に貢献しておりますことは御
承知の
通りであります。併しながら、競輪は、その運営に当を得ない場合におきましては、例えば一昨年の兵庫県下の騒擾事件でありまするとか、その他社会風致上にも憂慮すべき結果を来す虞のありますことも、亦否定し得ないところであります。従いまして、これに対する対策としては、競輪施行者その他の運営
関係者、選手等の監督指導に努めることは勿論、運営方法につきましても、車券の発売方法、開催方法等諸般の点に細心の注意を払う必要がありますると共に、多数の観衆の理解自制に俟つところも又極めて大きいのでありますが、これがためには、法規上
相当の監督
規定を設けることが是非とも必要であることは申すまでもないのであります。
然るに現行自転車競技法は、以上のような見地からこれを見まするときは極めて不備と申しますよりも、車券発売の停止等の他は殆んどこれらの監督
規定を欠いているというのが実状であります。
本法案はこれらの点に関する不備を補正するため、所要の改正を行おうとするものでありまして、その
内容の主なる点といたしましては、次の
通りであります。即ち、一、競輪場及び場外車券売場の新設について
通商産業大臣の許可を要すること。二、競輪の開催回数について所要の調整を加え得ること。三、未成年者及び競輪運営
関係者の車券購入禁止の
範囲を拡大したこと。四、競輪場内の秩序の維持並びに競輪施行者及び自転車振興会並びに競輪場
所有者に対する監督に関する
規定を明確にいたしましたこと。五、国庫納付金に関する
規定を整備したこと。六、本法運用に関する通産大臣の諮問機関として競輪運営審議会を設けることとしたこと。七、いはゆる呑み屋、取次業者等の車券購入に絡まる不正
行為の取締に関する
規定を整備したこと。
以上の
通りでありまして、これらはいずれも競輪の弊害を防止し、その運営の健全化を期するため極めて緊要な改正と信ずるものであります。
尤もこれらのうち、大部分の点につきましては、現在においても、競輪を所管する通産当局の通牒及び行政
方針として、事実上実行されているところでありますが、何分にも法的基礎を欠いておりますために、その実効を保しがたい憾みがあるのでありまして、本改正法案の成立によりまして現在実施中の措置に対し法的基礎を明確にすることによりまして、その実効確保に遺憾なきを期しようとするものであります。
最近における競輪施行の状況は、一昨年の騒擾事件を機とし、監督の強化と
関係者の自粛とによりまして、極めて平靜に運営せられており、多数の観衆がこれを楽しみ又本法の
目的とする自転車産業振興並びに地方財政の緩和に多大の成果を挙げている事実も又これを認めざるを得ないのであります。ただ新聞紙上にも掲載されております
通り、最近大阪を中心とする関西地区におけるいはゆる呑み屋の跋屋等によりまして、競輪施行者の収入が激減するという誠に憂うべき
事態等も発生しつつあるのでありまして速かに本法に所要の改正を加えることによりましてその弊害を防止し、運営の一層の健全化を図ることが最も緊要と信ずるものであります。
何とぞ十分御審議の上御賛成あらんことを切望する次第であります。