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参考人(
鈴木一雄君) 問題点だけ申上げたいと思います。
最初に考えますのは、戦前と戦後におきまして、
世界の経済のあり方が非常に変
つて来たということであります。これに目を塞いでおりますと、
我我の
貿易政策の根本が立たないわけであります。それは申すまでもなく、我々の自由主義諸国と、それから新らしく大きな
勢力になりました社会主義並びに新民主主義諸国、これともう一つ戦争によりまして解放されました南方
アジアの諸民族であります。これが
三つの大きな枠にな
つている。我々はここにおきまして、その
三つの中に挾まれておるわけでありますので、この関係をいつも考えて
貿易政策をいたしませんと、非常な苦しみに陥るのははつきりしているのであります。この見地からこの前四月の三日にモスクワで国際経済
会議が持たれましたときに、これは単なるプロパガンだと
いろいろ論議がございましたけれども、我々の
業者の立場からいたしますとこれは非常な大きな問題を含むわけであります。それは何かと申しますと、共産圏と商売をいたしますには今まで
個々にはいろいろなことがありましたけれども、大きな一つの方式というものがなか
つたわけであります。今度は改めて
向う側から一つの
貿易方式を打出されたというわけであります。我々が共産圏と商売を、
取引をしなければならん以上はこの
向うからの提案でありますところの
貿易方式にやはり四つに組んで行かなければならんわけであります。それからこれの延長といたしまして六月の一日に一応個人の資格ではありますけれども、
日本と中国との間に一つの
貿易の取極が行われたわけであります。これは我々はこれを黙殺するわけには行かないのでありまして、中国は個人の資格でありますけれども、人民
銀行の総裁でありますところの南漢宸氏がこれに調印しております。恐らくは中国自身中国自身一つの国策としましてこの方式を打出したのではないかと思われるのであります。
従つて私どもはこれから
取引をいたしましたり
貿易をいたしますにつきましてもこの
協定と四つに組まねばならんということになるわけであります。それからもう一つ注意いたさにやならんことは中国自身が一つの計画経済に入
つている、これはもう先刻御
承知だろうと思うのでありますが、極めてまた大ざつぱなものでありますが、次第にこの計画経済の仕組が非常に正確になりまして、大体五十二年度までは今までの戦乱の
あとの跡始末をやる、来年度からは丁度ソヴイエトロシアがやりましたようなゴスプランのようなものを来年度から本格的にやると伝えられているのであります。でこの点におきまして我々は今後の
貿易を考えますときに、この中国が計画経済であり、
従つて貿易が計画
貿易であるということにやはり十分な考慮を払わねばならんと思うわけであります。その点が
輸出組合なり、或いは今後発展いたしますところの
輸出入
組合というものにつきまして対社会主義並びに新民主主義諸国との
貿易を如何にすべきかと言いますときにやはりこれを受けとめますところの
日本側の一つの受入
機関がありませんと、
向うは計画経済でありますので、十分な計画と、勿論それには数量と
価格と品目という広汎なものに亙りますが、それを十分に受けとめ得るようなものがありませんと、結局
貿易を逃がしてしまうことになるわけであります。その点につきましては
英国はすでに外務省で発表しておりますようにメーカーとトレーダーとの間に一つの
機関を作るということがもうスタートしているらしいのであります。在日の
英国系の
商社におきましてはすでにその準備が大分進んでいると私どもの会員からの
情報が伝わ
つているわけであります。
それから当面の問題といたしまして是非御考慮願いたいと思いますのは決済の問題でございます。中国側の現状から申しますと、今までの国際通貨でありますところの
米国のダーラーと
英国のスターリングと、こういうような非常に国際関係のむずかしい通貨関係には入りたくないという希望が非常に強いわけであります。これは先ほどの国際経済
会議におきましてソ連側の代表であるネスチユロフが発言しましたが、
相手国通貨という
取引であります。
相手国とその相互間の通貨でやろう。これは恐らくヨーロツパにありますところのEPUに対する大きな対策でなか
つたかと思うのでありますが、
日本もやはり同じような関係にあるのではないかと思うわけであります。それでこれから新らしく中国と
日本が
取引をする場合におきましては、もういろんな拘束を受けるようなパウンド・スターリングとか、或いはUSダラーというようなものに余り厄介にならないで、要するに
日本と中国と相互間でこれを始末して行こうと、そういうような考えがあるわけであります。
従つてこの問題は船舶の問題に引つかかるわけであります。それで御
承知の
通り我々が中国に要望いたしますのは非常なその嵩のあるバルキーな
原料が多いわけであります。
従つてこれを輸入するに当りましては運賃の占める率が非常に多いわけであります。でありますのでこの運賃に
外貨を払うということは
只今申上げました外国の通貨に、第三国の通貨に
日本と中国の
取引を余り束縛されたくないということに反して来るのでありますので、これは当然
日本の船を使うということになるわけであります。それですでに
我が国におきましてはE型、D型というような小型船舶の繋船問題がもう
日程に上
つております。この
程度の船で中国に十分適しまして、又中国の
原料を運んで行きますのには極めて適当しておるわけであります。この
日本船の就航を如何にすべきかということが問題であるわけであります。ところが
我が国におきまして私どもの交渉した範囲におきましては中国側は
日本船就航について
日本側の船主の心配をできるだけ除去しまして中国の沿岸に寄港することの安全を何らかの恰好で保障することを研究したいということをすでに
申出が来ておるわけであります。ところが私どものほうには
日本船の就港に対して
政府の
許可がなかなか今後下りるのはむずかしかろうという予測があるわけであります。その一つの問題は漁船の拿捕問題であります。この拿捕問題につきましては経済やら或いは外交上の問題がありまして、現在まではなかなかこの問題を中国側は受けとめてなか
つたわけでありますが、以西底曳
組合の要請に基きまして現在北京に行
つております帆足計君にこの問題を電報を以て委嘱しましたところ、とにかく中国側の当局者が好意を持
つてこの提案を受けて
話合いをしようということが実は今朝電報が入
つたわけであります。これは先ほど申しました
日本と中国との
貿易協定というものがやはり大きな友好関係で何とかして打開をしたいというような中国側の要望と、それから私ども国民の中にさまさまに織込まれておりますところの
日本と中国の交易に対する国民的要望を受けとめてくれたと思うわけであります。
それから来年から始まりますところの大きな経済建設を対象にした
取引と申しますのも、実はこの間取極がありました
貿易協定を如何に具体化するかというところにかか
つていると思うわけであります。更に細目に亙りますれば
英国に対しては
相当きつい条件を出しておるわけであります。御
承知の
通り交換品目についてABCというクラス分けがあるわけでありまして、
英国につきましては非常にむずかしいAクラスのものが実現しないとBCはやらんというようなきつい立場をと
つているのでありますが、
日本の場合にはこれは当初そういうような態度であ
つたそうでありますが、その後におきましてそういうようなABCの相関関係を捨てまして、BでもCでもやろうというような態度をとられたということが伝わ
つて参りました。こういうことから考えますと中国側は積極的に
取引するという意図が十分あるわけでありまして、これは今後
アジア貿易を考えますときに非常に重要な問題であります。個人問題でありますが、村田省蔵氏に南漢宸氏から手紙が最近参りました。その手紙の中で
日本と中国の
貿易が極東
アジアの
貿易の挺子であるということを指摘されているのであります。これは一昨年の十月にシンガポールで行われましたECAFEの
会議におきましてインドネシヤ代表がやはりこのことを指摘しているわけであります。これは非常に重要なことでありまして、
日本と中国がノーマルな
貿易がない限りには
東南アジア貿易を
日本が拡大するということはこれは空想であるというようにインドネシヤの代表が断言しているわけであります。この南方の解放された植民地の民族感情というものを私どもは十分丁寧に考えませんと、今後の
貿易方針を誤
つて来るのではないかと思うわけであります。そういうような観点からいたしまして、現在提出されましたこの三千万ポンドに当りますところの
貿易を我々やはり国民的な規模によ
つてこれを受けとめまして、何とかして現在許された範囲におきましてもこれを実現せねばならんと思うわけであります。これを私どもがフエールいたしますれば、ヨーロツパなり、西欧諸国が盛んにや
つておるところにおくれをとる場合が出て来るのと、中国自身が計画経済を組んでおるということにおいて、やはり
日本の物を計算に入れないというような現象が起り得るわけであります。従いまして私ども
業者の商策といたしましても、やはりこの問題と四つに組みまして、何らかの
意味におきましてこれを具体化して行きたいと思うわけであります。勿論この中にはいろいろなむずかしい問題もございます。併しながら大体
日本側で研究しました品目について、その
事情を十分考慮の上で、ヨーロツパと対照しまして品目が羅列されているというように見られるわけであります。従いまして現在許された範囲内におきましても
相当量な幅の
取引がありますと同時に、西欧並みの努力を続けますならば、この三千万ポンドの
取引の実現は不可能ではないわけであります。そういうことがポンド決済の、或いは
ドル不足の問題というような国際的な
貿易の障害につきまして抜本的な解決をするものだと思うわけであります。極めて雑駁ではありますけれども、現在までの
貿易政策には、新らしく起りました中国や、或いは新らしく起きました
東南アジアの本当のところをまじめにぶつか
つて考えてないということ、或いは
日本流に解釈いたしまして、そうして我々の
貿易をそのように持
つて行こうとしたために、結局それの抵抗を受けまして、現在は
貿易縮小というような現象が出ているというような、そうした点等を是非改めてお考え願えますれば、我々は
貿易立国でありますので、その間におきまして我々の経済はもつと発展するのではないかと思うわけであります。これは我々の三倍以上の
貿易量の実績を作りました西独の努力も我々は十分検討して見る必要があると思うわけであります。まあそういう
意味におきまして今度の三千万ポンドの
取引につきまして、これは単なるプロパガンダでなくて、我々に与えられた
アジア貿易における一つの大きなテーマであると是非お考え願いたいと思う次第であります。