○
政府委員(中島
征帆君) お手許に
法案の要綱が配付されてあると思いますが、
法律案の要綱とむしろこの際離れまして、全体的な
構成から御
説明いたしたいと思います。この
法律の目的は再びここで申上げることもないと思いますが、先般の国会で成立いたしまして、現在実施いたしております特別
鉱害の残りと一般
鉱害をそのまま放置できない、これを如何に復旧するかというのがこの
法律の目的であります。一般
鉱害を
調査いたしましたところによりますと、総額二百三十億の経費を要するものが現在ございまして、そのほかに特別
鉱害が現在三分の一復旧しておりますが、合計七十九億、従
つて鉱害全体としても三百億を超えるものがあつたわけであります。その二百三十億の一般
鉱害の中で農地
関係が約百億であります。それから道路或いは水道といつたような公共施設
関係が約七十億、家屋或いは土地といつたような個人所有の建物
関係を主にするものが約五十億、それでトータル約二百三十億になるわけであります。その中で現在復旧に適するものと適しないようなものとございます。それは現在なお
鉱害が進行中であり、又将来その資産を採掘されるというような
予定地にな
つておりますものは、これを完全に復旧いたしましても、又再び
鉱害を受けますので、そういうものに対しましては完全な復旧というものは適しないという考え方をとるわけでありますが、そういうふうなものを除きまして、結局差当り復旧の対象になるものは、これは約百億と考えられます。この百億の
鉱害の中でやり方を三に分けまして、この
法律では考えられておるわけでありますが、第一には農地
関係及び農業施設の
関係、それから第二には道路、水道その他の公共施設、第三には家屋、土地という私有権、この三つに分けまして若干ずつやり方が違
つておるわけであります。初めの
二つに対しましては、これはいずれも公共事業費の
関係になりますので、この
二つについてその復旧を担当する事務機関といたしまして、
鉱害復旧事業団という法人を作ります。この事業団におきまして、農地及び鉱業施設に関する復旧基本計画を策定いたしまして、毎年の復旧計画をここできめて主務大臣の許可を受ける、こういうことになるわけであります。農地及びその他の公共施設に対しましては、この復旧費に対してそれぞれ国費及び地方費の補助が出るという建前にな
つております。それからそれ以外の残りました家屋、土地に関しましては、復旧事業団の計画の対象にな
つております。これは
鉱業権者と被害者との個々解決の一応の原則に委ねる、こういう考え方でありますが、ただそのまま放置いたしましては、現状を見ましても、なかなかこれは解決困難でありますので、できるだけ原状復旧ができるようなものは原状復旧を促進するという
意味におきまして、原状回復に関する協議と、それから協議ができなかつた場合におきましては、
通産局長がその裁定をする、こういう
二つの手段を用いまして、個々解決に対して或る程度の
通産局が介入なするというようなところで片附けております。大ずかみな行き方はそういうふうなことであります。それで第一の農地に関しましては、国の補助とそれから
鉱業権者の賠償というものはどういう
関係になるかと申しますと、この
法律は
鉱害の復旧を目的としてありますけれ
ども、現在鉱業法の賠償原則というものは、
鉱害の賠償は金銭賠償を原則とすることにな
つております。特に金銭賠償に比べて特別に多額の経費を要しないで復旧できる場合には原状回復を請求してもよろしい、こういうことにな
つておりまして、原状回復はいわば例外であります。その鉱業法の原則というものは、この
法律で根本的には変えないというのが前提要件であります。鉱業法もまだできてから年数がた
つておりませんし、その原則が確立されるまでには随分論議もありましたことでありますし、その根本法針には触れないで、できるだけ原状回復するというのがこの
法律の狙いでありますが、その
意味におきまして、原状回復をすべて
鉱業権者の義務とするということは避けております。農地に関しましては、多くの場合におきまして
鉱害を受けて減収しております農地に対しましては、加害
鉱業権者は年々の減収額に相当するものを賠償いたしております。その年々の賠償額を資本還元いたしましたものを、その
鉱業権者の農地に対する賠償額の限度だと、こういうふうな考え方をとりまして、それだけを
鉱業権者から徴収するわけであります。これを
納付金と言
つておりますが、そういうふうな計算方式で計算されました
納付金を事業団は
鉱業権者から徴収する。それからその農地に対しまして、その復旧費が幾らかということを見ます場合に、多くは復旧費が徴収しました
納付金より多い場合が大
部分であります。これを平均的に見ますと、大体復旧費に対しまして
納付金の平均が三割五分くらいになる、それで結局残りの六割五分というのは復旧費に対して不足する、こういうような計算が出ておりますが、その六割五分の不足分を国及び地方公共団体で負担して、その穴を埋めて復旧をさせると、こういうことになるわけであります。従
つて鉱業権者としては鉱業法の金銭賠償の原則によります賠償額を一時に事業団に納めることによりまして、それにその
補助金を合せて農地の復旧をやる。そして復旧いたしましたならば、これは
鉱業権者としては原状回復したものでありますから、その後の賠償責任はそこで消滅するわけであります。ところが復旧工事をいたしましても、場所によりましては、従来の
鉱害を受ける以前の程度の地味まで完全に回復しない場合が起ります。これは計画の齟齬ということも稀にはありますけれ
ども、実際上の工事計画を立てる場合におきまして、工事費に比べてその効果が余りに少い場合には、むしろ工事費を一定限度にとどめて、原状回復の程度ば例えば九割くらいにとどめても、残りの一割を復旧するためには非常に大きな経費がいる場合には、一割だけは初めから原状回復を企図しない、こういうような工事も作ることがあるわけであります。そういう場合におきましては、工事をいたしましても、なお被害が残りますので、その分につきましては、残りました減収の程度というものを更に又資本還元いたしまして、それを被害者に支払いまして、そこで賠償金が消滅する、こういう考え方をと
つております。その一時打切補償の金は、これは
鉱業権者からとります
納付金の中から、あらかじめこれは大体予算ができますので、それに応じまして別にと
つておきまして事業団が支払う、こういうことになるわけであります。従
つて先ほどの私の
説明が
ちよつと不十分でありましたが、復旧費の三割五分が
鉱業権者の負担だと、こう申しましたが、そのほかに
鉱業権者が
納付金として復旧費の三割五分のほかに、今のような打切補償金のようなものが天引されますから、実際としては原状回復費用の三割五分以外に、そういうものがプラスされたものが
納付金になる、こういうことであります。それから今のような例におきまして、例えば地盛りを、例えば
鉱害によりまして三尺下
つておる土地を三尺上げれば、これは原状回復になりますけれ
ども、もう大体二尺くらい上げても普通の
状態、或いは昔と同じような収穫を上げることができるというような場合には、二尺しか上げない場合がありますが、或いは例えば一尺上げて排水施設をそこに設けることによ
つて、従来
通りの収穫が期待できるというような場合には、むしろ地盛りを低くしてポンプを据付けるということが起るわけでありますが、そういう場合にはポンプの施設費は当然原状回復費用の中に入るわけでありますが、それができ上りました後のポンプの維持管理費につきましては、これも毎年の費用を計算いたしまして、それを何カ年間の、要するに資本還元いたしましたものを維持管理費として一時支払いするわけであります。そうしまして、まあいわばポンプの維持管理費は、一時もらつた金額の金利程度で以て将来に対する維持管理ができると、こういうふうなものを内金で支払うわけであります。その費用も事業団があらかじめ
納付金の中から天引きする、こういうようなことで農地に対しましては復旧を図るわけであります。それから同じ公共事業費の中でも公共施設に関するもの、これは主に道路であり、橋梁であり、金額の大きいものは水道、下水道でありますが、鉄道も一部ございます。そういうようなものに対しましては、
鉱業権者の賠償責任の限度というものが金銭的に幾らであるかということが算出できますならば、
只今の農地の場合と同じように、それだけ出させまして
納付金として徴収いたしまして、不足
部分を国費で補助するということができるわけでありますけれ
ども、農地の場合と異なりまして、例えば道路等につきましては、
鉱害によりましてその破壊された道路がそれではどの程度の価値の減少があつたかということは金銭的に甚だ算出がむずかしいのであります。むしろ不可能に近い、強いて言うならば、その場合はその道路の復旧をして、元
通りに直す道路の復旧費そのものが、これは
鉱業権者の負担すべき賠償責任であるというふうなことになります。それを少しでも少く見積るとか、或いは更に大きい義務があるというようなことは、どうもほかの方法で以て言い得ませんので、結局におきまして、その公共施設については、復旧費が
鉱業権者の義務である、賠償責任の限度であるというふうにならざるを得ないのであります。そこで勿論この場合におきましても、例えば道路が相当長期に使用せられました結果、かなり破損されておる、それに併せて
鉱害が起
つて一層破損の程度が激しくな
つておる、こういう場合におきましては、初めの破損の前の程度まで復旧いたしますというと、それはその
鉱業権者としては
鉱害による
部分以上を復旧したことになりますから、その復旧費の全額を負担するということは、これは必要はないわけであります。従
つてそのようなものにおきましては、
鉱業権者は一般的な使用に基く破損
部分と、
鉱害に基くものと推定される
部分と、その
比率を負担するということになりますから、絶対的に道路の復旧費の全額を同じ
鉱業権者が負担するという結果にならない場合が多いのでありますが、考え方としては今申上げましたようなことになるのであります。そこでこれに対しましては、現在公共施設に対する公共事業費からの
補助金がございます。これはおおむね工事費の五割程度を補助されておりますが、この五割の
補助金はこれは一応国から出してもらうということにな
つております。一応国及び地方公共団体は合せて半額程度の
補助金を公共事業費の原則に基きまして補助するわけでありますけれ
ども、本来その復旧費というものが
鉱業権者の全責任に帰すべなものだ、従
つて国はこれに対して補助は出したけれ
ども、本来は
鉱業権者の支払うべきものを出すのであるから、ただ一時にそれだけのものを負担させるのが、一般の公共事業費が補助されておるという振合いから見て気の毒であるからという論議もありまして、公共施設に対します国の補助は将来何年かの後
鉱業権者から償還をさせるということにな
つております。これは
法律では償還という文字は使
つておりません。
補助金として一遍出して別に徴収するということにな
つておりますが、償還させるということにな
つております。従いまして公共施設につきましては、一応
鉱業権者が全部復旧費を負担するという建前にな
つております。それから家屋、墓地等に関しましては、先ほど
ちよつと触れましたところで大体要点は盡きておりますけれ
ども、これも家屋の復旧ということを全面的に原則的に取上げるということは鉱業法と矛盾いたしますので、特に家屋の復旧に関しまして協議をすることができる場合、或いは
通産局長が査定をし得るという場合というものは、一般の公共施設の復旧に関連いたしまして、当然にその家屋の復旧まで、家屋等の復旧をしなければならないというふうな場合、これを例えば道路をあけたためにその附近の道路に沿
つておる家屋も当然或る程度の工事をしなければならないということが一番手近かな例でありますが、そういう場合には当然復旧に関する協議ができることにな
つております。それからそういうふうに一般の公共事業の工事と関連いたさない場合におきましても、非常にその家屋の
鉱害程度が甚だしくて、実際の使用に非常に支障を来たしておる場合にもやはり協議ができるというふうにな
つております。従
つて單に
鉱害によ
つて家屋が若干の被害を受けておるというだけでは復旧に関する協議まで持
つて行けないということにいたしております。その
理由は、いやしくも
鉱害によ
つて家屋が若干傾いているという場合に、すべて認可をいたしますと、鉱業法上の原則を全面的に変えるばかりでなく、徒らにいろんな紛争を起すことになりますので、そういうふうに止むを得ない場合にだけということにいたしておりますので、この点は被害者としては若干不満の
意向が強いというふうに私は考えております。で、協議裁定をいたしました際の効果というものは、
通産局長が、例えば某々家屋はこういうような計画で復旧すべきものだと、こういう裁定をいたしますというと、それはこの
法律案におきましては別に強制力は持
つていないのであります。その効果としましては、
鉱業権者と被害者との間でそういうふうな内容の協議が整つたという、つまり契約が成立したというふうな民事的な効果を持たせております。従
つて鉱業権者がその裁定にもかかわらず実際の復旧をやらなかつた場合には、これはやはり民法の原則によりまして適用するというようなことになりまして、これに対する行政的の措置はこの
法案では考えていないのであります。大体以上のような構想でありまして、次にこの事業団の内容を若干御
説明いたしますと、このような仕事をいたします
鉱害復旧事業団というものは、これは先ず政令で以て地域を指定いたしまして、この指定された地域に事業団を作ると、こういうような
順序になります。現在考えられておりますのは、この
一つの事業団が、
予定されております復旧工事の計画或いはこの工事を実行いたしまして相当なこれは人手も要しますが、その経費倒れにならないようにということから、この実行を考えなければならんと思
つております。そういう意図からいたしまして、
只今では
九州地区を一本といたしまして、
九州に一事業団、それから宇部、山口でありますが、宇部地区に一本、宇部は
九州に比べまして、全体の
鉱害額から言いましても五%程度でありまして、非常に小さいわけでありますが、小さいだけに早くこじんまりとやればやれないこともないというふうな事情もございまして、大体今のところでは
九州及び宇部にそれぞれ
一つの事業団を作ると、こういうふうな構想であります。これは手続をいたします場合には、発起人が被害者、加害者及び第三者、第三者の中には府県或いは市町村等が入りますが、そういうものの代表者が少くとも入りまして、そこで発起人になりましてやるということになります。それから発起人がこれは認可申請を
通産大臣にするわけでありますが、発起人が理事長を推薦いたします。それによりまして
最初の理事長ができ、更にその理事長を選任して議決機関ができるわけであります。設立されました以後、つまり第二の改選期以後におきましては、理事長は評
議員会で推薦する。評
議員会で推薦した者から
通産大臣が
任命する、こういうことにな
つております。で、評
議員会の
構成は、これも被害者、加害者、第三者という三者
構成で行
つておりまして、そのそれぞれがいずれも過半数を占めてはならないというふうなことにな
つております。大体の考え方といたしましては、被害者及び加害者が同数であり、第三者というものがそれよりか少い、少い人数で以て
構成すると、大体こういうふうな考えでおります。で、事業団の仕事につきまして基本的なことは、議決機関としての評
議員会がこれをきめ、評
議員会には勿論理事長がる出わけであります。この評
議員会で一番基本問題であります復旧地基本計画をきめ、更に各炭鉱別の負担計画、こういうものをきめます。事業団の仕事といたしましては、基本計画を作るということと、納金を徴収して、それを支払うということがまあ一番主な仕事でありまして、それ以外にはいろいろここに書いてございますが、実際の復旧事業を行う場合もございます。これは事業団が直接その復旧事業を、復旧工事を施行するように考えられがちでありますけれ
ども、この
法律の建前といたしましては、復旧事業を事業団が担当するのは例外的な場合でございまして、本来はこれはそれぞれ道路法、河川法或いはその他の土地改良法とかいつたもので、大体どういうふうなものがその工事を担当するかという原則がきま
つております。それは例えば市町村でやることもあり、土地改良区でやることもあるのであります。各
法律に基くものが
法律に定められたところによ
つて工事を担当するのであります。それから又
鉱業権者が工事権者になり得る場合もありますが、いずれの
法律によりましても工事担当者が縛られていない、而も復旧事業団が担当するのは一番適当だと、こういうふうに認められた場合においてだけ事業団が工事施行者となるのであります。例えば
鉱業権者が本来ならば工事を担当すべきことにな
つておるけれ
ども、その
鉱業権者自体が工事を施行する能力がない、そういつたような場合には事業団がする。それ以外の場合におきましても、例えば道路と農地と
ガス或いは水道といつたようなものを総合的に一緒に工事したほうがよろしいという場合がありまして、而もそれぞれの
法律に基いておりましても、事業団が担当し得るという場合には、むしろ事業団がそれを包括的にやるというようなことも考えられております。そういうふうな例外的なケースの場合にだけ事業団がやる。従
つてそれ以外のものにつきましては、ただ納金の中から支払うべきものをその工事の担当者に支払うというふうなことが事業団の実際の業務でありますが、本格的な仕事の実体というものは、むしろ基本計画を作るというところにあるわけであります。それから事業団のやり方といたしまして、借入金をし、或いは復旧手業債券を発行するということが認められておりますが、これは復旧工事をいたします場合、例えば特に家屋等に関しましては
鉱業権者が復旧をいたしたいけれ
ども、金融的にその能力がない、こういう場合におきましては、事業団としては資金運用部の資金その他の借入金等で運用いたしまして、
鉱業権者に資金の貸付をして復旧をさせる、こういうふうなこともできるようにな
つております。家屋等につきましては、この資金の手当が満足に行きますと、この点から事業団が援助することによ
つて或る程度の家屋の復旧も促進されるということになるかと思
つております。
大体
條文を逐わないで構想だけ申上げましたが、この
法律の大体の考え方というものは以上申上げましたような点でございます。