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参考人(
福田關次郎君)
只今参考人として当時の模様を述べよとのことでありまするから、簡單に……。
当時私どもは衆
議院に議席を有しまして、先ほど来いろいろ御
証言がございましたように、公共
配電統合そのものにも当時相当
議会には反対があ
つたのであります。又発送電の
法案の改正におきましても相当な反対論があ
つたことは当時御記憶にな
つたかたもあ
つたかと思います。殊に
公共団体の公営しておるもの、即ちこれは私益追求のものではありません。その地域におきまする全部の人々の公なる
利益の
ために長い間経営されて、それが合理化されてようよう緒に付き、以てその地方
公共団体が御承知の
通り、先ほど来述べられたように、相当な
利益を挙げて、そうしてそれが歳入の上におきまする非常な貢献をなし、
従つてその地方住民の
利益は莫大なものであ
つたことは、一地方におきましては歳入の二〇%まで負担しておりました。当時我々はこれを
統合することには反対でありましたが、どうしても今や戰争はもう完全に迫
つておるではないか、来栖、野村両氏は米国において或いは難局に遭遇して、これはもはや最後の事態に突入するであろう、そのときにこの
統合に反対するがごときは非国民だというような空気があり、当時の軍部、官僚が非常にこれらの宣伝をいたしたものであります。然るにかかわらず、私どもは敢然として、この公営に
なつている歴史を持
つておりまするものを強権を以てこれが
統合を
強化するがごときはどこまでもいけない。それが私益追求の私立
会社を
統合して豊富低廉なるところの電力を起す、或いは配電をいたしますことには賛成であります。すでに公のものは命令一つで自由自在になるのであります。例えば一つの県、その当時は今日の県とは違いますから、いわゆる軍部であろうと、
政府の言いなりになるのであります。あらゆる都市におきましても全くそうい
つた命令そのものに
従つておりました。それを殊更又私立
会社のものと
統合するという必要はどうしても認められない。だからこれだけは切り離して
統合しようじやないかということが
議会の各政政党におきましても、
委員会においても相当な強い
意見であ
つたのであります。ところがいろいろそれじやしようがないからというので、いわゆる
配電管理法案を出そうと、
近衛内閣はこれを強行せんといたしたのであります。それでもう
法案はすつかりできておりました。できましたが、世の反対と
議会の反対を見まして、今や日米の危機目前に迫るのに、
議会において一大紛糾を來たすがごときは、これは大変だというので、折角できまして強行する覚悟であ
つたものを、戰時態勢下における
近衛内閣も遂に
配電管理法案というものを撤回することにな
つたのであります。如何に当時
議会におきまする反対論の峻烈であ
つたかが御了解ができることだろうと信じます。
そこで私どもは、
政府が
配電管理法案はやめるが、どうしてもやらなければならん、こうなりまして、そこで
政府の方面にも相当協力する者もできて来まして、どうしてもやらにやならんと言いましたから、ここは大変だと思うけれども、もはや強力を以てやるというのならば、
総動員法というものがすでにできて、この
総動員法の
措置というものは産業の戒嚴令であります。その戒嚴令の下におきましてやろうとするならば、
政府はやり得ます。これに反対いたしましても我々は敗北するのは当然であります。そこで、どうしてもやりたいが、どうでしよう、こういうことでありました。それでは
配電管理法案は撤回して、これをおやりになるつもりならどういうところからやるか、そこで私は
昭和十六年二月の
議会において、いろいろ私もほかの
委員もいたしておりますが、逓信大臣の都合もあり、次官の都合もあるというので、決算
委員会において私はこれを質すことにいたしたのであります。その質しまするに当りまして、それより先に配電、発送電の改正
法案その他でいろいろやはり論議をされておりました。その当時逓信大臣は、
公共団体のごときものを若し吸收するといたしたならば、今までこれによ
つて賄
つて来た地方
公共団体は如何なる結果になると思われるか、今日はあらゆる
事業は
統合され、或いは中小商工
業者の中にはストツプをされて、その業をやめなければならん、担税力はいよいよ減少して来る、その上に唯一の
財源であるものを没收に等しきことをして、この地方
公共団体を如何になすか、我々個人の
利益ならばこれは犠牲にするが、公なものはそうは行くまいというて論議を始めましていたしました結果、逓信大臣は仰せの
通り、地方
公共団体の財産を失い、これによ
つて運営を危うくするがごときは愼しまなければなりません、こういうことを明言されております、そうしていよいよ一歩譲
つて、我我はこの
公共団体の
配電統合に参画するとしたならば、その結果生ずる今まで
一般会計に編入してお
つたところのその地方
公共団体の
利益というものを如何にしてくれるか、如何になさるおつもりか、こういうことを言いました。そうしたところが……
あとからこれは御
参考にして下されば結構です、時間がありませんから読みまませんが……。逓信大臣は、これに対しましてはいろいろな、税金その他を
考慮をして、これが
財源を失わないように善処いたしたいということでありました。それならば、その善処するという議論は、この統制が続く限りは、というふうに了承してよろしいか。これに対しまして、電気庁長官はこれに又答弁をされております。併しあなたがこれだけ約束をなさ
つて配電の
統合が続く限りはその
財源を失わないとお仰せに
なつて、明言をされたが、どうも今日の内閣はときどき変るのである、あなたのごときえらいかたが変
つてもら
つては困るのだが、併し内閣の都合でいつ変るかわからん、ここで明言されてもあなたがお変りに
なつては、この地方
公共団体はどうなるか。と、仰せの
通り内閣が変わるかも知れません、私も又変わるかも知れません、併しながらここに
逓信省と申しますか、電気庁と申しますか、これらのものが、地方
財源を失わんということについて、一丸と
なつてその責任を痛感いたしますということを明言されておりました。ここにおいていよいよこれによ
つて統合されても、
統合されると仮定いたしましても、地方
公共団体の
利益は断じて今まで以上に減少することはないということになりました。
そうして我々はその
議会は終
つたのでありますが、それから
逓信省がいよいよ問題を起し、我々は逓相官邸に数十回行きました。どうしたらいいか。そこで私もここで言うております。地方
公共団体の歳入を補填するにしたところが、私立の
会社と公営団体とのものを合致するとぎに、
收入を殖やそうと思えば水増しをしなければならない。
評価のいわゆる水増しをすれば私立
会社のほうが反対するであろうし、その点はどうなさるのか。ここまで私は質問しております。そこが政治的に言うに言われない、こういうのであります。これは政治、いわゆる高等政策の存するところでありますから、今こうするということは言えない、御信頼下さいということで、一丸と
なつて責任を負います、こういうことです。然らばこれを失わんようにお願いしますということにいたしました。そこで初めて考えた。水増しはできない、
評価を増加することはできない、公平に行かなければならない、そこで遂に
公納金という
制度がこの
議会におきまするところの決算
委員会における逓信大臣との約束において、然らばというので発見されたのが
公納金制度であります。そこで年限の問題、年限は初めこうだ
つた。一体どうでしよう、この戰争が五年も十年も続くようにな
つたら日本はもう駄目だ。今の考えは、たとえ日米の戰争があ
つても三、四年すれば片付いてしまう、こういうことであります。併し三、四年、四、五年で片付くということはこれは仮定である、こうなります。どうしよう、まあ大抵十年を超えざるということにしたならば、その間には勝負はとうに片付くというので、その見地より
配電統合の続く限りは、地方
公共団体の
利益は失わんということをお約束なされて、そこでその年限はいつまでかということになると、この太平洋戰争というものは、当然まだ始
つておりません。日支事変だけでした。併し今始まろうとしている。それがいつ完了するかは想像はつかんが、併し五、六年もかか
つたらば日本はくたば
つてしまうし、できるものではない、それまでに一時にや
つてしまうのだというのが軍部のその当時の澎湃たる空気でありました。そこで四、五年としたらどうであろうとありましたが、遂に大事をと
つて十年を超えざるということにしたならばすべてが解消してしまう、そこで解消すれば、
総動員法は今申上げる戰時中の産業戒嚴令である、保安維持の戒嚴令と同一に、そのようなものが戰争が済んでも亦継続して人権を蹂躙する、助産権を侵害することを、平然として憲法を無視するようなことがあ
つては相成りませんので、如何に時の軍閥といえども、戰争が済めば釈然としてこの統制を解除して、
総動員法は無効となる。
従つて今まで強要されたところのものはもとに戻るということは、これは憲法の私有権を確保いたしまする途の当然の帰結であります。ここへ来たのであります。これが十年ということをきめました
基礎であります。
先ほど来いろいろお話を承わ
つておりますと、本当の当時の大きなこれは政治的な
関係で、法的には
統合することもできると言われることは御尤もです。ところがその政治的の方法としてどういうわけでそんな
公納金制度をと
つたのかということは、失礼でありますが御承知のかたはない。これでは本案の判定を如何にするかは、これは御困難であることは当然であります。いろいろと議論が出ます。本当はこれは政治的
折衝、その
折衝の十年というものは戰争が済めば
総動員法も消滅する、そこで今まで
統合されたのも、必要によ
つて元の所有者にも帰ろうし、それから統制は解除されるだろうし……今日はどうだろう、食糧統制だけ、
あとは全部解除いたしております。然るにこの
配電統合だけが今日まで残りまして、そうして非民主的、戰争当時の強権を濫用したところの官権の遺物が今日残
つておるのは、日本の民主主義の一大恥辱であります。どこに一体財閥に対抗して、これらの行動に対抗し得るものがどこに見られるか。この部門に立籠
つて、そうして今日まで存続しておるということは、世界に対しても民主独立日本の、私は想像申上げまする上において実に毎日の辱めを感じております。これは皆様
議会のかたがたにもよくお願いをいたしまして、こういう不自然は、如何なる議論をいたしましようとも、この
総動員法そのものは私有権を没收したものもあります。いやだというのに取上げた、そうしてこの強奪したものをそのまま
統合して姿を変えて、そうして今の
公納金その他をやめんとするがごときは全くこれ、現在の憲法を逸脱しておるものであるということまで言いたいように感ずる。それでありますから、これらの点から
考慮いたしまして、戰争は五、六年で済むということは、その当時の閣僚、私どもはその当時民政党に属しておりましたが、民政党の幹部も、こんな君、十年も五年も日本は続くかい、もう二、三年でやつつけてしまうのだ、こういうことでありまして、五年というのを十年という範囲にしておけば戰争は終結する、終結すればこれが解消される、
総動員法は駄目になる、そこでいわゆる今日の西日本重工業、或いは中部の重工業、東部の重工業というものは何でありますか。これはみな民有
国家管理、これらが戰争においてみな解放され、進駐軍の接收のものまでもことごとく所有者に還元されるときに当
つて、なお一部のものがここに立籠
つておるということは、これは民主日本の唯一の非民主的の典型だと私どもは大変憂慮しております。
そこで我々は、
公共団体の
利益ばかりではない、
公共団体は数百万、或いは数十万、数万の人々がみな均霑するのでありまして、私一人の
利益の
ためではありません。これを一つ御了承願
つて、そうして
公納金というものは、年度をきめたら
期限が来た、そのようなものではないのであります。そこで妙なのは、先ほど来いろいろ例がありましたが、これを創定いたしまする当時には、例えば京都の例で申しますと、京都は公営
事業で使
つておる電力或いは電灯料はこの分二割、この分三割、先ほど
仙台の
代表者からお話になりましたが、ことごとくこれを片つ方減少して
一般の住民よりも下げて、そうして市のいわゆる歳出入に対しまする緩衝地帶としてお
つた。これも一つの、今までの地方
公共団体の
利益の中に入れるべきものであると私ども主張した。二割、三割引いておるのもこれは
利益である。ところがそれではどうも困るのでありますから、これは二割、三割引いてお
つたものはそのまま引くことにいたしましよう、こうなる。それだから京都のごときは、一年半に亘
つて二割、三割と皆引いております。それをいつの年か
理事者がその
立法当時の精神を忘れ、或いは
事業家の排除によ
つて遂にこれはうやむやにしておる。現在こういうことがあるということは実に遺憾千万であります。だから我々のほうから計算しますと、今日の
配電会社のかたがたでも非常に経営が困難だとおつしやる。我々はここにもちやんと言うておりますが、発送電のていたらくはどうだ。官僚的に経営して放漫な支出をして幾らでも金が要る。それで足らない。千五百万円を
国家からもらう、もうもらうことを前提として放漫な経営をや
つているのであります。放漫杜撰にして非能率的な経営を現在の
配電会社がや
つてお
つて、そうして国民が搾取の
対象とされておる、こんなものをメスも入れずにこのまま置いたならば日本はどうなる。これらの
配電会社なんか大いに自覚して……、そうしてこの人々の俸給のスライドを御覧なさい、
公納金というものは元の円価のときだけの
金額に認めておいて、自分らの給料は数百倍に上げておるじやないか。そうして電燈、電力代の値上りにいたしましても、京都市にいたしましても、その当時から二百三十倍以上に上
つております。然るに
公納金はその当時の価いを以て計算する、こういう矛盾があります。これらに刺戟を與えてこそ、私は
配電会社なんかの運営というものに本当に魂が入
つて、一大結果を得られるものと思います。誠に私どもは今日の民主主義日本の前途をずつと考えますときに、こういう恐るべき遺物がまだ澎湃として勢力を持
つているということは非常に考えなければなりません。そして地方
公共団体はますます
財政上困難であります。日々の新聞で御承知でもありましようが、もうこれは赤字々々で、私どもの京都にいたしましても約十三億の、二十六年度では赤字であります。幾ら赤字でもこれを経営しなければや
つて行けないのであります。それでありまするから、もう平衡
交付金なんか少々頂いてもやり切れない。そこへ持
つて来て当然主張すべき権利があります。その
統合というものが続いている限りはこの
利益を失わぬということを
逓信省そのものが御公約に
なつております。これを私どもは主張いたしまして、そしてこの
公納金制度ができたが故に、ここにありますることを御了承願いまして、そして我々の
要求いたしまするのは徒らなる
要求ではありません。その当時の実績やかような情勢から
公納金制度ができ、それが
ためにすべて私どもは将来の
ためを考えて
議会において保証を……、それでありますから今の
復元の問題は時代が違う、姿が変
つているから
公納金の
制度は
国家が責任を負い、
配電会社が負うべきでないということの主張でありますが、それは別の問題であります。私どもは非難はいたしませんが、よくこの辺を勘案いたしましたときに、地方
公共団体の今日の苦境、そして又京都のことを申して済みませんが、明治二十五年に明治天皇が、都をお遷しにな
つたについて将来京都はさびれるというので、お
手許金を出して、日本一のあの古き都に日本一の進歩した文化施設の、いわゆる発電所を作るということで、お
手許金まで頂きまして、これによ
つて事業を起して京都の将来を運営して行けよとの大御心によ
つて、明治大帝は明治二十五年の竣工式には皇后陛下まで御同列で御参列にな
つたのであります。それで、又
事業開始のときにも行幸に
なつているのであります。かくのごとくして地方自治体の発刺とした運営は……。