○
参考人(
中島英信君)
只今御指名頂きました
中島でございます。
中小企業研究所ということにな
つておりますが、今日申上げる
意見は、
研究所としての正式に決定された
意見というわけではないのでありまして、個人の
意見でございますから、その点御了承を願いたいと思います。又私
自身も大体
中小企業の
経営者でございまして、どちらかと言いますと、主としてむしろそういう見地から
意見を申上げたいと、かように思うのであります。
協同組合法の
改正の問題が出ておるようでありますが、その問題を大体焦点にいたしまして、先ほど
委員長からも
お話がありましたので、少し他の問題にも若干
亘つて中小企業対策の一般的な問題についても少しく申上げたいとかように思います。
中小企業問題及びこれに対する
対策については絶えずいろんな方面からいろいろな
意見が出ております。その
意味ではいろいろな
意見がかなり出尽しているという感もあるのではないかと思います。
従つて特にここに又新らしい問題とか、或いは
対策というものを
お話申上げるということも困難な問題であると思いますが、併し一面から考えますと、この
中小企業に対する
対策がいろいろとられておりますけれども、実際には
中小企業の困難というものはなかなか解消しておりませんし、絶えず新らしい問題が出て参ります。まあそういう点から考えまして、この
中小企業に対する
対策というものは現在或る
意味では
一つの転換的な時期に来ているということも考えられます。この
中小企業対策を立てるその
根本の
考え方につきましても、これは
中小企業というものをどういうふうに捉えるかというところからやはり一応考える必要があると思うのであります。で、普通
中小企業問題を扱う学者その他の
人たちは、主としてこの
中小企業問題というのは、この
問題性という面から入
つて行つてこれを捉えるという
見方が多いのでございます。これは今日、
日本において
中小企業問題を論ずる学界において殆んど定説であるかのようになりかか
つております。併し私らはむしろ
経営者の
立場から見て行きまして、この
考え方については若干別の
見方をしたいと
思つておるのであります。つまりこの
問題性から捉えるということは、まあ
中小企業が大
企業と
競争して没落して行く、或いは非常に不利益な
立場にあ
つて困難しておると、こういう面から見て行くということになるわけであります。併し
中小企業の中にもいろいろなものが含まれておりまして、規模において
中小であ
つても、絶えず
健全経営を続けておるものもある。
経済状況の変動の如何にかかわらず、又戰前、戰時中、
戰後を通じて
相当堅実な
経営をしているものもあるわけであります。こうい
つた面から見ました場合は、非常に問題ということに捉われますと、
そういつた面をとかく
見逃し勝ちになるわけであります。
従つて対策を考える場合にも、
中小企業が非常に劣弱であ
つて、結局これは没落して行く傾向の強いものだとい
つた面だけが強く出て来る。最後はこの
中小企業問題というのが大部分は
社会問題であるということにな
つて来ますと、十把一からげにこれは
養老院とか
慈善病院へでも
叩込めばいいというような結論にどうしても向いかねないのであります。併し
中小企業の問題が、没落というようなこと、或いは非常に困難ということはまあ事実として現れる場合も勿論あります。併し
日本のみならず各国を通じても、
中小企業というものは必ずしもその数を減じて行かない、絶えず存続しておるということの中にはもつと別のものがあるということを見る必要があると思うのであります。そうでありませんと、積極的な
中小企業対策というものを見出すことが困難にな
つて来るのであります。つまりこの
中小企業をその病理的な
現象面から眺めますと、丁度病気という面から
人間を見るのと同じことであ
つて、病人だけが
人間であるような錯覚を生じて来る。そうでなしにやはり
人間を見る場合には、健康な
人間というものを捕まえてその生き方を見るということが必要であると同じように、
中小企業の場合には、その本当の
中小企業のあり方を捕まえて行く場合には、そういう
本質的な面から見て行く必要があるのであります。そうでないと、單に問題という点から見るときは、
中小企業の属性として現われているものを
中小企業の
本質であるかのようにとる。
従つて中小企業を定義する場合でも、その
中小企業が附随して持
つているところの
性質を、これを
中小企業の
本質であるとい
つたようなことがしばしばできるわけであります。ここで私が転換と申しましたのは、従来は確かにそうい
つた点から
中小企業問題が取上げられて来ておりますが、ここれは避けがたいことであ
つたと
思つております。少くとも
中小企業ということがいろいろな人の意識に上
つて来たということは、問題があ
つたからであ
つたのでありまして、そこから入
つて来たのであります。
従つて今日まで取られて来た
対策がそうい
つた点から進んで来たということは、これはやはり止むを得ないことであると思いますが、今後の問題といたしまして、やはり若干
考え方を変えて行く必要があると思うのであります。
従来からとられて来た
中小企業対策というものをいろいろ見てみますと、いろいろな分け方がありますけれども、これを
三つの面或いは
段階から見てみたいと思いますが、第一は、この
中小企業は大
企業が発展して行くに
従つて、大
企業の持つ利益を
中小企業は持つことができない。
従つて大
企業との
競争に破れて当然これは亡んで行くものである、こういう
考え方であります。こういう
考え方に立
つて来た場合には、当然この
中小企業というものは没落して行く、或いは没落してもいいという
考え方が出て参ります。こういう観点の上に立ちますと、どうしてもこれに対する
対策としては
放任主義にな
つて来る、或いはむしろ意識的に淘汰しようという
政策が出て来るわけであります。
従つて戰後この
傾斜生産政策がとられておるような場合でも、その当時或る
政府の
要路者に私らが質問したときに、こういう
状況で
中小企業というものが非常に困難な
状況にな
つて、中にはこのために
企業が潰れなければならんとい
つたようなものができて来るかも知らんが、それに対してどうかとい
つた場合に、やはりそれは止むを得ない、或る程度自然淘汰されるであろうという
意見が出たのでありますが、併し自然に淘汰されるであろうということがわか
つてお
つて、これをそのままに見ておくという
放任政策、或いはむしろ意識的にそう
なつたほうがいいと考える、こういう
政策がどうしても出て来ることになると思うのであります。これはいろいろな場合にそういう形をと
つて現れて参ります。例えば昨年の
国会でも
計量法というものが通過しておりますが、ああい
つたものが出た場合に、結局
度量衡器を作る
製造工業の場合において、一定の
設備が強制される、こうい
つた場合に、小規模の
企業はこうい
つた法律が作られたために、小規模ながら
相当に優れた品質を作ることのできる
企業であ
つても、このために
企業として生きて行くことができなくなる、こういう問題も出て来るわけであります。こうい
つた点から
言つて、
根本の
考え方として、そうい
つた放任政策或いはむしろ意識的に淘汰するような
対策が出て来るような
根本の
原因とな
つておるところの
見方というものについては、これをやはり改めて行く必要があると思うのであります。これは勿論主観的に言うことは
意味がないのでありますが、
日本の場合を見ましても、明治四十年頃から今日に至るまで
日本の
経済において
中小企業の占める比重というものは殆んど変
つていないのであります。という事実の上から見ましても、やはり
中小企業が一応
相当の根拠を以て存続して行くのだという
一つの事例として見ることができると思うのであります。それから第二の
見方、或いは
段階の
政策としては、こういうものがあると思います。それは
中小企業は成るほどたくさんある。あるけれどもこれはあるというだけであ
つて、非常に力が弱い、質も
惡い。ただこれをそのままにしておいて非常に困難な
状況にあれば、この面から
社会不安を生ずる。そういうことであ
つては困る、
従つてそういうような
社会不安を生ずるような
状況を防ぐためには、何か手を打たなければならんという面から出て来る
政策であります。この場合には一応
中小企業に何らかの
方法を以てこれに途を与える。併し余り積極的に進むような
方向というものはとられて来ないことになるのであります。つまり大
企業との
競争に対して
中小企業が非常に倒れて行く、衰えて行くのに対して、これを防衛するような消極的な面で出て来る。同時にこれは
中小企業の発展する面を或る程度
制限し、拘束し、統制するような面が出て来るということになるのであります。例えばこの
協同組合法につきましても、或る
意味から言うと、若干その性格を見ることができると思うのであります。つまり
根本から言いますと、これの
協同化が
中小企業に必要である場合に、
中小企業が自由に
協同の団体を作ることができるならば、これは
一つの
行き方であります。併しながらこれに
法律的な
基礎を与えるということは勿論望ましいことであ
つて、その限りにおいてはやはりこの
中小企業等協同組合法によ
つて一つの
方向が与えられるのでありますけれども、ただ
組織が作られるというだけであ
つては十分な
効果を期待することはできないわけであります。
つまり協同組合を
作つてどういう
事業をやるかという場合に、この
事業をやる面においていろいろな
制限が余りに強過ぎれば、これは
折角作つても本当にその
効果を挙げることはできないということになると思います。これは又後ほど申上げたいと思いますけれども、例えばこれを
農業協同組合、或いは
水産業協同組合等々と比べて見た場合に、この点が我々にはつきりして来るわけでありますけれども、
事業協同組合に加えられておる
制限、例えば
さつきちよつと
委員長からも
お話が出ましたが、この
事業協同組合の金融に関する問題、こうい
つた面についても、
現行法ではこれができないことにな
つておる。今回の
改正法律案には出ておるようでありますが、従来は広い地域に亘り
連合会が
経済事業をやろうと
思つてもできない、こうい
つた問題があ
つたのであります。そういうふうに
中小企業に対する
対策がとれる場合においても、一面においてはこれに
一つの最低の
基礎を与える。併し全体的に見た場合に、これにかなり強い拘束を与えるという
政策が、そういう場合にはともすれば生れることにな
つて来るのであります。非常に極端な例をとりますというと、
徳川幕府の時代には、農民に対する
政策として
徳川家康は、死なない程度に生かしておけということを
言つたと伝えられております。その真偽は知りませんが、一応考え得ることであ
つて、そうい
つたふうに全く潰してしまうと、余り困窮さしては困る、けれども、併しこれは余り発展させるために十分な援助までは与えないというような点であります。
従つて今後
中小企業を真に振興して行くということを考える場合には、
そういつた面からやはり今一歩進む必要があると思うのであります。この
意味で私は第三の面からこれを見、且つ或る
意味で第三の
段階に
中小企業対策を進めなければならんと考えるのであります。それは、先ほど申上げましたように、
中小企業の
見方というものを、これがやはり
日本の
経済に果しているところの
役割をもつと積極的につかむということがなければ、そういうような
対策は生まれて来ないと思うのであります。今日
中小企業が非常に数が多い。これは人によ
つては、数は多いけれども
価値が少いというふうに考えている人も勿論中にはありますけれども、併し現に
企業としてこういう
工業として
一つの
事業を営み、或いは
生産を営んでいるということは、やはり
社会の必要に応じて
仕事をし、又
社会的な必要に応じて寄与しておられることでありまして、こうい
つた面で持
つているところの積極的な
性質というものを、我々としてははつきりつかむ必要があると考えております。特に目頭にも申上げましたように、勿論
中小企業は絶えずいろいろな困難に当面いたしますけれども、併し
相当に堅実な内容を持ち、そうして優れた品物を
作つて行く、こうい
つたものも少くないのであります。そうい
つたものに対しては、それじや別に
対策などは必要でないというふうに考えられるかも知れませんけれども、併しそういうふうに、まあ
企業であ
つても、これはやはり
中小の
企業である限りは、
経営の
政策を立てるにも、
経営の
組織を作り上げるにしても、
経営のやり方にいたしましても、又
社会経済上の地位にいたしましても、やはり大
企業と同じではないのでありまして、こうい
つたものを自由に
活動し且つ伸ばして行くことを考えると同時に、こうい
つた状況になり得ていない。そういうふうに非常に
健実で且つ典型的な形にはなり得ていないところの多くの
中小企業をも、そうい
つたところに
押上げて行く、推し進めて行くことをやはり
根本に置くべきであろうと思うのであります。そうでなければ、ただ徒らにこの
中小企業が淘汰されれば、そこから改めて失業問題やその他の問題が出て来ます。併し勿論現在の
中小企業のすべてが現状のままで行き得るかどうかは問題でありますけれども、
方向としてはやはりこれを多少の……
政府が行うにしても、前進的な
方向に進めて行くということであると思うのであります。それだけの
価値があるかどうかという問題については、これ又別に検討しなければならん問題があるかも知れませんけれども、先ほど申上げた実情なりその他から推しまして、一応ここでは結論的にこれはやはりこういう事実が示す
通り、重要な
役割を演じているからこそ、多数の
中小企業は存在していると見て
差支ないと
思つているのであります。
それではそういう積極的な
方法で
中小企業対策を考えて行く場合にどういう
考え方をするかということになります。で、この点について
根本的には、私は
企業である以上は
中小企業の
個々の
企業の自主的な、
独立的な
性質というものを強化して行くということがやはり第一番には
根本であると思います。
企業がやはり
企業として立
つて行く力がないとすれば、これはやはり
企業ではなくなるのでありまして、その点で
根本的にはやはり自立する力を与えるということを
根本的に考うべきだと思います。まあこの点で例えば
アメリカの
中小企業対策などを見てみますと、この点でやはり多少の興味のある
考え方を見ることができると思います。但し
日本の場合と
アメリカの場合とは非常に違いますので、勿論同じような
考え方はできないわけでありますが、まあ例えば先年トルーマンが
アメリカの
国会に与えたメツセージの
中小独立企業の主要なる問題についてというのがありますが、こういう場合でもただ小
企業ということにはな
つていないのであります。スモール・アンド・インデイペンデント・ビジネスという
言葉が使われておる。その他
アメリカの場合は絶えずインデイペンデントという
言葉が入
つて来る。やはり
企業が
企業として生きて行く場合には
独立性ということを
根本に考える必要があるんじやないかと思います。
従つていろいろな
方法で以てこれを助成し、或いはその
活動を保証する場合にも、
根本は絶えずその力を強化するというところに私は置かれていると思います。これは必ずしも
自由経済主義をとるとか、或いは若干
社会主義的な
政策をとる場合であ
つても、いずれの点においても、この点に関しては異るところはないと思うのであります。それを
根本にして行くにしても、第二には併しながら
中小企業の場合には大
企業と同じような形で
活動ができない面について、これを問題を克服して行く必要があります。ここへ出て来るのが私はやはり
協同化の問題であると考えるわけであります。併し
協同化ということは、單に例えば
一つの業種にたくさんの
中小企業があ
つた場合に、これが單一の
会社にな
つてできるとか、必ずしもすべて
企業組合にするとかいうわけではないのでありまして、例えば
協同組合を作るという場合には、やはり
組合員が
個々の
独立した
企業を前提としておるわけでありますから、この
独立の上に立
つて協同化の
政策をと
つて行くということになろうと思うのであります。更に第三番目には、
自分自身の力でも、又
協同的な
方法をと
つてもなお足りない点或いはこれは他の大
企業とも競合する問題については、
国家としての
対策がここに必要にな
つて来ると思います。こうい
つた点からこれを見て行くことにしますと、一応
三つの点がポイントとして出て来るのではないかと思います。この点で先ほどの
独立という問題を考えた場合に、
中小企業の場合に全く他からの
制限なり、他に
従属することを少くや
つている
企業が勿論あります。併し多くの者が指摘するように、
中小企業の多くのものは、
機械器具工場における
下請の
中小企業のごときは親
工場に
従属をしております。又問屋に
従属をしておるような
中小企業も非常に多いわけであります。こうい
つた場合に、この問題をどう取扱うかということになりますと、
下請企業のような場合に非常に
仕事の
関係が有機的に結び付いてお
つて、
一つの
部品を
生産しているというような形の場合にどうして
独立性を保つかという問題も出て来るように見えますけれども、併し実際は特殊な産業の場合には、
部品生産を大
企業がや
つて組立てを小
企業がやるということもできるわけでありますけれども、例えば
自動車なら
自動車にしても、今日
自動車の
部品を製造しておる
企業というものは
交換性に合
つたものを
作つて行けばこれはやはり
一つの
企業として必ずしも
一つの親
工場、或いは
自動車生産工場に
従属しなくても済むわけでありますが、そういうふうに基本的には
独立性を以て
一つの
社会的な分業の形にこれを
組織して行くという
行き方があるわけであります。その場合にはただ親
工場にいわゆる隷属するというような形でなくても、この
経営の能率を高め、優良な
製品を作りながら、そうしてその大きな
生産の
組織の中に、
体系の中に入りながらこの
独立性を持
つて行くということになるわけであります。そういう点から見てこの
生産の面からは能率的な
独立企業であ
つて、併しこれが総合された
製品なり生れて行く場合には、全体として
一つの
生産の
体系の中に入
つて来る、こういう形があり得るわけであります。この場合に大
企業が分
工場をたくさん
作つてや
つて行くというような場合には、まあ内部の
経営の問題として出て来ますし、今のように分布したような形の場合には、一々の
会社にと
つては外部の
経営の問題として出て来ますけれども、いずれにしてもどちらが
経済的であるかということが出て来ますけれども、
中小企業としていずれかの形が認められておるような場合には、そういう形で非常に
従属して来たように見えるが、
下請工場の場合にも
一つの
方向というものが考えられると思うのであります。まあそうい
つた意味で
中小企業対策に更に
積極性が必要であると考えます。
それに次ぎましては、この
中小企業対策の新らしい
段階においては、これに総合的な
対策を考えなければならんと思うのであります。
総合性を与える、つまり金融問題は金融問題だけについて考える、販売の問題、売行き不振の問題についてはそれだけについて考える、労働問題はそれだけについて考える、或いは
経営の問題、技術の問題をばらばらに
対策を考えて行くということでなしに、これらをやはり総合して見て行くということが
一つであります。それから更に
協同化を考える場合に、
協同組合法を作るとい
つた場合にも、この
中小企業に対する
法律を考える場合に單なる
協同組合法、或いはその他の
法律を
独立して考えるのじやなしに、これを総合的に絶えず考える必要があるのではなかろうか。例えば今日
協同組合法では
企業組合が認められておる。ところが税法上或いは
税務行政上では実際にはその
法人格を非認するような取扱が行われていると同じように、
国家の行う立法或いは
行政の
活動の面で以て矛盾した面が絶えず出て来ているわけであります。先ほど触れました
計量法の問題などにいたしましても、この場合にはその規定された
設備を
中小企業が
共同施設でやればやり得るわけでありますが、こうい
つた場合に
共同施設でやるということをこの
法律は認めていない。一方では
中小企業等協同組合法によ
つて共同施設を監視をしておきながら、一方においては
中小企業の存続に関する重要な問題に関して
共同施設を必要とする場合においてもこれを認めないとい
つたようないろいろな問題が出て来る。こうい
つたような各種の
法律の相互間における矛盾とい
つたようなものがある。こうい
つたことがなしにやはり総合的に絶えず
法律を検討して行くということが私は必要であろうと思うのでありますが、そういう
総合性を与えるという問題がございます。大体そういうふうに
中小企業対策には新らしくやはり科学性を与える、
積極性を与える、
総合性を与えるということを特徴としてこの新らしい面に推進めて行く必要があります。
ちよつと、時間がなくなりましたが、最後にそれではこの
対策を誰が遂行して行くかということになりますと、これは第一には、やはり私は、
中小企業振興
対策の
根本の担い手は勿論
中小企業者
自身であると思うのであります。その
意味ではやりは
中小企業者自体の自覚と努力なしに
中小企業の振興ということは絶対にあり得ないと思うのでありますが、
従つて国家として
法律を作り、
行政的にこれを援助する場合には、この面から見てそれをやはり基本にして考えて行く必要があると思います。
従つて中小企業対策の面において業者自体が実行すべきものと、
国家が施策すべきものとはおのずからそこに分れて来る点があると思うのであります。
国家としていろいろな
法律を作り、或いは
行政を行な
つて中小企業を振興して行く場合に考えるべき問題は、先ほど申上げましたことと若干重複するかも知れませんが、原則的には、基本的には、
中小企業の自主
独立を成るたけ助ける、その
意味でその
活動に余り
制限を与えることをできるだけ少くするということであります。それから第二の点は、大
企業と
中小企業の
関係をできるだけこれを公正に扱
つて行くということであります。つまり大
企業だけに保護が片寄らないということにする必要があると思います。例えば、今度
国会に出ました
企業合理化促進法案のようなものがありますけれども、ああいうものもあとにな
つて中小企業に関しては
経営診断などの問題が附加えられておりますけれども、
根本の狙いは、やはり大
企業を主としたところの法案である。戰前は
中小企業は非常に大部分は免税点以下の所得であ
つて、
〔
委員長退席、
理事古池信三君
委員長席に着く〕
税金を納めなくても済んだ。それが
戰後は
相当に広汎な
中小企業者が納税者として浮び上
つて来ておる、非常に大きな税金を一方において負担している。然るに一方においては特殊の大
企業だけが税金の面においてやはり特殊の利益を受ける。そしてその
企業の收益性を高めるために
国家的な援助を受けるということになりますが、こういうのを非常に極端に言えば、大
企業或いは大資本というのは
国家の権力或いは
国家の機構を通じて
中小企業を或る程度收奪するような形にもなるわけでありまして、こういう面からやはり絶えず公正なる取扱をするということがなければならないと思うわけであります。更にそれだけではやはり実際には済まないのでありまして、
中小企業の中で実際的に問題にな
つて来るものとしましては、この中でも特に弱い部門、つまり自立してや
つて行くためにそれを
協同化の方策で補おうとしても補うことのできないとい
つたようなものもやはりこれはあるわけであります。これはつまり零細
企業、特に家内
工業的なものでありますが、こうい
つたものになりますというと、やはりこれに対する保護
政策が必要である。特に現在の
中小企業対策において欠けておるものはこの点にあるのではないかと思います。それからそうい
つた補助
政策は特殊の部門に行われるに加えて、全体的に
中小企業を助長するような
政策としては、この特殊の機関の設定なり或いは特殊の資金をどうするとかいう問題がたくさんあると思います。ここで問題だけを申上げますと、
一つは、
中小企業に対して絶えず情報を提供し必要な啓発教育をするような機関というものは、今日の現状の
日本の
中小企業ではやはり欠くことのできない問題であると思います。これは
中小企業の自主的な
組織が全国的に非常に強力にな
つておれば、或いはその力でやれるかも知れません。併し現状に、おいてはやはり
中小企業庁のような
組織を以て
中小企業の発展にいろいろな面からこれを援助し、指導して行くという必要は今日においては非常に
重要性を持
つておると思うのであります。これは單なる情報を提供するとか、そうい
つたことでは
意味がないように考える人も中にはあるようでありますが、実際はそうではないのでありまして、
中小企業というものは大
企業と違
つてそうい
つたものを獲得して行く面において非常に力が足りない、又そういうような便宜を持
つておらないという点から見て、そうい
つた機関は当然必要である。それから
生産的な面において
中小企業を振興して行くという場合にはどうしても技術的な面において、新らしい技術的な知識なり何なりを提供して行くことも必要である。こういう面において
中小企業に対するこの技術面の指導援助というものを
国家的な施設として持つこともやはり必要なものに入ると思うわけであります。その次には、絶えず問題にな
つております金融の問題でありますけれども、これについては
中小企業の金融機構というのは、ここ数年間に割合に整備をされて来ているかのように思えます。
従つて問題はそれに廻す資金の量の問題が主としてここに出て来ておるのではないかと考えられますが、ただ併し機構の中でただ
一つ欠けておるものがある。何が欠けておるかと言いますと、これはやはり長期の資金を
中小企業に供給するところの機関を欠いておる。その点だけが
中小企業に対する金融機構の
一つの盲点にな
つておるわけでありまして、特に大
企業と違
つて中小企業はまあ証券市場で自己資金を調達することが困難である、こうい
つた面を補う処置を共同の金融施設でやれるかというとそれも甚だ困難でありますので、今日の
状況において少くとも
中小企業が大
企業のように資本を蓄積して行くにしては、税金を取られ過ぎておるのでありますからして、やはり
国家の力によ
つてこういう施設を当然や
つて行くべきであると思うのであります。こうい
つた積極的な面の施設というものを当然考えるべきであると思います。
最後に、今
そういつた面の中に
協同化政策というものが織込まれて出て来るわけでありますが、この
協同組合法による
協同組合というものは、この
協同化政策の中の全部ではなしに、やはり一部分であると思います。勿論
協同化ということを広い
意味で
言つた場合には、
協同組合という
組織だけではなしに、
協同組合という形をとらないいろいろな連合の方式もあります。而して重点は何と
言つても現状においてはまあ
協同組合であるわけであります。
従つてこの
協同組合に関する
法律というものは、
中小企業の振興には非常に重要なる
影響を持
つております。これに関する問題点、
意見だけを申上げます。簡單に要点だけ申上げますが、今度の
改正法律案を主として考えますと、
一つの問題としては、この広い
経済、広い地域に亘る
協同組合連合会が
経済事業ができるようにするという点が出てお
つたと思います。これは私どもすでに二、三年前から、この
意見を絶えず出しておりましたけれども、一方において
事業者団体法や、独占禁止法にも緩和の傾向が現われて来ており、殊に今の
状況においては特に必要でありますが、そういうことのない場合におきましても、これは
中小企業が特に必要な点であると思います。と申しますのは、大
企業は自分の支店を通じ、或いはエージエントを通じて全国的な市場を相手として
活動することができる
中小企業が、これと対抗して同じようにやはり全国的なマーケツトを相手にして
活動することができなければならんことは当然のことであるのであります。こういう場合に広い地域に亘
つて協同組合連合会が
経済活動ができないということであ
つては、不当に
中小企業の
活動を圧迫するということになると思うのであります。こういう点から
言つて、これは当然
改正されるべきものであると考えます。なお、
組合員の範囲の問題、資格の緩和の問題もありますが、これについては若干、いろいろ
意見もあ
つて、そのために零細
企業が却
つて圧迫されるのではないかとい
つたような見解を持つ人もありますが、併し
協同組合の作り方にはいろいろあるわけでありまして、今日
中小企業というものは單に同業者間の
競争とい
つたような平面的な
競争だけでなしに、大
企業との間の
競争もあり、その他いろいろな問題があ
つて、いわば全体的な
競争の中に入
つておる
関係から行きまして、
協同組合の
行き方にはいろいろな形があるわけであります。例えば問屋に関して
協同組合を作る場合にも、問屋に代る
協同組合を作るということもあります。或いは問屋を含めて
協同組合を作ることもあり、或いは問屋に対して
協同組合を作る場合もあるというようないろいろな形があるわけであります。こういうふうに実情において
効果が上る
協同組合を
作つて行く場合には、その
組織の範囲内が合体されることのほうが適切であるという
意見もあるわけでありまして、この点若干の
意見の相違もありますが、特に零細
企業がこのために不利になるというようなことがないような施策を一方において講ずるならば、拡大するということも
一つの
方法と考えます。
ここに出ていない問題点を申しますと、重要な問題点は先ほど
委員長からもちよつと問題点の指示がありましたけれども、
企業協同組合に預金の受入をさせるかどうか、これは他の種類の
農業協同組合その他の場合と比較した場合の均衡上から見ましても、又先ほど申上げた
中小企業対策というものは総合的に考えなければならんという面から見ましても、
協同組合活動が金融の面においても、
生産の面においても、販売の面においても総合的に
活動する
意味において初めて
効果が上がるわけでありまして、單にこの
事業面だけを認めてこの金融面を禁ずるということでは、やはり
効果的にことを上げることができない。こういう点から見てこの
事業協同組合が預金の受入のできるようにするということは、これは
中小企業に対する
協同組合の性格上当然のことであると思うのであります。で、
協同組合の金融に関してもう
一つ関連した問題としましては、現在問題にな
つておるものが信用
協同組合の員外預金を認めるかどうかという問題が出て盛んに論議されておるようであります。この点は、私の見解といたしましては、
根本的には信用
協同組合というのは、一面ではこの
協同組合よりほかの性格を持
つておる面があるのであります。そういう点から行きますと、原則的には員外預金は認むべきであります。併しなら従来のいろいろな経験その他から見て員外預金をした場合に、預金者の保護という面についていろいろ問題があれば、ここに若干の
制限をする必要があるということについても、必ずしも否定することができない面もあります。それで
方法をいたしましては、現在のように信用
協同組合は三百人以上集まらなければできない。
相当の自己資金を持たなければできないというような
法律的な
制限があるという現状をそのままにするならば、これは員外預金を認むべきであると思うのであります。併し
中小企業の金融問題を解決するためには、もう少し自由にこの相互金融の
組織を発達さして行
つたほうがいいというような観点に立
つて、信用
協同組合の設立の
制限をもつと緩和して行くということが好ましいのでありますけれども、この線が若しも貫徹されて行
つた場合においては、員外預金においては認可制をとるとか、その他の
方法を以てこれに若干の
制限を加えることが妥当ではないかという考えも出て来るわけであります。
従つてこの問題を、信用
協同組合を作る、ことについての
制限の問題を考え合せて作らなければ結論は出ないというふうに考えるわけであります。なお
協同組合の問題につきましては、初め
中小企業協同組合法が制定されました当時に、その当時の原案に保険
協同組合が載
つてお
つたわけでありますが、削除されて
国会を通過したわけであります。併し保険
協同組合というのは、今日諸外国の例を見ましても、どこでもやはり保険
協同組合というのは認めておるわけであります。ひとり
日本において、一方において
中小企業の振興のための
協同組合政策を推進しておきながら、特に保険
協同組合を認めないということは、如何なる点から見ても当を得ないことでありまして、これは当然今後当初の
考え方に戻
つて保険
活動をもやはり
中小企業の
協同組合事業として認むべきであると思うのであります。
なお、細かい問題についてはいろいろありますけれども、
協同組合法に関連いたしまして主要な問題と思われるものについて
意見を申上げた次第であります。ちよつと時間が予定を少し超過いたしましたので、一応これで打ち切らして頂きまして、後又御質問などの際にお答えいたしたいと存じます。