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政府委員(木内
信胤君) 抜打をしたことを甚だいかんというお
考え方を承わりました。これは抜打をせざるを得ざる理由が
一つあるのであります。今度の措置というものは大体三つある。
一つは従来與えられておりました輸出の約定をしたもの、いわゆる輸出前貸という、輸出ボードという形式による輸出前貸でありますが、貸付を日銀が再割引をするという金額を、八割であ
つたものをもう少し減らしたらどうかというのが第一点です。これはその後新聞にもすぐ出ましたように、やるにしても徐々にやるのだというような日銀総裁の話があ
つたと思いますが大体そうな
つております。第二点は、私の
関係しております為替予約の点であります。為替予約の点に関して打
つた手が二つ、
一つは為替予約の期間に関してですが、二つありまして、その
一つは従来、まあいつでも為替予約はできた。事実上いつでもできたという状態にありましたものを、今度は信用状の到着というものに限
つた。それ前ではいけないと
言つたのです。これが一番
業界をシヨツクした点でありまして、かくなる上は輸出はとまるであろうということを言われました。私
どもそれを知らなか
つたわけではないのであります。そうなるであろうということは知
つておりました。遺憾ながら一応そごまで行かざるを得ないと
考えてや
つたことであります。なぜかと申しますと、御承知の
通り輸出の為替予約はポンドの切下げ懸念とか、そういうものがあれば業者としては取りきめておくほうが安全である。場合によれば不当のリスクもあり得ることなんで、きめておこうということになるのですが、さて、若し切下げがありますと、それは申すまでもなくそのまま私
どもの会計の損、即ち国の損になります。ところでポンドは先ほど申しましたように非常な増大傾向にあ
つて、すでにきめました当時に八千万、現在九千万ですが、そういうふうに非常に厖大なものがありました上に、為替予約の売のほうと買のほう、つまり輸出のほうと輸入のほうと比べますと輸入のほうが厖大に多い。あれを決心します当時の数字では九千五百万ポンド、輸入のほうは三千六百万ポンドしかない、約六千万ポンド違いがあります。当時の数字で見ても現実のキヤツシユの点は八千万と加えますと六千万ですから一億四千万ポンドになります。仮に二割の切下げがあるならば二百八十億円の政府の損になる。そのような損を忍ぶということは止むを得んごとでありますから、業者にそのリスクを背負わせるよりは政府が背負うほうがまだいい。幾らか政府もいやな点に違いありませんが、幾らかいいから政府がそれを背負うことを変える意思はありませんが、併し仮にも真の輸出契約ができていないにもかかわらず、為替だけの輸出契約というものできめて行くということを放任して行くとすれば、これは私
どもの責任として甚だ相済まんことになる。どうしてもこの際真に売約定、輸出の商談が成立しているということの條件を見取りしなければ、従来とても法制上はそうな
つているのでありますが、ところが遺憾ながらそれを強行する手段を欠いているためにそこが守られない懸念がある。かるが故に先ほど申しました
通り輸出予約が非常に多いと
考えられるのです。どうしてもそこをきれいに真に輸出約定ができたものだけが為替予約を得るものだということにしたいと
考えまして、これをする
方法は、真に売約定ができたということが確定して、これを文句なしに示すのが輸出信用状の到着でありますから、輸出信用状の到着時にこれを限
つたのであります。これは私
どもそれでは実際の
業界には非常に商売の実際からいえば無理であるということを知
つておりました。併し左のほうへ曲り過ぎているものを真ん中へ持
つて行こうとすれば、一応右のほうに矯め過ぎなければならん場合も事柄によ
つてあるわけであります。
この問題はまさにそのような事柄だと思
つたわけであります。なぜならば、この問題を今後規制する、それに加えまして、あとで又御
説明しますが、第三点である為替予約というものは先物のスケールアツプ、スケールダウンを設けました。そういうふうなものを設けましたが、これでは一日にして非常な為替予約が殺到して政府が非常な補償すべからざるリスクまでも補償しなければならんかも知れんという危険がある。それは十二月八日に
イギリス政府が従来の為替相場で申しますと二ドル八十セントの公定にニセントの幅を許して実際のマーケット相場が二ドル八十セントになり得るようにした事実がありましたが、その措置を一や
つた。そのときに二ドル八十セントですから二百八十分の二だけの違いが出ると
考えられましたので、その二百八十分の二の相場変更を私
どもは輸出に関してやりました。ところがその僅か二百八十分の二の違いではあるがその相場の変更があるだろうということが遺憾ながら一日早く渡れた、事実は半日だと思いますが、半日早く洩れたので僅かに半日の間に千八百万ポンドという輸出予約が殺到した、そのようなにがい経験を持
つております。どうしてもこれは一応がつちりと信用状の到着というところで抑えて、そうしてこれを契約が成立したならばや
つてもいいというように別途措置を講じてそこまで折れよう、現に、大体まあ非常にむずかしいのでありますが、まず満足されるという措置が
立案されまして、不日最近の機会にそれ一を実行に移すわけであります。そこで、今度の為替措置の一番難点でありました、一番の御不平の対象に
なつた信用状到着まで、輸出契約ができないという点は解消される、元へ戻るはずであります。それでこれは今申しました
通り、どうしても抜打にやらなければならん事情がありましたので、その点は御
了承願いたいと思いますし、業者のかたにも御
説明申しまして、それは成るほど尤もだ、随分驚かされたが、聞いてみれば成るほど止むを得なか
つただろうと了解して下さるかたが随分多く、喜んでおります。それが為替予約の期限に関する第一点の問題であります。
始まりのほうの問題であります期限に関する第二点は長さであります。従来六カ月ぐらいを許してお
つたのですが、これは六カ月先までも認めて行くというのは
余りにも自由過ぎる、四カ月でいいだろうというので一般のものは四カ月、但し製造過程においてどうしても長く日を要するものは六カ月、別途の
機械の輸出、プラントの輸出とい
つたような長いものとい
つたら別途一年まで、これも最初から
考えてお
つた予定のコースでありますが、そういうことにいたしました。これが為替予約の期間であります。これらを通じて一応御承知おき願いたいことは、政府が為替リスクを背負うということはいい制度であるから続行したいと申しましたが、先ほど申上げたような、非常な巨額の損を政府が負うかも知れないという行為であ
つて決しておろそかにはできないものである。ですから成るべくおろそかにならんようにしたいのであります。
日本のごとく自由の上に政府が為替リスクを背負
つている国は殆んどないのであります。ポンドのごとく切下げがあるかも知れんと
考えられている通貨に対して、自由な為替予約で商売ができました以上はや
つてやるという政府は
余りないのじやないか。むしろ業者は為替リスクの危険にさらされておるのが通例じやないかと
考えております。この点も併せてこの問題を判断下さる上の参考までに御考慮に入れて頂きたいと思います。それがポンドの措置の第二点であります。
第三点は、これも為替予約でありますが、これはいわゆる先物予約につきましてスケールアップ、スケールタウンということですが、従来期近ものとスポツトもの、フォアワードのものとは相場は同一でありまして、同一相場で如何に先物でも為替予約ができたのであります。これ又
余り世界にないだろうと多分思いますが
余りにも寛大なる措置である。政府は先の為替変動の危険を背負うたのでありますからその保証料的なものを取るのが当り前です。前から何かそういうことをしたいと思
つておりましたが、予約問題はなかなか
関係が多いものですからいろいろほかに
考えることがありましてつい躊躇していたわけであります。今度それを思い切
つて実施した、それは年利にして一分の割合で輸出も輸入もポンドもドルも全部頂くことにした。これは
業界のかたとは十二月中に随分
お話したわけでありますが、皆さんそれは当り前だと言
つて下さ
つておるのであります。今度それは新らしいということは、ポンドの輸出というものに対しては年利一分のベースというものを二分のベースにした。二分のベースであ
つても非常に大きな負担であるとは私は
考えませんが、とにかく先が切下げがあるかも知れない、而も非常に大きな危険をはらんだ通貨の補償をするについては補償料が上るのは当り前、若しその危険性が増大するようなことになれば更に三分べース、四分ベースに上げることが合理的なんである。ただむやみにそういう反対給付を全然請求せずに政府がまるまる背負ということは却
つて不健全であると
考えましたので、今度ほかの措置をやると共にこれをや
つたわけであります。これらは今の点に対するまあ大体合理的なところだけであ
つて、あえてポンド輸出を抑制したいという、それほど強い効果があるとは思
つておりませんが、総じて今まで軍に輸出奨励と
考えられていたものが、今度の最初に申しました現状について若干輸出面に対して少くとも或る
程度の規制があるのだということを現わさなければならんと
考えられた結果であります。これが今度の措置に対する御
説明でありまして、それらは切下げを恐れてや
つたのかとおつしやいますが、必ずしもそうでない。切下げの対策として若し切下げ必至と
考えてその対策をやるならば、もう少し強い手を打たなければならんでありましようが、切下げの危険を含む通貨というものを、世界的に危險のついた通貨というものを、
日本が強いてそのポンドを使
つて輸入しようとしても、物価が高いためになかなか入らないというような通貨を抱えたについては、これらの措置をやるのが適当だと
考えております。あえて切下げだけを
考えたのではないのであります。併し切下げということも頭の中にあ
つてのことであります。私はかように
考えております。